弁護士コラム

2019.04.09

【離婚問題】子連れ離婚をする前に考えておきたいこと

日本では3組に1組の夫婦が離婚するといわれています。
このように離婚が珍しくない時代ですが、中には子どもがいる状態で離婚をする「子連れ離婚」のケースもあります。
今回は、女性が子連れ離婚を考えたとき、離婚をする前に考えておきたいことについてお話したいと思います。

1.離婚について伝える

離婚をする際に伝えるべき相手は、夫、家族(自分の両親等)、子どもです。

①夫に伝える

離婚は協議離婚が原則ですので、まずは当事者である夫に離婚の意思を伝える必要があります。
口頭で伝える場合が多いとは思いますが、面と向かって話を切り出しづらいときや、夫のDVが離婚の原因にあたる場合は、手紙やメールなどの文面で伝えても良いでしょう。
一度文面で受け止めることで、その後の話し合いまでに冷静になることができます。

夫のDVが離婚の原因の場合や夫と話ができない場合などは、離婚の意思を伝える段階から第三者(親族や弁護士など)に依頼するケースも多いです。
御自身の置かれている状況に応じて、どのような伝え方が最適かについては、一度考えてみるといいでしょう。

②家族に伝える

離婚後の生活では、経済的にも子育ての面でも家族の支えが必要になってくる場面が多いので、親などの家族にも伝えるべきでしょう。
実情としては、離婚決定後に事後報告をすることの方が多いようですが、伝える場合は離婚後のプランなどを明確にし、親が不安にならないような伝え方をするのがよいでしょう。

③子どもに伝える

最後に、子連れ離婚なので、子どもにも離婚について伝えなければいけません。子どもに十分理解力があれば、離婚時に伝える場合もあります。
まだ物心がついていない場合は、将来どのタイミングで伝えるのかを考える必要があります。

子どもからすれば、親の離婚は精神的に大きなダメージとなり、心身に不調を訴えるケースもみられます。
ご自身の感情だけを優先するのではなく、子どもの気持ちにも十分配慮し、傷つけない伝え方が大事です。

2.離婚前後の住まいを考える

離婚を考えると、別居についても考えることになるでしょう。
しかし、「夫婦の同居義務」というものが存在します。離婚をする前に一方的に家を出てしまうと、義務違反ということで、後に調停になった際などに不利に働くことがあります。
夫婦間に合意があったり、いったん距離を置いたりする場合はこの限りではありません。

また、夫のDVが離婚の原因の場合は、身の安全を守らなければならないため、もちろん違反にはなりません。
こういった背景から、別居をする際は感情的にならずに計画を立てなければなりません。

また、引っ越し先としては、①実家に帰る ②賃貸住宅 ③公営住宅 が考えられるケースです。
①実家に帰るメリットとして、
・経済的な心配が少なくて済む。
・家事・子育てに関して家族のサポートが受けられる
ということが挙げられます。

家族の援助が受けられる反面、デメリットとしては、
・両親との間で子育てに対して意見がぶつかる可能性がある。
・児童扶養手当(18歳未満の子を持つひとり親家庭等の父または母が受給対象の補助金)をもらえない可能性がある。
・親と同居していることで保育園に入りにくい、保育園にかかる費用が高くなることがある。
などが考えられます。家族とどう協力していくかが重要なので、しっかりと話し合う必要があるでしょう。

②賃貸住宅で子どもと暮らすメリットとして、
・実家暮らしのように家族の干渉を受けない
・新しい環境で生活を始められる。
一方デメリットとして、
・敷金・礼金・手数料など入居前の出費が多い。
・毎月家賃を支払う負担がある。
・ひとり親家庭を理由に入居審査で落ちることがある。(特に母子家庭)
ということが挙げられます。
新しい環境で縛りのない生活を送ることは可能ですが、経済的な負担が大きくなってしまいます。

③最後に、公営住宅で子どもと暮らすメリット
・賃貸住宅に比べ家賃が安く済む場合が多い。
・ひとり親家庭(特に母子家庭)は入居決定の抽選で優遇されることがある。
・更新制度がない。

デメリットとしては、
・希望すれば必ず入居できるわけではない。
・自治会の役員や当番が回ってくる可能性がある。
・収入の増減により家賃が変動する。
等が挙げられます。経済的な負担は賃貸に比べると少ないですが、仕事と子育てで忙しいひとり親家庭にとって、当番などの役割が回ってくると負担になってしまいます。

3.生活費の確保をする

最後に、離婚後の生活費の確保について考えていきたいと思います。
元々、夫婦共働きであっても家庭の収入は減ってしまいます。特に、専業主婦の方は就職をして収入を得ることを考えるのが一般的です。
しかし、就職活動は先が読めて、すぐに就職先が見つかるとも限らないので、離婚前から就職先を探しておくのが良いです。

また、先ほど少し触れましたが、ひとり親家庭の場合は様々な手当を受けることもできます。
いずれも、地方団体により支給されるものなので、仕組みは一様ではありませんが、
①児童扶養手当
②ひとり親家庭等医療費助成制度
③ひとり親家庭の住宅手当
などがあります。

①児童扶養手当は、所得の制限はありますが、子どもの数と所得に応じて手当が支給されます。
②ひとり親家庭等医療費助成制度は、医療機関でかかる費用を地方自治体が助成してくれる制度で、通院や入院にかかる費用が軽減されます。
③ひとり親家庭の住宅手当は、公営住宅とは別に民間賃貸住宅の家賃を補助したり手当を支給したりする制度のことです。

このような手当を受給するには、事前に地方自治体に申し込まなければいけません。
知っているだけでは利用できませんので、自分の住む自治体の制度の詳細を調べるのが良いでしょう。
申請が要りますが、利用できれば経済的に助かり、ひとり親家庭の強い味方になるでしょう。

4.まとめ

子連れ離婚は、夫婦間だけの問題ではなく、子どもも巻き込むので事前に考えておくべき事項が増えます。
感情的になりすぎず、子どもと自分たちの今後をしっかりと見据えて計画的に進めるのが良いでしょう。

2019.02.20

【交通事故】万が一事故に遭った時、あなたがすぐにすべきこと!

交通事故の被害者になった時のことを、考えたことはありますか?
「自分が交通事故に遭うわけがない!」そんな風に思っていませんか?
しかし今日、交通事故は、平成30年だけで見ても年間40万件、1日当たり1,000件以上が発生しており、一生に一度は交通事故に遭っても全然おかしくない状況です。いつ、誰が交通事故の被害者、または加害者になっても不思議ではありません。

交通事故の被害にあってしまったら、突然のことに驚き、きっと戸惑ってしまうでしょう。
不幸にも事故に遭ってしまった時に備えて『あなたが取るべき行動』を勉強しておきましょう!

1.交通事故に遭ってしまったら…あなたがすぐにすべきこと!

