弁護士コラム

2023.06.29

社内資料で著作権侵害に?

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会社にお勤めされている方などは、社内でのプレゼン資料や、会報など、外部に公開することを予定されていない、資料を作成される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった、資料を作成する際に、ネットなどでちょうどいい写真などを見つけて、資料に貼り付けたり、社内の資料であるからとして、キャラクター等を使った資料を作られてはいないでしょうか。
今回は、そうした社内資料を作成する際の著作権についての注意点をご説明させていただきます。

まず、創作者(著作権者)の権利(著作権)を保護するために規程されている法律に著作権法があります。
そして、著作権者には、著作物の複製や利用に関する独占的な権利が認められており、第三者が著作物を利用する場合には、原則として、著作権者の許諾が必要となり、許諾を得るために利用料(ライセンス料)を支払う必要があることが多いです。

もっとも、例外的に、他人に著作権があるものであっても、「私的利用」すなわち、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」場合には、著作権者の許可を得ることなく著作物を利用(複製)することができます。

では、社内でのみ利用す資料に著作物を利用する場合が、この「私的利用」に該当するのでしょうか。

社内資料で著作権侵害に?

この点については、裁判例があり、いかに内部でのみ利用する資料であっても、企業が著作物を利用する場合には、「私的利用」には該当せず、著作権者の許諾を得る必要があると判断しています。

このように、企業の場合には内部資料であっても「私的利用」とは認定されません。
内部資料であっても著作権者に無許可で著作物を利用してしまった場合には利用料相当額の損害賠償を支払う必要があります。

もっとも、他人の著作物を利用する場合、著作権者の許可を得る以外には、著作権法第32条1項に規定される「引用」の要件を満たす必要があり、会社の内部資料等で使用する場合にはこの引用目的で利用する場合がほとんどであると思います。
その場合には、引用の必要性があり、出典を明示するなど、厳密な要件が必要になりますので、資料を作成する際には、ぜひ弁護士にご相談いただいた上で、適法に作成されることをおススメします。

 

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2023.06.14

保釈中の被告人にGPSの装着

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皆さんも、刑事事件のニュースで、保釈という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
保釈とは、刑事事件において起訴された被告人が保釈金を支払うことで、勾留されている状態から釈放される制度で、刑事事件訴訟法に規定されています。

保釈により、逮捕、勾留されていた人も、釈放され日常生活に戻ることができますが、後日行われる刑事裁判(公判といいます。)に出廷しなかったり、逃走してしまった場合には、再び勾留されることになり、また、支払った保釈金も没収されてしまうことになります(他方、きちんと公判に出廷している場合には、保釈金は後日返金されることになります。)。

このように、保釈金を担保として逃亡することを防いでいた保釈制度ですが、皆さんもご記憶に新しいと思いますが、日産の元会長であるカルロス・ゴーンが保釈中に海外に逃亡してしまう事件が起きたように、保釈金のみでは、釈放された被告人の逃亡を防ぐことができない状態になりました。

保釈中の被告人にGPSの装着

そのような中、先日、国会で、改正刑事訴訟法の法案が衆参両議院で可決されました。
その改正の1つとして、裁判所が保釈許可時に海外逃亡を防ぐ必要があると判断すれば、被告にGPS端末の装着を命令できるようになりました。
そのうえで、空港や港湾施設の周辺といった「所在禁止区域」への立ち入りや、端末の損壊・取り外しを行った場合、端末が違反を検知して裁判所に通知し、身柄が確保されることになります。

このように被告人がGPSの装着をすることにより、逃亡の恐れはなくなることにはなりますが、他方で、被告人の位置情報が把握されることによりプライバシーなどの人権侵害が起こる可能性があります。
改正刑事訴訟法では、被告人のプライバシーに配慮するために、裁判所や検察官は、違反行為が行われない限りGPSによる位置情報を確認することはできないとされているようです。

アメリカの一部の州では、性犯罪等一定の犯罪を起こした人に対し、居住する場所を制限し、かつ、GPSの装着を義務付けるなど、再犯を防ぐために課しているところもあります。

保釈中の被告人にGPSの装着

犯罪をなくすという必要性と、犯罪を犯してしまった人の人権というどちらも重要な利益の衝突場面で、どういった方策が正解なのか非常に難しい問題です(よく司法試験の憲法の問題でも出題されることが多い分野です。)。 時代の変化に伴い、新しい制度や法律が制定されますが、人権を過度に侵害したものではないかという点は、法律家として常に意識していきたいと思います。

 

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2022.04.20

何も言わなくても詐欺罪??

