弁護士コラム

2024.03.14

子どもがお店の物を壊してしまったら?

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小さいお子さんがいらっしゃるご家庭だと、買い物の際、お子さんが、お店の食べ物を勝手に触ってしまったりしないかヒヤヒヤしてしまうのではないでしょうか。 私にも5歳と2歳の子どもがいるのですが、家族でパン屋に行った際(最近家族でパン屋巡りにハマっています)などには、子どもたちが陳列されているパンを勝手に取らないかいつもヒヤヒヤしながら見守っています。幸いにして、子どもが食べ物を触ったりしたことは今までないのですが、もし子どもが触ってしまい、食べ物がダメになってしまった場合や、お店の物を壊してしまった場合には、法的にはどうなるのでしょうか。

子どもの責任?親の責任?

まず、お店の物を壊してしまった場合には、民法709条に基づき、物の価格について、賠償する義務を負います。もっとも、民法712条では、

「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」

と規定されているので、未成年者かつ、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力といいます。)がない場合には、お子さん自身が責任を負うことはありません。その代わり、民法714条により、監督義務者(お子さんである場合には親権者である親など)が賠償する義務を負うことになります。 この責任能力については、未成年者ことに個別具体的に判断されるのですが、一般的には、11~12歳までは責任無能力であると判断されることケースが多いです。 したがって、小学校高学年くらいまでのお子さんの場合、親に支払う義務が発生し、中学生などになると、未成年者であるお子さん自身に賠償義務が発生することになります。 もっとも、現実には、お子さん自身が資力が無い場合も多いためいずれの場合でも親が支払うということになると思います。 

割れた食器

払わなくてよいのはお店側の善意

こういった、お子さんのトラブルの際に、親が「子どものしたことなので」といって、支払いを免れようとする場合もあるかもしれませんが、上記のようにお店側は賠償請求することが出来る権利があります。したがって、「子どものしたことなので」というのはあくまでもお店側の善意として発せられるべき発言であって、親としてはきちんとお店に謝罪して、弁償する提案をするべきであると思います。 また、お子さんに対しても、親がきちんと謝罪して、弁償する姿を見せることで、自分がしてしまったことがいけないことであると実感し、反省するようになるのではないかと思います。 自分も親となって、子どもがトラブルを起こさないということが一番ではありますが、もし、お店に迷惑をかけてしまったような場合には、親としてきちんと責任をとることも大事なのではないかなと感じました。

 

執筆弁護士紹介 後藤祐太郎

 

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2024.02.09

店内撮影禁止に違反したらどうなる??

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皆さんは外食に行かれる際には、口コミサイトやSNSを参考にされたりするでしょうか?? 私の家族では、最近、うどんにとてもはまっており、休みの前の日などには、どのうどん屋に食べに行こうかと妻と話して、色々な口コミサイトやSNSの情報を調べたりしています。その際、一番重視しているのは口コミの内容ではなく、投稿されている料理の写真を見て、おいしそうか、食べてみたいかというのを決めているように思います。また、小さい子どもがいるため、店内の写真などをみて、カウンターだけの店ではないかなどを調べています。

このように、お店を決めるうえで、料理の写真等はとても重要であるため、SNSで写真や動画をアップしていただいている方にはとても感謝なのですが、最近お店に行くと、「店内写真撮影禁止」や撮影やSNSの投稿の関するお願いなどの文書が掲示されているお店もよく見かけるようになりました。

では、この「写真撮影禁止」に違反して撮影を行った場合法的にはどのような問題があるのでしょうか。

まず、店内や料理を撮影すること自体で、何ら犯罪が成立することはありません(しかし、立ち入り禁止の箇所に立ち入って撮影した場合などには、住居侵入罪等が成立する可能性はあります。)。これは、店側が「写真撮影禁止」という文書を掲示していたとしても、犯罪にはなりません。