交通事故に遭うと動揺してしまい正しい行動を取れないことが多くあります。しかし、初期対応を誤ると後々問題が複雑化、長期化することがあります。
万が一、あなたが交通事故の被害者になったとき、被害者としてすべきことを順に説明していきます。

①状況の確認

事故の状況(死傷者の有無、損壊した車両、部品)の状況を確認しましょう。また、車両事故の場合、被害の拡大を防ぐため車両を路肩に寄せるなどの対応も必要です。

②負傷者の救護

負傷者がいる場合、すぐに救急車を呼びましょう。救急車の到着までに時間を要するときは、可能な範囲で応急措置をするなど迅速な対応が求められます。一人で通報や応急処置を行うことが困難な場合、目撃者や通行人に協力を依頼することも一つの手段です。

③加害者の確認、警察への連絡

警察への届出及び相手方の連絡先等の確認は、後々、交通事故にかかる諸問題を解決するために必ず必要となります。
今後、交渉すべき相手方を特定するためにも、最低でも『①相手方の氏名 ②住所 ③電話番号 ④相手方の勤務先 ⑤相手方の自賠責保険・任意保険の契約会社及び契約番号』は、確認しておくべき情報となります。
各情報については、次の方法で確認を行うことが望ましいでしょう。

①及び②については、免許証等の公的な身分証明書で、相手方の情報を確認しましょう。
③については虚偽の番号でないことを確かめるためにも、その場で一度電話をかけることが望ましいです。
④については社員証、名刺等で確認を行いましょう。
⑤については『自動車損害賠償責任保険証明書』という書類で、確認をすることができます。

一般的に、車のダッシュボードなどに自賠責保険の証券や任意保険の証券を入れている人が多いと思います。単に口頭で確認するだけでなく、これらの書類を確認し、携帯電話で写真を撮影しておくことをお勧めします。

また、よくあるケースとして、相手方から「お金はきちんと払うので、警察への届出をしないで欲しい。」といった話を持ち掛けられることがあります。しかし、相手方の話を信用して警察への通報を行わなかった場合、保険の請求に必要な「交通事故証明書」が入手できません

交通事故証明書が取得出来なければ、本来であれば保険会社から支払われる保険金を貰えなくなることもあります。そのような結果を避けるためにも、加害者が警察への連絡を怠る場合は、自分で連絡をしましょう。

④病院で診断を受けましょう

交通事故により、外傷があれば当然に病院へ行くと思います。しかし、外傷が無くとも首・肩等に痛みを感じた場合は、必ず病院へ行きましょう。また、病院へ行った際には、保険会社への保険金請求等のために、お医者さんから診断書を書いてもらいましょう。

交通事故に遭った直後は外傷も無く、痛みも感じていなかったのに、数日後に痛みが出ることもあります。そのような場合、可能な限り事故から10日以内に病院にかかりましょう。
2週間以上経過して病院に行った場合、『本当に交通事故が原因の怪我(痛み)なのか?』といった疑いが生じ、保険会社から保険金の支払いを拒まれる可能性があります。

そのような事態を避けるためにも、交通事故から10日以内に病院へ行くことをお勧めします。(もちろん、事故当日や翌日に通院されることが最も望ましいです。)
また、病院を利用したときには診断書を取得し、交通事故を処理した警察に届けて、物損事故から人身事故への切り替えを行う必要があります。

⑤任意保険会社への連絡

交通事故の被害の大きさに関わらず、自分が加入する任意保険会社に連絡し、事故のことを報告しましょう。
人身事故については、事故発生日の翌日から60日以内に報告しないと、保険金が支払われないケースもあります。ご自身の任意保険について、保険を利用されるか否かは、保険会社担当者と協議されてみてください。

保険を利用することで、保険金は支払われますが、保険の等級が変動して、その後の毎月の保険料が高くなり、結果として保険を使わない方が得だったとなる可能性もあります。この点は、保険会社担当者に試算をお願いすれば検討してくれますので、一度お話しされるとよいでしょう。

2.交通事故にあった時、してはいけないことってあるのかな?

①即決示談

小さな交通事故などであれば事故現場で即決示談をされる方がいらっしゃいますが、示談は原則としてやり直しが出来ません。出会い頭の衝突や接触事故のように、事故原因に微妙な要素がある場合は、お互いの過失の程度や、正確な損害額も分からないはずです。
また、前述した通り、交通事故から数日後に身体に症状が出ることもあります。そのような場合でも、一度示談に応じていると追加での請求が難しくなるため、全ての状況を把握したうえで示談に応じることをお勧めします。

②念書

念書とは、ある事柄について、どのような条件(内容)で約束をしたのかを文章化したものです。
例えば、過失割合が5対5の交通事故であったとしても、当事者の一方が『今回の事故は、全て私の責任です』という趣旨の念書を作成し相手方に渡していると、後々の示談交渉、訴訟のなかで、重要な証拠の一つとなり、大きな損失に繋がることもあります。
もし、交通事故の現場で相手方から念書の作成を要求されても応じないようにしましょう。

3.まとめ

いかがだったでしょうか?
勿論、交通事故に遭わないことが1番ですが、少しでも知識を身につけておくことが、自分の身を守ることにつながると思います。これからも、当ブログで『交通事故に関するブログ』を公開していく予定です!宜しくお願い致します。

*本記事に搭載されている内容はあくまで一般的な流れであり、発生事故によって異なることもございます。ご了承ください。

2019.02.01

【離婚問題】住宅ローンの連帯保証と連帯債務。知っておきたいデメリット

住宅ローンの契約をした時に、夫婦で「主債務者」と「連帯保証人若しくは連帯債務者」の関係となっている場合、離婚したとしても、住宅ローンの完済まで、連帯保証人・連帯債務者の関係は続きます。

この連帯保証・連帯債務の違いや、ローン残債がある場合の名義変更などについて見ていきましょう。

〇住宅ローン控除の違いを確認しましょう

<連帯保証人>
債務者の返済が滞った場合、代わりに返済する義務があります。「連帯して」保証をしているので、催告の抗弁(まずは債務者に請求してくださいと言えること)や検索の抗弁(先に債務者の財産を差し押さえてくださいと言えること)ができません。

<連帯債務者>
連帯債務者は主債務者と連帯して債務を負っています。つまり、連帯債務者は主債務者と同一の立場ということになるため、いつでも金融機関から返済請求を受ける立場にあります。要するに、債務者本人ですね。

連帯保証人、連帯債務者の違いはご理解いただけましたでしょうか?
住宅ローンの契約において、連帯保証、連帯債務のどちらの形式での契約となるかは金融機関によって取り扱いが異なるので、事前によく確認して各々の性質を理解したうえで契約するようにしましょう。

〇所有名義と住宅ローン名義はまるで別物

<ローン残債があるとローン名義の変更はまず無理>
 離婚時に夫婦の共有財産として不動産が存在する場合、財産分与の過程で不動産の名義をどちらにするかを話し合う必要があります。
住宅ローンの残債の無い不動産については、夫婦間の協議によりどちらが不動産を所有するかを決定し、法務局で所有権移転登記を行うことで不動産を取得する側の名義にすることは可能です。
しかし、問題となるのは住宅ローンの残債がある不動産を所有するケースです。

「それは、なんで???」

住宅ローンを借りる際に金融機関と取り交わす「金銭消費貸借契約」…これが厄介なのです。
なぜならば、契約において「住宅ローンの名義を変更する場合は、金融機関の承認を得なければならない」という決まりを設けている場合がほとんどだからです。
金融機関はローン残債がある間は、簡単に名義変更に応じてくれません。

「妻が不動産を取得するので、今後の住宅ローンの支払いも妻が引き受けます。妻が新たに単独で住宅ローンを申し込むので、ローンの名義人である妻へ名義変更するというのはどうですか?」

まず妻に返済基準を満たす収入があるのかが大きな問題となります。
加えて、担保となる自宅があっても、担保に入れる「自宅の時価が住宅ローンの残債を下回る」いわゆるオーバーローンの状態では、住宅ローンの借り換えは難しいのが現状です。

