トイレ休憩、タバコ休憩は「休憩時間」?
コロナでのテレワークの普及や、働き方改革の一環でのフレックスタイム制の導入など、働く時間や場所が多様になっています。 しかし、そういった中でも、定時に会社に出社し、お昼頃の休憩時間に休憩を取り、定時や少し残業をして帰るというような、今まで通りの働き方をされている方も少なくありません。 そういった中で、お昼の休憩時間(タイムカードなどを打刻して休憩する時間)とは別に、トイレに行っている時間や、喫煙される方がタバコを吸いに行っている時間など、厳密にいうと働いていない時間があると思います。 そういったトイレ休憩やタバコ休憩の時間を給与が発生しない休憩時間とすることはできないかという相談がごくまれにあります。 そこで、今回は、トイレ休憩、タバコ休憩についてどういった取り扱いがなされているのかについて説明させていただきます。
1.休憩時間とは
使用者と労働者の関係について規律する労働基準法の34条1項では、
「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています。そして、この「休憩時間」とは、「労働が労働から完全に離れることを保障される時間」
とされており、休憩時間に該当する場合には、その時間について、労働者に賃金を支払う必要はありません。 簡単にいうと、労働時間の途中にある労働時間でない時間を指します。そして、「労働時間」とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。したがって、トイレ休憩やタバコ休憩が「休憩時間」に該当するかについては、その時間が使用者の指揮命令下に置かれている状態といえるかという点から判断することになります。
2.トイレ休憩について
トイレ休憩については、そもそも生理現象としての排泄を行うためのものであり、短時間であることから、完全に使用者の指揮命令下(労働)から解放されていることが保証されているとはいえないため、「休憩時間」には当たらないことになります。したがって、トイレ休憩の時間を休憩時間として賃金を支払わない取り扱いをすることは労働基準法違反となり認められません。
3.タバコ休憩について
近年、健康志向から喫煙者は減少していますが、喫煙者の方にとって勤務時間中一切タバコを吸わないというのはなかなか耐えられないのが実情ではないでしょうか。タバコ休憩の時間が休憩時間に該当するか否かが争われた裁判例では、「職場内で喫煙していたとしても、何かあればただちに対応しなければならないのであるから、労働から完全に解放されている状態とはいえない」として、休憩時間には該当しないとの判断がなされております。となると、厳密にいうとタバコ休憩の時間も労働時間として給与が発生していることになり、タバコを吸わない人との間の不公平感があるようにも思えますが、仕事中に飲んでよいとされるコーヒーを作っている時間などは休憩時間とならないことは争いはないと思うので、それとの対比を考えると逆にタバコ休憩のみ認めないというのは逆に問題になってしまうかなと思います。
4.トイレにこもっている場合や、何度もタバコ休憩に行く場合は?
上記でご説明したとおり、トイレ休憩やタバコ休憩が労働基準法上の「休憩時間」にあたらないとしても、例えば、病気でもないのにトイレに何十分も閉じこもっていたり(携帯を持ち込んでトイレでゲームをしているような人もいるようです)、短時間に何度もタバコ休憩を行うということは許されるわけではありません。 そのような行為を従業員が行っている場合には、職務専念義務違反として懲戒処分の対象となったり、賞与の減額事由となります。もっとも、使用者側の場合、単に「あの人はしょっちゅうトイレに行っている」というような主観的な内容だけで処分などをすることは、後々紛争に巻き込まれるリスクがあるため、タバコ休憩の時間や、理由なく離席している状況等を記録しておくことが望ましいでしょう。
5.さいごに
こうした細々した休憩について会社側が逐一管理するということは、働きづらい環境になってしまうリスクもあり、なかなか現実的ではないとは思います。 一方で、働いている人も、無配慮にタバコ休憩をしてしまうと、他の従業員から反感を買ってしまうかもしれません。使用者も労働者も、みんなで働きやすい環境にするよう心掛けてもらいたいなと思いました。
