進むカスハラ対策
以前、ブログで現在は様々なハラスメントが存在することをご紹介させていただきましたが、今回はその中でも紹介したカスタマーハラスメント、略して「カスハラ」についてご説明させていただきます。
以前の記事はこちらから:なんでもハラスメント?~現代のハラスメントの問題点~
最近のニュースで、各企業において、カスハラに対して毅然とした対応をとることを表明しているという情報に触れました。具体的には、JR東日本では、カスハラが行われた場合、乗客への対応はしない。悪質と判断した場合には警察や弁護士などに相談して、厳正に対処するという方針をホームページにも掲載しており、会社としてカスハラについては対応しないという毅然とした対応を示しています。
そもそも「カスハラ」とはいったいどういった行為を指すのでしょうか。この点、厚生労働省から出されている「カスタマーハラスメント対策マニュアル」では、カスハラの定義として「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業関係が害されるもの」と定義されており、簡単に言うと、理不尽なクレーム言動がカスハラに該当するとされています。
そして、カスハラに該当する行為の具体例としては、以下のような行為が挙げられています。
(1)要求の内容が妥当性を欠いているケース
- ・提供する商品・サービスに瑕疵(傷や欠点など)や過失が認められないにもかかわらず何かを要求する行為
- ・要求内容が商品やサービスに関係ないものであること
(2)要求実現のための手段・態様が社会通念上不相当な言動の場合
2-1.内容如何にかかわらずカスハラに該当するもの
- ・暴行や傷害などの身体的な攻撃
- ・脅迫・中傷・名誉毀損などの精神的な攻撃
- ・威圧的な言動
- ・差別的・性的な言動
- ・継続的・執拗な言動
- ・土下座の要求
- ・不退去や居座りなどの拘束的な行動
- ・従業員への個人的な攻撃や要求
2-2.内容の妥当性に照らして不相当に該当する場合がある行為
- ・商品交換の要求
- ・金銭補償の要求
- ・謝罪の要求
そして、このようなカスハラ行為について、企業が放置していたり適切な対応を取らない場合、従業員のモチベーションの低下にとどまらず、カスハラにより、従業員の心身を害するようになってしまった場合には、安全配慮義務違反等で損害賠償の対象となってしまう可能性もあります。企業が、毅然とした対応を表明しているのも、会社として従業員を守る姿勢であると表明することで、カスハラ行為自体を未然に防ぐとともに、安全配慮義務を尽くしているというアピールにもなるからであると思います。
しかし、気を付けなければいけないのは、全てのクレームが問題というわけではありません。会社の商品やサービスに欠陥やミスがあった際に、正当な方法でクレームをいう こと自体はむしろ顧客の権利であり、それすらも禁じられるわけではありません。
したがって、適正なクレームとそうでないカスハラを区別する判断が必要になりますが、その判断については、顧客の要求内容に妥当性があるか、要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当かという点を基準に判断していくことになります。
具体的な場面において、カスハラに該当するか否か判断に迷ってしまう場合もあると思います。そうした際に会社において顧問弁護士と契約していれば、その場ですぐに判断するのではなく「弊社が契約している顧問弁護士に相談した上で後日対応したいと思います」と回答することも可能になると思います。また、顧問弁護士がいるということを表明するだけでも、カスハラ行為を未然に防ぐこともできると思います。
当事務所は多数の顧問契約を締結いただいておりますので、カスハラに該当するか、どのように対処すればよいかという点について経営者の皆様に適切にアドバイスができると自負しております。当事務所の顧問契約は「フレックス顧問契約」といって、お支払いいただいた顧問料が無駄にならない顧問契約であるため、今回この記事を見られた経営者の皆様は是非一度ご検討ください。
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フレックス顧問についてはこちらから:フレックス顧問契約
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これは違法ではないのですか!?~刑事法と民事法~