「妻に所有権移転登記だけする!というのはどうですか?」

名義変更することは可能ですが、万が一、住宅ローンの借入先である金融機関に無断で不動産の所有名義を変更したことが知られると、住宅ローンの契約内容によっては契約違反となり一括返済を求められることがあります。

以上の通り、住宅ローンの残債がある不動産の所有名義変更には、一定のハードルがあるのです。

〇離婚破産のカギを握るのは、オーバーローンかアンダーローンか

<八方ふさがりなのはどっち?>
離婚後、家を売却する際に問題になるのが「不動産の価格(時価)」と「住宅ローン残高の有無」です。ここでは、2つのケースが考えられます。

①アンダーローン【不動産の価格(時価)>住宅ローン残高】
②オーバーローン【不動産の価格(時価)<住宅ローン残高】

そもそも、住宅ローンが完済されている場合、不動産の売却益を夫婦間で財産分与の対象とするだけであり、残る問題は売却益を取得する割合の問題だけです。
また、住宅ローンの残高が残っている場合でも、売却する不動産の価値が住宅ローンの残高を上回る場合は、先に述べたアンダーローンの状態となり特に住宅ローンによる問題は発生しません。
不動産の売却後は、売却代金を住宅ローンの残債に充当し、残る売却益を財産分与の対象とすることになります。そのため、離婚に伴って破産に追い込まれる等は起こらないでしょう。

問題となるのは、住宅の価値が住宅ローンの残高を下回るオーバーローンの場合です。オーバーローンといっても、住宅の価値と住宅ローンの残高の差額により対応は変わってきます。差額が小さく、他の財産で補える状態であれば大きな問題とはなりません。
しかし、差額が大きく、差額を補えるだけの財産を有していない場合には大きな問題となります。このような場合に、住宅ローンの残債を支払い続けることが現実的に難しく、「自己破産」という選択肢を選ばざるを得ないことがあります。

本来、オーバーローンのケースでは、夫婦のどちらかがそのまま住み続け、住宅ローンの支払いを続けることが一般的です。しかし、離婚が前提となっている場合、どちらも「家が必要ない」「家に住みたくない」ということは多々あります。
こうなると、家を売却し住宅ローンの残債だけ残すわけにはいかず、しかし家も必要ないという状況に陥ります。このようなケースでは家を賃貸物件として活用し、賃料収入で毎月の住宅ローンを補おうという方も多いです。
しかし、賃貸として活用するには、事前にリフォーム代として一定額が発生し、その後も長期に及び借り手が現れない、修繕の発生による支出などデメリットも考慮しておかなければなりません。また、住宅ローンの契約内容によっては、賃貸として活用することを禁止している場合もあるため事前の確認が必要です。

よくあるトラブルとしては、「不動産と住宅ローンの名義は夫のまま」で「ローンも夫が支払っていく」が、「家には妻が住み続ける」という状況です。
そもそも、住宅ローンが残る他人名義の家に住むということは、住宅ローンの返済が滞ることにより、実際に住んでいる妻の知らないところで住宅ローンの支払いが滞ることがあり得ますし、それが深刻化して競売に発展することもあります。

また、妻が知らないうちに家を第三者へ売却されてしまい、新たな所有者から急に退去を求められるというケースもあり、常にリスクに脅かされ生活することになります。
そして、妻が連帯保証人若しくは連帯債務者になっている場合、債権者から妻へ対し住宅ローンの残額を一括で請求され、自己破産に陥るという結果に繋がります。
八方ふさがりともいえるようなこのオーバーローン状態が離婚破産に陥る一番の原因です。

〇自己破産してしまったら、人生はどうなってしまう?

<借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度>
「どうしても、住宅ローンが支払えない!」となれば、最終手段は自己破産となります。離婚の話とは少しずれてしまいますが、ここで自己破産についてお話したいと思います。

自己破産とは、借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度です。
破産をするためには、財産があればできないので、基本的に家や車、有価証券、貴金属など一定の価値のある財産は換価され債権者に配当されます。一定額以上の預貯金も債権者への配当の対象となります。

<自己破産のメリットとデメリット>
以下、自己破産のメリットとデメリットです。

●メリット
・免責が得られれば、借金がなくなる(税金等の非免責債権は除く)
・負債を相続人に残さないですむ
・自己破産手続きを代理人に依頼した場合、債権者からの連絡はすべて代理人(弁護士)が受けるので、督促などを受けなくてすむ

●デメリット
・官報に名前と住所が載る
・クレジットカードが使用できなくなる
・信用情報機関に破産の事実が記録される(→通称ブラックリストに載る)
・信用情報が回復するまで新たにローンを作成することが難しくなる
・資産を手放さなければならない
・破産手続き中は一部の仕事に制限がかかる

自己破産をした後は債務もなくなり、普通の生活を送ることには支障がありません。
しかし、長期間に及びローンを組むことが出来ないなど一定の制限はありますので、可能であれば自己破産せざるを得ない状況に陥る前に何らかの対策を講じるべきです。

2019.01.21

【離婚問題】共有名義は離婚を境に、共「憂」名義になる

夫婦共同での住宅購入後に離婚した場合、それまで払い続けていた住宅ローンはどうなるのでしょうか。
また、どちらかが再婚した後に死亡してしまった場合や、連帯保証人のしくみについても詳しくご説明します。

1.共有名義人双方の承諾がなければ、不動産を売却できない??

夫婦がそれぞれ資金を出し合い、住宅ローンを借り入れて住宅を購入した場合、その土地と建物は二人の「共有名義」になります。

この場合の大きなメリットは2つ。
1. 夫婦の収入を合算することで多くのお金を借りられる(やはり、収入が多いほど多くの借入ができるものです。)
2. 購入価格の一定割合を税額控除される「住宅ローン控除」「住宅売却の3,000万円の特別控除」の優遇を二重に受けられる

しかし、共有名義にしたばっかりに、これが離婚後、大きな問題を引き起こすこともあります・・・。

 「大きな問題って!?」

例えば、夫婦のどちらか一方が仕事を辞め、収入がなくなれば、辞めた方は所得がなくなりますので、所得税が発生しなくなります。そうなると、所得税が発生しない以上、住宅ローン控除を受ける余地がなくなりますので、節税のために連帯債務にした恩恵が受けられません。
妻が出産や育児で仕事を辞めるケースが考えられますが、これは予測の範囲内、つまり「通常のデメリット」です。この「通常のデメリット」をはるかに超える問題・・・。
それが、離婚で不動産を売却する場合です。

なかなか知られていないのですが、実は、共有名義の不動産は「夫」と「妻」の両方の承諾がないと売却することができないのです!

