弁護士コラム

2019.05.02

給与計算業務①~給与とは~

毎月行わなければならない従業員の給与計算は、単純そうに思えて、とても煩雑な業務です。自社で給与計算を行っている会社は多いでしょうが、思いのほか給与計算を間違っているケースが多く、従業員の本来もらうべき給与額になっていないケースが散見されます。
そこで、今回と次回にわたって、給与に関する基礎知識と、給与計算業務の基本的な流れについてご説明します。

1. 給与の定義

まず初めに、普段、何気なく使っている「給与」という言葉ですが、そもそも給与とは何のことを指すのでしょうか。
労働基準法11条において、給与とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義されています。
つまり、従業員が欠勤や遅刻、早退をした場合は、労務の提供が履行されていないので、その時間について給与を支払う義務はありません。

2. 支払いのルール

給与の支払いについては、労働基準法24条においてルールが定められています。

①通貨払い

給与は現金で支払う必要があり、小切手や自社商品では認められません。ここで、「私の会社は銀行振込をしているけど大丈夫なの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
本来は、銀行振込はこのルールに反していますが、従業員の同意を得た場合は、従業員の指定する口座に振り込むことが認められています。また、退職金に関しては、従業員の同意があれば、小切手や郵便為替での支払いが認められています。

②直接払い

給与は従業員本人に直接支払う必要があります。配偶者や保護者等に支払うことはできません。
ただし、従業員が病気で受け取ることができないといった事情がある場合に、家族が使者として受け取ることはこのルールに反しないとされています。

③全額払い

給与は全額を支払う必要があります。振込手数料や積立金などを勝手に差し引いたりしてはいけません。
ただし、従業員の代表と労使協定を締結すれば、一定のお金を控除することができます。また、健康保険料や雇用保険料などの社会保険料や、所得税や住民税といった税金については、法律によって控除することが認められています。

④毎月1回以上払い

給与は少なくとも毎月1回支払う必要があります。数か月ごとにまとめて支払うことは認められません。
年俸制の場合でも、一括支給ではなく、分割して支払わなければなりません。

⑤一定期日払い

給与は期日を特定して支払う必要があります。支払日にずれが生じてしまう「毎月最終金曜日」のような決め方は認められません。
※④⑤について、臨時に支払われる賃金、賞与、1か月を超えて支払われる精勤手当・勤続手当は除きます。

給与額は、会社が自由に決めることができますが、最低賃金を上回っている必要があります。最低賃金には、⒜精皆勤手当、⒝通勤手当、⒞家族手当、⒟時間外労働・休日労働等の割増賃金、⒠賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、⒡臨時の賃金は算入されません。

【最低賃金との比較方法】
時間給の場合:時間給最低賃金を比較
日給の場合:時間額(=日給÷1日の平均所定労働時間)と最低賃金を比較
月給の場合:時間額(=月給÷1か月の平均所定労働時間)と最低賃金を比較

都道府県別の最低賃金額については、厚生労働省のホームページから確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

3. 給与の支給項目と控除項目

従業員に支給する給与は、支給項目から控除項目を差し引いて計算します。支給項目、控除項目として一般的なものは以下の通りです。

支給項目

控除項目

4. まとめ

今回は、給与計算業務を行う前に知っておく必要がある基礎知識についてお話しました。給与計算業務に携わっていなかった時にはあまり気にしていなかった内容も多くあったのではないでしょうか。

これから給与計算をされるという方には、ぜひ今回の記事の内容をしっかりと理解していただけたらと思います。
次の記事では、実際の給与計算の流れについてご説明します。

2019.04.30

法の観点からみるネットビジネスに不可欠なWEBサイト作りとは?

ネットビジネスを始めるのであれば、必須なのが「WEBサイト作り」です。
ネットの世界では、日々ビジネスの種類に合わせて様々なタイプのWEBサイトが開設され、運用されています。

しかしながら、いざ始めようと思っても考えなければならない部分は非常に多くあります。
どこにWEBサイト制作を依頼するのか?自作するのか?WEBサイト名やドメイン取得はどうする?など…
今回は、法の観点から見るWEBサイトを作るにあたっての注意点や押さえておきたいポイントをご説明します。

1.自分が思い描いたネットビジネス用のWEBサイトを作るには

(1)外注制作会社を探す

まずWEBサイトを作るにあたって、専門的な分野であるネットワークの知識やプログラム言語などを習得した方でないと、本格的なWEBサイトやショッピングシステムを構築することは難しいものです。
そのような場合、多くはWEBサイト制作会社に外注することになりますが、見積を依頼する時点で、「自分が思い描いているサイトをしっかり作ってくれるか」という部分に重きをおいて外注会社を探しましょう。

外注を検討している制作会社には、どんなサイトにしたいか、各ページはどのような構成にするのか、訪問者はどのような流れで購入するのか、いつまでにサイトをオープンしたいのか、など希望をしっかり伝えましょう。

依頼することになったら、必ず契約書として上記の内容を書面に残すことがポイントです。

(2)なぜ契約書が必要なの?口約束でも契約は有効では?

できあがったWEBサイトの納品後、希望を伝えたのに思っていたサイトと違っていた場合、「そんなことは聞いていない」「言われた通りに制作した」という制作会社とのトラブルは避けたいものです。やはりイメージを伝えているだけなので、なかなか思い通りに出来上がらないのが一般的で、トラブルが後を絶ちません。
書面に残すことで証拠となり、納品後の修正や改善要求等に受注側の責任として応じてもらうことができます。

納期や金額についても明確に契約書に記載すると、WEBサイト制作に起こりやすい納期遅延の対策となります。
実際に遅延となった場合は、法律上、契約書に明記されていなくとも損害賠償請求をすることができますが、契約書の記載内容によっては損害賠償の額が少なくなってしまうこともあります。
制作会社から提示された契約書の内容に不安がある方は、弁護士などにリーガルチェックを依頼するとよいでしょう。