当事務所では、企業様だけではなく、個人の皆様も含め、様々な方が相談に来ていただいております。
ご相談に来られる方のなかで、「相手方が〇〇なのは違法なのではないですか?」と仰られる方が多いと感じます。
ご相談に来られる方に対しては、ご説明させていただいているのですが、今回は、この「違法」という言葉について、場面などを分けてご説明させていただきます。
まず、辞書的な意味の「違法」とは、文字通り、「法、法律に背くこと」を言います。
したがって、「違法」という言葉をきちんと説明するためには、この「法律」の中身を検討する必要があります。
1.刑事法上の違法
法律の中には、違反すると、刑事罰を課されることが規定されている法律があり、これを「刑罰法規」といいます。
刑法などが一般的ですが、それ以外にも労働基準法の一部なども刑罰が課せられる刑罰法規が含まれています。
このように、刑罰法規に反する行為をした場合には、刑事法上違法な行為ということになります。
2.民事法上の違法
上記の刑事法上の違法な行為とは別に、民事法上違法な行為として定められている行為があります。
民法709条では、
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
と規定されており、不法行為に基づく損害賠償請求について定めています。
このような不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するためには、相手の行為が違法な行為である必要があり、この場合の違法行為とは民事法上の違法な行為ということになります。
3.2つの違い
この刑事法上の違法な行為と民事法上の違法な行為とは同じように見えますが、違う場合があります。
例えば、人を殴ってケガをさせた場合、その行為は傷害罪(刑法204条)に該当する行為として刑事法上違法な行為に該当し、かつ、不法行為に基づく損害賠償が発生する行為であり民事法上も違法な行為に該当します。
これとは異なり、例えば、既婚者の人と、不貞行為を行ってしまった場合、不法行為(不貞行為)に該当するので、民事法上の違法となることは当然です。
しかし、不貞行為は、現在の法律では犯罪ではないため(戦前の日本の法律では、「姦通罪)」として犯罪行為でした)、刑事法上の違法な行為には該当しません。
4.民事法上の義務違反行為
さらに、民事法上の義務違反行為というものが存在します。
例えば、お金を借りているのに返さない、請負代金を支払う義務があるのに支払わない、物を買って、代金を受け取ったのに商品を引き渡さないというように民事法で認められる契約法上の義務に反する行為がそれに該当します。
この民事法上の義務違反行為についても例えば、給料を一切払わないという場合には、労働基準法の刑罰法規にも反する行為であるため、刑事法上も違法ですが、貸したお金を返さないという行為は、刑事法上違法な行為ではありません(そもそもお金を返す意思がないのに借りたという場合には、詐欺罪として犯罪行為に該当する場合もあります。)。
上記の「〇〇は違法ではないのですか!?」という場合、この民事法上の義務違反行為をしている相手が犯罪に該当するのではないかという質問であることは多いです。
したがって、この場合の回答としては「契約上の義務には反しているのですが、犯罪ではないのですよ」と異様な回答になると思います。
5.最後に
刑事法上の違法な行為について定める刑罰法規については、その目的が刑罰を定めることで、犯罪行為をなくし、社会の秩序を維持することにあります。
他方、民事法上の違法な行為や、民事法上の義務などを規定する民事法(民法、商法等)は、その目的が、私人間の紛争や取引ルールを定めることで、紛争を解決するということなどがあります。 このように、それぞれの法律の目的が異なるため、違法の概念が異なってくることになります。
このように、刑事法上の違法な行為、民事法上の違法な行為、民事法上の義務違反行為と異なるものが同じような違法、違反というような言葉でひとくくりにされているため、分かりづらくなっているのではないかと思います。
説明する私が、こうした理屈を理解していないと、ご相談に来られる方にもきちんと理解してもらうことはできないと思いますので、日々研鑽を怠らないようにしたいと思います。
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空港の門限とは?
