新築の境界ブロックでトラブルになったら?隣人・施工会社への対応と弁護士への相談ポイント

戸建てを新築している途中、隣人から「ブロックが境界を越えている」と指摘されたり、外構工事を始めたところ隣地のブロックや基礎が自宅敷地にはみ出していることが分かったりすることがあります。
このような境界ブロックのトラブルでは、すぐに撤去や工事のやり直しを決めるのではなく、まず境界・ブロック・施工内容のどこに問題があるのかを整理することが大切です。
本記事では、新築中や完成直後に境界ブロックの問題が起きた場合の確認事項と、隣人・施工会社への対応、弁護士へ相談するポイントについて弁護士が解説します。
第1章 新築時の境界ブロックトラブルは、まず何が問題なのかを整理する
1-1 隣地のブロックや基礎が自宅の土地にはみ出している疑いがある場合
新築工事では、これまで気付かなかった隣地のブロック塀の問題が、工事をきっかけに判明することがあります。
たとえば、外構工事を始めようとしたところ、施工業者から「隣地のブロックの基礎が敷地内に入っている可能性があります」と指摘されるケースです。
この場合には、本当に越境しているのかを確認したうえで、外構工事への影響や、隣人に撤去・移設を求める必要があるのかを検討します。
ただし、隣地のブロックが越境しているように見えても、自分の判断で撤去したり削ったりすることは避けるべきです。塀の位置と法的な境界が一致しているとは限らず、隣人の所有物であれば、その取扱いにも注意が必要だからです。
隣地のブロック塀が越境している場合の確認方法や撤去・移設については、以下の記事で詳しく解説しています。
隣地のブロック塀が境界線を越えていたら?|勝手に撤去できるか・解決方法を弁護士が解説
1-2 自宅側で新設したブロックが越境していると指摘された場合
反対に、外構工事を進めている途中で、隣人から「そのブロックはうちの土地に入っている」と指摘されることもあります。
この場合も、隣人から言われたというだけで直ちに越境が確定するわけではありません。まず土地の境界と実際の施工位置を確かめる必要があります。
そのうえで、実際に自宅側のブロックが境界を越えていた場合には、どのような経緯で施工位置が決まったのかを調べます。自分で施工位置を具体的に指定していない場合には、ハウスメーカーや外構業者がどの資料をもとに境界を判断し、施工位置を決めたのかを確認することになります。
1-3 どちらが越境しているのか分からない場合
実務では、隣人と施工会社とで、土地の境界について認識が食い違っているケースも少なくありません。
たとえば、隣人は「昔からあるブロックの中心が境界だ」と主張している一方で、ハウスメーカーは測量図や境界標をもとに、「境界はそれとは別の位置にあり、隣地のブロックが自宅の土地にはみ出している」と説明しているような場合です。
この場合、どちらかの主張を前提として工事を進めるのではなく、土地の境界と既存ブロックの位置関係を確認する必要があります。
第2章 境界ブロックの問題が起きたときに確認すべきこと
2-1 ブロックの位置だけで土地の境界を判断しない
隣家との間に昔からブロック塀があると、その中心や端が土地の境界だと思ってしまいがちです。
しかし、ブロック塀はあくまで土地上に設置された工作物です。以前の所有者が自分の敷地内に設置している場合もあれば、双方の共有物として境界線上に設置されている場合もあるため、塀の位置だけで境界を判断することはできません。
境界と塀の関係や、境界線上の塀の所有関係・費用負担については、以下の記事で詳しく解説しています。
2-2 境界に関する資料を確認し、分からなければ土地家屋調査士に相談する
土地の境界を確認するには、土地を購入した際の境界確認書や測量図、法務局に備え付けられている地積測量図、現地の境界標などが指標となります。
ただし、専門家でなければ、これらの資料から図面上の境界が現地のどの位置にあたるのかを正確に判断するのは難しいといえます。
そのため、越境の有無を判断する前提として、土地の筆界(登記上、一筆の土地と隣の土地を区切る公的な境界線)やブロックとの位置関係を正確に確認する必要がある場合には、土地家屋調査士に相談するのが一般的です。登記資料などの調査と現地の測量によって、土地の境界とブロックの位置関係を客観的に整理でき、その調査結果は、その後に隣人や施工会社と話し合う際の判断材料にもなります。
第3章 隣人との境界問題と施工会社との問題を分けて考える
新築時の境界ブロックトラブルでは、越境している側によって確認すべきことが異なります。
隣地の既存ブロックが越境している場合には新築工事への影響を確認し、自宅側で新設したブロックが越境している場合には、ハウスメーカーや外構業者の施工内容に原因がないかを確認する必要があります。
3-1 隣地の既存ブロックが越境している場合は、新築工事への影響を確認する
隣地の既存ブロックやその基礎が自宅の土地に越境していることが確認できた場合には、まず施工会社に、予定している新築・外構工事への影響を確認します。
予定どおり工事を進めるために隣地ブロックの撤去や移設が必要であれば、隣人に対応を求めることを検討します。一方、工事計画を変更することで対応できる場合には、変更による費用や工事内容への影響も踏まえて、どの方法をとるかを検討することになります。
3-2 自宅側の新設ブロックが越境している場合は、施工会社にも問題がないか確認する
自宅側のブロックが境界を越えていた場合には、隣人との関係でどのような対応が必要かを確認する必要があります。一方、ハウスメーカーや外構業者が施工位置を決めていた場合には、これとは別に、施工会社にも問題がないかを確認する必要があります。
まず、実際の施工位置と、建物の配置図や外構図面を照らし合わせます。そもそも図面上の施工位置が誤っていた「図面の問題」なのか、図面上の施工位置は正しいものの、図面とは異なる位置に施工された「工事の問題」なのかを確認します。
あわせて、誰が境界を確認し、誰が施工位置を決めたのかも整理します。
第4章 工事への対応と費用負担を整理する
境界や越境の状況、トラブルの原因を確認できたら、その結果をもとに、工事をどのように進めるのか、撤去・再施工などの費用を誰が負担するのかを整理します。
4-1 問題となっている箇所の工事は、対応方針を決めてから進める
境界との関係が問題になっている箇所について、そのまま工事を進めると、後から撤去や再施工が必要になり、費用や工期への影響が大きくなる可能性があります。
そのため、施工会社に、境界トラブルがどの工事に影響するのかを確認し、問題となっている箇所については対応方針を決めてから工事を進めるとよいでしょう。
後から施工位置や工事の進み具合について争いになることも考えられるため、問題が分かった時点の現場を写真や動画で記録しておくことも大切です。
4-2 撤去・移設・再施工の費用は、トラブルの原因に応じて負担関係を確認する
境界ブロックのトラブルによって撤去や移設、再施工が必要になった場合には、その費用を誰が負担するのかも確認する必要があります。
費用負担は、トラブルの原因によって異なります。
隣地の既存ブロックが越境していた場合
隣地の既存ブロックやその基礎が越境している場合には、まず、ブロックの撤去・移設について隣人にどこまで対応を求められるのかを確認します。
また、越境によって当初予定していた工事を変更する必要があり、追加費用が発生する場合には、その費用を誰が負担するのかも個別に検討する必要があります。隣地のブロックが越境しているからといって、工事変更によって生じた費用のすべてを当然に隣人へ請求できるとは限らないため、発生した費用の内容や原因を確認することが重要です。
ハウスメーカーや外構業者の設計・施工に問題があった場合
自宅側のブロックについて、施工会社が境界の位置を誤って認識してブロックの施工位置を設定したり、図面とは異なる位置に施工したりしたことが原因で越境している場合には、施工会社に撤去や再施工などの対応を求められる可能性があります。
この場合には、工事請負契約や外構図面、施工前の打合せ内容などを確認し、撤去・再施工の費用を施工会社にどこまで負担してもらえるのかを確認します。
施主が施工位置を指定していた場合
施主自身が境界付近の施工位置を具体的に指定し、施工会社がその指示どおりに施工していた場合には、施工会社に撤去・再施工の費用を求められるとは限りません。
4-3 確認した事実関係をもとに隣人や施工会社と話し合う
隣人や施工会社と話し合う際は、第2章・第3章で確認した境界に関する資料や測量結果、施工図面、実際の施工状況などをもとに、事実関係を整理したうえで対応方針を伝えることが大切です。事実関係が十分に整理できていない段階で「撤去します」「こちらには問題がありません」などと結論を出すと、後から別の事実が分かった場合に、不要な撤去や費用負担を引き受けることになったり、隣人との話合いが難しくなったりする可能性があるためです。
そのうえで、隣地の既存ブロックが原因であれば隣人と、施工会社の設計・施工に問題がある場合には施工会社と協議することになります。
当事者同士の話合いで対応方法や費用負担について合意できない場合には、法的にどこまで対応を求められるのかを整理するため、弁護士への相談が有効になることがあります。
第5章 境界ブロックのトラブルを弁護士に相談するタイミング
5-1 撤去・再施工や費用負担で相手と見解が分かれたら相談する
隣人が撤去・移設に応じない、施工会社が再施工や費用負担を拒むなど、対応方法や費用負担をめぐって意見が分かれた場合には、早めに弁護士への相談を検討しましょう。
問題を抱えたまま工事を進めると、完成後に撤去・再施工が必要となり、費用や工期への影響が大きくなることがあります。まずは事実関係を整理し、相手にどこまで対応を求められるのかを法的に確認することが重要です。
5-2 境界ブロックのトラブルはNexill&Partners那珂川オフィスへご相談ください
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、境界に関する資料や施工内容、これまでの経緯を確認し、隣人や施工会社にどのような対応を求められるのかを整理します。
当事者同士では話合いが進まない場合や、隣人・施工会社のどちらに対応を求めるべきか判断に迷っている場合には、お気軽にご相談ください。
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記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
通勤途中の事故で加害者になっても労災は使える?自分もけがをした場合の労災適用を弁護士が解説

通勤途中に追突事故などを起こし、相手だけでなく自分もけがをすることがあります。この場合、事故の加害者だから労災は使えないと思われるかもしれません。しかし、交通事故の過失割合と、通勤災害として労災保険の対象になるかは別の問題です。
本記事では、通勤途中の事故で加害者となった本人や会社の担当者に向けて、労災が使える条件や給付制限、事故後の手続について弁護士が解説します。
第1章 通勤途中の事故では加害者側でも労災を使える場合がある
1-1 交通事故の加害者かどうかと通勤災害に該当するかは別に判断される
通勤途中に自分の不注意で交通事故を起こした場合でも、それだけを理由に労災保険の対象外になるわけではありません。
労働者災害補償保険法では、労働者の「通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」を通勤災害としています。ここで問題となるのは、「そのけがが労災保険法上の通勤によって生じたものといえるかどうか」です。
たとえば、出勤途中に前方不注意で停車中の車へ追突し、相手の車を損傷させるとともに、自分も首を痛めたとします。この場合、交通事故の賠償問題では加害者になりますが、本人のけがについては、通勤災害として労災保険の対象になるかを別途判断することになります。
1-2 過失割合が100%でも、それだけで労災の対象外になるわけではない
事故の過失割合で、労災保険の適用有無が決まるわけでもありません。
相手方に過失がなく、こちら側の過失が100%と評価される事故でも、そのけがが労災保険法上の通勤によって生じたものと認められれば、労災保険の対象となり得ます。
ただし、事故時にどのような運転をしていたかは、通勤災害に該当するかや、労災給付が制限されるかの判断に関係します。
単なる前方不注意などと、飲酒運転や著しい速度超過などでは、労災保険上の評価は異なります。この点は第3章で確認します。
1-3 自分のけがに労災を使えても被害者への賠償責任は別に残る
もっとも、労災保険を利用することと、事故の相手方に対する損害賠償責任は別の問題です。
通勤災害として労災給付を受けるのは、あくまで自身が負ったけがなどに対する補償です。
自身の過失で相手方にけがをさせたり、相手の車を壊したりした場合には、民事上の損害賠償責任が生じる可能性があります。事故の内容によっては刑事責任や道路交通法上の責任が問題になることもあります。
第2章 加害者でも労災を使うには通勤災害に該当する必要がある
2-1 就業に関する合理的な経路・方法での移動だったかを確認する
加害者側であっても労災の対象となり得ますが、その場合、事故が労災保険法上の「通勤」の途中で発生したことが前提です。
労災保険法では、通勤について、「就業に関して住居と就業場所の間などを合理的な経路・方法で移動すること」と定めています。典型的なのは、自宅から勤務先へ出勤する途中や、勤務を終えて自宅へ帰る途中の事故です。
「合理的な経路」とは、毎日必ず同じ道路を走っていなければならないという意味ではありません。道路工事や渋滞のため通常とは異なる道を通るなど、通勤として合理的な事情があれば認められる余地があります。
2-2 私用の寄り道や移動の中断があると通勤災害にならないことがある
帰宅途中で事故に遭ったからといって、必ず通勤災害になるとは限りません。
労災保険法では、通勤経路を私的な目的で外れる「逸脱」や、通勤とは関係のない行為を行う「中断」があった場合、その間と、その後の移動は原則として通勤に当たらないとされています。
ただし、日用品の購入や病院での診察など、日常生活上必要な行為として法令上認められているものをやむを得ず最小限度行った場合には、その行為を終えて合理的な通勤経路に戻った後は、再び通勤として扱われることがあります。