2.WEBサイトの名前、サービス名とドメインの決定は慎重に

(1)商標を侵害していないか検索

実店舗を構える際にも同様のことが言えますが、サービス名(商品名)、ロゴマークなどを決める際は、すでに世に出ているものの商標権を侵害していないかを確認する必要があります。

先に商標登録されたサービス名や商品名、ロゴマークに類似したものは使用できません。
独立行政法人 工業所有権情報・研修館が運営している「J-PlatPat」では、商標登録されているサービス名などの検索ができるので、ここで調べてみるのも方法の一つです。

J-PlatPat特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

しかしながら、類似サービス名や類似ロゴの検索はできても、商標権侵害にあたるかどうかの明確な基準までは、上記サイトではわかりません。
サイト開設後、スムーズに運用を進めたいのであれば、弁理士などに商標権侵害の調査とサービス名やロゴなどの商標登録を依頼してみるといいかもしれません。
商標登録まで行ってしまえば、今度は他人からのサービス名やロゴの侵害を防ぐことができ、安心してビジネスに取り組むことができるでしょう。

(2)ドメインはオリジナル性のあるものに

さらに、WEBサイト特有なものとして「ドメイン」があります。
これはネット上の住所といわれるものですが、独自ドメインといって、先に取得されていなければ自由に好きな文字列で取得することができます。
例えば、この「那珂川オフィス」サイトでいうと「nakagawa-lawoffice.jp/」の部分です。
このドメインを、「大手企業と同じ名前で最後の部分だけちょっと違う」ものにしてしまったらどうなるでしょうか。

これは、消費者(訪問者)にその関連企業であるかのように勘違いされ、混同をまねく行為として不正競争防止法の違反に当たる可能性があり、損害賠償請求や信用回復措置請求の対象になりかねません。

法律の観点から他人の真似をしないことはもちろん重要ですが、個人的な意見としては、オリジナリティのあるドメイン名を取得することで自身のサイトに愛着が湧き、サイトをより良くしていこう、という気持ちにつながるのではないかと思います。

3.WEBサイトが完成。更新を自分で行う時に気を付けたいポイント

(1)ブログページも開設!でもその画像、大丈夫…?

例えば、WEBサイトを開設し落ち着いてきた頃、商品についてのPRをブログで行うこととなったとします。
ネットを閲覧中に、たまたま同じ商品の写真を掲載していた他のサイトを見つけたので、無断でコピーし、あたかも自分が撮影したかのようにサイトへ掲載しました。

すでにご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、このような場合、著作権侵害にあたり、掲載元から損害賠償請求をされることもあります。

たとえありふれた街の風景の写真や小さなアイコンでも、他人が撮影・制作したものに対して、無断で使用することは許されません。有名人や著名人の写真ももちろん無断使用は違反です。
商品の写真撮影は自身で行うか、カメラマンに依頼しましょう。最近では、自身で撮影した写真を切り抜いたり加工してくれるWEBサービスなどもあります。

(2)過大表示や紛らわしい表現に気をつける

テレビCMや広告チラシなどでも問題となっていますが、実際の商品より良く見せる「有利誤認表示」はWEB上でも起こります。
「通常価格〇〇円のところ、今なら特別に●●円!」という表記をよく見かけますが、実際にはこの通常価格で一度も販売したことはなく、特別価格での販売が常態化していた場合、
景品表示法違反となるおそれがあります。

その他にも、アプリゲームなどでは途中から有料になるのにも関わらず「完全無料で遊べる」と表記したり、「必ず痩せるナンバーワンサプリ」などという医学的にも根拠がない文言を掲載することも景品表示法(または薬事法・薬機法違反)になります。

4.まとめ

今回はネットビジネスを始めるにあたって必要なWEBサイトについてご説明しました。
起こり得る多様なトラブルに先回りし、予防策を講じることで息の長いWEBサイトとなり、ビジネスも加速していくことでしょう。

制作会社との契約や著作権についてはビジネスに関わらず、趣味のサイトや、サークル活動でのコミュニティサイトなどを制作する際にも気をつけたい部分ではないでしょうか。
そのような方々もぜひ参考にしていただければと思います。

2019.04.30

【社会保険】家族を扶養に入れる加入条件と手続き方法

家族を自分の扶養に入れたい、夫・妻の扶養に入るため手続きをしたいけど、条件に当てはまっているのか気になりますよね。
必須条件は『主として被保険者の収入によって生計を維持していること』です。後期高齢者医療制度の創設により、75歳以上の者は被扶養者になれないので注意が必要です。
また、扶養に入る被保険者が社会保険に加入していることは前提条件となりますので、確認も必要です。

今回は、どのような人なら社会保険の扶養に入ることができるのか、どのような手続きが必要なのか等をご説明させていただきます。

1.被扶養者の範囲

『被扶養者』とは、被保険者の扶養に入った人のことです。
主として被保険者の収入によって生計を維持していることが条件で、被保険者と同様に、病気・けが・死亡・出産などについて、保険給付が行われます。
※収入には、給与のほか、事業収入、不動産収入、公的年金、失業給付等も含まれるので注意が必要となります。

被扶養者の範囲

※1 「主として被保険者に生計を維持されている」とは、被保険者の収入により、その人の暮らしが成り立っていることをいい、被保険者と一緒に生活をしていなくてもかまいません。

つまり、離婚したお父さんが子供のための養育費を支払っていて、その養育費で子供が生計を維持しているのであれば、同居していなくても子供はお父さんの扶養に入ることができます。

※2 「同一世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいますので、同一戸籍内にあるか否か問わず、被保険者が世帯主でなくてもかまいません。

2.共働きの場合は?