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進むカスハラ対策
以前、ブログで現在は様々なハラスメントが存在することをご紹介させていただきましたが、今回はその中でも紹介したカスタマーハラスメント、略して「カスハラ」についてご説明させていただきます。
以前の記事はこちらから:なんでもハラスメント?~現代のハラスメントの問題点~
最近のニュースで、各企業において、カスハラに対して毅然とした対応をとることを表明しているという情報に触れました。具体的には、JR東日本では、カスハラが行われた場合、乗客への対応はしない。悪質と判断した場合には警察や弁護士などに相談して、厳正に対処するという方針をホームページにも掲載しており、会社としてカスハラについては対応しないという毅然とした対応を示しています。
そもそも「カスハラ」とはいったいどういった行為を指すのでしょうか。この点、厚生労働省から出されている「カスタマーハラスメント対策マニュアル」では、カスハラの定義として「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの」と定義されており、簡単に言うと、理不尽なクレーム言動がカスハラに該当するとされています。
そして、カスハラに該当する行為の具体例としては、以下のような行為が挙げられています。
(1)要求の内容が妥当性を欠いているケース
- ・提供する商品・サービスに瑕疵(傷や欠点など)や過失が認められないにもかかわらず何かを要求する行為
- ・要求内容が商品やサービスに関係ないものであること
(2)要求実現のための手段・態様が社会通念上不相当な言動の場合
2-1.内容如何にかかわらずカスハラに該当するもの
- ・暴行や傷害などの身体的な攻撃
- ・脅迫・中傷・名誉毀損などの精神的な攻撃
- ・威圧的な言動
- ・差別的・性的な言動
- ・継続的・執拗な言動
- ・土下座の要求
- ・不退去や居座りなどの拘束的な行動
- ・従業員への個人的な攻撃や要求
2-2.内容の妥当性に照らして不相当に該当する場合がある行為
- ・商品交換の要求
- ・金銭補償の要求
- ・謝罪の要求
そして、このようなカスハラ行為について、企業が放置していたり適切な対応を取らない場合、従業員のモチベーションの低下にとどまらず、カスハラにより、従業員の心身を害するようになってしまった場合には、安全配慮義務違反等で損害賠償の対象となってしまう可能性もあります。企業が、毅然とした対応を表明しているのも、会社として従業員を守る姿勢であると表明することで、カスハラ行為自体を未然に防ぐとともに、安全配慮義務を尽くしているというアピールにもなるからであると思います。
しかし、気を付けなければいけないのは、全てのクレームが問題というわけではありません。会社の商品やサービスに欠陥やミスがあった際に、正当な方法でクレームをいう こと自体はむしろ顧客の権利であり、それすらも禁じられるわけではありません。
したがって、適正なクレームとそうでないカスハラを区別する判断が必要になりますが、その判断については、顧客の要求内容に妥当性があるか、要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当かという点を基準に判断していくことになります。
具体的な場面において、カスハラに該当するか否か判断に迷ってしまう場合もあると思います。そうした際に会社において顧問弁護士と契約していれば、その場ですぐに判断するのではなく「弊社が契約している顧問弁護士に相談した上で後日対応したいと思います」と回答することも可能になると思います。また、顧問弁護士がいるということを表明するだけでも、カスハラ行為を未然に防ぐこともできると思います。
当事務所は多数の顧問契約を締結いただいておりますので、カスハラに該当するか、どのように対処すればよいかという点について経営者の皆様に適切にアドバイスができると自負しております。当事務所の顧問契約は「フレックス顧問契約」といって、お支払いいただいた顧問料が無駄にならない顧問契約であるため、今回この記事を見られた経営者の皆様は是非一度ご検討ください。
関連記事:お客様は神様??~旅館業法の改正~
関連記事:従業員の名札は必要?
