弁護士コラム

2018.04.20

アパートの騒音クレームについての対応

【相談事例③】

アパートに住んでいるのですが,同じ隣人から管理会社や警察を通して騒音の苦情がきているが、自分としては身に覚えがなく,なるべく音をたてないように注意をしていたのですが、直接苦情を言われることはないのですが,先日,娘の学校にまでクレームの電話をしてこられるなどとても迷惑しています。娘と2人暮らしなので,とても不安です。どのように対処すべきでしょうか?

 

【弁護士からの回答】

 マンションやアパートで生活する中で隣人の騒音トラブル等で悩まされることは多いと思います。もっとも今回のご相談内容は,少し変わっており,騒音トラブルを起こしていると因縁をつけられてしまったケースです。今回は,一般的な騒音トラブルについてご説明するとともに,本件の具体的な解決方法についてご説明させていただきます。

 

1 騒音トラブルに遭ったら

 まず,隣人より騒音等がなされている場合には,通常ご自身で隣人の方に苦情を言いに行かれる方も少なくないと思いますが,苦情を伝えたことで相手から逆上され,騒音以外のトラブルになる可能性もありますのであまりお勧めはできません。騒音が確認された場合には,まず,可能な限り騒音に関する記録を残しておくことが必要です。具体的には,録音機器などがあれば,騒音が聞こえたと思ったら録音することや,騒音の日時,騒音の内容,騒音の次回等を毎回メモしておくこと等が有効です。

 騒音に関する記録が揃ったら,不動産の賃貸人(若しくは管理会社)に対し,隣人の騒音で困っているので改善して欲しいと求めることになります。その際,騒音の記録を示し,または1人ではなく同じマンションやアパートの他の住民の方と一緒に騒音被害を申し出るのが効果的です。賃貸人は,賃貸借契約に基づき,賃借人に対し,目的物を使用収益させる義務を負っており,他の住人が騒音出している場合には,他の住人が平穏に目的物を使用収益できるよう,対策を講じる義務があると考えられています。したがって,住民から苦情が出た際に,貸主や管理組合にて何ら対応をしない場合には,賃貸人の義務に反しているとして,契約を解除されてしまう可能性も否定できないため,複数人で苦情の申し出を行うことが適切であると考えられています。

 そして,賃貸人や管理組合から騒音を出している住人に対し,騒音を出さないように求めても改善しない場合には,賃貸人側に対し,問題の住人を退去するよう求めることになります(賃借人が他の賃借人を強制的に退去させる権限はありません。)。

 賃借人にも目的物を定められた用法にしたがって使用する義務を負っているところ,騒音に限らず悪臭など他の住人に迷惑を及ぼすことなく使用収益を行う義務を負っていると考えられるため,かかる義務に違反している場合には,賃借人の債務不履行に基づき解除することができることになります。

 もっとも,賃貸借契約の解除に関しては,賃借人の生活の根幹である住居を奪うことになりますので,解除が認められるためには,当該債務不履行が賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊する程度の重大なものであるかという点が問題となります。騒音での解除の際には具体的な基準等があるわけではないですが,①騒音の程度(受任限度を超える程度の騒音であるか否か,各自治体が定める近隣騒音に関する環境基準等で定められている40デシベル以上か否か等が1つの基準になりえるのではないでしょうか。),②騒音の期間,③解除に至るまでの経緯(再三に渡り騒音をやめるよう求めたにも関わらず拒否しなかった場合等。)を総合的に考慮して判断することになろうかと思われます。

2 ご相談者様のケースについて

 ご相談者様のケースでは,隣人より,騒音トラブルを起こしていると因縁をつけられるだけでなく,お子さんの学校にクレーム等を入れているだいぶ迷惑極まりないい人であることには間違いありません。この点,学校にクレームを入れる等の行為は,目的物の使用収益とは関係する者ではないため,管理会社より中止するよう求めることはできないでしょう。しかし,お子さんの学校にクレームを入れたりする行為は名誉毀損などの行為に該当しうるため,警察に連絡し止める注意してもらうことや,弁護士を代理人として,相手方に対しそのような迷惑行為をやめるよう働きかけることは可能です。それでも迷惑行為が止まない場合には,同じアパートに住んでおり,相手の行動が激化した際に,取り返しのつかないことになりかねないため,引っ越すことなどを検討した方が良いかもしれません。その際には迷惑行為により,引っ越しを余儀なくされたと認められる場合には,引っ越し費用や慰謝料を不法行為に基づく損害賠償として請求することができます。とはいえ,クレーマーといつまでも関わり合いを持つということも避けたいと思われる方もいらっしゃると思いますので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.03.20

離婚後の年金について

【相談事例②】

 年金分割について教えて欲しいです。夫と離婚をして,2年7か月になります。離婚する際に,年金について何も話さないまま,離婚し,結婚していた期間は9年ですが,その間,第3号被保険者でした。自分が勉強不足で離婚してすぐに合意分割の手続きをしていないことに気づき,慌てて調べると離婚成立した翌日から換算して,2年経過してしまうと請求手続きが出来なくなるとの事でした。そうなった場合,結婚していた間の年金は全く含まれなくなるのでしょうか?

