弁護士コラム

2019.05.02

給与計算業務①~給与とは~

毎月行わなければならない従業員の給与計算は、単純そうに思えて、とても煩雑な業務です。自社で給与計算を行っている会社は多いでしょうが、思いのほか給与計算を間違っているケースが多く、従業員の本来もらうべき給与額になっていないケースが散見されます。
そこで、今回と次回にわたって、給与に関する基礎知識と、給与計算業務の基本的な流れについてご説明します。

1. 給与の定義

まず初めに、普段、何気なく使っている「給与」という言葉ですが、そもそも給与とは何のことを指すのでしょうか。
労働基準法11条において、給与とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義されています。
つまり、従業員が欠勤や遅刻、早退をした場合は、労務の提供が履行されていないので、その時間について給与を支払う義務はありません。

2. 支払いのルール

給与の支払いについては、労働基準法24条においてルールが定められています。

①通貨払い

給与は現金で支払う必要があり、小切手や自社商品では認められません。ここで、「私の会社は銀行振込をしているけど大丈夫なの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
本来は、銀行振込はこのルールに反していますが、従業員の同意を得た場合は、従業員の指定する口座に振り込むことが認められています。また、退職金に関しては、従業員の同意があれば、小切手や郵便為替での支払いが認められています。

②直接払い

給与は従業員本人に直接支払う必要があります。配偶者や保護者等に支払うことはできません。
ただし、従業員が病気で受け取ることができないといった事情がある場合に、家族が使者として受け取ることはこのルールに反しないとされています。

③全額払い

給与は全額を支払う必要があります。振込手数料や積立金などを勝手に差し引いたりしてはいけません。
ただし、従業員の代表と労使協定を締結すれば、一定のお金を控除することができます。また、健康保険料や雇用保険料などの社会保険料や、所得税や住民税といった税金については、法律によって控除することが認められています。

④毎月1回以上払い

給与は少なくとも毎月1回支払う必要があります。数か月ごとにまとめて支払うことは認められません。
年俸制の場合でも、一括支給ではなく、分割して支払わなければなりません。

⑤一定期日払い

給与は期日を特定して支払う必要があります。支払日にずれが生じてしまう「毎月最終金曜日」のような決め方は認められません。
※④⑤について、臨時に支払われる賃金、賞与、1か月を超えて支払われる精勤手当・勤続手当は除きます。

給与額は、会社が自由に決めることができますが、最低賃金を上回っている必要があります。最低賃金には、⒜精皆勤手当、⒝通勤手当、⒞家族手当、⒟時間外労働・休日労働等の割増賃金、⒠賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、⒡臨時の賃金は算入されません。

【最低賃金との比較方法】
時間給の場合:時間給最低賃金を比較
日給の場合:時間額(=日給÷1日の平均所定労働時間)と最低賃金を比較
月給の場合:時間額(=月給÷1か月の平均所定労働時間)と最低賃金を比較

都道府県別の最低賃金額については、厚生労働省のホームページから確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

3. 給与の支給項目と控除項目

従業員に支給する給与は、支給項目から控除項目を差し引いて計算します。支給項目、控除項目として一般的なものは以下の通りです。

支給項目

控除項目

4. まとめ

今回は、給与計算業務を行う前に知っておく必要がある基礎知識についてお話しました。給与計算業務に携わっていなかった時にはあまり気にしていなかった内容も多くあったのではないでしょうか。

これから給与計算をされるという方には、ぜひ今回の記事の内容をしっかりと理解していただけたらと思います。
次の記事では、実際の給与計算の流れについてご説明します。

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