①被保険者と同一世帯の場合

ア)対象者の年間年収が130万円未満、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満の場合は該当します。
イ)対象者が60歳以上や一定の障害者の場合
対象者の年間年収が180万円未満、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満の場合は該当します。
ウ)上記アイの条件に該当しない場合であっても、年間収入130万円未満(イの方は180万円未満)、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、当該世帯の生計の状況を総合的にみて、被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者として認められます。

②被保険者と同一世帯ではない場合

対象者の年間収入が130万円未満(イの方は180万円未満)、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には被扶養者に該当します。

③被扶養者となる配偶者の方

20歳以上60歳未満の人は、国民年金の第3号被保険者となり、年金保険料が免除されます。該当した場合は、合わせて手続きを行う必要があります。

3.手続き方法

被扶養者の加入手続き方法1

手続き方法は上記の図をご参照ください。

4.まとめ

扶養に入れるのは3親等内の親族で主として被保険者の収入によって生計を維持している人です。範囲と要件によっては、届出書の添付資料にも違いがありますので、しっかり確認することが大切です。
手続きが遅れますと、さらに追加の資料が必要になったり、保険証が届くのも遅くなりますので、速やかに適切な手続きを行いましょう。

 

 

2019.04.24

【不動産】マンションへの日照に関する売主等の説明義務

日当たりの良い部屋を探していたところ、南側の開けた部屋を見つけ、仲介業者からは「南側には新たにマンションが建築されることはない」という説明を受けたためその部屋を購入しました。

ところが、入居して暫く経った頃、購入時の説明に反して購入した部屋の南側にマンションが建築されてしまい、日照が妨げられてしまいました。こんな時、仲介業者に対して責任を追及することはできるのでしょうか?

このようなケースを考える場合には、

①日照に関する売主の説明義務

②仲介業者の説明義務、仲介業者の説明義務と売主の説明義務との関係

という2点を理解する必要があります。

1.売主の説明義務の根拠

(1)消費者契約法と説明義務

売主が宅地建物取引業者の場合は、宅地建物取引業法により売主である宅地建物取引業者に説明義務が課されています。

他方で、売主が宅地建物取引業者でない場合であっても、売主が事業者であり、かつ買主が消費者である場合には、当該契約は消費者契約として消費者契約法が適用され、売主に情報提供努力義務が課されます。

具体的には、消費者契約法3条1項は、事業者に対し、消費者契約の締結について勧誘する際には、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努力するように定められています。

これによって、売買契約が消費者契約に該当する場合は、そうでない場合に比べて、売主の説明義務がより重いものになっていると考えられます。

※その他下記の項目については、前回の記事「マンションからの眺望に関する売主の説明義務」にて解説しているため、そちらをご覧ください。

2.日照に関する売主の説明義務

(1)日照の利益に関する一般論

日照の利益は、主に南側隣接地の利用形態によって確保されるものです。

マンションの売主であるマンション所有者と南側隣接地の所有者が同一人であれば、マンション所有者の方で南側隣接地の利用方法に関与できますが、南側隣接地がマンション所有者とは別人の所有である場合、その土地の利用方法は他人の意思に委ねられるものであり、マンションの売主から、「日当たりが悪くなるから高い建物を建てないでほしい」といった要望を出すような形での関与することはできません。

そのため、このような場合は、日照の利益は売主の裁量によって確保できないため、原則として、マンションの売主には、その売買に際し、南側隣接地にどのような建築物が建てられる可能性があるのかや、その建築物がマンションにどのような影響を与えるかなどを調査し、その結果を買主側に正確に告知説明しなければならないという義務は課せられるものではないと一般的には解されています。

(2)判例

ア 説明義務違反が肯定された事例

① 東京地判H10.9.16

仲介業者の作成したチラシに「日照、環境良好」との記載があったこと、購入の際に仲介業者や売主の従業員らが買主に対して、マンションの隣地に建物の建設が既に予定されていたにも関わらず、マンションの住人の承諾が無ければ建物が建築されることは無く、日照も確保されるという説明をしていたところ、予定通りに隣地に建物が建設され日照が阻害されたという事案です。

裁判所は、仲介業者や売主の従業員による説明が結果的に虚偽であったと言わざるをえず、そのような説明をしたことは、本件マンションについて売買契約を締結しようとした買主に対する関係で、説明義務違反に該当すると評価せざるを得ないとしました。

イ 説明義務違反が否定された事例

①東京地判S49.1.25

南側隣接地が他人所有である場合に関するものです。上記2(1)の原則論の通り、裁判所は、南側隣接地の利用方法については、所有者である他人の意思に委ねられるものであって、マンションの売主が関与することができないものである以上、マンションの南側にどのような建物が建築されるのか、そして、その建築物がマンションにどういった影響を与えるかなどについて調査し、その結果を買い受け人側に誤りなく告知説明しなければならないという信義則上の義務は一般的に課せられているものとは解されないとしました。

3.まとめ

以上の通り、マンションにおける日照は、特に南側隣地の利用形態によって影響を受ける事柄であるため、売主側において南側隣地の利用計画等を逐一調査した上で買主に告知説明する義務まで負うような義務は課せられていません。

一方で、売主側が、特に良好な日照をセールスポイントにしていたり、南側隣地の所有者からその利用形態に関する説明を買主になしたりといったこと(例えば、隣地にこれから高層マンションを建設することが決まったため、日照が遮られることが予想されるといった事情)を要請されていたような場合や、売主側が買主側に対し虚偽の説明や誤解を招くような説明をなした場合には、売主の説明義務違反が認められやすいと言えます。

 

2019.04.24

知っていれば役に立つ!経費のこと4

自社のキャラクターやオリジナルグッズをつくりたい!でも「経費」にできるのかな・・・なんて思ったこと、ありませんか?

1.自社のキャラクターを製作しました

とある会社では、自社のキャラクターを作っています。このキャラクターの製作にかかった費用は「経費」になるのでしょうか?

世の中には、数えきれないくらいのキャラクターが存在していて、その宣伝効果は計り知れませんし、キャラクターは作ったその時だけでなく、何年間も宣伝効果が続いていきます。

ですから、制作にかかったときの費用だけを「経費」にするのではなく、いったん「資産」にして毎年少しずつ「経費」にしていくのが原則となります。
これは、最初の記事で説明をした「減価償却」のことです。

では、この宣伝効果は、何年くらい続くものなのでしょうか?これは誰にも分らないため、基準となる年数が定められています。
・キャラクターの商標登録をしたとき・・・・・10年
・キャラクターの商標登録をしなかったとき・・5年

10年というのは、商標登録の有効期限、5年というのは、通常の「減価償却」と同じ期間になります。

これは、会社やブランドのロゴを製作したときと同じ考え方になるので、新しくロゴを製作する場合にも是非参考にしてみてください。

2.「着ぐるみ」も「経費」になる?