カフェで写真を撮る女性たち

では、「写真撮影禁止」と書かれていても写真をとってもよいかというとそういうわけではありません。店内の写真撮影を許可するかしないかについては、施設(お店)の管理権を有しているお店側が事由に決めることができるので、お店の方は、写真撮影をしているお客さんに写真を撮影しないよう注意をすることができます。さらに、店側の判断として、注意したとしても撮影を止めない場合や、何度も撮影している人の場合、退去を要求したり、今後の出入りを禁止したりすることができます。さらに退去の要求にも応じない場合には、刑法130条後段の不退去罪が成立する可能性があります。また、トラブルで店側の業務を妨害した場合には威力業務妨害罪が成立する可能性もあります。ここまで来ると単なる写真撮影で逮捕されてしまう可能性もあります。

さらに、店の様子を撮影することで、他のお客さんの容姿が映ってしまうこともあり、それを無断でSNS等にアップしてしまうと、プライバシー権や肖像権の侵害として、損害賠償請求されるなどトラブルに巻き込まれてしまうリスクがあります。

このように、店内の撮影については、撮影だけで犯罪になるということはありませんが、お店のスタンスとして、撮影を禁じている場合にはトラブルにならないようにお店のルールには従った方がいいと思います。他方、お店の側としても料理などをSNSで宣伝してもらうことで、集客につながるという点もあり、写真をとることを許可したいと考えている場合もあると思います。その場合には、トラブルを未然に防ぐために、写真撮影やSNSへのアップに関するルールなどをあらかじめ文章にしてお店に掲示していただくのが良いと思います(そういったルールに関する文章の作成について弁護士に依頼されたい場合にはお気軽にお問い合わせください。)。

 

執筆弁護士紹介 後藤祐太郎

 

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2024.01.19

弁護士が解説!売掛金について

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最高のピッチング

皆さんは、野球が好きですか?
私は、サッカーも野球も好きですが、どちらかというとサッカーの方が好きだったのですが、今年のWBCの感動的な試合を見て、野球も捨てたものじゃないなと再評価していました。

野球では、バッターよりも投手に注目することが多く、日本だけでなくメジャーリーグの有名なピッチャーの動画などをよく見ています。

よく、野球好きの人と話すときに、「最高のピッチング」とは何かということが話題になったりします。その際に出てくるのが「81」と「27」という数字です。「81」という数字は、全てのバッターを3球三振で仕留めた場合3球×3アウト×9回=81球で試合を終わらせることが出来るというものです。ピッチャーだけの力で試合を終わらせることが出来るという意味では理想なのかもしれません。

これに対し、「27」という数字は、全てのバッターを、ゴロやフライなどでアウトにした場合には、1球×3アウト×9回=27球で試合を終わらせることができます。私個人的には、1球で仕留める技術がかっこいいため、こちらの方が理想のピッチングというような気がしています。

ピッチャー

この、理想的ピッチングの「27球」というものですが、もっと少なくすることはできないのかと友人と話していたことがありました。最近メジャーリーグで大谷選手が申告敬遠を何度もされているのを見て、「申告敬遠の場合球数はどうなるのか」と思い、調べてみることにしました。

日本のプロ野球のルールなどをまとめたものとして、「公認野球規則」というものがあります(アメリカのプロ野球のルールを翻訳したものに、日本独自の注釈などが盛り込まれているそうです。)。この「公認野球規則」によると、申告敬遠(規則では「故意四球」というようです)の場合、投手の投球数には加算されないとされています。 そうすると、最も少ない球数で試合を終わらせるためには、申告敬遠を2回してノーアウト1塁、2塁の状態で、次のバッターに対し1球でトリプルプレーをとることで、1球×9回=9球で試合を終わらせることが、理屈上可能になります。

9球で試合を終わらせることは絶対にありえないでしょう。また、そもそも27球で試合を終わらせるというのも夢物語であると思います(ちなみに、日本のプロ野球で9回完投の最小投球数は、71球だそうです)。ですが、今まで歴史を塗り替えてきた大谷選手やこれから出てくる選手がそいった理想をかなえてくれるのではと思うだけでとってもロマンがあっていいなと思ったりします(前置きが長くなってしまいましたが、以下法律のお話をさせていただきます。)。

ホストクラブの売掛金について

さて、本題に入りたいと思います。
最近ニュースで、歌舞伎町のホストクラブで将来的に店での売掛けをなくすことを目指すというニュースがありました。会社や、事業をされている方には、この「売掛け」という言葉になじみはあるかもしれませんが、一般の方ですと、あまり聞いたことがない言葉かもしれません。