皆さんは飛行機に乗る機会はありますか?私は、司法修習生のころに、九州で1人暮らしをしており、連休や年末年始に実家の東京に帰るときに頻繁に飛行機を使っていました。今は、子どもができ、両親も九州に移住してきたため、飛行機を使う機会がめっきり減ってしまいました。今度、家族で旅行に行く際に久しぶりに飛行機に乗るのですが、上の子も赤ちゃんの頃に飛行機に乗ったきりだし、下の子は初めて飛行機に乗るので、泣いたりしないか心配です。
飛行機は空港から出発し目的地の空港に着陸するのですが、その空港に「門限」というものがあるのをご存じでしょうか。私は先日ニュースで見て知りました。
ニュースでは、フィリピン発の飛行機が、福岡空港の門限である午後10時までに着陸することができず、関西空港に着陸したというものでした。
ニュースをみて気になって調べてみたのですが、空港によっては、24時間対応するだけの需要がないところや、騒音など周辺環境への影響などを理由として、夜間の空港運用や離着陸を規制しており、このことを「門限」と読んでいるようです(英語ではカーフュー(curfew)というそうです。)
そして、福岡空港では、空港法などによって規定することが求められている「福岡空港供用規程」というものにより、離着陸時間については午前7時から午後10時までとすることが規定されています。 おそらく福岡空港については、非常に都心部に近い場所に空港が設置されているため、騒音等に考慮して、門限が設定されているのでしょう。私も九州に来た時に、東京で羽田空港を使う時と比べて本当に簡単に空港にアクセスすることができとても驚きました。
この空港の門限は、すべての空港にあるわけではなく、例えば成田国際空港や羽田空港(東京国際空港)や関西空港等の拠点空港の一部では24時間離着陸が可能となっています。
他方で、地方の空港では、やはり24時間対応にする需要などが乏しいのか、福岡空港のように拠点空港とされていても、門限が設定されている空港がほとんどでした。
今までは、空港の門限など一切意識したことはなかったのですが、今回のニュースをきっかけに、夜遅い便などの場合トラブルで午後10時までに着陸できないリスクを考えると、帰りの便についてはなるべく早い時間にしておいた方がいいのかもしれないなと思いました。
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もうすぐ変わる新紙幣
6月といえば、梅雨でじめじめして気分もあまり上がりませんが、ジューンブライドということで、結婚式シーズンでもあります。
私も、もう7年も前になりますが、6月に福岡で結婚式をしました。雨が降らないかと心配でしたが、当日は運良く晴れてくれて、無事式を行えたのが、懐かしいです。
そんな結婚式ですが、招待されて出席する場合にはご祝儀を持参することになります。ご祝儀を持参する際には新札をご祝儀袋に入れて渡すことがマナーと言われています。この新札については、銀行などで古い紙幣と交換することで取得出来たりするのですが、先日、ニュースで、銀行などで新札への両替の対応を行っていないとの回答がなされ新札を取得することができないとの記事に触れました。
理由としては、新紙幣の発行が迫っているので、通常よりも現行の新札の発注を減らしているとのことでした。
ニュースなどで再三取り上げられているので皆さんご存じかと思いますが、令和6年7月3日より新紙幣の発行が開始されます。
この新紙幣の発行についてですが、日本銀行法という日本銀行の業務や、日本銀行券(紙幣)の発行等について規定する法律の第47条2項で
「日本銀行券の様式は、財務大臣が定めこれを公示する」
と規定されています。今回の新紙幣の様式、財務省告示という形で発表されました。 新壱万円券は表が渋沢栄一、裏が東京駅(丸の内駅舎)、新五千円券は表が津田梅子、裏が藤の花、新千円券は表が北里柴三郎、裏が富嶽三十六景となっています。
