弁護士コラム

2019.07.05

従業員が50人以上になったら?~労働災害防止のための事業者の義務

事業者には労働災害を防止する責任があり、このことは労働安全衛生法に規定されています。
労働安全衛生法では、事業者に対し、労働者数が常時50人以上となった場合に、いくつかの取り組みが義務付けられています。労働者が50人に増加した場合、事業者は何を行わなければならないのでしょうか?

1.安全管理者または衛生管理者の選任義務について

労働災害を防止するためには、事業場において安全衛生を確保するための安全管理体制を確立することが不可欠です。労働安全衛生法では、同法目的条文にある「責任体制の明確化及び自主的活動の促進」を受けて、安全衛生管理体制が規定されています。安全管理体制とは、労働災害を防止するための、一つの企業内での組織づくりの取り組み方と言えます。

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、業種にしたがって、安全管理者又は衛生管理者を選任しなければならないとされています。次の①~⑤の業務のうち、安全管理者は安全に係る技術的事項の管理を、衛生管理者は衛生に係る技術的事項の管理を業務とします。

①労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
②労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
③健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
④労働災害の調査及び再発防止対策に関すること。
⑤上記①~④に掲げるもののほか、労働災害を防止するために必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの。

安全管理者を選任しなければならない事業者は、林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業等と定められており、労働災害の危険が大きい業種と言えます。その他の業種の事業者は、衛生管理者を選任しなければなりません。
安全管理者の資格については、「大学又は高等専門学校における理科系統の正規課程を卒業し、その後2年(高等学校の同課程を卒業した者は4年)以上産業安全の実務に従事した経験を有する者が、安全に係る技術的事項を管理するのに必要な知識についての研修を修了すること」、とされています。

業種の性質上、理科系統を卒業した従業員がいる場合は、その従業員に研修を受けさせ安全管理者の資格を取得させるのが、実務上の対応になります。該当する従業員がいない場合は、労働安全コンサルタントに外部委託することができます。

衛生管理者の資格については、「都道府県労働局長の免許を受けた者、医師又は歯科医師、労働衛生コンサルタントのいずれか」とされています。実務上の対応としては、従業員に第1種衛生管理者等の試験を受験させ、免許を取らせるということになります。

2.産業医の選任義務について

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、業種を問わず、産業医を選任しなければならないとされています。産業医の職務は、労働者の健康管理にかかる事項です。産業医の資格は医師とされているため、基本的には外部委託によるのが実務の対応です。

3.安全委員会、衛生委員会の設置義務について

労働災害を防止するためには、前述の管理者等に一定の義務を課すだけでは不十分であり、労働者自身がその事業場の安全衛生の問題について関心を持ち、かつ、その意見を事業者等が管理面に反映させることが必要です。

そのために、常時50人以上の労働者を使用する事業場については、安全衛生に関する一定の事項を調査審議させ、労働者が事業者に対し意見を述べることができるように、安全委員会、衛生委員会の設置が義務付けられています。
安全委員会を設置しなければならない事業場は、林業、工業、建設業、製造業、運送業等の業種とされています。

衛生委員会は、業種を問わずすべての事業場において設置が義務付けられています
事業者は、安全委員会及び衛生委員会ともに設けなければならないときは、安全衛生委員会として設置することができます。

安全委員会の委員構成は、事業者の事業の実施を統括管理する者を委員の1人とし、その委員が議長となるほか、安全管理者、その他の従業員で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者とされています。
衛生委員会の委員構成は、事業者の事業の実施を統括管理する者を委員の1人とし、その委員が議長となるほか、衛生管理者、産業医、その他の従業員で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者とされています。
事業者は、安全委員会、衛生委員会(又は安全衛生委員会)を毎月1回以上開催することを義務付けられています。

4. ストレスチェック制度について

仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者が、平成18年度以降増加傾向にあります。そのため、事業者においても労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することが重要な課題となっています。こうした背景を踏まえ、心理的な負担の程度を把握するための検査及びその結果に基づく面接指導の実施を、事業者に義務付けること等を内容とした、ストレスチェック制度が平成27年12月1日より施行されました。

ストレスチェック制度は、常時50人以上の労働者を使用する事業者が対象とされています。
事業場における事業者による労働者のメンタルヘルスケアは、取り組みの段階ごとに、次の三つに分けられます。

① 労働者自身のストレスへの気づき及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する「一次予防」
② メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う「二次予防」
③ メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する「三次予防」

「メンタルヘルス不調」とは、精神及び行動の障害に分類される精神障害及び自殺だけでなく、ストレス、強い悩み及び不安等、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むものを言います。
事業者は、労働者に対し、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「検査」と表記します。)を行わなければなりません。

5.まとめ

事業者の常日頃の努力がなくては労働災害の防止は図れません。平成31年4月1日施行の労働安全衛生法及び同規則改正により、時間外労働が月100時間超えた場合には、医師による面接指導を実施することを事業者に義務付けています。また同法改正により、産業医の強化についても定められており、事業者におかれましては、今後の改正にも注意し安全衛生管理体制の構築に取り組くんで頂ければと思います。

2019.07.03

意外と知らない、「契約」とは?

みなさんは、「契約」とは何か、答えることができますか?
なんとなく分かっているつもりだけれど、どんなものかと聞かれると答えに困ってしまう、そんな感じではないでしょうか。
今回は、「契約」とは何か、お話していきます。

1.「契約」とは?

(1)はじめに

何か新しいことを始めるとき、新しいものを買うときなど、私たちの生活の中では何かと契約、契約書が必要とされます。名前や住所を書いて、署名押印をして、それも1枚ではなく何枚も・・・正直、面倒だと感じることもありますよね。

なぜわざわざ契約書を作成しなければならないのでしょうか?約束をするだけでは足りないのでしょうか?
今回は契約をすること、契約書を作ることの必要性についてお話します。

(2)契約と約束の違い

先ほど、「契約ではなく約束をするだけではだめなのか」と書きましたが、そもそも契約と約束の違いは何でしょうか?
例えば、「今度の土曜日映画をみに行こう。」「明日、一緒に買い物に行こう。」というのは約束であり、「この家を買います。」というのは契約になります。これらの違いは、一定の権利や義務が発生し、合意内容の実現が法律的に強制されるか否かという点にあります
 
もちろん、約束は守らなければならないものですが、仮に約束を破られたとしても、それ以上何かできる訳ではありません。しかし、契約では、法律上の権利や義務が発生するため、契約を破った者に対しては、裁判所に訴え、損害賠償や契約内容の履行を強制的に求めることができるのです。

2.「契約」が成立するまで

では次に、どのようにすれば「契約」が成立するのかをお話していきたいと思います。
ハンコについての記事の中で、「契約」は当事者が契約内容に合意をすれば成立するとお話しました。

参考記事:ハンコの持つ効力と役割

例えば、AさんがBさんから10万円で車を買うことになったとします。Aさんは車を10万円で買うこと、Bさんは10万円で車を売ることに同意しています。したがって、この時点で契約は成立したことになります。
ですので、もしAさんが車の代金10万円を支払わなかったときには、契約書の有無に関わらず、BさんはAさんに対して、売買代金支払債務の履行を求めることができます。

以上のことからすると、当事者が契約内容に合意をしていれば、口頭でも契約成立となりますので、契約書を作成する必要はありません。ですが、私たちは何か契約をするたびに契約書を作成し、そしてその契約書に署名や押印をします。
契約書がなくても契約は成立するはずなのに、手間をかけて契約書を作成する理由は何なのでしょうか?