そのため、事故が起きた場所だけを見るのではなく、「勤務先を出てから事故現場までどのように移動していたのか」を確認することも重要です。
2-3 会社に届け出ていない車やバイクでの通勤でも直ちに対象外にはならない
会社の総務担当者が判断に迷いやすいのが、会社に届け出ていた通勤方法と、実際の通勤方法が違っていた場合です。
たとえば、会社には電車通勤と届けていた従業員が、実際にはバイクで出勤し、その途中で事故を起こしたケースです。
厚生労働省は、会社への届出や承認がないオートバイ通勤でも、合理的な経路・方法による通勤であれば労災保険の補償を受けられると説明しています。
したがって、会社の通勤規程違反という社内規程上の問題と、労災保険上の通勤災害に該当するかは分けて考える必要があります。
第3章 加害事故では故意・重大な過失などによる給付制限に注意する
3-1 事故について過失があることと労災保険法上の重大な過失は同じではない
「加害者でも労災を使える」と聞くと、事故を起こした原因はまったく考慮されないように思われるかもしれません。しかし、そうではありません。
労働者災害補償保険法では、労働者が故意に事故を生じさせた場合には保険給付を行わず、故意の犯罪行為や重大な過失によって事故を生じさせた場合などには、保険給付の全部または一部を行わないことができると定めています。
交通事故では、次のようなケースで重大な過失などによる給付制限が問題になります。
3-2 飲酒運転や著しい速度違反などでは給付制限が問題になることがある
労災保険法上の重大な過失に当たるかは、事故の態様などを踏まえて判断されます。
厚生労働省の資料では、故意の犯罪行為または重大な過失による給付制限が問題となる例として、飲酒運転やスピード違反を原因とする事故が挙げられています。
そもそも泥酔状態で自動車などを運転している場合には、労災保険法上の「合理的な方法による通勤」といえるのかという問題も生じます。
3-3 事故の刑事責任や交通違反と労災の支給・不支給は分けて確認する
労災保険については、事故が通勤災害に該当するか、故意や重大な過失などによる給付制限の対象となるかといった事情をふまえて、支給・不支給が判断されます。
会社が労災ではないと判断しても申請できる
労災に該当するかを最終的に判断するのは会社ではありません。
事故を起こした本人が労災保険を請求し、労働基準監督署長が支給・不支給を決定します。そのため、会社が労災ではないと考えても、それだけで申請ができなくなるわけではありません。
第4章 通勤途中の加害事故で労災を申請するときの手続
4-1 事故状況と通勤経路を会社へ正確に伝える
通勤途中で事故を起こして自分もけがをした場合には、まず事故の状況を整理します。
会社側では、事故の日時・場所、出勤途中か退勤途中か、通常の通勤経路、使用していた交通手段、寄り道の有無、事故の状況、相手方の有無、けがの内容などを確認しておくと、その後の労災手続を進めやすくなります。
労災指定医療機関などで治療を受ける場合には、原則として厚労省所定の「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」を使用します。
また、けがのため仕事を休み、要件を満たす場合には「休業給付支給請求書(様式第16号の6)」による請求も考えられます。
通勤災害では最初の3日間について会社に休業補償の義務はない
通勤災害によって仕事を休んだ場合、労災保険の休業給付が支給されるのは休業4日目からです。休業初日から3日目までは待期期間とされ、労災保険から休業給付は支給されません。
この3日間について混同しやすいのが業務災害との違いです。
もし、これが業務中の事故による「業務災害」だった場合には、会社はこの3日間について労働基準法に基づき平均賃金の60%の休業補償を行う必要があります。しかし、「通勤災害」では、会社にこのような休業補償を行う法的義務はありません。
そのため、通勤災害で最初の3日間について会社から賃金や補償を受けられるかは、就業規則や賃金規程、休暇制度、災害補償規程などの定めによって異なります。
4-2 相手方にも過失がある場合は第三者行為災害の手続が必要になることがある
一般的には加害者側と扱われる場合でも、相手方にも過失があれば、労災の手続では第三者行為災害として扱われることがあります。
たとえば、事故の過失割合が「こちら側70%、相手方30%」と判断されるケースです。
この場合、こちら側が事故について大きな責任を負うため加害者側と呼ばれることがありますが、相手方にも30%の過失があります。そのため、自身が負ったけがについて、相手方が一定の損害賠償責任を負う可能性があります。
このように相手方にも賠償責任がある場合、本人は自身のけがについて第三者行為災害として追加の手続が必要になる場合があります。
4-3 第三者行為災害では本人が追加書類を提出し、相手方の保険との調整も必要になる
第三者行為災害に該当する場合には、事故でけがをした本人が、第三者行為災害届や念書(兼同意書)、交通事故証明書(取得できない場合は交通事故発生届)などの必要書類を労働基準監督署へ提出する必要があります。会社が自社の手続として第三者行為災害届を提出するわけではありません。
ただし、会社は労災給付の請求に必要な証明を行うなど、本人の手続に協力することがあります。
また、相手方にも過失がある場合、相手方の自賠責保険などから補償を受けられることがあります。ただし、同一の事由について労災保険給付と相手方からの損害賠償を重複して受けることはできず、労災保険給付が先に行われた場合には国が相手方やその保険会社に求償し、相手方からの賠償が先に行われた場合には、労災保険給付から控除するなどの調整が行われます。
このように、加害者側であっても相手方に過失がある事故では、「自分のけがについて受ける労災給付」「相手方から受ける損害賠償」「自分が相手方に支払う損害賠償」を分けて整理しながら手続を進めることが重要です。
第5章 通勤途中の加害事故で判断に迷ったら弁護士へ相談を
通勤途中の交通事故で自分が加害者側になった場合、「自分が事故を起こしたのだから労災について相談するのは気が引ける」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
また、事故直後は、警察や保険会社への対応、会社への報告、治療などが重なり、自分で各制度の関係まで整理することは容易ではありません。
そのため、労災を利用できるか判断に迷う場合や、相手方への賠償、保険会社との対応まで含めて整理したい場合には、早めに弁護士へ相談することも検討しましょう。
Nexill&Partners那珂川オフィスでは、交通事故と労災の双方を踏まえ、事故の状況に応じて必要な対応を整理します。通勤途中に事故を起こして自分もけがをしたものの、労災を利用できるのか分からない場合や、相手方・保険会社との対応を含めて相談したい場合には、お気軽にお問い合わせください。
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【裁判例で見る】金銭感覚の違いで離婚したい|配偶者のお金の使いすぎはどこから離婚事由になる?弁護士が解説

配偶者がお金を使いすぎる、貯金をしてもすぐ使われる、借金までしている。このような状態が続き、「もう離婚したい」と考えているかもしれません。金銭感覚が合わないという理由だけで裁判で直ちに離婚が認められるとは限りませんが、実際、どこからが離婚事由になり得るのでしょうか。
本記事では、過去の裁判例を参考に、金銭問題が離婚事由となり得るラインと弁護士へ相談する際のポイントを解説します。
第1章 金銭問題を理由に離婚する場合の基本的な考え方
1-1 相手が離婚を拒否する場合は法律上の離婚事由が問題になる
夫婦の両方が離婚することに合意できるのであれば、「金銭感覚が合わない」という理由でも協議離婚はできます。
一方、浪費している相手が離婚を拒否し、最終的に裁判で離婚を求める場合には、民法が定める離婚事由が必要になります。浪費や金銭感覚の違いは、それ自体が独立した離婚事由として定められているわけではないため、浪費の程度や状況もふまえて、主に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し得るかが問題になります。
1-2 浪費の金額だけでなく家計や夫婦生活への影響も含めて判断される
毎月いくら以上無断で使っていれば離婚事由となるといった一律の金額基準はありません。ただし、夫婦の収入や資産に対してどの程度の金額を使っていたのかは、金銭問題の深刻さを判断する一つの材料になり得ます。
また、裁判では、何のために使ったお金なのか、家族の生活費や子どもの教育費にまで影響しているか、配偶者に隠れて借金をしているか、注意された後も繰り返しているかなどの事情もふまえ、金銭問題によって婚姻関係がどの程度損なわれ、婚姻生活を継続することが困難になっているかが判断されます。
では実際、具体的にどの程度になると離婚事由になり得るのでしょうか。次章では実際に離婚が認められた裁判例と認められなかった裁判例を見ながら整理します。
第2章 どこから離婚事由になりやすい?裁判例から見る3つの段階
金銭問題に関する裁判例を3つの段階に分けて見ていきます。なお、以下の3段階は裁判所が示した公式な基準ではなく、複数の裁判例から違いを分かりやすく整理したものです。
2-1 段階1|借金で家計が圧迫されていても、それだけでは離婚事由にならないことがある
配偶者に多額の借金があり、その返済のために家計へ入るお金が減っている場合、生活に支障が出ているので離婚事由になるのではと考えるかもしれません。
しかし、借金で家計が圧迫されていても、それだけで直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるとは限りません。
裁判では、借金がいくらあるかだけでなく、なぜその借金ができたのか、借金以外に夫婦関係を続けられない事情があるのか、婚姻生活を立て直す余地はないのかといった事情も含めて判断されます。
裁判例:約600万円の借金があり、生活費が月3万円程度でも離婚が認められなかったケース
夫には結婚当初から約600万円の借金があり、その後も借入れをしていました。借金の返済により、一時期には妻へ渡す生活費が1か月3万円程度となっていました。
それでも、裁判所は妻からの離婚請求を認めませんでした。(仙台地方裁判所 昭和60年12月19日判決)
この事案では、借金の原因に弟の大学進学費用、父の入院費用、夫婦の結婚費用などが含まれていました。
また、借金問題以外には婚姻生活を続けるうえで大きな支障が認められないことに加え、当時の判決では、妻も働いて家計に収入を入れれば借金の返済や生計の維持が容易になるとの事情も考慮されています。なお、この点は当時の社会状況や家族観を反映した判断であり、現在の夫婦にそのまま当てはめることはできません。
つまり、妻に渡される生活費が月3万円程度まで減っていたにもかかわらず、借金の原因や夫婦関係全体の状況によって離婚事由が認められなかったケースといえます。
2-2 段階2|生活費や教育費など家族のためのお金にまで手を付けている
お金の使い方が、自分の収入や自由に使える範囲に収まらず、生活費や教育費など家族のために確保していたお金にまで及んでいる場合には、問題は深刻になります。
たとえば、子どもの入学費用として用意していたお金や、生活費として渡したお金をギャンブルや買い物に使ってしまうといったケースです。
裁判例:子どもの中学校入学費用まで別の用途に使い、浪費を繰り返していたケース
妻は、競馬に毎月1~2万円を使うほか、夫に無断で不要な衣類や時計、貴金属などを割賦で購入し、代金を払い終わらないうちに質入れして現金化するなどの行為を繰り返していました。さらに、夫が長女の中学校入学費用として妻に渡した13万円についても、妻は別の用途に使っていました。
夫から浪費を注意されると反省する態度を示していたものの、その後も同じような行動を繰り返し、離婚調停中にも、夫から生活費を受け取っていながら自宅の冷蔵庫やステレオを質入れしていました。
裁判所は、このような一連の事情から「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚を認めています。(東京家庭裁判所 昭和41年4月26日審判)
このケースでは、子どもの入学費用13万円を使ったことだけを理由に離婚が認められたわけではありません。家族のために確保されたお金にまで浪費が及び、注意されても改善せず、同じような行為を繰り返していたことなどが重なっています。
つまり、配偶者がお金を使いすぎている場合には、その金額や使途に加えて、同じことを繰り返しているか、注意や話し合いをしても改善しないかといった事情も重要になるといえます。
2-3 段階3|隠れた借金や名義利用まで進み、家族の生活や信用に影響している
浪費によってお金が足りなくなるだけでなく、配偶者に隠れて借金をする、自分以外の名義を使って取引をするなどして、家族の信用にまで影響が及んでいる場合はさらに深刻です。
たとえば、買い物やギャンブルのために借金を繰り返す、配偶者に知られないよう消費者金融から借りる、配偶者やその家族の名義を無断で使うといった状況です。
裁判例:隠れて借金をし、夫や夫の父の名義まで利用していたケース
妻が支出を重ねて家計を不足させ、夫に隠れて質入れや借金を繰り返していたケースがあります。妻は夫名義の約束手形を無断で振り出し、月賦購入の際には夫の父の名義まで無断で使用していました。
夫婦はいったん話し合いをして再出発しましたが、その後も妻の生活態度は改善しませんでした。
裁判所は、このような事情から「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚を認めています。(東京地方裁判所 昭和39年10月7日判決)
このケースでは、浪費そのものに加えて、隠れて借金を繰り返し、夫やその家族の名義まで利用していたこと、さらに一度やり直す機会を設けても改善しなかったことなどが重なっています。
紹介した裁判例には、昭和時代のものも含まれています。当時と現在では物価や家族のあり方なども異なるため、古い裁判例の金額をそのまま現在のケースに当てはめることはできませんが、浪費や借金による離婚について、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかを夫婦関係全体から判断するという基本的な考え方は現在も変わりません。