フレックス顧問についてはこちらから:フレックス顧問契約
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これは違法ではないのですか!?~刑事法と民事法~
当事務所では、企業様だけではなく、個人の皆様も含め、様々な方が相談に来ていただいております。
ご相談に来られる方のなかで、「相手方が〇〇なのは違法なのではないですか?」と仰られる方が多いと感じます。
ご相談に来られる方に対しては、ご説明させていただいているのですが、今回は、この「違法」という言葉について、場面などを分けてご説明させていただきます。
まず、辞書的な意味の「違法」とは、文字通り、「法、法律に背くこと」を言います。
したがって、「違法」という言葉をきちんと説明するためには、この「法律」の中身を検討する必要があります。
1.刑事法上の違法
法律の中には、違反すると、刑事罰を課されることが規定されている法律があり、これを「刑罰法規」といいます。
刑法などが一般的ですが、それ以外にも労働基準法の一部なども刑罰が課せられる刑罰法規が含まれています。
このように、刑罰法規に反する行為をした場合には、刑事法上違法な行為ということになります。
2.民事法上の違法
上記の刑事法上の違法な行為とは別に、民事法上違法な行為として定められている行為があります。
民法709条では、
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
と規定されており、不法行為に基づく損害賠償請求について定めています。
このような不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するためには、相手の行為が違法な行為である必要があり、この場合の違法行為とは民事法上の違法な行為ということになります。
3.2つの違い
この刑事法上の違法な行為と民事法上の違法な行為とは同じように見えますが、違う場合があります。
例えば、人を殴ってケガをさせた場合、その行為は傷害罪(刑法204条)に該当する行為として刑事法上違法な行為に該当し、かつ、不法行為に基づく損害賠償が発生する行為であり民事法上も違法な行為に該当します。
これとは異なり、例えば、既婚者の人と、不貞行為を行ってしまった場合、不法行為(不貞行為)に該当するので、民事法上の違法となることは当然です。
しかし、不貞行為は、現在の法律では犯罪ではないため(戦前の日本の法律では、「姦通罪)」として犯罪行為でした)、刑事法上の違法な行為には該当しません。
4.民事法上の義務違反行為
さらに、民事法上の義務違反行為というものが存在します。
例えば、お金を借りているのに返さない、請負代金を支払う義務があるのに支払わない、物を買って、代金を受け取ったのに商品を引き渡さないというように民事法で認められる契約法上の義務に反する行為がそれに該当します。
この民事法上の義務違反行為についても例えば、給料を一切払わないという場合には、労働基準法の刑罰法規にも反する行為であるため、刑事法上も違法ですが、貸したお金を返さないという行為は、刑事法上違法な行為ではありません(そもそもお金を返す意思がないのに借りたという場合には、詐欺罪として犯罪行為に該当する場合もあります。)。
上記の「〇〇は違法ではないのですか!?」という場合、この民事法上の義務違反行為をしている相手が犯罪に該当するのではないかという質問であることは多いです。
したがって、この場合の回答としては「契約上の義務には反しているのですが、犯罪ではないのですよ」と異様な回答になると思います。
5.最後に
刑事法上の違法な行為について定める刑罰法規については、その目的が刑罰を定めることで、犯罪行為をなくし、社会の秩序を維持することにあります。
他方、民事法上の違法な行為や、民事法上の義務などを規定する民事法(民法、商法等)は、その目的が、私人間の紛争や取引ルールを定めることで、紛争を解決するということなどがあります。 このように、それぞれの法律の目的が異なるため、違法の概念が異なってくることになります。
このように、刑事法上の違法な行為、民事法上の違法な行為、民事法上の義務違反行為と異なるものが同じような違法、違反というような言葉でひとくくりにされているため、分かりづらくなっているのではないかと思います。
説明する私が、こうした理屈を理解していないと、ご相談に来られる方にもきちんと理解してもらうことはできないと思いますので、日々研鑽を怠らないようにしたいと思います。
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空港の門限とは?