自社のキャラクターを製作したあとに、着ぐるみを作りました。キャラクターの製作費は「減価償却」で、毎年少しずつ「経費」として計上していくのが原則でしたが、着ぐるみの製作費はどうでしょうか?

実はこれも、キャラクターを製作したときと同じように、いったん「資産」にしておいて「減価償却」で、5年かけて「経費」にしていきます。

着ぐるみを製作すると、それを着て様々なイベントに参加したり、たくさんの人と交流をしたりする機会が多くなります。一緒に写真を撮ったり、ハイタッチをしたりするだけならいいのですが、時にはパンチやキックをされることもあります。
このようなことを考えると、「減価償却期間」である5年間、着ぐるみを使うことができない可能性も出てきますよね。この場合、いったいどのようにして「減価償却」をするのでしょうか?

実は、着ぐるみを使用できる期間が1年未満であれば、制作時に「経費」とすることができるのです。
しかし、相当なダメージを受けない限り、1年以上は使用可能なはずですが、減価償却の法定耐用年数はどうなるのでしょうか。
着ぐるみの耐用年数は、耐用年数省令別表一「器具及び備品」の「看板及び広告器具」のうち、掲げられているいずれの細目にも該当しないため「その他のもの5年」と考えられることが一般的です。

3.オリジナルグッズをつくりました

自社のキャラクター、着ぐるみに続いて今度はオリジナルグッズを製作しました。会社に来て頂いたお客様に配るためです。皆さんも、会社の名前入りのボールペンやメモ帳など、1度はもらったことがあると思います。

では、これらオリジナルグッズの製作費は「経費」にできるのでしょうか?
これは、「広告宣伝費」として「経費」にすることができます。
ただし、宣伝が目的のため、オリジナルグッズには社名が入っていなければなりません。
社名だと使ってくれる人が少ないから、社名以外のものを記載したいという場合は、会社のホームページアドレスでも代用が可能です。

社名やアドレスなど、宣伝要素のある記載が何もなく、「広告宣伝費」にできないと判断された場合には、「接待交際費」となるので気をつけましょう。
では、社名入りの図書カードはどうでしょうか?

実はこれも、「広告宣伝費」として「経費」にすることができます。
条件としては、「限定された人だけでなく、不特定多数の人に配ること」「1枚あたりの単価が1000円以内であること」「現金と同等の役割を果たすものではないこと」があげられます。

宣伝につながる社名やアドレスを記載する、不特定多数の人に配るなど、「広告宣伝費」にするための条件を満たして、会社の知名度向上や、集客に役立てましょう!

4.まとめ

今回は、「広告宣伝費」についてお話をしました。

自社のキャラクターやグッズを製作し、それを様々な場面で上手く利用することで、大きな宣伝効果が期待できるはずです。
「広告宣伝費」にするための条件を満たしながら、是非会社の知名度向上や集客、売上アップにつなげてください。

2019.04.24

経営法務リスクマネジメント ~退職に関するリスクについて~

最近、退職したいけど「退職したい」と言い出せない人のため、退職手続きを代行する「退職代行サービス」が新しいビジネスとして話題になっています。
このサービス自体は弁護士法違反ではないかなど、賛否両論がありますが、ビジネスとして成り立つほど、企業と従業員の間で退職時にトラブルが多いことを示しているのではないでしょうか。
企業としてはトラブルを最小限にとどめ円滑に退職手続きを行いたいと考えていると思います。この回では、企業側が従業員の退職に備えておくべきリスクについてご紹介致します。

1. 退職の形式

退職の形式としては大きく分けると「自己都合退職」と「会社都合退職」の二つがあります。
「自己都合退職」とは、転居や結婚または療養など自身の意思や都合に基づいて行う退職の事を指しています。
「会社都合退職」とは、企業側の経営不振や倒産などを理由として一方的に労働契約を解除する事を指しています。

それでは、自己都合退職か会社都合退職かの形式の違いにより、どのような差異が生じるのでしょうか。

まず、退職後の雇用保険(失業保険)の給付内容が異なってきます。
「自己都合退職」の場合、失業保険は退職日から3ヶ月と1週間待機しなければ給付されないのに対し、「会社都合退職」の場合には退職日から1週間後より給付が開始されます。

他にも、支給日数や最大支給額の違いがあり「会社都合退職」の方が従業員にとって優遇された扱いになっています。
これは、自分の意思で職を失った人よりも、会社の一方的な都合で職を失った人の方が保護の必要性が高いからです。

さて、では会社都合退職の方が従業員にとって都合が良いのであれば、「本来は自己都合退職であっても会社都合退職にしてあげようか」という発想もあり得ますね。

実際に、従業員が退職することは変わらないからといって、従業員からの要望に応じ、特段の理由なく「会社都合退職」として手続をしてしまう会社もあります。

しかし、会社都合退職としてしまうと、しばらくの間、助成金申請ができなくなったり、後々従業員から「企業から解雇された。解雇は不当だ!」と主張されてしまうリスクがあります。

従業員がまさかそんな不徳なことをするはずがない、と考える方が多いですが、実際にはそのことを原因として紛争が起こっていることも事実です。

仮に従業員から会社都合退職にして欲しいと要望があったとしても、会社を守るため、その要望は聞かないようにしましょう。

2. 従業員の失踪

従業員が行方不明になり失踪してしまった場合には、どのような形式で退職手続きを行えばよいのでしょうか。

一般的に解雇する際には、30日以上前に解雇予告を行うこと、もしくは、解雇予告手当を支払うことが義務付けられています。但し、次の場合には解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要とされています。