例えば、先ほどの例で、BさんがAさんに車を引き渡したあとに、Aさんが「車を10万円で買うなんて言っていない。5万円しか支払わない。」と言ってきたとします。当事者の合意によって10万円での車の売買契約が成立していますので、AさんはBさんに対して10万円の売買代金支払債務を負っています。
しかしながら、口頭での契約だったため、車の売買代金が10万円だという証拠がありません。

このようなとき、契約書を作成していれば、車の売買代金は10万円だと証明することができるため、訴訟に至った場合でも、特段の事情がない限り、勝訴判決を得ることができ、Aさんに10万円を支払わせることができます。
 
上記例のように、契約書は当事者が契約に同意したことの証拠となりますので、後のトラブルを防ぐためにも、契約書を作成することをおすすめします。

3.「契約」の種類

1と2で、「契約」とは何か、どのように「契約」が成立するかなどについてお話をしてきました。3では、「契約」の種類について会社員Cさんの1日に沿って紹介していきます。
 
朝、Cさんは会社までDさんから購入した車(売買契約)に乗って出社しています。
会社に着きました。会社はとあるビルの5階にあり、会社がビルのオーナーと賃貸借契約を結んでいます。また、Cさんは会社との間で雇用契約を結んでいます。

仕事上で、何かを外部の業者に依頼するときは、会社と当該業者の間で委任契約を結ばれることになり、会社が複合機をリースしているときにはリース契約が結ばれています。
帰宅時間になり、Cさんは自宅マンションへと帰宅しました。マンションは、オーナーのEさんから借りている物件です。(賃貸借契約)
このように、私たちは様々なところ、数多くの契約をしています。
 
普段、この家は賃貸借契約を結んだうえで住んでいるのだ、この車は売買契約を結んだうえで乗っているのだなど、毎回考えたりしませんよね。ですが、私たちの生活はたくさんの契約の上に成り立っています。この記事を読んだことを機に、契約の大切さについて是非考えてみて下さい。

4.まとめ

今回は、「契約」とは何なのか、どのように「契約」が成立するのか、「契約書」の必要性、「契約」の種類などについてお話しました。
 
私たちの生活の中には契約が溢れていますので、簡単に契約を結び、契約書にもサインをしてしまいがちですが、契約を守らなければ法的な措置を取られることにもなりかねません。ですので、何か契約を結ぶ際には、契約内容についてよく考え、契約書を十分確認をして署名押印をしましょう。

2019.07.01

【不動産】近隣トラブルについて

「近隣トラブル」というと、生活音や騒音、ペットの飼育マナー、ごみの出し方、駐車場のマナーなど多種多様なケースが想定されます。
今回は、分譲マンションにおけるトラブルについて見ていきましょう。

1 マンションの階上からの騒音被害

【事例1】マンションで、私たちが住む部屋の真上から、毎日昼夜を問わず響いてくる騒音に悩まされています。どうやら真上の部屋には幼い子供がいる家族が入居している様子で、その子供が室内で飛んだり跳ねたりとしているために、その音が階下の私たちの部屋へ届いている様子です。
我慢のできる限度を超えた騒音で、私たちは食欲不振や不眠に悩まされるようになってしまいました。こういった場合、真上の部屋の入居者に対して、慰謝料や立ち退きの請求を行うことはできるのでしょうか。

マンション内の騒音に関する紛争は、子供が走り回る音の他に、楽器の音、深夜の大音量でのテレビの音等、様々な発生源が想定されますが、どのケースであっても、慰謝料等を請求するにあたっては、当該騒音が不法行為上違法と評価される必要があります。
そして、違法であるかを判断するに際しては、実際に発生している騒音が被害を受けている住民の受忍限度を超えるものであるのか、という点が重要となります。

〔判例〕東京地判 平成24・3・15
分譲マンション内における階上の部屋の子供による飛び跳ねや走り回りによる騒音が階下の住民の受忍限度を超えており、不法行為を構成するとして、階下の居住者である原告2名それぞれからの、慰謝料及び騒音測定にかかった費用、治療費・薬代を含む全額の損害賠償請求を認めた。

上記裁判例では、まず、マンションの外壁や床の構造、防音緩衝材の遮音性、騒音が発生した時間帯、騒音レベル、音の種類等から、被告の子供が一定の時間帯及び頻度で室内において飛び跳ねるなどして騒音を発生させていた事実を認定しました。
 
そして、騒音が発生していた時間帯が、通常静粛が求められる時間帯(午後9時から翌日午前7時)、及び日中(午前7時から同日午後9時)の間でそれぞれ一般的に「うるさい」と感じる騒音レベルであったことを騒音測定結果から指摘し、このような騒音を階下の居室に到達させていたことは、原告らの受忍限度を超えるものとしました。

 その上で、損害として、騒音により原告らが受けた精神的苦痛に対する慰謝料、騒音が原因で体調を崩したことによる通院の治療費・薬代の他に、専門家による客観的な騒音の測定が本件について立証のために必要不可欠であることから、騒音の測定にかかった費用も損害に含めて認めています。

2 マンションの共用部分に私物が置かれている

【事例2】マンションの隣室に入居している人が、共用部分である玄関先の通路に自転車を停めています。通る際に邪魔で迷惑ですし、もし建物で火災などが発生した際に避難路を塞いでしまう可能性もあるため、できれば他の場所に動かしてほしいと思っています。
こういった場合、持ち主に対してどのような請求ができるのでしょうか。

玄関先の通路部分に自転車等の障害物が置かれていると、避難経路としてのみならず、隣接していない他のマンションの居住者(特に高齢者など)のスムーズな通行を妨げ、危険であるために、撤去の必要性が認められると考えられます。

また、今回の事例では「共用部分」に自転車が停められていますが、共用部分はマンションの共有者がそれぞれ使用できるとしても、その通常の用法(今回であれば「通路」としての用法)に従う必要があり、それ以外の用途で使用することはできません(区分所有法13条)。よって、住人が自分の玄関近くの共用部分を自転車置き場として使用することは認められません。
 