裁判所が重視していた、借金の使途や家計への影響、配偶者に隠していたか、問題を繰り返していたか、改善する可能性があったかなどの事情については、現在のケースを考えるうえでも参考になります。
第3章 浪費を理由に配偶者との離婚を考えたら準備しておきたいこと
3-1 金銭問題が始まってから現在までを時系列で整理する
弁護士へ離婚について相談する場合には、配偶者の金銭問題がいつ頃から始まり、その後どのように状況が変わってきたのかを時系列で整理しておくとよいでしょう。
たとえば以下のような出来事をまとめておきます。
・借金がいつ発覚したか
・生活費や貯金にどのような影響が出たか
・夫婦でいつ話し合ったか
・相手が改善を約束した後も繰り返したか
上記のような事項を時系列で整理しておけば、弁護士も金銭問題が一時的なものなのか、夫婦関係の破綻につながるほど継続しているのかを把握しやすくなり、今後の離婚の進め方も検討しやすくなります。
3-2 浪費や借金を裏付ける資料は確保しておく
配偶者がお金を使いすぎていることや借金があることを確認できる資料が手元にある場合には、なくさないように保存しておきましょう。
たとえば、自分が適法に確認できる範囲の預金口座の取引履歴、クレジットカード明細、借入れ関係の書類、家計簿、金銭問題について夫婦でやり取りしたチャットやメールなどです。
これらの資料があれば、「いつ、何に、いくら使っていたのか」「借金がどの程度あったのか」「問題が発覚した後に夫婦でどのような話をしたのか」を具体的に確認し、金銭問題を裏付ける資料として活用できる場合があります。
離婚調停や訴訟になれば、相手の浪費の程度や借金について争うこともあります。そのため、現在手元にある資料は、相談時に弁護士へ見せるためだけでなく、その後の離婚手続で金銭問題を説明するためにも保存しておくことが重要です。
まとめ|金銭問題を理由に離婚を考えている方は早めに弁護士へ相談を
配偶者の浪費や借金が離婚事由になり得るかは、金額だけでなく、家計への影響やこれまでの経緯などによって異なります。離婚を考え始めた段階で弁護士へ相談しておけば、現在の状況で離婚を求めることが現実的か、今後どのような資料を確保し、どのように進めるべきかを整理できます。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、離婚や財産分与をはじめとする夫婦間の問題についてご相談をお受けしています。配偶者のお金の使い方に悩み、離婚をどのように進めればよいか分からない場合は、お気軽にご相談ください。
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本記事では、結婚後に宗教活動が判明した場合の離婚の可否、結婚前の秘匿の評価、慰謝料請求の条件と必要な証拠を弁護士が解説します。
第1章 結婚後に宗教活動を知らされた場合、離婚できるのか
1-1 相手も離婚に応じる場合は宗教を理由に協議離婚できる
夫婦がともに離婚に合意している場合は、配偶者が宗教を信仰していることや、結婚前に宗教活動を隠していたことが法律上の離婚原因に当たるかを問わず、協議離婚ができます。
ただし、未成年の子どもがいる場合は、父母の双方またはいずれか一方を親権者と定める必要があります。子どもの監護の分担や養育費、財産分与、慰謝料についても、離婚届を提出する前に話し合っておくことが望ましいです。
宗教をめぐる対立が強い場合は、子どもを宗教行事に参加させるか、宗教教育をどのようにするかについても争いになりやすいため、離婚後の生活まで見据えて取り決めることが重要です。
1-2 相手が離婚を拒否する場合は婚姻関係が破綻しているかが問題になる
相手が離婚を拒否する場合は、家庭裁判所の調停を経て、最終的には離婚訴訟で判断を求めることになります。離婚の裁判を起こすには、原則として、先に調停を申し立てる必要があります。
現在の民法では、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合に裁判上の離婚を認めています。そのため、裁判では、宗教をめぐる対立によって夫婦の共同生活が成り立たなくなっているか、話し合いや生活上の調整を重ねても関係を修復する見込みがない状態に至っているかが判断されます。
1-3 信仰そのものではなく家庭生活への具体的な影響が重視される
憲法は信教の自由を保障しています。そのため、配偶者が特定の宗教を信仰しているという事実だけで、直ちに違法と評価されるものではありません。「自分はその宗教が嫌いである」「信者であることを受け入れられない」という事情だけでは、裁判離婚が認められない可能性があります。
一方、配偶者や子どもに入信や宗教行事への参加を強要する、多額の献金によって生活費が不足する、宗教活動を優先して家事や育児を継続的に行わないといった事情があれば、婚姻生活への具体的な影響として考慮されます。
実際の判決でも、配偶者の反対を押し切って子どもを宗教活動へ参加させ、夫婦関係を修復するために活動を自制する意思もなく、長期間の別居に至った事案について、双方の言動や別居後の状況も踏まえ、離婚が認められています。(東京高等裁判所平成2年4月25日判決)
反対に、活動が月に数回程度で、家事や仕事を顧みないほどのものではなく、妻が夫との同居を望み、夫が妻の信仰を許容すれば夫婦共同生活の回復が可能であるとされた事案では、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められないとして離婚請求が棄却されています。(名古屋地方裁判所豊橋支部昭和62年3月27日判決)
離婚が認められるかどうかは、宗教活動の頻度だけでなく、家計や子どもへの影響、別居期間、双方の対応などを総合して結論が分かれるといえます。
第2章 結婚前に宗教活動を隠していたことはどう評価されるのか
2-1 宗教について自分から話さなかっただけでは直ちに離婚原因にならない
前述の通り、結婚前に配偶者が宗教について「自分から話さなかった」ことだけで直ちに裁判上の離婚原因になるとは限りません。
信仰が本人の内心や個人的な活動にとどまり、結婚後の家計や、家事・育児、夫婦関係に具体的な支障が生じていない場合は、婚姻関係が修復困難なほど破綻しているとは評価されにくいためです。
2-2 質問に嘘をついた場合や結婚の条件を知って隠した場合は重く評価される
2-1のように、結婚前に宗教の話題が出なかったため自分から話さなかった場合と、質問されたのに「信仰していない」という嘘の回答をしていた場合では、評価が異なります。
また、「特定の宗教の信者とは結婚しない」と明確に伝えていたにもかかわらず、結婚できなくなることを避けるために信仰や活動歴を意図的に隠した場合は、夫婦間の信頼を損なう行為として重く評価される可能性があります。
夫が、妻が特定の宗教の信者とは結婚しない意思を持っていることを知りながら、自らの信仰を結婚前から意図的に隠していた事案では、裁判所は離婚を認めたうえで、夫が信仰を隠したまま結婚し、妻を婚姻関係の継続が困難な状況に置いたことなどを考慮し、妻への慰謝料を認めました。(東京高裁昭和58年9月20日 民事14部判決)
ただし、必ずしもこの判決と同じ結論になるとは限らず、離婚や慰謝料請求が認められるかは事案ごとに判断されます。
2-3 発覚後に相手がどのように対応したかも離婚の判断に影響する
結婚前の秘匿が問題となる場合でも、裁判所は発覚後の対応を含めて婚姻関係の回復可能性を判断します。
相手が事実を説明し、献金額や活動時間を家庭生活に支障がない範囲へ見直し、配偶者や子どもに信仰を強要しないと約束して実行している場合は、直ちに婚姻関係が破綻したとは判断されないことがあります。
反対に、発覚後も説明を変える、活動内容や支出を隠す、配偶者の意思を無視して入信を迫る、子どもの参加について話し合わないといった対応が続けば、信頼関係の回復は難しいと判断される可能性があります。
第3章 宗教活動を隠していた相手に慰謝料を請求できるのか
3-1 離婚が認められても慰謝料が当然に発生するわけではない
慰謝料は、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。そのため、宗教を理由に離婚が成立しても、直ちに慰謝料を請求できるわけではありません。
慰謝料を請求するには、相手が信仰や宗教活動について事実を隠したり、事実と異なる説明をしたり、配偶者や子どもに入信や宗教活動への参加を強いたりした行為が違法と評価され、それによって精神的苦痛を受けたという事実が必要です。
離婚に伴う慰謝料を求める場合は、その行為が婚姻関係の破綻や離婚にどの程度影響したかも考慮されます。
3-2 意図的な秘匿や強要が婚姻破綻の原因なら慰謝料が認められる可能性がある
慰謝料が問題となりやすいのは、結婚の判断に影響すると分かっていながら、信仰を意図的に隠したり、事実と異なる説明をしたりした場合です。
ただし、慰謝料の金額は、相手がどのような意図で信仰を隠し、その結果として夫婦関係がどの程度悪化し、配偶者がどれほどの精神的苦痛を受けたかを中心に判断されます。婚姻期間や双方の言動、支払う側の経済状況などもあわせて考慮されます。
3-3 個人的な信仰にとどまる場合や双方に原因がある場合は慰謝料請求が認められにくい
配偶者が自分の時間と金銭の範囲で宗教活動を行い、家計や家事、育児に支障を生じさせておらず、入信も強要していない場合は、慰謝料請求は認められにくいといえます。
また、宗教活動が発覚した後に、信仰を全面的に捨てるよう相手に迫ったり、相手の人格を否定する言動を繰り返したりしたことで夫婦関係が悪化した場合には、相手だけに婚姻破綻の責任があるとは言いにくくなり、離婚が成立しても慰謝料が否定されたり、金額が低く抑えられたりすることがあります。
第4章 離婚や慰謝料請求を考える場合に集めておきたい証拠
4-1 結婚前にどのような説明があったかを残す
まず確認したいのは、交際中や婚約中に、宗教についてどのような話をしていたかです。
メッセージやメールに「特定の宗教には入っていない」「家族も活動していない」「結婚後に勧誘することはない」といった説明が残っていれば、虚偽説明を示す資料になります。
また、自分が宗教を結婚相手選びの重要な条件として伝えていた記録も重要です。口頭で話した場合は、その場にいた家族や知人、当時相談していた相手が証人になり得ます。いつ、どこで、誰が、何を話したかを時系列で書き残しておきましょう。
4-2 宗教活動が家計や子どもに与えた影響を記録する
離婚や慰謝料請求では、宗教活動が婚姻生活に与えた具体的な影響を示す必要があります。
献金や物品購入が分かる預金通帳や振込履歴、クレジットカードの明細を保存する、お子さんを無理に集会へ連れて行ったような場合はその日時も記録しておきます。
入信の強要や暴言がある場合は、無理のない範囲で録音し、発言の前後が分かる形で残すことが考えられます。家事や育児への支障、話合いの内容、別居に至った経緯についても、日付を付けて継続的に記録しましょう。
ただし、相手のパスワードを勝手に使ってアカウントへログインするなど、自分が法的責任を問われるおそれのある方法は避けなければなりません。証拠の集め方に迷う場合は、行動する前に弁護士へ確認してください。
まとめ|宗教をめぐる離婚問題は相手を問い詰める前に弁護士へ相談を
結婚後に配偶者の宗教活動を知り、それを理由に離婚をしたいと思った場合でも、すべての状況において裁判所が離婚を認めてくれるとは限りません。
相手に嘘をつかれていた、多額の献金等を隠れてやっていたなど、状況によって宗教活動が婚姻を継続し難い重大な事由にあたるかは結論が変わってきます。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、事情を丁寧に伺い、必要な証拠や相手との話合いの進め方を整理したうえで適切な方法をご提案します。配偶者の宗教活動を知り、今後の夫婦関係についてお悩みの方は、相手に離婚を切り出す前にご相談ください。
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新築・リフォームの施工不良はどこまで賠償請求できる?施工ミスの程度別に弁護士が解説

新築住宅やリフォーム後に施工ミスが見つかった場合、どこまで補修してもらえるのか、補修費用以外にも賠償を求められるのか気になる方も多いでしょう。施工不良があっても、必ずしも全面的なやり直しや建て替え費用まで請求できるとは限らず、不具合の程度や補修方法によって賠償の範囲は変わります。
本記事では、軽微な不具合から構造上の重大な欠陥まで、施工不良の程度に応じてどこまで補修・賠償を求められるのかを弁護士が解説します。
第1章 施工不良の程度によって求められる補修・賠償は変わる
施工不良が見つかった場合、重要なのはミスがあったかどうかだけではなく、その不具合を解消するためにどの程度の補修が必要なのかという点です。民法上、施工内容が契約に適合していない場合には、修補などの追加対応や損害賠償、代金減額などが問題になります。
1-1 軽微な施工不良は部分的な手直し・補修が中心となる
クロスの一部に施工不良がある、建具の取付けにずれがある、塗装の一部分に不具合があるといったケースでは、その部分を手直しすることで契約どおりの状態にできることがあります。
このような場合は、内装全体のやり直しや工事代金全額に相当する賠償まで求められるとは限りません。まずは不具合を解消するための補修工事が基本となります。
1-2 生活や建物の機能に支障がある施工不良は補修範囲が広がることがある
水漏れや排水不良、断熱材の施工不良、床の傾きなど、日常生活や住宅の機能に影響する不具合では、より広い範囲の補修が必要になることが考えられます。
たとえば、配管の施工ミスによる水漏れで床や壁まで損傷した場合には、配管だけではなく、水漏れによって傷んだ部分の補修費用も賠償の対象となる可能性があります。
1-3 構造上の重大な施工不良では大規模補修や建て替え費用が問題になることもある
基礎や柱、梁など建物の安全性に関わる施工不良では、部分的な手直しだけでは十分な性能を回復できず、大規模な補修が必要になることがあります。
最高裁判所も、建築請負の目的物である建物に重大な欠陥があり、補修によって契約目的を達成することができず、建て替えが必要となる場合には、建て替えに必要な費用相当額が損害として認められる場合があると判断しています(最高裁平成14年9月24日判決)。
この事案では、建物全体の強度や安全性に著しく欠け、地震や台風などを契機に倒壊しかねない危険性があるとされました。
第2章 施工会社に責任を求められる施工不良とは?
