弁護士コラム

2019.04.24

経営法務リスクマネジメント ~採用時のリスク~

近年の有効求人倍率は高水準を記録し、就職活動は就活生にとって有利な「売り手市場」であるとされています。
優秀な人材を獲得するために、インターンの実施やUターン学生を優遇する企業が年々増えています。
また、経団連の発表によると、2021年以降に卒業する学生の採用活動から、これまで定められていた説明会や面接の解禁時期に関するルールを撤廃することが決まり、就活市場は大きく変化しています。

就活市場は変化した一方で、企業は良い人材を獲得するため、今後も内定を早めに出して新入社員を確保する方法は変わらず、むしろ競争が激しくなることが予想されます。
今回、企業が採用から内定を行う際に気を付けるリスクについてご説明します。

1. 内定とは?

多くの企業では、新卒者を採用する場合、在学期間中に内定を出し卒業後に採用するという方法を採っています。

しかしながら、内定時から実際の採用まで時間がかなり空くため、その間に、様々な事情が生じ内定を取り消したいと考えることがあるかと思います。

内定を取り消すとなると、内定者との間でトラブルになる可能性があります。それでは、企業が内定を取り消したい場合にはどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。

一般的に、企業と内定者の間には内定通知後に意思確認をした時点で、労働契約が成立しており、内定とは法的に「始期付解約権留保付の労働契約」であると考えられています。
「始期」とは内定通知後に企業と内定者の間で採用・入社の意思を確認し、実際に入社し働き始めるまでの期間を指しています。
「解約権留保」とは、企業と内定者の間に解約権が留保されているという事を示しています。

つまり、内定の取り消しを行うという事は、企業が留保している解約権を行使するという事になり、内定を取り消す際には、「目的に照らして客観的に合理的で社会通念上相当と是認できる」場合に該当するかどうかが重要になります。

2.解約権の行使について

それでは、具体的にはどのようなことが「客観的に合理的で社会通念上相当と是認できる」場合に該当するのでしょうか。

一般的には、選考過程において、企業側が知ることができなかったことを理由とした場合に内定の取り消しが認められるとされています。

例えば、短期間では到底復帰することが難しい重い病気に掛かってしまった場合や経歴詐称の内容が重大であること、また、卒業見込みとされていた学校を卒業することができなかった場合、刑事処分を受けた場合などが該当すると考えられます。

協調性が見られない、不真面目であるといった抽象的な理由では内定の取り消しは認められないため、注意しましょう。

3. 採用面接時にしてはいけない質問

前述したように、一度内定を出すと簡単には取り消すことができません。
そこで、企業側は求める人材かどうか見極めるために、面接が重要になってきます。

そこでつい、採用希望者がどのような人柄か知りたいがために、採用担当者が踏み入った質問をした結果、トラブルに発展することもあります。
それでは、面接時に気を付けなければならない質問事項とは、どのようなものがあるのでしょうか。

採用希望者にしてはいけない質問は大きく2つに分類されます。①本人に責任のない事項と②本来本人の自由であるべき事項です。
①の例としては、家族の職業や家庭環境、出身地などが挙げられます。②の例としては、座右の銘や人生観等があります。企業が面接者の緊張をほぐすために質問をしたことが、無自覚に法律に違反してしまうリスクがあります。

また、知らず知らずのうちに法律を違反してしまうことだけでなく、法律に違反した質問をしたことを採用希望者にSNS等で拡散されてしまい、企業のイメージダウンに発展する可能性も考えられます。
採用担当者は面接に入る際には、採用希望者に質問してはいけない事項をリスト化し、採用担当者同士で共有することで対策を諮りましょう。

4.まとめ

内定者が内定を辞退する際には、原則入社する2週間前までと定められている一方で、企業側が内定を取り消す際には解雇にも等しい、法的に強い制約が定められています。

そのため、企業側が経営の圧迫などを理由に、一方的に内定を取り消すことは、内定者から損害賠償を請求されかねない事態に発展することが考えられます。

良い人材を確保したいがために、焦って採用内定を通知することはとても危険です。
今後の事業計画や退職者数を予測しながら慎重に内定を通知するように十分に気を付けましょう。

 

2019.04.22

労働基準法とは?~労働契約の終了「解雇について」~

昨今、社会的に未払い残業代紛争と不当解雇紛争が増加しています。
一昔前の企業であれば、「従業員が、仕事ができない」、「会社と従業員の価値観が合わない」、「従業員がなんとなく会社に馴染めない」などの理由でも解雇が往々にして行われていた時代でした。
しかし、現代においては、そのような安易な解雇は許容されません。そのため、会社としてはどのような場合に解雇してはならないのか、解雇するとしてもどのような手続きが必要なのか、解雇後の手続きなどを把握していなくてはなりません。
労使紛争を未然に防止するために、ルールと注意すべき点についてお伝えしていきます。

前回の記事を読む→「労働基準法とは?~不当な身柄拘束の禁止~

1.解雇とは?

「解雇」とは、使用者の一方的意思表示による労働契約の解除のことです。従業員が一定の状況にある場合は解雇を許容することが極めて過酷な場合もあります。
また、突然の即日解雇では従業員の日常生活に及ぼす影響が大き過ぎます。
そこで、解雇に関する規制として、主に、以下の2種類があります。
・解雇制限
・解雇予告

(1)解雇制限とは

「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。」と労働基準法第19条で記載されています。

このような一定の状況においては、従業員が弱い立場に陥っていますので、解雇によってより窮地に追い込むことを防止する必要性があります。
※打切補償を支払う又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能な場合を除きます。

①この30日という期間内に業務上の負傷をした場合
出勤した日若しくは出勤できる状態までに回復した日から30日の起算

②この30日という期間内に産前産後の女性が休業した場合
産前(6週間・多胎妊娠は14週間)産後(8週間)から30日の起算

ただし、※で記載していますように次の場合は解雇制限期間でも解雇できます。
・打切補償…療養開始後3年経過し、使用者が平均賃金の1,200日分の補償を行う場合(労働基準監督署長認定不要)
・天災事変により事業の継続不可能な場合(労働基準監督署長認定必要)

(2)解雇予告とは

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。また30日前に予告しない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りではありません。
予告の日数は、平均賃金を支払った場合、支払った日数分について短縮することができます。

① 少なくとも30日前の予告
② 30日分以上の平均賃金
③ ①と②の併用

2.解雇する際のルールと注意すべき事項

即時解雇の場合、解雇予告手当は解雇通知と同時で支払うべきと定められています。
また、解雇予告期間が満了する前に、従業員が業務上のケガをして休業を開始した場合はどのように対応すれば良いでしょうか。

