別居中の不貞行為で慰謝料は請求できる?離婚時への影響と婚姻関係の破綻について弁護士が解説

別居中の配偶者に不貞行為があった場合、「別居していたから慰謝料は取れないのでは」と思うかもしれません。しかし、別居中であっても、不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していなければ、慰謝料請求を検討できる可能性があります。本記事では、別居中の不貞行為が離婚や慰謝料にどう影響するのかを弁護士が解説します。
第1章 別居中に不貞された場合でも、慰謝料請求は可能
1-1 別居中だからといって不貞慰謝料が当然に否定されるわけではない
別居中であっても、法律上の婚姻関係が続いている以上、不貞行為に対する慰謝料請求は可能です。
もっとも、別居中の不貞行為では、通常の同居中の不貞と比べて、「その時点で夫婦関係がどうなっていたのか」が争点になりやすいです。単に別居していたというだけで慰謝料請求が否定されるわけではありませんが、反対に、別居中であっても必ず慰謝料が認められるともいえません。
1-2 離婚時に影響するのは主に慰謝料と離婚原因の場面
別居中の不貞行為が離婚に影響する場面としては、主に次の3つが考えられます。
・不貞相手に対する慰謝料請求
・不貞をした側から離婚を求められた場合の対応
たとえば、別居後であっても、不貞行為によって夫婦関係が決定的に悪化し、離婚に至ったといえる場合には、配偶者に対して慰謝料請求を検討することがあります。また、不貞相手が、相手に配偶者がいることを知っていた、または通常であれば知ることができたといえる場合には、不貞相手に対する慰謝料請求も問題になります。
さらに、不貞をした配偶者の側から離婚を求められた場合には、夫婦関係を壊した側からの離婚請求ではないかという形で争点になることもあります。
1-3 財産分与・親権・養育費とは分けて考える必要がある
別居中の不貞行為があったからといって、離婚条件のすべてが当然に有利になるわけではありません。
特に、財産分与、親権、養育費は、不貞慰謝料とは判断の枠組みが異なります。財産分与は、基本的には夫婦が婚姻中に築いた財産を清算する制度です。不貞をされた側だから財産分与が大きく増える、不貞をした側だから当然に財産分与を受けられない、という関係ではありません。
親権についても、不貞行為をしたことだけで直ちに親権者として不適格と判断されるわけではありません。子どもの監護実績、生活環境、子どもの意思、今後の養育体制など、子どもの利益を中心に判断されます。
そのため、別居中の不貞行為をめぐる問題では、慰謝料の問題と、財産分与・親権・養育費の問題をそれぞれ分けて整理することが大切です。
第2章 別居中の不貞では、「不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたか」が重要になる
2-1 不貞行為の時点で夫婦関係が続いていれば、慰謝料請求の対象になり得る
別居中の不貞行為で慰謝料請求を検討する場合、最も重要なのは、不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたかどうかです。
ここでいう破綻とは、夫婦としての共同生活を回復する見込みがなく、実質的に婚姻関係が終わっていると評価できる状態を指します。
別居はしているものの普段の生活費や子供のことについて日々連絡を取り合っている、同居再開について話し合いをしていたなどの場合は、婚姻関係が完全に破綻しているわけではないとして不貞に対する慰謝料請求を検討できるといえます。
2-2 不貞行為の時点ですでに婚姻関係が破綻していた場合、慰謝料請求は難しくなる
一方で、不貞行為の時点ですでに婚姻関係が破綻していたと判断される場合には、慰謝料請求が難しくなることがあります。特に不貞相手への慰謝料請求では、不貞行為の時点で夫婦関係がすでに破綻していたかどうかが重要な争点になります。
なお、夫婦関係の破綻の有無については、別居の期間や理由、日々の夫婦間のやり取りやお子さんとの関わりなどから総合的に判断されるため、相手が「破綻していた」と言っていることだけを理由に夫婦関係が破綻しているといえるわけではないです。
2-3 不貞がいつ始まったかも慰謝料請求に関係します
別居中の不貞行為に対する慰謝料請求では、不貞関係がいつから始まっていたのかも重要です。
たとえば、別居前から不貞関係があり、それが原因で別居に至った場合と、長期間の別居が続き離婚協議も進んでいる最中で不貞が始まった場合とでは慰謝料請求の見通しや金額が変わってきます。
第3章 婚姻関係が破綻していたかを判断するときに見られやすい事情
3-1 別居期間がどのくらい続いていたか
婚姻関係の破綻を判断する際、別居期間は重要な事情の一つです。
一般的には、長期間別居している場合、夫婦としての共同生活が失われていたと評価される方向に働きやすくなります。特に、何年も別居が続き、生活も完全に別々で、離婚に向けた話し合いも進んでいたような場合には、婚姻関係が破綻していたと主張されやすいでしょう。
一方で、別居期間が短い場合や、冷却期間として一時的に別居していたような場合には、別居していたというだけで破綻と評価するのは早いことがあります。
3-2 離婚協議や離婚調停がどこまで進んでいたか
離婚協議や離婚調停の進行状況も、婚姻関係が破綻していたかを判断するうえで重要です。
すでに離婚条件について具体的に話し合っていた、離婚届の提出を前提に財産分与や親権について協議していた、離婚調停が申し立てられていたといった事情があれば、夫婦関係が相当程度悪化していたことを示す事情になります。
もっとも、一方が離婚したいと言っていただけで、他方は離婚を拒否していたという場合には、直ちに婚姻関係が破綻していたとはいえません。夫婦の一方が離婚を希望していたとしても、他方が関係修復を望んでいた場合や、実際には離婚条件の話し合いが進んでいなかった場合には、破綻の有無を慎重に見る必要があります。
3-3 夫婦間の連絡や生活上のつながりが残っていたか
別居中であっても、夫婦間に生活上のつながりが残っているかどうかというのも重要なポイントです。
たとえば、次のような事情です。
・子どもの行事や進学について相談していた
・将来の生活について話し合っていた
・同居再開について連絡を取っていた
・家族として会う機会が残っていた
一時的に別居はしていたものの、夫婦としての関係修復を前提とした連絡があった場合や、お互いの生活を完全に切り離していないような場合には、婚姻関係が完全には破綻していなかったということを主張できる材料になり得ます。
3-4 不貞が別居や離婚の原因になったか
不貞行為が、別居や離婚の原因になったかどうかも重要です。
たとえば、不貞行為が発覚したことで夫婦関係が悪化し、別居に至った場合には、不貞が婚姻関係を壊したという主張がしやすくなります。また、もともと夫婦仲に問題があったとしても、不貞行為が決定打となって離婚を決意した場合には、慰謝料請求の余地があります。
反対に、不貞行為より前から夫婦関係が実質的に終わっており、別居も長期間続き、双方が離婚を前提に生活していた場合には、不貞行為と離婚との関係が薄いと判断される可能性があります。
第4章 別居中の不貞で慰謝料請求できる相手
4-1 不貞をした配偶者に対する慰謝料請求
別居中の不貞行為について、まず検討するのは、不貞をした配偶者に対する慰謝料請求です。
配偶者に対する慰謝料請求では、不貞行為そのものによる精神的苦痛や、不貞行為によって婚姻関係が破綻し、離婚に至ったことによる精神的苦痛が問題になります。
離婚協議の中では、財産分与、親権、養育費、婚姻費用などとあわせて、慰謝料の有無や金額を話し合うことが多いです。ただし、財産分与と慰謝料は性質が異なるため、相手から「財産分与で多めに渡すから慰謝料はなしにしてほしい」と言われた場合には、その内容が本当に妥当かを慎重に確認する必要があります。
4-2 不貞相手に対する慰謝料請求
不貞相手が、相手に配偶者がいることを知っていたもしくは通常であれば知ることができたといえる場合は、配偶者だけでなく、不貞相手に対しても、慰謝料請求を検討できます。
なお、不貞相手に慰謝料を請求する場合には、「不貞行為そのものを理由とする慰謝料」と「不貞を理由に離婚したこと自体を理由とする慰謝料」を混同しないこともポイントになり、不貞行為そのものを理由とする慰謝料請求だけでなく、離婚したこと自体についてまで責任を問えるかは別問題となります。
4-3 配偶者と不貞相手の両方に請求する場合の注意点
配偶者と不貞相手の両方に慰謝料請求を行うこともできますが、同じ精神的損害について二重取りができるわけではありません。たとえば、配偶者から相当額の慰謝料を受け取った場合には、不貞相手に対して請求できる慰謝料の金額が調整される可能性があります。
また、配偶者と不貞相手の両方に請求できる可能性がある場合、どちらに先に請求するかという点も検討が必要です。
離婚条件を優先するなら配偶者との協議を先に検討する
たとえば、離婚の成立や条件の話し合いを優先したい場合には、まず配偶者との間で、慰謝料、財産分与、親権、養育費などをまとめて協議した方が進めやすいことがあります。不貞相手への請求を先に行うことで、配偶者との対立が強まり、離婚協議全体がこじれる可能性があるためです。
不貞の証拠や交際開始時期を重視するなら不貞相手への請求を先に検討する
一方で、不貞相手に対する請求を早めに検討した方がよいケースもあります。たとえば、配偶者と不貞相手が口裏を合わせるおそれがある場合、時間の経過によってLINEやSNSの投稿などの証拠が消えてしまうおそれがある場合、不貞相手への請求や交渉を通じて、不貞の事実や交際開始時期を明らかにしたい場合などです。
第5章 別居中の不貞で慰謝料請求を検討する場合に重要な証拠
5-1 不貞行為があったことを示す証拠が必要
別居中の不貞慰謝料を請求する場合でも、まずは不貞行為があったことを示す証拠が必要です。
単に親しくしている証拠だけでなく、肉体関係を推認できる証拠があるかが重要になります。
たとえば、ラブホテルに出入りしている写真や動画、不貞相手の自宅に宿泊していることが分かる資料、肉体関係をうかがわせるメールやSNSのやり取りなどが証拠になり得ます。
特に、別居中に配偶者が不貞相手と同棲している場合、その事実は不貞行為を推認させる重要な事情になります。
5-2 不貞関係が始まった時期を示す証拠
別居中の不貞慰謝料では、不貞行為そのものの証拠だけでなく、それがいつ始まったのかを示す証拠も重要となります。
まずは、次のような資料がないかを確認します。
・プレゼントや旅行などの写真
・不貞関係の開始時期をうかがわせるSNS投稿
・知人や関係者からの情報
直接的な証拠がなくても、複数の事情を組み合わせることで、別居前から関係が続いていたと推認できる場合があります。
5-3 不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していなかったことを示す証拠
別居中の不貞行為では、その時点で婚姻関係が破綻していなかったことも重要です。
たとえば、次のような資料がある場合には、夫婦関係が完全には終わっていなかったことを示す事情になり得ます。
・生活費等の支払記録
・家族で会っていた写真や予定表
・別居が一時的なものであることを示すやり取り
・離婚ではなく関係修復を前提にした話し合いの記録
特に、別居直後の不貞や、別居理由そのものが不貞に関係している場合には、早めに証拠を整理しておくことが重要です。
第6章 別居中の不貞慰謝料に関するよくある質問
Q1. 別居中に相手が不貞相手と同棲している場合、慰謝料は増えますか?
A1. 増額事情になる可能性があります
相手が不貞相手と同棲している場合、その関係が一時的なものではなく、継続的・安定的な関係であることを示す事情になり得ます。また、不貞相手との同棲によって、夫婦関係の修復がさらに難しくなったといえる場合には、慰謝料額の判断で考慮される可能性があります。
ただし、慰謝料額は婚姻期間や別居の経緯など、さまざまな事情を総合的にみて判断されるため、同棲しているから必ず慰謝料が大きく増える、というわけではありません。
Q2. 別居後に初めて不貞関係が始まった場合でも、慰謝料は取れますか?
A2. 請求できる余地はあります
別居後に不貞関係が始まった場合でも、不貞関係が始まった時点で婚姻関係が破綻していなかったといえるのであれば、慰謝料請求を検討できる可能性があります。たとえば、冷却期間として別居していた、復縁に向けて話し合っていた、生活費や子どものことで夫婦としての連絡が続いていた、といった事情がある場合、別居後に始まった不貞関係が夫婦の修復を難しくさせたと判断され、慰謝料請求の対象になる可能性があります。
Q3. 離婚せず別居を続ける場合も、不貞慰謝料は請求できますか?
A3. 請求できる場合があります
離婚しない場合でも、不貞行為によって精神的苦痛を受けたとして、慰謝料請求を検討できることがあります。もっとも、離婚せずに別居を続ける場合や、将来的に同居再開・関係修復を考えている場合には、慰謝料請求の進め方に注意が必要です。不貞相手に請求することで、配偶者との関係がさらに悪化したり、別居解消に向けた話し合いが難しくなったりすることがあるためです。
また、離婚に至った場合と比べると、慰謝料額は低く評価される傾向があります。離婚しない場合の慰謝料請求では、法的に請求できるかだけでなく、今後も別居を続けるのか、同居再開を目指すのか、最終的には離婚も視野に入れるのかを整理したうえで判断する必要があります。
第7章 別居中の不貞で悩んだら、早めに弁護士へ相談することが大切です
別居中に不貞行為があった場合に慰謝料請求ができるかどうかの重要な判断ポイントになるのは、不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたといえるかどうかです。
特に、相手が夫婦関係はすでに破綻していたと主張している場合は、その言い分だけで判断せず、早めに弁護士に相談することをおすすめします。また、不貞相手と同棲している場合、別居後の証拠しか手元にない場合、離婚条件と慰謝料請求を同時に整理したい場合にも、ケースごとの状況整理や証拠の収集などをふまえたうえで法的な見通しを立てる必要があるため、自己判断だけで進めることは避けた方がよいでしょう。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、離婚に関する幅広い相談に対応しています。別居中の不貞行為について、慰謝料を請求できるのか、離婚時にどのような影響があるのか不安がある場合は、早めにご相談ください。
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第2章 まず確認すべきは、再婚相手と子どもが養子縁組をするかどうか
子連れ再婚では、再婚相手と子どもが一緒に生活するため、法律上も親子のように扱われると考えがちです。しかし、再婚と養子縁組は別の手続です。
2-1 再婚しただけでは、再婚相手は子どもの法律上の親にはならない
自分が単独親権者として子どもを育てており、その後に再婚した場合でも、再婚相手は当然には子どもの親権者になりません。
つまり、学校行事に参加したり、日常的に子どもの世話をしたりしていても、法律上の親権者として重要事項を決められる立場になるわけではありません。法律上の親子関係を作るには、原則として養子縁組が必要です。
2-2 養子縁組をする場合としない場合で、親権者の整理が変わる
養子縁組をしない場合、現在の親権関係は基本的にそのままです。現在、自分が単独親権者であれば、再婚後も自分が親権者であり、再婚相手は親権者にはなりません。
一方、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が生じます。連れ子養子の場合には、養親となった再婚相手と、実親であるあなたが親権者になります。
第3章 再婚相手と養子縁組をする場合、親権関係はどうなるのか
ここでは、再婚相手と子どもが養子縁組をする場合を整理します。
3-1 単独親権の状態で、再婚相手と子どもが養子縁組をすると、元配偶者は共同親権を求めにくくなる
単独親権者として子どもを育てている場合、元配偶者はそもそも親権者ではありません。
この状態で、再婚相手と子どもが養子縁組をすると、連れ子養子として、再婚相手が親権者になります。つまり、子どもの親権者はあなた(実親)と再婚相手になります。
この養子縁組後に、元配偶者が共同親権を求めて親権者変更を申し立てても、すでに再婚相手が親権者になっているため、通常の親権者変更とは場面が異なります。そのため、元配偶者が当然に共同親権者になれるわけではありません。
3-2 共同親権の場合、再婚相手との養子縁組を進めること自体が難しくなる
法改正後に元配偶者と共同親権になっていた場合も、養子縁組が成立した後の親権関係については、基本的に同じ考え方になります。一方の実親の再婚相手と子どもの養子縁組が有効に成立した場合は、その再婚相手が親権者となり、共同親権者であっても、他方の実親は親権を失います。
ただし、15歳未満の子どもが養子縁組をする場合は、親権者が養子縁組の手続に関与する必要があります。そのため、元配偶者と共同親権になっている場合、元配偶者が再婚相手との養子縁組に反対する可能性が高く、養子縁組の手続きを進めること自体が難航することが想定されます。
家庭裁判所が養子縁組について親権行使者を指定する場合がある
法改正では、こうした対立を家庭裁判所が調整する手続きも新設されました。子どもの利益のために必要があると認めるときに限り、家庭裁判所はどちらかの親権者を特定の事項について単独で行使できる親権行使者を指定します。
そのため、家庭裁判所によって養子縁組についての親権行使者に指定された場合は、元配偶者の同意を得ずに、再婚相手と子どもの養子縁組を進めることができます。
第4章 再婚相手と養子縁組をしない場合、共同親権は再婚後の生活にどう影響するのか
次に、再婚相手と子どもが養子縁組をしない場合を整理します。養子縁組をしない場合、再婚相手は子どもの親権者にはなりません。送迎や学校行事への参加、生活費の負担などをしていても、法律上の親権者ではないため、子どもの重要事項を決める立場にはない状態です。
元配偶者から共同親権への変更を求められる可能性は残る
養子縁組をしていない場合、元配偶者から共同親権への変更を求められる可能性は残ります。
もっとも、元配偶者が希望すれば必ず共同親権になるわけではありません。当事者間で話し合いが行われることはありますが、実際に親権者を変更するには、家庭裁判所の手続が必要です。家庭裁判所では、子どもの利益を基準に、単独親権を維持するか、共同親権に変更するかが判断されます。
元配偶者に共同親権を求められた場合の具体的な流れは、以下の記事の2章で確認いただけます。
共同親権はすでに離婚している場合でも関係ある?元配偶者から共同親権を求められた場合や単独親権を維持したい場合のポイントを弁護士が解説
第5章 既に再婚している場合・これから再婚する場合で確認すべきこと
5-1 再婚済みの場合|養子縁組の有無と現在の親権者を確認する
既に子連れで再婚している場合、まず確認すべきなのは、再婚相手と子どもが養子縁組をしているかどうかです。再婚相手と子どもの養子縁組が有効に成立していれば、再婚相手と実親であるあなたがすでに親権者になっています。
一方、養子縁組をしていなければ、再婚相手は法律上の親権者ではなく、現在の単独親権の状態が基本的に続いていると考えられます。この場合、元配偶者から突然、共同親権を求める連絡や書面が届く可能性があります。
5-2 これから再婚する場合|共同親権のリスクも踏まえて養子縁組を検討する
これから子連れで再婚する場合、再婚相手と子どもを養子縁組するかどうかは、再婚時点で一度整理しておくことが大切です。以前であれば、再婚相手と子どもを養子縁組するかどうかは、新しい家庭での親子関係、氏や戸籍、扶養、相続などを中心に検討されることが多かったかもしれません。
しかし、共同親権の法改正後は、元配偶者から将来共同親権への変更を求められる可能性も踏まえて検討する必要があるといえます。養子縁組をしない場合に、元配偶者から共同親権を求められたときどう対応するのかも、再婚時に検討しておくとよいでしょう。
第6章 【FAQ】子連れ再婚と共同親権についてよくある疑問
Q1. 子連れ再婚後に共同親権になった場合、再婚相手との新しい家庭生活に元配偶者が関与してくることになりますか?