2-1 契約書・設計図・仕様書と異なる施工は責任を求められる可能性がある
指定した建材とは違うものが使われている、設計図と異なる位置に設備が取り付けられている、依頼した工事の一部が行われていないなど、契約で決めた内容と実際の施工が異なる場合には、施工会社に補修や損害賠償を求められる可能性があります。
そのため、施工不良かどうかを確認する際には、完成した建物だけを見るのではなく、契約書や設計図、仕様書、見積書などと実際の施工内容を照らし合わせて確認することが重要です。
2-2 図面どおりでも必要な品質や性能を欠いていれば施工不良になることがある
施工不良は、設計図や仕様書と違う場合だけに限りません。
たとえば、防水施工が不十分で雨漏りする、配管の施工に問題があり水漏れする、構造部分の施工に問題があり建物の安全性に影響しているといった場合には、図面上は明確な違いがなくても、住宅として通常求められる品質や性能を欠いているとして責任が問題になる可能性があります。
また、建築基準法などの法令上の基準を満たしていても、それだけで施工会社の責任が否定されるとは限りません。契約で法令上の基準を上回る品質や仕様を約束していた場合には、その契約内容を満たしているかどうかも施工不良かどうかを判断する要素となります。
2-3 施工会社から許容範囲と言われても個別に確認する必要がある
施工不良を指摘した際、施工会社から「この程度のずれは施工上の許容範囲」と説明されることがあります。実際、わずかな施工誤差や、施主の好み・イメージとの違いだけで、すべてが施工不良になるわけではありません。
ただし、施工会社が許容範囲と説明しただけで当然に責任がないと決まるものでもありません。契約内容や施工基準、不具合の程度、住宅の使用や安全性への影響などを踏まえて判断する必要があります。
特に、施工会社と施主で施工不良かどうかの認識が大きく異なる場合には、建築士などによる専門的な調査結果も踏まえて判断することが重要です。
第3章 施工不良に気づいたらどうする?賠償を求めるまでの段階別対応
3-1 まずは施工会社に現地確認を求め、補修内容を確認する
不具合を見つけたら、補修前の状態を写真などで残したうえで、まず施工会社に連絡し、現地を確認してもらいます。その際は、単に「直してほしい」と伝えるだけでなく、不具合の原因をどのように考えているのか、施工上の問題を認めるのか、どの範囲をどの方法で補修するのかを確認しましょう。
施工会社が施工不良を認め、適切な補修を提案しているのであれば、この段階で無償補修によって解決できることがあります。補修箇所だけでなく、施工ミスによって床や壁など別の部分まで損傷している場合には、それらの補修・交換なども含めて協議します。
合意できる場合は、補修内容や工期のほか、補修後に同じ不具合が再発した場合の対応についても確認しておくとよいでしょう。
3-2 施工不良を認めない・補修方法で折り合わない場合は第三者の調査を検討する
実際には、施工会社が「施工上の許容範囲」「経年劣化が原因」などとして責任を認めないことがあります。また、施工不良自体は認めても、施主は広範囲のやり直しが必要と考えている一方、施工会社は部分補修で足りると主張することもあります。
このような場合には、建築士など第三者の専門家に、不具合の原因や必要な補修方法を調査してもらうことを検討します。第三者調査の意味は、施工不良かどうかを判断するだけではありません。どこまで直せば本来の品質・性能を回復できるのかを客観的に明らかにする点にもあります。
調査結果を施工会社に示し、施工不良や必要な補修範囲について合意できれば、その内容に沿った補修を求めて解決することになります。
3-3 それでも対応しない場合は期限を定めて補修や費用負担を求める
第三者の調査結果を示しても施工会社が補修に応じない場合や、連絡をしても対応が進まない場合には、要求する内容を具体化して書面で請求します。
たとえば、「どの不具合について、どのような補修を、いつまでに行ってほしいのか」を明確にし、回答期限を定めます。
この段階で施工会社と合意できれば、施工会社自身による補修だけでなく、事情によっては他社による補修費用の負担について話し合うことも考えられます。また、施工不良によって設備や家具などに損害が生じている場合や、必要な調査費用・仮住まい費用が発生している場合には、それらを含めた解決を検討します。
ただし、施主が希望した補修方法や支出した費用のすべてを当然に施工会社へ請求できるわけではありません。第1章で説明したとおり、どの範囲の補修が必要か、費用が相当かという点は別途検討が必要です。
3-4 施工会社が責任を認めない場合は早めに弁護士への相談を検討する
施工会社が施工不良を認めない場合や、補修範囲について見解が大きく異なる場合は、話し合いが長期化する前に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談したからといって、直ちに裁判をする必要はありません。施工会社との交渉を続けながら、契約書や設計図、これまでのやり取りを確認し、どのような資料を揃えるべきか、建築士などにどの点を調査してもらうべきか、どこまで補修や損害賠償を求められるのかを整理することができます。
特に、施工会社に補修を任せてよいのか、第三者による調査を先に行うべきか、他社による補修を検討してよいのかといった判断は、その後の請求にも影響することがあります。
まずは話し合いによる解決を目指しつつ、必要に応じて弁護士が施工会社との交渉を行い、それでも解決できない場合に建設工事紛争審査会などのADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟を検討することになります。
※建設工事紛争審査会…建設工事の請負契約をめぐる紛争について、あっせん・調停・仲裁を行う公的機関
第4章 【FAQ】新築・リフォームの施工不良の場面でよくある疑問
Q1. 施工会社から「保証期間が過ぎている」と言われたら、もう請求できませんか?
A1. 保証期間が過ぎても請求できる場合があります。
施工会社が独自に定めている保証期間と、民法などに基づいて法的責任を追及できる期間は必ずしも同じではありません。そのため、保証期間が終わったという理由だけで直ちに諦める必要はありません。
ただし、民法上の通知期間や消滅時効など別の期間制限もあるため、不具合に気づいた場合は早めに確認する必要があります。
Q2. 新築・リフォーム工事から数年後に雨漏りが発覚した場合でも、直してもらえますか?
A2. 新築かリフォームか、時期や原因によって異なります。
新築住宅では、屋根や外壁などの雨水の浸入を防止する部分について、住宅品確法により引渡しから10年間の責任が定められています。そのため、数年後に雨漏りが発覚した場合でも、この特則によって責任を求められる可能性があります。
一方、リフォーム工事には、新築住宅と同じ10年間の責任が当然に適用されるわけではありません。契約上の保証期間や民法上の契約不適合責任を確認する必要があります。
いずれの場合も、雨漏りを発見した時点で早めに施工会社へ連絡することが重要です。
まとめ|施工会社との話し合いで解決しない場合は弁護士へご相談ください
施工不良のトラブルでは、施工会社が不具合を認めない場合だけでなく、「補修はするが範囲が狭い」「他社に依頼する補修費までは負担できない」など、責任の範囲をめぐって話し合いが進まなくなることがあります。
このような場合、契約書や設計図などを確認し、建築士による調査結果などもふまえ、どこまで補修や賠償を求められるのかを法的に整理したうえで交渉することが重要になります。施工会社から補修案や金銭による解決案を提示されている場合も、その内容で合意してよいか自己判断する前に弁護士など専門家へ相談することをおすすめします。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、不動産トラブルや損害賠償請求などのご相談に対応しています。施工不良について施工会社との話し合いが進まない場合や、どこまで請求できるのか判断に迷っている場合は、お気軽にご相談ください。
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【オーナー向け】家賃を滞納している入居者を退去させたい場合|明渡しまでの対応と弁護士への相談ポイント

家賃滞納が続くと、オーナーとしては「これ以上待てないので退去してほしい」と考えることもあるでしょう。しかし、家賃を支払っていないという理由だけで、直ちに鍵を交換したり、強制的に退去させたりすることはできません。
本記事では、家賃を滞納している入居者に退去してもらうための対応と、弁護士へ相談すべきポイントを解説します。
第1章 家賃滞納があっても、直ちに入居者を退去させられるとは限らない
1-1 現在の滞納状況で契約を解除できるか確認する
家賃を期日までに支払わないことは、賃貸借契約上の義務違反です。しかし、1回支払いが遅れただけで、直ちに賃貸借契約を解除できるとは限りません。
家賃滞納を理由に契約を解除できるかは、滞納期間や金額だけでなく、過去にも支払遅延を繰り返していたか、督促後に入金があったか、支払約束を守っているかなど、これまでの経緯を踏まえて判断されます。実際の契約解除では、滞納によって「貸主と借主の信頼関係が壊れた」と評価できるかも重要です。
1-2 契約解除の基準や避けるべき対応
契約解除が認められる一般的な基準や、オーナー自身による鍵交換など避けるべき対応については、以下の関連記事「正当な事由はある?入居者の退去交渉が進まない場合の弁護士への相談のポイント」で詳しく解説しています。
関連記事
正当な事由はある?入居者の退去交渉が進まない場合の弁護士への相談のポイント
本記事では、家賃滞納を理由に退去を求めたいオーナーが、建物の明渡しに向けてどのような順序で対応するべきかを中心に説明します。
第2章 家賃を滞納している入居者の退去に向けた対応
家賃滞納を理由に入居者へ退去を求める場合は、いきなり解除通知を送るのではなく、滞納額と相手方を確認したうえで、催告や任意退去の交渉を行うところから始めます。任意退去に応じてもらえない場合は、賃貸借契約の解除・裁判所を通じた明渡しを検討することになります。
2-1 手順①:滞納額と退去を求める相手を確認する
まず、賃貸借契約書と入金履歴を照合し、何月分の家賃が、いくら支払われていないのかを確認します。一部入金や保証会社からの支払いがある場合には、それらを反映して滞納額を計算しなければなりません。
あわせて、契約者と実際の居住者が一致しているかも確認します。契約者がすでに転居し、家族や第三者だけが住んでいる場合には、契約者への通知だけでは明渡しを実現できない可能性があるためです。
2-2 手順②:期限を定めて未払家賃の支払いを催告する
滞納額と相手方を確認したら、入居者に対し、期限を定めて未払家賃の支払いを求めます。
電話やメール、訪問などで督促した場合は、督促を行った日付や入居者の回答、約束した支払日などを記録しておきましょう。督促を重ねても支払いがなかった経緯を残すことで、契約解除の判断や、その後の明渡訴訟で経緯を説明しやすくなります。
退去に向けた最終的な催告は、電話や口頭だけで済まさず、内容証明郵便など記録が残る書面で行うことが重要です。
催告書には滞納額と支払期限を明確に記載する
催告書には、未払いとなっている家賃の対象月と金額、支払期限、支払方法を記載します。期限までに支払いがなければ契約解除を検討することも明確に伝えます。
請求額や支払期限が曖昧なままでは、その後の解除や訴訟で問題になる可能性があるため、最終的な催告書を送る前に通知内容を十分確認しましょう。
内容証明郵便は通知内容を記録するために利用する
催告書は、一般的に内容証明郵便を利用して送ります。内容証明郵便を利用すれば、いつ、どのような文書を送ったのかを記録できるためです。相手に届いたことも残したい場合には、配達証明を付けます。
2-3 手順③:入居者が応じる場合は任意退去の条件を書面にする
入居者が滞納分をすぐに支払えなくても、退去には応じるという場合があります。この場合には、訴訟を起こす前に、話し合いによる任意退去を目指すことも考えられます。
ただし、退去日だけを口頭で決めると認識の食い違いが起こりやすくなるため、合意内容は書面に残すことが大切です。
退去日と明渡しの方法を明確にする
任意退去の合意書では、いつまでに物件を退去するのかだけでなく、鍵の返還や室内の荷物の搬出まで含めて、明渡しを完了する条件を明確に記載します。
あわせて、退去日までの賃料、敷金、原状回復費用などの精算方法も整理します。退去後にトラブルに発展しないよう、誰が何を行うのかを具体的に定めておくことが重要です。
明渡しと滞納家賃の回収は分けて考える
オーナーとしては、滞納家賃を全額支払ったうえで退去してほしいと考えるのが自然です。しかし、支払能力のない入居者に全額払いを求め続けると、明渡しが遅れ、その間も損失が増えることがあります。
そのため、先に退去日を確定し、滞納家賃については分割払い、保証会社や連帯保証人への請求などを別に整理する方が、結果的に負担を抑えられる場合もあります。
2-4 手順④:支払いがなければ賃貸借契約を解除する
催告した期限までに支払いがなく、滞納期間やこれまでの経緯から契約解除が認められると判断できる場合には、賃貸借契約を解除し、建物の明渡しを求めます。
催告後に解除するか、催告と解除を一つの通知にするかを決める
解除の進め方は主に2通り考えられます。一つは、支払いを催告し、期限を過ぎた後に改めて解除通知を送る方法です。もう一つは、催告書に「期限までに支払いがなければ契約を解除する」と記載し、催告とともに期限内に支払いがない場合の解除の意思をあらかじめ通知する方法です。
どちらが適切かは、契約書の内容や滞納状況、過去の督促経緯によって異なります。形式だけで判断するのではなく、その事案に適した通知方法を選ぶことが大切です。
無催告解除の条項があっても直ちに解除できるとは限らない