一方で、仮に自転車が停められている部分が、玄関先のポーチ等といった専用使用権が認められる場所であった場合はどうなるのでしょうか。
 
この場合であっても、マンションの入居者の「共同の利益」に反する行為は禁じられています。そして、自転車のようにある程度の重量がある上に、倒れると危険であること等を考慮すると、勝手な駐輪については一般的には認められず、共同の利益違反であると考えられます。したがって、管理組合や管理会社に相談した上で撤去を依頼するのが良いでしょう。

3 隣室のペットの鳴き声や臭気に悩まされています

【事例3】私の居室の隣室で犬を飼いはじめた様子なのですが、臭いや鳴き声に悩まされています。このような場合どのような請求をすることが可能なのでしょうか。

マンションでは、ペットの飼育が規約によって禁止されている場合とそうでない場合とが想定されます。
 
規約で禁止されているケースの裁判例では、規約の他に、そのマンションがそもそもペットの飼育を前提とした構造なのか(排気口などの設置等)等を考慮した上で飼育を認めない判断をしたものもあります。規約で特に禁じられていなかった場合であっても、管理組合などに相談し、改善するよう呼びかける等の手段をとることが考えられます。

4 まとめ

これまでに上げた通り、マンションのトラブルは多種多様なものがあります。軽微なものであれば住民同士の話し合いで解決することもあるかもしれません。しかしながら、双方の「居住している場所」で発生するトラブルである以上、その後の関係性が悪化してしまう可能性や、誤ったアプローチによりトラブルが拡大してしまう可能性も十分に孕んでいます。

もしも自分がトラブルに巻き込まれてしまったら、自分だけで解決しようとせず、管理会社や管理組合、弁護士に相談してより良い解決方法を探すことをお勧めします。

2019.06.28

働き方改革について

最近よく耳にするようになった「働き方改革」という言葉ですが、これは一体どのような取り組みのことなのでしょうか?

また、働き方改革によって、これからの私たちの働き方はどのように変わっていくのでしょうか?

1. 働き方改革とは

現在の日本では、長時間労働による過労死や、少子化による労働力・生産性の低下などが社会問題になっています。

皆さんも、ニュースなどで過労による自殺事件が取り上げられているのをご覧になったことがあるのではないでしょうか?このような痛ましい事件が起きてしまうのは、古くから、“長く働くことが偉い”という風潮が根強く存在しているためと言われています。

この記事をご覧になっている方の中にも、有給休暇を取りたいけれど、上司や同僚の目を考えると言い出し辛いという方や、1人で沢山の業務を抱え込んでいて残業をせざるを得ないという方もいらっしゃるかもしれません。

これらの問題を解決するために、政府が推進している取り組みが「働き方改革」です。政府は、働き方改革によって、労働者それぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる社会の実現を目指しています。
具体的には、労働基準法などの法律を改正することによって、長時間労働の是正や、非正規雇用の待遇差解消などを図っています。

2. 働き方改革により施行される制度

それでは、働き方改革により施行される制度を1つずつ見ていきたいと思います。

① 時間外労働の上限規制(大企業:2019年4月~/中小企業:2020年4月~)

これまで、時間外労働の限度については会社・労働者間の合意(36協定)に任せられていました。すなわち、36協定で定める時間外労働については、厚生労働大臣の告示によって、上限の基準が定められていました。
しかし、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、特別条項付きの36協定を締結すれば、 限度時間を超える時間まで時間外労働を行わせることが可能でした。つまり、実質的に無制限に残業が出来てしまっていたということです。
 
そこで、時間外労働について、以下のように改正がなされました。
・時間外労働は原則として1か月に45時間、1年に360時間までという上限が条文に明記される
・繁忙期などでどうしても時間外労働をする必要がある場合でも、年720時間以内月100時間未満かつ複数月平均80時間(休日労働を含む)という上限が設けられる
月45時間を超えて時間外労働をしていいのは年間6か月までと定められる

②年5日の有給休暇の取得義務化(2019年4月~)

日本は有給休暇の取得率が低いため、取得を促進することが課題とされています。皆さんの中にも、「有給休暇を取りたいと言いづらい…」と思われたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?
 
このような現状を改善するため、使用者は、10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、「労働者自らの請求・取得」、「計画年休」及び2019年4月から新設される「使用者による時季指定」のいずれかの方法で労働者に年5日以上の年次有給休暇を取得させなければならないとされました

③高度プロフェッショナル制度の創設(2019年4月~)

高度プロフェッショナル制度とは、年収1,075万円以上(施行時の水準)で、コンサルタント業務など高度な専門性を必要とする職種について、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度のことです。
 
これだけ聞くと、「そんな制度を作って大丈夫なの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この制度は、あくまで本人の同意がある場合のみ適用されます。また、同制度の導入には、労使委員会で決議し、5分の4以上の賛成を得る必要があります。さらに、使用者は、労働者が事業内外で労働した時間の合計を把握し、健康診断の実施など健康確保措置を講ずる義務があります。

④フレックスタイムの清算期間の延長(2019年4月~)

フレックスタイムとは、一定の期間(当該期間のことを、清算期間といいます。)で週平均40時間以内となる労働時間を定め、その間で日々の始業・終業時間、労働時間を労働者自らが決められる制度です。この制度を導入することで、繁忙期に超過した労働時間を閑散期に精算することができます。
 
今回の法改正で、清算期間が1か月から最長3か月に変更されました。これまでは、1か月以内の清算期間における実労働時間が、あらかじめ定めた総労働時間を超過した場合には、超過した時間について割増賃金を支払う必要がありました。

一方で実労働時間が総労働時間に達しない場合には、①欠勤扱いとなり賃金が控除されるか、 ②仕事を早く終わらせることができる場合でも、欠勤扱いとならないようにするため総 労働時間に達するまでは労働しなければならない、といった状況にありました。
清算期間を延長することによって、2か月、3か月といった期間の総労働時間の範囲内で、労働者の都合に応じた労働時間の調整が可能となったのです。

⑤労働時間の状況の把握の義務化(2019年4月~)

長時間労働をなくすためには、使用者において、労働者の労働時間を適正に把握し、管理を行うことが重要になってきます。しかし、これまでは、管理監督者やみなし労働時間制の労働者は、使用者による労働時間管理の対象から外れていました。
 
そこで、今回の法改正によって、会社が全ての労働者について労働時間を把握することが義務化されました(ただし、高度プロフェッショナル制度の対象者は除かれます。)。この把握は、タイムカードやICカードなど客観的な記録によることが原則です。そして、一定の労働時間を超えた労働者については、医師による面接指導を実施しなければなりません。

⑥産業医・産業保健機能の強化(2019年4月~)

従業員50人以上の事業所では産業医、従業員1,000人以上の事業所では専業産業医の選任が必要です。
 
今回の改正で、選任された産業医は、会社に対し労働者の健康管理について必要な勧告が可能になりました。また、使用者は、労働時間その他の必要な情報を産業医に提供することが義務付けられました。