A1. 重要事項では協議が必要になる可能性があります。
共同親権になった場合でも、再婚後の家庭生活のすべてについて元配偶者の同意が必要になるわけではありません。一方で、子どもの転居、進学先の決定、重大な医療行為など、子どもの生活や将来に大きく関わる事項については協議が必要になる可能性があります。そのため、再婚相手の転勤、住宅購入などにより、転居や転校を予定している場合には、元配偶者との協議が必要になる場面も生じ得ます。
共同親権で具体的に何が変わるのか、変更点の詳細については以下の記事でも確認いただけます。
関連記事「共同親権で何が変わる?法改正で見直された親権・養育費・親子交流のポイントを弁護士がわかりやすく解説」
Q2. 元配偶者が共同親権を主張してきそうです。先に再婚相手と子どもを養子縁組すれば対策になりますか?
A2. 親権上の影響はありますが、慎重な判断が必要です。
現在、単独親権者であり、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、あなたと再婚相手が親権者になります。養子縁組後は、元配偶者が共同親権を求めることは原則として難しくなる状況と考えられます。
ただし、養子縁組は、共同親権対策だけを目的に決めるものではありません。養子縁組をすると、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が生じ、扶養、相続、氏、戸籍など、親権以外の家族関係にも影響します。共同親権を避けたいという理由だけで養子縁組を急ぐのではなく、子どもの生活全体にとって適切かどうかを慎重に検討する必要があります。
Q3. 共同親権の元配偶者が再婚し、その再婚相手と子どもを養子縁組させたいと言ってきた場合、どうなりますか?
A3. 成立すれば、あなたが親権を失う可能性があります。
共同親権の元配偶者が再婚し、その再婚相手と子供の養子縁組が有効に成立した場合、元配偶者とその再婚相手が親権者になり、あなたが親権を失う可能性があります。もっとも、実際に養子縁組を成立させられるかどうかは別問題です。特に、子どもがあなたと生活している場合は、より慎重に判断されるといえます。ただし、元配偶者側からこのような話が出た場合には、親権に影響し得る重要な問題として早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
第7章 子連れ再婚で共同親権に不安がある場合は早めに相談を
法改正によって日本でも共同親権が選択できるようになりました。既に離婚し、単独親権者として子どもを育てている場合、単独親権から共同親権へ自動的に変わるわけではありません。しかし、元配偶者から、ある日突然、共同親権への変更を求められる可能性はあります。
共同親権の問題は、家庭ごとの事情によって対応が大きく変わります。不仲な元配偶者から共同親権を求める通知が届いた、元配偶者が反対しているが再婚相手と子どもの養子縁組をしたいなどの問題がある場合は、Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスへお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
共同親権はすでに離婚している場合でも関係ある?元配偶者から共同親権を求められた場合や単独親権を維持したい場合のポイントを弁護士が解説

2026年4月1日から日本でも共同親権制度が始まりました。すでに離婚して単独親権となっている場合、「自動的に共同親権へ変わってしまうのではないか」と不安を感じている方もいるかもしれません。結論からいうと、自動的に共同親権へ変更されることはありません。ただし、元配偶者から親権者変更を求められる可能性はあります。本記事では、現在単独親権の方が今の状態を維持するために、共同親権について知っておきたいポイントを弁護士が整理します。
第1章 【結論】既に離婚している場合、単独親権が自動的に共同親権へ変わることはない
まず押さえておきたいのは、今回の法改正によって現在の単独親権が自動的に共同親権へ変更されることはない、という点です。
1-1 法改正後も現在の単独親権はそのまま維持される
これまでの日本の法律では、離婚後は父母のどちらか一方を親権者として定める必要がありました。今回の法改正によって変わったのは、「共同親権を選択することもできるようになった」という点です。つまり、法改正後も単独親権という制度自体がなくなるわけではなく、共同親権と単独親権のいずれも選択できる形になります。
そのため、既に離婚して単独親権となっている場合、それが自動的に共同親権へ変更されるものではありません。したがって、役所へ新たな届出をしたり、戸籍の変更手続をしたりする必要もありません。
1-2 ただし、元配偶者が共同親権を求める可能性はある
単独親権が共同親権へと自動的に変わることはありませんが、今後も単独親権を維持できるかが確定しているわけでもありません。
今回の法改正によって、既に離婚している場合でも、家庭裁判所の手続を通じて単独親権から共同親権への変更が制度上可能になりました。そのため、元配偶者からある日突然、共同親権への変更を申し立てられる可能性はあります。
第2章 元配偶者が共同親権を求めた場合、どのような流れで決まるのか
元配偶者から共同親権を求められた場合、共同親権になるか、そのまま単独親権が維持されるかは、話し合いや家庭裁判所の手続を経て決まることになります。
2-1 まずは父母間で協議が行われることが多い
実務上は、まずは父母間で話し合いが行われるケースが多いと考えられます。例えば、元配偶者から「今後は共同親権にしたい」といった連絡が来る可能性がありますが、相手から共同親権を求められたとしても、直ちに応じなければならないわけではありません。
共同親権は、親の希望だけで決まるものではなく、あくまで子どもの利益にかなうかどうかが重視されます。そのため、不安や疑問がある場合には、安易に返事をしたり、結論を出したりはしないようにしましょう。
2-2 協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停へ進む
父母間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所での調停手続へ進むことになります。
調停は、現在親権を持っていない親が、共同親権への変更を求めて家庭裁判所へ「親権者変更」の手続を申し立てることから始まります。そのため、現在親権を持っている親は、家庭裁判所から書類が届いて初めて申し立てが行われたことを知ることになります。
共同親権に関する調停では、どのような事情が重要視されるのか、どの資料を整理しておくべきかによって、その後の対応が大きく変わる可能性があります。そのため、家庭裁判所から書類が届いた段階で、申立書の内容を確認し、ご自身だけでよくわからなければ裁判所から届いた書類を持参の上で一度弁護士に相談に行かれることをお勧めします。
2-3 調停で合意できなければ家庭裁判所が審判で判断する
調停で合意に至らなかった場合、家庭裁判所が審判という形で判断を行います。
審判では、父母双方の主張や提出資料、必要に応じた家庭裁判所調査官による調査結果などを踏まえながら、どの親権形態が子どもの利益にかなうのかを裁判所が判断します。
例えば、現在の生活環境が安定しているか、主に誰が監護を担ってきたか、父母間で必要な協議ができる状況にあるか、子どもへ精神的負担が生じないかなど、さまざまな事情が具体的に検討されることになります。
2-4 家庭裁判所は「子どもの利益」を最優先に判断する
共同親権に関する手続で、最も重要になる考え方が「子どもの利益」です。今回の法改正でも、親権は「子どもの利益のために行使しなければならない」と明記されています。
そのため、家庭裁判所は、どの形が子どもにとって安定した生活につながるかという観点から判断を行います。
例えば、DVや虐待のおそれがある場合や、父母間の対立が極めて強く、現実的に共同での意思決定が困難と考えられる場合には、共同親権が認められない可能性があります。
一方で、離婚後も一定の協力関係が保たれ、子どもの養育について現実的な連携ができているケースでは、共同親権が検討される可能性もあります。
第3章 共同親権になった場合、生活上は何が変わるのか
共同親権になった場合、子どもの生活や将来に大きく関わる事項については、父母間で協議が必要になる場面が増える可能性があります。
3-1 日常的な監護や急迫の事情がある場合は単独で判断できる場面もある
共同親権となった場合でも、すべてについて常に元配偶者の同意が必要になるわけではありません。例えば、食事や服装、習い事などの日常的な監護教育に関する事項や、緊急の医療行為が必要なケース、DV・虐待から避難するために転居が必要なケースなどでは、単独で親権を行使できるとされています。
しかし、将来や生活環境に関わる重要事項については、元配偶者との協議が必要になる可能性があります。
3-2 転居・進学・重大な医療行為では協議が必要になる可能性がある
共同親権になった場合、子どもの生活環境や将来に大きな影響を与える事項については、双方で協議しながら決める必要があるとされています。
例えば、県外への引っ越しを考えている場合や進学や受験、海外留学、病気の際の治療方針など、子どもの将来や生活環境に大きく関わる事項については、これまでのように自分だけで決められるとは限らなくなります。
離婚後、長期間にわたって実際に子どもを育ててきた側からすると、「なぜ今さら、普段子育てをしていない相手と重要事項を協議しなければならないのか」と感じる場面も出てくるかもしれません。
共同親権で具体的に何が変わるのか、変更点の詳細については以下の記事でも確認いただけます。
関連記事「共同親権で何が変わる?法改正で見直された親権・養育費・親子交流のポイントを弁護士がわかりやすく解説」
3-3 父母の意見が対立した場合に利用される「親権行使者」制度
共同親権では、父母双方で協議して決めるべき事項について、意見がまとまらないケースも想定されています。
法改正では、そのような場合に家庭裁判所へ親権行使者の指定を求める手続が設けられました。例えば、子どもの留学や進学、転居などについて父母間で意見が対立した場合、家庭裁判所が、子どもの利益のため必要があると判断した場合は、その事項に限って一方の親が単独で親権を行使できる可能性があります。
もっとも、どのような状況の場合に家庭裁判所が親権行使者の指定を認めるのかについては個別の事情によって判断されるため、一概にはいえません。
第4章 単独親権を維持したい場合に整理しておきたいこと
元配偶者から共同親権への変更を求められた場合、共同親権にはしたくないと主張するだけでは足りません。重要なのは、「現在の単独親権を維持する方が子どもの利益にかなう」と家庭裁判所に判断してもらえるかどうかです。そのため、単独親権を維持したい場合には現在の生活環境の安定性や、父母間の関係性、これまでの監護状況などを客観的な事情に基づいて整理していくことが重要になります。
4-1 これまでの監護実績や現在の生活状況を記録しておく
家庭裁判所は、現在の子どもの生活環境が安定しているかどうかを重視します。そのため、これまで誰が主に監護を担ってきたのか、現在どのような生活状況にあるのかを整理しておくことが大切です。
例えば、毎日の送迎や通院対応、学校との連絡、食事や生活管理など、日々の子育てを継続して担ってきた実績は重要な事情になり得ます。具体的には、学校や保育園との連絡アプリ、通院履歴、子どもに関するLINEのやり取り、学校行事の写真など、日常生活の中で自然に残っているものが後から重要な資料になることもあります。
もっとも、こうした資料は意識していない段階では、スマホの機種変更やデータ整理の際に消去してしまうことも少なくありません。将来的に共同親権への変更を求められる可能性が想定される場合には、子どもの生活状況や監護実績を示す記録を、意識して残しておくことが望ましいといえます。
4-2 元配偶者との協議が困難であることを示す客観的事情を整理する
共同親権では、父母間で継続的に協議できる関係にあることが重要になります。そのため、現実的に協議が難しい場合には、その状況を整理しておく必要があります。
例えば、離婚後も強い対立状態が続いている場合や、暴言・威圧的な連絡が繰り返されている場合、必要な連絡すら円滑に成立しないようなケースでは、共同で意思決定を行うこと自体が難しい可能性があります。
そのような問題が起きている場合には、それを証明する客観的な記録が必要です。具体的には、相手方とのメールやLINE、調停記録などを保存しておくことが重要といえます。
4-3 養育費の支払状況や親子交流の実態を整理しておく
家庭裁判所では、離婚後に元配偶者がどのように子どもの養育へ関与してきたかも確認されます。
例えば、養育費が継続して支払われていたのか、親子交流がどのように実施されてきたのか、子どもとの関係性がどの程度築かれているのかといった事情です。
もっとも、養育費を支払っているから必ず共同親権になるわけではなく、逆に未払いがあるから直ちに認められないというものでもありません。
ただ、離婚後にどのような形で子どもと関わってきたのかは、家庭裁判所が子どもの利益を考える上で無関係ではないため、一定程度親権を考慮するうえで重要視されるといえるでしょう。
第5章 【FAQ】既に離婚している場合の共同親権についてよくある質問
Q1. 共同親権への変更を求める申立てに回数制限はありますか?一度、単独親権維持の判断が出た場合でも、再び申し立てられることはあるのでしょうか?
A1. 再度申し立てられる可能性はあります。
親権者変更の手続について、「一度変更が却下されたら二度と申し立てできない」という回数制限は設けられていません。そのため、過去に単独親権維持の判断が出ていたとしても、その後の事情変化などを理由に、再び相手方が親権者変更を申し立てる可能性はあります。もっとも、過去の調停や審判の内容が無意味になるわけではなく、家庭裁判所はこれまでの経緯や現在の状況も踏まえて判断を行います。
Q2. 共同親権になった場合、児童手当など育児に関する補助金は父母で半分ずつになるのでしょうか?
A2. 自動的に半分ずつになるわけではありません。
共同親権になった場合でも、児童手当などの支給方法が直ちに父母で半分ずつになるわけではありません。実際には、制度ごとに受給要件や取扱いが異なっており、誰が主として子どもを監護しているのか、どちらと同居しているのかなどが考慮される場合があります。
Q3. 「共同親権にしないでほしい」と家庭裁判所へ申し立てることはできますか?