この場合、解雇予告の効力の中止であって、休業が長期になり効力が失われたと認められる場合を除き、治癒後に改めて解雇予告の必要はありません。

解雇期限到来後、解雇を延期した場合は同一条件で労働契約がされたものと解され、その後解雇する場合は改めて解雇予告をする必要があります。

■解雇予告が必要ない場合(所轄労働基準監督署の認定必要)

① 天災事変その他やむを得ない事由(事業継続不可能)
② 労働者の責に帰すべき事由

■解雇予告は日雇い・2ヶ月以内の期間労働者・季節的業務に4ヶ月以内の期間雇用者・試用期間中の者は適用されません。

① 日雇い(例外…1ヶ月を超えて使用された場合)
② 2ヶ月又は季節的業務に4ヶ月(例外…所定の期間を超えて使用された場合)
③ 試用期間(例外…14日を超えたら解雇予告必要)

退職時の証明書

① 使用期間
② 業務の種類
③ 地位・役職
④ 賃金
⑤ 退職の事由(解雇の場合)

この退職時の証明書に記載する事項についてですが、労働者の請求しない事項については記載してはいけないことになっています。必ず上記に記載してあることを入れないといけないということではありませんのでご注意をお願い致します。

3.まとめ

このように、解雇については様々な規制があります。そもそも解雇事由が認められるかどうかで争いになるケースもありますが、解雇制限・解雇予告・退職理由証明書などについて紛争化するケースも見受けられます。

これらの紛争に発展しないよう、会社ではルールを明確に認識しながら手続きを行うことが重要です。

2019.04.22

労働時間と休日・休暇の基礎知識②

前回の記事(労働時間と休日・休暇の基礎知識①)では、働き方の見直しに必要な知識として、労働時間、休日・休暇の違い、そして有給休暇の取得義務についてお話ししました。
今回は、その続きとして、振替休日・代休の違いと、時間外労働・休日労働をさせる場合に行わなければならない手続きについてご説明します。

1. 振替休日・代休の違い

労働時間と休日・休暇の基礎知識① 2(1)休日と休暇の違いにおいて、元から労働義務のない日を休日、労働義務が免除された日を休暇と呼ぶというお話をしました。
この「休日と休暇」のように、同じような意味に見えて、全く違う内容の制度があります。それは、「振替休日と代休」です。どちらも休日に労働するという点では同じです。では、一体何が違うのでしょうか?

まず、振替休日とは、あらかじめ休日と労働日を入れ替える場合に、その代わりとして振り替えられた休日のことを指します。つまり、労働させた日は休日労働とはならないので、1週の労働時間が40時間を超えていなければ、割増賃金を支払う必要はありません。また、4週4日の休日は必ず確保しておく必要があります。したがって、これらのことを踏まえると、割増賃金を発生させないように振替休日を運用するためには、同じ週内で振り替えを行わなくてはなりません。なお、振替日は事前に指定しなくてはなりませんので、前日までに通知します。

これに対し、代休とは、代わりに休む日を事前に決めずに、労働させた後に休日労働の代償として与えられた休日のことを指します。この場合は、労働した日はあくまで休日のままなので、休日に労働をしたという事実は消えていません。ですので、労働を命じた休日が法定休日であれば、時間外・休日労働に関する協定届を提出する必要があり、また、休日労働に対する割増賃金を支払わなければなりません(2.時間外労働・休日労働のために必要な手続きで詳しくご説明します)。

つまり、振替休日と代休の違いは、事前に休日を決めているか否かというところにあります。
振替休日、代休のいずれの制度を利用する場合でも、就業規則等に規定を設けましょう

2. 時間外労働・休日労働のために必要な手続き

労働時間と休日・休暇の基礎知識①において、原則として1日8時間、1週40時間(法定労働時間)を超えて労働させてはならないこと、また、従業員に毎週少なくとも1日、あるいは、4週を通じて4日以上の休日(法定休日)を与えなければならないことをお話ししました。

この法定労働時間を超えて労働をさせた場合は時間外労働となり、法定休日に労働をさせた場合は休日労働となり、以下の手続きを行う必要があります。

(1)就業規則等での定め

就業規則に、時間外労働や休日労働をさせることができる旨の定めを置く必要があります。
もし、就業規則を作成していない場合は、雇用契約書に記載しましょう。

(2)時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)

事前に従業員を代表する者と時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)を締結し、時間外労働・休日労働に関する協定届を所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
なぜ36協定と呼ぶのかというと、労働基準法36条にこの協定に関する規定があるためです。36協定は、事業所単位で締結・届出をする必要があることに注意しましょう。

36協定は、労働基準監督署に届け出ることではじめて有効となるので、協定を締結したけれど届け出ずに時間外労働・休日労働をさせたり、届け出る前に時間外労働・休日労働をさせたりすることは違法です。
36協定の有効期間は原則1年間なので、毎年、次の有効期間が始まる前に提出しなければならないということを頭に入れておきましょう。

(3)割増賃金の支払い

時間外労働の場合は25%以上、休日労働の場合は35%以上割増賃金を支払わなければなりません。
これらの他にも、深夜(原則として午後10時~午前5時)に労働をさせた場合は、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。

 時間外労働や休日労働をしていて午後10時を過ぎてしまった場合は、時間外労働・休日労働の割増率に深夜労働の割増率を合算して支払わなくてはなりません。

ここで、「休日労働をしていて、法定労働時間を超えた場合はどうなるの?」と疑問に思った方がいらっしゃるかもしれません。
これまでの説明からすると、休日労働に対する割増率(35%以上)に時間外労働に対する割増率(25%以上)を加算することも考えられます。
しかし、この場合は割増率の合算は行いません。なぜなら、法定休日にはそもそも法定労働時間という概念が存在しないからです。

割増賃金は、以下の式で算定します。

ただし、この算定を行う際、
家族手当・扶養手当・子女教育手当(※)、通勤手当(※)、別居手当・単身赴任手当、
住宅手当(※)、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
は賃金から除外します。
※家族数、交通費・距離、家賃に比例して支給するものに限り、一律に支給する場合は月給に含みます。

3. まとめ

労働時間が増えれば増えるほど、心身に不調をきたします。必要な手続きを行っていたとしても、時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめなければなりません。

今、時間外労働・休日労働が当たり前になっているのであれば、業務の進め方や業務量などを見直し、従業員の健康を確保することに努めましょう。

2019.04.22

【退職の仕方】入社した会社を「やめたい」方へ~「退職代行サービス」ではなく法律事務所を使って確実に退職へ(私達がとる態度の豆知識つき)~

「退職代行サービス」というサービスを聞いたことがありますか?