【両方の承諾が得られないケース】
① 夫は不動産を売却して得たお金を財産分与として分け合いたい、妻は慣れた家に住み続けたい、と主張しもめている
② どちらかの失踪などで、連絡が取れず、承諾を得ることができない
③ 夫が浮気をし、離婚することになったが、妻が自宅に居座っている

ケース③については、売却益を分与する方が得策ですが、夫への恨みがつのっている妻は頑として、売却に同意しないという場合です。売却までの時間が長引けば、その分、不動産の価値も下がり、この状況が長引いている間にも住宅ローンは返済しなければなりません。
夫と妻の両方から承諾を得ることは簡単なようですが、そううまくいかないのが現状です。

 

2.もし、どちらかが再婚した後、亡くなってしまったら・・・

もし、共有状態のままで離婚し、その後に再婚や相続、借金や納税の問題が生じると、予期せぬ問題が浮上することがあります。
離婚後、どちらかが再婚し、死亡してしまえば、「共有持分」が複数の人に相続される可能性があります。また、住宅ローン完済後であっても、元配偶者が共有持分を担保にして、借金をしたり、税金の滞納をしたりすれば、突然差し押さえられる危険性もあります。

このように問題が起こってしまうと、メリットのある共有名義が、デメリットしかない共「憂」名義になってしまうのです。

 

3.離婚して初めて知る…「自分は連帯保証人だった!!」

「名義変更すれば、連帯保証人が外れるんじゃないの??」

名義変更で連帯保証人が外れることは・・・「ありません!」
また、連帯債務者だった人が名義変更をしたからといって、連帯債務者から外れることは・・・「ありません!」

なぜなら、連帯保証人は「主債務者」を保証する立場にあり、連帯債務者は債務者としての立場にあるため、主債務者の返済が滞ったり、もう一方の連帯債務者の返済が滞った場合に金融機関から返済請求を受けるようになるからです。
例えば、夫が主債務者として住宅ローンを組み、妻が連帯保証人になっているケースでは、夫の返済が滞れば、連帯保証人である妻に返済の義務生じます。また、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組む場合、夫婦共に連帯債務者になっているケースがほとんどです。

もし、あなたが、元夫と離婚をし、再婚した夫と新しい家庭を築き、幸せに暮らしていたとしても、元夫が何らかの理由でローンが返せなくなった場合、突然あなたの元に請求書が届くことがあるのです。
そして、あなたは初めて気づくのです。「自分は連帯保証人であった」「自分も連帯債務者であった」と。
離婚したからと言って、連帯保証や連帯債務がなくなることはありません。

「離婚する時に、家の名義を夫に財産分与して、自分の名義を外れたら、住宅ローンの連帯保証も自動的に外れるのではないの???」

そう思われる方も多いかもしれませんが、実際はそうではなく、連帯保証人や連帯債務者であることは、変わらないのです!!

「離婚したのに、連帯保証が外れないなんて納得できない!」

残念ながら、これは、法律で定められた日本の連帯保証制度なので、どうすることもできません。連帯保証が解除されるのはローンが完済されたときです。

返済中に連帯保証を外すには、住宅ローンを借りている金融機関の同意を得る、同等以上の連帯保証人を立てる、ローンを完済、もしくは完済に近い金額を一括返済する等方法はあるにはありますが、債権者である金融機関の同意が必要で、その同意を得るのはとてもハードルが高いというのが現実です。
金融機関からすれば、離婚したことは関係のない事情であり、離婚を理由に連帯保証人や連帯債務者から外してあげるメリットがないからです。
一方で、ローンを支払っていくどちらかが、住宅ローン残高分全額の借り換えができれば連帯保証債務はなくなります。つまり、違うローンに乗り換える、ということです。しかし、これも物件の担保価値が低ければ、借り換えはかなり厳しいのが現実です。

「だったら、売却する方が、全額返済となって、スッキリするのでは??」

ここで問題となるのが、ローン残高が物件価値を上回っている(つまり、オーバーローン状態の)場合です。この場合、売却代金でローンの完済ができないため、住宅ローンを担保するために付けられていた抵当権を抹消することができません。
そうなると、新しい買主は抵当権付の不動産など購入するはずもありませんから、現実的には売却することができないのです。

金融機関の保証債務免責も無理!
借り換えも無理!!
オーバーローン分を一括で支払えないから売却も無理!!!・・・となると、そのままの状態でローンを払い続けていくしかないのです・・・。
こうなると数年後には破綻しかねないというリスクができてしまいます。

そんな重要な「連帯保証人」なのに、なぜ当事者は連帯保証人になっていることに対する自覚がないのでしょうか。
実際は「自覚がない」のではなく、「忘れてしまっている」ことの方が多いのです。それは、仕方ないことなのかもしれません。結婚した時は、まさか自分が将来離婚するなんて想像しませんし、マイホームを買う時は、希望や高揚感からリスクを考えずに、金融機関や不動産業者に言われるがまま、印をついてしまうのです。
一度、ご自宅の名義や住宅ローン契約者、連帯保証人など、整理して確認してみることをお勧めします。

2019.01.08

【離婚問題】離婚が破産につながる!?原因は住宅ローン!!

離婚の話が持ち上がったら、養育費や慰謝料のことなどが優先的になり、不動産や住宅ローンについてはどうしても後回しにされやすいものです。しかしながら放って置くとトラブルに巻き込まれることも!
今回は、離婚時に気をつけたい不動産や住宅ローンについてお話しします。

1.はじめに

日本において「離婚」といえば、離婚について話し合って役所へ離婚届けを提出して成立する「協議離婚」、家庭裁判所における離婚調停で離婚が成立する「調停離婚」、家庭裁判所の裁判官の判断によって離婚が成立する「裁判離婚」の3種類があります。
その中でも、日本における離婚の大半は「協議離婚」であり、離婚全体の9割を占めます。
「協議」離婚と言うからには、話し合って離婚が成立するのですが、離婚するか否かだけでなく、その他離婚に付随する様々な事柄を話し合うことになります。その「協議」される内容としては「子の親権・養育費」「慰謝料」「財産分与」などがあります。
簡単にだけ説明しておきましょう。

まず、「親権」は、両親のいずれが離婚後に子供の親権を持つのかを協議します。そして、親権を持たなかった方の親は、現実に子供を育てないため、代わりに子供を育てる方の親に対して養育費を支払うことになります。
次に、「慰謝料」とは、有責行為(浮気・DV・生死不明など)で離婚の原因を作った側が配偶者に支払う賠償金です。
また、「財産分与」については、離婚の原因にかかわらず、夫婦で築いた共有財産を公平に分与することになります。
《対象となるものの例》
不動産や家具、預貯金、車、有価証券、保険解約返戻金、退職金etc.

離婚後、特にトラブルになりやすいのが不動産に関する問題です!一般的に、離婚される家庭は、高齢者の離婚でない限り、住宅ローンの残債が残っていることが普通でしょう。このとき、住宅ローンは残債額が何千万単位と多額であるため、その処理において紛争の火種となり得ます。
「売却すれば、問題は解決するのでは?」と考えられる方も多いかもしれませんが、
新築で購入した場合、少しでも住めば中古物件です。一気に価値が下がって、もはや売却しても住宅ローンの残債額の方が多いという状況があり得ます。住宅ローンが物件価格(時価)をオーバーしている場合(※オーバーローン・債務超過と言います)、売却しようと思うと、通常、売却代金で足りない分は一括で返済しなければならないので、離婚が破産につながる原因のほとんどが住宅ローン!というのはこれが原因です。

2.離婚の話が持ち上がったら、確認してほしいこと

皆さんは、不動産に関する権利関係、契約内容を正確に認識されていますか?
離婚の話が持ち上がったら、不動産に関する問題を冷静に把握、整理することが大切になります。そこで、まず確認してほしいことを記載します。どれだけ正確に認識できているか、ぜひチェックしてみてください!