A3. 単独で予防的に止める制度はありません。
現時点では、相手方による共同親権への変更申立てを、あらかじめ制限する制度はありません。そのため、単独親権者の側から先に家庭裁判所に「共同親権は認めない」という判断を取ってもらうことはできず、相手方から親権者変更の申立てが行われて初めて対応することになります。離婚時に親権をめぐって大きな負担を経験している方にとっては、不安を感じることもあるでしょう。将来的に相手方から申立てがされる可能性も見据えて、早い段階から状況整理をしておくことが備えになるといえます。
Q4. 面会交流を認めない方が単独親権の維持のために有利になるのでしょうか?
A4. 単純に「交流を減らせば有利」とはいえません。
「面会交流を認めていると、後から共同親権を主張されやすくなるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。実際、相手方が継続的に親子交流を行い、子どもとの関係を築いていることは、家庭裁判所が事情を判断する際に無関係ではありません。だからといって、単独親権を維持したいという理由で相手方の親子交流を不当に制限した場合には、こちらが不利に評価される可能性があります。
第6章 既に離婚済みの単独親権者こそ、早めに状況整理をしておくことが大切
今回の法改正によって、既に離婚して単独親権となっているケースでも、将来的に元配偶者から共同親権への変更を求められる可能性が生じることになりました。単独親権者が知っておきたい事実として、相手方が親権者変更を申し立てることをあらかじめ禁止したり、防いだりする制度はないという点です。つまり、相手方が共同親権を希望した場合には、ある日突然、家庭裁判所から調停関係書類が届き、再び親権に関する手続へ対応しなければならなくなる可能性があります。
特に、父母間の対立が大きいケースでは、相手方も早い段階で弁護士へ相談し、法的主張や資料準備を進めていることが考えられます。そのため、共同親権への変更を求められた場合には、早い段階で弁護士へ相談し、現在の状況を整理することが重要といえます。
私たちNexill&Partners那珂川オフィスでは、離婚後の親権問題や共同親権に関するご相談にも対応しています。「相手から共同親権の話をされた」「家庭裁判所から書類が届いた」「自分のケースでは何を準備すべきか分からない」といった段階でもご相談いただけますので、お一人で不安を抱え込まず早めにご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
逮捕された本人と連絡が取れない場合、家族ができること|弁護士が解説

突然、大切な家族が逮捕された場合、その後の対応に不安を感じるのは当然のことです。特に、逮捕後に本人と連絡が取れない状況では、どのように行動すればよいのか分からず、戸惑ってしまうことも多いでしょう。本記事では、家族が逮捕された場合に直面しがちな「本人と連絡が取れない」という問題について、弁護士がどう対応するか、家族として何をすべきかを詳しく解説します。
第1章 逮捕された本人と連絡がとれない理由
1-1 逮捕直後は家族でも面会できないことが多い
家族が逮捕されたと知ったとき、多くの方は「すぐに警察署に行けば会えるのではないか」と考えます。
しかし、実際には、逮捕直後の段階で家族が本人と面会できるとは限りません。
むしろ、逮捕されてから勾留が決まるまでの初期段階では、家族による面会が認められないことが一般的です。
逮捕後の刑事手続では、警察が逮捕してから検察官へ送致するまでに原則として48時間以内、その後、検察官が勾留請求をするかどうかを判断するまでに原則として24時間以内という時間制限があります。
つまり、逮捕後、警察が検察官へ送致するまでの時間と、検察官が勾留請求をするか判断する時間を合わせて、最大72時間程度が重要な初期段階となります。
この間は、事件の内容確認や取調べが進められるため、家族との面会が認められないことが多いです。
家族としては、「本人は無事なのか」「何を疑われているのか」「こちらから何かできないのか」と不安になるのが当然です。
しかし、逮捕直後に連絡がとれないこと自体は、制度上起こり得る状況です。
そのため、「本人が連絡してこないから何か隠しているのではないか」「家族を避けているのではないか」と考える必要はありません。
本人自身も、外部と自由に連絡できない状況に置かれていることが多いのです。
1-2 接見禁止が付くと家族との面会や手紙も制限される
逮捕から勾留に進んだ後であれば、通常は家族との面会が認められる可能性があります。
しかし、事件の内容によっては、裁判所が「接見禁止」という処分を付けることがあります。接見禁止とは、弁護士以外の人との面会や手紙のやり取りを制限する命令です。
接見禁止が付くと、たとえ配偶者、親、子どもであっても、本人と面会できないことがあります。警察署の窓口に行っても、「接見禁止が付いているため面会できません」と言われてしまいます。
接見禁止は、主に次のような事件で付くことがあります。
・本人が容疑を否認している事件
・証拠隠滅の可能性があると判断されている事件
・薬物事件や組織的な事件
・関係者との口裏合わせが疑われる事件
もっとも、接見禁止が付くかどうか、どの範囲で制限されるかは、事件の内容や捜査状況によって異なります。すべての事件で必ず接見禁止が付くわけではありません。
ただし、家族からすれば、接見禁止が付いているかどうか自体も分かりにくく、
「なぜ会えないのか」「いつになれば会えるのか」が見えないまま時間が過ぎてしまいます。
このような場合には、弁護士を通じて本人の状況を確認することが重要になります。
1-3 スマートフォンや電話を本人が自由に使えない
逮捕された本人と連絡がとれない大きな理由の一つが、スマートフォンや電話を自由に使えないことです。
逮捕されると、本人が持っていたスマートフォン、財布、鍵、身分証などの所持品は、
警察に預けられることになります。スマートフォンについては、事件との関係で証拠品として扱われる場合もありますし、証拠品でない場合でも、留置中に本人が自由に操作することは通常できません。
そのため、本人が家族に電話をかけたり、LINEやメールで連絡したり、SNSで状況を伝えたりすることはできません。
家族の側からすると、「なぜ一言も連絡してこないのか」と感じるかもしれません。
しかし、本人が連絡したくても、物理的に連絡手段を使えない状態に置かれている可能性が高いのです。
特に、普段からスマートフォンで連絡を取り合っているご家族ほど、急に既読が付かなくなったり、電話がつながらなくなったりすると強い不安を感じます。
このように、逮捕後に連絡がとれないことは、本人の意思というよりも、刑事手続上の制限によるものと理解しておく必要があります。
第2章 警察への問い合わせで分かること・分からないこと
2-1 収容先や安否を確認できる場合がある
家族が逮捕された可能性がある場合、まず気になるのは「本人がどこにいるのか」という点です。警察から家族に連絡が入っていれば、まずは連絡元の警察署に本人が収容されているかを確認することになります。
その場合は、警察署の代表番号に電話し、留置係などに取り次いでもらうことで、面会や差し入れの可否を確認できることがあります。
警察へ問い合わせる際には、次の情報を整理しておくとよいでしょう。
・本人の生年月日
・本人との関係
・警察から連絡があった日時
・心当たりのある事件や場所
・本人の住所や勤務先
ただし、電話では本人確認が難しいため、警察が詳細を教えてくれないこともあります。
実際に警察署へ行き、身分証明書を提示することで、収容の有無や差し入れの可否などを教えてもらえる場合もあります。
もっとも、警察から得られる情報には限界があります。
警察に問い合わせれば事件の全体像が分かる、というわけではありません。
2-2 事件の詳しい内容や本人の言い分は教えてもらえない
警察への問い合わせで、家族が最も知りたいのは、「本人は何をしたと疑われているのか」「本人は認めているのか、否認しているのか」「今後どうなるのか」という点だと思います。
しかし、警察が家族に対して、事件の詳細や取調べの内容、本人の供述内容を詳しく説明することは通常ありません。
たとえば、次のような情報は、家族であっても教えてもらえないことが多いです。
・被害者の氏名や連絡先
・本人が容疑を認めているかどうか
・取調べで何を話しているか
・証拠がどの程度あるか
・今後、勾留されるかどうか
・起訴・不起訴の見込み
これは、捜査の秘密を守る必要があるためです。
また、家族を通じて関係者に情報が伝わり、証拠隠滅や口裏合わせにつながることを防ぐ
目的もあります。「家族なのに教えてもらえないのか」と感じるかもしれません。
しかし、刑事事件では、家族であっても捜査情報を自由に知ることはできません。
そのため、警察への問い合わせだけで本人の状況を把握しようとすると、どうしても限界があります。
2-3 どこの警察署にいるか分からない場合の確認方法
本人が逮捕されたらしいものの、どこの警察署にいるか分からないというケースもあります。
この場合は、まず次のような警察署に問い合わせることが考えられます。
・事件が起きたと思われる場所を管轄する警察署
・本人の勤務先や学校の近くの警察署
・警察から着信があった番号の警察署
問い合わせる際には、「家族の〇〇と連絡がとれず、逮捕された可能性があるため、
収容の有無を確認したい」と丁寧に伝えるとよいでしょう。
ただし、警察署によって対応は異なります。電話で収容の有無を明確に教えてもらえないこともありますし、個人情報や捜査上の理由から回答を控えられる場合もあります。
このようなときも、弁護士に相談することで、収容先の確認や今後の対応について助言を受けられる可能性があります。
第3章 逮捕後に本人の状況を確認するには弁護士の接見が重要
3-1 弁護士であれば接見禁止中でも本人と会える場合がある
逮捕されて本人と連絡がとれない場合、状況を確認するために重要になるのが、弁護士による接見です。
接見とは、弁護士が逮捕・勾留されている本人と面会し、事件の内容や本人の状況を確認することをいいます。
刑事事件では、弁護人または弁護人になろうとする弁護士は、原則として、立会人なく本人と面会し、書類や物の授受をすることが認められています。接見禁止が付いている場合でも、弁護士との接見は通常、家族との面会とは別に扱われます。
そのため、家族が会えない状況でも、弁護士であれば本人と接見し、状況を確認できる場合があります。
ただし、弁護士の接見についても、捜査の必要性から日時や場所などが調整されることはあります。
3-2 本人の状況や家族への伝言を確認できる
弁護士が接見を行うことで、家族が知りたい情報を一定程度確認できる可能性があります。
たとえば、弁護士は本人から次のような内容を聞き取ります。
・逮捕された経緯
・容疑を認めているか、否認しているか
・取調べでどのような対応をしているか
・家族に伝えたいこと
・職場や学校に連絡してほしいこと
・差し入れてほしい物
・今後の弁護方針に関する希望
家族にとっては、「本人が無事なのか」「何を考えているのか」「家族に何を求めているのか」が分からない時間が一番つらいものです。
弁護士が接見して、「本人は落ち着いて話せていました」「体調に大きな問題はなさそうです」「家族にこのように伝えてほしいと言っていました」と報告できれば、ご家族の不安は大きく軽減されます。
もちろん、弁護士には守秘義務があるため、本人が家族に伝えないでほしいと話した内容まで無断で伝えることはできません。しかし、本人の了解を得た範囲で、家族に必要な情報を共有することは可能です。
3-3 取調べへの対応を早い段階で助言できる
弁護士の接見が重要なのは、家族への情報共有だけではありません。
逮捕直後の本人は、強い不安と緊張の中で取調べを受けることになります。何を話してよいのか、黙っていてよいのか、調書に署名してよいのか分からないまま、捜査機関の質問に答えてしまうこともあります。
特に注意が必要なのは、供述調書です。
供述調書とは、取調べで話した内容を警察官や検察官が書面にまとめたものです。
内容を十分に確認しないまま署名・押印してしまうと、後から「本当はそういう意味で言ったわけではない」と主張することが難しくなることがあります。
弁護士は、接見の場で次のような助言を行います。
・供述調書を確認する際の注意点
・分からないことを無理に認めないこと
・事実と違う内容には署名しないこと
・取調べで不当な誘導があった場合の対応
・今後の見通しと防御方針
逮捕直後の対応は、その後の処分や裁判に影響することがあります。
だからこそ、できるだけ早い段階で弁護士が本人と接見し、適切な助言をすることが大切です。
第4章 家族が本人のためにできる具体的な対応
4-1 現金や衣類などの差し入れを準備する
本人と直接連絡がとれなくても、家族ができる支援はあります。その一つが差し入れです。
留置場での生活は制限が多く、本人にとって精神的にも身体的にも負担が大きいものです。家族から必要な物が差し入れられることは、本人にとって大きな支えになります。
差し入れとして検討されることが多いものは、現金、衣類、眼鏡、書籍などです。
現金は、本人が留置場内で日用品などを購入するときに必要になるため、差し入れができると本人も役立ちます。
衣類については、警察署によって受け入れ基準が異なりますが、紐付きのパーカーやズボン、金具の多い服、フード付きの服などは受け取ってもらえないことがあります。
自傷防止などの観点から制限されるためです。
差し入れに行く前には、必ず警察署の留置係に連絡し、差し入れ可能な物、受付時間、必要な身分証明書などを確認しておきましょう。
4-2 職場や学校への連絡は慎重に行う
逮捕によって本人が仕事や学校を休むことになった場合、職場や学校への連絡をどうするかは非常に悩ましい問題です。
何も連絡しないまま無断欠勤・無断欠席が続けば、本人の社会生活に大きな影響が出る可能性があります。一方で、逮捕された事実を不用意に伝えてしまうと、職場や学校での立場が急速に悪化することもあります。実務上は、逮捕直後の段階では、まず詳細を伏せた形で欠勤・欠席の連絡をすることがあります。
たとえば、次のような表現が考えられます。
・一身上の都合により、しばらく出勤が難しい状況です。
・詳細が分かり次第、改めてご連絡いたします。
ただし、勤務先との関係、本人の職種、事件の内容、報道の可能性などによって、適切な対応は変わります。
特に、勤務先に対してどこまで説明するかは慎重に判断する必要があります。
弁護士に相談し、今後の身柄拘束の見通しを踏まえて、説明内容を検討することが望ましいです。
4-3 証拠隠滅を疑われる行動は避ける
家族が本人を心配するあまり、善意で動いたことが、結果的に本人に不利益を及ぼすことがあります。
特に避けるべきなのは、証拠隠滅を疑われる行動です。
たとえば、本人のスマートフォンやパソコンを勝手に操作する、メッセージや写真を削除する、関係者に連絡して口裏合わせのように受け取られるやり取りをする、被害者に直接連絡するなどの行動は危険です。
家族としては、「本人のために何かしたい」という気持ちから動いているかもしれません。しかし、捜査機関から見れば、証拠隠滅や関係者への働きかけと評価される可能性があります。その結果、接見禁止が付いたり、勾留が長引いたり、本人の立場が悪くなったりするおそれがあります。
被害者への謝罪や弁償についても、家族が直接行うのではなく、弁護士を通じて慎重に進めるべきです。被害者側が不安や怒りを感じている段階で不用意に接触すると、かえってトラブルが大きくなることがあります。
第5章 早期釈放や処分軽減のために弁護士ができること
5-1 勾留を避けるための活動を早期に行う
逮捕された本人のために弁護士が行う重要な活動の一つが、勾留を避けるための働きかけです。
勾留とは、逮捕後も引き続き身体拘束を続ける手続です。勾留が認められると、原則10日間、さらに延長されると最大でさらに10日間、身体拘束が続く可能性があります。
長期間仕事や学校を休むことになれば、本人の社会生活への影響は大きくなります。
家族の生活にも負担が生じます。
弁護士は、検察官や裁判官に対して、次のような事情を主張し、勾留を避けるための活動を行います。
・住所や勤務先が安定していること
・家族が身元を引き受ける意思を持っていること
・証拠隠滅のおそれが小さいこと
・被害者や関係者に接触しない体制を整えていること
・本人が取調べに応じる意思を示していること
勾留を避けられれば、本人は早期に釈放され、在宅事件として捜査が進む可能性があります。
もっとも、すべての事件で勾留を避けられるわけではありません。
事件の内容、証拠関係、本人の生活状況、前科前歴の有無などによって判断は変わります。
それでも、逮捕直後に弁護士が動くことで、早期釈放の可能性を高めるための準備ができます。
5-2 家族が身元引受人として協力する
早期釈放を目指すうえで、家族の協力が重要になることがあります。
特に、家族が身元引受人となり、本人を監督する意思を示すことは、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいことを説明するうえで有利な事情になる場合があります。
身元引受人とは、本人が釈放された後、生活状況を見守り、必要に応じて本人に注意を促す立場の人です。刑事事件で身元引受人になる場合には、単に「家族だから引き受ける」というだけでなく、具体的にどのように本人を監督するかを整理することが大切です。
たとえば、次のような事情を整理します。
・家族と同居するか
・仕事や学校にどう復帰するか
・被害者や関係者に接触しないようどう管理するか
・再発防止のために家族がどのように関わるか
・本人の通院や生活改善が必要な場合にどう支えるか
弁護士は、これらの事情を踏まえて身元引受書などを作成し、裁判官や検察官に提出することがあります。
家族の協力体制が具体的であればあるほど、「釈放後も適切に生活できる」という説明がしやすくなります。
5-3 被害者がいる事件では示談交渉を進める
暴行、傷害、窃盗、痴漢、交通事故など、被害者がいる事件では、示談交渉が重要になることがあります。
示談とは、被害者に謝罪し、被害弁償や慰謝料の支払いなどについて合意することです。
被害者から許しを得られたかどうかは、処分の判断に影響することがあります。
ただし、本人は逮捕されているため、自分で被害者と連絡を取ることはできません。
また、家族が直接被害者に連絡することも、慎重に考える必要があります。
被害者側が連絡を望んでいない場合や、感情的な対立が強い場合、家族からの連絡がかえって負担になることがあります。場合によっては、「圧力をかけられた」と受け取られるおそれもあります。
そのため、示談交渉は弁護士を通じて行うことが望ましいです。弁護士であれば、被害者の意向を尊重しながら、謝罪の意思や被害弁償の提案を冷静に伝えることができます。
示談が成立すれば、早期釈放や不起訴処分に向けた事情として考慮される可能性があります。
ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になる、必ず釈放されるとまではいえません。
事件の内容や証拠関係によって判断は変わります。
だからこそ、過度な期待を持つのではなく、弁護士と相談しながら現実的な見通しを確認することが大切です。
第6章 逮捕されて連絡がとれないときは早めに弁護士へ相談を
家族や大切な人が逮捕され、本人と連絡がとれない状況になると、ご家族は強い不安を抱えることになります。電話がつながらず、警察に問い合わせても詳しい説明を受けられず、面会もできないとなれば、「今、本人に何が起きているのか」と考え続けてしまうのは当然です。