・天災事変やその他事業を継続することが不可能である場合
・労働者の責に帰すべき理由に該当する場合

従業員が失踪した際、解雇予告を行いたくても行えないですよね。従業員が失踪し、「2週間以上の無断欠勤」があった場合には、労働者の責に帰すべき理由に該当するとされているため、労働基準監督署にて解雇予告除外認定を受けることにより、解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要となります。

従業員を解雇する際には、会社から従業員に対する解雇の意思表示が必要となりますが、それが従業員の失踪により事実上不可能な場合には、意思表示の方法として公示送達を行うことも検討しなくてはなりません(裁判所に解雇する旨を掲示して、本人へ意思表示したものとみなす制度です)。

しかしながら、この手続きには相当の時間と労力が掛かってしまいます。
そのため、予め就業規則に無断欠勤が続いた場合について普通解雇・懲戒解雇事由として規定を定めておくと、簡易的に退職手続きを行うことができます。

3. 退職届の有効性

従業員が退職する際、意思表示として退職届を提出します。
就業規則にて、退職届の提出期間を定めている会社も多いですが、さて、従業員から就業規則にて定められている退職届の提出期限より後に提出された退職届は有効なのでしょうか。

民法では

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」(民法627条 第1項)

と定められています。

つまり、有期雇用契約でない従業員の場合、民法上では退職届を2週間前に提出することによって退職が認められることになっています。

就業規則にて退職届の提出期間が定められていたとしても、民法627条第1項は、強行法規(当事者の意思にかかわらず、法として画一的に適用される規定)であることから、企業側が退職時期の延長を行うことは難しいという見解が多くなされています。

「就業規則には2か月前に退職届を提出しなければならないと定めているのに、1か月を切ってから提出してきた従業員に対して、損害賠償などできないか。」というご相談も見受けられます。

しかし、民法で2週間と定められている以上、それは難しい要望となりますので、いざ退職者が出たとしても、短期間で引き継ぎが可能な業務フローの構築が会社としては不可欠となるでしょう。

4. まとめ

従業員が退職する際には様々な事情があり、気持ちよく送り出せる円満な退職だけでなく、事情によっては業務の引継ぎさえ不十分なまま、退職を認めざるを得ない状況に陥ることも考えられます。

退職時のトラブルや退職後の紛争を避けるためにも、就業規則の規定を整備し見直しを行い、専門家(弁護士や社労士)に相談しながら不備の無いように備えることでリスクマネジメントを行いましょう。

2019.04.24

労働時間の管理から考える時間外労働について

メディアで日本の働き方問題が取り上げられるようになり、多くの人が自身の労働環境について考えるようになってきています。
その中で、一番裁判にまで発展する事例として挙げられるのが、時間外労働に対するトラブルです。
ここでは、時間外労働の取り扱い方について説明したいと思います。

1.はじめに

法律によって、1日の労働時間は8時間、週については40時間以内と定められており、これを超えて労働をする場合は、割増賃金を支払わなければならないとされています。

この時間外労働をめぐって、労使間で未払い残業代の有無の論争に発展し、裁判になるケースが多々あります。

裁判の中では、時間外労働を行ったかの事実関係のほか、勤怠管理をしていなかった場合の時間外労働の認定や、労働者による自発的な時間外労働の取扱い方などが問題となることがあります。

2.過去の裁判・審判例からみる時間外労働

過去の裁判例をみていくと、時間外労働と認められた事例と認められなかった事例があります。

ある会社に長年勤めていた社員が十分な割増賃金が支払われていないとし、割増賃金や遅延損害金を請求しました。

使用者側は、会社の給与規程には「会社の命令によって残業を行った者に割増賃金を支払う」旨が明記されており、また、この社員には多数の補助者をつけていたため、時間外労働の必要性はなかったとして、未払いはないと主張しました。

本件は地方裁判所だけでなく高等裁判所まで争われ、いずれも労働者側の主張が認められ、1,000万を超える割増賃金等の支払いが命じられました。

理由としては、①担当する顧客数が他従業員と比較して著しく多かったこと、②職務日誌の記載内容からタイムカードの出退勤時間の裏付けがとれたこと、③会社代表者からの深夜勤務に対するねぎらいの言葉があったこと等が挙げられ、会社側も他従業員よりも著しい時間外労働者がなされていると認識があった(認識できた)ものとしました。

一方、認められなかった事案としては、会社側が時間外労働・休日労働に対する協定(通称36協定)が当時未締結であったため、時間外労働等を禁止した状態であったが、職員が割増賃金の支給がなくなることを懸念し、時間外労働禁止命令以降も残業を行い、その割増賃金を求めたものがありました。

裁判所は、使用者側は明確な理由のもと「時間外労働禁止」という業務命令を行っていたのにも関わらず、それに反し労働者の勝手な判断によって行われた時間外労働は労働時間ではないと示しました。

また会社側は、36協定締結までは時間外労働禁止の業務命令を繰り返し発し徹底していたため、使用者の指揮命令による時間外労働ではないと判断し、割増賃金の請求を全面的に否認しました。

3.労働時間の管理

前述の通り、労働者は原則法定労働時間内で働くことが決められており、時間外労働をする場合は36協定の協定範囲内でなければなりません。

そのため、使用者側としては、各労働者の労働日ごとの始業・終業を把握し、労働時間を管理することが求められています。

時間外労働の割増賃金の請求や労災時の注意義務違反等が裁判での争点になった際は、この労働時間管理を使用者側が適切に行っていたかも重要視されます。

では、使用者側が労働時間管理をきちんとしていなかった場合、割増賃金の請求はどう扱われるのでしょうか?