皆さんは飛行機に乗る機会はありますか?私は、司法修習生のころに、九州で1人暮らしをしており、連休や年末年始に実家の東京に帰るときに頻繁に飛行機を使っていました。今は、子どもができ、両親も九州に移住してきたため、飛行機を使う機会がめっきり減ってしまいました。今度、家族で旅行に行く際に久しぶりに飛行機に乗るのですが、上の子も赤ちゃんの頃に飛行機に乗ったきりだし、下の子は初めて飛行機に乗るので、泣いたりしないか心配です。
飛行機は空港から出発し目的地の空港に着陸するのですが、その空港に「門限」というものがあるのをご存じでしょうか。私は先日ニュースで見て知りました。
ニュースでは、フィリピン発の飛行機が、福岡空港の門限である午後10時までに着陸することができず、関西空港に着陸したというものでした。
ニュースをみて気になって調べてみたのですが、空港によっては、24時間対応するだけの需要がないところや、騒音など周辺環境への影響などを理由として、夜間の空港運用や離着陸を規制しており、このことを「門限」と読んでいるようです(英語ではカーフュー(curfew)というそうです。)
そして、福岡空港では、空港法などによって規定することが求められている「福岡空港供用規程」というものにより、離着陸時間については午前7時から午後10時までとすることが規定されています。 おそらく福岡空港については、非常に都心部に近い場所に空港が設置されているため、騒音等に考慮して、門限が設定されているのでしょう。私も九州に来た時に、東京で羽田空港を使う時と比べて本当に簡単に空港にアクセスすることができとても驚きました。
この空港の門限は、すべての空港にあるわけではなく、例えば成田国際空港や羽田空港(東京国際空港)や関西空港等の拠点空港の一部では24時間離着陸が可能となっています。
他方で、地方の空港では、やはり24時間対応にする需要などが乏しいのか、福岡空港のように拠点空港とされていても、門限が設定されている空港がほとんどでした。
今までは、空港の門限など一切意識したことはなかったのですが、今回のニュースをきっかけに、夜遅い便などの場合トラブルで午後10時までに着陸できないリスクを考えると、帰りの便についてはなるべく早い時間にしておいた方がいいのかもしれないなと思いました。
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もうすぐ変わる新紙幣
6月といえば、梅雨でじめじめして気分もあまり上がりませんが、ジューンブライドということで、結婚式シーズンでもあります。
私も、もう7年も前になりますが、6月に福岡で結婚式をしました。雨が降らないかと心配でしたが、当日は運良く晴れてくれて、無事式を行えたのが、懐かしいです。
そんな結婚式ですが、招待されて出席する場合にはご祝儀を持参することになります。ご祝儀を持参する際には新札をご祝儀袋に入れて渡すことがマナーと言われています。この新札については、銀行などで古い紙幣と交換することで取得出来たりするのですが、先日、ニュースで、銀行などで新札への両替の対応を行っていないとの回答がなされ新札を取得することができないとの記事に触れました。
理由としては、新紙幣の発行が迫っているので、通常よりも現行の新札の発注を減らしているとのことでした。
ニュースなどで再三取り上げられているので皆さんご存じかと思いますが、令和6年7月3日より新紙幣の発行が開始されます。
この新紙幣の発行についてですが、日本銀行法という日本銀行の業務や、日本銀行券(紙幣)の発行等について規定する法律の第47条2項で
「日本銀行券の様式は、財務大臣が定めこれを公示する」
と規定されています。今回の新紙幣の様式、財務省告示という形で発表されました。 新壱万円券は表が渋沢栄一、裏が東京駅(丸の内駅舎)、新五千円券は表が津田梅子、裏が藤の花、新千円券は表が北里柴三郎、裏が富嶽三十六景となっています。
新紙幣に様式を変更する理由としては、偽造防止のためであり、ある程度経過すると、偽造リスクが高まるといわれており、今までも20年に1回の頻度で新札が発行されてきています(今回の新札については肖像が三次元に見えて開店する「ホログラム」の技術採用されているようです)。
偽造防止のために新札への変更の必要性は高いと思いますが、券売機を採用している飲食店などは、新紙幣に対応するために、券売機の買い替えなど多大な出費を余儀なくされることになってしまいます。 7月上旬から順次発行されるため、はじめのうちは、新紙幣が見慣れなくてとまどってしまうかもしれませんが、2000円札が発行された際も新しい紙幣を目にしたりするとすこしテンションが上がった記憶があるので、今から新紙幣を目にするのが楽しみです。
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相続放棄ですべて失う?