ですが、逮捕直後の対応は、その後の身柄拘束の長さや処分に影響することがあり、ご家族だけで判断しようとすると、どこまで何をしてよいのか分からず、かえって本人に不利益な行動を取ってしまうこともあり得ます。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、刑事事件に関するご相談に対応するとともに、弁護士、社会保険労務士、税理士、司法書士、行政書士などが連携するワンストップ体制により、事件後に生じる生活面・職場面の不安にも幅広く対応できる体制を整えています。那珂川オフィスは、福岡県那珂川市および周辺地域に根ざした法律相談の窓口として、ご家族の不安に寄り添いながら、必要な対応を一つずつ整理してまいります。
逮捕されて本人と連絡がとれないときは、時間が経つほど不安が大きくなります。
状況が分からないまま悩み続けるのではなく、まずは弁護士に相談し、本人の状況を確認することから始めてください。
専門的な対応が必要な場合は、私たちNexill&Partnersグループへお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
共同親権で何が変わる?法改正で見直された親権・養育費・親子交流のポイントを弁護士がわかりやすく解説

2026年4月1日より、離婚後の親権について、従来の単独親権に加えて共同親権を選択できるようになりました。これにより、「共同親権で何が変わるのか」「自分のケースにどう影響するのか」といった点が気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、法改正によって見直された制度のポイントを整理し、離婚時に押さえておきたい点を弁護士がわかりやすく解説します。
第1章 共同親権で何が変わるのか
1-1 離婚後の親権は「共同」か「単独」かを選べるようになった
これまでの日本の法律では、父母が離婚した場合には、どちらか一方のみを親権者とする「単独親権」しか認められていませんでした。
しかし、2026年(令和8年)4月1日より施行された改正民法により、離婚後の親権について、父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択することも可能になりました。
親権とは、未成年の子どもを養育・保護し、その財産を管理する権利と義務の総称です。これまでは、離婚した場合、どちら一方の親が親権を諦めなければなりませんでしたが、改正後は、離婚後も父母が協力して子どもの成長を支えていける選択肢が加わりました。
1-2 共同親権と単独親権のどちらになるかは父母の協議または家庭裁判所の判断で決まる
共同親権にするか、あるいはどちらか一方の単独親権にするかは、まずは父母の話し合い(協議)によって決めます。もし話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が子どもの利益を最優先に考えて、どちらの形式が適切かを判断することになります。
裁判所が判断を下す際は、これまでの育児の実績や父母それぞれの生活環境、子どもの意向などが総合的に考慮されます。
1-3 一定の場合には単独親権が選ばれる
共同親権が選択肢に加わったとはいえ、どんなケースでも共同親権が認められるわけではありません。子どもの心身に危害が及ぶおそれがある場合や、父母が協力して親権を行使することが明らかに困難な場合には、裁判所は単独親権とする方向で判断することになります。
具体的には、一方の親によるDV(ドメスティック・バイオレンス)や子どもへの虐待がある場合です。
また、父母間の対立が極めて激しく、子どもに関する意思決定を共同で行うことが、かえって子どもの利益を害するおそれがあると裁判所が判断した場合も、単独親権を命じられることになります。
第2章 共同親権で何が変わる?① 離婚時に決めるべき事項が増えている
2-1 共同か単独か、親権の形を選ぶ必要がある
法改正によって選択肢が増えたということは、裏を返せば、離婚時に決めなければならない重要な項目が増えたことを意味します。これまで離婚における親権は「どちらが親権者になるか」を争うことが中心でしたが、今後は「そもそも共同親権を目指すべきか、それとも単独親権の方が子どものためになるか」という一段階手前の検討が必要になります。
共同親権は、父母が円滑にコミュニケーションを取れる場合には機能しやすいと考えられますが、そうでない場合には、離婚後にも対立を生じさせる要因となる可能性があります。このような点を踏まえ、まずは自身の状況において、どちらの形態が適切かを見極めることが重要です。
2-2 共同親権の場合は役割分担を整理することが重要になる
共同親権を選択した場合、単に「二人で親権を持つ」という抽象的な合意だけでは不十分です。実務上は、どちらが主に子どもと一緒に暮らすのか(監護者を定めるかどうか)や、重要事項の決定方法をどのように整理するかといったことを具体的に検討しておくことが重要になります。
例えば、進路相談や高額な医療行為が必要になった際、どのような手順で話し合うのか。あるいは、日常的な習い事の選択などはどちらの判断に委ねるのか。
こうした具体的なルールを決めておかないと、共同親権とした場合に、かえって子どもの生活に混乱を招く可能性があります。
2-3 親子交流や養育費についても具体的に決める必要がある
親権のあり方に注目が集まりがちですが、子どもの生活を支える養育費や、親子の関係を維持する親子交流(面会交流)についても、今回の法改正によりルールが見直されています。
共同親権を選択したからといって養育費の支払義務がなくなるわけではなく、また、単独親権であっても親子交流が当然に制限されるものではありません。
こうした前提を踏まえ、経済的な支援と親子交流の双方について、具体的な取り決めを行っておくことが重要になります。
第3章 共同親権で何が変わる?② 親権の行使方法が明確化された
3-1 共同親権では、重要な事項は父母で話し合って決める
共同親権のもとでは、親権は父母が共同して行使することが原則とされています。そのうえで、子どもの進学や転居など、重要な事項については、父母が協議のうえで決定することになります。
重要な事項の代表例としては、以下のようなものが挙げられます。
・手術や長期の入院を伴う治療方針などの医療に関する決定
・居住地の指定や変更(引っ越し)
これらは子どもの生活に大きな影響を与えるため、離婚後も父母が意見をすり合わせ、合意形成を図る努力が求められます。
3-2 日常のことや緊急時は単独で判断できる場面もある
子どもについてすべての物事を二人で決めなければならないとすると、日常生活に支障が生じるおそれがあります。そのため、改正法では、親権は父母が共同して行使することを原則としつつも、一定の場合には一方の親が単独で判断できる場面があることが明確にされています。
具体的には、食事や通学、習い事の選択など日々の生活における監護や教育に関する事項については、日常の監護教育に関する行為として単独で判断することができます。
また、子どもの生命や身体に関わるような緊急の医療対応や、DVなどからの避難といった急迫の事情がある場合にも、相手の同意を待たずに判断することが認められています。
3-3 意見が対立した場合は家庭裁判所の関与も想定される
重要な事項について父母の意見がどうしても一致しない場合、そのままでは子どもの生活に支障が生じるおそれがあります。このような場合には、家庭裁判所に対して申し立てを行い、特定の事項についてどちらの親が親権を行使するかを定めることができます。
裁判所は、父母それぞれの状況や子どもの利益を踏まえたうえで、個別の事情に応じて判断を行います。ただし、こうした手続きは時間や労力がかかることも少なくありません。こうした点を踏まえ、できる限り協議の段階で、意見が対立した場合の対応方法(例えば第三者を介した話し合いの利用など)についても整理しておくことが、実務上は有効といえます。
第4章 共同親権で何が変わる?③ 養育費のルールが強化されている
4-1 養育費の支払を確保する仕組みが強化された
共同親権が選択できるようになったとしても、子どもの生活を支えるための養育費の支払義務がなくなるわけではありません。親権の形にかかわらず、父母はそれぞれ子どもを扶養する責務を負うことになります。
これまで養育費については、取り決めをしても実際に支払われないという問題が指摘されてきました。今回の改正では、こうした問題に対応するため、養育費の支払を確保する仕組みが見直されており、その一つとして、養育費債権に「先取特権(さきどりとっけん)」と呼ばれる優先権が付与されることとなりました。
従来は差押えを行うために公正証書や調停調書などの債務名義が必要とされていましたが、今回の改正により、父母間で作成した文書(離婚協議書や養育費に関する合意書など)に基づいて差押えの手続を進めることができるようになります。
4-2 養育費の金額が決まる前でも暫定的に一定額を請求できる制度が新設された
共同親権を選択した場合であっても、養育費について事前に十分な取り決めがされていないケースは少なくありません。
これまでは、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合、改めて調停などを申し立てて金額を決める必要があり、その間は養育費を受け取れない状態が生じることがありました。
今回の改正では「法定養育費」という制度が新設されました。これは、事前に取り決めがない場合であっても、離婚のときから引き続き子供の監護を主としている側の親が、もう一方の親に対して暫定的に一定額の養育費を請求できる仕組みです。
具体的には、子ども1人あたり月額2万円の養育費を請求することができ、この請求は離婚時から発生し、当事者間で養育費の取り決めが成立するか、家庭裁判所の審判が確定するまで継続します。
この制度はあくまで暫定的なものであり、最終的には収入などを踏まえた適切な金額を別途定める必要がありますが、離婚直後の生活を支える最低限の仕組みとして位置付けられています。
4-3 相手の収入が分からない場合の手続も整備された
共同親権のもとでは、父母双方が関わりながら子どもの養育を行うことになりますが、その前提として、養育費の金額を適切に定めることが重要になります。その際に問題となりやすいのが、相手方の収入状況が分からないという点です。
今回の改正では、こうした問題に対応するため、家庭裁判所が当事者に対して収入情報の開示を求めることができる仕組みが整備されています。
これにより、相手の収入状況が明らかでない場合であっても、一定の範囲で情報を把握したうえで、より適切に金額を決めていくことが可能になります。
第5章 共同親権で何が変わる?④ 親子交流(面会)の考え方が整理された
5-1 親子交流は子の利益を最優先に定められる
共同親権を選択した場合には、離婚後も父母双方が子どもと関わることになりますが、親子交流の在り方については、親権の形にかかわらず、子どもの利益を最優先に判断される点は変わりません。
改正法では、親子交流について「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記されており、別居している親の意向だけでなく、子どもが健全に成長していくためにどのような関わり方が望ましいかという観点から検討されることになります。
したがって、単に会う回数を決めるだけでなく、子どもの体調や学校行事、精神的な負担を十分に考慮したスケジュールを組むことが重要になります。
5-2 祖父母などとの交流についても制度が整備された
共同親権のもとでは、父母双方が子どもに関わる形になりますが、それに加えて、父母以外の親族(祖父母など)との関係についても問題となる場面があります。
今回の改正では、一定の場合に家庭裁判所が関与し、祖父母などと子どもとの交流について判断できる仕組みが設けられています。
これにより、父母の離婚後であっても、子どもの利益の観点から必要と認められる場合には、祖父母などとの交流を継続することができる可能性があります。
第6章 親の関係性によって裁判所の共同親権・単独親権の判断はどう変わるか
6-1 協議ができる関係かどうかが大きな判断要素になる
共同親権が適切に機能するかどうかは、父母間で一定の意思疎通が可能な関係にあるかどうかに大きく左右されます。
形式的に共同親権を選択したとしても、連絡が取れない状況が続いたり、意思決定のたびに対立が生じたりする場合には、子どもの生活に影響が及ぶおそれがあります。
このような事情を踏まえ、裁判所は、父母が協力して親権を行使することができる状態にあるかどうかを踏まえて判断を行います。父母間で建設的な話し合いが可能な関係にある場合には共同親権が検討されますが、そうでない場合には単独親権が相当と判断されることもあります。
6-2 共同での意思決定が難しい場合は単独親権が選ばれることがある
すでに別居期間が長く交流がほとんどない場合や、価値観の相違が大きく、教育方針などについて継続的な協議が困難と考えられる場合には、共同親権とした場合に意思決定が円滑に進まないおそれがあります。
このような状況では、重要な事項について判断が滞ることを避けるため、裁判所は父母の関係性や子どもの利益を踏まえたうえで、単独親権とすることを含めて検討することになります。
自身のケースにおいて、共同親権のもとで適切に意思決定ができる状況にあるかどうかについては、個別の事情を踏まえた検討が重要になります。
第7章 共同親権に関して誤解されやすいポイント
7-1 共同親権が原則になるわけではない
ニュースなどの見出しで「共同親権導入」と大きく報じられたため、これからは離婚したら必ず共同親権になるといった誤解をされているケースも多いようです。しかし、あくまで今回の改正は「共同親権という選択肢が増えた」のであり、原則としてどちらかに決まったわけではありません。単独親権が適切なケースでは引き続き単独親権が採用されます。
制度としては、個別の事情に応じて適切な親権のあり方を選択できるようにするものとされています。
7-2 自動的に共同親権に切り替わるわけではない
すでに離婚して単独親権となっている方が、法改正によって「自動的に共同親権になる」ということもありません。
既に離婚している場合でも、法改正後に改めて家庭裁判所に申し立てを行い、親権者の変更が認められれば共同親権に移行することは可能です。ただし、そのためには、現在の監護状況や子どもの意向などを踏まえ、変更することが子どもの利益にかなうことを個別に証明する必要があります。
既に離婚している場合の共同親権については以下の記事で詳細を確認いただけます。
共同親権はすでに離婚している場合でも関係ある?元配偶者から共同親権を求められた場合や単独親権を維持したい場合のポイントを弁護士が解説
第8章 弁護士に相談すべきタイミングとポイント
共同親権という選択肢が広がったことで、離婚時に検討すべき事項は従来よりも増えています。もっとも、制度の内容を理解するだけでは足りず、実際の状況に当てはめてどのように判断すべきか、またどのような取り決めを行うべきかについて迷う場面も少なくありません。このような場面では、法的な観点から状況を整理し、どのように進めるべきかを考えるうえで、弁護士が一つの支えとなります。ここでは、共同親権に関する判断や取り決めにおいて、弁護士に相談することが有効となる代表的な場面を整理します。
8-1 親権の方針について相手と意見が対立している場合
例えば、単独親権を希望しているにもかかわらず相手が共同親権を主張している場合や、反対に、共同親権を希望しているのに相手が単独親権を主張している場合には、早い段階で弁護士に相談することが有効といえます。
親権の判断は、これまでの監護状況だけでなく、父母の関係性や将来の意思決定の在り方なども踏まえて行われます。当事者同士の主張が食い違ったままでは、何を基準に判断されるのかが分からず、議論がかみ合わないまま長期化することも少なくありません。
弁護士に相談することで、どのような事情が重視されるのかを踏まえて主張を整理し、適切な形で対応を進めていくことができます。
8-2 共同親権にした場合の運用に不安がある場合
共同親権を選択する場合には、その後の運用が現実的に可能かどうかを事前に検討しておくことが重要になります。例えば、日常的に連絡が取れる関係にあるか、重要な意思決定について話し合いができるかといった点は、意思決定や子どもの養育環境に大きく影響します。
こうした点に不安がある場合には、どのような取り決めをしておくべきか、また共同親権以外の選択肢も含めて検討する必要があるかについて、弁護士の助言を受けることで判断の精度を高めることができます。
8-3 共同親権を前提とした取り決めが不十分なまま進みそうな場合
共同親権は、離婚後も父母の双方が関与して意思決定を行うことを前提とした制度です。例えば、進学や転居といった重要な事項についてどのように判断するのか、意見が対立した場合にどのように調整するのかといった点が曖昧なままでは、離婚後、共同親権とした場合に意思決定が滞るおそれがあります。
そのため、共同親権を前提とするのであれば、将来の生活を見据えて、どのような取り決めが必要になるのかを事前に整理しておくことが重要になります。
こうした点について不安がある場合には、弁護士の助言を受けながら具体的な内容を詰めていくことが有効です。
第9章 共同親権で後悔しないために
共同親権という選択肢が増えることで、離婚後も父母が協力して子どもを育てる道が開かれました。しかし一方では、取り決めの不備や関係性の悪化が、かえって子どもの生活を不安定にするリスクもあります。
大切なのは、子どもの健やかな成長のために、親として取れる最善の形は何かを真摯に検討することです。共同親権と単独親権、それぞれのメリットとデメリットを正しく理解し、養育費や親子交流といった実務的なルールを盤石に整えることが、後悔しない離婚への鍵となります。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスは、お一人おひとりの状況に寄り添いながら最適な解決策をご提案いたします。これからのお子さまの未来を守るために、少しでも不安を感じられたら、ぜひお気軽に私たちへご相談ください。
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外国人との離婚では、離婚そのもの以上に、子どもの親権や面会交流に加え、「どの国で子どもを育てるのか」といった点が大きな争点になりやすいといえます。特に、相手が海外に住む可能性がある場合や、子どもを国外に連れて行く話が出ている場合には、深刻な対立に発展する可能性があります。この記事では、外国籍の配偶者との離婚において話し合いだけでは解決が難しくなりやすい、親権・面会交流・子の国外移動リスクについて、調停や裁判の実務も踏まえながらポイントを整理します。
第1章 外国人との離婚で親権はどう決まる?日本のルールと判断の考え方
1-1 どの国の法律で親権を判断するのか
国際離婚において、子どもの親権をどの国の法律に基づいて決めるべきかという問題は、法律用語で準拠法(じゅんきょほう)の決定と呼ばれます。日本では法の適用に関する通則法という法律にそのルールが定められています。
原則として、子どもと父母に共通する本国法(国籍)がある場合にはその国の法律が適用されますが、夫婦の国籍が異なり、子どもが二重国籍であるようなケースでは、子どもが実際に生活の基盤を置いている場所の法律が優先されることが一般的です。