結論から述べると、労働者側から提出された資料等をもとに労働時間が推測されますので、労働者側に有利な判決が出ることがほとんどです。

やはり使用者側には労働時間を管理するという義務があるため、その義務を果たしていないために起こったこのような事案は、使用者側に責があるものと判断されることが多いです。

始業終業時刻の管理がなされていない場合の労働時間を判断する資料としては、以下のようなものが認められることがあります。

①業務日誌
②ソフト上の保存時刻
③システムのログやデータの作成・更新・保存時刻

使用者の管理外(例えば自宅などでのデータ作成)の時間も労働時間とカウントされる恐れがありますので、必ず労働時間は管理をしましょう。

そこで、具体的な労働時間の管理方法としては、2パターンが挙げられます。

①出退勤時間を使用者が毎日確認し、それを記録する
②勤怠管理システムやタイムカードを用いて確認、記録する

過去の判例においても、時間外労働の認定は、使用者が設置した機器によって打刻されたタイムカードの記載を重視するのが相当だとされており、労働者や使用者の恣意的な要素が加味されにくい客観的な記録を重要視しています。

なお、これらを基本要素として、時には使用者の残業命令書や労働者からの残業申請書などを求めることもあります。

しかしながら、直行直帰や出張が多いなど、タイムカードでの打刻が難しい場合もあります。このような時は労働者側からの自己申告に委ねざるを得ないため、使用者側は次のような対応をする必要があります。

①対象者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、きちんと自己申告をするよう説明すること
②労働者が申告する労働時間と実際の労働時間に相違がないか、実態調査を行うこと

これに加え、遠隔地で業務が終了した場合は、その都度連絡をもらって業務終了を確認する、外出先でも打刻が可能なシステムの導入を検討するなどをしたほうがいいでしょう。

物理的にどうしても無理な場合は、「みなし労働時間制」というものもありますので、直行直帰や出張等であっても労働時間の管理はしなければならないということは理解しておく必要があります。

4.まとめ

労働時間管理は義務といっても、労働者の業務内容や勤務形態によって、難しい場合ももちろんあります。

ただ、やはり労働時間管理をしていないと、割増賃金の支払を求められた際に、労働者の主張が認められてしまう恐れがあります。

そのたびに多くのコストがかかってしまいますので、そういったことを未然に防ぐためにも、労働時間及び時間外労働の管理は可能な限り行っていきましょう。

2019.04.24

ネットでのビジネスを始める前に知っておきたい法的リスクとポイント

最近ではインターネットが普及し、家にいながらでも様々な商品が購入でき、翌日には自宅や指定した場所に配達してくれるネットショッピングや、旅行の予定を立てた場合、宿の予約や航空券の手配などをネットで行うことができたりと、大変便利な世の中になってきました。
このようなネットビジネスは個人でも立ち上げることができ、中には多くの利益を生んでいるサービスも見受けられます。
そんなネットビジネスを始めようとする際に重要になるのが、法務です。法に則した認可を得ていなかったために業務停止命令を受けるなどのケースもあり、リスクとなる部分もあります。
今回は、ネットビジネスに必要な認可や、サービスによって異なる法的リスクについて説明します。

1.ビジネスのモデルによって法的リスクは異なる

実店舗において店や商売を始める際には、法律で定められた認可を得なければならないケースがあります。例えば、食品の販売であれば食品衛生法であったり、酒の販売であれば酒税法、旅券発行や宿泊の仲介は旅行業法などです。

これはネット上のビジネスにおいても同様で、ネットビジネス特有でもある仮想通貨を扱うサービスであれば資金決済法、景品表示法であったり、クラウドファンディングであれば出資法などが関係してくることになります。

立ち上げたいビジネスがどのようなものかを考えた際に、どのような認可が必要か、もしその認可を得ずに始めてしまうとどのような法的リスクがあるのか、ということも併せてピックアップし、洗い出すことが重要です。

2.誰と契約し、誰から利益を得るのかを明確に

法的リスクを洗い出す、といってもどうやって行えばよいのでしょうか。
まず、「誰が」「誰に」向けたサービスで、「どんなものを行う」のかを考えましょう。
例えば、ハンドメイド作家の商品を販売するサイトを開設した場合では、以下のようなケースが考えられます。

①事業者である自分と購入希望者で直接売買契約を結び、商品代金も事業者へ支払うケース。商品はハンドメイド作家から購入者へ送られる。

②事業者はハンドメイド作家や商品の紹介をサイトで行う。その商品の購入希望者はハンドメイド作家と売買契約を結び、商品代金は購入希望者がハンドメイド作家へ支払うという仲介型サイトのケース。

①では、商品に不備やクレームがあった場合、購入者と売買契約を結んでいるのは事業者ですから、事業者である自分が責任を負うことになります。

一方、②のケースでは、ハンドメイド作家と購入者が決済まで含んだ契約を結ぶという形になるため、クレーム等は事業者へは届きにくくなります。

法的リスクは①に比べて低いですが、仲介型のサービスには一定程度の規制がありサービス内容や業種によっては不可であることや、既製品をあたかもハンドメイドのように見せかけ、高額で販売していた場合などの違反に対して、事業者である自分はどのように対処すればよいかなど、不安はどちらのケースであっても起こり得るものです。

そのような不安のもととなる、予想される問題をすべて洗い出し、先手を打つことでスムーズにネットビジネスを始められるのです。

3.ネットサービスで異なる法的リスク

2.では商品販売サイトを例に出して説明しましたが、ネットが普及し技術が発展するにしたがって多様なサービスが現れてきました。

やはりサービスごとに法的リスクも異なるので注意する点も様々です。
もし多岐にわたってネット上でサービスを展開していく予定であるなら、サービスごとの特徴を知り、それぞれのリスクも把握しておきましょう。

①ECサイト

現在、実店舗で商品を販売していることを、そのままネットの世界で行うようなサービスです。実店舗では直接商品を見たり触ったりできますが、サイト上では写真や説明文を見て判断し、購入します。

その際に写真と実物のイメージが異なっていると、購入者とのトラブルにつながりかねません。
しかしながら、実物をそっくりそのまま写真にすることは物理的に無理であり、対処法としては会員登録をするタイミングなどで、責任の範囲や返金や返品についての記載をサイト内で示す必要があります。

②ショッピングモールサイト

ECサイトと同じかと思われるかもしれませんが、多くのショッピングモールサイトは「商品を売りたい」販売者と「購入したい」希望者をつなげるサービスで、どちらかと言えば仲介をし、販売者から出店料を得るというような形になるでしょう。
その場合は、販売者と購入希望者間のトラブルについて対処法を考えねばなりません。