新紙幣に様式を変更する理由としては、偽造防止のためであり、ある程度経過すると、偽造リスクが高まるといわれており、今までも20年に1回の頻度で新札が発行されてきています(今回の新札については肖像が三次元に見えて開店する「ホログラム」の技術採用されているようです)。
偽造防止のために新札への変更の必要性は高いと思いますが、券売機を採用している飲食店などは、新紙幣に対応するために、券売機の買い替えなど多大な出費を余儀なくされることになってしまいます。 7月上旬から順次発行されるため、はじめのうちは、新紙幣が見慣れなくてとまどってしまうかもしれませんが、2000円札が発行された際も新しい紙幣を目にしたりするとすこしテンションが上がった記憶があるので、今から新紙幣を目にするのが楽しみです。
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免許の自主返納後運転したくなったら??弁護士が解説
私は、東京出身で、司法試験合格後の司法修習がきっかけで、福岡で生活をしているのですが、東京に住んでいるときは、基本移動手段が電車であったため免許はもっていましたが、ほとんど運転していませんでした。今では、毎日の通勤や裁判所への移動も全て車で移動しているのですが、一度自動車通勤を覚えてしまうと、東京時代の満員電車に揺られての通学などは二度とごめんだなと思ってしまいます。
移動に便利な自動車ですが、ひとたび事故などが起きると人命が簡単に失われてしまうものであり、特に最近は、高齢者の運転で人がなくなってしまう悲惨な事故も増えています。そうした悲しいニュースは見るに堪えないですが、そうした事故の報道の影響からか、近年、高齢の方の運転免許証の自主返納が増えてきているそうです。
免許の自主返納についてのニュースを見た際、仮に、自主返納した後に、やっぱり車の運転が必要になった場合にはどうすればよいのかと気になったので調べてみました。
まず、一般的には「自主返納」という言葉が流行っていますが、法律上は、住所地を管轄する公安委員会に免許の取り消しを申請することになります(道路交通法104条の4)。そして、申請により、免許が取り消された場合、免許証を返納しなければならないと道路交通法に規定されているため(107条)、結果的に、免許証を返納することになります。
そして、自主返納したけどやっぱり車を運転したいと気持ちが変わった場合であっても、免許は取消しとなっているため、免許証を返してもらうことはできません。もっとも、交通違反を起こしての免許取消しではないため、自主返納した後に再度、免許の取得をすることは可能です。その場合には、初めて免許を取得したときと同じように、基本的には教習所に通って、試験に合格する必要があります。
このように、一度免許を自主返納してしまうと、再度免許を取得するためには、時間と費用がかかってしまうので、自主返納される場合には、二度と運転しないという決意のもとしたほうが良さそうですね。
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祝日ってどんな日?
皆さんはゴールデンウィークはどのように過ごされましたでしょうか?
今年は、中日の4月30日~5月2日も休みにすると、最大で11連休となる方もいるようですが、当事務所は暦通り営業しており、私も、連休の前半は妻の実家に、連休の後半は私の実家に子どもたちを連れて行ってしこたま遊ばせて連休が終わってしまいました。自分が幼稚園のころにゴールデンウィーク何していたかという記憶はほとんど残っていないので、子どもたちも大きくなって覚えてくれないだろうなとは思いますが、楽しそうに過ごしていたので、まぁ、よかったのかなと思います。
このゴールデンウィークは、「憲法記念日」「みどりの日」「こどもの日」などの祝日が続き連休となることからそのように名づけられていますが、この、祝日はどのような日として定められているのかご存じでしょうか?