したがって、日本で生活している家族であれば、相手が外国籍であっても日本の民法に従って親権を判断することになります。
1-2 家庭裁判所が重視する「子どもの利益」とは何か
日本の家庭裁判所が親権者を指定する際、最大の基準となるのが「子どもの利益」です。これは、どちらの親が親権者になることが、子どもの心身の健やかな成長にとって望ましいか、という視点です。
親権の獲得には、経済力がある方が有利と思われがちですが、実際にはそれだけで決まるわけではありません。親権者の決定は、これまでの育児への関わり方、子どもとの情緒的な結びつき、現在の生活環境の継続性、そして将来にわたって安定した養育ができる体制が整っているか、といった多角的な要素を総合して判断されます。さらに、子どもの年齢によって、どの事情をどの程度重視するかは変わるため、年齢も重要な前提事情として考慮されます。
1-3 共同親権が導入されても注意が必要?実務で気をつけるべき点
これまで日本の民法では、離婚後は父母のどちらか一方が親権者となる単独親権のみが認められてきました。しかし、2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の共同親権が導入され、父母の協議によって共同親権か単独親権かを選択できるようになりました。
もっとも、共同親権が常に選ばれるわけではなく、実務上は単独親権が認められる場面も引き続き想定されます。
この点、国際離婚の実務においては、相手方の国の制度との違いに引き続き注意が必要です。例えば、欧米諸国の多くでは共同親権が原則とされているため、日本で単独親権が認められた場合であっても、相手国においてはもう一方の親の関与が十分に確保されていないと評価される可能性があります。
将来的に子どもを連れて相手の母国へ行く可能性がある場合は、日本の法律上の結論がそのまま海外で受け入れられるとは限らない点について留意しておく必要があります。
第2章 親権で揉めたときに見られるポイント|実務で重視される5つの事情
2026年4月1日施行の法改正により、調停や裁判における親権の判断では、まず父母が共同で親権を行使できる状況にあるかが検討され、そのうえで具体的な事情が総合的に考慮されるようになりました。したがって、これらの事情は、単にどちらの親が主として子を養育するかだけでなく、父母が協力して子の養育に関与できるかという観点からも評価されることになります。以下では、実務上特に重視される代表的な事情について整理します。
2-1 これまで誰が子どもを育ててきたか(監護実績)
親権争いにおいて最も重視されるのが「継続性の原則」です。これは、これまで主に子どもの面倒を見てきた者(監護親)が、今後も一緒に暮らして育てるのが子どもにとって心理的な負担が少ないという考え方です。
具体的には、日々の食事の用意、入浴、寝かしつけ、学校や保育園の送り迎え、病院への通院といった子どもの生活全般にどの程度関与してきたかが判断の対象となります。特に子どもが幼い場合には、生活の連続性や安心感が重視されるため、この監護実績がより大きな意味を持つ傾向があります。
国際離婚の場合には、日本で生活する子どもの環境に適切に対応できているかという点も併せて検討されます。例えば、日本語での意思疎通が日常生活に支障なく行われているか、学校生活や地域での生活に無理なく関与できているかといった事情は、調停や裁判においても評価の対象となることがあります。
2-2 今後の生活環境は安定しているか(住居・学校・生活基盤)
離婚後の住居が確保されているか、転校を伴う場合に子どもへの影響が過度にならないかなど、生活基盤の安定性も重要な判断要素です。特に学齢期の子どもについては、学校や友人関係といった現在の生活環境を維持できるかどうかが重視される傾向があります。
そのため、外国籍の親が将来的に母国へ子どもを連れて帰ることを希望している場合には、現地での生活環境や教育体制、支援の有無などについても具体的な裏付けが求められることになります。
2-3 子どもの意思はどこまで考慮されるのか(年齢との関係)
子どもの年齢が上がるにつれて、本人の意思はより重く受け止められるようになります。実務上、おおむね10歳前後から子どもの意向が確認され、15歳以上になるとその意思が判断に大きく影響する場面も少なくありません。
家庭裁判所では、調査官が子どもと面談を行い、どちらの親と暮らしたいかだけでなく、その理由や日常の関係性、生活状況を把握します。
国際離婚の場合には、子どもがどちらの親と暮らしたいかという意思に加えて、どの国で生活することになるのかという点も問題となるため、その意思の内容が現実の生活環境とどのように結びついているかも踏まえて検討されます。
2-4 日本で育てるか、海外で育てるかという選択の考え方
国際離婚において特徴的な論点が、子どもをどの国で育てるかという問題です。この点については、言語、教育環境、医療体制、親族の支援など、複数の要素を踏まえて比較検討されます。特に学齢期以降の子どもについては、教育言語の変更や学習環境の違いが大きな影響を与える可能性があるため、その適応可能性や将来への影響が慎重に考慮されます。
一方で、幼い子どもの場合には、どの環境で安定した養育が継続できるかという観点がより重視される傾向があります。
2-5 別居親との面会にどれだけ配慮できるか(協力姿勢)
もう一方の親と子どもの関係をどのように維持できるかという点も、親権者の適格性を判断する要素の一つです。他方の親との面会交流に対して協力的であるかどうかは、子どもの健全な成長にとって重要と考えられているからです。
特に、2026年4月1日に施行された法改正により、父母が協力して子の養育に関与できるかという点は、これまで以上に重要な判断要素として位置づけられています。そのため、合理的な理由なく、他方の親と子どもとの交流を一方的に制限する態度は、調停や裁判において不利に評価されやすくなります。
特に国際離婚の場合には、面会交流が国内で完結せず、海外との往来やオンラインでのやり取りを前提とする場面が生じることがあります。こうした事情を踏まえ、移動に伴う負担や言語の違いといった現実的な事情を踏まえながら、どの程度柔軟に対応できるかが、調停や裁判においても考慮されることがあります。
第3章 面会交流で後から揉めないために|離婚時に決めておくべき具体的な内容
3-1 オンライン面会・連絡頻度など日常的な交流の決め方
相手が子どもを連れて海外や遠方に住むことになる場合、物理的に子どもと面会できる回数は限られます。そのため、オンラインによるビデオ通話を利用した交流が重要になります。
例えば、「毎週土曜日の日本時間20時から30分間」というように、曜日と時間を特定しておくことがトラブルを防ぐ有効策となり得ます。また、子ども自身が直接デバイスを操作できない年齢の場合は、監護している親がどの程度サポートするかについても合意をとっておくことが重要です。
3-2 一時帰国や長期休暇中の面会ルールをどう決めるか
長期休暇などを利用して直接会う場合のルールも、離婚時に細かく詰めておくべきです。
例えば、「夏休みのうち5日間」と期間を定めるのか、「12月25日から30日まで」と日にちを特定するのか。また、日本国内で会うのか、それとも相手の国へ渡航して会うのか。渡航を伴う場合は、宿泊先情報の共有や、緊急時の連絡網についても、明確に決めておくのが望ましいです。
3-3 旅費・滞在費・通訳など現実的な負担の整理
相手が子どもを連れて海外に移住した場合、面会交流には多額の費用がかかることになります。航空券代、宿泊費、移動に伴う諸費用をどちらがどの割合で負担するのかを明確にしておかなければ、経済的な理由で交流が途絶えるおそれがあります。
また、子どもと別居した親との間で言語の違いが生じる場合には、どのようにコミュニケーションを取るのかについてもあらかじめ整理しておく必要があります。子どもが幼い場合、海外移住によって別居親の言語に触れる機会が減り、言葉による意思疎通が難しくなる場面も想定されます。そのため、状況に応じて通訳の利用や子どもと一緒に暮らしている親(同居親)の同席といった対応を検討しておくことも望まれます。
3-4 合意内容をあいまいにしないための書面化のポイント
こうした面会交流に関する取り決めは、強制執行力のある書面に残すことが重要です。口約束やメールのやり取りだけでは、面会交流が実施されなくなった場合に是正することが難しく、子どもと会えない状態が継続してしまうおそれがあるためです。
日本の公証役場で作成する離婚給付等契約公正証書や、裁判所での調停調書として、面会交流の具体的な条件を記載しておくことが、紛争を未然に防ぎ、面会交流を確保するための実務的な備えとなります。
第4章 子どもを海外に連れて行っても大丈夫?連れ去りトラブルとハーグ条約
4-1 無断で海外に連れて行くと何が問題になるのか
離婚前や別居中に、もう一方の親の同意を得ずに子どもを国外へ連れ出す行為は、後の手続に大きな影響を与える可能性があります。日本では親権の行使と評価される場合であっても、相手方の国の制度によっては未成年者略取誘拐罪として刑事罰の対象になることがあるためです。
一度、連れ去りと評価されてしまうと、その後の親権裁判において「他方の親との関係を遮断する問題のある親」と評価され、不利な状況に追い込まれるリスクが高まります。
4-2 ハーグ条約の基本と、返還を求められるケース
子どもを他方の親の同意を得ずに、元々生活していた国とは異なる国に移動させた場合、もう一方の親から元の国に戻すよう求める手続がとられることがあります。
こうした場面で問題となるのが、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約「ハーグ条約」です。この条約は、子どもが不適切に国外へ移動された場合に、元の居住国へ速やかに戻すための国際的なルールを定めたものです。
日本で生活していた子どもを海外に連れ出した場合だけでなく、海外で生活していた子どもを日本に連れ帰った場合でも、この条約に基づく返還手続の対象となることがあります。
4-3 パスポート管理や渡航ルールで防げるトラブル
連れ去りの不安がある場合、実務的な予防策を講じる方法もあります。
例えば、子どものパスポートを信頼できる第三者や弁護士に預けておく、あるいは外務省に対してパスポートの発給制限を申請し、自分の同意なくパスポートが作成されないようにする手続きがあります。
また、離婚時の合意書において「国外へ渡航する際は、少なくとも1ヶ月前までに書面で相手の承諾を得る」といった渡航制限条項を設けておくことも有効な対策となります。
第5章 子どもの将来に影響するからこそ、早い段階で整理を
国際離婚における親権や面会交流の問題には、国ごとの制度の違いや国際条約といった枠組みが関係します。良かれと思って取った行動が、法的には不法な連れ去りとみなされ、重大な事態を招く可能性も否めません。また、一度決めた条件を後から変更することは、国内の離婚以上に困難な場合もあります。
まずは、子どもの生活環境をどのように維持していくのか、そして離婚後もどのように親としての責任を果たしていくかを整理したうえで、手続きを進めていくことが重要です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスは、実務経験に基づき、納得のいく前進のためのお手伝いをさせていただきます。少しでも不安があるときには、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
自分が外国人で、日本人の夫と離婚したいときは?日本での離婚の進め方と在留資格の注意点を弁護士が解説

自分が外国人で、日本の法律や役所の手続に慣れていない場合、日本人の夫と離婚したいと思っても、どのように進めたらよいのか不安だと思います。この記事では、外国人の妻が、日本人の夫との離婚を考えるときに知っておきたい離婚手続の流れや、在留資格の注意点を、弁護士が説明します。
第1章 日本での離婚手続はどのように進むのか
1-1 夫婦の話し合いで成立する「協議離婚」の基本
日本で多い離婚の方法は、夫婦で話し合いをして決める協議離婚(きょうぎりこん)です。夫婦が二人とも離婚することに納得し、どちらが子どもを育てるか(親権)などの条件が決まれば、自分の住んでいる地域の役所に離婚届を出すだけで離婚が成立します。
1-2 離婚の合意ができない場合の「調停」と「裁判」
しかし、夫婦のどちらかが離婚に反対している場合や、お金の分け方などで意見が合わないときや、離婚届に自分と相手の両方がサインできないときには、役所に離婚届を提出するというかたちで離婚をすることができません。
その場合は、家庭裁判所を利用することになります。
まずは離婚調停(りこんちょうてい)という手続きを行います。これは、裁判所で調停委員という人が間に入って、あなたと夫がそれぞれの考えを話し、離婚の条件(お金や生活のことなど)を話し合う手続きです。
もし、この調停でも話がまとまらない場合には、最終的に離婚訴訟(りこんそしょう)へと進みます。これは裁判で離婚を目指す手続きとなり、裁判では、裁判官が離婚の原因となった証拠などを見て、離婚を認めるかどうかを判断します。
1-3 外国の方が手続で戸惑いやすいポイント
日本で離婚手続きを進める中で、外国人の方が特に難しいと感じることの一つは、言語の問題です。
役所や裁判所の書類はすべて日本語で書かれています。離婚届の記入だけでなく、裁判所に提出する証拠書類なども、すべて日本語で書いて提出しなければなりません。
また、裁判所での手続き(調停など)も日本語で行われます。日本語での会話に自信がない場合は、自分で通訳の人を準備するか、裁判所に通訳のサポートを相談する必要があります。
言葉の問題で自分の意見が正しく伝わらないと、不利な条件で手続きが進んでしまう可能性があるため、注意が必要といえます。
第2章 離婚した後の在留資格(ビザ)はどうなるのか
2-1 「日本人の配偶者等」の在留資格は離婚後どう扱われるか
今、「日本人の配偶者等」という在留資格で日本に住んでいる場合、離婚すると、そのまま同じ資格で日本に住み続けることが難しくなることがあります。この在留資格は「日本人の配偶者であること」を前提として認められているものだからです。
そのため、離婚したあとも日本で生活したい場合は、在留資格についてどうするかを考える必要があります。
2-2 日本に住み続けるためには在留資格の変更が必要
離婚した後も日本で生活を続けるためには、自分に合った別の在留資格に変更する必要があります。
例えば、日本人の子どもを育てている場合や、日本での結婚生活が長く、日本に生活の基盤がある場合などは、「定住者(ていじゅうしゃ)」という在留資格へ変更できる可能性があります。
他にも、仕事の内容によっては就労のための在留資格に変更できる場合もあります。
どの資格に変更できるかは、これまでにどれぐらい日本に住んでいるか、仕事をしているかどうか、子どもがいるかどうかなどによって個別に判断されます。
そのため、まずは出入国在留管理局(入管)に相談し、自分の場合はどの在留資格が考えられるかを確認することが大切です。
2-3 出入国在留管理局への届出と手続のタイミング
日本人の夫と離婚したときは、離婚が成立した日から14日以内に出入国在留管理局(入管)へ「配偶者に関する届出」を出さなければなりません。これは法律で決まっている義務です。
この届出を忘れてしまうと、次の在留資格への変更手続きに悪い影響が出たり、罰則を受けたりすることもあります。
第3章 離婚後の生活を支えるために整理しておきたいこと
3-1 離婚時のお金のこと(財産分与・慰謝料)
離婚をしたいと思った時には、まずはお金のことを考える必要があります。
日本での離婚では、財産分与(ざいさんぶんよ)と慰謝料(いしゃりょう)という2つのお金の問題が生じることがあります。それぞれ意味が異なるため、分けて理解しておくことが大切です。
財産分与とは何か
日本の法律では「結婚している間に得た財産は、離婚の際に夫婦で分ける」という考え方が基本になり、それを財産分与といいます。
たとえば、夫の口座にある貯金であっても、結婚してから増えた部分については、結婚している間に得た財産として、二人で分ける対象になります。
それぞれが独身時代に買った財産(家など)は、分ける対象にはなりません。
慰謝料とは何か
慰謝料とは、相手の行為によって精神的な苦痛を受けた場合に、その補償として支払われるお金です。例えば、夫の不倫や暴力など、婚姻関係を壊す原因となる行為があった場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。もちろんあなたに原因がある場合は、あなたが慰謝料を支払うことになる可能性もあります。
3-2 離婚後の生活のこと(家・収入)離婚後の生活に向けた住居・収入の確保
お金のことにプラスして、離婚ができた後の生活をどうしていくかというのも考えなければいけません。
まずは住む場所を検討します。夫が家を出るのか、自分が新しい部屋を借りるのかを決めなければなりません。外国籍の方が新しく部屋を借りる場合、保証人が必要になることがあり、時間がかかることもあります。そのため、早めの準備が必要です。
次に、仕事と収入です。現在の収入で生活ができるかを考え、足りない場合はどのような仕事を探すかを考えます。
また、日本にはひとり親家庭(シングルマザー)などを支援する公的な制度(児童扶養手当など)もあります。お住まいの市区町村の役所で、どのようなサポートが受けられるかを確認しておくことで、生活の不安を少しでも減らすことができます。
第4章 外国人の妻が弁護士に相談した方がよい場面
ここまで、日本での離婚の進め方や在留資格、生活の準備について説明してきました。
しかし、実際に離婚の話を進めると、相手が話し合いに応じなかったり、在留資格の問題が重なったりして、一人で対応するのが難しくなることもあります。
このような場合には、弁護士に相談することも一つの方法です。ここでは、どのようなときに相談した方がよいかを説明します。
4-1 話し合いが進まず、条件の整理ができない状態が続いている場合
夫に離婚したいと伝えても、「絶対に離婚しない」と言われたり、逆に「離婚したければお金は1円も払わない」といった条件を出されたりして、離婚の話し合いが止まってしまうことがあります。
当事者同士では話が前に進まないときは、弁護士に相談して話し合いを整理することが有効です。法律に基づいた条件を整理することで、夫側の考えが変わり、話し合いが進むこともあります。
4-2 日本語での書類対応や裁判所の対応に不安がある場合
裁判所の手続きは、非常に複雑な日本語の書類をやり取りします。一度書類にサインをすると、内容をよく理解していなかった場合でも、後から取り消すことは難しくなります。
「夫が用意した書類の内容が合っているか不安」「裁判所からの書類にどう返信すればいいか分からない」という状態であれば、専門家のサポートが必要です。弁護士に相談すると、書類の内容を分かりやすく説明してもらい、必要な対応についてアドバイスを受けることができます。
4-3 在留資格や生活の見通しまで含めて整理したい場合
「離婚はしたいけれど、その後のビザがどうなるか怖くて動けない」という不安を抱えている場合も、相談をしてみるタイミングです。
離婚の手続きだけを進めるのではなく、離婚後の在留資格の変更が可能かどうか、生活費をどのように確保するかといった、生活全体の見通しをセットで整理する必要があります。
今の状況を整理することで、不安を減らし、何を準備すればよいかが分かるようになります。
第5章 【FAQ】日本人の夫との離婚でよくある疑問
Q1. 離婚するとすぐに日本にいられなくなりますか?