賃貸借契約書に「家賃を滞納した場合は催告せずに解除できる」と定められていても、無催告での解除が有効かは、滞納期間や金額、これまでの支払状況、督促への対応などを踏まえて判断されます。
解除の効力が否定されれば、賃貸借契約は終了していないため、その解除を前提とする明渡請求も認められず、改めて催告と解除からやり直すことになります。
そのため、契約書に無催告解除の条項がある場合でも、その条項だけに頼るのではなく、支払期限を定めて催告し、期限までに支払いがなければ解除通知を出すという段階を踏む方が安全です。
2-5 手順⑤:契約解除後も退去しない場合は明渡訴訟と強制執行へ進む
賃貸借契約を解除しても入居者が退去しない場合には、建物明渡請求訴訟を提起します。強制執行が可能な判決を得た後も明渡しに応じなければ、強制執行へ進みます。
任意に退去しなければ建物明渡請求訴訟を提起する
建物明渡請求訴訟では、賃貸借契約が適法に解除されたことを主張し、入居者に建物の明渡しを求めます。未払家賃や、解除後から明渡しまでの賃料相当損害金をあわせて請求することもあります。
強制執行が可能な判決を得ても退去しなければ強制執行を申し立てる
明渡しの強制執行が可能な判決を得た場合や、裁判上の和解が成立した段階であっても、オーナー自身が鍵を交換したり、室内の荷物を搬出したりすることはできません。
入居者が退去しない場合には、執行官へ明渡しの強制執行を申し立てる必要があります。
第3章 家賃滞納者の退去について弁護士に相談するポイント
3-1 最終的な催告書や解除通知を送る前に相談する
家賃滞納者の退去について弁護士へ相談する時期は、訴訟を起こす段階に限られません。
むしろ、最終的な催告書や解除通知を送る前に相談することが重要です。この段階であれば、請求する滞納額が正しいか、どの程度の支払期限を設けるべきか、現在の状況で解除を検討できるかなどを確認できます。
また、入居者との関係が大きく悪化する前に相談すれば、任意退去について話し合う余地が残っている場合もあります。
支払約束が何度も守られないときや、管理会社による督促で進展がないときには、訴訟になるまで待たずに相談しましょう。
3-2 契約者以外の人が住んでいる場合も早めに相談する
契約者と実際の居住者が一致しない場合には、通常の家賃滞納案件よりも慎重な対応が必要になります。
誰が物件を使用しているのか分からないまま催告や訴訟を進めると、通知が適切な相手に届かない、明渡しを請求すべき相手を特定できない、判決後の強制執行が難しくなるといった問題が起こり得るためです。
契約者と連絡が取れない、契約者がすでに転居した可能性がある、知らない人物が出入りしているといった場合には、現地の状況や契約関係を確認したうえで、明渡しまでの手続を組み立てる必要があります。
3-3 明渡しまでの進め方を具体的に整理する
弁護士に相談することで、現在の滞納状況で契約解除へ進めるのか、任意退去を求める場合はどのような条件を提示するのか、交渉から明渡訴訟へ切り替える時期はいつかといった、退去までの方針を具体的に決めることができます。
さらに、建物の明渡しと滞納家賃の回収のどちらを優先するか、保証会社や連帯保証人への請求をどのように組み合わせるかまで方針を定めることで、同じ督促を繰り返して滞納額だけが増える事態を避け、明渡しの実現に向けて段階的に対応を進められます。
第4章 【FAQ】家賃滞納者の退去の場面でよくある疑問
Q1. 催告後に家賃の一部だけが入金された場合でも、契約解除へ進めますか?
A1. 残った滞納額と入金後の対応を踏まえて判断します
一部入金があっても、未払家賃が残っている場合には、残額や滞納の経緯によっては契約解除へ進める可能性があります。ただし、残額がわずかになった場合や、その後も継続して支払われている場合には、契約解除が認められるかの判断に影響します。
Q2. 保証会社や連帯保証人が滞納家賃を支払った場合でも、入居者に退去を求められますか?
A2. 支払いがあっても解除できる場合があります
保証会社や連帯保証人から支払いを受けた場合、オーナーの未収はその範囲で解消されるため、「入居者本人が支払っていない」という事情だけで直ちに解除できるとは限りません。しかし、保証会社や連帯保証人による支払いの経緯、入居者自身の支払状況や支払意思などの個別事情から「信頼関係が壊れた」と判断され、解除が認められる場合もあります。保証契約の内容や滞納の経緯を確認したうえで、慎重に判断する必要があります。
Q3. 入居者が破産や個人再生を申し立てた場合、退去請求と滞納家賃の回収はどうなりますか?
A3. 退去請求と家賃回収を分けて対応します
破産や個人再生を申し立てたことだけで、賃貸借契約が当然に終了するわけではありません。ただし、申立て前から家賃滞納が続き、信頼関係が壊れたといえる場合には、滞納を理由とする契約解除や明渡請求を検討できます。
その後、破産手続や再生手続の開始決定がされた場合、開始前の原因に基づく滞納家賃は、原則として破産債権または再生債権として手続の中で扱われます。そのため、明渡請求と滞納家賃の回収を分けて対応する必要があります。
まとめ|家賃滞納者の退去は、催告・解除の前に弁護士へ相談を
家賃滞納者への対応では、訴訟を起こす段階になって弁護士へ相談すればよいとは限りません。催告する金額や支払期限、解除通知の内容に不備があると、後から手続をやり直すことになり、明渡しまでの時間と費用がさらに増える可能性があるからです。
早い段階で弁護士へ相談すれば、いつ契約を解除し、どの時点で明渡訴訟へ切り替えるかを整理でき、滞納家賃の回収や保証会社への請求も含め、物件を取り戻すまでの道筋を具体的に決めたうえで手続きを進めやすくなります。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、家賃滞納の状況や賃貸借契約の内容を確認し、催告や任意退去の交渉、明渡訴訟まで一貫して対応しています。督促を続けても支払いがない場合や、入居者の退去を検討し始めた場合には、通知を送る前に一度ご相談ください。
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10対0の加害者でも弁護士費用特約は使える?自動車事故で弁護士に依頼すべきケースを解説

自動車事故を起こし、自分の過失が100%となる「10対0」の加害者になった場合、加入している保険の弁護士費用特約は使えるのでしょうか。一般的な弁護士費用特約は、主に被害事故で相手方へ損害賠償請求する際に利用するものですが、保険商品によっては加害事故の刑事事件にも利用できる場合があります。
本記事では、10対0の加害事故で弁護士費用特約を利用できる場合や、保険会社とは別に弁護士への相談・依頼を検討した方がよい場面について弁護士が解説します。
※本記事では、自分の過失が100%、相手方の過失が0%となる事故を「10対0の加害事故」として解説します。
第1章 弁護士費用特約とは?一般的な補償範囲と利用する場面
まずは、弁護士費用特約の一般的な補償内容と、どのような事故で利用されるのかを確認しましょう。
1-1 一般的な弁護士費用特約は相手への損害賠償請求にかかる弁護士費用を補償する
自動車保険に付帯する一般的な弁護士費用特約は、自動車事故などで自分が被害を受けたとき、相手方へ損害賠償を請求するために弁護士へ相談・依頼する費用を補償するものです。けがをした場合の治療費や慰謝料、休業損害、壊れた車の修理費などについて相手方と交渉するため弁護士に依頼した場合に、その弁護士費用を契約上の限度額まで保険でまかなうことができます。
補償内容は保険会社や商品によって異なりますが、代表的な商品をみると、弁護士費用について1事故・被保険者1名につき300万円、法律相談費用は10万円を上限としているものがあります。これは目安ですので、利用する際には自身が加入している保険内容を確認してください。
1-2 典型的に利用するのは自分の過失が0%のもらい事故
弁護士費用特約が一般的に利用されるのは、自分の過失が0%となる「もらい事故」の場面です。
自分に損害賠償責任がない事故では、自分が加入している対人・対物賠償保険を使わないため、保険会社に相手方との示談交渉を任せることができません。そのため、相手方の保険会社と自分で話し合うことになります。
しかし、相手方の保険会社から慰謝料や休業損害などの賠償金を提示されても、その金額が事故やけがの程度に見合ったものなのかを判断するのは簡単ではありません。
このような場合に、相手方の保険会社との交渉を弁護士に任せ、その弁護士費用を補償するのが弁護士費用特約の基本的な役割です。
では、自分が10対0の「加害者」側になった場合、弁護士費用特約は利用できないのでしょうか。
第2章 10対0の加害者でも弁護士費用特約を使える場合がある
10対0の加害事故では、被害者への損害賠償と、加害者本人の刑事事件とで対応する人が異なります。弁護士費用特約が使えるかどうかも、この2つを分けて考えると分かりやすいです。
2-1 被害者への損害賠償では一般的な弁護士費用特約は通常使えない
自分の過失が100%、相手方の過失が0%であれば、自分から相手方に対して交通事故による損害賠償を請求することはありません。そのため、自分の過失が100%の場合には、相手方への損害賠償請求を対象とする一般的な任意保険の弁護士費用特約は通常利用できません。
ただし、保険商品によっては、刑事事件における弁護士費用を補償しているものもあります。
2-2 対人加害事故の刑事事件まで補償する弁護士費用特約もある
自動車事故で相手にけがをさせたり、死亡させたりした場合には、被害者への損害賠償とは別に、運転者本人の刑事責任が問題になることがあります。
保険商品によっては、このような対人加害事故について、刑事事件への対応に必要となる弁護士費用や法律相談費用を弁護士費用特約の対象としているものもあります。
2-3 加害者でも使えるかは弁護士費用特約という名称だけでは判断できない
このように、「弁護士費用特約」と呼ばれるものには、被害事故についての損害賠償請求のみを対象とする商品もあれば、対人加害事故の刑事事件まで対象とする商品もあります。また、刑事事件が対象であっても、死亡事故、逮捕、起訴など一定の条件が設けられている場合もあります。
そのため、交通事故の加害者となってしまい、弁護士への相談を考えている場合には、まず自分が加入している弁護士費用特約の範囲を確認することが重要です。
第3章 10対0の加害事故では損害賠償と刑事事件で弁護士の役割が異なる
10対0の加害事故における弁護士の役割は、「被害者への損害賠償」と「加害者本人の刑事事件」とで異なります。自身で弁護士を付けるべきかを考えなければならないのは、加害者本人の刑事事件対応についてです。
3-1 被害者への損害賠償交渉は通常は自分の保険会社が対応する
10対0の加害事故では、通常、相手がけがをした場合の治療費や慰謝料、車の修理費用などについて損害賠償責任が生じます。
任意保険の対人賠償保険・対物賠償保険に加入し、示談交渉サービスを利用できる場合には、このような被害者との損害賠償交渉は一般的に保険会社が加害者に代わって行います。
そのため、損害賠償交渉については、自身で弁護士への相談を検討する場面は通常ありません。
3-2 損害賠償の交渉が難航した場合も保険会社側で弁護士が対応することがある
自分が加害者で被害者との話し合いがまとまらず、調停や訴訟に発展する場合もあります。
この場合も、示談交渉サービスの対象となる事故であれば、一般的には保険会社が弁護士の選任を含む調停・訴訟の手続を行い、その費用も保険会社が負担するため、直ちに加害者が自分で弁護士を選任しなければならない場面ではありません。
不安な場合には、加入している対人・対物賠償保険でどこまで対応してもらえるかを保険会社に確認しておくとよいでしょう。
3-3 刑事事件への対応は自分で弁護士への依頼を検討する
一方、人身事故では、3-1や3-2で確認した民事上の損害賠償とは別に、事故の内容によって過失運転致死傷罪などの刑事責任が問題になることがあります。
このような加害者本人の刑事事件については、保険会社が対応してくれるわけではありません。そのため、刑事事件について弁護士のサポートを受けたい場合には、加害者本人が弁護士への依頼を検討することになります。
ここで確認したいのが、弁護士費用特約です。
先述のとおり、加入している保険が加害事故の刑事事件にかかる弁護士費用まで補償している場合には、一定の条件・範囲で弁護士費用の補償を受けられることがあります。
まずは保険会社に連絡し、自身の事故について弁護士費用特約を利用できるかを確認する必要があります。
刑事事件の弁護士費用が補償の範囲外であり、自分で選んだ弁護士に依頼する場合には、原則として自費で依頼することになります。なお、勾留後など一定の場合には、国選弁護人制度を利用できることがあります。
第4章 弁護士費用特約が使えなくても弁護士への相談を検討した方がよいケース
弁護士費用特約が使えない場合でも、事故の内容によっては、自費であっても早い段階から弁護士に相談した方がよいケースがあります。
特に、事故そのものが重大な場合、すでに刑事手続への対応が必要になっている場合、被害者との示談や謝罪を刑事処分も見据えて進める必要がある場合には、本人だけで対応することが難しくなります。
4-1 死亡・重傷事故など刑事処分が重くなる可能性がある場合
被害者が死亡したり、重いけがを負ったりした事故では、軽微な人身事故と比べて刑事処分が重くなる可能性があります。
このような重大事故では、「まだ逮捕されていないから様子を見る」という対応はおすすめできません。事故後には警察による捜査が進み、事故の発生状況や運転状況、過失の内容などが確認されていきます。事故状況によって今後の刑事手続や対応方針も変わるため、早い段階から刑事事件としての対応を考える必要があります。
弁護士に早期に相談すれば、ドライブレコーダーなど事故状況を確認できる資料を整理し、どのような点が刑事責任の判断で問題となり得るのか、今後どのような手続が想定されるのかを確認できます。