⑦勤務間インターバルの導入推進(2019年4月~)

勤務間インターバルとは、勤務終了後、一定時間以上の休息時間を設ける制度のことです。日本ではあまり普及していませんが、ドイツやフランスなどのEU主要国では広く浸透しています。
 
今回の改正で、勤務間インターバルを導入することが会社の努力義務として定められました。あくまで努力義務なので強制ではありませんが、導入によって過労死ラインを超える時間外労働の抑止が見込まれます。

⑧同一労働同一賃金(大企業:2020年4月~/中小企業:2021年4月~)

同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差をなくすという考え方のことです。ニュースでもよく報じられていたので、聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
 
今回の改正で、同じ働き方であれば同じ待遇に(均等待遇)、働き方に違いがあればその違いを考慮してバランスを保った待遇(均衡待遇)にしなければならないことになります。また、労働者から「待遇について知りたい」と求められた場合、会社は待遇について説明する義務が生じます。

加えて、派遣労働者については、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇又は②一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化されます。

⑨月60時間超の時間外労働の割増賃金率50%以上(2023年4月~)

現在、大企業は、月60時間を超える時間外労働に対して、50%以上の割増賃金を支払わなければならないことになっています。しかし、中小企業については、この割増賃金率の適用が猶予されています。
 
今回の改正で、中小企業についての猶予措置が2023年4月になくなるため、2023年4月から、全ての会社が月60時間超えの時間外労働について50%以上の割増賃金を支払う必要があります

3. まとめ

現在の日本企業には、決められた時間よりも長く働き続ける文化が根強く残っていますが、長時間労働は労働者の健康被害の原因になります。会社としても大事な従業員を失うわけにはいかないので、今回の働き方改革を機に、様々な会社が従来の働き方の見直し・改革に取り組んでいます。
 
しかし、それでも労働者に違法な労働を行わせようとする会社が存在しているのが現状です。「違法だから会社に抗議しよう!」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、第三者を通さずに解決しようとすることはトラブルのもとです。会社に先手を打たれて泣き寝入りすることに……ということもあり得ます。
 
もし、この記事を読んでくださっている皆さんの中に、働いている会社から不当な労働を強いられていると感じている方がいらっしゃれば、すぐに専門家に相談されることをお勧めいたします。

2019.06.27

収入印紙とは?

会社で何か高額な買い物をしたときなど、領収書に切手によく似た「収入印紙」というものが貼ってあるのを見たことがありませんか?
普段の生活では、この「収入印紙」を中々目にすることがないかもしれませんが、契約書に貼り付けることもありますので、この記事を読んで、いざという時に役立ててください。

1.収入印紙とは

そもそも、収入印紙とは何なのでしょうか?言葉だけなら聞いたことがある、初めて聞いた、使ったことがあるなど、人によって様々だと思います。

収入印紙とは、印紙税等の租税を収めるために使用される証票のことをいいます。国税のひとつに印紙税というものがありますが、課される金額は、取引の金額や、書類によって異なります。印紙税を収める流れとしては、郵便局や市役所、コンビニ、法務局などで収入印紙を購入し、それを書類に貼り付けて、消印をすることによって税金を納めたことになります。

では、収入印紙を貼らなければならない書類にはどのようなものがあるのでしょうか?
まず、代表的なものとして領収書があります。5万円以上の金額が記載されている場合には、その金額に応じた収入印紙を貼り付けなければなりません。なお、この5万円は本体価格を指します。
例えば、領収書に「5万1,840円」と記載があったとしても、本体価格4万8,000円、消費税3,140円の場合には課税対象ではないため、収入印紙は不要となります。ただし、この場合は領収金額のうち、いくらが本体価格なのか、いくらが消費税なのかを明記する必要があります。

2つ目は契約書です。請負、不動産、消費貸借、信託などに関する契約書は、契約書の種類ごとに、契約書に記載された金額に応じて支払うべき印紙税が異なってきます。ですので、収入印紙を貼付する場合には注意が必要です。
3つ目は、約束手形、為替手形です。これも、領収書や契約書と同じく、金額に応じて収入印紙を貼り付けて、印紙税を収めます。

2.英文の契約書だった場合はどうする?

最近では、海外の会社と契約を結んだり、海外に進出したりする会社も増えて来ましたよね。1.で、契約書にはその種類及び契約書記載の金額に応じて収入印紙を貼らなければならないとお話しましたが、日本と海外で結んだ英文の契約書の場合も、収入印紙は必要なのでしょうか?

これについては、「契約書が作成された場所によって変わってくる」が答えになります。日本の法律で、印紙税が適用されるのは日本国内のみと定められているため、仮に契約書が作成された場所が海外だとすると、収入印紙を貼る必要はないのです。

それでは、印紙税を貼るべき契約書(以下「課税文書」といいます)の成立時期はいつなのでしょうか?ここで、印紙税法の課税文書の作成とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。

そのため、課税文書の成立時期としては、相手方に交付する目的で作成する課税文書(例えば、株券、手形、受取書など)は、その交付の時になりますし、契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、その意思の合致を証明する時になります。

例えば、日本のA社、カナダのB社が契約を結ぼうとしているとします。まず、A社が日本で契約書を2通作成、署名押印し、それをカナダのB社に送りました。カナダのB社は、日本のA社から送られてきた契約書に署名押印し、1通を日本のA社に返送しました。こうして契約書が作成された場合、返送されてきた契約書、つまりA社が日本で保管しておかなければならない契約書に収入印紙の貼り付けは必要なのでしょうか?

この場合、A社が署名押印した段階では、契約当事者の意思の合致を証明することにはなりません。契約当事者の残りのB社が署名等するときに課税文書が作成されたことになり、その作成場所は日本国外ですから、結局、この契約書には印紙税法の適用はないことになります。したがって、収入印紙を貼る必要はありません。

逆に、カナダのB社が契約書を2通作成、署名押印し、それを日本のA社に送ります。日本のA社はB社から送られて来た契約書2通に署名押印し、1通をカナダのB社に返送し、B社はその1通を自社で保管します。
この場合、契約当事者の意思の合致を証明する時は、A社が契約書に署名等したときであり、この時に課税文書が作成されたことになるため、収入印紙の貼り付けが必要となるのです。また、収入印紙の貼り付けは、日本のA社で保管する1通だけでなく、カナダのB社で保管する契約書分についても必要となります。

3.収入印紙を貼り忘れてしまったとき

例えば、領収書に本体価格5万円以上の金額が記載されているときには、収入印紙を貼り付けることが必要だとお話しましたが、もしこの収入印紙の貼り付けを忘れていた場合、どうなってしまうのでしょうか?