A1. すぐに退去になるとは限りません
離婚したからといって、すぐに日本を出なければならないわけではありません。今の在留資格の期限までは、日本にいることができます。ただし、配偶者としての生活を6か月以上していない場合は、在留資格が取り消される可能性もあります。そのため、早めに別の在留資格への変更を考えることが大切です。
Q2. 今住んでいる家に、そのまま住み続けることはできますか?
A2. 住み続けられるかどうかは、その家の契約や名義によって変わります。
住み続けられるかどうかは、その家の契約や名義によって変わります。賃貸物件の場合は、あなたが契約者であれば、そのまま住み続けられる可能性が高いといえます。一方で、夫の名義で契約している場合には、離婚後に部屋を出ていくよう求められることもあります。また、夫の持ち家に住んでいる場合は、そのまま住み続けることは難しいことが多いです。ただし、離婚時の話し合いの内容によっては、ある程度の間、住み続けることが認められることもあります。
Q3. 夫との間にできた子どもは、どちらが引き取ることになりますか?
A3. 親権者を決める必要があります
日本では、離婚するときに、どちらが子どもを育てるか(親権者)を決める必要があります。親権は、これまでの子どもの生活や、これからの生活の環境などをもとに決められます。外国人が関係する場合には、子どもの住む場所や将来の生活に関する問題も含めて、慎重な判断が必要になります。
親権や面会交流については判断が難しくなることが多いです。もっと詳しく説明している別の記事も読んでみてください。
外国籍の配偶者と離婚をする際の親権・面会交流はどう決める?子どもの国外移動リスクについても弁護士が解説
Q4. 弁護士に相談すると、どのくらい費用がかかりますか?
A4. 費用の目安は数十万円程度からです。ただし、初回無料の相談も多くあります
多くの法律事務所では、初めての相談を無料で受けられることがあります。そのため、まずは相談してみて、自分の場合はどのような対応が必要か、どれくらい費用がかかるのかを聞いてみましょう。弁護士の費用は内容によって変わりますが、離婚の交渉や調停を依頼する場合、一般的には数十万円程度以上になる場合が多いとされています。
費用は安いものではありませんが、相手に不倫や暴力などの原因がある場合には慰謝料を請求できる可能性がありますし、財産分与として一定のお金を受け取れる場合もあります。そのため、今、手元に十分なお金がない場合でも、最終的に夫から受け取ることができる金銭から費用を支払う形で対応できるケースもあります。自分にとって無理のない進め方ができるかどうかを確認してみましょう。
第6章 あなたの新しい生活に向けて、早めの整理が大切です
日本で生活する外国人の方にとって、日本人の夫との離婚は、家族の問題だけでなく、日本での在留資格やこれからの生活に大きく関わる出来事です。日本語の書類や慣れていない手続きに戸惑うこともあると思います。一人で考えるのが難しくなることもあります。
大切なのは、後回しにせず、まずは今の状況を整理することです。どのように離婚を進めるのか、離婚したあとも日本で生活するために何を準備すればよいのかを知ることで、不安を減らすことができます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、一人ひとりの状況に合わせたサポートを行っています。分からないことや不安なことがあるときは、一人で悩まずにご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
外国人夫と離婚したい日本人妻が直面する問題点とは?国際離婚をスムーズに進めるために知っておきたい要点を弁護士が解説

外国人の夫と離婚したいと思っても、日本人同士の離婚と同じ感覚では進めにくいことがあります。日本の法律で進められるのか、相手が帰国したらどうなるのか、海外にある相手の資産も財産分与の対象になるのかなど、国際離婚では判断に迷いやすい場面が少なくありません。この記事では、日本人の妻が外国人の夫との離婚で悩みやすい点を弁護士が分かりやすく解説します。
第1章 外国人夫と離婚したい場合、日本で離婚できるのか
1-1 日本の法律で離婚できるケースと、法の適用に関する通則法とは
日本で生活している日本人女性が外国籍の夫との離婚を考える場合、まず問題となるのが、日本の法律に基づいて手続きを進めることができるかという点です。
この判断の基準となるのが、法の適用に関する通則法(つうそくほう)です。通則法とは、国際結婚や国際相続のように複数の国の法律が関係しうる場面で、どの国の法律を使って判断するかを決めるための法律です。
通則法第27条では、離婚にどの国の法律を適用するかについて、一定の優先順位が定められています。
双方が日本在住なら日本の民法が適用されるケースが多い
夫婦の国籍が異なる場合、基本的には夫婦が共通して生活の拠点としている場所の法律が適用されます。したがって、夫婦双方が日本で生活している実態があるのであれば、日本の民法に基づいて離婚手続きを進めることが可能となるケースが多いといえます。
ただし、次のような事情がある場合には注意が必要です。
・夫婦が別々の国で生活している
・日本での生活期間が短い
このような場合には、どの国の法律を適用するかについて判断が分かれることがあります。したがって、まずは夫婦それぞれの居住状況や生活の実態を整理することが重要です。
夫が帰化して日本国籍となっている場合の扱い
夫が帰化して日本国籍を取得し、夫婦ともに日本国籍となっている場合には、原則として日本人同士の離婚として、日本の民法に基づいて手続が進められることになります。そのため、離婚の方法や判断基準については、基本的には通常の日本人夫婦の離婚と同様に考えることができます。
1-2 日本で離婚しても、相手の国で有効になるとは限らない
日本では、夫婦が合意すれば役所に離婚届を提出することで離婚が成立します。しかし、この方法がそのまま外国でも同じとは限りません。例えば、国によっては裁判所の関与がない離婚を有効と認めない制度を採用していることもあります。
そのため、日本で離婚届が受理されていても、相手の国では婚姻関係が続いていると扱われる事態も生じ得ます。
第2章 相手が離婚に応じない場合、国際離婚で生じる実務上の問題
2-1 話し合いでまとまらない場合は裁判所の手続に進む
離婚は当事者同士の合意があれば成立しますが、相手が離婚に応じない場合には話し合いだけで解決することはできません。
その場合、日本では家庭裁判所の手続を利用することになります。まず調停(裁判所で行う話し合い)を申し立て、それでも合意に至らない場合には裁判へと進みます。
ここまでは日本人同士の離婚と大きくは変わりません。
2-2 外国人配偶者の場合、手続が進みにくくなる場面がある
もっとも、相手が外国人である場合には、調停や裁判になっても手続の進み方に影響が出ることがあります。
例えば、次のような事情が考えられます。
・調停への出席が難しく、手続が長期化する
・日本語での手続に対応できず、意思疎通に時間がかかる
このような事情により、国内の離婚と比べて手続に時間がかかる傾向があります。
2-3 離婚が認められるかどうかの判断はどのように行われるか
裁判で離婚が認められるためには、日本の民法上、一定の理由(離婚事由)が必要とされています。
離婚事由の代表的なものとしては、次のような事情があります。
日本の民法で定められている主な離婚事由
・生活費を渡さない、同居を拒否するなどの悪意の遺棄
・配偶者の生死が長期間不明である場合
・回復の見込みがない重大な精神的障害
・その他、婚姻関係を継続し難い重大な事由
実務上は、この「婚姻関係を継続し難い重大な事由」が中心となり、別居期間の長さや夫婦関係の実態などを踏まえて、離婚が認められるかどうかが判断されます。
例えば、相当期間の別居が続いている場合や、夫婦関係がすでに修復不可能な状態にあると評価される場合には、相手が離婚に同意していなくても、裁判で離婚が認められる可能性があります。
ただし、国際離婚ではここにもう一つ注意すべき点があります。
国際離婚の場合に問題となる離婚事由の考え方
国際離婚ではどの国の法律が適用されるかによって、この離婚事由の考え方自体が変わることがあります。
例えば、日本では別居期間や関係破綻の実態を重視して離婚が認められるケースでも、相手国の法律では離婚の要件がより厳しく定められている場合があります。その結果、日本の感覚では離婚が認められそうな事案でも、適用される国の法律によっては離婚が認められないという結論になる可能性もあります。
第3章 国際離婚を難しくさせる実務上の3つの問題点
3-1 言葉や制度の違いにより、離婚条件の認識がずれる問題
離婚では、財産分与や慰謝料などの条件について当事者同士で整理していく必要がありますが、国際離婚ではこの条件の理解自体がずれる場面も見られます。日常会話に支障がない場合でも、法的な条件や金銭に関する話になると、言葉の使い方や前提の違いから認識にずれが生じやすくなるためです。
たとえば、次のようなケースが実務上よく見られます。
国際離婚で認識がずれやすい例
・「慰謝料」という概念自体が相手の国にはなく、支払う理由が理解されない
・「生活費の補填」という説明をしても、日本の婚姻費用の考え方が前提として共有されていない
・英語で「compensation(慰謝料)」と伝えた結果、損害賠償全般の意味に広く解釈されてしまう
このように、同じ言葉を使っていても、想定している内容が一致していないことがあります。その結果、当事者同士で合意できていると思っていた内容が、後になって覆されるといった事態も起こり得ます。
また、通訳を介してやり取りを行う場合でも、法律用語や制度の背景まで正確に伝えることは容易ではありません。特に金銭条件のように具体的な数字が関わる場面では、わずかな理解の差が対立につながることもあります。
3-2 相手が帰国・行方不明になった場合に進まなくなる手続(送達)の問題
話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所の調停や裁判を利用することになります。このとき問題になるのが送達です。
送達とは、裁判所から相手に対して書類を正式に届ける手続のことをいいます。この手続が完了しなければ、調停や裁判を進めることができません。
相手が日本にいれば通常の郵送などで対応できますが、海外にいる場合には事情が変わります。海外への送達は、相手国の制度に従って書類を届ける必要があります。そのため、日本の裁判所から外務省などを経由して相手国の機関に送付されるなど、複数の手続を経ることになり、数か月から1年以上かかることもあります。
また、相手の住所が分からない場合には公示送達という方法が検討されますが、その前提として所在調査を行う必要があります。相手が海外にいる場合、この調査自体が難しくなることも少なくありません。
3-3 どこの国で手続を進めることになるのか分かりにくい問題
第1章で、夫婦双方が日本在住の場合には日本の法律に基づいて離婚手続を進めることができる点に触れましたが、これはあくまで「どの法律を使うか」という問題です。これとは別に、「どの国の裁判所で手続を進めるのか」という問題があります。
例えば、相手方が自分の国(海外)で離婚の訴訟を提起した場合、日本に在住している側であっても、その手続への対応が必要になる可能性があります。
この考え方は国際裁判管轄と呼ばれ、どの国の裁判所がこの離婚について判断する権限を持つのかという問題です。
一般に、相手の住所が日本にある場合は日本の裁判所で手続を進めやすいといえますが、実際の判断は個別事情によって異なります。相手が海外に居住している場合には、日本での手続が認められない可能性もあります。
第4章 国際離婚で特に注意すべき財産分与のポイント
4-1 離婚で対象になる財産には海外資産も含まれる
離婚の際の財産分与では、日本国内にある財産だけでなく、婚姻期間中に形成された財産であれば、海外にあるものも対象となり得ます。例えば、次のようなものが考えられます。
財産分与の対象となり得る主な例
・夫の母国にある銀行口座や現金資産
・海外に保有している不動産(名義は親族でも実質的に夫の資産と考えられるものを含む)
・海外法人の持分や事業収益
・家族への仕送りや海外口座への資金移動など、日本から海外へ送金されていた資金(これ自体が分与対象になるかは別として、海外に財産が存在する可能性を示す手がかりとなるもの)
一見すると、日本にあるものだけを分ければよいと思いがちですが、実際には海外にある資産も含めて検討する必要があります。
4-2 海外資産を把握できないまま条件を決めてしまうリスク
海外資産を持っている可能性がある場合でも、その内容や金額を正確に把握できないまま話し合いが進んでしまうケースは少なくありません。
例えば、日本にいる側が自分の預金や不動産については資料を出している一方で、相手の海外資産については十分な情報がないまま、日本にあるものだけを基準に分けるという形で条件を決めてしまうことがあります。
このような状態で合意してしまうと、日本にある財産については分与の対象とされる一方で、相手の海外資産は十分に考慮されないまま条件が確定してしまう可能性があります。その結果、実質的には自分の財産だけが分与され、相手の資産については十分に反映されない形になってしまう可能性もあります。
後から海外資産の存在が分かったとしても、すでに成立した合意を見直すことは容易ではありません。結果として、本来想定されるよりも不利な条件で離婚が成立してしまう可能性があります。
相手から「海外には大きな財産はない」「日本にあるものだけで考えればよい」と説明された場合も、それを前提に話を進めてよいかどうかは慎重に見極めることが重要です。
4-3 海外資産を取りこぼさないために、離婚前に確認しておきたいこと
海外資産の有無や内容を完全に把握することは難しい場合もありますが、離婚前の段階で確認しておくことで、その後の対応に差が出るポイントがあります。
重要なのは、後からでは確認が難しくなる情報をできる限り押さえておくことです。例えば、次のような情報は、海外資産の有無を判断する手がかりになります。
離婚前に確認しておきたい情報の例
・相手の勤務先や収入の状況(海外収入の有無を含む)
・母国にある不動産や事業に関する発言や記録
・銀行口座の存在が推測できるメールやメッセージのやり取り
これらの情報は、離婚後に改めて確認しようとしても取得が難しくなることがあります。そのため、話し合いが可能な段階で、どのような財産が存在するのかを整理しておくことが重要です。
第5章 国際離婚で弁護士に相談すべき具体的な判断基準