実は、「国民の祝日に関する法律」というものがあります。この法律は全部で条文が3条しかいない法律ですので、お時間あられる方は是非一度ネットなどで、見られてみてください。
第1条では、「国民の祝日」の定義(「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞつて祝い、感謝し、又は記念する日」)が記載され、最後の第3条では、振替休日についての記載がされています。
そして、この法律の第2条に、全ての国民の休日の名称と、どういった日であるのかという説明が記載されています。
たとえば、「元日」は、「年のはじめを祝う。」とされており、「秋分の日」は 「祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ。」とされています(お盆にそういったことをするイメージがあったので、秋分の日がそういう日であったことは今回初めて知りました。)。また、4月29日の「昭和の日」については、「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。」とされています。私もギリギリ昭和生まれなのですが、そのうち「平成の日」という祝日もできたりするのでしょうか。
なお、先ほどのゴールデンウィーク中にある「こどもの日」は、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。」と記載されています。なぜ、父親に対する感謝が記載されていないのか少し、モヤモヤしてしまいますが、ウチの長男はとてもパパっ子でもあり、子どもの日にも息子と娘にケーキを買ってあげたら、ちゃんと感謝してくれたので、自分の子には感謝してもらえばいいかと思った連休でした。
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ホテルのキャンセル料について
皆さんは旅行で泊まる際のホテルはどういった基準で選ばれますか?
私も妻も、旅行の際、観光で外を回るよりも部屋でのんびりしたい派のため、子どもが産まれるまでは、部屋重視で探していました。
しかし、子どもが2人もいるとずっと部屋でじっとしているわけにはいかないので、近くに遊ぶところはないかや、遊ぶところが備わったホテルかなど子ども目線で宿を探すようになりました。
ホテルを予約する際に、注意して見るのが、キャンセル料が発生する日がいつかという点です。
小さい子どもがいるため、直前に高熱になった場合に備え、いつからキャンセル料が発生するのかという点については、子どもがうまれてからしっかり確認するようになりました。
先日、とあるインフルエンサーがSNSで、「ホテルのキャンセル料金を払わなくする方法」というタイトルで動画を投稿したことが物議を醸しているとのニュースを目にしました。
そのニュースによると、キャンセル料が発生する日になったら、宿に連絡して、宿泊日予定日をキャンセル料が発生しない日まで後ろ倒しにして(要は、宿泊日を変更して)、その後、キャンセルを行うという方法でした。
まず、キャンセル料については、予約する際のページなどに、宿泊予定日の7日前の時点では20%、5日前の時点では30%、3日前の時点では50%、当日や無断キャンセルの場合には100%というように段階を追って発生するという仕組みになっていることが多いです。
このような規定(「キャンセルポリシー」といいます。)は、宿泊業者側が、キャンセルにより通常発生する損害の賠償を規定したものであるとして、消費者契約法上有効な契約となっています。
そして、キャンセル料が発生する期間に、宿泊予定日を変更するという行為は、もとの契約をキャンセルし、新たに宿泊予約をするという行為ですので、法律上、前の契約をキャンセルした時点で、キャンセル料が発生することになります。予約した人は宿にキャンセル料を支払う義務が発生します。
したがって、上記インフルエンサーが動画で紹介している方法は、宿側が、宿泊日を変更するならキャンセル料を支払わないでよいという善意での対応を逆手に取ったものです。(背景としてコロナウイルスが原因で宿泊を延期したいという申出をした際に宿側の善意でキャンセル料を請求していないというようなことから、変更にすればキャンセル料を払わなくて済むと考えたのではないかとニュース出は記載されていました。)。
現に、ニュースでは、この動画を見た、ある宿が、日程変更の場合には、必ずキャンセル料を請求するという厳格な運用にする方針であると記載されていました。
台風等の天災などでどうしてもいけなくなってしまったという場合もあり、そのような場合には、宿も、キャンセル料を請求することはかわいそうということで、今までは柔軟に対応していただいていたということも多いと思います。
しかし、あくまでのそのような対応は宿側の善意です。そういったことが続くことにより、宿側もどのような理由であっても絶対にキャンセル料を請求するというような対応にならざるを得なくなってしまうかもしれないため、それを逆手にとってキャンセル料を不当に免れるような行為は、絶対に控えてもらいたいと感じました。
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子どもがお店の物を壊してしまったら?