仮に、収入印紙の貼り付けが必要な領収書や契約書に、印紙を貼り付けることを忘れてしまったとしても、領収書や契約書そのものが無効になることはありません。例えば、契約書の場合ですと、契約は双方の合意があれば有効なものとなり、契約書はその合意を形に残したものにすぎません。ですので、「収入印紙を貼り忘れたから契約が無効になるのではないか」、という心配をする必要はないのです。

しかし、契約書の効力に問題がないからと言って、貼り忘れた印紙税を収めなくて良いという訳ではありません。収入印紙を貼り忘れていた、貼らなければならないことを知らなかったなどの場合でも、過怠税という税金が課されることになります。過怠税とは、印紙税法第20条に基づき、印紙税を納付しなかった場合に課されるもののことです。

過怠税として納めなければならない金額は、本来納付すべき金額の3倍となります。ただし、文書の作成者が管轄の税務署長に対し、収入印紙を貼り忘れていた旨の申し出を自主的に行った場合には納付する金額は本来の金額の3倍ではなく、1.1倍で済む場合があります。

さらに、収入印紙を貼り付け忘れた場合だけでなく、消印をしていなかった場合にも過怠税がかかってきます。金額は、消印をしていなかった収入印紙の金額と同額のものとなりますので、消印の押し忘れにも気を付けてください。

4.まとめ

今回は、収入印紙の基本についてお話しました。
普段の生活の中で、収入印紙を使う機会は中々ないかもしれませんが、いざ使う機会が訪れたとき、貼り忘れてしまった、貼ったのに消印をわすれてしまったなど、本来収めるべき金額以上の金額を収めなくて良いように、この記事を読んで、いつか訪れるかもしれない、収入印紙を使う機会に役立ててください。

2019.06.27

起業する前に知っておくべきこと3~法人成りのメリット・デメリット~

前回の記事では、個人事業主が法人成りする「給与にかかる税金」、「給与以外にかかる税金」に関するメリットをお話しました。今回は、その続きとして、「税金以外のこと」に関するメリットについてお話します。また、メリットばかりでなく、皆さんが一番気になるであろうデメリットについても詳しくご説明します。

前回の記事はこちらから→「起業する前に知っておくべきこと2~法人成り~

1. 個人事業主が法人成りするメリット

<税金以外のこと>

(1)借入れ

銀行などの金融機関で借入れを行うとき、個人事業主の場合は自分自身が契約者となり、保証人を求められた場合は、保証人になってくれる人を探す必要があります。
これに対して、法人の場合は、契約者を法人にして、その保証人を自分自身にするということができます。
大多数の人は「借入れをしたいから保証人になってほしい」と言われると身構えてしまいますから、保証人になってくれる人を探すのには相当の時間がかかると思われます。そのような手間が省けることを考えると、個人事業主よりも法人である方が有利に働くでしょう。

(2)助成金

助成金とは、借入れとは異なり、返済をする必要がない国から支給されるお金のことです。受給が認められるためには、各助成金について定められた要件を満たす必要があります。しかし、返済しなくてよいということは事業主にとって大きいので、要件を満たす助成金があれば申請したいですよね。
個人事業主でも申請できるものはありますが、法人でなければ受けられない助成金もあります。これらを踏まえると、法人のほうが、申請できる可能性のある助成金が多くなります。

(3)新規取引や許認可事業

新規取引や許認可事業を始めるとき、個人事業主では難しいことがあり、「法人」であることが前提となっている場合もあります。

(4)採用活動

個人事業主と法人で比べると、やはりどうしても法人の方が信用度が高いので、新たに従業員を採用する必要があるとき、法人である方が求人に対する反応が多い可能性が高いです。

2. 個人事業主が法人成りするデメリット

これまで、法人成りするメリットについてお話してきましたが、もちろんデメリットもあります。具体的には以下のとおりです。

(1)社会保険の加入義務

個人事業主の場合、5人以上従業員を雇用したら社会保険に加入しなければなりません。従業員が4人以下であれば、任意加入となります。
これに対し、法人の場合は、従業員数に関わらず社会保険に加入する義務があります。たとえ従業員を雇用しておらず、社長1人しかいない会社であったとしても、必ず加入しなければなりません。
社会保険料は、事業主(会社)と被保険者(従業員)で折半する決まりなので、今までに社会保険に加入する必要がなかった方にとっては、負担に感じてしまうかもしれません。

(2)法人登記費用

個人事業を始めたい場合は、税務署に開業届を提出するだけで手続きが完了します。
しかし、法人を設立しようとすると、定款の作成、登記申請など個人事業主に比べて様々な手続きを踏まなければなりません。また、設立時だけでなく、設立後も、本店の移転や代表者の引っ越し、役員の更新など登記をしなければならないタイミングが発生します。その際、登録免許税や、登記を司法書士に依頼する場合はその報酬を支払う必要があります

(3)法人住民税

住民税には、「均等割(広く均等に負担する)」と「所得割(所得に応じて負担する)」があります。この均等割額は、地域によって差があります。
個人事業主の場合、住民税の均等割額は5,000円程度です。
しかし、法人の場合、法人住民税の均等割額は、最低でも7万円程度です
したがって、個人事業主よりも法人の場合のほうが住民税を多く納税しなければなりません。

(4)事務負担

個人事業主の場合、必要な手続きを自分で行うことは難しくありません。
しかし、法人の場合、(2)で述べたように個人事業主よりも多くの手続きが発生しますし、作成しなければならない書類も増えます。煩雑であったり、専門的な知識が必要だったりする作業も多いので、慣れていない場合は負担に感じてしまうかもしれません。全てを自分で処理するのが難しければ、税に関しては税理士などの専門家に依頼する必要があるので、その分費用がかかってしまいます。

(5)税務調査

税務調査とは、会社が申告・納税を正しく行っているかどうかを税務署や国税局の職員が調べるものです。
一般的に、税務調査が入る確率は、個人事業主と比べて法人の方が高いです

(6)様々な契約の価格

何かのサービスを利用するとき、個人事業主であれば個人として無料で利用できるものでも、法人だと法人契約に該当して手数料を取られることがあります。また、個人と法人では価格が異なるサービスもあります。様々なサービスを契約している場合、今よりも出費が増えてしまうかもしれません。

3. まとめ

今回の記事では、前回の記事の続きとして、法人成りの税金以外に関するメリットと、法人成りするデメリットについてお話しました。

デメリットを考えると、法人成りを躊躇われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それ以上にメリットがあるので、最初は個人事業として始めた場合でも、ある程度利益が増えてきたら法人成りすることを検討してみましょう。

2019.06.26

起業する前に知っておくべきこと2~法人成り~

前回の記事に引き続き、今回も「起業する前に知っておくべきこと」がテーマです。

今回と次回の記事にわたって、個人事業主が法人成りするメリット・デメリットについてお話します。起業するにあたり、「ひとまず個人事業として始めてみようかな」と考えていらっしゃる方はもちろん、「個人事業として始めてみたけれど、法人化しようかな」といった既に個人事業主として活動されている方にも読んでいただけたらと思います。