もしかすると、この記事にたどりついた方はご存知かもしれません。退職代行サービスのウェブサイトには甘い言葉が書いてありますが、実は退職代行サービスは弁護士法違反にあたる可能性があるのです。

退職代行サービスの多くは、歴史が浅く、方法も不透明な上、やめようとする会社に対する権限も弱いため、退職時に揉めたりするケースや、退職後に訴訟を起こされる事例には一切対応が出来ません。会社が本腰をあげた場合に対処できないのです。

しかし!この世には退職代行サービスよりも強力な退職の助っ人がいるのをご存知でしょうか?

 ―弁護士とよばれる者です。―

後腐れなく退職したい場合は、退職代行サービスを使った場合よりも、予め法律事務所(特に労働に強い弁護士を擁する法律事務所)に「退職をしたい」という依頼を行った方が円満・安全・確実に退職を行えます。

1.合法的なやめ方のすすめ

リクルートスーツを着て、つらい就職活動をし、無事大学を出て、就職してみたものの、何か違和感をおぼえていらっしゃる方や、とにかく理由は抜きにして会社なんか辞めてしまいたい方は必見です。
思っていたのと違った。なんか嫌だ。拘束時間が長い。残業地獄。とにかくだるい。やめさせてもらえない。ご覧の方にはそういった思いもあるかもしれません。

一度きりの人生ですから、自分に素直に行動してみようと思われる方もいらっしゃると思います。

ウェブ上に公開されている、ある退職代行サービスは、誰にでもできる「とりあえずやめる」ことの代行だけで5万円もかかります。その点をみると、弁護士に依頼して「確実にやめて自由になる」ほうが、やめた後の嫌がらせへの対応や訴訟を提起された場合等を考えると安心です。

このように、確実に辞めて、その後の干渉もさせないほどに徹底するには法律の専門家に依頼するのがいいと思われます。退職代行業者と比較すると、法律事務所には証拠の残し方や交渉のノウハウがあり、会社に対しても丁々発止な対応が出来るため、退職代行を依頼するのであれば、法律事務所への依頼が合法的・円満・確実でよいものと思われます。

グレーなビジネスが出現しているからこそ、この「安心の退職方法」が、全ての会社を辞めたい人の保険のような形で周知されればよいなと思っています。

危険性のあるサービスではなく、安心できる辞め方として、周知にご協力いただければ、一人でも多くの方が救われるものと思います。

また、退職代行サービスは上記の通りとりあえずやめるというだけですが、法律事務所の退職代行依頼であれば、場合によっては会社に併せて「損害賠償請求」ができるケースもあるので、いずれにしても法律事務所を使った退職に軍配があがりそうです。

なお、福岡ではゴールデンウィークの10連休のうち、4月30日・5月2日・5月6日に営業している法律事務所もありますので、退職をご検討の方はこの3日を狙って無料相談がある法律事務所に行ってみるとよいかもしれません。

退職代行サービス会社 法律事務所
欠勤・退職の意思表示の確実な伝達
退職日の交渉 ×
有給消化の交渉 ×
引継ぎに関する交渉 ×
私物の引取り ×
離職票、年金資格喪失証明書等の発行依頼 ×
未払い賃金(残業代)や退職金などの請求 ×
訴訟になった場合の対応 ×
会社への損害賠償請求 ×
違法性 グレーな行為 適法行為

2.ありがちな言葉を考えてみる

あらためて、考えを整理するために、よく説得で使われがちな言葉を、あえて違った角度から考えてみると気付きを得ることがあります。その過程で自ずと自分の価値観が明らかになることもあります。

【物事をうやむやにさせる言葉】
① 「社会人として云々」「人として云々」「常識が・・・」
→この言葉が使われている場面を思い出してみてください。それは、ある一定の価値観がおしつけられている場面ではないですか?常識とはなんでしょう?よく考えてみると個々人の思い込みとも捉えられませんか?
アインシュタインも「常識とは18歳までに身に付けた偏見のコレクションのことをいう」というように、常識は個人が勝手に決めつけた各人で偏りのあるものの見方とも捉えられるのです。

② 「おかれた場所で咲きなさい」等のことわざ
→上にアインシュタインの言葉を引用しましたが、アインシュタインが出てくるだけで少し納得しませんでしたか?人はことわざや偉人の格言に弱いという研究があるので、説得されている場合はことわざや格言の力に惑わされないようにしましょう。
よくよく考えると、案外逆のことわざもあるものです。

③ 「○年は続けろ」という言葉
→辞める勇気のなかった者が言う、新卒者の人生を狂わせてしまう危険な言葉です。3年も経つと第二新卒という範囲からも外れてしまい、選択肢が減ってしまいます。具体的に続けることに何の意味があるのかを考えて、発見できれば続けてみるというのもよいかもしれません。

なお、上で様々なよくいわれる言葉の一つの見方を批判的にご紹介しましたが、実はこのものの見方も一つの見方・偏見でしかなく共感する必要もありません。
本来私達は、自由に考え、自由に職業を選び、自由に暮らすことができるはずなのです。

3.あとがき・【ローボール・テクニック】が人に思ってもない行動をさせている話

私はこれを知り、「ああ、ローボールだなぁ」という状況によく出くわすことがあります。日常で、気づいたときに、本心では嫌だけれどもなぜか受け入れてしまっている状況はないですか?

もっというと、なぜかあまり使わないのに継続して加入している通販サイトの会員プランや、スマホの課金はないですか?

実は、人は一度約束をすると、後に約束の内容が不利益に変更されても撤回するのは難しいといわれています。

世間でもよく使われている技法で、例えば、週1である簡単なタスクをやると評定の点数に加味するとしておき、点数はそのままで週2に頻度を増やすなど、はじめは容易な条件で次第に条件が厳しくなっていっている状況であっても、最終的には大半の人は受け入れてしまいます。これがローボール・テクニックといわれるものです。

初月無料や初年度無料というサービスがよくありますがまさにこれです。

現時点の退職理由で、「労働が割に合わない」ということを考えてらっしゃるような場合はこのことを警戒して、少し様子をみてみるのもよいかもしれません。

このように、一見甘い餌をまかれているような時は、不利益を被る可能性があるので警戒が必要だと考えられます。

4.さいごに

私たちの態度は私達が決めているものと思っていますが、往々にして決められているようにも考えられます。ただ、行動がどのような経緯であれ、自分自身が意思をもって辞職を決意するのであれば、その意思は尊厳をもって扱われるべきであるといえるでしょう。

そして、その尊厳を護ることが出来るのは法律をもってして代理人となることのできる弁護士でもあります。

退職をお考えの方は、無料相談を行っている法律事務所などもありますので、この記事も踏まえ様々な角度から検討のうえ、ご自身の自由な意思で依頼先を選択されることがよいと思われます。

2019.04.22

従業員がSNSトラブル!対応と公式発表、再発防止はどうしたらいい?