小さいお子さんがいらっしゃるご家庭だと、買い物の際、お子さんが、お店の食べ物を勝手に触ってしまったりしないかヒヤヒヤしてしまうのではないでしょうか。 私にも5歳と2歳の子どもがいるのですが、家族でパン屋に行った際(最近家族でパン屋巡りにハマっています)などには、子どもたちが陳列されているパンを勝手に取らないかいつもヒヤヒヤしながら見守っています。幸いにして、子どもが食べ物を触ったりしたことは今までないのですが、もし子どもが触ってしまい、食べ物がダメになってしまった場合や、お店の物を壊してしまった場合には、法的にはどうなるのでしょうか。
子どもの責任?親の責任?
まず、お店の物を壊してしまった場合には、民法709条に基づき、物の価格について、賠償する義務を負います。もっとも、民法712条では、
「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」
と規定されているので、未成年者かつ、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力といいます。)がない場合には、お子さん自身が責任を負うことはありません。その代わり、民法714条により、監督義務者(お子さんである場合には親権者である親など)が賠償する義務を負うことになります。 この責任能力については、未成年者ことに個別具体的に判断されるのですが、一般的には、11~12歳までは責任無能力であると判断されることケースが多いです。 したがって、小学校高学年くらいまでのお子さんの場合、親に支払う義務が発生し、中学生などになると、未成年者であるお子さん自身に賠償義務が発生することになります。 もっとも、現実には、お子さん自身が資力が無い場合も多いためいずれの場合でも親が支払うということになると思います。
払わなくてよいのはお店側の善意
こういった、お子さんのトラブルの際に、親が「子どものしたことなので」といって、支払いを免れようとする場合もあるかもしれませんが、上記のようにお店側は賠償請求することが出来る権利があります。したがって、「子どものしたことなので」というのはあくまでもお店側の善意として発せられるべき発言であって、親としてはきちんとお店に謝罪して、弁償する提案をするべきであると思います。 また、お子さんに対しても、親がきちんと謝罪して、弁償する姿を見せることで、自分がしてしまったことがいけないことであると実感し、反省するようになるのではないかと思います。 自分も親となって、子どもがトラブルを起こさないということが一番ではありますが、もし、お店に迷惑をかけてしまったような場合には、親としてきちんと責任をとることも大事なのではないかなと感じました。
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店内撮影禁止に違反したらどうなる??
皆さんは外食に行かれる際には、口コミサイトやSNSを参考にされたりするでしょうか?? 私の家族では、最近、うどんにとてもはまっており、休みの前の日などには、どのうどん屋に食べに行こうかと妻と話して、色々な口コミサイトやSNSの情報を調べたりしています。その際、一番重視しているのは口コミの内容ではなく、投稿されている料理の写真を見て、おいしそうか、食べてみたいかというのを決めているように思います。また、小さい子どもがいるため、店内の写真などをみて、カウンターだけの店ではないかなどを調べています。
このように、お店を決めるうえで、料理の写真等はとても重要であるため、SNSで写真や動画をアップしていただいている方にはとても感謝なのですが、最近お店に行くと、「店内写真撮影禁止」や撮影やSNSの投稿の関するお願いなどの文書が掲示されているお店もよく見かけるようになりました。
では、この「写真撮影禁止」に違反して撮影を行った場合法的にはどのような問題があるのでしょうか。
まず、店内や料理を撮影すること自体で、何ら犯罪が成立することはありません(しかし、立ち入り禁止の箇所に立ち入って撮影した場合などには、住居侵入罪等が成立する可能性はあります。)。これは、店側が「写真撮影禁止」という文書を掲示していたとしても、犯罪にはなりません。