前回は相続放棄をする理由についてのご説明をさせていただきましたが、本日は、相続放棄をしたいけどできないのではないかと相談者様が誤解されている事項についてご説明させていただきます。
前回の記事はこちらから:相続放棄をする理由
生命保険の死亡保険金
結論からお伝えすると、生命保険の死亡保険金を受取人である相続人が受領しても、相続放棄をすることは可能です(保険金を受領しても、相続放棄は可能とお伝えすると驚かれる方が多いです。)。
まず、相続放棄をすることになる相続財産とは、被相続人が死亡していた時点で、有していた一切の権利義務のことをいいます。例えば、現金であれば所有権という権利、預金であれば預金債権という権利、借金であれば債務という支払義務ということになります。
そして、生命保険の死亡保険金は、死亡保険金を請求する権利になるのですが、これは、死亡時点で被相続人が有しているわけではなく、受取人が有している権利になります。もう少し詳しく説明すると、生命保険の契約を行ったのは、保険会社と被相続人ですが、契約の内容は「私が死亡したら保険金を受取人に支払ってください」という内容になり、契約者(被相続人)が金銭を請求できる権利を有することにはなりません。
したがって、死亡保険金を請求する権利は、死亡時に受取人に直接発生する権利であり、相続財産には含まれないので、相続放棄をしたとしても、保険金を受け取ることは可能となります。 なお、少し難しい話になるので、詳細は割愛しますが、契約者が被相続人ですが、被保険者が、被相続人ではない保険の場合、被相続人が死亡しても、死亡保険金は発生せず、被相続人が保険会社に対する解約返戻金請求権を有していることになるため、この場合の解約返戻金は相続財産となるため、相続放棄をする場合、受けとることはできません。
祭祀財産について
次に、墓石、仏壇、墓地等の祭祀財産についても、相続財産には含まれず、相続放棄をした相続人であってもこうした祭祀財産を譲り受けることができます。 理由としては、まず、民法896条では
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」
と規定されているのですが、次条の897条1項では、
「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条(896条)の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。」
と規定されています。つまり、祭祀財産については、相続財産としての承継ではなく、慣習等によって承継されることになるため、相続放棄をした相続人であっても祭祀財産を承継することは可能になります。
最後に
このように、相続放棄をする場合であっても、受け取れるものは一部存在します。しかし、保険については、医療保険は相続財産、死亡保険も先ほど説明した通り、被保険者が相続人ではない場合、相続財産となるなど、どの場合に受け取ってよいかという問題は非常に専門的です。そして、相続財産を受け取ってしまうと基本的に相続放棄をすることができなくなってしまいます。
したがって、相続放棄をお考えになられている場合には、是非当事務所にご相談ください。
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免許の自主返納後運転したくなったら??弁護士が解説
私は、東京出身で、司法試験合格後の司法修習がきっかけで、福岡で生活をしているのですが、東京に住んでいるときは、基本移動手段が電車であったため免許はもっていましたが、ほとんど運転していませんでした。今では、毎日の通勤や裁判所への移動も全て車で移動しているのですが、一度自動車通勤を覚えてしまうと、東京時代の満員電車に揺られての通学などは二度とごめんだなと思ってしまいます。
移動に便利な自動車ですが、ひとたび事故などが起きると人命が簡単に失われてしまうものであり、特に最近は、高齢者の運転で人がなくなってしまう悲惨な事故も増えています。そうした悲しいニュースは見るに堪えないですが、そうした事故の報道の影響からか、近年、高齢の方の運転免許証の自主返納が増えてきているそうです。
免許の自主返納についてのニュースを見た際、仮に、自主返納した後に、やっぱり車の運転が必要になった場合にはどうすればよいのかと気になったので調べてみました。
まず、一般的には「自主返納」という言葉が流行っていますが、法律上は、住所地を管轄する公安委員会に免許の取り消しを申請することになります(道路交通法104条の4)。そして、申請により、免許が取り消された場合、免許証を返納しなければならないと道路交通法に規定されているため(107条)、結果的に、免許証を返納することになります。
そして、自主返納したけどやっぱり車を運転したいと気持ちが変わった場合であっても、免許は取消しとなっているため、免許証を返してもらうことはできません。もっとも、交通違反を起こしての免許取消しではないため、自主返納した後に再度、免許の取得をすることは可能です。その場合には、初めて免許を取得したときと同じように、基本的には教習所に通って、試験に合格する必要があります。
このように、一度免許を自主返納してしまうと、再度免許を取得するためには、時間と費用がかかってしまうので、自主返納される場合には、二度と運転しないという決意のもとしたほうが良さそうですね。
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祝日ってどんな日?
皆さんはゴールデンウィークはどのように過ごされましたでしょうか?