「売掛金」とは、会計上の用語で、「これから支払われる予定のある代金」を意味する勘定科目のことをいいます。簡単に言うと、ものを買って代金の支払いを後払いすることを売掛といいます。 この「売掛」という言葉のもととなっている「掛売」という言葉は、江戸時代の会計帳簿には記載されており、この頃の商取引は基本的に代金をその場で支払わず後で受け取る「掛売」で行われていたようです。「掛」という言葉はなにかの途中であることを意味するものであり、代金が支払われていない状態は、売買という取引が完了していない(途中である)ことから「売掛金」という言葉が使われるようになったそうです。

先程のニュースでは、ホストクラブにおいてこの売掛を辞めることを目指しているとのことですが、誤解がないようご説明すると、売掛という支払い方法が悪いというわけではありません。商取引は迅速性が求められ、かつ、扱う金額も高額になるため、コンビニの支払いのように都度都度現金でその場で払うことが求められると、迅速な商取引が阻害されてしまいます。

ホストクラブで問題になっているのは、ホストクラブでは、お客の女性が支払う能力がないことを知りながら、何百万円もする高額なお酒を、売掛金として入れさせ、支払いを強要し、多額の借金をさせたり、風俗業界で強制的に働かせたりの悪質な行為をしている点が問題となっています。

シャンパンタワー

このようなホストクラブにおいて売掛が禁止された場合には、お客の女性も、自分の支払い能力に見合った利用(要は、自分の持っているお金の範囲でのみの利用)をすることになるので、利用する女性の方から被害者を防ぐことができるのではないかと言われています(個人的には、そうなると、消費者金融で借り入れを強制したり、違法な闇金などからお金を借りさせたりして、支払わせるというような手法が横行してしまうような気もしています。)。

他方、こうしたホストクラブではない通常の商取引においても売掛金に関するトラブルは頻繁に生じています。具体的には、買い主から売掛金が支払われない状態で、新たに取引を行い、売掛金の額が高額になったが、買い主からいっこうに代金が支払らわれないというトラブルです。

このような場合、売主側は、買い主に代金の支払いを請求し、任意での支払いに応じない場合には、裁判で支払うよう求める必要があります。もっとも、売掛金を支払えない会社がめぼしい財産を持っている可能性はあまり高くないため、回収ができないということも少なくありません。 売主側としても、支払われるべき代金が支払われていない状態で更に取引をする場合には、代金を一部でも支払わない場合にはその後の取引には応じないなどの対応を行う必要があると思います。とはいえ、数カ月後に代金支払いの目処が立つので先に商品を納品してほしいなどといった要請もあるかもしれません。その際には、相手が代金を支払われないリスクがある前提で対策をする必要があります。

具体的には、連帯保証人をつけてもらう。物的担保(不動産に抵当権を設定するなど)を求める。後々強制執行をする対象(預金口座、取引先等)の情報を教えてもらうなどが考えられます。 当事務所にご相談いただく経営者の方の多くは、ずっと取引を続けていたがいっこうに支払ってくれないというタイミングでご来所されるのですが、その時点では、売掛金を回収できない可能性のほうが高いため、可能であれば、上記のように一部未払が発生している時点などで、ご相談いただくことで、連帯保証契約や強制執行ができる情報を聞くようアドバイスするなど、適切なサポートができると思います。

また、当事務所の「フレックス顧問®契約」にて顧問契約をしていただいている方の場合には、個別の売掛金回収についても、毎月の顧問料以外に別途弁護士費用を頂戴しませんので、弁護費用を考慮して依頼を躊躇することがなくなります。売掛金だけでなく、日頃から相談したいことがあるなどという場合にはぜひ、顧問契約をご検討ください。

 

執筆弁護士紹介 後藤祐太郎

 

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2023.02.21

スポーツと損害賠償

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以前、サッカーと法律の関係について書いたブログの中で、サッカーと損害賠償の関係について、管理責任などが問題となって損害賠償が発生することがあるとご説明させていただきましたが、管理責任などが問題となって、発生する損害賠償事件はサッカーだけではなく、スポーツ全般で問題となります。 以前の記事はこちらから:サッカーと法律