 □不動産の取得時期はいつだった?
 □不動産の購入代金はいくらだった?
 □不動産を購入の際、頭金は支払った?
 □頭金は誰が支払った?
 □頭金は支払わず、フルローンを組んでいる?
 □土地・建物の名義はどうなっている?(共有名義?単独名義?)
 □担保権(抵当権や差押え)の有無はどうか?
 □住宅ローンの残高はいくら?
 □住宅ローンで連帯保証人の有無はどうか?(登記簿謄本に載らない)
 □住宅ローンで連帯債務者の有無はどうか?(登記簿謄本に載る)
 □住宅ローンの完済時期はいつ?
 □不動産の査定はいくら?
 ……。

いかがでしたでしょうか?結構たくさんチェックすべきことがありますね。
マイホームを手に入れられる喜びでいっぱいで、権利関係などを十分に把握していない方が少なくなく、離婚後、不動産トラブルに巻き込まれてしまう方が多くいらっしゃいます。
そこで、不動産の名義や住宅ローンの契約内容、保証人など現状がどのような権利関係になっているのかしっかり確認してほしいのです。
不動産の権利関係や内容は法務局で不動産の登記簿謄本を取得して調べることができます。売却の予定があるのなら、不動産業者に土地・建物の査定をしてもらい、あらかじめ資産価値を把握しておくとよいでしょう。

3.養育費等とは話が違う!破産のリスクが一気に高まるローン残債問題!!

離婚の話が持ち上がったとき、どちらかに離婚原因があったら慰謝料について、子供がいるときは親権・養育費についてが争点になります。不動産の話はどうしても後回しになりがちです・・・。
預貯金や車、家財などの財産分与は分与した時点で終わります。慰謝料や養育費については、話し合いで双方の納得が得られれば、分割での支払いは可能です。
しかし、住宅ローンは契約している相手が金融機関です。金融機関にとって、夫婦の離婚は関係のない話ですよね。金融機関は、自分が住むための自宅購入資金であり、自宅を守るためには頑張って返済をしてくれるであろうとの前提から、極めて低金利で住宅ローンを組ませてくれるのです。これが滞ったり、約款違反があれば、一括で返済を求められます。

例えば、住宅ローンを残したまま離婚した元夫婦
 元夫:債務者。家を出てローンを返済し続けている。
 元妻:連帯保証人。子どもと自宅に住み続けている。  場合・・・

→元夫が何らかの理由で返済しなくなると、金融機関は期限の利益を喪失したとして、元夫に対して一括支払いを求めます。しかし、元夫が返済できないとなると、自宅に住んでいる元妻に対して連帯保証人として一括で支払うよう請求してきます。
住宅ローンを組んでいる以上、自宅に抵当権を設定しているでしょうから、支払えない場合は、金融機関が抵当権を実行して自宅を競売にかけ、もしそれでも残債が返済しきれない場合には、自己破産に一気に突き進んでしまう危険性があります。
こうなってしまう前に、住宅ローンを借り入れている金融機関に連絡して、契約内容を確認することです。借入状況、照会時点までの返済履歴などがわかりますし、借り換えなどをして契約内容が変わっている場合もあるので契約書類一式を必ず確認しましょう。

4.まとめ

離婚の話が持ち上がったら、後回しになりがちな不動産に関する問題を冷静に把握、整理するために、権利関係、不動産の内容を登記簿謄本で確認!!
売却する予定があれば、資産価値をあらかじめ把握!!
住宅ローンを借り入れている金融機関で借入状況や契約内容を確認!!
今、誰が、どのくらい債務を負っているのかをしっかり認識すること、これが、離婚後、不動産に関するトラブルに巻き込まれないためにとても大切なことなのです。

 

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2018.02.01

破産手続の管財事件と同時廃止事件って何ですか?

破産事件は,申立後の手続きの流れとして,大きく分けると管財人が選任される管財事件と,管財人が選任されないまま手続きが終了する同時廃止事件の2種類があります。

そこで,今回は,この2種類の手続きの違いと,どちらの手続きになるかについての判断基準について,お話しをさせていただきます。

1 管財事件と同時廃止事件とは

⑴管財事件

管財事件とは,破産手続開始決定と同時に,裁判所が管財人を選任し,管財人が破産者の保有資産を管理し,換価手続等を進めていく手続です。
個人破産の場合,破産手続は免責許可を得るために行われることが多いため,「破産手続=免責のための手続」として認識されているかもしれませんが,本来,破産手続とは,破産者の財産を換価して債権者に公平に分配していくことを主眼とする手続ですので,負債額の調査,保有資産の管理,換価,配当がメインであり,当該手続を担う職位として管財人が選任されます。管財人は,公平中立に手続を進める義務があるため,通常は,裁判所が事案の内容や難易度に応じて弁護士を選任します。
なお,破産法上は,管財事件を原則形態としており,管財事件になった場合は,管財人の報酬も発生します。そのため,破産手続申立時に裁判所に納める費用(予納金)は,その分高くなります。(予納金の金額は,事案の内容や各裁判所によっても異なりますが,最低でも20万は必要になるところが多いようです。なお,破産事件を申立てにかかる必要費用がどのくらいなのかについては,別記事で改めてお話しします。)

⑵同時廃止事件

 同時廃止事件は,「同廃(ドウハイ)事件」として呼ばれることも多いですが,破産手続開始決定と同時に,破産手続を終了(廃止)するという取り扱いをする手続です。
破産手続は,前述の通り,破産者の財産を換価して,債権者に分配する手続を予定しているため,分配すべき財産がない場合は,破産手続を開始しても意味がありません。そのため,手続開始と同時に手続を廃止するという方法を取ります。(なお,手続を開始しても意味がないなら,破産開始決定を出す必要がないのではないかと疑問を思われる方もいるかもしれませんが,破産手続開始決定がなされなければ,免責許可が下りないため,破産手続開始決定を出す意味はあります。)
 同時廃止事件になると,管財人は選任されないため,手続は比較的早く終わります。

2 管財事件と同時廃止事件の判断基準

 それでは,どのような事件が管財事件となり,どのような事件が同時廃止事件となるのでしょうか。この点については,破産法上は明確な基準はなく,各裁判所の運用も異なっているようです。以下では,某裁判所の判断基準をご紹介致します。

<某裁判所が同時廃止事件として処理する運用基準>

⑴原則

某裁判所では,法人ではなく個人破産の申立てであり,かつ破産手続開始決定時に債務者が保有する資産の総額が50万円に満たない場合は,原則として同時廃止手続で処理されています。

⑵例外

しかし,⑴の原則に該当する場合でも,以下の①~⑥類型に該当する場合は,管財人による調査が必要となるため,同時廃止事件ではなく,管財事件として処理されています。

ア 類型①(法人代表者型)
  債務者が法人の代表者に就任しているが,法人については破産申立てをしておらず,債務者個人のみ破産申立てをしている場合
 (法人と個人の財産混同,隠匿の可能性もあるため調査が必要です。)

イ 類型②(個人事業主型)
  債務者が現に又は過去6か月以内に個人事業を営んでいる場合
 (アと同様,事業と個人の財産の混同,隠匿の可能性もあるため調査が必要です。)

ウ 類型③(資産調査型)
  保証債務や住宅ローンを除いた債務が3000万円以上ある場合
 (負債額が極端に大きいため,借入の際に何らかの資産が担保となっている可能性があり,調査が必要と考えられます。ただ,資産がないことが明らかである場合は,調査不要ですので,管財事件ではなく同時廃止事件になります。)

エ 類型④(否認対象行為調査型)
  偏頗弁済(特定の債権者のみに弁済して債権者の公平を害している場合)がされており,当該行為を否認(取り消し)して財産を取り戻す必要がある場合や,否認対象行為を調査する必要がある場合
 (財産の取戻し請求等は管財人が行うため,管財事件となります。)

オ 類型⑤(免責調査型)
  債務者に免責不許可事由が存在する可能性があり,事実の調査が必要な場合
(事実の調査が必要である以上,管財事件となります。なお,免責不許可が明らかな場合は調査不要のため,同時廃止事件として処理されます。)

カ 類型⑥(財団形成型)
  資産の中に不動産があり,換価の余地がある場合や,過払金返還請求訴訟が係属中であり,勝訴の見込みがある場合等,換価対象となる財産が見込まれる場合
 (換価業務は管財人が行うため,管財事件となります。)

3 まとめ

  以上の通り,同時廃止事件と管財事件では,どちらの手続になるかによって,申立時に裁判所に納める費用(予納金)の金額が大きく変わってくるため,その見極めは重要になります。つまり,どちらの手続になるかを明確に見極めなくては,申立時に必要な費用の額が異なるので,破産のために貯めなくてはならない金額が変わって来ます。しかし,その見極めは困難なことも多く,また振分基準に関しては,各裁判所の運用に委ねられていることが多いため,まずは,破産事件を多く取り扱っている経験豊富な弁護士にご相談されることをお勧めします。

2018.01.31

破産するとどうなるの?家族や職場に知られますか?