「SNSでトラブルが起こってしまったら!企業側の対応は?」では、従業員がSNSでトラブルを起こした場合の調査方法や記事の削除についてご説明しました。
今回は、削除後に行うべき公式発表や従業員の対応、再発防止策についてご説明します。

前回の記事はこちら→「SNSでトラブルが起こってしまったら!企業側の対応は?」

1.すべてのSNSトラブルについて公式発表するべき?

問題となっている多くが、トラブルの原因になった投稿が拡散され炎上したケースです。
しかしながら投稿がすぐに発見、削除されるなど拡散に至らなかった場合は、あえて公式発表をしないという手段も考えられます。
むやみに全てのSNSトラブルに対して公表すれば、かえって企業イメージの低下や、起こるはずのなかった別のトラブルに発展する可能性もあります。
また、外部から寄せられる情報や内部チェックで発見された投稿の中には、誹謗中傷の場合でも根拠や具体性のないものもあり、拡散状況や投稿内容によって臨機応変に対応することが重要です。

2.公式発表のタイミングは状況を見て適切に

公式発表で多く用いられるのは、プレスリリースが知られていますが、企業によっては記者会見を行うところもあります。
事実関係を確認、当該の投稿記事も削除し従業員の処分を行った後に公式発表、という流れが一般的ではありますが、すべてが完了するには時間がかかり、その間に当該記事がさらに拡散されてしまうことも考えられます。

また、「拡散されているのに企業側は何も発表しない。全く対応していないのではないか」という疑いを持たれてしまう可能性もあります。
問題の投稿内容に対して、今現在わかっていること、どこまで対応が進んでいるのか、などを適宜、公式発表していくのが良いでしょう。

3.SNSトラブルを起こした従業員へはどんな対応をすれば良い?

(1)注意、指導と懲戒処分

前回の記事でもご説明しましたが、SNS利用について就業規則の懲戒規定に当たる行為が見られれば、従業員の処分を検討しなければなりません。

問題の投稿内容がすぐに削除され、拡散されなかった場合や、従業員間でのSNSトラブルで話し合いなどにより解決した場合は注意喚起や指導にとどめ、炎上拡散が止まらず、企業の売上低下や実損害が発生するような事態まで発展した場合は、懲戒処分(減給や出勤停止、懲戒解雇など)を検討する必要があります。

また、小規模なトラブルであっても、比較的地位の高い取締役や役員が起こしてしまったものについては注意にとどまらず、懲戒処分を実施するケースも考えられます。

ニュースなどに取り上げられ問題となった、飲食店勤務中に不適切な動画を投稿するなどのSNSトラブルについては、既に知られているとおり当該従業員の解雇や、食品や機器の廃棄など対応にかかった費用として、損害賠償請求が行われています。

(2)従業員同士でのSNSトラブル

「私的アカウント間でのSNSトラブルだから、勤務先には関係ない」という問題が発生したとしても、そのトラブルの内容によっては企業に影響を与えることになります。

例えば、Aさんは偶然facebookで同僚Bさんのアカウントを見つけ、Bさんが拒否したにもかかわらず執拗に友人申請を行うなどの行為で、Bさんが精神的苦痛を感じ仕事に支障をきたす等のケースも、最初は個人間のトラブルですが、最終的には従業員の休職の原因になるなど、企業の運営にかかわってくるケースです。

このような場合、当該従業員への注意や指導で改善を図りますが、上司と部下といった間で上記のやり取りがされた場合、セクハラやパワハラとなる可能性もありますので、様々な状況や要素を踏まえた上で処分を検討しましょう。

4.再度トラブルを起こさないために防止策の徹底を

トラブルが発生した場合は、公式発表とともに、社内にも通達や注意喚起を行いましょう。
従業員全員に内容を説明することで、「いつか自分もトラブルを起こしてしまうかもしれない」という認識を常に持ってもらうことになります。

具体的には、「いつどのSNSサービスで、当該従業員はどのような内容を投稿したのか」、「このトラブルについて、労務側はどのような対応と処分をしたのか」などを記載します。また、注意喚起としてSNSの特徴である、「良い悪いに関わらず、容易にネット上に情報が拡散できてしまう」ことや「拡散された後は削除が困難」であることも説明し、認識してもらいます。

普段あまりSNSを利用しない従業員などへ対しても、どのようなトラブルであったのかが分かるように、この注意喚起内でSNSの特徴などについても触れておきましょう。

しかしながら懲戒処分の具体的な内容の公表については、注意が必要です。
内容によっては名誉毀損とされることもありますので、個人名や具体的な説明を避け、特定できないよう表記するのが良いでしょう。

社内での研修等を再度実施したり、ガイドラインを策定していなかった場合は早急に策定するのも防止策として有効です。
繰り返しにはなりますが、業務で使用している機器(パソコンやスマートフォン)等の同意を得た上でのチェックや、守秘義務の誓約書を作成し署名してもらうなど、SNSトラブルについては適切な策をとっている企業であると常に認識してもらうことも、いつ起こるかわからないトラブルに対して先回りできる防止策です。

5.まとめ

今回はトラブルを起こしてしまった従業員に対しての処分や公式発表について説明してきましたが、今この時間でも、ますますネット世界は目まぐるしく変化しています。

昨日まで普通にできていたことが、今日からはできなくなった、というような事もネットでは多く見受けられます。
「問題が疑われる記事を投稿してしまったが、今は拡散していないし、いつでも消せる」と思っていても、突然明日からサービスが変わり、自分で削除ができなくなってしまうことも起こり得ます。

企業個人ともに、情報収集やコミュニケーションツールとしてのSNSは非常に便利なサービスではありますが、サービスの特徴やこれまでにご説明したトラブルを念頭に置いた上で適切に利用していきましょう。

