逮捕された本人と連絡が取れない場合、家族ができること|弁護士が解説

突然、大切な家族が逮捕された場合、その後の対応に不安を感じるのは当然のことです。特に、逮捕後に本人と連絡が取れない状況では、どのように行動すればよいのか分からず、戸惑ってしまうことも多いでしょう。本記事では、家族が逮捕された場合に直面しがちな「本人と連絡が取れない」という問題について、弁護士がどう対応するか、家族として何をすべきかを詳しく解説します。
第1章 逮捕された本人と連絡がとれない理由
1-1 逮捕直後は家族でも面会できないことが多い
家族が逮捕されたと知ったとき、多くの方は「すぐに警察署に行けば会えるのではないか」と考えます。
しかし、実際には、逮捕直後の段階で家族が本人と面会できるとは限りません。
むしろ、逮捕されてから勾留が決まるまでの初期段階では、家族による面会が認められないことが一般的です。
逮捕後の刑事手続では、警察が逮捕してから検察官へ送致するまでに原則として48時間以内、その後、検察官が勾留請求をするかどうかを判断するまでに原則として24時間以内という時間制限があります。
つまり、逮捕後、警察が検察官へ送致するまでの時間と、検察官が勾留請求をするか判断する時間を合わせて、最大72時間程度が重要な初期段階となります。
この間は、事件の内容確認や取調べが進められるため、家族との面会が認められないことが多いです。
家族としては、「本人は無事なのか」「何を疑われているのか」「こちらから何かできないのか」と不安になるのが当然です。
しかし、逮捕直後に連絡がとれないこと自体は、制度上起こり得る状況です。
そのため、「本人が連絡してこないから何か隠しているのではないか」「家族を避けているのではないか」と考える必要はありません。
本人自身も、外部と自由に連絡できない状況に置かれていることが多いのです。
1-2 接見禁止が付くと家族との面会や手紙も制限される
逮捕から勾留に進んだ後であれば、通常は家族との面会が認められる可能性があります。
しかし、事件の内容によっては、裁判所が「接見禁止」という処分を付けることがあります。接見禁止とは、弁護士以外の人との面会や手紙のやり取りを制限する命令です。
接見禁止が付くと、たとえ配偶者、親、子どもであっても、本人と面会できないことがあります。警察署の窓口に行っても、「接見禁止が付いているため面会できません」と言われてしまいます。
接見禁止は、主に次のような事件で付くことがあります。
・本人が容疑を否認している事件
・証拠隠滅の可能性があると判断されている事件
・薬物事件や組織的な事件
・関係者との口裏合わせが疑われる事件
もっとも、接見禁止が付くかどうか、どの範囲で制限されるかは、事件の内容や捜査状況によって異なります。すべての事件で必ず接見禁止が付くわけではありません。
ただし、家族からすれば、接見禁止が付いているかどうか自体も分かりにくく、
「なぜ会えないのか」「いつになれば会えるのか」が見えないまま時間が過ぎてしまいます。
このような場合には、弁護士を通じて本人の状況を確認することが重要になります。
1-3 スマートフォンや電話を本人が自由に使えない
逮捕された本人と連絡がとれない大きな理由の一つが、スマートフォンや電話を自由に使えないことです。
逮捕されると、本人が持っていたスマートフォン、財布、鍵、身分証などの所持品は、
警察に預けられることになります。スマートフォンについては、事件との関係で証拠品として扱われる場合もありますし、証拠品でない場合でも、留置中に本人が自由に操作することは通常できません。
そのため、本人が家族に電話をかけたり、LINEやメールで連絡したり、SNSで状況を伝えたりすることはできません。
家族の側からすると、「なぜ一言も連絡してこないのか」と感じるかもしれません。
しかし、本人が連絡したくても、物理的に連絡手段を使えない状態に置かれている可能性が高いのです。
特に、普段からスマートフォンで連絡を取り合っているご家族ほど、急に既読が付かなくなったり、電話がつながらなくなったりすると強い不安を感じます。
このように、逮捕後に連絡がとれないことは、本人の意思というよりも、刑事手続上の制限によるものと理解しておく必要があります。
第2章 警察への問い合わせで分かること・分からないこと
2-1 収容先や安否を確認できる場合がある
家族が逮捕された可能性がある場合、まず気になるのは「本人がどこにいるのか」という点です。警察から家族に連絡が入っていれば、まずは連絡元の警察署に本人が収容されているかを確認することになります。
その場合は、警察署の代表番号に電話し、留置係などに取り次いでもらうことで、面会や差し入れの可否を確認できることがあります。
警察へ問い合わせる際には、次の情報を整理しておくとよいでしょう。
・本人の生年月日
・本人との関係
・警察から連絡があった日時
・心当たりのある事件や場所
・本人の住所や勤務先
ただし、電話では本人確認が難しいため、警察が詳細を教えてくれないこともあります。
実際に警察署へ行き、身分証明書を提示することで、収容の有無や差し入れの可否などを教えてもらえる場合もあります。
もっとも、警察から得られる情報には限界があります。
警察に問い合わせれば事件の全体像が分かる、というわけではありません。
2-2 事件の詳しい内容や本人の言い分は教えてもらえない
警察への問い合わせで、家族が最も知りたいのは、「本人は何をしたと疑われているのか」「本人は認めているのか、否認しているのか」「今後どうなるのか」という点だと思います。
しかし、警察が家族に対して、事件の詳細や取調べの内容、本人の供述内容を詳しく説明することは通常ありません。
たとえば、次のような情報は、家族であっても教えてもらえないことが多いです。
・被害者の氏名や連絡先
・本人が容疑を認めているかどうか
・取調べで何を話しているか
・証拠がどの程度あるか
・今後、勾留されるかどうか
・起訴・不起訴の見込み
これは、捜査の秘密を守る必要があるためです。
また、家族を通じて関係者に情報が伝わり、証拠隠滅や口裏合わせにつながることを防ぐ
目的もあります。「家族なのに教えてもらえないのか」と感じるかもしれません。
