弁護士コラム

2018.07.04

懲戒解雇の妥当性

【相談事例⑬】

従業員が無断欠勤を頻繁に繰り返している従業員がいます。その従業員のせいで他の従業員に迷惑がかかっており,会社全体の士気も下がってしまっている状況です,その従業員を懲戒解雇にしたいが,解雇できるのでしょうか?

 

【弁護士からの回答】

 今回は,従業員の無断欠勤と懲戒解雇についてのご相談です。無断欠勤は即解雇等としている会社もあると聞きますが,懲戒解雇についてのトラブルは,労働審判等会社にとって非常に不利益になる等のトラブルのもとになることが非常に多いので,注意が必要です。

 

1 懲戒解雇の要件について

 懲戒解雇とは,従業員が懲戒事由に該当する行為を行ったことを理由として,雇用契約を解消(解雇)することをいいます。懲戒解雇は,労働者に対する制裁的な処分であり,かつ,解雇という労働者の生活に大きな影響を与える処分であるため,懲戒解雇が認められるための要件は非常に厳格にさだめられています。

 まず,懲戒解雇は,労働者にペナルティを与える懲戒処分であるため,どのような行為を行ったら懲戒解雇処分を受けるということが就業規則に規定されている必要があります。従業員が10名以下の企業では,就業規則の作成義務がないため,就業規則自体を作成していない企業も少なからずいらっしゃいますが,就業規則を作成していない企業の場合には,従業員がどれだけ悪質な行為を行ったとしても,懲戒解雇にすることはできず,普通解雇により解雇を行うことになります。その場合には,解雇予告手当等を支払わなくてはならないため,どれだけ規模の小さい会社であったとしても就業規則は作成しておいた方がよいでしょう。

 次に,懲戒解雇が有効に認められるための要件としては。懲戒解雇に合理的理由及び社会的妥当性が認められることが必要になります(労働契約法16条)。具体的には,たとえ,就業規則に懲戒解雇事由が規定されていたとしても,その事由により解雇されることがあまりにも不当な場合には,解雇が認められないことになります。極端な例ですが,就業規則に「就業時間を1分でも遅刻した場合には懲戒解雇とする」と規定されおり,実際に1分遅刻した場合に解雇が認められるわけがないことは分かると思います。したがって,就業規則には,懲戒解雇処分を科しても不当ではないと認められるような事由を記載しておく必要があります。

 

2 無断欠勤について

 無断欠勤に関する懲戒解雇事由としては,「14日連続で正当な理由がなく無断欠勤をし,出勤の催促に応じない場合」に懲戒解雇とするという規定を就業規則においているのが一般的です。14日間連続とされている理由については,労働基準監督署の認定を受けて解雇予告手当を支払わなくてよい場合(労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合,労働基準法20条)として,2週間以上正当な理由なく無断欠勤していることが要件とされているため,一般的な就業規則では,14日間とされています。

 では,無断欠勤が14日間連続ではなく,10日間欠勤して,しばらく出勤してまた10日間欠勤しているような場合はどうでしょうか。

 この場合,14日間連続で無断欠勤していない以上,上記の規定に基づいて懲戒解雇をすることはできません。もっとも,通常の就業規則では,無断欠勤をしたときに,けん責処分(単に注意をするのみの処分です。)とし,けん責処分を複数回行ったとき,もしくは,無断欠勤が7日以上に及んだときは,減給,出勤停止若しくは降格処分とし,さらに,減給等の処分を受けたにもかかわらず,改悛(改善)の見込みがないときに懲戒解雇処分とする規定が存在します。したがって,14日連続で無断欠勤をしていない場合であっても無断欠勤をした都度,けん責処分や減給,降格処分などを科していくことで,懲戒解雇を行うことも可能になります。

 

3 最後に

 使用者である経営者の方においては,あまり意識をされていないことが多いと思いますが,懲戒解雇処分というものは,先ほども述べたとおり,非常に重い処分であるため,軽々と行ってしまうと,労働審判等の紛争に巻き込まれるなど,本来の経済活動に充てることができた時間を余計な手間にとられてしまうリスクもあるため,懲戒解雇をすると考えた際には非常に慎重になる必要があります。当オフィスも那珂川町だけでなく,春日市,大野城などの中小企業様の顧問弁護士として,従業員の解雇に関する問題も多く取り扱っておりますので,是非一度お問合せください。

 

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