③課金制アプリ、WEBサイト

スタートフォンアプリや、会員制(課金制)のWEBサービスを立ち上げる際も、様々なトラブルを想定しなければなりません。

スマートフォンアプリに多く見られるものは、一部のサービスが無料で使用でき、それ以上の機能を追加する場合は有料プランに移行する、というようなものです。

アプリ発売当初に世間へ周知する内容の中に、「すべて無料でできる」などとまぎらしい文言を入れてしまうなどすると、後でトラブルになり得ます。

集客を狙い、事実とは異なる表現をすることは景品表示法違反にもなり、早々に業務停止になることもあるのです。

④その他

他にも2016年頃に問題となったキュレーションサイト、まとめサイト等の著作権問題や、金融商品に関係するサービス等の資金移動業者登録についての問題などもあります。

WEBサービスとして一括りにせず、特徴から考えられるトラブルを洗い出しましょう。

4.まとめ

今回は自分でWEBサービスを立ち上げる際の法的リスクについて考えてみました。
多くはお金が発生した時点でのトラブルです。
商品を準備し、購入者に販売、フォローするまでの流れを考え、予測されるトラブルや法律に関係する部分をよく把握しておきましょう。

2019.04.24

マイナンバーの情報漏えい時のリスク

2016年1月以降、企業は厳格な安全管理体制のもとでマイナンバー等の情報を扱うことが義務付けられました。
しかし、情報漏えいのリスクをゼロにすることは困難です。万が一、マイナンバーに関連する情報が漏えいしてしまった場合、企業にはどのようなリスクが発生するのでしょう?

1.マイナンバーに関連する情報が漏えいした場合のリスク

万が一、マイナンバーに関連する情報が漏えいした場合、企業は以下のようなリスクを抱えることになります。

(1)刑事罰の適用(番号法違反)

マイナンバー制度では、番号法によって様々な罰則が設けられており、監督機関となる内閣府の外局である個人情報保護委員会より罰則の適用を受けることがあります。

(2)民事上の損害賠償請求

企業が適切な安全管理措置を講じることなく、情報が漏えいしてしまった場合は、その番号の対象者等から民事上の使用者責任を追及され、それに伴って損害賠償を請求されるリスクが生じます。
尚、企業が、民法上の使用者責任を免れるには、以下について会社側が立証する必要があります。

・被用者の選任や監督について相当な注意を払っていたこと
・相当な注意を払っていたとしても損害が生じたであろうこと

しかしながら、情報漏えい事故でこうしたことを立証するのは非常に困難です。
仮にその証拠を提示するのであれば、システムへのアクセス記録等になりますが、それでも十分だとは言いきれません。

そういった意味でも、企業が適切な安全管理措置を講じることが肝要だと言えます。
とりわけ、個人情報保護委員会による「特定個人情報の適切な取り扱いに関するガイドライン」が求めている、企業が講じなければならない安全管理措置のうちの「技術的安全管理措置」は、きわめて重要な措置であることが分かります。

(3)社会的信用の失墜

大企業や知名度のある企業で情報漏えい事故が起これば、マスメディアが大きく取り上げ、社会的信用が失墜することもあります。特に上場企業は株価下落の要因にもなるため、非上場企業以上に安全管理体制の徹底が求められます。

事実、過去に情報が漏えいした企業のその後を見ても、顧客離れが加速したり、内定辞退が相次いだり等、企業経営に直結する問題が生じています。

2.情報漏えい時の罰則

前掲の、マイナンバーに関連する情報が漏えいした場合の3大リスクのうち、社会的信用の失墜に関しては想像に難くありません。そこで、刑事罰等の罰則と民事上の損害賠償責任、2回に分けて、もう一歩踏み込んでお話しをしたいと思います。

まず、「(1)刑事罰の適用(番号法違反)」について。
通常、問題事案があればすぐに罰則を適用するわけではありません。
もちろん、重大事案であれば別ですが、基本的には事前に指導や助言、勧告等が行われる等であり、労働基準監督署による指導等と同じようなイメージを描くと分かりやすいと思います。

3.情報漏えい時の民事上の損害賠償責任

次に、「(2)の民事上の損害賠償請求」について。
マイナンバーやそれを含む個人情報が漏えいした場合、企業はその対象者に対しての賠償を考えなければなりません。

これまでの情報漏えいの事故をひも解いてみると、Yahoo!BB顧客情報漏えい事件(2004年)やベネッセ個人情報流出事件(2014年)において、企業側は情報漏えい対象者に対して500円の金券を支払っています。

こうした事例から、マイナンバーの流出の場合も、対象者1人当たり500円支払えば済むという誤った認識も広がりました。

しかし、ベネッセ個人情報流出事件では、その後、1人当たりの損害額55、000円の支払いをめぐって集団訴訟が提起され、他の情報漏えいに関する裁判例でも1人当たり数万円以上の支払いを余儀なくされています。

500円の金券は見舞金の支払いとなるにすぎず、その額が損害賠償額になるわけではありません。

4.まとめ

情報漏えいは、外部からの不正アクセスによって起こるケースを想定しがちですが、実際には、電子メールの誤送信を中心とした誤操作に端を発するケースや、紙媒体の紛失による事故が多いのが現状です。
いわゆるヒューマンエラーによって引き起こされているケースが一般的と言えます。

したがって、いくら堅牢なセキュリティ体制に守られた情報システムを構築したとしても、従業員の誤操作等によって情報が漏えいするリスクは依然として伴うということです。

実際、日本年金機構において100万件超の年金情報が流出した事件は、職員が外部から送付された不審な電子メールを開封したことによるウィルス感染に端を発したことは、報道によってよく知られているところです。

安全管理対策については、技術面に頼り切ることはできず、企業はヒューマンエラー対策に対しても意識して、情報漏えいでトラブルが生じないように、あらかじめ対策を講じておきたいものです。

2019.04.24

【不動産】マンションからの眺望に関する売主の説明義務

Q.窓からの眺めが気に入って海辺のリゾートマンションを購入したのに、入居した後になって目の前に別のマンションが建築され、せっかくの景色が見えなくなってしまう…

こんな時、誰に対してどんな請求をすれば良いのでしょうか?