先日、沖縄の那覇空港にある30分無料の空港駐車場で、不正に駐車料金を免れようとしたレンタカー会社の従業員らが詐欺罪で逮捕されたニュースを目にしました。
どうやら、禁止されている空港の駐車場でレンタカーの引き渡しを行い、レンタカー利用者の人には別の車で直前に駐車場に入った駐車券を渡し、従業員らは窓口で「駐車券をなくした。30分以内である。」などと嘘を伝えて駐車料金の支払を免れたという事で逮捕されたとのことです。

こうした駐車場を利用したレンタカー会社の不正な受け渡しは横行しているようで、そうした不正が行われると空港の駐車場がすぐに満車になってしまうそうです。
私も子どもが飛行機を見たいというので、たまに福岡空港の駐車場を使うのですが、よく駐車場が埋まっていることがあり、そういった不正で駐車場が利用されているのであれば迷惑なのでやめて欲しいと思います。

駐車券をなくしたと嘘の申告

上記ニュースの従業員は、詐欺罪を理由に逮捕されています。

詐欺罪が認められるためには、文字通り人を騙す行為(法律用語で「欺罔(ぎもう)行為」といいます。)が必要になります。

この欺罔行為についてですが、人を欺く行為と聞いて一般の方が思い浮かぶのは、投資詐欺のように「必ず儲かるから」「元本保証をするから」などと言って、騙して投資を促す積極的な行為を想定すると思います。
上記の事件での欺罔行為も、ずっと長時間レンタカーを止めていたにもかかわらず「30分の利用である」と虚偽の事実を積極的に告げているため、この類型に該当します(積極的詐術行為)。

詐欺罪は、このような積極的な詐術行為だけでなく黙示的な詐術行為の場合にも成立します。

例えば、1円もお金をもっていない状態で飲食店に行き、注文をし料理を食べる行為も詐欺罪に該当します(いわゆる「無銭飲食」という行為です。)。
この行為は、上記のように積極的にだましてはいませんが、飲食店で料理を注文するという行為は、料理の代金を払うという意思を表示していることになります。
しかし、1円も持っていない状態であること知りながら注文するということは本当は払う意思が無いのにもかかわらず代金を払う意思を表示しているため、相手を騙しているということになります(このような詐欺を黙示的詐術行為といいます。)。

同じ類型の行為として、生活苦などで複数の消費者金融からお金を借りている多重債務者の方が、自転車操業の状態も行き詰まり返すことができないという状況を知りながらローンが通る消費者金融からお金を借りる行為についても、返済する意思がないにもかかわらずお金を借りる(返すという意思を表示していることになります)という行為も詐欺罪に該当することになります。
債務整理をしていて多重債務というだけで詐欺罪で検挙されるというケースはあまり多くはありませんが、例えば他の消費者金融への借金額や自身の収入額を大幅に嘘をついていた場合などと合わさって詐欺罪で被害届が出される可能性はゼロとは言い切れませんので、借金で悩まれている方は早めに弁護士へ相談することをお勧めします。

そして、上記の黙示的な詐術行為の中には何も言わなくても詐欺罪になる場合もあります。

釣銭詐欺という状況なのですが、レジでお金を払い店員が釣銭を間違えていると知りながら、何も言わずにそのままお釣りを多く受け取る行為も詐欺罪に該当すると言われています。

客としては、店員が釣銭を多く払おうとしているときにはその旨を指摘する義務があるとして、その義務を怠り何も言わずに釣銭を受け取る行為は詐欺に該当するとされているのです。

釣銭を多くもらってラッキーという経験をしたことがある人も少なくないのではないかと思いますが、現に釣銭詐欺で逮捕された事例もあるため注意が必要です。
なお余談ですが、釣銭詐欺が成立するためには釣銭が間違えていることを受け取る前に気づいている必要があり、釣銭を受け取った後で釣銭が間違っていることに気づいたがそのままにしていたというケースでは詐欺罪は成立せず、民事上の返還義務だけが残ります。

このように色々な行為が詐欺罪に該当する行為となるのですが、詐欺罪の立証は騙す意思(故意)があったという内心の状態を立証することが非常にハードルが高いと言われていますので、詐欺被害に遭われたという方は是非お気軽に弁護士にご相談ください。

 

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2022.01.28

郵便局員が郵便を破棄!!
~損害賠償請求は認められる?~

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皆さんは年賀状は書かれましたか?
私は、昨年に第2子の長女が産まれたため、長女と長男の写真の年賀状を作成しました。

郵便局員が郵便を破棄!!~損害賠償請求は認められる?~

年々、年賀状の郵送枚数は減っているそうです。
毎年年末が近づくと宛名を書いたりするのが億劫になってしまいますが、1月1日に年賀状が来ていると嬉しくなるので、これからも続けていこうと思います。

