弁護士コラム

2023.09.19

お客様は神様??~旅館業法の改正~

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以前、ハラスメントについて紹介した際、カスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉を紹介しました。
前回の記事はこちらから:従業員の名札は必要?
前回の記事はこちらから:なんでもハラスメント?~現代のハラスメントの問題点~
客が店員に対し、過剰な要求や暴言を吐くなどの行為を行うことを指します。
このようなカスハラを行う人の根底には、「お客様は神様」というような考えがあるのでしょう。
ただ、このような行為は、お店の業務を阻害するばかりか、他の利用客に迷惑をかける行為であり、最近では、迷惑をかける人に対しては毅然と対応するお店も出てきているようです。

しかし、ホテルや旅館では、こういった迷惑客の対応を強いられて来ました。
それは、これまで旅館業法という法律で、宿側は原則として宿泊を拒否することができないと規定されており、拒否できる事由が、伝染性の疾病患者や、犯罪を行う恐れのある人などきわめて限られた場合に限定されていました。

旅館

この規定により、上記のようなカスハラを行う人であっても、宿泊を認めざるを得ず、その対応に従業員の方なども苦慮していたようです(暴言や暴行等きわめて対応が悪質な場合には、業務妨害に関する犯罪行為であるため警察に通報するなど対応は可能なのでしょうが、現場でその判断を行うのは難しいという実情があるそうです。)。

そんな中、令和5年6月に旅館業法が改正され、宿泊しようとする人が、営業者に対し、過剰な負担を強いる要求をした場合や、他の宿泊者へのサービスを阻害する恐れがある要求を繰り返した場合には、宿泊を拒否することができるようなり、まさにカスハラを行う人の宿泊を拒否することができるようになりました。

このように、法律で、宿泊拒否を行うことができることが明確に規定されたため、ホテル側としても、具体的にこういった場合にはこの条文に該当するというようなケースを想定して準備をしておけば、現場の従業員の方の負担も軽減されるのではないでしょうか。

お客側も、金銭(対価)を払うという点でなぜか上の立場になったように錯覚し、度を越えた迷惑行為を行ってしまうのかもしれません。
しかし、お金を払う側とサービスを提供する側が対等な立場であることは明らかで、あくまでも「お客様はお客様」でしかないので、お店の人にもお互い敬意をもって対応してきたいですね。

 

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2022.10.06

従業員の名札は必要?

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以前の投稿で、現在では様々なハラスメントが存在すると書いた際に、店で従業員に対してクレームなどを行う行為が「カスハラ」(カスタマーハラスメント)と呼ばれていることを紹介しました。
以前の投稿はこちらから: なんでもハラスメント?~現代のハラスメントの問題点~

この「カスハラ」に関連して、最近では、クレーマーが従業員の名札など氏名が分かるものを撮影し、SNS等にアップするというトラブルが起きているとのニュースを目にしました。

従業員の名札は必要?

名札をつけている職種としては、コンビニの従業員などがパッと思いつくのではないかと思います(調べてみると従業員の名札着用の先駆けは百貨店等とのことです。)。
勤務地とセットで名札などがSNSに上げられてしまうと、個人のプライバシーがさらされ、ストーカーや犯罪に巻き込まれてしまうおそれがあり、とても問題であると思います。

では、従業員の人は必ず名前を出さなければならないのでしょうか。

まず、法律で名前を出さなければならないことが決まっている業種があります。
具体的には、バスやタクシーの運転手は「旅客自動車運送事業運輸規則」により、氏名を旅客(乗客)に見やすいように掲示しなければならないと規定されています。
また、「薬事法」という法律では、薬局において従業員のうち薬剤師や登録販売者の方については、氏名を記載した名札を掲示することが義務付けられています。

「薬事法」という法律では、薬局において従業員のうち薬剤師や登録販売者の方については、氏名を記載した名札を掲示することが義務

一方、こうした法律で名前を出すことが義務付けられていない職業の場合には、従業員が名前を出さないで仕事をすることが法律に違反しているということにはなりません。
もっとも、会社の就業規則などにおいて名札の着用が義務付けられている場合には、名札をつけないと就業規則違反として懲戒処分の対象となる可能性があります。