前回の記事はこちらから→「起業する前に知っておくべきこと1~注意点~

1. 法人成りとは

法人成りとは、「個人事業主が、株式会社や合同会社などの法人を設立し、個人として行っていた事業を法人に移行すること」を指します。

2. 個人事業主が法人成りするメリット

法人成りによる一番のメリットは、節税できる点です。
現在の日本の税制では、個人に係る所得税は、累進課税制度が採られており、法人に係る法人税は比例課税制度が採られています。つまり、利益があればあるほど、個人事業主よりも法人のほうが節税できるということです。
それでは、具体的にどのように節税できるのか、1つずつ見ていきましょう。

<給与にかかる税金>

(1)給与所得控除

そもそも、給与には、給与所得者が収入から差し引くことができる給与所得控除があります。この給与所得控除は、みなし経費と呼ばれるもので、一定額について経費とみなすため、控除をすることができることになっています。
個人事業主だと、給与ではなく事業所得という扱いになりますが、法人成りした場合、社長である自分自身に給与を支払うことができます。つまり、社長の収入から給与所得控除として一定額を差し引くことができるため、その分の所得税を節税できるというわけです。

(2)家族に対する給与の支払い

個人事業主の場合、事前に税務署に届出をしていれば、青色事業専従者制度によって家族に給与を支払うことができますが、年齢や期間など働き方に制限があります。
しかし、法人成りすると、個人事業主と違って前述したような制限がないので、パートタイムで働かせるなど働き方を自由に決めることができます。
また、日本は、累進課税制度を採用しているため、所得額が多くなればなるほど高い税率が課されます。つまり、個人事業主が一人で稼ぐよりも、法人化して家族への給与支払いという形で分散して還元することによって1人あたりの収入が下がり、それに応じて税率も下がるので、家族全体で考えると税金が安くなります。

(3)配偶者控除・扶養控除の適用

個人事業主の場合、事業専従者である家族に支払う給与について、配偶者控除や扶養控除を適用することはできません。

しかし、法人成りして、家族の給与を年間103万円以下にすると、配偶者控除や扶養控除を適用することができるため、その分所得税を節税できます。

(4)退職金

個人事業主だと自分自身に退職金を支給することができないのに対し、法人の場合は自分に対して退職金を支給することができます。また、退職金が以下の金額までであれば、課税されません。

勤続20年以下の場合
 40万円×勤続年数 ※最低80万円
勤続20年を超える場合
 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
 ⇒勤続20年を超えると、より優遇されます!

<給与以外にかかる税金>

(1)赤字繰越

年度の収支が赤字になってしまった場合、この赤字は翌年度以降に繰り越すことができます。
前回の記事でも少し触れましたが、個人事業主の場合、赤字は3年間しか繰り越すことができません。
しかし、法人成りすると、赤字を9年間(平成30年4月以降は10年間)繰り越すことができます

(2)消費税を2年間免税できる

2年前(法人の場合は2期前)の売上高が1,000万円を超えている、または、前年上半期(法人の場合は前期の上半期)の売上高が1,000万円を超えている場合、消費税を納税しなければなりません。
個人事業主が、売上高が1,000万円を超えて納税義務が発生するタイミングで法人成りをすることで、通常の会社設立をした場合と同様に、2年間免税されます
ただし、前述したとおり、第1期目の上半期の売上高と給与(役員報酬含む)の金額がいずれも1,000万円を超えた場合は、第2期目から消費税納入義務が発生しますので、注意が必要です。

(3)出張手当

個人事業主の場合、自分自身に出張手当を支払うということはできません。
しかし、法人かつ出張規程を作成している場合は、出張手当を支給できます。出張手当は経費扱いになる上、消費税法上、仕入税額控除の対象になります。出張手当は、受け取った従業員の給与には加算されないので、社会保険料や所得税がかからず、従業員にとっても負担になりません。

(4)役員社宅

個人事業主の場合、居住用に借りている自宅の家賃は経費とすることはできません。
しかし、法人の場合は、自宅を法人名義で契約して、社宅として貸し出せば、家賃の半分ほどを経費として計上できます

(5)生命保険

個人事業主の場合、生命保険に加入すると、最大12万円まで所得税の生命保険料の控除をすることができます。
これに対し、法人の場合、法人名義で契約し、被保険者を従業員、受取人を法人とすることで、保険料を経費とすることができます

3. まとめ

今回の記事では、法人成りをする税金に関するメリットについてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか?個人事業として始めた場合でも、売上が1,000万円程度になったら、法人成りした方がお得になります。
次の記事では、今回の続きとして、法人成りの税金以外に関するメリットと、法人成りのデメリットについてご説明します。

2019.06.25

テレビ製作において注意すべきポイント~著作権の取り扱い~

これまで数回にわたり、テレビ番組製作において注意すべきポイントをご紹介してきましたが、今回は、「著作者が死亡している場合の著作権の取り扱い」についてご説明したいと思います。
さまざまな場面において、盗作や無断使用等で何かと話題になる「著作権」ですが、著作者が死亡していた場合、その権利はどうなるのでしょうか。

1.著作権とは?著作者の人格的権利とは?

著作者には、著作財産権(狭義の著作権)と著作者人格権の2つの権利があります。著作財産権は、複製権や上映権、貸与権、二次的著作物の利用権などが挙げられます。これらの権利は全部または一部を、家族や他人などに譲渡することができます。

一方、著作者人格権とは、自分の作品を自由に公表することができる権利(公表権)や氏名表示権、同一性保持権のことを指し、一身専属性の権利です。したがって、著作財産権とは異なり、相続したり譲渡することはできません。

しかしながら、著作権法第60条では、著作者が死亡した後の著作人格権についても、一定程度保護するべきとしています。

第60条 著作物を公衆に提供し、又は提示する者は、その著作物の著作者が存しなくなつた後においても、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は、この限りでない。

以上を前提にして、話を進めていくことにしましょう。

2.著作者が死亡している場合の許諾申請

(1)著作者死亡後、著作権は70年間保護される

ある写真を、テレビ番組内で使用するため許諾申請を行おうとした際、撮影した写真家が今から60年前に死亡していたとします。この場合、そもそも著作権の許諾申請は必要なのでしょうか。許諾申請が必要な場合、誰に著作権の使用申請を行えばよいのでしょうか。

著作権法では、著作者の権利を認め、著作権を保護する目的としてこれまで「著作者の死後50年間は保護期間(映画についての保護期間は70年間)として存続される」としていました。しかし、著作権法は、平成28年に環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップ協定に関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(以下、「TPP整備法」といいます。)により改正されました。
そのため、現在は原則全ての著作物の保護期間が「著作者の死後70年間」に変更になっています(著作権法第51条以下)。