しかし、刑事事件では、家族であっても捜査情報を自由に知ることはできません。
そのため、警察への問い合わせだけで本人の状況を把握しようとすると、どうしても限界があります。
2-3 どこの警察署にいるか分からない場合の確認方法
本人が逮捕されたらしいものの、どこの警察署にいるか分からないというケースもあります。
この場合は、まず次のような警察署に問い合わせることが考えられます。
・事件が起きたと思われる場所を管轄する警察署
・本人の勤務先や学校の近くの警察署
・警察から着信があった番号の警察署
問い合わせる際には、「家族の〇〇と連絡がとれず、逮捕された可能性があるため、
収容の有無を確認したい」と丁寧に伝えるとよいでしょう。
ただし、警察署によって対応は異なります。電話で収容の有無を明確に教えてもらえないこともありますし、個人情報や捜査上の理由から回答を控えられる場合もあります。
このようなときも、弁護士に相談することで、収容先の確認や今後の対応について助言を受けられる可能性があります。
第3章 逮捕後に本人の状況を確認するには弁護士の接見が重要
3-1 弁護士であれば接見禁止中でも本人と会える場合がある
逮捕されて本人と連絡がとれない場合、状況を確認するために重要になるのが、弁護士による接見です。
接見とは、弁護士が逮捕・勾留されている本人と面会し、事件の内容や本人の状況を確認することをいいます。
刑事事件では、弁護人または弁護人になろうとする弁護士は、原則として、立会人なく本人と面会し、書類や物の授受をすることが認められています。接見禁止が付いている場合でも、弁護士との接見は通常、家族との面会とは別に扱われます。
そのため、家族が会えない状況でも、弁護士であれば本人と接見し、状況を確認できる場合があります。
ただし、弁護士の接見についても、捜査の必要性から日時や場所などが調整されることはあります。
3-2 本人の状況や家族への伝言を確認できる
弁護士が接見を行うことで、家族が知りたい情報を一定程度確認できる可能性があります。
たとえば、弁護士は本人から次のような内容を聞き取ります。
・逮捕された経緯
・容疑を認めているか、否認しているか
・取調べでどのような対応をしているか
・家族に伝えたいこと
・職場や学校に連絡してほしいこと
・差し入れてほしい物
・今後の弁護方針に関する希望
家族にとっては、「本人が無事なのか」「何を考えているのか」「家族に何を求めているのか」が分からない時間が一番つらいものです。
弁護士が接見して、「本人は落ち着いて話せていました」「体調に大きな問題はなさそうです」「家族にこのように伝えてほしいと言っていました」と報告できれば、ご家族の不安は大きく軽減されます。
もちろん、弁護士には守秘義務があるため、本人が家族に伝えないでほしいと話した内容まで無断で伝えることはできません。しかし、本人の了解を得た範囲で、家族に必要な情報を共有することは可能です。
3-3 取調べへの対応を早い段階で助言できる
弁護士の接見が重要なのは、家族への情報共有だけではありません。
逮捕直後の本人は、強い不安と緊張の中で取調べを受けることになります。何を話してよいのか、黙っていてよいのか、調書に署名してよいのか分からないまま、捜査機関の質問に答えてしまうこともあります。
特に注意が必要なのは、供述調書です。
供述調書とは、取調べで話した内容を警察官や検察官が書面にまとめたものです。
内容を十分に確認しないまま署名・押印してしまうと、後から「本当はそういう意味で言ったわけではない」と主張することが難しくなることがあります。
弁護士は、接見の場で次のような助言を行います。
・供述調書を確認する際の注意点
・分からないことを無理に認めないこと
・事実と違う内容には署名しないこと
・取調べで不当な誘導があった場合の対応
・今後の見通しと防御方針
逮捕直後の対応は、その後の処分や裁判に影響することがあります。
だからこそ、できるだけ早い段階で弁護士が本人と接見し、適切な助言をすることが大切です。
第4章 家族が本人のためにできる具体的な対応
4-1 現金や衣類などの差し入れを準備する
本人と直接連絡がとれなくても、家族ができる支援はあります。その一つが差し入れです。
留置場での生活は制限が多く、本人にとって精神的にも身体的にも負担が大きいものです。家族から必要な物が差し入れられることは、本人にとって大きな支えになります。
差し入れとして検討されることが多いものは、現金、衣類、眼鏡、書籍などです。
現金は、本人が留置場内で日用品などを購入するときに必要になるため、差し入れができると本人も役立ちます。
衣類については、警察署によって受け入れ基準が異なりますが、紐付きのパーカーやズボン、金具の多い服、フード付きの服などは受け取ってもらえないことがあります。
自傷防止などの観点から制限されるためです。
差し入れに行く前には、必ず警察署の留置係に連絡し、差し入れ可能な物、受付時間、必要な身分証明書などを確認しておきましょう。
4-2 職場や学校への連絡は慎重に行う
逮捕によって本人が仕事や学校を休むことになった場合、職場や学校への連絡をどうするかは非常に悩ましい問題です。
何も連絡しないまま無断欠勤・無断欠席が続けば、本人の社会生活に大きな影響が出る可能性があります。一方で、逮捕された事実を不用意に伝えてしまうと、職場や学校での立場が急速に悪化することもあります。実務上は、逮捕直後の段階では、まず詳細を伏せた形で欠勤・欠席の連絡をすることがあります。
たとえば、次のような表現が考えられます。
・一身上の都合により、しばらく出勤が難しい状況です。
・詳細が分かり次第、改めてご連絡いたします。
ただし、勤務先との関係、本人の職種、事件の内容、報道の可能性などによって、適切な対応は変わります。
特に、勤務先に対してどこまで説明するかは慎重に判断する必要があります。
弁護士に相談し、今後の身柄拘束の見通しを踏まえて、説明内容を検討することが望ましいです。
4-3 証拠隠滅を疑われる行動は避ける
家族が本人を心配するあまり、善意で動いたことが、結果的に本人に不利益を及ぼすことがあります。
特に避けるべきなのは、証拠隠滅を疑われる行動です。