今年は、中日の4月30日~5月2日も休みにすると、最大で11連休となる方もいるようですが、当事務所は暦通り営業しており、私も、連休の前半は妻の実家に、連休の後半は私の実家に子どもたちを連れて行ってしこたま遊ばせて連休が終わってしまいました。自分が幼稚園のころにゴールデンウィーク何していたかという記憶はほとんど残っていないので、子どもたちも大きくなって覚えてくれないだろうなとは思いますが、楽しそうに過ごしていたので、まぁ、よかったのかなと思います。
このゴールデンウィークは、「憲法記念日」「みどりの日」「こどもの日」などの祝日が続き連休となることからそのように名づけられていますが、この、祝日はどのような日として定められているのかご存じでしょうか?
実は、「国民の祝日に関する法律」というものがあります。この法律は全部で条文が3条しかいない法律ですので、お時間あられる方は是非一度ネットなどで、見られてみてください。
第1条では、「国民の祝日」の定義(「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日」)が記載され、最後の第3条では、振替休日についての記載がされています。
そして、この法律の第2条に、全ての国民の休日の名称と、どういった日であるのかという説明が記載されています。
たとえば、「元日」は、「年のはじめを祝う。」とされており、「秋分の日」は 「祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ。」とされています(お盆にそういったことをするイメージがあったので、秋分の日がそういう日であったことは今回初めて知りました。)。また、4月29日の「昭和の日」については、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。」とされています。私もギリギリ昭和生まれなのですが、そのうち「平成の日」という祝日もできたりするのでしょうか。
なお、先ほどのゴールデンウィーク中にある「こどもの日」は、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。」と記載されています。なぜ、父親に対する感謝が記載されていないのか少し、モヤモヤしてしまいますが、ウチの長男はとてもパパっ子でもあり、子どもの日にも息子と娘にケーキを買ってあげたら、ちゃんと感謝してくれたので、自分の子には感謝してもらえばいいかと思った連休でした。
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ホテルのキャンセル料について
皆さんは旅行で泊まる際のホテルはどういった基準で選ばれますか?
私も妻も、旅行の際、観光で外を回るよりも部屋でのんびりしたい派のため、子どもが産まれるまでは、部屋重視で探していました。
しかし、子どもが2人もいるとずっと部屋でじっとしているわけにはいかないので、近くに遊ぶところはないかや、遊ぶところが備わったホテルかなど子ども目線で宿を探すようになりました。
ホテルを予約する際に、注意して見るのが、キャンセル料が発生する日がいつかという点です。
小さい子どもがいるため、直前に高熱になった場合に備え、いつからキャンセル料が発生するのかという点については、子どもがうまれてからしっかり確認するようになりました。
先日、とあるインフルエンサーがSNSで、「ホテルのキャンセル料金を払わなくする方法」というタイトルで動画を投稿したことが物議を醸しているとのニュースを目にしました。
そのニュースによると、キャンセル料が発生する日になったら、宿に連絡して、宿泊日予定日をキャンセル料が発生しない日まで後ろ倒しにして(要は、宿泊日を変更して)、その後、キャンセルを行うという方法でした。
まず、キャンセル料については、予約する際のページなどに、宿泊予定日の7日前の時点では20%、5日前の時点では30%、3日前の時点では50%、当日や無断キャンセルの場合には100%というように段階を追って発生するという仕組みになっていることが多いです。
このような規定(「キャンセルポリシー」といいます。)は、宿泊業者側が、キャンセルにより通常発生する損害の賠償を規定したものであるとして、消費者契約法上有効な契約となっています。
そして、キャンセル料が発生する期間に、宿泊予定日を変更するという行為は、もとの契約をキャンセルし、新たに宿泊予約をするという行為ですので、法律上、前の契約をキャンセルした時点で、キャンセル料が発生することになります。予約した人は宿にキャンセル料を支払う義務が発生します。