このようなケースを考える場合には、
①眺望に関する売主の説明義務
②仲介業者の説明義務、仲介業者の説明義務と売主の説明義務との関係
という2点を理解する必要があります。

1 売主の説明義務の根拠

(1)不法行為責任

マンションを含む不動産の売買は、目的物が高額なため、契約締結に至る過程での売主の説明内容は非常に重要になります。

仮に売主の交渉段階での説明不足により買主に損害を与えた場合は、あくまで契約成立前の段階(交渉段階)で問題となる責任のため、売買契約上の責任(債務不履行責任)ではなく、民法上の不法行為に該当すると考えられることが多いようです。

(2)債務不履行責任

しかしながら、売買契約締結前(交渉段階)であっても、売主の説明義務違反として契約上の責任(債務不履行責任)を追及することができる場合があります。

そもそも、売買契約における売主の義務は、契約の目的物である財産権を買主に移転することであるため、説明義務自体は本来的な売主の義務には当たりません。

しかしながら、信義則から導かれる売買契約上の売主の付随的義務として「説明義務」があるとされるため、説明義務違反には債務不履行責任を認めることもあります。

また、契約当事者間においては、その相手方に損害を被らせないようにする信義則上の義務があるとされます。

つまり、契約締結の段階において当事者の過失によって相手方に損害を被らせた場合には、その被害を受けた当事者に損害を賠償する責任を認めるのが通説であり、判例もこれを認めています。

(3)宅建業者の説明義務

不動産の売買契約においては、宅地建物取引業者が自ら売主となったり、仲介業者として介在したりといった形態でやり取りされているケースが多く見られます。

宅地建物取引業者は、取引の関係者に対しては、「信義を旨とし誠実にその業務を行わなければならない」とされています。

特に売買契約等が成立するまでに、宅地建物取引士として、重要事項を記載した書面を交付して説明させなければならないと定められています。

2 仲介業者に委託した場合の売主の説明義務

契約当事者が宅地建物取引業者に仲介を委託する場合には、契約当事者の意思としては、原則として、重要事項の説明については自らが委託した宅地建物取引業者が行うものとしてその説明に委ねているということができます。

よって、売主本人は買主に対し説明義務を負いません。

〔例外的に売主も説明義務を負う場合〕
①大阪高判平成16.12.2
売主が買主から直接説明することを求められ、かつ、その事項が購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり、その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される場合には、売主は、信義則上、当該事項につき事実に反する説明をすることが許されないことはもちろん、説明をしなかったり、買主を誤信させるような説明をすることは許されないというべきであり、当該事項について説明義務を負う。

②東京地判平成9.1.28
売主は売買契約に向けて仲介業者に委託している以上、仲介業者を売主の履行補助者とみて、指導要綱の説明義務違反について売主も責任を負う。

3 説明義務違反の効果

(1)損害賠償

売主に説明義務違反が認められる場合、買主は、売主に対し、買主が被った損害について賠償を請求することができます。

なお、損害賠償の範囲については、信頼利益(契約締結に要した費用)の賠償を命ずる判例が多いようです。

(2)解除

売主の説明義務を信義則から導かれる売買契約上の付随的義務である(上記1の(2)参照)とした場合、説明義務違反は付随的義務の債務不履行となります。

そして、付随的義務の不履行があったとしても、原則として相手方は契約の解除をすることができないとされます。

しかしながら、付随的義務の不履行であったとしても、それが契約締結の目的の達成に重大な影響を与えるような場合については、契約を解除することが認められます。

4 眺望に関する売主の説明義務

マンションの売主が、居室からの眺望について説明する義務を負うか否かについては、建物の所有者・占有者が眺望の利益について法的保護を受けられるか否かに関わると言えます。

この点について、裁判例は

「眺望利益なるものは、個人が特定の建物に居住することによって得られるところの、建物の所有ないしは占有と密接に結び付いた生活利益であるが、もとよりそれは、右建物の所有者ないしは占有者が建物自体に対して有する排他的、独占的支配と同じ意味において支配し、享受し得る権利ではない。

元来風物は誰でもこれに接し得るものであった、ただ特定の場所からの観望による利益は、たまたまその場所の独占的占有者のみが事実上これを享受し得ることの結果としてそのものの独占的に帰属するに過ぎず、その内容は、周辺における客観的状況の変化によっておのずから変容ないし制約を被らざるを得ないもので、右の利益享受者は、人為によるこのような変化を排除し得る機能を当然に持つ者ということはできない。

もっとも、このことは右のような眺望利益がいかなる意味においてもそれ自体として法的保護の対象となり得ないことを意味するものではなく、このような利益もまた、一個の生活利益として保護されるべき価値を有し得るのであり、殊に、特定の場所がその場所からの眺望の点で格別の価値を持ち、このような眺望利益の享受を1つの重要な目的としてその場所に建物が建設された場合に用に、当該建物の所有者ないし占有者によるその建物からの眺望利益の享受が社旗観念上からも独自の利益として承認せられるべき重要性を有する者と認められる場合には、法的見地からも保護されるべき利益であるということを妨げない」(東京高決昭和51.11.11)

としています。

そして、買主側の眺望権については、売主側が不動産売買の契約前の段階で眺望をセールスポイントにしていたり、販売後に売主側が自ら眺望を妨げる行為に出たりした場合には、売主の説明義務違反が認められやすいと言えます。

例:リゾートマンションの広告で眺望の良さを前面に押していたケース

他方、上記のような場合であっても、売主側で眺望に影響を与え得るような事情の有無について調査を尽くした上で買主側に対して説明をしていたような場合には、売主はその説明義務を果たしていたと認定されやすいと言えます。

例:マンション入居後にその窓から見える範囲へ高層ビルが建設され眺望が害されてしまったが、その高層ビルが建設される事実については売買契約時に売主側から重症説明事項として買主に対し説明がなされていたケース
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