たとえば、本人のスマートフォンやパソコンを勝手に操作する、メッセージや写真を削除する、関係者に連絡して口裏合わせのように受け取られるやり取りをする、被害者に直接連絡するなどの行動は危険です。
家族としては、「本人のために何かしたい」という気持ちから動いているかもしれません。しかし、捜査機関から見れば、証拠隠滅や関係者への働きかけと評価される可能性があります。その結果、接見禁止が付いたり、勾留が長引いたり、本人の立場が悪くなったりするおそれがあります。
被害者への謝罪や弁償についても、家族が直接行うのではなく、弁護士を通じて慎重に進めるべきです。被害者側が不安や怒りを感じている段階で不用意に接触すると、かえってトラブルが大きくなることがあります。
第5章 早期釈放や処分軽減のために弁護士ができること
5-1 勾留を避けるための活動を早期に行う
逮捕された本人のために弁護士が行う重要な活動の一つが、勾留を避けるための働きかけです。
勾留とは、逮捕後も引き続き身体拘束を続ける手続です。勾留が認められると、原則10日間、さらに延長されると最大でさらに10日間、身体拘束が続く可能性があります。
長期間仕事や学校を休むことになれば、本人の社会生活への影響は大きくなります。
家族の生活にも負担が生じます。
弁護士は、検察官や裁判官に対して、次のような事情を主張し、勾留を避けるための活動を行います。
・住所や勤務先が安定していること
・家族が身元を引き受ける意思を持っていること
・証拠隠滅のおそれが小さいこと
・被害者や関係者に接触しない体制を整えていること
・本人が取調べに応じる意思を示していること
勾留を避けられれば、本人は早期に釈放され、在宅事件として捜査が進む可能性があります。
もっとも、すべての事件で勾留を避けられるわけではありません。
事件の内容、証拠関係、本人の生活状況、前科前歴の有無などによって判断は変わります。
それでも、逮捕直後に弁護士が動くことで、早期釈放の可能性を高めるための準備ができます。
5-2 家族が身元引受人として協力する
早期釈放を目指すうえで、家族の協力が重要になることがあります。
特に、家族が身元引受人となり、本人を監督する意思を示すことは、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいことを説明するうえで有利な事情になる場合があります。
身元引受人とは、本人が釈放された後、生活状況を見守り、必要に応じて本人に注意を促す立場の人です。刑事事件で身元引受人になる場合には、単に「家族だから引き受ける」というだけでなく、具体的にどのように本人を監督するかを整理することが大切です。
たとえば、次のような事情を整理します。
・家族と同居するか
・仕事や学校にどう復帰するか
・被害者や関係者に接触しないようどう管理するか
・再発防止のために家族がどのように関わるか
・本人の通院や生活改善が必要な場合にどう支えるか
弁護士は、これらの事情を踏まえて身元引受書などを作成し、裁判官や検察官に提出することがあります。
家族の協力体制が具体的であればあるほど、「釈放後も適切に生活できる」という説明がしやすくなります。
5-3 被害者がいる事件では示談交渉を進める
暴行、傷害、窃盗、痴漢、交通事故など、被害者がいる事件では、示談交渉が重要になることがあります。
示談とは、被害者に謝罪し、被害弁償や慰謝料の支払いなどについて合意することです。
被害者から許しを得られたかどうかは、処分の判断に影響することがあります。
ただし、本人は逮捕されているため、自分で被害者と連絡を取ることはできません。
また、家族が直接被害者に連絡することも、慎重に考える必要があります。
被害者側が連絡を望んでいない場合や、感情的な対立が強い場合、家族からの連絡がかえって負担になることがあります。場合によっては、「圧力をかけられた」と受け取られるおそれもあります。
そのため、示談交渉は弁護士を通じて行うことが望ましいです。弁護士であれば、被害者の意向を尊重しながら、謝罪の意思や被害弁償の提案を冷静に伝えることができます。
示談が成立すれば、早期釈放や不起訴処分に向けた事情として考慮される可能性があります。
ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になる、必ず釈放されるとまではいえません。
事件の内容や証拠関係によって判断は変わります。
だからこそ、過度な期待を持つのではなく、弁護士と相談しながら現実的な見通しを確認することが大切です。
第6章 逮捕されて連絡がとれないときは早めに弁護士へ相談を
家族や大切な人が逮捕され、本人と連絡がとれない状況になると、ご家族は強い不安を抱えることになります。電話がつながらず、警察に問い合わせても詳しい説明を受けられず、面会もできないとなれば、「今、本人に何が起きているのか」と考え続けてしまうのは当然です。
ですが、逮捕直後の対応は、その後の身柄拘束の長さや処分に影響することがあり、ご家族だけで判断しようとすると、どこまで何をしてよいのか分からず、かえって本人に不利益な行動を取ってしまうこともあり得ます。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、刑事事件に関するご相談に対応するとともに、弁護士、社会保険労務士、税理士、司法書士、行政書士などが連携するワンストップ体制により、事件後に生じる生活面・職場面の不安にも幅広く対応できる体制を整えています。那珂川オフィスは、福岡県那珂川市および周辺地域に根ざした法律相談の窓口として、ご家族の不安に寄り添いながら、必要な対応を一つずつ整理してまいります。
逮捕されて本人と連絡がとれないときは、時間が経つほど不安が大きくなります。
状況が分からないまま悩み続けるのではなく、まずは弁護士に相談し、本人の状況を確認することから始めてください。
専門的な対応が必要な場合は、私たちNexill&Partnersグループへお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
刑事事件の示談は後から撤回できる?弁護士が教える法的効力と例外的に認められるケース