死亡事故や重傷事故では、捜査が本格化してから対応を考えるのではなく、事故直後の段階から今後の見通しと対応方針を整理しておくことが重要です。そのためにも、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。
4-2 取調べや逮捕・勾留など刑事手続への対応が必要な場合
警察から取調べを受けている、逮捕される可能性を指摘されている、すでに逮捕・勾留されているなど、刑事手続が具体的に進んでいる場合には、弁護士の必要性はさらに高くなります。
弁護士に依頼すれば、取調べにどのように対応すべきかについて助言を受けることができます。また、逮捕された場合には弁護士が接見して本人から事情を聞き、勾留された場合には身体拘束からの早期解放に向けた対応や、勾留に対する不服申立てなどを検討することができます。
逮捕による身体拘束は最長72時間で、その後勾留されると、勾留期間は原則10日間、さらに最大10日間延長されることがあります。そのため、逮捕・勾留が問題となっている場面では、できるだけ早く弁護士と連絡を取ることが重要です。
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4-3 刑事処分を見据えて被害者への謝罪や示談を進めたい場合
人身事故では、被害者への謝罪や被害弁償、示談の状況が、起訴・不起訴や量刑を判断する際の事情の一つとなることがあります。
保険会社は治療費や慰謝料など民事上の損害賠償についての交渉は行いますが、刑事事件への影響まで考えて、被害者への謝罪や示談を進めてくれるわけではありません。
また、被害者やその家族が加害者本人との直接の連絡を望んでいない場合には、本人から連絡を取ろうとしても話し合いを進められないこともあります。
このような場合には、弁護士が窓口となって被害者の意向を確認し、刑事事件への影響も考慮しながら謝罪や被害弁償、示談を進めることが考えられます。
特に被害者との直接のやり取りが難しいケースでは、弁護士を付けることが被害者対応を進めるための重要な手段になります。
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まとめ 10対0の加害事故で対応に迷ったら早めに弁護士へご相談ください
10対0の加害事故では、保険会社に任せられる部分と、加害者本人が対応しなければならない部分があります。特に人身事故で刑事責任が問題になる場合には、事故後の対応や弁護士へ相談するタイミングによって、その後の進め方が変わることもあります。
「弁護士費用特約が使えるのか分からない」「保険会社から特約の対象外と言われたが、自費で弁護士を付けるべきか判断できない」といった場合には、弁護士費用の問題だけで依頼を見送る前に、まずは一度弁護士へ相談することをおすすめします。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、交通事故だけでなく刑事事件も取り扱っています。10対0の加害事故を起こし、今後の対応や弁護士への依頼が必要か判断に迷われている方は、お早めにご相談ください。
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逮捕後に不起訴となったにもかかわらず解雇された場合|解雇の無効を主張できるケースを弁護士が解説

逮捕後に不起訴となったにもかかわらず解雇された場合、納得できないと感じる方は少なくありません。本記事では、そのような場合に、解雇無効を主張できる可能性があるケースや、取るべき対応を弁護士が解説します。
第1章 逮捕後に不起訴になっても解雇されることはあるのか
1-1 不起訴になれば当然に解雇が無効になるわけではないこと
不起訴になったことは重要な事情ですが、それだけで解雇の有効・無効が決まるわけではありません。不起訴であっても、事件の内容や担当業務との関連性、会社の業務・信用への影響などが問題になることがあります。
一方、逮捕されたという事実だけで会社が自由に解雇できるわけでもありません。
実際には、逮捕の内容、業務への影響、就業規則の定め、会社の調査や手続などを総合的に考慮して判断されます。
1-2 事件内容や業務・信用への影響も判断材料になること
会社が解雇を検討する際には、単に逮捕された事実だけでなく、次のような事情が問題になります。
・事件内容と担当業務との関連性が強い
・取引先や顧客との関係に具体的な支障が生じた
・会社の信用や職場秩序に重大な影響が及んだ
そのため、不起訴後に解雇された場合は、会社がどのような事実を確認し、何を根拠に解雇したのかを把握することが重要です。
第2章 逮捕を理由とする解雇が有効かどうかの基本的な考え方
2-1 解雇には合理的な理由と社会通念上の相当性が必要になること
日本の労働法では、解雇は労働者の生活に重大な影響を及ぼすため、厳しい要件が設けられています。解雇が有効となるためには、労働契約法第16条が定める要件を満たさなければなりません。同条では、解雇は「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当」と認められない場合には、権利を濫用したものとして無効になると定められています。
「客観的に合理的な理由」とは、会社側だけの主観ではなく、第三者から見ても解雇に相当する事情があるといえることを意味します。
また、「社会通念上相当」とは、解雇という重い処分を選択することが社会一般の常識から見てもやむを得ないと評価できることをいいます。
そのため、会社が「逮捕されたから信用できない」「職場に置いておきたくない」と考えているだけでは足りず、解雇を正当化できる事情が客観的に存在するかが問題になります。
2-2 懲戒解雇と普通解雇では判断のポイントが異なること
一口に「解雇」といっても、懲戒解雇と普通解雇では法的な意味合いが異なります。
懲戒解雇とは、従業員に重大な規律違反があった場合に制裁として行われる解雇です。
また、懲戒解雇には、解雇について定めた労働契約法第16条だけでなく、懲戒処分について定めた同法第15条も問題となります。
これに対し、普通解雇は、勤務成績や能力不足、長期間の欠勤など、労働契約を継続することが困難であることを理由として行われる解雇をいいます。
逮捕を理由とするケースでは、会社が懲戒解雇を選択することもあれば、長期間出勤できなかったことなどを理由に普通解雇として処理することもあります。
もっとも、どちらの場合であっても「解雇だから会社の自由」というわけではありません。
懲戒解雇であれば、就業規則に懲戒事由が定められていることや、その規定に該当することが重要になり、処分の重さが行為の内容に見合っているかも判断対象となります。
一方、普通解雇では、休職や配置転換など、解雇以外の方法を検討できなかったかも考慮されます。
2-3 就業規則と解雇理由を確認すること
逮捕を理由とする解雇では、就業規則の内容も重要な判断材料になります。
就業規則に「会社の名誉や信用を著しく害した場合」などの規定があっても、逮捕だけで直ちに懲戒解雇できるわけではなく、処分の重さが行為に見合っているか、弁明の機会など所定の手続が守られたかも問題になります。
そのため、まず解雇通知書や解雇理由証明書、就業規則を確認し、会社がどのような根拠で解雇を判断したのかを把握することが重要です。
第3章 不起訴後の解雇について無効を主張しやすいケース
3-1 逮捕された事実だけを理由に解雇されている場合
逮捕は捜査のための身柄拘束手続であり、有罪を意味しません。
また、不起訴は、検察官が公訴を提起しない(裁判にかけない)と判断した処分です。
会社が事件内容や業務への影響を調査せず、「逮捕されたから」という理由だけで解雇した場合には、客観的に合理的な理由がないと評価される可能性があります。
3-2 不起訴の内容や事件の事実関係を十分に確認していない場合
会社が報道だけを前提に判断したり、本人から事情を聞かずに処分を決めたりした場合には、調査が不十分である可能性があります。
不起訴には、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予などがあります。
起訴猶予は、犯罪の嫌疑が認められる場合でも、事件の軽重、反省、被害弁償などを考慮して起訴しない処分です。そのため、不起訴になったことだけで、問題となった行為がなかったとは判断できません。
もちろん、会社が不起訴理由のすべてを把握できるとは限りませんが、少なくとも処分を決めるに当たり、必要な事実確認を尽くしたかどうかは重要な判断要素になります。
十分な調査を行わずに解雇した場合には、その判断が合理性を欠くと評価される可能性があります。
3-3 業務への支障や会社の信用への影響が乏しい場合
事件が私生活上のもので、会社名が報道されておらず、取引先や顧客との関係にも具体的な支障が生じていない場合には、逮捕だけを理由とする解雇の合理性が疑われることがあります。ただし、売上減少などの現実の損害がなくても、事件内容、本人の職種や地位、会社の事業内容から、会社の社会的評価への悪影響が重大と評価されることがあります。
そのため、具体的な損害の有無だけで判断することはできません。
3-4 同種の事案と比べて処分が重すぎる場合
同じ会社で類似の事案が発生しているにもかかわらず、自分だけが著しく重い処分を受けている場合もあります。例えば、過去には戒告や減給で済んでいた事案について、自分だけが懲戒解雇となっているようなケースです。
会社には一定の裁量がありますが、その裁量にも限界があります。
同種の事案との均衡を著しく欠く処分である場合には、「社会通念上相当」とはいえないとして、解雇が無効と判断される可能性があります。
もちろん、事件の内容や役職、過去の勤務態度などによって処分が異なることはありますが、その違いを合理的に説明できるかどうかが重要です。
3-5 弁明の機会がないなど手続に問題がある場合
解雇の有効性は、処分の理由だけでなく、処分に至る手続も重要になります。
例えば、本人への事情聴取がない、弁明の機会が与えられていない、就業規則所定の懲戒手続が守られていない場合には、解雇の有効性に影響することがあります。
ただし、手続上の問題があるだけで直ちに解雇が無効になるとは限らず、裁判では、手続違反の内容や程度、事件の性質などを踏まえて総合的に判断されます。
そのため、「会社から突然解雇を言い渡され、事情を説明する機会すらなかった」という場合には、その経緯も重要な事情となります。
以上のように、解雇の有効性は個別の事情によって大きく左右されるため、会社がどのような理由や手続で解雇を行ったのかを丁寧に確認することが大切です。
第4章 解雇が有効と判断される可能性があるケース
4-1 事件内容と担当業務との関連性が強い場合
事件の内容が担当業務と密接に関係している場合には、会社との信頼関係が大きく損なわれたとして、解雇が有効と判断される可能性があります。
例えば、会社が相応の根拠に基づき、経理担当者による横領、配送担当者による飲酒運転、介護職員による利用者への暴行などの事実を確認した場合が考えられます。
もっとも、このようなケースでも、不起訴となった理由や会社が把握している事実関係によって結論は変わり得ます。
重要なのは、「その事件が担当業務にどの程度影響するのか」という点です。
4-2 会社の信用や事業活動への影響が大きい場合
事件が大きく報道され、会社名や本人の勤務先まで広く知られた結果、売上の減少、取引停止、顧客からの苦情など、会社の信用や事業活動に具体的な影響が生じている場合には、解雇を基礎づける事情となる可能性があります。
また、このような現実の損害がまだ生じていない場合でも、事件の内容、会社の事業内容、本人の職種や地位などから、会社の社会的評価への悪影響が相当重大と評価されることがあります。
4-3 以前から勤務上の問題が繰り返されていた場合
解雇の有効性は、今回の事件だけで判断されるとは限りません。これまでにも無断欠勤や勤務態度の問題が繰り返され、改善指導や懲戒処分を受けても改善されなかった場合には、その経緯が解雇の相当性を判断する事情となることがあります。
ただし、同一の行為について重ねて懲戒処分を科すことは、原則として許されません。
つまり、今回の事件について会社が確認した具体的な行為や業務への影響に加え、それ以前から繰り返されていた勤務上の問題も踏まえ、「雇用関係を維持することが困難である」と判断される可能性があります。
第5章 解雇された後に確認すべき実務上のポイント
5-1 解雇通知書や解雇理由証明書を確認すること
まず、会社がどのような理由で解雇したのかを確認します。解雇通知書を確認し、解雇理由証明書を受け取っていない場合は、会社に交付を請求することも検討しましょう。
労働基準法第22条では、労働者が請求した場合、会社は、退職事由や解雇理由など、請求された事項について証明書を遅滞なく交付しなければならないとされています。
5-2 退職届や合意書に安易に署名しないこと
自己都合退職を求められたり、退職合意書への署名を求められたりしても、その場で応じるのは避けましょう。内容を十分に確認しないまま署名すると、後から解雇の有効性を争うことが難しくなる可能性があります。
特に、書類に会社への請求権を放棄する条項や、今後異議を申し立てないという条項が含まれていることがあります。会社から書類への署名を求められた場合には、その場で判断せず、一度持ち帰って内容を確認することをお勧めします。
5-3 会社とのやり取りを記録として残すこと
会社とのやり取りは、後の交渉や裁判で重要な証拠となることがあります。
例えば、解雇を告げられた日時、説明した人物、面談の内容、メールやチャットなどを保存しておきましょう。特に、「不起訴になっても関係ない」「逮捕された以上辞めてもらう」といった説明があった場合には、会社がどのような理由で解雇を判断したのかを検討する上で重要な資料となる可能性があります。
5-4 刑事事件に関する資料を整理すること
不起訴となったことを示す資料も、可能な範囲で保管しておくことが重要です。