 皆さんは、「破産」という言葉に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。破産という言葉に抵抗心を抱かれる方は多いと思いますが、中には、破産することがまるで罪を犯すことであるかの様に罪悪感を抱かれる方や、極度に否定的なイメージを抱いている方もいらっしゃいます。
 また、「選挙権がなくなる」「職場に通知が行く」「会社を辞めさせられてしまう」等、誤った先入観を持たれている方も多く、本来であれば破産することがその人にとって最適であるにもかかわらず、誤ったイメージのために破産に踏み出せない人も多くいらっしゃいます。
 そこで、今回は、破産したら債務者(破産者)に対してどのような法的効果が生じるのかについてお話しようと思います。

1 破産の事実は第三者に知られますか?

 破産すると、身内や職場に破産した事実が知られてしまうと思っている方もいます。
しかし、法的には、破産したからといって、当然に身内や職場に破産の事実についての通知が来ることはありません。
 法的には、破産した場合、官報に、破産者の氏名と破産した事実が載りますが、官報以外に破産の事実を第三者に知らせることは義務付けられていません。官報とは、法律の制定・改定等があったときに、その内容を国民に対して知らせるために国が出している新聞のようなもので、一般の方であれば、日常生活の中で官報を目にする機会はほとんどないでしょう。ですので、法的には、第三者が破産の事実を知る機会としては、官報を見る以外にないため、破産の事実を知る人はごく一部の人に限られます。
 しかし、事実上破産の事実が広がってしまうということはよくあります。例えば、破産手続を申し立てる際、債権者に対しては、債権を調査するために通知を送るため、債権者に対しては破産予定であることは知られてしまいます。また、破産する場合、保証人にも通知が行きますので、債権者や保証人に対しては、事実上破産の事実が知られてしまうでしょう。
 ですので、身内や職場に破産の事実を知られるのではないかと不安に思われているのであれば、身内や職場に対して借入をしていたり、保証人になってもらったりしていない限り、破産の事実を知られることはありませんが、破産の事実を知った債権者から破産の噂が広まってしまうという事実上のリスクはあります。

2 破産した場合に債務者に生じる効果

 次に、破産した場合、債務者(破産者)にどのような法的効果が生じるかについてみていきます。

①説明義務

 破産する場合、破産者は、債務や資産の状況、破産に至った経緯等について、裁判所や債権者に説明する義務を負います。そのため、裁判所から出頭を求められたら、出頭しなければならず、出頭を拒んだ場合は、強制的に引致される可能性もあります。

②居住地の制限

 上記のとおり、破産者は諸々の説明義務を負っていますので、当該説明義務を果たすために、裁判所と連絡がつく状況を確保する必要があります。そのため、債務者は転居の際や旅行・出張等で居住地を離れる場合には、裁判所の許可が必要になります。
 なお、居住地の制限は、上記の通り、破産者に逃亡を防止して説明義務を履行させるために課されるものですので、裁判所から、「この家に住みなさい」「この家は家賃が高いから居住を認めない」等といった具体的な居住地を指定されるような制限ではありません。

③重要財産開示義務

 破産者は、不動産、現金、有価証券、預貯金等の重要な財産について開示義務を負い、その内容を記載した書面を裁判所に提出する義務があります。この書面は、破産管財人や債権者等の利害関係人に閲覧されるものになり、閲覧の制限はできません。
 なお、①の説明義務及び③の重要財産開示義務に違反した場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となり、免責不許可事由にも該当します。

④郵便物の管理

 破産手続に破産管財人が選任されている場合、破産手続きが終わるまでの間、破産者に対して届く郵便物については、管財人が郵便物を管理し、中を見ることができるとされています。これは、郵便物の中から、新たに破産者の財産を発見することもありますし、財産が隠匿されていないかを確認する契機となるため、管財人が郵便物を管理することになっています。

⑤資格の制限

 破産した場合、職種によっては資格制限を受ける場合もあります。例えば、弁護士や税理士、公認会計士等の仕業や、宅地建物取引士、貸金業者、生命保険募集人等、各種法令によって制限される資格が規定されています。また、後見人等、他人の財産を管理する役職については欠格事由となります。
 なお、資格については、永久的に制限されるわけではなく、免責許可の決定が確定すれば資格制限は外れ、従前通り業務に従事できます。

⑥信用情報の毀損、ブラックリストへの掲載等

 破産する場合、債権者に対して通知を送るため、事実上ブラックリストに載ることになります。そのため、破産後一定期間はローンやクレジットが組めなかったり、借入れを拒否される等の支障が生じ得ます。なお、ブラックリストへの掲載は、法的効果ではなく、事実上行われていることですので、どのくらいの期間ブラックリストに掲載されるのかについての明確な基準はありません。5~10年と言われることもありますが、破産後もすぐにカードが作れたというケースもあり、取り扱いはケースによって異なるようです。
 なお、信用情報の毀損は、必ずしも破産手続特有のものではなく、債務整理手続として弁護士が債権者に対して受任通知を送付する場合でも生じるものといえます。ですので、破産せざるを得ない状況の方々は、すでに滞納が多数発生しており、すでに信用情報が毀損されている場合が通常です。だとすれば、破産してもしなくても、信用情報は毀損されている状況ですので、これを恐れて破産を躊躇するのはあまり意味がないでしょう。

3 まとめ

 以上のように、破産した場合は、債務者(破産者)に対して諸々の義務や法的効果が生じますが、実際の生活では、クレジットカードが作れなかったり、一定の職業の場合は資格が制限される等の支障が生じる程度で、選挙権が奪われたり、会社をクビになったり、近所の人に知られたり等の法的効果はありません。
 破産という言葉の響きに、極度のマイナスイメージを抱いて破産を躊躇される方が多いですが、破産は、経済的更生を確保するために法的に認められた権利ですので、有効に活用すべきです。まずは、弁護士と相談をして、ご自身が破産した場合に日常生活にどのような支障が発生するのか、詳しく検討してみましょう。
 多重債務問題にお悩みの方や、破産手続きに不安を抱かれている方は、早いうちに一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

2018.01.30

届出をした破産債権に異議が出された!争いのある破産債権はどうなるの?