 

【弁護士からの回答】

  結論から申し上げますと,現時点で2年以上経過しているため,年金分割は認められず,婚姻期間中に相手方が支払った厚生年金保険料の分割を受けることができません。年金分割については離婚に関する記事において,詳しくご説明させていただきますが,今回は,離婚に伴う,各種請求権の時間的制限についてご説明させていただきます。

 

1 年金分割について

 年金分割とは,夫婦が婚姻期間中に支払った厚生年金保険料を当事者の合意や審判等で定められた割合で分割する制度のこといい,これにより,会社員,公務員などの第1号被保険者が配偶者である第3号被保険者であっても,第1号被保険者である者が支払っていた厚生年金保険料の一部(原則は半分になります。)を自ら支払ったことになります。

 この年金分割を求める権利(「分割請求権」といいます。)については,厚生年金法や厚生年金法施行規則にて,離婚が成立した日から2年間以内に,分割割合を決めて年金事務所に申請をする必要があります(2年以内に調停や審判を申し立てるだけではなく,調停や審判で解決し,その結果をもとに,年金事務所へ申請する必要があるので注意が必要です。)。したがって,2年が経過する前に調停や審判等を申し立てていない以上,ご相談者さまのケースでは年金分割は認められません。

 

2 財産分与について

 財産分与とは,婚姻期間中に夫婦で協力し取得した財産を離婚時に分与割合に応じて分配するものですが,財産分与請求権については,離婚と同時に請求することもできますが,離婚後に請求することもできます。もっとも,離婚後に財産分与を請求する際には期間制限があり,民法768条2項により,離婚後2年以内に家庭裁判所に財産分与調停を申し立てなければ財産分与請求を行うことはできません。

3 慰謝料請求

相手方配偶者が不貞行為を行った場合等,相手方の不法行為が原因で離婚する場合には,慰謝料請求を行うことができます。慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条,710条)の行使ですので,民法724条により「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から」3年間で消滅時効にかかってしまいます。したがって,不貞行為が原因で離婚に至った場合には,離婚という損害を知った時点(離婚が成立した日)から3年間以内に行使する必要があります。この点,不貞行為が発覚した時点と離婚が成立した時期が離れており,不貞行為が発覚してから3年以上経過しているが,離婚日は3年が経過していないという場合には,不貞と離婚との因果関係(原因と結果の関係をいいます。)が問題になってきますが,それについては離婚のコラムにおいて詳しくご説明させていただきます。

4 養育費及び面会交流について

 夫婦の間に未成年のお子さんがいる場合には離婚時に親権者を夫婦のどちらかに定めなければいけません。その際,監護していない親(非監護親)は原則として,子の生活費として養育費を支払わなければなりません。他方で非監護親は未成年のお子さんと面会交流できる権利を有しています。

 この養育費を請求することができる権利と面会交流を請求できる権利については,財産分与や慰謝料と異なり,2年や3年などの期間制限はなく,原則として,子が成人(20歳)に達するまでの期間であればいつでも請求することができます。もっとも,養育費について今まで相手方から支払ってもらえなかった分について,過去にさかのぼって支払うよう求めたとしても,原則としてさかのぼっての請求は認められず,請求した時点からの分しか認められないことの方が多いため,養育費を請求したい場合には早めに弁護士等に相談された方がよいでしょう。

5 まとめ

 このように,離婚にまつわる各種の請求権については,それぞれ期間制限が設けられています。離婚の際にこれらの権利についても解決していれば問題はありませんが,離婚時には何ら対応していない場合には,期間が過ぎてしまうと,期間制限があることを知らなかったとしても請求することができなくなってしまうため,早めに弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。

2018.02.20

友人に誘われてタトゥーを入れた場合の相手への治療費請求

【相談事例①】

小学校5年生の娘が通う学校の一部のお友達のグループで,タトゥーを入れることが流行しているようです。針と墨を使い自分たちで入れているとのことでした。娘には,絶対にあなたはしてはいけないと強く言っているのですが,もし,娘がそのお友達に誘われてタトゥーを入れてしまった場合,相手の親などに治療費を請求できるのでしょうか。