したがって、上記インフルエンサーが動画で紹介している方法は、宿側が、宿泊日を変更するならキャンセル料を支払わないでよいという善意での対応を逆手に取ったものです。(背景としてコロナウイルスが原因で宿泊を延期したいという申出をした際に宿側の善意でキャンセル料を請求していないというようなことから、変更にすればキャンセル料を払わなくて済むと考えたのではないかとニュース出は記載されていました。)。
現に、ニュースでは、この動画を見た、ある宿が、日程変更の場合には、必ずキャンセル料を請求するという厳格な運用にする方針であると記載されていました。
台風等の天災などでどうしてもいけなくなってしまったという場合もあり、そのような場合には、宿も、キャンセル料を請求することはかわいそうということで、今までは柔軟に対応していただいていたということも多いと思います。
しかし、あくまでのそのような対応は宿側の善意です。そういったことが続くことにより、宿側もどのような理由であっても絶対にキャンセル料を請求するというような対応にならざるを得なくなってしまうかもしれないため、それを逆手にとってキャンセル料を不当に免れるような行為は、絶対に控えてもらいたいと感じました。
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離婚解決事例:元配偶者からの慰謝料請求を排斥した(勝訴判決を得た)解決事例
ご相談事例
再婚後、元夫より私と今の夫に慰謝料請求の訴状が届きました
- 相談者…1年前に協議離婚が成立、元夫より慰謝料請求
- 相手方…元夫
- 今の夫…相談者の元夫より慰謝料請求
元夫とは6年前に結婚したのですが、元夫からのDVやモラハラがあったため、元夫に離婚したいと告げ別居しました。
はじめは離婚に反対していた元夫ですが、別居から半年たったころ、元夫も離婚すると言ったため、離婚の条件(子どもの面会や養育費など)について協議を数か月かけて行い、1年前に協議離婚が成立しました。
別居してから精神的に不安なときがあり、友人の男性に相談しており、友人も親身に対応してくれたため、次第に恋愛感情が芽生えてきました。
そして、元夫が離婚すると言ってから、籍を外すまでの期間に男女の関係になりました。離婚後、その男性と結婚したのですが、先日、元夫から、私と今の夫に対し、不貞行為を理由とした慰謝料請求の訴状が届きました。
籍を外す前に関係を持ってしまったこと、とても軽率だったと反省しています。やはり、籍が抜けていない以上、慰謝料を払わなくてはならないのでょうか。
弁護士の対応
まず、依頼者の方に届いた訴状や証拠を確認しました。すると、どうやら元夫は、離婚する前に興信所を雇っていたようであり、元夫と離婚する前に、2人でホテルに入る様子が写されていました。こうなると、離婚が成立する前に他の男性と関係を持っているため、慰謝料を払わなければならないように思えるかもしれません。
ここで、不貞行為による損害賠償の仕組みについて説明します。ここでいう損害とは、精神的苦痛、すなわち、慰謝料のことをいいます。不貞行為を原因とする損害賠償請求(慰謝料請求)の場合、不貞行為により、円満な夫婦関係が破綻するに至ったため、精神的苦痛を被ったため慰謝料を請求することができることになります。
したがって、性行為の前に夫婦関係が破綻している場合には、すでに別の原因で夫婦関係が破綻した後に関係を持っているため、性行為が原因で夫婦関係が破綻するに至ったわけではないとなるので(法律用語では、「因果関係(原因と結果の関係)がない」ということになります。)、結果として慰謝料請求は認められないということになります。
そこで、訴訟では、当職が代理人として、肉体関係があったことは間違いないが、それは、夫婦関係が破綻した後のものであり、因果関係がないため慰謝料を支払う義務がないと主張を行いました。そして、離婚協議中であったことの証拠として当事者が離婚の条件面について協議を行っているLINEのやり取りなどを提出しました。
結果として、判決では、原告(元夫)からの慰謝料請求は一切認められず、完全な勝訴判決を得ることができました。
今回の事例では、慰謝料請求が認められないという結論になりましたが、やはり、離婚が成立していない間に男女の関係になってしまうという時点で、原則としては慰謝料を支払わなくてはならなくなるため、男女の関係になるのは後々のトラブルを防ぐためにも、きちんと離婚が成立してからの方がよいでしょう(感情的な人だと、離婚が成立した後に関係をもっていた場合であっても、「離婚前から関係があったはずだ」と言って慰謝料の請求をしてくる人も少なくありません。)。
また、離婚で相談に来られる方の中には、他の方と交際している事実などをなかなか言い出せないという方もいらっしゃいます。後々相手方に知られてしまうと不利なってしまうケースも少なくないため、ぜひ弁護士には言いづらいことであっても、すべてお話しいただけると良いかなと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。