そんな中、スポーツと損害賠償についての判決が最近出されたのでご紹介させていただきます。

スポーツと損害賠償 

事件は、石川県の県立高校の野球部で発生しました。
その高校の野球部の生徒が、川に落ちたホームランボールを拾うために、ガードレールを乗り越えて、岸辺にいったところ、足を滑らせて川に落ちてしまい、死亡してしまいました。

死亡してしまった生徒のご両親が、川に落ちたボールの回収をやめさせたりしていれば、事故は起きなかったとして、野球部の監督らに管理責任(注意義務違反)があると主張し、県に対し、慰謝料などの損害賠償を請求したのがこの事件です。

そして、金沢地方裁判所は、ガードレールを乗り越えてボールを回収しないように指導していなかったことを認め、そのような指導をし、注意義務を尽くしていれば事故を回避できたとして、監督らの注意義務違反を認め、かつ、注意義務違反と死亡という結果との間には因果関係が認められると判断しました。

スポーツと損害賠償

他方で、監督らにおいて、ボールの回収を諦めた部員を叱責するなどしたことはなく、事故当時の状況について、危険を冒してまでボールを回収しなければならない状況ではなかったとして、ガードレールを乗り越えてボールを回収しようとした部員にも一定の落ち度(過失)があると判断し、損害額の3割の額を過失相殺として減額した金額を認定しました。

自分も、子どもが生まれ、もう少しで習い事等に通わせてみようと思っていますが、このような事例を見ても、安全面がしっかり確保されているところかどうかを判断するのは難しいと感じました。
スポーツの監督や指導をする側は、単にスポーツを教えればよいというわけではなく、競技する人や周りの人の安全も確保する必要があるということだと思います。

 

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2023.02.07

チョコをあげたら犯罪に!?

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2月に入るとバレンタインの季節になりますね。 小学生のころ、普段何にも意識していなかったクラスの女の子からチョコをもらい、あとで母親伝いで、その子がチョコをあげたのは、私と別のクラスの男子の2人だけであると聞いて急に意識してしまったというような淡い思い出があったような気がしています(何十年も前の話で美化されているかもしれません)。

チョコをあげたら犯罪に!?

1月の下旬から百貨店でもバレンタインフェアが開催されており、いろんなチョコが売っているのを見ると、自分でも欲しくなってしまいます(最近では、他の人にあげるという目的よりも自分へのご褒美として高いチョコレートを買うという方も多いそうです。)。

そんなバレンタインのチョコレートですが、チョコレートをあげることで犯罪になってしまう恐れがあるケースをご紹介します。

過去に実際にニュースになっていたのですが、とある市議会議員が、後援者の家を訪問し、自身の活動(近況)を報告する際に、約500円のチョコレートを配った行為が、公職選挙法が禁止する政治家の寄付行為に該当するのではないかと警察が議員に対し、事情確認を行ったという事件があったそうです。

公職選挙法においてのバレンタインチョコ

公職選挙法は、選挙の中立性、公正性を確保するために、政治家の選挙区内での寄付行為を禁じており、違反した場合には罰則も設けられています。
寄付行為に該当する行為として、総務省がホームページであげている行為としては、地域の運動会やスポーツ大会への差し入れ、病気見舞い、入学祝、卒業祝い等が該当するとされています(あくまでも選挙区内の人このような行為をすることを禁じており、選挙区外への人などへの行為は禁じられていません)。

以前、大臣が有権者にうちわを配ったことでも問題となったように、選挙の中立性や公正性を確保することは非常に重要なので、こんなことでもというような行為も寄付行為に該当することになります。

公職選挙法では、有権者から政治家に対し、寄付行為を要求することも禁じています。
したがって、先ほどのニュースのように、意中の議員に対してチョコレートを要求する行為も禁じられた行為になる恐れがあると思うとなんだか切ないなと思ってしまいます。

 

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2023.01.24

コンセントで勝手に充電をしたら犯罪??