刑事事件において、一度は示談書にサインをしたものの、後になって「やはり納得がいかない」「相手に騙されていた」「約束が守られない」といった理由から、示談を撤回したいと考える場面があります。しかし、法的に成立した示談を後から覆すことは、簡単ではありません。本記事では、示談撤回が問題になる場面を整理しながら、刑事事件における示談成立後の効力と、例外的に争えるケースをわかりやすく解説します。
第1章 刑事事件における示談の成立と撤回の原則的ルール
1-1 なぜ示談成立後の撤回は難しいのか
刑事事件における示談は、加害者と被害者が、当該事件について一定の条件で解決することを合意するものです。法的には、民事上の和解契約として整理されるのが一般的であり、いったん有効に成立すれば、当事者はその内容に拘束されます。当該事件について示談の話し合いをしている段階であれば、まだ合意そのものが固まっていないため、条件の見直しや交渉の打ち切りも検討できますが、示談が成立した後は、当該事件について和解が成立しているため、一方の都合だけで元に戻すことは原則として認められません。
これは、当事者間で確定した合意内容を安定させるための原則です。もし「一度決めたことだが、やはり気が変わった」という理由だけで示談が無効になれば、示談金の支払いによる被害回復や、それを受けた刑事処分の決定といった法的な手続きがすべて不安定になってしまいます。そのため、示談成立後の撤回は一般的にハードルが高いのです。
1-2 示談書への署名捺印が持つ確定的な合意としての重み
示談が成立したかどうかは、最終的には個別事情によって判断されますが、実務上は示談書の存在が重要な意味を持ちます。民法上、契約は原則として書面がなくても成立し得るものの、示談書が作成され、そこに署名および押印されていれば、当事者がその内容を確認したうえで合意したことを基礎づける資料となるからです。とくに刑事事件の示談書には、対象となる事件、示談金の金額、支払時期、清算条項、そして被害者がそれを受け入れて加害者を許す(宥恕)という文言などが含まれ、後から争いになりやすい事項がまとめて記載されることが多く、書面化されていること自体が合意内容の明確化につながります。
そのため、署名した後に「内容をよく読んでいなかった」「本意ではなかった」と主張しても、客観的な証拠である示談書の効力を否定することは現実的に難しい場合が多いといえます。裁判所も特段の事情がない限り、署名捺印がある書面の内容を真実の合意として取り扱います。
第2章 法律上で認められる「示談の取り消し・無効」の正当な理由
2-1 重大な事実の勘違いがあった場合の錯誤
とはいえ、示談の成立後であっても、どのような場合でも争えないわけではありません。示談の前提となる核心的な事実について認識に誤りがあり、その誤りがなければ通常はその内容で合意しなかったといえる場合には、「錯誤」が問題となることがあります。
たとえば、被害の程度や損害の内容に関する事情について、示談時点で重大な誤認があったような場面です。
もっとも、錯誤が問題になるためには、何について、どのような認識違いがあり、それが示談の判断にどの程度大きな意味を持っていたのかを具体的に示す必要があります。示談金が思ったより少なかった、後から冷静になって不利に感じたという程度では、通常は足りません。
刑事事件の示談で錯誤を理由に効力を争うには、示談の前提にあった重要事実と合意との結びつきを丁寧に整理することが必要になります。
2-2 相手方の嘘や威圧があった場合の詐欺・強迫
示談に応じた経緯そのものに問題がある場合には、詐欺や強迫による取消しが問題になることもあります。典型的なケースとして、相手方から重要な事実について虚偽の説明を受け、それを信じて示談した場合や、不当な圧力を受けて自由な意思決定が妨げられたまま署名した場合です。
たとえば、被害者が示談に応じなければ不利益が生じるかのように誤った説明を受けた場合や、加害者本人や関係者から心理的圧迫を受け、落ち着いて判断できない状況で署名に至った場合などが考えられます。刑事事件では感情的な対立が強かったり、周囲の関係者が関与したりすることもあるため、形式的に署名があるというだけで、常に十分な意思決定があったとまでは言えない場合もあります。
ただし、ここでも重要なのは立証です。あとから振り返って不本意だったと感じていても、詐欺や強迫があったと認められるためには、具体的な発言、交渉時の状況、メッセージの内容、同席者の有無などを踏まえた客観的な裏づけが必要になります。
2-3 内容自体が著しく不当である場合の公序良俗違反
示談の内容が社会通念に照らしてあまりに不公正である場合、民法90条の公序良俗違反として無効とされる場合があります。例えば、重大な被害が生じているにもかかわらず、事情を十分に理解していない被害者に対して、極端に低い金額で広範な権利放棄を求めるような内容で合意がなされた場合などが問題となり得ます。
もっとも、示談は当事者が互いに譲歩しながら当該事件について終局的な解決を図るものですから、後から見て条件がやや不均衡に感じられるというだけで、直ちに公序良俗違反になるわけではありません。示談金の多寡のみで判断されるものでもなく、合意に至る経緯、被害の内容、条項の範囲などを総合的に考慮して判断されます。
第3章 示談の際の約束が守られない場合には追加で何らかの処罰や対応を求めることができるのか
示談が成立したにもかかわらず、加害者が約束した示談金を支払わない、あるいは謝罪や接触禁止など、示談時に取り決めた条件を守らないというケースも起こり得ます。
刑事事件においては、示談が成立しているかどうかだけでなく、その内容が実際に履行されているかどうかも重要な判断要素となりますので、示談金が支払われていない場合や、約束された対応が行われていない場合には、被害者としては、改めて処罰を求める意思を警察や検察官に伝えることが可能です。
もっとも、刑事事件としてどのように処理されるか、あるいは起訴されるかどうかは、最終的には捜査機関の判断によるため、被害者の意向のみで結論が決まるものではありません。ただし、示談が履行されていないという事情は、処分の判断に影響を及ぼす可能性があります。