2019.04.18

経営法務リスクマネジメント ~総論~

経営には会社の規模に伴わず、あらゆるリスクが発生します。日常業務の小さなミスやトラブルに対して改善策を講じず放置したり、認識の相違や業務の漏れが生じる体制を整備せずに見過ごした結果、企業の経営を脅かすリスクに成長してしまう可能性があります。

会社法では、大会社にのみ「法令及び定款に適合するための体制や業務の適性を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」(会社法第362条第4項第6号)を義務として定めています。

一方で中小企業に対しては、経営体制の整備については何ら義務を定めていません。
しかしながら、中小企業においても円滑な経営を行うためには、リスク管理体制を整備し、リスクマネジメントの実践を行うことは必要であり、何も整備がなされていないのであれば急務で対策を講じる必要があると考えます。
以下、企業における経営のリスクマネジメントについて考えていきたいと思います。

1. 経営リスクの分類

経営に潜んでいるリスクにはどのような分類方法があるでしょうか。
もっとも一般的なものは、「純粋リスク(損失のみをもたらすリスク)」と「投機的リスク(損失のみならず利益もあるリスク)」に分類する方法です。

「純粋リスク」は、一般的に財産損失・収入減少・賠償責任・人的損失のリスクがあります。「純粋リスク」は、予測を立てることにより統計的にリスクを把握でき、損害保険の利用などにより、投機的リスクに比べリスク管理が行いやすいとされています。

一方で「投機的リスク」は、経済や政治的情勢や法的規制変更などの動態的な事項があげられます。
「投機的リスク」は、グローバル化が進んだことにより、自国だけではなく他国の経済や政治的情勢の影響も及ぶようになり、近年直面するリスクとして増加傾向にあります。
次に、経営法務の視点から考えたリスクの分類として、「社内要因的リスク」と「社外要因的リスク」の分類方法があります。
例えば「社内要因的リスク」では、採用及び退職リスクや労働時間・賃金・休日等のリスクや社内管理体制リスクが考えられます。「社外要因的リスク」では、欠陥製品リスク、債権回収リスク、情報・営業秘密リスク・損害賠償リスクなどが挙げられます。

経営リスクを検討する際、「社内要因的リスク」と「社外要因的リスク」の分類方法の方が、馴染みがあって検討しやすいことや、社外要因的リスクについて検討する際に、第三者の行動が関係してくることから、事前のリスク回避対策だけでなく、リスクを取ったうえで被害を最小限にとどめる対策についても考慮することができ、「純粋リスク」と「投機的リスク」に比べ、より具体的な経営リスク回避を講じることができます。

2. ハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則とは、「重大事故が一件発生する背景には29件の軽微な事故があり、その背景には300件の小さなミスや異常が存在する」という法則です。
ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが労働災害を統計学的に調査し、この法則を見つけ出しました。
取り返しのつかない重大な大事件や大事故を事前に防ぐために、軽微な事故やたまたま起こった小さなミスを見過ごしてはいけないことを教示しています。
些細な事故やミスを侮らずしっかりと記録にとどめ、過程の分析を行い、予防対策を講じることはリスクをカバーすることに繋がります。

3. リスクマネジメントの実践

経営法務のリスクマネジメントを行うには、①リスク管理体制を整備②リスクの洗い出しや発生確率の分析、経営にもたらす影響の大きさなどの調査、リスク発生時の対応の検討③リスク発生後の対策の3つに分類し検討することが有益とされています。

中小企業ではリスク管理部門やコンプライアンス統括部門を設置することは現実的に難しい場合が多いでしょう。その場合、自社で対応が難しいのであれば、顧問弁護士などにコンプライアンスを任せることも重要でしょう。

弁護士であれば、経営におけるリスクの洗い出しや分析について客観的に判断ができますし、リスク管理体制の整備に並行して、社内規程の見直しなども必要になるため、コンプライアンスを任せるには適切です。

また、内部通報制度についても整備をすることが大切です。不正や不祥事が公になる前に、社内内部にて事前に対処することにより、社内要因的リスクにとどめ、社外要因的リスクを回避することに繋がります。

この際、内部通報者に対し、不利益な扱いをしない旨を明確化し、従業員に周知を行い、通報先を設けることが必要です。実際に内部通報があった後の対応についてもルール化することで、内部通報を行いやすい体制作りに努めましょう。

ただ、リスクマネジメントの実践においては、体制作りだけでは限界があるため、日頃から経営者のコンプライアンス意識や社訓・行動憲章などの精神面を従業員に根付かせ、従業員全体の意識を高めることが、リスクマネジメントの実践においてベースになっています。

4. まとめ

リスクへの対応としては大きく次の4つがあります。①リスクを取らない②リスクを減らす③リスクを分担する④リスクを受け入れる

リスクへの対応を考える際、発生頻度やリスクが起こった際の重大性から予防策を検討していくことが重要とされています。どこまでリスクを負うことができるのか詰めて考えることがリスク発生を低減させることに繋がります。

リスクが起こった際の初動調査が遅れてしまえば、被害が拡大し、会社の危機管理能力まで問われる自体に発展してしまう可能性があります。

機動的に対応ができるように弁護士等の専門家を体制に組み入れながら、会社組織の事情に則したリスク管理体制を整備し運用することによって、被害を最小限にとどめるように備えましょう。

2019.04.18

知っていれば役に立つ!経費のこと3

1日中仕事をしていると、集中力も切れてきて、ちょっと休憩してお菓子を食べたい、残業をしてお腹が空いたからご飯を食べたい、なんて思うことがありますよね。
そんなとき、このお菓子や食事を買うのに使ったお金は、「経費」になるのでしょうか?

1.お菓子は「経費」になる? 

 会社には、お客様から頂いたり、スタッフが持ってきてくれたりしたお菓子が置いてあることがありますよね。けれど、出勤前やお昼休みにコンビニに行って、自分でお菓子を買ってくる人もたくさんいると思います。仕事の合間に食べるために買ったこのお菓子代、「経費」になるのでしょうか?

 これは、「経費」にはなりません。例えば、会社の中に休憩所があって、そこにお菓子や飲み物などが置いてある場合。この場合、置いてある飲み物やお菓子が、誰でも食べられるのなら、「福利厚生費」として「経費」にすることができます。しかし、先程のように、コンビニなどに行って、自分の食べたいお菓子を買った場合には、「福利厚生費」にすることはできず、「給与」として扱われ、源泉徴収の対象となります。

 「そこで働く人全員が公平に利用できること」が「福利厚生費」にする条件になるため、これを満たすことができていない場合には、「給与」か「自己負担」で買うようにしましょう。

2.「まかない」が出るお店で働いています

 飲食店で働いている方は、たくさんいらっしゃると思います。その中で、お店によってはまかないが出るところがありますよね。このまかない、従業員からお金を貰わずに、無料で提供している場合、作るためにかかった費用は「経費」になるのでしょうか?