【債権者Aさんの相談】
先日,お金を貸していた友人が破産したため,裁判所に破産債権の届出を行いました。しかし,届出をした債権について,管財人から「証拠がなく,債務者本人も認めていない」という理由で異議が出されてしまいました。友人だったので,契約書等は作成しておらず,証拠はありません。けれども貸したのは事実です。この場合,貸付金について配当は受けられないのでしょうか。

債権者が破産債権の届出行った場合,債権の金額や,優先順位等について,管財人や他の債権者が異議を出すことがあります。今回は,届出をした破産債権に異議が述べられた場合,当該債権を有する債権者としてはどのように対応すればいいかについて,お話ししたいと思います。

1 異議の効果

⑴ 異議がない場合

届出債権について管財人や他の債権者から特段異議が述べられなかった場合,その債権は確定し,確定判決と同一の効力を持ちます。債権が確定すると,債権額に応じて割合的に配当を受けることになります。

⑵ 異議がある場合

異議が出されても,証拠を補充することによって債権の存在を証明すれば,異議が撤回される場合もありますが,異議が撤回されなければ,破産債権の内容が確定されず,配当は受けられません。
そこで,異議が出された破産債権を有する債権者としては,配当を受けるために債権の存在を主張立証して確定する必要があります。債権の確定手続は,異議を出された破産債権について判決等があるか否かによって債権者が行うべき手続の負担は全く異なってきます。判決等がある場合は,その債権の存在は一応確からしいと言えるため,債権者が主導して確定手続をする必要はありませんが,判決等がない場合は,債権者が主導して後述の確定手続(査定申立てや異議の訴え)を提起することになります。

 

2 査定の申立て(判決等が一切ない場合)

⑴ 査定の申立て

 争われている債権について,判決等が一切ない場合,異議を出された債権者は,債権を確定させるために,異議を述べた債権者や破産管財人を相手方として,裁判所に債権査定の申立てを行わなければなりません。なお,異議を述べる者が複数いる場合は,その全員を相手方にする必要があります。
査定の申立ては,届出債権の調査期間の末日又は調査期日から1か月以内に申立てをする必要があります。また,手続の中では審尋が予定されており,裁判所は,債権者から意見を聴取した上で,債権の存否や額等について決定する裁判を行います。
この結果について不服がある場合は,後述の査定異議の訴えを提起して争うことになります。なお,異議の訴えが提起されなければ,債権は確定します。

⑵ 査定異議の訴え

査定申立ての決定に対して異議がある場合は,異議の訴えを裁判所に提起することになります。これは,通常訴訟ですので,他の裁判と同様,債権の存否等について,証拠などを提出して主張・立証することになります。

 

3 異議が出された届出債権について既に訴訟が係属している場合

 管財人等から異議が出された破産債権について,判決等がない場合には,査定の申立てを行うのが原則です。しかし,判決は未だ出ていないものの,既に訴訟で債権の存否を争っている最中の場合には,その時点で改めて査定の申立てをするよりも,当該訴訟で提出された訴訟資料を流用した方が審理もスムーズですので,その場合は,査定の申立てではなく,係属中の訴訟を受継する形で債権の確定手続を行います。
 例を挙げると,債権者が債務者に対して貸金返還請求訴訟を提起して,債権の存否を争っていたところ,債務者に破産手続開始決定が出ると,当該貸金訴訟は中断します。そして,債権者は,破産債権の額を管財人に届出をしますが,管財人が異議を述べた場合,債権者は,査定の申立てをする必要はなく,中断していた貸金訴訟を受継して,管財人に対し,破産債権の確認訴訟を提起することになります。

4 判決等がある場合

異議が出された債権について,既に「判決等」がある場合は,当該債権を有する者が主導して手続をする必要はなく,異議を出した側(管財人や他の破産債権者)が,当該債権を有する者に対して,裁判を提起して債権の確定手続を行うことになります。
ここで,「判決等」と記載しましたが,判決は未確定の場合も含みます。また,判決だけでなく,執行力ある債務名義も含まれます。執行力ある債務名義とは,執行文の付与された確定判決,和解調書,調停調書や執行認諾文言付の公正証書等です。異議を出された届出債権が,このような執行力ある債務名義や未確定判決で認められたものである場合は,その債権の存在は一応確からしいため,それを争う側が主導して裁判を提訴する必要があります。なお,異議を出した側から結局裁判の提起がなされなければ,異議がないものとみなされ,債権はそのまま確定します。
提訴する裁判については,「破産者がすることのできる訴訟手続」(破産法129条)に限られます。「破産者がすることのできる訴訟手続」とは,未確定判決がある場合は上訴の手続になります。他方で,確定判決がある場合は,争い方によります。例えば,確定判決後,既に債権が弁済されており,存在しないという理由で争う場合には,「請求異議の訴え」を提起することになりますし,確定判決の手続そのものに瑕疵があると争うなら,「再審の訴え」を提起することになるでしょう。

5 まとめ

以上の通り,届出債権に異議が出された場合,配当を受けるためには債権の存在を証明し,債権の存否を確定しなければなりません。破産手続という特別な手続の中で行われますが,結局は,証拠を集めて債権の存在を主張立証する作業となり,通常の民事訴訟と同じような作業が必要になりますので,ご自身の債権をしっかりと認めてもらうためには,弁護士にご相談されることをお勧めします。但し,破産手続である以上,配当対象財産は限られており,苦労して認めてもらった債権であっても,債権額や債権の優先順位,配当額によっては,確定手続にかける労力や費用が見合わない可能性もあります。そこで,異議を出された場合は,そもそも確定手続に進んだ方が得なのか損なのか等,そのあたりを見極めることがまず重要となりますので,早い段階で弁護士にご相談されることをお勧めします。

2018.01.29

離婚した夫が破産しました。財産分与や慰謝料、養育費の支払いはどうなるのでしょうか。

【Aさんのご相談】

夫が浮気をしたため、夫とは離婚することにしました。離婚協議の結果、養育費として月3万円、財産分与として400万円、不貞の慰謝料として100万円を支払ってもらうことで合意し、そのうち財産分与については300万円を離婚時、残りの分と慰謝料を毎月合計10万ずつ(財産分与5万、慰謝料5万)分割で払ってもらうことになりました。
しかし、離婚後まもなく夫は破産し、先日、免責決定が出ました。免責決定を受けても、養育費や慰謝料、財産分与については支払いを続けてもらえるのでしょうか。また、既に財産分与としてもらった300万円については、破産直前に譲り受けた財産として否認されてしまうのでしょうか。

離婚に伴い、養育費、財産分与、慰謝料等について取り決めをした後に、支払義務者が破産してしまうといったケースはよく見られます。そこで、今回は、離婚に伴う各種請求権が、破産手続上どのように扱われるかについてご説明したいと思います。

 

1 破産により免責される債権とは?