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今や、多くの人が持っているスマートフォンをはじめとする携帯電話ですが、便利な半面、充電が切れてしまうと使い物にならなくなってしまいます。
わたしも仕事柄スマートフォンを使うため、モバイルバッテリーを持っているのですが、肝心な時にモバイルバッテリーの充電が切れてしまい焦ったりしてしまいます。

先日、電車内の業務用コンセントで充電し続けた人が駅員から注意される動画が拡散されているというニュースを目にしました。
皆さんも外出先などでコンセントを見つけて充電するため使用する人も少なくないと思いますが、ケースによってはこの行為が犯罪になる可能性もあります。

刑法第235条は、
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
と記載されており、窃盗罪について規定されています。
そして、刑法第245条では「この章の罪については、電気は、財物とみなす。」
と規定されており、電気も財物とみなされ、電気を盗む行為は電気窃盗として窃盗罪で処罰されることになります。

コンセントで勝手に充電をしたら犯罪??

もっとも、窃盗罪として犯罪が成立するためには、「窃取」に該当する行為を行う必要があり、簡単にいうと、占有している人の意思に反して、物の占有を移す行為を行った場合は「窃取」にあたります。

したがって、カフェのテーブルなどに設置されているコンセントはあくまでもカフェの利用者のために使用することが許容されているものであるため、意思に反する占有移転とはならず、窃盗罪は成立しません。
これに対し、先ほどの電車の業務用のコンセントについては、乗客が利用することを前提としたものではないため(車両の清掃等に使用する目的であると考えるべきでしょう。)、窃盗罪が成立すると考えられます。

コンセントの無断使用については、すぐに逮捕される等事件化するケースは多くないと思いますが、再三禁止しているにもかかわらず使用を継続していた場合などは逮捕されるリスクもあると思います。
現に、コンビニエンスストアの店の外にあるコンセントに無断で炊飯器をつないで米を炊くなどの調理をしていた人が電気窃盗で逮捕されたことがあるそうです。

コンセントで勝手に充電をしたら犯罪??

ちょっとコンセントを借りるだけという安易な気持ちで無断使用してしまいたくなる気持ちはわからなくはないですが、電気代も発生するものですし、みんなが使用してしまうと停電などのリスクもあります。
無断で使用するのではなく、使ってよいかをあらかじめ確認するなどして、マナーのある対応を心がけたいですね。

 

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2023.01.18

激甚災害指定とは?

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ここ数年、九州のみならず、全国で台風や線状降水帯等による大雨で、甚大な被害が出てしまう天災が多数発生しています。
ニュースを見ていると「100年に1度の・・・」という見出しを目にすることもあり、異常気象が起きることが日常的になってしまっているようでとても怖く感じています。

令和4年10月28日に、日本政府は九州や静岡県で発生した台風14号・15号の大雨災害について「激甚災害」に指定することを閣議で決定したと発表されました。

この激甚災害とは、「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(激甚災害法)において定められた、地震・台風・豪雨などによる、著しく被災自治体への財政援助や被災者への助成がとくに必要となる大災害のことをいいます。

激甚災害指定とは? 

激甚災害には、地域などをくぎらずに災害そのものを指定する「激甚災害指定基準による指定(本激)」と、局地的豪雨などを市町村単位で指定する「局地激甚災害指定基準による指定(局激)」の2種類があります。

激甚災害に指定されると、地方公共団体の復旧事業における、国庫補助率の嵩上げ等が行われ、公共施設の復旧を助成することになります。
また、天災によって被害を受けた農林漁業者や、中小企業に対しても、中小企業信用保険法による災害関係保証や、特別の貸し付けがされたり、貸付金の償還期間が優遇される等の特別の財政助成措置が講じられることになります。

このように、激甚災害に指定されると、中小企業の皆さま等にも大きくかかわってくることになります。
先ほど述べた通り、異常気象が日常的に発生するようになっているため、企業としてもそういった異常気象によるリスクも考えて企業活動を行っていかなければならないのではないかと感じています。

 

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2022.12.14

持ち帰りお断りは可能?