 自分のお店にある材料で作っているのだから、と考えて、無料で提供してしまいがちですが、実はこれ無料で提供してしまうと、従業員の「給与」となり、源泉徴収の対象となってしまいます。前回の記事で書いたように、まかない(食事代)を「福利厚生費」として「経費」にするためには、「食事代の半分以上を従業員が負担している」「会社が負担した金額が月額3500円以下である」という条件を満たす必要があるため、自分のお店で作っているまかないだとしても、無料で提供すると「経費」にすることができないのです。

 つまり、まかないを無料で提供してしまうと、「給与」として扱われてしまい、「経費」にすることができないため、上記2つの条件を満たし、「福利厚生費」として「経費」にしましょう。

3.残業をしてお腹が空きました

 会社の繁忙期。これは、どこの会社にもあるものではないかと思います。普段は定時で帰ることができていても、繁忙期はどうしても残業になってしまう・・・そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 そんな皆さんにうれしい情報です。実は、残業をした人に対して会社が食事を支給する、この時にかかった食事代は「福利厚生費」として「経費」にすることができるのです。今まで出てきた食事代は、2つの条件を満たさなければ「経費」にすることができなかったのですが、今回でてきた食事代は、なんと、全額会社負担でも「給与」として扱われないのです。食事は、仕事をしていてもしていなくてもとるものだから、という理由で「経費」にすることができなかったのですが、残業というのは、業務を進めていくうえでやむを得ない事情のため、個人の負担がなく、全額会社負担だとしても「経費」にすることができるのです。

 ただし、食事を提供するのではなく、「食事手当」として現金で支給すると、従業員の「給与」として源泉徴収の対象となるため、「給与」として扱われないようにするには、食事そのものを支給してもらうようにしましょう。

4.まとめ 

 今回は、食べ物に関する「経費」についてお話をしました。同じ「食事」でも、「福利厚生費」として「経費」にするためには、条件を満たさないとならないもの、条件を満たさなくても「経費」になるものがあったと思います。
 「福利厚生費」として「経費」にできるものを上手く活用しながら、業務の効率化を図りましょう!
 

2019.04.17

マイナンバーの外部サービスとプライバシーマーク制度

マイナンバーの運用が定着した昨今ですが、運用状況の記録や、保管書類の法定保存期間の管理、情報漏えい防止等の安全管理など、事業者が対応に費やす時間と労力は少なくありません。
そこで今回はクラウドシステムや外部サービスをご紹介したいと思います。
また後段では、安全管理対策の徹底化にあたり、プライバシーマーク制度という既存の個人情報の保護措置を利用する方法も合わせて紹介したいと思います。

1.マイナンバーの管理に便利なシステムとは?

マイナンバー管理に、クラウドサービスでマイナンバーの収集や管理、廃棄をサポートしてくれるクラウドシステムが活用されています。
クラウドとは、「クラウドコンピューティング」の略で、データを自分のパソコン等ではなく、インターネット上に保存する使い方やサービスのことです。以下主な特徴をご紹介します。

従業員の情報を登録することで、システムからその従業員にメールでマイナンバーの収集依頼が行えます。
従業員がスマートフォンやパソコンから指定されたアドレスにアクセスすると「利用目的」が通知され、マイナンバー、「通知カード」や本人確認書類をシステム上に保存することができます。書面でのやり取りがないため、事業者のパソコンにはデータが残りません。

マイナンバーは、システムを提供するクラウド事業者が管理するデータセンターに“暗号化”されて保存されます。
システムには、権限の管理機能や利用履歴の管理機能も設けられていますので、情報漏えいや紛失、不正利用のリスクも軽減できるのがメリットです。
システムで廃棄時期を管理しているので、法定保存期間を気にする必要もありません。

また、給与システムや社会保険システムと連携することができるものであれば、ほかのシステムにマイナンバーを保存することなく、必要な書類を作成することが可能です。
クラウドシステムを導入すると、マイナンバーや特定個人情報を管理する場所を限定でき、人為的なミスも極力抑えることが可能です。

2.マイナンバーの取得に便利なアイテムやサービスとは?

クラウドシステム以外にも、マイナンバーの取得や収集、管理、廃棄に便利なアイテムやサービスがあります。

小規模事業者向けに、マイナンバーの「取得・保管セット」が販売されています。
こうしたセットには、①個人番号報告書、②利用目的の通知書、②収集用の封筒、④本人確認書類ごとに保管できる封筒、⑤専用バインダーが含まれます。
取得から廃棄までの一連の作業を安全に行えるように工夫されているので、紙ベースでのマイナンバーの取得、保管、廃棄までの対策が容易になります。

また、事業者に代わって代行業者がマイナンバーの収集を行う「マイナンバー収集代行サービス」もあります。
一般的には、①代行業者が事業者の従業員に対してマイナンバー収集の案内状を発送する、②従業員がマイナンバー申告書にマイナンバーなどを記入し、本人確認書類の写しとともに代行業者に返送する、③代行業者が書類を元に従業員の本人確認をする、④代行業者が事業者に従業員のマイナンバーを連絡する、といった流れになります。

マイナンバーを収集する際には、代行業者が十分な安全管理措置を講じたうえで、必要書面の作成から回収までを行ってくれます。

マイナンバー管理を自社で行うには、様々な労力やリスクが伴います。これらを全て外部サービスで対応することも経営判断としては重要でしょう。

3.プライバシーマーク制度とマイナンバー制度の関係は?