ですので、TPP整備法が制定される以前でしたら、今回の写真家の作品は許諾を得なくても使用することができていましたが、保護期間が著作者の死後70年間となった現在の著作権法においては、許諾申請が必要となります。

では、誰にこの許諾申請を行えばいいのでしょうか。上の例であげたように、著作物を番組内で使用する際、許諾を得なければならないのは、著作者の相続人となります。既に説明したように、著作権には、著作者人格権と著作財産権(狭義の著作権)に分類されますが、著作財産権は相続の対象になるため、相続人が権利を引き継ぐこととなるのです。

そして、著作権を相続する人が決まっている場合には、その相続人から許諾を得ればよいのですが、著作者の死後間もない場合や相続で揉めている場合など、権利を取得する相続人がはっきり決まっていないこともあります。
そのような場合は、法定相続人や受遺者等、相続対象となる人全員から許諾を得なければなりません。

(2)財団や管理団体が管理するケースも

では、著作者に相続人が誰もいない場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、生前贈与や遺言により、第三者に権利が譲渡されている場合には、当該受贈者・受遺者が著作権を取得するため、これらの者を相手に許諾申請を行います。
著作者が著名な作家や芸術家などの場合、財団や管理団体を設立し一括して著作物の管理を行っていることもあります。

このケースでは、遺族ではなく財団や管理団体に許諾申請をすることとなりますので、スムーズに番組制作を進めるためには、早い段階でどの人物や団体に著作権が移っているのかを確認し、承諾を得ることがポイントです。
なお、誰にも譲渡されず、相続する者もいない場合は、著作権法第62条1項1号に基づいて著作権は消滅することとなります。

3.具体例

例えば、著名な作家の死亡後に未公開の小説が発見された際など、書籍化やドラマ化を検討することもあるかと思います。このようなケースでも、遺族や権利を有している相続人へあらかじめ許諾申請を行うことで、公開後のトラブルを防ぐことができるでしょう。
この場合も、2.(2)のように、管理団体や遺言により第三者へ権利が譲渡されていることがありますので、誰が問い合わせの窓口になっているか確認が必要です。

また、相続人に著作権が譲渡された作品の使用許諾申請が認められたとして番組内で使用する際などに、すでに著作者本人は死亡しているからといって、作品へ必要以上の改変を行ったり、著しく誤解を招くような不適切な表現を用いて紹介するなどした場合、著作権法第60条により、その遺族や団体から侵害を受けたとして差し止めを求められることもあり得ます。

著作者本人がすでに死亡しているからといって、過度な改変などを行うことは好ましくないといえます。節度を守り使用するようにしましょう。

4.まとめ

今回は著作者が死亡した場合の著作権について見ていきましたが、著作者が生存している場合、テレビ番組の制作時において著作権は当然に重要な権利となります。権利の特徴や期間などをよく理解した上で許諾申請等を行うことが大切です。

また、死亡後に著作権の行方がわからなくなっており、相続人の判明に時間がかかることも予想されますので、制作に間に合わないといったことがないよう、スケジュールに余裕を持って調査、交渉や申請を進めて行きましょう。

2019.06.24

【不動産】マンションでペットを飼育するとき

Q.私の住んでいるマンションは、ペットの飼育が管理規約で禁止されています。ところが、隣室の居住者は犬を飼っている様子で、犬の鳴き声や臭気などに悩まされています。このような状況のとき、隣室の入居者に対して私からどのような請求ができるのでしょうか?

A.マンションとペットの飼育について考える際には、以下に挙げたポイントに注意して検討する必要があります。
□ 飼育禁止の管理規約の存在の有無
□ 管理規約の変更により、飼育禁止の条項が追加された場合
□ 違反行為に対する措置

1 ペットの飼育を禁止できるのか

(1)飼育禁止の管理規約が存在しない場合

マンションにおいて、ペットの飼育を禁止する管理規約が存在しない場合、ペットの飼育を禁止することは可能なのでしょうか。
この点、マンションにおいては多数の住民が1棟の建物で共同生活を営むことを考慮すれば、専有部分内における行為であっても、無制約に認められるものではありません。

例えば、専有部分において猛獣を飼育することなどは、管理規約の定めが無くとも、共同利益背反行為に該当し、建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」といいます。)57条ないし60条記載の措置、例えば「共同の利益に反する行為の停止等の請求」が可能となります。

(2)飼育禁止の管理規約が存在する場合

管理規約の中にマンション内における動物飼育を一律に禁止する管理規約がある場合は、当該規定は有効なのでしょうか。
もしマンション内で動物を飼育するとなると、

・ 動物の糞尿によるマンションの汚損や臭気
・ 動物を介した病気の伝染、衛生上の問題
・ 動物の鳴き声による騒音
・ 動物による噛み付きの事故

といった、建物の維持管理や他の居住者の生活に目に見えて影響をもたらす危険があるほかに、動物を建物内で飼うこと自体が他の居住者に対して不快感を与えるといった目に見えない影響をも及ぼす恐れがあります。
そして、上記のような影響を与える可能性のあるペットの飼育は、区分所有者の共同の利益に反する行為であると認められます。
故に、ペット飼育を一律に禁止する規定は有効であると考えられています。

2 管理規約の変更により、飼育禁止の規定が追加された場合

もしマンションに入居した時点では、管理規約内にペット飼育禁止の規定が無く、一部の区分所有者がペットを飼育している状況であったところに、管理規約の変更によりペットの飼育を禁止する規定が加えられた場合はどうなるのでしょうか。

この場合も、ペットの飼育が区分所有者の共同の利益に反する行為に該当しうるため、管理組合の構成員の多数意思として管理規約の規定を追加する場合には、この追加された規定に基づくペットの一律飼育禁止も有効となります。

しかしながら、区分所有法31条1項後段においては

「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべき時は、その承諾を得なければならない」

と定められていることから、既にペットを飼育していた居住者に対しては、管理規約にペット飼育禁止の規定を追加することについて承諾を求めなければならない場合があることに注意が必要です。

3 居住者による違反行為に対する措置

ペット飼育禁止に違反している居住者に対しては、区分所有法第57条ないし60条に挙げられた措置の他に、
・ 飼育禁止
・ 飼育する動物の即時退去
・ 糞尿の除去・消臭措置
といった請求を行うことが考えられます。

4 ペット飼育に関する裁判例

(1)ペット飼育を禁止する管理組合の規約が有効とされた事例(東京地判平成8・7・5)

当該マンションにおいては、ペットの飼育を禁止する管理規約がありましたが、一方で一部の組合員はペットを飼育していました。そこで、ペットを飼育中の組合員により構成されるペットクラブが設立され、設立時点で組合員が飼育していたペット一代に限って飼育を認め、それぞれの寿命が来れば、ペットを飼育する組合員は自然消滅することとしていました。