この点、示談書の中に、「示談金が支払われた場合には刑事処罰を求めない」というように、示談金が支払われて始めて処罰を求めないという記載にしておくと、実際に示談金が払われない際には、刑事処罰が認められやすいと考えられています。
なお、示談金の支払いが行われないことを理由に、追加で賠償を求めることができるかという点については、通常示談書には清算条項が記載されているため、一回合意をした後で追加での損害賠償請求はできません。
この場合は、示談書に記載されている金額について回収をするべく、訴訟を行い確定判決を得たうえで、強制執行を行うことになります。
第4章 示談を撤回できるか悩んでいる場合に整理すべきポイント
4-1 後悔なのか、法的に争える事情なのかを切り分ける
示談を撤回したいと感じる理由は様々ですが、まず重要なのは、その理由がどのような性質のものかを整理することです。示談金が低かったと感じる、もっと慎重に判断すべきだったと思うといった事情は珍しくありませんが、これらは基本的に結果への不満にとどまると評価されやすく、こうした事情だけで示談の効力を覆すことは難しいと考えられます。
一方で、示談の前提となる事実に重要な誤りがあった場合や、相手方の説明内容に問題があった場合、あるいは十分に検討できない状況で合意してしまった場合には、法的に示談の効力を争う問題として検討できる可能性があります。
まずは、自身の状況がどちらに当たるのかを冷静に整理することが大切です。
4-2 問題となっているのは示談の内容か、履行か
示談後に生じるトラブルは、大きく分けて「合意内容そのものの問題」と「合意後の履行の問題」に分かれます。
たとえば、示談内容自体に納得できない理由がある場合には、錯誤や詐欺といった観点から示談の効力を争うことが問題となります。一方で、示談金が支払われないといった場合には、契約の履行の問題として対応を検討することになります。
まずは、問題がどちらにあるのかを整理することが大切です。
4-3 判断に迷う場合は早い段階で専門家に相談する
ここまで見てきたように、示談の撤回が可能かどうかは個別の事情によって判断が分かれます。示談の内容、成立に至る経緯、交渉時の状況、履行の有無など、複数の要素を踏まえて検討する必要があります。
特に、錯誤や詐欺といった主張を検討する場合では、法的な要件を踏まえた整理が不可欠です。ご自身の状況がどの類型に当たるのかを正確に把握し、適切な対応を検討するためには、早い段階で専門家に相談することが望ましいといえます。
第5章 【FAQ】示談の撤回を検討する場面でよくある疑問
Q1. 口頭での合意でも示談として法的効力が生じるのでしょうか?
A1. 口頭合意でも原則として成立します
示談は契約の一種であるため、必ずしも書面を作成しなくても、当事者間で合意が成立すれば法的効力が認められる可能性があります。ただし、口頭のみの場合には合意内容や成立時期について争いになりやすく、後から立証することが難しくなる点に注意が必要です。トラブルを防ぐためにも書面化しておくことが望ましいといえます。
Q2. 示談金を受け取った後でも、追加で請求することはできますか?
A2. 原則として追加請求は難しい場合が多いといえます
示談金の支払いによって当該事件について解決が図られたと評価される場合、後から追加の請求を行うことは制限されるのが通常です。特に示談書において、将来の請求を行わない旨の合意が含まれている場合には、その効力が問題となります。もっとも、当初の合意の前提となっていた事情に大きな変化がある場合などには、個別に検討が必要となることもあります。
Q3. 示談成立後に相手と連絡が取れなくなった場合、どう対応すればよいですか?
A3. 法的手続で対応を検討します
示談成立後に相手方と連絡が取れなくなった場合でも、示談自体の効力が直ちに失われるわけではありません。支払い義務が履行されていない場合には、内容証明郵便による催告や、支払督促・訴訟などの法的手続を通じて対応することが考えられます。相手の所在や資力の状況によって対応が変わるため、具体的な手段については個別に検討する必要があります。
Q4. 示談書に記載されていない事項については、別途請求できますか?
A4. 記載内容と合意範囲次第で変わります
示談書に記載されていない事項であっても、それが示談の対象に含まれていると解釈される場合には、追加の請求が制限される可能性があります。一方で、示談の対象範囲が限定されている場合や、当初想定されていなかった別個の損害であると評価できる場合には、別途請求が認められる余地もあります。最終的には、示談書の文言や合意の趣旨を踏まえて判断されます。
Q5. 示談書を自分で作成した場合でも有効になりますか?
A5. 形式が整っていれば有効となります
示談書は当事者間の合意内容を明確にするための書面であるため、必ずしも専門家が作成しなければ無効になるわけではありません。もっとも、条項の書き方や表現によっては、意図しない解釈がなされるおそれがあります。特に清算条項や支払条件など重要な部分については、内容を十分に確認したうえで作成することが重要です。
第6章 一度成立した示談の効力でお悩みの方へ
刑事事件における示談は、一度成立すると原則として、後から一方的に撤回することは容易ではありません。本記事で見てきたとおり、示談の効力を争うためには、単なる後悔や不満ではなく、錯誤や詐欺といった合意の前提に関わる問題や、債務不履行といった履行段階の問題など、法的に整理可能な事情があるかどうかを検討する必要があります。
また、示談の効力に関する問題は、個別の事情によって結論が大きく分かれる分野です。示談書の内容、合意に至る経緯、交渉時の状況、履行の有無などを踏まえたうえで、どのような対応が適切かを整理することが重要になります。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、刑事事件における示談実務を含め、個別の事情に応じた対応を行っております。示談の効力や対応にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
社内資料で著作権侵害に?