プライバシーマーク制度とは、日本工業規格であるJISQ15001(個人情報保護マネジメントシステム―要求事項)に適合し、個人情報について適切な保護措置を行っている事業者を認定し、その事業者にプライバシーマーク(Pマークという)の使用を認める制度です。

Pマークを付与された事業者であれば、すでに個人情報を適切に保護する仕組みを整備・実践し、その改善も行っているため、個人情報であるマイナンバーや特定個人情報の取り扱いについても、追加で必要となる措置に対応することにより、比較的容易にマイナンバー制度に対応する素地が整っていると言えます。

まず個人情報としてマイナンバーや特定個人情報がその対象に加得る必要があります。どのようなマイナンバーや特定個人情報を取り扱うことになるかを特定して、リスクの認識やその対策を講じましょう。

次に、個人情報を取り扱う際に参照すべき法令や指針に、番号法(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)とガイドライン(特定個人情報の適正な取り扱いに関するガイドライン)を加えましょう。

また、マイナンバーや特定個人情報を取り扱う担当者を決めて、その役割や権限を明確にしましょう。
マイナンバーを利用できる範囲や特定個人情報を作成できる範囲は限定する必要があり、本人の同意があっても子の範囲を超えて利用や作成はできませんので、担当者は留意が必要です。

なお、番号法で規定されたケース以外はマイナンバーや特定個人情報の提供ができず、提供を受ける場合には本人確認が必要です。
番号法で規定されたケース以外でのマイナンバーや特定個人情報の保管も行えません。所管法令によって義務付けられている保存期間を経過したときは、できるだけ速やかに削除または廃棄する必要があります。

委託契約を結ぶ場合には、ガイドラインに具体的に示されている規定を盛り込む必要があります。マイナンバーや特定個人情報については、今までよりも厳しい取扱いが要求されていますが、上記の点に留意して既存の仕組みを改善していけば問題ないでしょう。

4.まとめ

クラウドサービスを利用する場合、マイナンバーや「特定個人情報」をクラウドで管理することになるので、業者を選定する際には、安心できるセキュリティが提供されていることが重要なポイントになります。収集代行サービス等においても同様です。

月額千円以下から数千円で利用できますので、多少の経費でリスクを軽減でき、時間と労力を他に費やすことができるならば、導入を検討する価値はあると言えます。

2019.04.17

労働時間と休日・休暇の基礎知識①

日本では過重労働が社会的に問題となっており、是正が求められています。
これに伴い、働き方の見直しに取り組んでいる会社も増えてきているのではないかと思います。そこで、今回は、働き方を見直すにあたり知っておく必要がある、労働時間や休日・休暇に関する基礎的な事項をご説明します。
また、労働基準法改正に伴う年次有給休暇の取得義務についてもお話しします。

1. 労働時間と労働時間管理

会社には、労働基準法により、労働時間を適切に把握し、管理する責務があります。では、この労働時間とは一体何を指すのでしょうか。

労働時間とは、休憩時間を除いた実労働時間のことです。定められた始業時刻より早い時間から、あるいは終業時刻を超えて労働した場合は、その時間も労働時間となります。

労働時間に関しては、原則として1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないことが労働基準法32条に定められています。
この時間を「法定労働時間」といいます。法定労働時間には休憩時間は含みません。

法定労働時間に対して、就業規則等で会社が定めた始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた時間を「所定労働時間」といいます。

また、会社は、労働基準法34条に基づき、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与える必要があります。

休憩時間は労働者が労働から離れた状態が保証されていなければなりません。よって、もし従業員が、電話に出なければならない、来客の対応をしなければならないといった状態になった場合は、会社は別途休憩時間を与えなければなりません。

冒頭で述べた会社の責務ですが、単に1日に何時間働いているということを把握するだけでは足りません。

タイムカードを利用するなどの方法によって始業・終業時刻を確認・記録し、それらをもとに何時間働いているのかを把握するようにしましょう。

2. 休日と休暇の違い・有給休暇の取得義務

(1)休日と休暇の違い

上記の1.労働時間と労働時間管理 で、会社は原則として従業員に法定労働時間を超えて働かせてはならないことや、労働時間によって一定の休憩時間を与えなければならないことをご説明しました。

この他にも、会社には従業員に休日を与える義務があります。この休日とは、よく耳にする休暇とは何が違うのでしょうか。

休日とは、元から労働義務のない日のことを指します。
会社は、労働基準法35条に基づき、従業員に毎週少なくとも1日、あるいは、4週を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
この休日を「法定休日」といいます。法定休日は会社で自由に決めることができるので、就業規則等で「何曜日を法定休日にする」と特定する必要はありませんが、決まっている場合は就業規則等に記載しておくほうが望ましいです。

業務の関係で休日労働の可能性がある場合、法定休日に労働させると割増賃金(割増賃金については、次の記事でご説明します。)が発生するので、法定休日を特定しないほうが良いかもしれません。
また、会社は就業規則等で休日を任意に定めることができ、これを「法定外休日(所定休日)」といいます。

多くの会社では、法定休日のほかに、法定外休日(所定休日)を定めています。これは、1日の所定労働時間が8時間の場合に、休日が週に1日しかないとすると、前述した1週40時間の法定労働時間を超えてしまうためです。

これに対し、休暇とは、従業員の労働義務が免除された日のことを指します。「育児休暇」や「介護休暇」など法律に定められている休暇を「法定休暇」と呼びます。

法定休暇は付与する義務が法律で定められているので、労働者から請求をされた場合は必ず付与しなければなりません。
そして、「夏季休暇」や「リフレッシュ休暇」など会社が就業規則等で任意に定めることができる休暇を「法定外休暇」と呼びます。

つまり、「休日」と「休暇」の違いは、もともと労働義務がない日であるか、もともと労働義務はあったがその義務を免除された日であるかという点にあります。

(2)年次有給休暇の取得義務

ここで、(1)休日と休暇の違いで出てきた「年次有給休暇」についてより詳しくご紹介します。

年次有給休暇とは、一定期間勤続した従業員に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される、取得しても賃金が減額されない休暇のことです。

従業員が、①入社日から6か月継続して勤務し、②その期間の全労働日の8割以上出勤しているという2点を満たしていれば、10日間の年次有給休暇を付与しなければなりません。

勤続期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

ただし、パートタイマーなど所定労働時間が少ない(所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下である)従業員については、所定労働時間に応じて比例付与されます。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 勤続期間
6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

年次有給休暇は、従業員が請求する時季に与える必要があります。
年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に変更でき、これを時季変更権といいます。

ただし、単に忙しいから、という理由だけでは足りず、その日にその従業員が勤務しなければ会社が損害を被るといったほどの理由でなければ認められません。

つまり、原則として年次有給休暇をいつ取得するかは従業員が決めます。しかし、同僚に気を遣ってしまったり、上司に言いだし辛かったりして年次有給休暇の取得をためらっているという話をよく耳にしませんか?そういった背景から、年次有給休暇の取得率は低調です。

上記のような現状を踏まえ、2019年4月から、全ての会社は、年次有給休暇が10日以上付与される従業員(管理監督者を含む)に、年5日の年次有給休暇を取得させる義務があります。