例えば、不起訴処分告知書、釈放日が分かる資料、弁護士から受け取った書類、示談書などを整理します。
もっとも、不起訴処分告知書には通常、不起訴の理由までは記載されません。
そのため、「不起訴だから解雇は違法である」と主張するのではなく、不起訴となった経緯や会社への影響なども含めて総合的に整理することが重要です。
5-5 希望する解決方法を整理すること
解雇が無効となる可能性がある場合でも、最終的な解決方法は一つではありません。
例えば、
・一定の解決金の支払いを受けて退職する
・解雇期間中の賃金などの支払いを求める
など、希望する解決は人によって異なります。
そのため、会社との交渉を始める前に、「自分はどのような解決を望んでいるのか」を整理しておくことが大切です。
第6章 解雇無効を主張する場合に請求できる可能性があるもの
6-1 従業員としての地位確認
解雇が法律上無効と判断されれば、会社に対して一定の権利を主張できる可能性があります。まず問題となるのが、「従業員としての地位確認請求」です。
これは、「解雇は無効であり、現在も会社の従業員としての地位を有している」ことの確認を裁判所に求める請求です。解雇が無効となれば、法律上は雇用契約が終了していないことになるため、会社は原則として従業員として取り扱わなければなりません。
もっとも、実際には会社との信頼関係が大きく損なわれているケースもあります。
そのため、法的には復職が可能な場合であっても、交渉の結果として解決金を受け取り退職するという形で解決することも少なくありません。
6-2 解雇期間中の賃金
解雇が無効であり、解雇後も労働者に就労の意思・能力があったにもかかわらず、会社側の責任によって働くことができなかった場合には、解雇期間中の賃金を請求できる可能性があります。もっとも、解雇期間中に他社で収入を得ていた場合には、その収入が一定の範囲で控除されることがあります。
第7章 不起訴後に解雇された場合は早めに対応を検討しましょう
逮捕後に不起訴となったからといって、解雇が当然に無効になるわけではありません。
一方で、逮捕の事実だけを理由に解雇された場合や、会社が十分な事実確認をしないまま処分を決定した場合には、解雇無効を主張できる可能性があります。
解雇に納得できない場合には、解雇通知書や解雇理由証明書、就業規則、会社とのやり取りなどを早めに整理することが重要です。時間が経過すると、資料を失ったり記憶が薄れたりして、会社との交渉に必要な証拠を確保しにくくなることもあります。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、不当解雇をはじめとする労働問題や刑事事件に関連する民事上のトラブルについて幅広く対応しています。
また、グループ内には弁護士だけでなく、社会保険労務士、税理士、司法書士、行政書士が在籍しており、それぞれの専門分野を活かしたワンストップでのサポートが可能です。
状況を丁寧にお伺いした上で、解雇無効を主張できる可能性や、今後取り得る対応について分かりやすくご説明いたします。
「この解雇は有効なのだろうか」とお悩みの方は、一人で判断せず、できるだけ早い段階で当グループへご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
隣地のブロック塀が境界線を越えていたら?|勝手に撤去できるか・解決方法を弁護士が解説

隣地との境界線付近にあるブロック塀やフェンスが、自分の土地へはみ出ているように見えると気になるものです。しかし、土地の境界は判断が難しい場合があり、境界だと思っている場所が法的な土地の境界と一致しない可能性もあります。
本記事では、土地の境界の確認方法や、越境が確認された場合の法的な解決策について弁護士が解説します。
第1章 隣地の塀が越境しているように見えても勝手に撤去してはいけない
自分の土地に入っているように見えても勝手には壊せない
隣家のブロック塀などの工作物が自分の土地へはみ出しているように見えても、自分の判断だけで壊したり、切断したり、移動させたりすることは避けるべきです。
塀やフェンスが設置されている位置関係と、法的な土地の境界が一致しているとは限らず、見た目だけでは、本当に自分の土地へ越境しているのかを判断できない場合があるためです。
また、越境していることが確認できた場合でも、その塀やフェンスが隣地所有者の所有物であれば、許可なく撤去する行為は相手の所有権を侵害する可能性があります。撤去によって塀全体が壊れたり、補修が必要になったりすれば、修理費用などの損害賠償を求められるおそれもあります。
まずは勝手に手を加えず、第2章以降で説明する方法で、土地の境界や越境の有無を確認し、適切な対応をとることが大切です。
第2章 隣地の塀が境界線を越えているかを確認する
2-1 境界線は手元の資料や見た目だけでは判断できない
境界標などがある場合を除き、自分が所有する土地であっても、現地のどこまでが自分の土地なのかを正確に判断することは簡単ではありません。
登記事項証明書には土地の所在地や面積などが記載されていますが、現地のどの位置が境界線なのかまでは示されていないためです。
公図や地積測量図(※)があっても、作成された時期や土地によって精度が異なり、それらの資料だけで現地の境界線を確定できるとは限りません。
さらに、土地の境界には、登記上の区画を示す「筆界」と、実際に所有権が及ぶ範囲を示す「所有権界」があり、両者は通常一致しますが、過去に土地の一部が売買・贈与された経緯などの事情によって異なっている場合もあります。
このような事情から、越境の有無を見た目や手元の資料だけで判断するのは困難なのです。
そのため、越境が疑われる場合は、まず土地家屋調査士に相談し、筆界の調査・測量を依頼するのが実務的です。
※公図
法務局に備え付けられている、土地の位置関係やおおまかな形状を示す図面
※地積測量図
土地の面積、辺の長さ、境界点の位置などを示す測量図面
2-2 土地家屋調査士に境界の調査・測量を依頼する
土地家屋調査士は、土地の境界に関する資料を調査し、現地を測量する専門家です。
公図や地積測量図、現地の境界標、過去の測量図などを調べ、現地を測量し、必要に応じて隣地所有者の立会いを求めたうえで、筆界の位置を示します。
この調査・測量の結果と、ブロック塀やフェンスの位置を照らし合わせることで、まずは隣地の工作物が筆界を越えているかを確認できます。
ただし、土地家屋調査士が調査・測量を行っても、その結果だけで隣地所有者に筆界の位置を受け入れさせることができない場合も少なくありません。相手が立会いを拒否した場合や、示された位置に同意しない場合には、次の手続を検討する必要があります。
2-3 隣地所有者と筆界を確認できない場合は筆界特定制度を利用する
土地家屋調査士による調査・測量を行っても、隣地所有者が立会いに応じない場合や、双方が異なる位置を筆界だと主張している場合には、法務局の筆界特定制度を利用する方法があります。
筆界特定制度は、申請を受けた筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、資料調査や現地調査、必要な測量を行って、筆界の位置を公的に明らかにする制度です。当事者同士の合意がなくても手続を進められる点が、土地家屋調査士による通常の境界確認との違いです。
なお、筆界特定制度の申請は本人でもできますが、申請資料や図面の作成には専門知識が必要となるため、土地家屋調査士や弁護士に手続の代理を依頼することもできます。
2-4 所有権の範囲に問題がある場合は弁護士に相談する
土地家屋調査士による調査と筆界特定制度の対象は登記上の区画である筆界であり、実際に所有権がどこまで及んでいるかを示す所有権界までは判断されません。
筆界と所有権界が一致していない場合には、売買契約書、境界確認書や合意書、登記関係の資料、過去の土地の利用状況などを確認し、自分の所有権がどこまで及んでいるかを検討しなければなりません。
これは測量だけでは判断できない法律問題を含むため、弁護士への相談が必要になります。
第3章 越境が確認された場合の解決方法
3-1 ブロック塀やフェンスの所有者を確認する
隣地の塀やフェンスが自分の土地へ越境していることが確認できたら、次に、その工作物を誰が所有しているのかを調べます。
隣地の敷地内に設置されたブロック塀などが、部分的に自分の土地へはみ出している場合は、隣地所有者の単独所有物であることが一般的です。
一方、境界線上に設置された塀については、以前の所有者同士が費用を出し合って設置している場合があります。民法上も、境界線上に設けられた塀などは、隣接する土地所有者の共有物と推定されます。
中古住宅を購入した場合は、現在の所有者が塀の設置経緯を把握していないこともあります。売買時の資料、過去の工事契約書や領収書、隣地所有者の説明などを確認しましょう。
共有物であれば、一方の所有者だけで撤去や移設を決めることはできないため、双方で協議する必要があります。
3-2 撤去や移設の方法について隣地所有者と話し合う
越境と工作物の所有関係を確認したら、調査・測量の結果を隣地所有者に示し、解決方法について話し合います。
具体的には、越境部分を撤去する、塀全体を境界線の内側へ移設する、老朽化した塀を新しく設置し直すといった方法が考えられます。塀の構造によっては、越境部分だけを切り取ると塀全体の強度が低下するおそれもあるため、施工業者にも確認したうえで工事方法を決める必要があります。
あわせて、工事の実施時期や施工業者、費用の負担、工事のために隣地へ立ち入る必要があるかなども具体的に決めます。はじめから一方的に撤去を要求するのではなく、越境の程度や双方の事情を踏まえ、実行可能な方法を検討することが大切です。
3-3 すぐに撤去できない場合は越境確認書を作成する
工事費用や建替えの時期などの事情から、越境した塀をすぐに撤去できないこともあります。その場合は、口頭で現状を認めるだけでなく、越境確認書や合意書を作成しておきましょう。
書面には、境界線と越境部分の位置だけでなく、工作物の所有者、撤去または移設する時期、工事費用の負担、土地を売却・相続した場合の取扱いなどを記載します。
また、越境した状態を一時的に認めるだけであり、その土地を隣地所有者へ譲渡するものではないことも明確にしておく必要があります。
将来、所有者が代わった場合にも経緯が分かるよう、測量図や現場写真を合意書に添付しておくとよいでしょう。
3-4 話合いが進まない場合は弁護士に交渉を依頼する
越境自体は確認できたものの、隣地所有者が撤去に応じない場合や、工事方法、実施時期、費用の負担などについて合意できない場合は、弁護士への相談を検討します。
弁護士は、土地家屋調査士の調査・測量結果、工作物の所有関係、これまでのやり取りを確認し、法的にどのような請求が可能かを整理します。そのうえで、隣地所有者へ通知書を送り、撤去または移設の方法や期限、費用負担などについて交渉します。
土地の売却や建替えが予定されている場合は、境界トラブルがあることで手続や工事が進まなくなることもあります。予定が決まっている場合は、その期限も弁護士へ伝えたうえで、対応方針を検討することが重要です。
3-5 交渉で解決できない場合は民事調停や訴訟を利用する
弁護士による交渉でも合意できない場合は、裁判所の民事調停を利用する方法があります。
民事調停は、裁判官と調停委員が当事者の間に入り、話合いによる解決を目指す手続です。塀を撤去する時期や工事方法、費用負担などについて、双方の事情を踏まえて調整できます。合意した内容が調停調書に記載されると、確定判決と同じ効力が生じます。
民事調停でも解決できない場合は、訴訟による解決を検討することになります。
訴訟の内容は、隣地所有者との間で何が争われているかによって異なります。相手が越境について認めない場合は、裁判所に所有権の範囲の確認を求めます。所有権の範囲が明らかであるにもかかわらず相手が撤去に応じない場合は、ブロック塀などの撤去を求めることが考えられます。
どの請求を行うべきかは、測量結果や過去の契約・合意、土地の利用状況などによって異なるため、弁護士に資料を確認してもらったうえで判断する必要があります。
第4章 【FAQ】境界トラブルでよくある疑問
Q1. ブロック塀の越境が数センチだけでも撤去を求められますか?
A1. わずかな越境でも撤去を求められる可能性があります。
越境している範囲が数センチであっても、他人の土地に入り込んでいれば所有権の侵害に当たります。しかし、裁判でブロック塀の全面的な撤去が認められるかは、越境の程度や土地の利用に与える影響、撤去に必要な費用なども考慮されるため、撤去によって得られる利益に比べて相手の負担が著しく大きい場合などには、撤去までは認められない可能性もあります。
Q2. ブロック塀の基礎が地中で越境している場合や、フェンスなどが空中で越境している場合も撤去を求められますか?
A2. 地中や空中の越境も撤去を求められる可能性があります。
土地の所有権は、法令による制限の範囲内で、その土地の上空と地下にも及びます。そのため、地上に見えている部分が境界線の内側に収まっていても、ブロック塀の基礎や擁壁の底部が地中で越境していれば所有権の侵害が問題になる可能性があります。フェンスが傾いて上空へ入り込んでいる場合や、雨どいなどが空中で境界線を越えている場合も同様です。
Q3. ブロック塀の越境を長期間放置すると、土地を時効取得されることがありますか?
A3. 土地の使われ方によっては、時効取得される可能性があります。
ブロック塀が越境しているだけで、直ちに土地を取得されるわけではありません。
ただし、相手が塀の内側を自分の土地として、所有の意思をもって平穏かつ公然に使い続けた場合は、原則として20年で取得時効が成立する可能性があります。占有を始めた時点で自分の土地だと信じ、そのことに過失がなかった場合は10年です。
そのため越境が疑われる場合は長期間放置せず、必要に応じて、相手が越境部分の土地についてこちらの所有権を認める内容の越境確認書を作成しておくことが大切です。
Q4. 倒れそうなブロック塀でも、緊急に撤去してはいけませんか?