5-1 相手が離婚に応じない状態が続き、話し合いが一切進展しない場合
国際離婚では時間の経過によって相手の所在や財産状況が変わり、手続や証拠の確保が難しくなることで、離婚の条件を詰めるうえで不利になる可能性がある点に注意が必要です。
そのため、話し合いが一定期間進展しない場合には、現時点でどのような選択肢があるのかを整理しておく目的でも、一度弁護士に相談されてみるとよいでしょう。
弁護士が関与することで、日本で手続を進めるべきか、どのタイミングで裁判所の手続に移行するべきかといった見通しを具体的に持つことができます。また、確保しておくべき証拠や資料についても整理できるため、対応が後手に回る前に適切な進め方を選択しやすくなります。
5-2 相手の帰国や所在不明により連絡自体が取れない場合
国際離婚では、相手の所在や連絡状況によって、手続そのものが進まなくなることがあります。相手が海外に居住している場合や、連絡が取りづらくなっている場合には、そもそもの離婚の話し合いが難しいケースや、調停や裁判を行うとなった際も書類送達等を含めて手続が滞ることも想定されます。
今の段階で相手ときちんと連絡が取れていないような状態であれば、一度弁護士に相談に来ていただき、どのように相手と離婚の話をしていくか・このまま連絡がつかない場合にどう離婚手続きを進めるかを、先を見据えて検討することが望ましいです。
5-3 相手の資産状況がよく分からない場合
離婚時の財産分与やお子さんがおられる場合の養育費など、離婚時には相手の資産状況や収入状況を把握したうえで条件を詰める必要がありますが、相手と連絡がつかないなどで正確な資産状況が分からないというような場合は、ご自身で離婚の合意をしてしまう前にまずは一度弁護士に相談に来ていただくことをお勧めします。
収入や資産状況の前提が大幅に変わると、受け取れるお金も大きく変わりますので、よくわからない状態で合意してしまうのは避け、弁護士関与の上で相手からどうやって資産状況を確認するか(必要に応じて弁護士の職権での開示も含めて)検討しながら進めるのがよいでしょう。
5-4 相手が先に日本以外で離婚手続きを進めそうな場合
国際離婚では、どの国で手続を進めるかによって、その後の進め方や負担が変わることがあります。例えば、相手が先に母国の裁判所で離婚手続を開始してしまった場合、その国の言語で手続に対応する必要が生じたり、現地の弁護士を通じた対応を求められたりすることがあります。このような状況になると、日本で手続を進める場合と比べて、費用や対応の負担が大きくなることがあります。
そのため、相手の動きや現在の状況によっては、日本側で先に手続を進めることができるかを検討すること自体が重要になる場面もありますので、既に相手が日本以外で離婚手続きの動きをしていそうな場合はできるだけ早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
第6章 国際離婚は一人で悩まずに専門家へ相談を
外国人の夫との離婚では、日本人同士の離婚とは異なる論点が複数関係してきます。どの国の法律で進めるのか、どの手続を選択するのかといった点は、個別の事情によって判断が異なります。また、手続の進め方だけでなく、財産分与の場面では海外資産の有無や内容をどこまで把握できているかによって、最終的な結果に差が生じることもあります。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、弁護士を中心に各分野の専門家が連携しながら、個別の事情に応じたサポートを行っています。国際離婚について不安がある場合には、お気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
刑事事件の示談は後から撤回できる?弁護士が教える法的効力と例外的に認められるケース

刑事事件において、一度は示談書にサインをしたものの、後になって「やはり納得がいかない」「相手に騙されていた」「約束が守られない」といった理由から、示談を撤回したいと考える場面があります。しかし、法的に成立した示談を後から覆すことは、簡単ではありません。本記事では、示談撤回が問題になる場面を整理しながら、刑事事件における示談成立後の効力と、例外的に争えるケースをわかりやすく解説します。
第1章 刑事事件における示談の成立と撤回の原則的ルール
1-1 なぜ示談成立後の撤回は難しいのか
刑事事件における示談は、加害者と被害者が、当該事件について一定の条件で解決することを合意するものです。法的には、民事上の和解契約として整理されるのが一般的であり、いったん有効に成立すれば、当事者はその内容に拘束されます。当該事件について示談の話し合いをしている段階であれば、まだ合意そのものが固まっていないため、条件の見直しや交渉の打ち切りも検討できますが、示談が成立した後は、当該事件について和解が成立しているため、一方の都合だけで元に戻すことは原則として認められません。
これは、当事者間で確定した合意内容を安定させるための原則です。もし「一度決めたことだが、やはり気が変わった」という理由だけで示談が無効になれば、示談金の支払いによる被害回復や、それを受けた刑事処分の決定といった法的な手続きがすべて不安定になってしまいます。そのため、示談成立後の撤回は一般的にハードルが高いのです。
1-2 示談書への署名捺印が持つ確定的な合意としての重み
示談が成立したかどうかは、最終的には個別事情によって判断されますが、実務上は示談書の存在が重要な意味を持ちます。民法上、契約は原則として書面がなくても成立し得るものの、示談書が作成され、そこに署名および押印されていれば、当事者がその内容を確認したうえで合意したことを基礎づける資料となるからです。とくに刑事事件の示談書には、対象となる事件、示談金の金額、支払時期、清算条項、そして被害者がそれを受け入れて加害者を許す(宥恕)という文言などが含まれ、後から争いになりやすい事項がまとめて記載されることが多く、書面化されていること自体が合意内容の明確化につながります。
そのため、署名した後に「内容をよく読んでいなかった」「本意ではなかった」と主張しても、客観的な証拠である示談書の効力を否定することは現実的に難しい場合が多いといえます。裁判所も特段の事情がない限り、署名捺印がある書面の内容を真実の合意として取り扱います。
第2章 法律上で認められる「示談の取り消し・無効」の正当な理由
2-1 重大な事実の勘違いがあった場合の錯誤
とはいえ、示談の成立後であっても、どのような場合でも争えないわけではありません。示談の前提となる核心的な事実について認識に誤りがあり、その誤りがなければ通常はその内容で合意しなかったといえる場合には、「錯誤」が問題となることがあります。
たとえば、被害の程度や損害の内容に関する事情について、示談時点で重大な誤認があったような場面です。
もっとも、錯誤が問題になるためには、何について、どのような認識違いがあり、それが示談の判断にどの程度大きな意味を持っていたのかを具体的に示す必要があります。示談金が思ったより少なかった、後から冷静になって不利に感じたという程度では、通常は足りません。
刑事事件の示談で錯誤を理由に効力を争うには、示談の前提にあった重要事実と合意との結びつきを丁寧に整理することが必要になります。
2-2 相手方の嘘や威圧があった場合の詐欺・強迫
示談に応じた経緯そのものに問題がある場合には、詐欺や強迫による取消しが問題になることもあります。典型的なケースとして、相手方から重要な事実について虚偽の説明を受け、それを信じて示談した場合や、不当な圧力を受けて自由な意思決定が妨げられたまま署名した場合です。
たとえば、被害者が示談に応じなければ不利益が生じるかのように誤った説明を受けた場合や、加害者本人や関係者から心理的圧迫を受け、落ち着いて判断できない状況で署名に至った場合などが考えられます。刑事事件では感情的な対立が強かったり、周囲の関係者が関与したりすることもあるため、形式的に署名があるというだけで、常に十分な意思決定があったとまでは言えない場合もあります。
ただし、ここでも重要なのは立証です。あとから振り返って不本意だったと感じていても、詐欺や強迫があったと認められるためには、具体的な発言、交渉時の状況、メッセージの内容、同席者の有無などを踏まえた客観的な裏づけが必要になります。
2-3 内容自体が著しく不当である場合の公序良俗違反
示談の内容が社会通念に照らしてあまりに不公正である場合、民法90条の公序良俗違反として無効とされる場合があります。例えば、重大な被害が生じているにもかかわらず、事情を十分に理解していない被害者に対して、極端に低い金額で広範な権利放棄を求めるような内容で合意がなされた場合などが問題となり得ます。
もっとも、示談は当事者が互いに譲歩しながら当該事件について終局的な解決を図るものですから、後から見て条件がやや不均衡に感じられるというだけで、直ちに公序良俗違反になるわけではありません。示談金の多寡のみで判断されるものでもなく、合意に至る経緯、被害の内容、条項の範囲などを総合的に考慮して判断されます。
第3章 示談の際の約束が守られない場合には追加で何らかの処罰や対応を求めることができるのか
示談が成立したにもかかわらず、加害者が約束した示談金を支払わない、あるいは謝罪や接触禁止など、示談時に取り決めた条件を守らないというケースも起こり得ます。
刑事事件においては、示談が成立しているかどうかだけでなく、その内容が実際に履行されているかどうかも重要な判断要素となりますので、示談金が支払われていない場合や、約束された対応が行われていない場合には、被害者としては、改めて処罰を求める意思を警察や検察官に伝えることが可能です。
もっとも、刑事事件としてどのように処理されるか、あるいは起訴されるかどうかは、最終的には捜査機関の判断によるため、被害者の意向のみで結論が決まるものではありません。ただし、示談が履行されていないという事情は、処分の判断に影響を及ぼす可能性があります。
この点、示談書の中に、「示談金が支払われた場合には刑事処罰を求めない」というように、示談金が支払われて始めて処罰を求めないという記載にしておくと、実際に示談金が払われない際には、刑事処罰が認められやすいと考えられています。
なお、示談金の支払いが行われないことを理由に、追加で賠償を求めることができるかという点については、通常示談書には清算条項が記載されているため、一回合意をした後で追加での損害賠償請求はできません。
この場合は、示談書に記載されている金額について回収をするべく、訴訟を行い確定判決を得たうえで、強制執行を行うことになります。
第4章 示談を撤回できるか悩んでいる場合に整理すべきポイント
4-1 後悔なのか、法的に争える事情なのかを切り分ける
示談を撤回したいと感じる理由は様々ですが、まず重要なのは、その理由がどのような性質のものかを整理することです。示談金が低かったと感じる、もっと慎重に判断すべきだったと思うといった事情は珍しくありませんが、これらは基本的に結果への不満にとどまると評価されやすく、こうした事情だけで示談の効力を覆すことは難しいと考えられます。
一方で、示談の前提となる事実に重要な誤りがあった場合や、相手方の説明内容に問題があった場合、あるいは十分に検討できない状況で合意してしまった場合には、法的に示談の効力を争う問題として検討できる可能性があります。
まずは、自身の状況がどちらに当たるのかを冷静に整理することが大切です。
4-2 問題となっているのは示談の内容か、履行か
示談後に生じるトラブルは、大きく分けて「合意内容そのものの問題」と「合意後の履行の問題」に分かれます。
たとえば、示談内容自体に納得できない理由がある場合には、錯誤や詐欺といった観点から示談の効力を争うことが問題となります。一方で、示談金が支払われないといった場合には、契約の履行の問題として対応を検討することになります。
まずは、問題がどちらにあるのかを整理することが大切です。
4-3 判断に迷う場合は早い段階で専門家に相談する
ここまで見てきたように、示談の撤回が可能かどうかは個別の事情によって判断が分かれます。示談の内容、成立に至る経緯、交渉時の状況、履行の有無など、複数の要素を踏まえて検討する必要があります。
特に、錯誤や詐欺といった主張を検討する場合では、法的な要件を踏まえた整理が不可欠です。ご自身の状況がどの類型に当たるのかを正確に把握し、適切な対応を検討するためには、早い段階で専門家に相談することが望ましいといえます。
第5章 【FAQ】示談の撤回を検討する場面でよくある疑問
Q1. 口頭での合意でも示談として法的効力が生じるのでしょうか?
A1. 口頭合意でも原則として成立します
示談は契約の一種であるため、必ずしも書面を作成しなくても、当事者間で合意が成立すれば法的効力が認められる可能性があります。ただし、口頭のみの場合には合意内容や成立時期について争いになりやすく、後から立証することが難しくなる点に注意が必要です。トラブルを防ぐためにも書面化しておくことが望ましいといえます。
Q2. 示談金を受け取った後でも、追加で請求することはできますか?
A2. 原則として追加請求は難しい場合が多いといえます
示談金の支払いによって当該事件について解決が図られたと評価される場合、後から追加の請求を行うことは制限されるのが通常です。特に示談書において、将来の請求を行わない旨の合意が含まれている場合には、その効力が問題となります。もっとも、当初の合意の前提となっていた事情に大きな変化がある場合などには、個別に検討が必要となることもあります。
Q3. 示談成立後に相手と連絡が取れなくなった場合、どう対応すればよいですか?
A3. 法的手続で対応を検討します
示談成立後に相手方と連絡が取れなくなった場合でも、示談自体の効力が直ちに失われるわけではありません。支払い義務が履行されていない場合には、内容証明郵便による催告や、支払督促・訴訟などの法的手続を通じて対応することが考えられます。相手の所在や資力の状況によって対応が変わるため、具体的な手段については個別に検討する必要があります。
Q4. 示談書に記載されていない事項については、別途請求できますか?
A4. 記載内容と合意範囲次第で変わります
示談書に記載されていない事項であっても、それが示談の対象に含まれていると解釈される場合には、追加の請求が制限される可能性があります。一方で、示談の対象範囲が限定されている場合や、当初想定されていなかった別個の損害であると評価できる場合には、別途請求が認められる余地もあります。最終的には、示談書の文言や合意の趣旨を踏まえて判断されます。
Q5. 示談書を自分で作成した場合でも有効になりますか?