つまり、パートタイマーやアルバイトでも、付与日数が10日以上であれば、その対象となるということです。

会社は、従業員ごとに、年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。

この時季の指定ですが、面談や取得計画表など任意の方法によって従業員の意見を聴取し、できる限り従業員の希望に沿うように努める必要があります。

もし、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している従業員がいる場合には、時季の指定をする必要はありません。

これに伴い、会社は、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する義務があります。また、休暇に関することは、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」です。

計画的に年次有給休暇を付与するなどの仕組みによらず、年次有給休暇の時期指定を行う場合は、その対象となる従業員の範囲や指定方法等について、就業規則に記載する義務があります。

最後に、もし、「年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合」や、「会社による時季指定を行う場合において、就業規則に記載がない場合」には、30万円以下の罰金が科されますので注意してください。

3. まとめ

残業時間や休日出勤が増えると、精神的にも肉体的にも悪影響があります。
日々の仕事を効率化し、仕事以外では心身をリフレッシュさせるために、社内での労働時間や休日・休暇の管理について再度確認しましょう。

見直しているうちに、今のままで大丈夫かな?など不安や疑問に思うことがあれば、すぐに社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

 

2019.04.17

【社会保険】従業員・役員の加入条件と手続き方法

勤務形態によって社会保険に加入できる人と、できない人がいるのはご存知でしょうか?
加入条件を満たされているにもかかわらず加入していない場合は、調査でさかのぼって社会保険加入を命じられて、社会保険料の追徴を受けてしまうケースもありますので、しっかり要件を知りたいところですね。

まず、加入する事業所の申請の手続きは終わっていますか?
事業所の加入条件と手続き方法もまとめているので、確認してみてください。

事業所の加入条件と手続き方法(記入例リンクあり)

1.健康保険法とは

『健康保険』は、
被保険者や被扶養者等の業務中の病気やケガ以外の疾病・負傷・死亡又は出産について保険給付を行い、国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。
※業務中の病気やケガの保険給付は労災保険です。

2.従業員・役員の加入条件

①加入基準の基礎知識
ア)就労の実態で判断:「正社員」「パートタイマー」といった呼称ではなく、労働時間、雇用形態を主とする就労の実態で判断します。
イ)国籍要件は無いため、外国人でも①の実態で判断します。
ウ)適用事業所に使用されても被保険者になれない人のことを適用除外といい、以下の表の※1に該当する場合は、船員保険・国民健康保険など他の医療保険に加入することになります。

②社会保険の適用が除外される人

※2 「ただし」で適用する人は、「法第3条第2項の規定による被保険者」となります

③加入基準
ア)1日または1週間の所定労働時間が、その事業所で同じ種類の業種に従事する一般従業員の所定労働時間のおおむね4分の3以上の人
イ)1か月の所定労働日数が、その事業所で同種の業務に従事する一般従業員の所定労働日数のおおむね4分の3以上の人

※1 所定労働時間とは、会社で定めた労働時間
例:9時~17時 休憩1時間 → 7時間
※ 試用期間中の加入
試用期間を設けていても、試用期間終了後ではなく入社日から加入します。

④年齢による社会保険適用の区分
被保険者になれる期間は、年齢と各制度によって異なります。
※介護保険:第2号と第1号と2種類に区分されています。

健康保険 介護保険 厚生年金
40歳未満 ×
40歳以上65歳未満 〇(第2号)
65歳以上70歳未満 〇(第1号)
70歳以上75歳未満 〇(第1号) ×
75歳以上 後期高齢者医療制度 〇(第1号) ×

 

3.手続き方法

区 分 内 容
提出先 管轄の年金事務所
提出時期 社会保険の加入日より5日以内
※未来の加入申請はできません。
4月1日加入なら、4月1日より申請ができます(3月中の申請不可)
提出方法 郵送、電子申請、窓口持参
必須書類 ◆健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
・氏名
・生年月日
・性別
・マイナンバー(もしくは基礎年金番号)
・取得年月日
・扶養者の有無
・報酬月額
①月給者:雇用契約書にて定めた給与額(1か月あたりの通勤手当などの金額も加算します)
②時給者や日給者:その事業所で前月に同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬の平均額 等
③役員の加入:役員報酬額が0円の場合には加入することができません
添付書類 ・原則として必要なし
※外国籍の従業員を採用した場合は別途添付書類有り
※管轄によって違いますのでご注意ください

◆「資格取得年月日」が届出の受付日から60日以上さかのぼる場合
①法人の役員以外の場合
賃金台帳の写し、出勤簿の写し(資格取得日とする日以降のもの)
②株式会社(特例有限会社を含む)の役員の場合
株主総会の議事録 or 役員変更登記の記載がある登記簿謄本の写し
(資格取得日とする日がわかるもの)

家族加入 ・健康保険 被扶養者(異動)届
・国民年金 第3号被保険者資格取得届
手続き期間 申請より10日~2週間程度
手続き完了後 ①年金事務所より届く書類
・資格取得確認及び標準報酬決定通知書(役員・従業員の手続き完了書類)
②2日ほどして協会けんぽより保険証が発送され事業所宛に届きます。
③保険証は即日発行されません。即日必要な場合には「健康保険 被保険者資格証明書」の交付を年金事務所に申請すると、使用できます。
注意 国民健康保険と社会保険と同時期の加入はできません。
※4月1日に社会保険に加入するならば、4月1日以降は以前加入していた国民健康保険証や以前の勤務先の社会保険の保険証は使用できません。使用した場合は、別途手続きがあります。

 

4.資格取得手続きを怠ったらどうなる?

冒頭でもお話ししました、「加入条件を満たされているにもかかわらず加入していない場合は、調査でさかのぼって社会保険加入を命じられて、社会保険料の追徴を受けてしまうケースがあります」について、具体的にどういうことか、ご説明しますね。

資格取得届の提出が必要な方について、届出が提出されていないことが後の年金事務所の調査で分かった場合、「資格取得届を提出」しなくてはならないとともに、「事実が発生したとき(資格取得日に該当する日)にさかのぼって保険料を支払う」ことになります。

過去分を全てまとめて精算するのは、会社にとっても本人にとっても、かなりの負担となることは間違いありませんので、注意したいところです。

5.まとめ

新しく従業員を雇い入れた、役員報酬額が決まり支給が始まる、などの場合、一定の基準を満たしている場合は社会保険に加入する必要があります。
正社員、パートの枠にとらわれずに、要件をしっかり確認することが必要です。
手続きが遅れますと健康保険証が届くのも遅くなりますので、早めの情報収集、早めの手続きを行いましょう。

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