では、店側として従業員の安全を守るために、名札に偽名等を記載し使用させることは許されるのでしょうか。
この点については、法律上従業員は顧客に対し、本名を知らせなければならない義務があるわけではないため、偽名の名札を使うことは何ら問題はありません。

顧客満足度の観点から、名札をつけて仕事をするということはいいことかもしれませんが、上記のようにプライバシー侵害の恐れなどがあるため、会社としても従業員を守るために偽名を使ったり、場合によっては名札をつけずに勤務させることを認めるなど柔軟な対応が必要なのかもしれませんね。

 

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2022.02.24

なんでもハラスメント?
~現代のハラスメントの問題点~

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先日、ニュースで、コロナ禍でお客さんによるカスタマーハラスメント略して「カスハラ」がさまざまな業種で起きていることが報じられました。
とあるホテルで、「男性客が従業員に『クビだ!』と罵声を浴びせ、土下座を強要するだけではなく、ホテルの最上階の部屋の宿泊を要求した」などという状況を撮影したニュース番組の映像が流されていました。

そして、少し前まではハラスメントというと、セクシャルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)ぐらいでしたが、現在は、多種多様なハラスメントがあり、その数が50個近くもあると紹介されていました。
私もハラスメントについて調べてみました。
今日は、ハラスメントについての一例をご紹介するとともに、ハラスメントについて弁護士としての意見をお伝えしたいと思います。

〇時短ハラスメント(ジタハラ)・・・働き方改革の一環で長時間労働が問題視されるようになり、会社でも残業をしないよう上司から指示されることも多いと思います。しかしながら、残業しなければ終わらないような業務量であるにも関らず定時に帰るように強要され、自宅などでの作業を余儀なくされるなど、残業代が出ない残業をする羽目になっている現状があるそうです。

〇フォトハラスメント(フォトハラ)
SNSが普及している現在では、許可なく写真をSNS等にアップロードされることもハラスメントとして定義されるようになりました。

〇ヌードルハラスメント(ヌーハラ)
前2つのハラスメントは、現代で新たに出てきた重要なハラスメントであると思いますが、こんなものもハラスメントとして取り上げるべきものなのかというもので「ヌードルハラスメント」というものがありました。
すなわち、ラーメンやそばなどをすするときの音がハラスメントだというのです。
ヌーハラ

 

このように、現代ではさまざまなハラスメントが定義されるようになりました。
様々なハラスメントが定義されることで、今まで声をあげることができなかった弱い立場にいた人が、「ハラスメントである」と声を上げられるようになったことは、とてもいいとは思います。

しかし、その反面、上記のヌーハラのように、ハラスメントとして定義すべきであるかのようなものまで何でもハラスメントになってしまうと、ハラスメントと主張すること自体がハラスメントになってしまうのではないかと思います。
そう思って調べると、何かにつけてハラスメントであると言いがかりをつけることを、ハラスメントハラスメント(ハラハラ)と定義していることが分かりました。

このように様々なハラスメントが定義されている現代ですが、法律上問題になるのが、当該行為が損害賠償の支払を義務付けられるような違法な行為に該当するか否かです。

すなわち、辞書的な意味でのハラスメント「いやがらせ」という意味では、相手方不快な感情を抱けばハラスメントに該当することになりますが、民事上問題となるのは当該ハラスメント行為が違法な場合、すなわち、その行為を行ってはいけないという法的義務が認められる場合に、その義務に違反した場合にのみ初めて損害賠償責任を負うことになり、単に相手が不快な感情を抱けば賠償責任となるものではありません(上記ヌーハラでも、音をだして麺をすすってはいけないという義務が認められるわけではなく、すすっている音がイヤという人が損害賠償を請求できないというのはお分かりになると思います。)。

大事なのは、どういったハラスメントが存在するかということよりも、具体的どういった行為が賠償責任を負うかということを会社や個人それぞれがしっかり認識し、みんなが生活しやすい状況を作り出すということではないかと思います。

そういった意味では、上記のフォトハラなどは、SNSになじみがない方などには認識すら難しいものであると思うので、ハラスメントが注目されている機会に知ることはとても有意義だと思います。

どういった行為が禁止すべきハラスメントに該当するかについては、法的問題であるため、経営者の皆さまは会社での指導を行う前などに是非一度弁護士に相談されることをおすすめします。

 

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