弁護士コラム

2018.06.23

借用書がない場合の返済義務について

【相談事例⑧】

個人事業をしているのですが,8年前,事業がうまくいかなかくなったため,叔母から500万円借りていました。「母からは返せるときに返してくれればいいよ」と言われており,いつまでに返すというような取り決めもありませんでした。その後,叔母が亡くなり相続人から800万円を返すように言われています。亡くなった叔母との間には借用書も取り交わしていないので,法的には返さなくてはいけないのでしょうか?

 

【弁護士からの回答】

 借りているお金の返済等についてご相談に来られる方の多くが,「契約書が無いので払わなくていいのですか?」と質問されるのですが,結論からお伝えすると,契約書がなくても,法律上は借りたお金を返さなくてはいけません。したがって,今回のケースでは,ご相談者様は,ご相談者様の叔母の相続人に対し,叔母から借りていた800万円を支払う必要があります。今回は契約書の要否や,金銭消費貸借契約についてご説明させていただきます。

 

1 契約の成立について

 民法で規定されている契約は売買契約,賃貸借契約や今回問題となっている消費貸借契約等13種類あります(これを,「典型契約」といいます)。この典型契約のうち,契約書の作成が義務付けられている契約は1つも存在しません。これに対し,保証契約(保証人になるための契約)については,他人の債務を背負う契約になるので法律上,書面を作成しなければ,契約の成立は無効になります。

 また,典型契約のうち,契約成立するために,口頭の合意のみであれば足りる契約を諾成契約といい,契約の成立に,口頭の合意に加え,目的物の引渡し等の物の移動などが必要になる契約を要物契約といいます。今回問題となっている金銭消費貸借契約は,お金を返還する約束(口頭の合意)に加え,貸主から借主に対する金銭の移動(貸渡し)が必要になるため,要物契約に該当します。

 このように,契約の成立自体については,諾成契約と要物契約という違いはあるものの,契約書を作成しなくとも契約は成立し,契約内容にしたがって義務を負うことになります。

 したがって,ご相談者様の事例においてもご相談者様と叔母との間で,800万円を借り入れ(貸渡し)及び返還の約束も行っているので,金銭消費貸借が成立し,ご相談者様は,叔母の相続人に対し800万円を返済する義務があります。なお,ご相談者様の事例では,返済時期について「返せるとき」というあいまいな形で合意をされていますが,このように返済時期を明確に定めない消費貸借契約も有効であり,民法591条1項により相当の期間を定めて返還の催告をし,相当期間が経過した時点で返還義務が生ずることになります。

 

2 契約書作成の必要性

  今回のご相談者のように,契約書が無いので返さなくてよいというような間違った考えの方が少なからずいらっしゃることは事実です。真実はお金を貸したのに,借りた覚えはないと嘘をつかれてしまうと,裁判によってお金を返すよう求めなければなりません。その際,お金を返して欲しいと主張する側において,契約の存在を証明する必要があるのですが,契約書がないと,お金を貸したことに関する証拠が存在せず,最終的に,裁判で負けてしまう可能性が非常にあります。もっとも,契約書がなかったとしても,相手の口座に入金した記録や,借りるまでのメールのやり取り等,契約の存在を契約書以外の事実から証明すること自体は可能ですが,一番トラブルを防ぐためには,契約書を作成しておくのが一番でしょう。

 したがって,大きな金額などを取引する場合には,きちんとした契約書を作成する必要があるため,是非一度弁護士にご相談ください。

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