会社にお勤めされている方などは、社内でのプレゼン資料や、会報など、外部に公開することを予定されていない、資料を作成される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった、資料を作成する際に、ネットなどでちょうどいい写真などを見つけて、資料に貼り付けたり、社内の資料であるからとして、キャラクター等を使った資料を作られてはいないでしょうか。
今回は、そうした社内資料を作成する際の著作権についての注意点をご説明させていただきます。
まず、創作者(著作権者)の権利(著作権)を保護するために規程されている法律に著作権法があります。
そして、著作権者には、著作物の複製や利用に関する独占的な権利が認められており、第三者が著作物を利用する場合には、原則として、著作権者の許諾が必要となり、許諾を得るために利用料(ライセンス料)を支払う必要があることが多いです。
もっとも、例外的に、他人に著作権があるものであっても、「私的利用」すなわち、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」場合には、著作権者の許可を得ることなく著作物を利用(複製)することができます。
では、社内でのみ利用す資料に著作物を利用する場合が、この「私的利用」に該当するのでしょうか。

この点については、裁判例があり、いかに内部でのみ利用する資料であっても、企業が著作物を利用する場合には、「私的利用」には該当せず、著作権者の許諾を得る必要があると判断しています。
このように、企業の場合には内部資料であっても「私的利用」とは認定されません。
内部資料であっても著作権者に無許可で著作物を利用してしまった場合には利用料相当額の損害賠償を支払う必要があります。
もっとも、他人の著作物を利用する場合、著作権者の許可を得る以外には、著作権法第32条1項に規定される「引用」の要件を満たす必要があり、会社の内部資料等で使用する場合にはこの引用目的で利用する場合がほとんどであると思います。
その場合には、引用の必要性があり、出典を明示するなど、厳密な要件が必要になりますので、資料を作成する際には、ぜひ弁護士にご相談いただいた上で、適法に作成されることをおススメします。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
保釈中の被告人にGPSの装着