では、「写真撮影禁止」と書かれていても写真をとってもよいかというとそういうわけではありません。店内の写真撮影を許可するかしないかについては、施設(お店)の管理権を有しているお店側が事由に決めることができるので、お店の方は、写真撮影をしているお客さんに写真を撮影しないよう注意をすることができます。さらに、店側の判断として、注意したとしても撮影を止めない場合や、何度も撮影している人の場合、退去を要求したり、今後の出入りを禁止したりすることができます。さらに退去の要求にも応じない場合には、刑法130条後段の不退去罪が成立する可能性があります。また、トラブルで店側の業務を妨害した場合には威力業務妨害罪が成立する可能性もあります。ここまで来ると単なる写真撮影で逮捕されてしまう可能性もあります。
さらに、店の様子を撮影することで、他のお客さんの容姿が映ってしまうこともあり、それを無断でSNS等にアップしてしまうと、プライバシー権や肖像権の侵害として、損害賠償請求されるなどトラブルに巻き込まれてしまうリスクがあります。
このように、店内の撮影については、撮影だけで犯罪になるということはありませんが、お店のスタンスとして、撮影を禁じている場合にはトラブルにならないようにお店のルールには従った方がいいと思います。他方、お店の側としても料理などをSNSで宣伝してもらうことで、集客につながるという点もあり、写真をとることを許可したいと考えている場合もあると思います。その場合には、トラブルを未然に防ぐために、写真撮影やSNSへのアップに関するルールなどをあらかじめ文章にしてお店に掲示していただくのが良いと思います(そういったルールに関する文章の作成について弁護士に依頼されたい場合にはお気軽にお問い合わせください。)。
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弁護士が解説!売掛金について
最高のピッチング
皆さんは、野球が好きですか?
私は、サッカーも野球も好きですが、どちらかというとサッカーの方が好きだったのですが、今年のWBCの感動的な試合を見て、野球も捨てたものじゃないなと再評価していました。
野球では、バッターよりも投手に注目することが多く、日本だけでなくメジャーリーグの有名なピッチャーの動画などをよく見ています。
よく、野球好きの人と話すときに、「最高のピッチング」とは何かということが話題になったりします。その際に出てくるのが「81」と「27」という数字です。「81」という数字は、全てのバッターを3球三振で仕留めた場合3球×3アウト×9回=81球で試合を終わらせることが出来るというものです。ピッチャーだけの力で試合を終わらせることが出来るという意味では理想なのかもしれません。
これに対し、「27」という数字は、全てのバッターを、ゴロやフライなどでアウトにした場合には、1球×3アウト×9回=27球で試合を終わらせることができます。私個人的には、1球で仕留める技術がかっこいいため、こちらの方が理想のピッチングというような気がしています。
この、理想的ピッチングの「27球」というものですが、もっと少なくすることはできないのかと友人と話していたことがありました。最近メジャーリーグで大谷選手が申告敬遠を何度もされているのを見て、「申告敬遠の場合球数はどうなるのか」と思い、調べてみることにしました。
日本のプロ野球のルールなどをまとめたものとして、「公認野球規則」というものがあります(アメリカのプロ野球のルールを翻訳したものに、日本独自の注釈などが盛り込まれているそうです。)。この「公認野球規則」によると、申告敬遠(規則では「故意四球」というようです)の場合、投手の投球数には加算されないとされています。 そうすると、最も少ない球数で試合を終わらせるためには、申告敬遠を2回してノーアウト1塁、2塁の状態で、次のバッターに対し1球でトリプルプレーをとることで、1球×9回=9球で試合を終わらせることが、理屈上可能になります。
9球で試合を終わらせることは絶対にありえないでしょう。また、そもそも27球で試合を終わらせるというのも夢物語であると思います(ちなみに、日本のプロ野球で9回完投の最小投球数は、71球だそうです)。ですが、今まで歴史を塗り替えてきた大谷選手やこれから出てくる選手がそいった理想をかなえてくれるのではと思うだけでとってもロマンがあっていいなと思ったりします(前置きが長くなってしまいましたが、以下法律のお話をさせていただきます。)。