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皆さんは、飲食店で食事をした際、食べ残した物を持ち帰ることはありますか?
私の家では、母や父が率先して持ち帰ることが多く、小さい頃は家でも食べることができると喜んだものですが、思春期のころは恥ずかしく思い、やめてほしかった記憶があります。

では、食べ残したものを持ち帰ることについて、お店が拒否した場合には認められるのでしょうか。

これについて、明確な判例や法律があるわけではないです。
例えば、飲食店での食事において売買契約であると捉え、注文の時点で料理の所有権がお客側に移っていると考えると、持ち帰りを認めなければならないということになりそうですが、あまりそのような考えは一般的ではないでしょう。 

お店側が許可した場合に、持ち帰りが認められるのが一般的ではないでしょうか。
しかし、テイクアウトを行っている飲食店が持ち帰りを認めないということは、矛盾が生じる恐れがあるのではないかと思います。
こうしたお店で提供した飲食物の持ち帰りについて、法律で何か規制がされているかというと、食品の安全について規律した食品衛生法には何ら規制されていないため、あくまでもお店の自主ルールに任されていることになります。

持ち帰りお断りは可能?

とあるお店では、全て自己責任、すなわち持ち帰った食品で、万が一食中毒などが起こったとしても一切お客に対して店側が責任を追わないということを約束させたうえで、認めているというお店もあるようです。
しかし、お客との間で一切責任を負わないと約束したとしても、食中毒等が出てしまった場合には、食品衛生法上、お店は一切責任を負わないということにはならないということになるため、持ち帰りを認めるか否かはとても慎重になる必要があります。

お店の対応として何が正解というものはありませんが、食中毒のリスクが生じない食品についてはテイクアウトを認めるという選択か、リスクを防ぐため一律持ち帰りを禁じるというのもいいかもしれません。
そして、トラブルを防ぐためにも持ち帰りを認めているのか、禁じているのかについては、あらかじめお客さんにもわかるように掲示しておいた方がいいと思います。

持ち帰りお断りは可能?

少し話は変わりますが、通常の飲食店ではなくバイキング等の食べ放題のお店で料理を持ち帰ることは認められるのでしょうか。

これについては、食べ放題やバイキングはあくまでそのお店の中であれば好きなだけ食べてもよいというものであり、好きなだけ持ち帰ってよいという内容ではありません(それが認められるのであれば、大量の容器を持っていきいくらでも持ち帰ることができることになってしまい、皆がそれをしだしたらお店はつぶれてしまうでしょう。)。
したがって、バイキング等の食べ放題で店に無断で料理を持ち帰ってしまうことは、刑法235条の窃盗罪に該当する恐れがあるため、くれぐれも控えた方がいいでしょう。

食品ロスを防ぐためにも、食べ放題でもそうでなくても自分たちが食べきれることができる量を注文するよう心がけたいですね。

 

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2022.12.05

サッカーと法律

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絶賛カタールワールドカップが盛り上がっています。
死のグループと言われたグループEに入った日本が、ドイツとスペインに勝ってグループステージを突破したことで、初のベスト8へと期待が高まっています。
日本対スペインは試合開始時間が午前4時でしたが、眠い中、妻と2人で見た甲斐がある試合でした。

決勝トーナメントは午前0時、もしくは午前4時から試合を開始するので、観戦するかどうか迷っているところです(このコラムも、決勝トーナメントのフランス対ポーランド戦を見ながら書いています。)。

サッカーと法律

法律事務所のコラムですので、今回もサッカーと法律にまつわるお話をしたいと思います。
まず、先ほどのワールドカップに関連する法律のご紹介です。

日本でもワールドカップに関する法律があります。 2002年の日韓ワールドカップが開催される際に、「平成十四年ワールドカップサッカー大会特別措置法」という法律が制定されました。
この法律は、日韓ワールドカップの円滑な準備を行うために制定された法律であり、お年玉年賀はがきの収益の一部などを大会運営のために寄付することができることなどが規定されている他、大会運営に従事する人や審判への報酬について所得税を課さないこと等が規定されています。