皆さんも、刑事事件のニュースで、保釈という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
保釈とは、刑事事件において起訴された被告人が保釈金を支払うことで、勾留されている状態から釈放される制度で、刑事事件訴訟法に規定されています。
保釈により、逮捕、勾留されていた人も、釈放され日常生活に戻ることができますが、後日行われる刑事裁判(公判といいます。)に出廷しなかったり、逃走してしまった場合には、再び勾留されることになり、また、支払った保釈金も没収されてしまうことになります(他方、きちんと公判に出廷している場合には、保釈金は後日返金されることになります。)。
このように、保釈金を担保として逃亡することを防いでいた保釈制度ですが、皆さんもご記憶に新しいと思いますが、日産の元会長であるカルロス・ゴーンが保釈中に海外に逃亡してしまう事件が起きたように、保釈金のみでは、釈放された被告人の逃亡を防ぐことができない状態になりました。

そのような中、先日、国会で、改正刑事訴訟法の法案が衆参両議院で可決されました。
その改正の1つとして、裁判所が保釈許可時に海外逃亡を防ぐ必要があると判断すれば、被告にGPS端末の装着を命令できるようになりました。
そのうえで、空港や港湾施設の周辺といった「所在禁止区域」への立ち入りや、端末の損壊・取り外しを行った場合、端末が違反を検知して裁判所に通知し、身柄が確保されることになります。
このように被告人がGPSの装着をすることにより、逃亡の恐れはなくなることにはなりますが、他方で、被告人の位置情報が把握されることによりプライバシーなどの人権侵害が起こる可能性があります。
改正刑事訴訟法では、被告人のプライバシーに配慮するために、裁判所や検察官は、違反行為が行われない限りGPSによる位置情報を確認することはできないとされているようです。
アメリカの一部の州では、性犯罪等一定の犯罪を起こした人に対し、居住する場所を制限し、かつ、GPSの装着を義務付けるなど、再犯を防ぐために課しているところもあります。

犯罪をなくすという必要性と、犯罪を犯してしまった人の人権というどちらも重要な利益の衝突場面で、どういった方策が正解なのか非常に難しい問題です(よく司法試験の憲法の問題でも出題されることが多い分野です。)。 時代の変化に伴い、新しい制度や法律が制定されますが、人権を過度に侵害したものではないかという点は、法律家として常に意識していきたいと思います。
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何も言わなくても詐欺罪??
先日、沖縄の那覇空港にある30分無料の空港駐車場で、不正に駐車料金を免れようとしたレンタカー会社の従業員らが詐欺罪で逮捕されたニュースを目にしました。
どうやら、禁止されている空港の駐車場でレンタカーの引き渡しを行い、レンタカー利用者の人には別の車で直前に駐車場に入った駐車券を渡し、従業員らは窓口で「駐車券をなくした。30分以内である。」などと嘘を伝えて駐車料金の支払を免れたという事で逮捕されたとのことです。
こうした駐車場を利用したレンタカー会社の不正な受け渡しは横行しているようで、そうした不正が行われると空港の駐車場がすぐに満車になってしまうそうです。
私も子どもが飛行機を見たいというので、たまに福岡空港の駐車場を使うのですが、よく駐車場が埋まっていることがあり、そういった不正で駐車場が利用されているのであれば迷惑なのでやめて欲しいと思います。

上記ニュースの従業員は、詐欺罪を理由に逮捕されています。
詐欺罪が認められるためには、文字通り人を騙す行為(法律用語で「欺罔(ぎもう)行為」といいます。)が必要になります。
この欺罔行為についてですが、人を欺く行為と聞いて一般の方が思い浮かぶのは、投資詐欺のように「必ず儲かるから」「元本保証をするから」などと言って、騙して投資を促す積極的な行為を想定すると思います。
上記の事件での欺罔行為も、ずっと長時間レンタカーを止めていたにもかかわらず「30分の利用である」と虚偽の事実を積極的に告げているため、この類型に該当します(積極的詐術行為)。
詐欺罪は、このような積極的な詐術行為だけでなく黙示的な詐術行為の場合にも成立します。
例えば、1円もお金をもっていない状態で飲食店に行き、注文をし料理を食べる行為も詐欺罪に該当します(いわゆる「無銭飲食」という行為です。)。
この行為は、上記のように積極的にだましてはいませんが、飲食店で料理を注文するという行為は、料理の代金を払うという意思を表示していることになります。
しかし、1円も持っていない状態であること知りながら注文するということは本当は払う意思が無いのにもかかわらず代金を払う意思を表示しているため、相手を騙しているということになります(このような詐欺を黙示的詐術行為といいます。)。
同じ類型の行為として、生活苦などで複数の消費者金融からお金を借りている多重債務者の方が、自転車操業の状態も行き詰まり返すことができないという状況を知りながらローンが通る消費者金融からお金を借りる行為についても、返済する意思がないにもかかわらずお金を借りる(返すという意思を表示していることになります)という行為も詐欺罪に該当することになります。
債務整理をしていて多重債務というだけで詐欺罪で検挙されるというケースはあまり多くはありませんが、例えば他の消費者金融への借金額や自身の収入額を大幅に嘘をついていた場合などと合わさって詐欺罪で被害届が出される可能性はゼロとは言い切れませんので、借金で悩まれている方は早めに弁護士へ相談することをお勧めします。
そして、上記の黙示的な詐術行為の中には何も言わなくても詐欺罪になる場合もあります。
釣銭詐欺という状況なのですが、レジでお金を払い店員が釣銭を間違えていると知りながら、何も言わずにそのままお釣りを多く受け取る行為も詐欺罪に該当すると言われています。

客としては、店員が釣銭を多く払おうとしているときにはその旨を指摘する義務があるとして、その義務を怠り何も言わずに釣銭を受け取る行為は詐欺に該当するとされているのです。
釣銭を多くもらってラッキーという経験をしたことがある人も少なくないのではないかと思いますが、現に釣銭詐欺で逮捕された事例もあるため注意が必要です。
なお余談ですが、釣銭詐欺が成立するためには釣銭が間違えていることを受け取る前に気づいている必要があり、釣銭を受け取った後で釣銭が間違っていることに気づいたがそのままにしていたというケースでは詐欺罪は成立せず、民事上の返還義務だけが残ります。
このように色々な行為が詐欺罪に該当する行為となるのですが、詐欺罪の立証は騙す意思(故意)があったという内心の状態を立証することが非常にハードルが高いと言われていますので、詐欺被害に遭われたという方は是非お気軽に弁護士にご相談ください。
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郵便局員が郵便を破棄!!
~損害賠償請求は認められる?~