 

【弁護士からの回答】

 ひと昔前だと,タトゥー(入れ墨)を入れるのはやくざになる人というイメージがありましたが,海外のタレントやスポーツ選手などの影響でタトゥーを入れたいと考えている人も少なく無いと聞きます。特に中学生のお子さんの場合には,おしゃれ感覚や,「みんながやっているから自分もしてみたい」という安易な考えでタトゥーを入れてしまうのではないでしょうか。しかし,タトゥーを一度入れてしまうと,基本的に消すことは困難であり,タトゥーを入れている人に対する世間の目も厳しいものがあります。今回の相談事例では未成年のお友達同士のタトゥーについてのご相談ですが問題になりうる点について解説させていただきます。

 

1 刑事事件について

  まず,他人にタトゥーを入れる行為については,針を使うため医療行為に該当するかが問題となり,医師免許を有していない人が他人にタトゥーを入れると,医師法違反になる可能性があります。タトゥーを入れる行為が医療行為に該当するかについては刑事事件で争われていますが,平成29年9月には大阪地裁にて,医療行為に該当する旨の判断がなされています(現在,この事件については控訴審で争われており,別の結論がなされる可能性もあります。)。

  また,他人の意思に反してタトゥーを入れる場合には針を用いて身体を傷つける行為であるため傷害罪(刑法204条)に該当する行為になります。

  上記犯罪については,行為者が未成年者であっても検挙され,回数が非常に多い場合には少年事件として家庭裁判所に送致されてしまう可能性があるため,お子さんには他の人にくれぐれもタトゥーを入れないよう指導しておくことが必要です。

2 民事事件について

  次に,お友達にタトゥーを入れられてしまった場合には,不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,710条)として,治療費や慰謝料を請求することができます。この点,未成年者の場合には,民法712条,714条の適用が問題になります。民法712条では,未成年者が不法行為の時点で責任能力(自己の行為の責任を弁識するに足りる能力をいいます。)を有していない場合にはその行為について,賠償責任を負わないとされています。

  責任無能力者の不法行為の場合には,民法714条に規定があり原則として未成年者を監督する義務のある両親が賠償する責任を負います。

  責任能力については概ね12歳~13歳ぐらいで認められると考えられているため,ご相談者様の事例では,お子さんのお友達には責任能力は認められないとして,お友達のご両親に対し損害賠償請求をすることになると思われます。

  もっとも,タトゥーを入れることになった経緯として,お子さんがお友達に押さえつけられて無理やり入れられた場合には問題とはなりませんが,お友達からしつこく誘われて断りきれなかった場合や,お子さんの方から積極的に入れるよう求めた場合には,お子さんについても一定の落ち度があると認められるため,治療費や慰謝料の全額についての請求は認められないでしょう。

  いずれにせよ,一度タトゥーを入れてしまうと,友人関係だけでなく,将来についても取り返しのつかない事態になってしまう可能性もあるのでお子さんにはどれだけ誘われても断るようきちんと指導するべきであると考えます。

 

2018.01.20

相談事例記事について

当事務所では,初回相談に関しては,1時間無料にて対応させていただいていることから,日々様々なご相談をいただいております。

これまで,離婚,相続等個々の分野に関して,コラムを作成させていただきましたが,日常で発生する法律問題については,離婚,相続に限らず,あらゆる法律問題が存在しています。当事務所にご相談に来られる方もこうした様々な法律問題や,そもそも法律の問題ではないトラブルについてもご相談いただくことがございます。

 そこで,この相談事例集では,ご相談にお越しいただいた方の相談内容や,社会的に問題になっている事項等を参考に,一般的な相談内容に対し,弁護士としての見解やアドバイス等をご紹介させていただくことにより,弁護士を身近なものに感じていただき,那珂川町のみならず,春日市,大野城市,太宰府市等にお住いの皆様からお気軽にご相談にお越しいただけたらと考えております。

【注意事項】

ご紹介する相談事例はあくまでも一般的な事例であるため,当事務所への個々の相談や,受任している個別の事件とは一切関係ありません。また,回答に関しても一般的な相談に対するものであるため,実際の事件の際には異なる処理が適切である場合がございます。したがって,この事例集をご覧になられた方において,相談事例と同様若しくは類似すると感じた場合でも必ず弁護士のご相談を受けることをおすすめいたします。

 

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