また、サッカーと関連する法律の分野としては、ケガや死亡事故と損害賠償の問題があります。
よくあるケースは、ゴールが固定されておらず、倒れたゴールの下敷きになってしまった場合の施設管理者の損害賠償責任や、熱中症で過酷な練習をさせた監督の賠償責任など、サッカーと直接関連する損害賠償というよりは、管理責任等が問題になることが多いです。

サッカーと法律

そもそも、サッカーは、殴りあったりなどというスポーツではないものの、選手同士が激しくぶつかり合うことが自然に起きるスポーツですので、試合中等にけがをした場合であっても、あくまでもプレーの範囲内のものであれば、損害賠償を請求することはできないケースが多いです。

もっともプレイ中であっても、例えば、ボールを持っていない選手に悪質な暴力を行ったなど、プレーの範囲内の行為であると言えないような悪質な行為を行った場合には、損害賠償や刑事責任が生じる可能性もあると考えられます。

このようなスポーツの場面での損害賠償については、さまざまスポーツで裁判になっており、機会があればご紹介させていただこうと思います。

 

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2022.11.15

投げ銭、スパチャが犯罪に??

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皆さんはYouTubeやTikTok等の動画配信サービスは利用されていますか?
私は、YouTubeで格闘技の映像やミュージックビデオ等をよく見るのですが、スマートフォンで見ていると、息子に取られてしまいます。
息子は今、仮面ライダーにドはまりしているので、おすすめ動画に頻繁に仮面ライダーの動画が上がってきます。

ご存じの方も多い方思いますが、動画の配信者に対し、視聴者が任意の金額を設定して投げ銭を送ることができるサービスがあります。
いわゆるスパチャ(スーパーチャット)などの投げ銭機能です。

投げ銭、スパチャが犯罪に??

動画の配信者としては、再生回数などに応じた収入に加えて、直接金銭を得ることができ、他方、視聴者としては、推している配信者へ直接支援をすることができ(多くの配信者が、投げ銭がされた際、投げ銭をした人へ感謝の言葉を述べているものが多く、そういった点でもファンが配信者を身近に感じることができ、投げ銭が多く利用される理由かもしれません。)、双方にとっていい制度であると思います。

しかし、そんな投げ銭、スパチャを受けることが犯罪になってしまう恐れがあるのです。
軽犯罪法1条第22号により、「こじきをし、又はこじきをさせた者」は拘留又は過料に処せられることになります。
この軽犯罪法上の「こじき」とは「不特定の他人の同情に訴えて、自分や扶養する家族の生活のため、無償またはほとんど無償に近い対価を提供して、必要な金銭や品物を求める行為で反復継続されるもの」をいいます。

例えば、動画を配信し、「生活が苦しい」「食うものにも困っているのでみんなからの投げ銭が欲しい」「こんな生活をかわいそうだと思ったらスパチャしてほしい」などと発言し、投げ銭等を集め続けていた場合には、軽犯罪法違反という犯罪で処罰される可能性があるということです。(実際に物乞いをする様子を動画配信した人が書類送検された事例もあるようです。)

投げ銭、スパチャが犯罪に??

もっとも、上記の軽犯罪法に反する行為になってしまうのは、「同情に訴えて」「生活のため」「無償で」という要件があります。
単に欲しいものを伝える行為(ほしいものリストをアップする行為)は同情に訴えるものではなく要件を満たしません。

また、一定の活動のための支援やお布施等は「生活のため」という要件を満しませんし、大道芸人や路上パフォーマンスのおひねりや、クラウドファンディング等や、対価の提供があるため、これも軽犯罪法の要件を満たすことはありません。
したがって、多くの投げ銭は軽犯罪法に抵触することはないと思います。

そもそも、憲法上、国民には勤労の義務が定められており、働くことができる人は働くことが求められており、物乞い行為が許されてしまうと、働かず物乞いを行う人が増えてしまうため、軽犯罪法で禁止されています。

有名なYouTuber等が多くの投げ銭をもらっていたりすると、単純に「いいなぁ」と思ってしまいますが、YouTuberの方もそれだけ多くの投げ銭をもらうためにいろいろなコンテンツを考え、配信しているのを見ると、何もせずに楽して儲けるみたいなことはできないのだなと思い、自分はこつこつ仕事を頑張ろうと思いました。

 

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