そんな年賀状だけでなく、日々の手紙や郵便を配達してくれるのは郵便局員の方ですが、日本の郵便の制度はとても信頼性が高く、送った郵便が届かないということを経験した人はあまりいないのではないでしょうか。

しかし、先日大阪にて、配達されるはずであった手紙や封書7,000通を雑木林に捨てたとして、郵便局員が郵便法違反で逮捕されたというニュースを目にしました。

逮捕された郵便局員は、「配達するのが面倒だった」などと容疑を認めており、また、昨年の11月ころから郵便物を自宅に持ち帰っていたと話しているようで、自宅には、約4,000通の郵便物があり、その中には大切なコロナワクチンの接種券などもあったそうです。

弁護士という仕事から、裁判所や相手方に書面を郵送したり、戸籍を集めたりなど、毎日多くの郵便物を送付していますが、重大な個人情報が含まれた書面もあるため、もし自分の地域で同じことが起こったらと思うととても恐ろしいです。

そういったことがないように、郵便に関することを規定した郵便法では、郵便を破棄した人等に刑事罰を科しているので、あまりこういったことが頻繁に起きることはないと思いますが、過失で郵便局員が紛失させてしまうこともあるかもしれまん。
そういった場合に、郵便局などに対し損害賠償をすることができるのでしょうか。

この郵便に関する損害賠償についても、郵便法に定められており、書留郵便や、代金引換郵便で代金を回収せずに引き渡した場合や、内容証明などの記録郵便物に限定して賠償請求が認められています。

損害賠償が認められる郵便物が限定されている理由としては、無制限に賠償を認めることになると、郵便料金を引き上げることや、迅速な配達が実現しなくなるためであると言われています。

上記の事件のようにワクチン接種券が届かない場合や、裁判所からの書面が届かないなどとなると、様々な人が困ることになるため、郵便局の方にはきちんと郵便物の配達をお願いしたいですね。

 

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2022.01.26

実行犯ではないのに処罰される?
~共謀共同正犯について~

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2021年9月24日、福岡地方裁判所にて、特定危険指定暴力団の工藤会のトップ2名に対し、死刑判決と無期懲役判決が言い渡されました。

判決の言い渡された2名は、いずれも自分が実行犯ではない殺人事件について、「共謀共同正犯」として処罰されています。
本日は、この一般の方にあまりなじみがない、「共謀共同正犯」についてご説明させていただきます。

2021年9月24日、福岡地方裁判所にて、特定危険指定暴力団の工藤会のトップ2名に対し、死刑判決と無期懲役判決が言い渡されました。

まず犯罪は大きく分けると、全て単独で行う「単独犯」と複数の人が犯罪に関与している「共犯」に分別されます。
そして、「共犯」には説明しますが、「共同正犯」「幇助(ほうじょ)」「教唆犯」(2つを併せて「従犯(じゅうはん)といいます。」)に区別されます。

共同正犯は、刑法60条に「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と規定されており、共同して犯罪を実行した場合には2人とも同じ責任を負うことになります。

幇助犯とは、共同正犯以外の行為で正犯の犯罪行為を容易にする行為を行ったこと指し、刑法62条1項で「正犯を幇助した者は、従犯とする」と規定されており、幇助犯も処罰の対象になります。

また、教唆犯とは、他人をそそのかして、犯罪を実行させる罪であり、刑法61条1項で「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」と規定されており、教唆犯も処罰の対象となります。

そもそも刑罰という重大な不利益を被る場面では、個人が自己の行為によって犯した結果についてのみ処罰されるべきであるという考え(これを「個人主義」といいます。)が採用されており、共同正犯は、個人主義の例外であり、共犯者が心理的物理的に影響を及ぼし合う関係になることで犯罪結果が生じやすくなるため共犯の場合には双方とも結果を負う形になります。

そして、共同正犯は上記刑法60条のとおり「共同して犯罪を実行した」と規定されており2人以上の人が共同して犯罪を行うことが予定されていますが、判例上、実行行為を行っていなくても、「2人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、かつ自己の行為を他人に補充するという意味で、緊密な相互利用相互補充関係があれば」共謀共同正犯として、結果についても責任を負うとされています。

これにより、集団詐欺等の犯罪集団などにおいても刑罰を科すことができるようになったのですが、共謀の事実が認定ができなければ共謀共同正犯を認定することができません。

今回の裁判でも、工藤会のトップ2人が共謀した事実に関する直接的な証拠が何ら存在しなかったため、間接的な事実を積み重ねて共謀の事実が認定されています。

本件については、被告人側から福岡高等裁判所へ控訴がされているため、控訴審においてどのような判決がなされるか、今後も注目していきたいと思います。

 

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