A5. 形式が整っていれば有効となります
示談書は当事者間の合意内容を明確にするための書面であるため、必ずしも専門家が作成しなければ無効になるわけではありません。もっとも、条項の書き方や表現によっては、意図しない解釈がなされるおそれがあります。特に清算条項や支払条件など重要な部分については、内容を十分に確認したうえで作成することが重要です。
第6章 一度成立した示談の効力でお悩みの方へ
刑事事件における示談は、一度成立すると原則として、後から一方的に撤回することは容易ではありません。本記事で見てきたとおり、示談の効力を争うためには、単なる後悔や不満ではなく、錯誤や詐欺といった合意の前提に関わる問題や、債務不履行といった履行段階の問題など、法的に整理可能な事情があるかどうかを検討する必要があります。
また、示談の効力に関する問題は、個別の事情によって結論が大きく分かれる分野です。示談書の内容、合意に至る経緯、交渉時の状況、履行の有無などを踏まえたうえで、どのような対応が適切かを整理することが重要になります。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、刑事事件における示談実務を含め、個別の事情に応じた対応を行っております。示談の効力や対応にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
別居しても離婚してくれない場合の対処法|離婚事由がある場合・ない場合の進め方を弁護士が解説

別居までしているのに、相手が離婚に応じず、話し合いが止まったままになっている──こうした状況になると、その後の進め方に整理がつかず時間だけが経過してしまうこともあります。別居していることだけを理由に直ちに離婚が成立するわけではなく、不貞などの離婚事由があるかどうかによって、取り得る手段や見通しは大きく異なります。本記事では、別居しているのに離婚に応じない相手に対し、どのような法的手段が考えられるのかを弁護士がわかりやすく解説します。
第1章 別居しているだけで「離婚」とはならない
1-1 法律上、別居だけを理由に離婚が成立するわけではありません
たとえ長期間にわたり別居が続いている場合であっても、そのことだけで法律上の夫婦関係が解消され、離婚が成立するわけではありません。別居は、夫婦としての共同生活の実態が失われていることを示す重要な事情ではありますが、それ自体が離婚の成立要件となるものではないためです。
実際には、別居している状態が続いていても、相手方が離婚に応じていない限り、法的には婚姻関係は継続します。別居している期間が長いことから、具体的な手続きを取らないまま時間を逃してしまうケースも見られますが、きちんと離婚を成立させるためには、別途の対応が必要になります。
1-2 相手の合意がない場合に必要となる「法定離婚事由」とは
相手方が離婚に応じず、離婚届への署名を拒否している場合には、当事者間の合意による離婚は成立しません。この場合、家庭裁判所の手続を利用して離婚を求めていくことになります。
具体的には、調停を経たうえで離婚訴訟に進み、裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。このとき重要になるのが、法律上認められた離婚の理由、いわゆる「法定離婚事由」です。
協議や調停の段階では、双方が合意すれば理由の内容を問わず離婚することが可能です。しかし、裁判において裁判官が離婚を認めるためには、民法で定められた離婚原因に該当することが前提となります。そのため、相手の同意が得られない場合には、自身のケースがどの離婚事由に当たるのかを整理することが重要になります。
第2章 不貞行為やDVなど「明確な離婚事由」があるケース
2-1 裁判所に認められる5つの離婚原因
別居しているにもかかわらず相手が離婚に応じない場合でも、不貞行為やDVといった明確な離婚事由があるときには、裁判所の手続によって離婚が認められる可能性があります。
民法では、裁判上の離婚が認められる原因として次の5つが定められています。
・配偶者から悪意で遺棄されたとき(正当な理由なく同居や生活費の負担を拒む場合など)
・配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
・その他、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
実務上問題となることが多いのは、主に不貞行為やDV、そして最後の「婚姻を継続しがたい重大な事由」です。この「重大な事由」には、継続的なモラハラ、過度な浪費、長期間の別居などが含まれ得ますが、個々の事情を踏まえて総合的に判断されるため、どの程度で該当するかは一律には決まりません。
2-2 証拠がある場合の交渉・調停・訴訟の進め方への影響
別居に至った原因として不貞行為やDVがあり、それを裏付ける証拠が整理されている場合には、離婚に向けた手続の見通しを立てやすくなります。
例えば、別居前後のやり取りや、不貞の証拠となる記録、暴力に関する診断書などがある場合には、調停の段階でも相手が離婚に応じる方向で検討することがあります。仮に合意に至らず訴訟に移行したとしても、裁判所において離婚が認められる可能性が相対的に高まるためです。
もっとも、どのような証拠があれば十分といえるかはケースによって異なり、証拠の内容や取得経緯によって評価が分かれることもあります。別居に至った事情を含め、証拠の整理や収集方法については早い段階で検討しておくことが重要です。
2-3 有責配偶者からの離婚請求は慎重に扱われる
不貞行為や暴力などによって婚姻関係の破綻を招き、その結果として別居に至った側(有責配偶者)からの離婚請求については、裁判では原則として慎重に扱われます。
これは、自ら関係を悪化させた当事者が、その状態を前提に離婚を求めることを広く認めてしまうと、相手方の保護に欠けるためです。
もっとも、別居が長期間に及んでいる場合や、未成年の子がいない場合など、一定の条件がそろうと、例外的に離婚が認められることもあります。したがって、別居しているという事実だけでなく、その経緯や責任の所在も含めて検討する必要があります。
第3章 性格の不一致など明確な離婚事由がない場合の考え方
3-1 「婚姻を継続しがたい重大な事由」として評価されるには
別居しているにもかかわらず、不貞行為やDVのような明確な離婚事由が見当たらない場合には、離婚したい理由が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるかどうかが中心的な争点になります。
判断にあたっては、単に別居しているという事実だけでなく、別居に至った経緯や現在の夫婦関係の状況が踏まえられます。夫婦関係が実質的に破綻しており、共同生活の再開が現実的に見込めない状態にあると評価されることが重要になります。
そのため、「性格が合わない」といった理由だけでは足りず、別居に至るまでの経過や、その後の関係性の状況を具体的に整理する必要があります。
3-2 別居期間が重要視される理由と目安となる期間
明確な離婚事由がない場合には、別居期間の長さが重要な意味を持ちます。
長期間にわたり別居が続いているという事実は、夫婦としての実態がすでに失われていることを示す事情として評価されやすく、婚姻関係の破綻を基礎づける要素の一つとされています。
もっとも、どの程度の期間があれば離婚が認められるかについて、明確な基準が定められているわけではありません。一般的には、数年単位の別居が継続している場合に離婚が認められる可能性が検討されることが多いものの、婚姻期間とのバランスや個別の事情によって結論は変わります。
3-3 婚姻期間・子の有無など総合判断される要素
これまで触れたように、別居していても、それだけで直ちに婚姻関係の破綻が認められるわけではありません。裁判になった場合、裁判所は夫婦関係の全体像を踏まえて判断を行います。
具体的には、次のような事情が考慮されます。
婚姻期間の長さ
別居期間が数年あっても、婚姻期間が長い場合には「夫婦関係が一時的に悪化している可能性もある」と評価されやすく、直ちに破綻しているとは認められにくい傾向があります。反対に、婚姻期間が短い場合には、別居期間とのバランスやその他の事情も踏まえ、夫婦関係の破綻が認められる可能性もあります。
未成年の子の有無や年齢
子どもがいる場合には、家庭環境への影響も踏まえた検討がなされます。
別居後の交流状況
別居後も接触が続いている場合には、関係が完全に断絶しているとは評価されにくくなります。
3-4 婚姻費用の請求が交渉や調停に与える影響
別居中であっても、夫婦には生活を支え合う義務があり、収入の多い側は少ない側に対して生活費(婚姻費用)を分担する必要があります。
別居しているにもかかわらず離婚が成立しない場合、この婚姻費用の支払いが継続することになります。その結果、支払う側にとっては経済的な負担が続くため、離婚に向けた話し合いが進む契機となることもあります。
もっとも、婚姻費用は生活の維持を目的とする制度であり、交渉を有利に進めるための手段として過度に利用すべきものではありません。双方の収入状況を踏まえて適切な範囲で請求を行い、生活基盤を確保することが重要になります。
第4章 別居しているのに離婚してくれない場合の具体的な進め方
4-1 別居中の段階で弁護士を介して交渉を進める
離婚したいと思って別居しているにもかかわらず相手が離婚に応じない場合、当事者同士でのやり取りは感情的な対立が先行し、話し合いが停滞することが少なくありません。
このような状況では、弁護士を介して交渉を行うことで、離婚条件や争点を整理し、合意できる条件があるかを冷静に検討しやすくなります。特に、別居に至っている段階では、すでに関係が一定程度断絶しているため、直接のやり取りを続けるよりも、代理人を通じて整理された形で協議を進める方が有効な場面もあります。
また、弁護士からの連絡が入ることで、相手方が今後の手続を具体的に意識し、対応を検討する契機になることもあります。
4-2 別居状態を前提に家庭裁判所で離婚調停を申し立てる
当事者間での交渉がまとまらない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
別居している場合には、すでに共同生活が解消されているため、調停では離婚そのものに加え、「離婚を前提とした条件の整理」に議論が及びやすいという特徴があります。
また、調停は調停員が双方の話を交互に聞きながら進めるため、当事者同士が直接顔を合わすことは基本的にありません。別居後に関係が悪化している場合でも、一定の距離を保ったまま話し合いを行うことができるため、この調停の段階で合意に至るケースというのは実務上も多いです。
4-3 調停でまとまらない場合は離婚訴訟に進む
調停でも合意に至らなかった場合には、離婚訴訟に進み、裁判所の判断を求めることになります。
訴訟では、これまでの別居の経緯や期間、夫婦関係の状況などが資料として整理され、離婚が認められるかどうかが判断されます。
不貞やDVなどの事情がある場合にはその証拠が中心となりますが、そのような事情がない場合でも、別居の継続状況や関係の断絶の程度が重要な検討材料になります。
そのため、別居後のやり取りの内容や、連絡の有無、生活状況の変化などについては、後から説明できるように整理しておくことが重要です。たとえば、どの時点から実質的に交流がなくなっているのか、どのような経緯で別居が継続しているのかといった事情は、手続の中で確認されることがあります。
第5章 別居中にやってしまうと不利になりやすい行動
5-1 別居後のやり取りで感情的な連絡や一方的な要求を続ける
別居しているにもかかわらず離婚に応じてもらえない状況では、相手とのやり取りが長期化しやすく、その過程で感情的なやり取りが増えてしまうことがあります。
しかし、電話やメール、メッセージで強い言葉を繰り返したり、執拗に連絡を取り続けたりする行動は避けるべきです。別居中のやり取りは記録として残りやすく、後の調停や訴訟において提出されることもあります。
その結果、「冷静な話し合いが困難な状態にある」と評価されたり、場合によっては過度な連絡として問題視されたりする可能性もあります。
別居後は距離があるからこそ、やり取りの内容や頻度に注意が必要です。
5-2 別居中の生活費や子どもの問題を後回しにしてしまう
別居しているからといって、生活上の義務がなくなるわけではありません。収入のある側は婚姻費用(生活費)を分担する義務を負い、子どもがいる場合には養育や面会交流についても配慮が求められます。
離婚の話し合いが進まないことを理由に、婚姻費用の支払いを一方的に止めたり、面会交流を拒否したりすると、後の手続において不利に働く可能性があります。
別居している状況だからこそ、形式的なやり取りにとどまらず、生活面の対応をどのように行っていたかが確認される場面もあるため、継続的かつ誠実な対応が重要になります。
5-3 別居中の経過ややり取りの記録を残していない
別居が長期化すると、日々のやり取りや生活状況について記録を残さないまま時間が経過してしまうことがあります。
しかし、別居に至った経緯や、その後の関係の変化は、調停や訴訟の場面で具体的に確認されることがあります。たとえば、どのような理由で別居に至ったのか、別居後にどの程度交流があったのかといった点は、夫婦関係の評価に影響を与える事情となります。
そのため、メールやメッセージの保存、やり取りの内容の記録など、後から説明できる形で整理しておくことが重要です。別居している期間が長くなるほど、こうした記録の有無が結果に影響することもあります。
第6章 離婚してくれない相手とのやり取りを弁護士に相談するメリット
6-1 別居していても話し合いが進まない場合に、争点を整理しやすくなる
別居しているにもかかわらず相手が離婚に応じない場合、当事者同士では同じやり取りが繰り返され、話し合いが前に進まないことがあります。とくに、感情的な対立が積み重なっているケースでは、何が本当の争点なのかが見えにくくなり、「離婚するかどうか」の話なのか、「婚姻費用や子どものこと」の話なのかが混在してしまいがちです。
このような場合に弁護士が入ると、別居に至った経緯、現在の生活状況、離婚事由の有無、今後の見通しといった事情を整理したうえで、どこが争点になっているのかを明確にしやすくなります。明確な離婚事由がある場合はその証拠をどう位置づけるかが重要になりますし、そうした事情がはっきりしない場合でも、別居期間や夫婦関係の実態をどのように整理していくかが大切になります。
相手がどうしても離婚に応じない状況では、当事者だけで解決しようとしても、話が前に進まず時間だけが過ぎてしまうことがあります。そのため、別居中の段階で一度弁護士に相談し、現状を法的な観点から整理しておくことが望ましいといえます。
6-2 やり取りを弁護士から行うことで対応が変わることがある
相手が離婚に応じない場合、離婚の話を避ける、返答を引き延ばす、感情的に反発するといった状態になることは少なくありません。こうした場面では、本人からの連絡では相手が真剣に受け止めず、状況が動かないままになることもあります。
弁護士から連絡を入れると、相手としても、単なる感情的なやり取りではなく、調停や訴訟を含めた法的手続が現実の選択肢として視野に入っていることを意識しやすくなります。その結果、それまで応答がなかった相手が返答するようになったり、離婚条件について話し合いに応じたりすることもあります。
もちろん、弁護士が連絡したからといって必ず相手が離婚に応じるわけではありません。ただ、別居しているのに相手がまったく動かないという場面では、連絡の主体が変わること自体に一定の意味がある場合があります。
6-3 明確な離婚事由がある場合も、ない場合も、見通しが立てやすい
別居しているからといって、すべてのケースで同じ進め方になるわけではありません。不貞やDVのような明確な離婚事由がある場合には、証拠の有無や内容を踏まえながら、調停や訴訟を見据えた対応を考える必要があります。これに対し、性格の不一致などで別居している場合には、別居期間、婚姻期間、子どもの有無、別居後の交流状況などを踏まえて、婚姻関係の破綻をどう整理するかが重要になります。
この違いを踏まえずに当事者だけで話を進めようとすると、必要な証拠を集めないまま時間が過ぎたり、自分にとって不利なやり取りを重ねてしまったりすることがあります。弁護士に相談すれば、自分のケースでは何が問題になりやすいのか、今の段階で何をしておくべきか、調停に進むべきかどうかといった見通しを早めに確認しやすくなります。
第7章 【FAQ】別居しているのに離婚してくれない場合によくある質問
Q1. 別居期間がどのくらいあれば、相手が応じなくても離婚できる可能性がありますか?
A1. 別居期間だけで一律には判断されません
別居期間は離婚が認められるかどうかを判断するうえで重要な事情の一つですが、「何年であれば必ず離婚できる」という明確な基準があるわけではありません。一般的には数年単位の別居が継続している場合に離婚が認められる可能性が検討されることが多いです。ただし、婚姻期間の長さや子の有無、別居に至った経緯なども踏まえて総合的に判断されます。
Q2. 別居期間はどの時点からカウントされるのでしょうか?
A2. 実質的に共同生活が解消した時点からです
別居期間は、単に住民票上の住所が分かれた時点ではなく、実際に夫婦としての共同生活が解消された時点からカウントされるのが一般的です。たとえば、同居中であっても家庭内での交流がほとんどなく実質的に別居状態と主張される場合や、逆に別居後も頻繁に行き来している場合などは、その評価が問題となることがあります。具体的な事情によって判断が分かれるため、別居の開始時期については個別に検討する必要があります。
Q3. 家庭内別居と判断されるには具体的にどのような状態であればよいですか?
A3. 生活実態として夫婦関係が分離しているかで判断されます
いわゆる「家庭内別居」は、同じ住居に居住していても、夫婦としての共同生活の実態が失われている状態を指します。具体的には、寝室が分かれている、食事や家事を別々にしている、日常的な会話や交流がほとんどないといった事情が積み重なり、実質的に夫婦関係が断絶しているかどうかが判断のポイントになります。
もっとも、単に一時的に距離を置いているだけでは家庭内別居と評価されるとは限らず、一定期間にわたり継続していることや、その状態に至った経緯なども含めて総合的に判断されます。したがって、「形式的に部屋を分ければ足りる」というものではなく、生活実態としてどの程度分離しているかを具体的に整理しておくことが重要になります。
第8章 別居しているのに離婚が進まない場合は早めの整理が大切
別居までしているにもかかわらず、相手が離婚に応じず、話が前に進まないケースは珍しくありません。もっとも、別居していることだけで直ちに離婚が認められるわけではなく、明確な離婚事由があるかどうかによって、取るべき対応や見通しは変わります。そのため、現在の状況を整理しないまま当事者同士でやり取りを続けていると、状況が整理されないままただ時間だけが過ぎてしまい、離婚までに想定以上の時間を要してしまうこともあります。別居しているのに離婚が進まないと感じている場合には、一度専門家に相談し、自身のケースでは何が問題となるのか、どのように進めるのが適切かを確認しておくことも一つの方法です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、離婚や別居に関するご相談に対応しています。状況に応じた進め方を整理したい場合にはお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
