ホストクラブの売掛金について
さて、本題に入りたいと思います。
最近ニュースで、歌舞伎町のホストクラブで将来的に店での売掛けをなくすことを目指すというニュースがありました。会社や、事業をされている方には、この「売掛け」という言葉になじみはあるかもしれませんが、一般の方ですと、あまり聞いたことがない言葉かもしれません。
「売掛金」とは、会計上の用語で、「これから支払われる予定のある代金」を意味する勘定科目のことをいいます。簡単に言うと、ものを買って代金の支払いを後払いすることを売掛といいます。 この「売掛」という言葉のもととなっている「掛売」という言葉は、江戸時代の会計帳簿には記載されており、この頃の商取引は基本的に代金をその場で支払わず後で受け取る「掛売」で行われていたようです。「掛」という言葉はなにかの途中であることを意味するものであり、代金が支払われていない状態は、売買という取引が完了していない(途中である)ことから「売掛金」という言葉が使われるようになったそうです。
先程のニュースでは、ホストクラブにおいてこの売掛を辞めることを目指しているとのことですが、誤解がないようご説明すると、売掛という支払い方法が悪いというわけではありません。商取引は迅速性が求められ、かつ、扱う金額も高額になるため、コンビニの支払いのように都度都度現金でその場で払うことが求められると、迅速な商取引が阻害されてしまいます。
ホストクラブで問題になっているのは、ホストクラブでは、お客の女性が支払う能力がないことを知りながら、何百万円もする高額なお酒を、売掛金として入れさせ、支払いを強要し、多額の借金をさせたり、風俗業界で強制的に働かせたりの悪質な行為をしている点が問題となっています。
このようなホストクラブにおいて売掛が禁止された場合には、お客の女性も、自分の支払い能力に見合った利用(要は、自分の持っているお金の範囲でのみの利用)をすることになるので、利用する女性の方から被害者を防ぐことができるのではないかと言われています(個人的には、そうなると、消費者金融で借り入れを強制したり、違法な闇金などからお金を借りさせたりして、支払わせるというような手法が横行してしまうような気もしています。)。
他方、こうしたホストクラブではない通常の商取引においても売掛金に関するトラブルは頻繁に生じています。具体的には、買い主から売掛金が支払われない状態で、新たに取引を行い、売掛金の額が高額になったが、買い主からいっこうに代金が支払らわれないというトラブルです。
このような場合、売主側は、買い主に代金の支払いを請求し、任意での支払いに応じない場合には、裁判で支払うよう求める必要があります。もっとも、売掛金を支払えない会社がめぼしい財産を持っている可能性はあまり高くないため、回収ができないということも少なくありません。 売主側としても、支払われるべき代金が支払われていない状態で更に取引をする場合には、代金を一部でも支払わない場合にはその後の取引には応じないなどの対応を行う必要があると思います。とはいえ、数カ月後に代金支払いの目処が立つので先に商品を納品してほしいなどといった要請もあるかもしれません。その際には、相手が代金を支払われないリスクがある前提で対策をする必要があります。
具体的には、連帯保証人をつけてもらう。物的担保(不動産に抵当権を設定するなど)を求める。後々強制執行をする対象(預金口座、取引先等)の情報を教えてもらうなどが考えられます。 当事務所にご相談いただく経営者の方の多くは、ずっと取引を続けていたがいっこうに支払ってくれないというタイミングでご来所されるのですが、その時点では、売掛金を回収できない可能性のほうが高いため、可能であれば、上記のように一部未払が発生している時点などで、ご相談いただくことで、連帯保証契約や強制執行ができる情報を聞くようアドバイスするなど、適切なサポートができると思います。
また、当事務所の「フレックス顧問®契約」にて顧問契約をしていただいている方の場合には、個別の売掛金回収についても、毎月の顧問料以外に別途弁護士費用を頂戴しませんので、弁護費用を考慮して依頼を躊躇することがなくなります。売掛金だけでなく、日頃から相談したいことがあるなどという場合にはぜひ、顧問契約をご検討ください。
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