ところが、ある居住者はこのペットクラブ設立の数年後より飼育を始めたために、管理組合側よりペットの飼育を辞めるよう通知があったものの、これに応じなかったために、管理組合はこの居住者を訴え、裁判で争うこととなりました。

本判決においては、「マンションは入居者が同一の建物内で共用部分を共同して利用し、専有部分も上下左右又は斜め上若しくは下の隣接する他の専有部分と相互に壁や床等で隔てられているにすぎ」ないため、当該マンションの構造が「必ずしも防音、防水面で万全の措置がとられているわけではない」こと、また、「ベランダ、窓、換気穴を通じて臭気が侵入しやすい場合も少なくない」ことを考えると、各居住者の生活形態が相互に重大な可能性を及ぼす可能性を否定できない」とした上で、「本件マンションは、14階建の居住用の分譲マンションであり、動物の飼育を配慮した設計、構造にはなっていない」ということも認定の要素とし、被告による本件マンションでのペットの飼育を認めませんでした。

(2)管理規約の変更によりペット飼育禁止規定が追加された場合(横浜地判平成3・12・12)

本件は、被告が当該マンションへ犬を連れて入居した後、管理規約において動物の飼育を禁止する規定が新設された事案です。

被告は、当該規約の改正が被告の権利に「特別の影響を及ぼす」ものであるにもかかわらず、被告の承諾なしに改正されたものであるため、区分所有法第31条1項に反しており無効であるとして争いました。

しかしながら、裁判所では、当該マンションに入居する際、「動物の飼育は一応禁止されている」という旨の記載がある入居案内が配布されていた点を考慮した上で、当該マンションが以前からペット飼育禁止という共通認識があったと認定し現在の社会情勢・国民意識に照らし、全面的禁止には相当の必要性・合理性が認められると判断し、区分所有法31条1項後段の「特別の影響」は認められないとしました。

5 まとめ

判例を見ると、マンションは多くの人が共同生活を営む場所である以上、管理規約の内容、組合員の要望、マンションそのものの構造が動物を飼育することを考慮されたものであるかといった様々な観点から検討されていることがわかります。

ペットを飼いたい場合には、こういったトラブルを回避するためにも、マンションを購入する前に必ず管理規約や周知事項を確認するようにしましょう。

2019.06.24

ハンコの持つ効力と役割

前回、「ハンコ」の種類と特徴についてお話しましたが、今回は「ハンコ」の持つ効力と役割についてお話したいと思います。

前回の記事を読むにはこちらから→「ハンコの種類と特徴

1. ハンコの持つ効力

個人が使うハンコには主に実印、銀行印、認印、シャチハタがあり、会社が使うハンコには主に代表社印、社印、割印があると前回お話しましたが、これらの効力はどのようになっているのでしょうか?

そもそもハンコには、ハンコの持ち主が契約書などの書類の内容を理解して、持ち主本人の意思でハンコを押したと思わせる力があります。これに加えて、それぞれ違った大きさの力を持っているのです。

例えば、借主の欄に自分の名前が書かれた、5000万円の借用書が3枚あったとして、それぞれに実印、銀行印、認印が押してあるとします。この場合、どの借用書が1番効力を持っているのでしょうか?
もちろん、実印が押された借用書です。実印は、他のハンコとは違い、印鑑登録を行うにも本人確認が必要であり、法律上、社会上の権利や義務の発生を伴う重要なハンコのため1番効力があるといえます。

一方、認印は大量生産され、100円ショップなどでも簡単に手に入れることができるもののため、本人ではない誰かが,自分で認印を準備して勝手に押したという可能性も考えられます。ですので、1番効力を持っているとは言えないのです。

2. ハンコの持つ役割

では次に、ハンコの持つ役割についてです。ハンコは、契約をするときに押すだけで
なく、様々な使い方をすることができます。以下に、使い方の例を挙げていきます。

(1)契印

2枚以上にわたる文書があるときに、その文書の境目のページに押した印影のことを言います。

意味:文書が勝手に追加されたり、差し替えられたりしていないもので、そのつながりが真正であることを証明します。法的な力はなく、契印があってもなくても文書としての効果に違いはありません。

(2)訂正印

文書に記載した文字や言葉を書き直したり、書き加えたり、削除したりしたいときに訂正部分に押すハンコになります。契約書などの書類の注釈のところに、「間違えた場合は該当部分に二重線を引いたうえで、訂正印を押してください。」という旨の記載が書かれているのを見たことがある方も多いと思います。

意味:訂正印を押すことで、その訂正が勝手に行われたものでないという証明になります。そのため、訂正印は、文書の最後に押したハンコと同じものを使う必要があります。最後の方で間違えてしまうと、修正液や修正テープを使いたくなりますが、訂正印を押して修正を行わなければなりません。

(3)捨印

文書の余白部分に押された印影のことを言います。この印影も、文書の最後に押されたものと同じものである必要があります。

意味:捨印があることで、文書の交付を受けた人に対し、捨印を押した人の了解を得なくても、ある程度まで文書の内容を訂正して良いという権限を与えるということを意味します。
ですが、捨印が押してあるからと言って、契約書の重要な部分まで訂正することはできませんので、注意してください。

(4)消印

収入印紙や切手、はがきなどの文書に使用済みのしるしとして押された印影のことを言います。
押す場所について、特に決まりはありませんが、角に押すことが多いようです。また、ハンコについてもその文書の最後に押されたものと同じものを使うことが多いようですが、違うハンコを使ったとしても効力に変わりはありません。

意味:はがきや切手が再利用されることを防ぎます。

3. ハンコをきれいに押すことができなかったときはどうする?

1と2で、ハンコの持つ効力と役割についてお話しましたが、実際にハンコを押す場面になったとき、斜めになってしまったり、印影が薄くなってしまったりした経験はありませんか?

せっかく大きな契約をとったのに、契約書に押したハンコが滲んでいたり、薄くついてしまったりしていたら、契約書が無意味なものになってしまうのではないかと不安になりますよね。ですが安心してください。押したハンコが薄くても、上下逆さまになっていても、契約が無効になることはありません。なぜなら、契約書は契約の存在を証明する重要な客観的証拠ではありますが、契約自体は当事者双方の合意により有効に成立するからです。

では、なぜわざわざハンコを押すのか。それは、合意があったことを形に残すものである契約書の価値を高めるためです。ですので、印影さえあればハンコがきれいに押されているかなんて関係ないのです。

4. まとめ

今回は、ハンコの持つ効力、役割、そしてハンコをきれいに押すことができなかった場合はどうなるのかについてお話しました。
ハンコは、大事な書類の最後に押すだけでなく、様々な使い方、意味があること、また、きれいにまっすぐ押さないといけないと思いがちですが、意外とそんなことはないということも分かっていただけたかと思います。
この記事を読んだ後、ハンコを押す機会があれば、ぜひ今回知ったことを生かしてみて下さい。

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