A4. まず安全を確保し、所有者や行政へ連絡しましょう。
ブロック塀が大きく傾いている、ひび割れが広がっているなど、倒壊のおそれがある場合は、人が近づかないようにし、写真や動画で状況を記録したうえで、所有者へ早急に連絡します。周囲に危険を及ぼしている場合は、自治体の建築指導担当窓口や、空き家であれば空き家対策窓口へ相談します。
人身被害の危険が差し迫っている場合は、警察や消防にも連絡しましょう。直ちに対応が必要な状況でも、自己判断で隣地の塀を全面撤去することは避け、まずは自分の敷地側で人を近づけないようにするなどの安全確保を行い、塀自体への措置については、所有者や行政の対応を踏まえて判断するのが基本です。
Q5. 隣地が空き家で所有者と連絡が取れない場合はどうすればよいですか?
A5. 所有者を調査し、必要に応じて管理人の選任を申し立てます。
隣地が空き家であっても、ブロック塀を勝手に撤去することはできません。まず登記上の所有者を確認し、すでに亡くなっている場合は相続人を調査して、撤去や移設について連絡します。
調査しても所有者が分からない場合や、所在が分からず連絡できない場合には、裁判所に、所有者が分からない土地を管理する所有者不明土地管理人や、所在不明の所有者の財産を管理する不在者財産管理人の選任を申し立て、その管理人と撤去などについて協議する方法があります。
いずれの場合も、自力での調査や手続きが困難な場合は弁護士への相談を検討しましょう。
第5章 境界トラブルは状況が複雑になる前に専門家へ相談する
境界線をめぐる問題は、見た目だけでは判断できず、測量だけで解決するとも限りません。隣地所有者との認識が食い違っている場合には、どの資料を確認するか、土地家屋調査士による調査・測量や弁護士による交渉が必要かを、早い段階で整理することが大切です。
特に、土地や建物の売却、建替え、外構工事を予定している場合は、境界トラブルが解決していないことで手続が進まなくなる可能性があります。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、隣地所有者との交渉だけでなく、土地の売買・相続に伴う登記や税務の問題にも対応しています。隣地の塀やフェンスをめぐってお困りの場合は、まずはご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
相続した老朽アパートを建て替え・売却したい場合の進め方|入居者への明渡しを検討するうえでの注意点を弁護士が解説

相続したアパートや賃貸マンションが老朽化していると、建て替えや売却を検討する一方で、入居者にどのように明渡しをお願いすればよいのか悩まれる方も少なくありません。もっとも、入居者がいる不動産では、貸主の都合だけで退去を求められるわけではなく、誰が貸主として交渉できるのか、建物の老朽化をどのように説明するのか、借地借家法上の正当事由があるのかを整理する必要があります。本記事では、相続した老朽収益不動産の建て替え・売却を検討している方に向けて、明渡しを進めるうえでの注意点を弁護士が解説します。
第1章 相続した不動産について誰が貸主として対応できるのかを整理する
1-1 相続しても賃貸借契約は当然には終了しない
相続により不動産の所有者になったとしても、入居者との賃貸借契約は基本的に引き継がれます。そのため、親から相続した物件だから自由に処分できる、建て替えや売却をしたいからすぐに退去を求められる、と考えていると予定通りに進まないことがあります。
相続で引き継いだ不動産は、「貸主の地位をそのまま承継する」ことと同時に、「入居者の契約上の地位も引き続き保護される」ことが前提です。
1-2 遺産分割協議と相続登記を済ませ、貸主を明確にする
相続人が複数いる場合には、まず不動産を誰が取得するのか、売却するのか、共有のまま保有するのかを整理する必要があります。不動産全体の建て替えや売却は、原則として所有者全員の同意が必要になるため、相続人間で方針が決まっていない状態では、入居者に明渡しをお願いしても、その後の売却や建て替えに進めない可能性があります。
また、遺産分割協議によって不動産を取得する相続人が決まった場合には、その内容に基づいて相続登記を行うことも重要です。登記名義が亡くなった方のままでは、買主への所有権移転登記を行うことができず、売却手続を進めるうえで支障が生じます。
1-3 管理会社がいる場合でも貸主側の法的判断は必要になる
不動産管理会社が入っている物件では、入居者への連絡や日常的な管理を任せていることがあります。しかし、建て替えや売却を前提に明渡しを求める場面は、通常の管理業務とは性質が異なります。
退去をお願いする時期、立退料の有無、提示条件、合意書の内容などは、貸主側の法的・経済的な判断を伴います。管理会社が窓口になる場合でも、どのような内容を入居者に伝えるのか、どの条件まで提示できるのかは、貸主側で把握しておく必要があります。
特に、入居者が退去に応じない場合には、借地借家法上の正当事由や法的手続の見通しも問題になります。紛争性のある交渉代理や法的手続への対応が必要になる場合には管理会社だけで対応することが難しく、弁護士への相談が必要になる場合があります。それも踏まえ、貸主自身も都度状況を把握しておく方が、弁護士への説明もしやすくなります。
第2章 建物の状態を把握して、方針を整理する
2-1 築年数だけでなく老朽化の程度を客観的に確認する
老朽化を理由に明渡しを検討する場合、築年数は一つの目安になります。しかし、築年数が古いというだけでは、入居者に退去を求める理由として十分とは限りません。同じ築年数の建物でも、修繕履歴や管理状況によって、建物の状態は大きく異なるためです。
雨漏り、外壁の劣化、給排水設備の不具合、階段や手すりの腐食、耐震性への不安など、具体的にどのような問題があるのかを客観的に整理しておく必要があります。たとえば、建物診断の報告書、写真、修繕履歴、管理会社からの報告などは、老朽化の程度を説明する客観的な資料になります。
2-2 入居者付き売却と明渡し後売却では法的対応が異なる
老朽化した不動産を売却する場合、入居者付きの収益物件として売却するのか、明渡し後に売却するのかによって、必要な対応は異なります。
入居者付きで売却する場合には、賃貸借契約を前提として、買主が貸主としての地位を引き継ぐことになります。そのため、賃料、敷金、滞納の有無、契約内容、修繕履歴などを整理しておく必要があります。
一方、明渡し後に売却する場合には、入居者との間で退去時期や条件について合意する必要があります。合意できなければ、調停や訴訟などの法的手続が必要になることもあり、売却スケジュールにも影響します。
なお、明渡し後に売却する方が常に有利とは限りません。
立退料、交渉期間、法的手続の可能性も踏まえ、入居者付きで売却する場合と明渡し後に売却する場合の違いを整理しておくことも大切です。
第3章 貸主から入居者に明渡しを求める場合の借地借家法上の考え方
3-1 普通借家契約では貸主の都合だけで退去を求められない
居住用の賃貸物件では、普通借家契約が用いられていることが多くあります。
普通借家契約の場合、契約期間が満了したからといって、貸主が当然に契約を終了できるわけではありません。そのため、建物が老朽化している、建て替えをしたい、売却を進めたいという貸主側の事情があっても、それだけで直ちに入居者へ明渡しを求められるとは限りません。
まずは、入居者との契約が、更新が予定される普通借家契約なのか、定期借家契約なのか、契約期間や更新条項がどうなっているのかを確認し、そのうえで明渡しを求める法的な見通しを検討する必要があります。
3-2 正当事由では貸主側と入居者側の事情が総合的に判断される
正当事由は、貸主側の事情だけで判断されるものではありません。
たとえば、安全面に不安があるなど建物の老朽化が著しく進んでおり、今後も賃貸を継続することが難しい事情がある場合には、貸主側の事情として考慮される可能性があります。
一方で、入居者が長期間居住している場合や、高齢で転居先を探すことが難しい場合などには、入居者側の事情も重く見られることがあります。
明渡しを求める場面では、貸主にとっての必要性だけでなく、入居者にどのような影響が生じるかも考える必要があります。
3-3 老朽化だけで正当事由が認められるとは限らない
建物が老朽化していることは、正当事由を判断するうえで重要な事情の一つです。
もっとも、建物のどの部分がどの程度劣化しているのか、修繕では対応できないのか、建て替え計画がどの程度具体化しているのか、今後も入居を継続させることにどのような支障があるのかが問題になります。
そのため、第2章で述べたように、建物診断の報告書、写真、修繕履歴、管理会社からの報告などを整理しておくことが重要になります。
3-4 立退料は正当事由を補う事情として検討する
明渡しの話し合いでは、立退料が問題になることがあります。
立退料とは、入居者が退去することに伴う負担を軽減するために、貸主側から支払われる金銭を指します。具体的には、引越費用、転居先の初期費用、移転に伴う負担などを考慮して検討されます。
ただし、立退料を支払えば必ず明渡しが認められるわけではありません。
立退料は、正当事由を補う事情の一つとして位置づけられるものであり、建物の老朽化の程度や建て替えの必要性など、他の事情とあわせて考えられます。
また、立退料を提示する場合には、金額だけでなく、いつ支払うのか、明渡しとどのように連動させるのかも整理しておく必要があります。退去前に全額を支払うのか、鍵の返還や室内確認後に支払うのかによって、貸主側のリスクも変わります。
立退料は、入居者との合意形成を進めるうえで重要な要素になりますが、安易に金額だけを提示するのではなく、支払条件も含めて慎重に検討することが大切です。
第4章 入居者対応を進める際の交渉・合意書・法的手続の注意点
4-1 入居者に伝える前に退去希望時期と提示条件を整理する
入居者に明渡しをお願いする場合には、事前に貸主側の条件を整理しておく必要があります。具体的には、いつ頃までに退去してもらいたいのか、立退料や引越費用を検討するのか、敷金をどのように精算するのか、原状回復や残置物をどう扱うのかといった点です。
これらを整理しないまま退去の話を始めると、入居者から質問を受けても十分に説明できず、話し合いが進みにくくなることがあります。
明渡し交渉では、貸主側の希望だけでなく、入居者の転居準備に必要な期間も考慮する必要があります。退去希望時期や提示条件を事前に整理し、無理のない形で話し合いを始めることが大切です。
4-2 管理会社任せにせず交渉経過を記録する
管理会社が入居者との窓口になる場合でも、貸主側で交渉経過を把握しておくことが重要です。
明渡しの話し合いは、口頭で進むことも少なくありません。しかし、口頭だけでやり取りを続けると、後から言った言わないの問題が生じやすくなります。そのため、いつ、どのような内容を伝えたのか、入居者がどのような反応をしたのか、どのような条件を提示したのかなどを記録しておきましょう。
特に、退去時期や立退料は、後にトラブルになりやすい部分です。
面談記録、メール、通知書、提示条件の履歴などを残し、貸主・管理会社・専門家の間で情報を共有できる状態にしておくことが望ましいです。
4-3 合意できた場合は明渡合意書で条件を明確にする
入居者が明渡しに応じる場合でも、口頭の合意だけで進めることは避けた方がよいです。
退去日、立退料の金額、支払時期、鍵の返還、残置物の扱いなどについて、明渡合意書で明確にしておく必要があります。
たとえば、退去日は決まっていたものの、立退料の支払時期について認識が違っていたり、残置物を貸主が処分してよいのかが曖昧だったりすると、退去直前や退去後にトラブルになることがあります。
明渡合意書は、退去することを確認するだけの書面ではなく、退去までの条件を明確にし、後日の紛争を防ぐための重要な書面です。
入居者との話し合いがまとまった場合には、実際に退去が完了する前に、合意内容を書面化しておくことをおすすめします。
4-4 入居者が応じない場合は自力対応を避け法的手続を検討する
入居者が明渡しに応じない場合でも、貸主が強引に退去させることはできません。
たとえば、鍵を交換する、荷物を搬出する、ライフラインを止めるといった対応は、貸主側が損害賠償責任を問われる原因になることがあります。
話し合いで解決できない場合には、調停や訴訟などの法的手続を検討することになります。
特に、普通借家契約で明渡しを求める場合には、正当事由の有無が問題になり、建物の老朽化の程度、建て替えや売却の必要性、入居者側の事情、立退料の提示などを資料に基づいて整理する必要があります。
法的手続には一定の時間がかかります。建て替えや売却の予定がある場合には、明渡しが予定通りに進まない可能性も踏まえて、スケジュールに余裕を持たせることが大切です。
入居者が退去に応じない場合には、早めに弁護士へ相談し、法的にどのような選択肢があるのかを確認して進めることが望ましいです。
まとめ
相続した老朽収益不動産について建て替えや売却を検討する場合、入居者への明渡しだけを先に進めようとすると、さまざまな問題が生じることがあります。まずは、誰が貸主として対応するのか、建物の老朽化をどのような資料で説明できるのか、入居者にどのような条件を提示するのかを整理することが重要です。また、相続した不動産では、相続登記や税務面の検討が関係してくる点にも注意が必要です。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、相続した不動産の名義整理や入居者対応、相続税対策まで見据えたワンストップでのサポートが可能です。老朽化した収益不動産の扱いに悩まれている方は、現在の状況を整理するところからご相談ください。
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