皆さんは年賀状は書かれましたか?
私は、昨年に第2子の長女が産まれたため、長女と長男の写真の年賀状を作成しました。

年々、年賀状の郵送枚数は減っているそうです。
毎年年末が近づくと宛名を書いたりするのが億劫になってしまいますが、1月1日に年賀状が来ていると嬉しくなるので、これからも続けていこうと思います。
そんな年賀状だけでなく、日々の手紙や郵便を配達してくれるのは郵便局員の方ですが、日本の郵便の制度はとても信頼性が高く、送った郵便が届かないということを経験した人はあまりいないのではないでしょうか。
しかし、先日大阪にて、配達されるはずであった手紙や封書7,000通を雑木林に捨てたとして、郵便局員が郵便法違反で逮捕されたというニュースを目にしました。

逮捕された郵便局員は、「配達するのが面倒だった」などと容疑を認めており、また、昨年の11月ころから郵便物を自宅に持ち帰っていたと話しているようで、自宅には、約4,000通の郵便物があり、その中には大切なコロナワクチンの接種券などもあったそうです。
弁護士という仕事から、裁判所や相手方に書面を郵送したり、戸籍を集めたりなど、毎日多くの郵便物を送付していますが、重大な個人情報が含まれた書面もあるため、もし自分の地域で同じことが起こったらと思うととても恐ろしいです。
そういったことがないように、郵便に関することを規定した郵便法では、郵便を破棄した人等に刑事罰を科しているので、あまりこういったことが頻繁に起きることはないと思いますが、過失で郵便局員が紛失させてしまうこともあるかもしれまん。
そういった場合に、郵便局などに対し損害賠償をすることができるのでしょうか。
この郵便に関する損害賠償についても、郵便法に定められており、書留郵便や、代金引換郵便で代金を回収せずに引き渡した場合や、内容証明などの記録郵便物に限定して賠償請求が認められています。
損害賠償が認められる郵便物が限定されている理由としては、無制限に賠償を認めることになると、郵便料金を引き上げることや、迅速な配達が実現しなくなるためであると言われています。
上記の事件のようにワクチン接種券が届かない場合や、裁判所からの書面が届かないなどとなると、様々な人が困ることになるため、郵便局の方にはきちんと郵便物の配達をお願いしたいですね。
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実行犯ではないのに処罰される?
~共謀共同正犯について~

2021年9月24日、福岡地方裁判所にて、特定危険指定暴力団の工藤会のトップ2名に対し、死刑判決と無期懲役判決が言い渡されました。
判決の言い渡された2名は、いずれも自分が実行犯ではない殺人事件について、「共謀共同正犯」として処罰されています。
本日は、この一般の方にあまりなじみがない、「共謀共同正犯」についてご説明させていただきます。

まず犯罪は大きく分けると、全て単独で行う「単独犯」と複数の人が犯罪に関与している「共犯」に分別されます。
そして、「共犯」には説明しますが、「共同正犯」と「幇助(ほうじょ)」「教唆犯」(2つを併せて「従犯(じゅうはん)といいます。」)に区別されます。
共同正犯は、刑法60条に「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と規定されており、共同して犯罪を実行した場合には2人とも同じ責任を負うことになります。
幇助犯とは、共同正犯以外の行為で正犯の犯罪行為を容易にする行為を行ったこと指し、刑法62条1項で「正犯を幇助した者は、従犯とする」と規定されており、幇助犯も処罰の対象になります。
また、教唆犯とは、他人をそそのかして、犯罪を実行させる罪であり、刑法61条1項で「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。」と規定されており、教唆犯も処罰の対象となります。
そもそも刑罰という重大な不利益を被る場面では、個人が自己の行為によって犯した結果についてのみ処罰されるべきであるという考え(これを「個人主義」といいます。)が採用されており、共同正犯は、個人主義の例外であり、共犯者が心理的物理的に影響を及ぼし合う関係になることで犯罪結果が生じやすくなるため共犯の場合には双方とも結果を負う形になります。

そして、共同正犯は上記刑法60条のとおり「共同して犯罪を実行した」と規定されており2人以上の人が共同して犯罪を行うことが予定されていますが、判例上、実行行為を行っていなくても、「2人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、かつ自己の行為を他人に補充するという意味で、緊密な相互利用相互補充関係があれば」共謀共同正犯として、結果についても責任を負うとされています。
これにより、集団詐欺等の犯罪集団などにおいても刑罰を科すことができるようになったのですが、共謀の事実が認定ができなければ共謀共同正犯を認定することができません。
今回の裁判でも、工藤会のトップ2人が共謀した事実に関する直接的な証拠が何ら存在しなかったため、間接的な事実を積み重ねて共謀の事実が認定されています。
本件については、被告人側から福岡高等裁判所へ控訴がされているため、控訴審においてどのような判決がなされるか、今後も注目していきたいと思います。
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