 破産手続では、免責という制度があり、免責決定が出ると破産手続開始前の原因に基づいて発生した請求権(これを「破産債権」と言います。)については、原則として免除されることになります。
 しかし、免責制度は、債権者に対して及ぼす不利益も大きく、また、破産によって免責を認めることが不合理な結果を招くものもありますので、破産法は一定の債権については、免責の対象から除外する扱いをしており、これらの債権を「非免責債権」と言います。なお、非免責債権の種類は個別に破産法に規定されています。

2 Aさんの離婚に伴う各種請求権は非免責債権にあたる?
まず、前提としてAさんは、破産前に離婚が成立し、離婚条件が合意されているため、養育費、財産分与、慰謝料等の各種請求権は破産債権に該当します。
それでは、非免責債権にあたるのか、以下個別に検討していきます。

①養育費

 養育費は、「子の監護に要する費用」(民法766条1条)として、非免責債権として規定されています(破産法253条1項4号ハ)。
 よって、破産手続に影響せず支払いを受けることができます。

②財産分与

 財産分与は、夫婦共有財産の清算という意味合いでなされることが通常ですが、場合によっては今後の生活保障という扶養的趣旨、さらには慰謝料的意味合いが含まれていることもあり、財産分与のなされた趣旨に応じて実質的に判断する必要があります。
 このうち、通常の財産分与の趣旨である清算的財産分与の場合や、慰謝料の意味合いで行われた財産分与に関しては、非免責債権には当たりませんので、免責されることになります。
 これに対し、扶養的財産分与に関しては、非免責債権に該当する可能性があります。
 今回のAさんの場合、慰謝料については別途合意しているため、Aさんの財産分与請求権は、慰謝料的意味合いはないと言えるでしょうし、扶養的財産分与を基礎づける事情も見当たらないので、非免責債権には該当しないと考えられます。
 よって、財産分与請求権として残っている分割金部分については免責されてしまいます。

③不貞による慰謝料請求権

 不貞による慰謝料請求権は、不法行為に基づく損害賠償請求権に該当します。不法行為に基づく損害賠償請求権が非免責債権に該当するかについては、破産法では、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」については非免責債権として規定されています。
 そこで、不貞行為が「悪意で加えた不法行為」と言えるかが問題になります。
 これについての最高裁の判例はありません。しかし、下級審の判断の中には、「悪意で加えた不法行為」とは、単純な故意による不法行為ではなく、積極的な害意に基づく不法行為であると解釈して、非免責債権には該当せず、免責されると判断しているものが複数あります。
 たとえば、東京地方裁判所平成15年7月31日判決では、不貞期間が5年に及び、不貞相手の女性が妻との離婚を確認することもなく男性と挙式まで挙げていたという事案において、裁判所は、「不法行為としての悪質性は大きいと言えなくもないが、不貞相手の女性から妻に対して直接向けられた加害行為はなく、全事情を総合勘案しても「悪意をもって加えた不法行為」には該当しない」と判断し、慰謝料請求権については免責されると判断しています。
 上記裁判例の立場では、よほど悪質でない限り非免責債権とされるのは難しく、本件冒頭事例のAさんの慰謝料請求権も免責されてしまうと思われます。

 

3 既に財産分与として支払いを受けた財産は否認されてしまうの?

 破産直前のように債務状況が悪化している時点で、財産を特定の債権者に支払う行為は、破産後に管財人から否認(=取消)されることがあります。
それでは、破産直前になされた財産分与についても、否認されてしまうのでしょうか。
これについては、財産分与とは、婚姻期間中に築いた夫婦の共有財産を清算する意味合いからすれば、夫婦の財産のうち2分の1に関しては、当然に相手方配偶者に分与を求める正当な権利があるといえますので、適正な金額の財産分与であれば、原則として否認の対象にならないと考えられています。
しかし、財産分与という名目で、本来求めうる適正額を大幅に上回る財産を不当に譲り受けた等の場合には、無償で財産を散逸させ、債権者を害しているといえますので、不当に過大な部分については否認対象行為になります。なお、財産分与が適正額であるか否かについては、財産の額のみならず、その形成に至った一切の事情を考慮した上で決まりますので、財産分与に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

4 まとめ

 以上の通り、離婚に伴う各種請求権については、その性質に応じて破産手続上の取り扱いが異なってきます。特に、財産分与に関しては、財産分与合意時にどのような事情を考慮して当該金額が決められたのか等について実質的な判断を経なければ、破産によって否認されるか否か、免責されるか否かについて判断が困難ですので、元配偶者が破産してお悩みの方は、破産と離婚に強い弁護士のご相談されることをお勧めします。

2018.01.28

民事再生手続ってなぁに?

【A社社長の相談】

うちの会社は飲食事業を経営しており、直近の売上は約1億円ですが、負債が約3億円あり、税金の滞納が500万円程あります。3年前に、新店舗を開店し、設備投資をしたことが原因でその後赤字に転じてしまい、現在に至っています。それまでは経営は順調でした。月末に、仕入先に対して500万円を支払わなければならないのですが、資金調達の見込みが立ちません。経営が上手くっている店舗もあるので、なんとか会社を継続したいのですが、現状の債務を完済することはできません。どうすればいいでしょうか。

今回は、A社のように、債務の完済は難しいものの、不採算部門を切り捨てれば事業再建の見込みがある場合に適する債務整理の方法として、民事再生手続についてご説明したいと思います。

1 民事再生手続とは?

 民事再生手続とは、裁判所を利用した債務整理手続の1つです。裁判所を利用する債務整理手続は、大きく分けて清算型と再建型の2つがあります。どちらの手続も、債務が一定程度免除されるため、今まで返済に充てていたお金を生活や事業に回すことができ、生活や事業を立て直すことができます。
清算型とは、破産手続のことで、原則として保有財産を全て換価して弁済に充て、返しきれない債務については免責するという手続です。他方で、再建型の手続は、一定程度債務を圧縮した上で、将来の収入を原資に長期間の弁済計画を立て、分割弁済を行って債務を整理していく手続のことです。再建型の手続には、法人も個人も利用できる一般的な手続として民事再生手続がありますが、実際は会社において利用されることが多く、個人向けの再生手続としては、小規模個人再生手続や給与所得者等再生手続が準備されています。なお、上場企業等、大規模な会社の再建手続として会社更生手続もあります。

2 民事再生手続のメリットとデメリット

 民事再生手続には、以下のとおり様々なメリットやデメリットがあります。

<メリット>

①破産に至る前の経済状況でも申立てが可能。
⇒破産する場合は、破産開始原因(債務超過又は支払不能の状態にあること)が必要となりますが、民事再生手続の場合は破産開始原因まで存在しなくとも、「破産開始原因が生じるおそれがある場合」又は「事業の継続に著しい支障を来たすことなく、弁済期にある債務を弁済することができない場合」であれば、申立てができます。
*例えば、事業用資産を売却すれば債務を返せるが、その資産を売ってしまうと事業の継続が困難になってしまうというような場合、破産手続は行うことはできませんが、民事再生手続であれば申立てが可能となります。

②現在の資産を保有し続けることが可能。(車や家を手放さなくてよい)
⇒破産手続の場合は、申立時に保有している財産を弁済原資とするため、自由財産に該当しない限り原則として全ての財産が換価の対象となりますが、民事再生手続であれば、将来  の収入を弁済原資とするため、現状保有している資産については引き続き保有することができます。

③免責不許可事由があっても問題ない。
⇒破産手続の場合、免責不許可事由があれば負債は消えず、債務整理の意味をなしませんが、民事再生手続では免責不許可事由の有無に関わらず債務整理が可能です。

④資格制限がない。
⇒破産手続の場合、職業の内容によっては資格制限が生じますが、民事再生手続の場合はその心配がありません。

⑤再生計画の定めで認められた権利を除いて、再生債務者の再生債権は免責される。
⇒再生計画が認可されると、再生計画に定められた債務を返済すれば、残りの債務は免除されます。任意整理手続と異なり、利息のみならず元本についても大幅なカットが見込めます。

⑥再生計画に反対する債権者がいても、可決要件を満たせば権利変更が生じる。
⇒任意整理の場合は、同意しない債権者がいる限り、当該債権者との間の債務については減免されませんが、再生手続では、可決要件を満たせば反対債権者も再生計画に拘束することができ、再生計画の通りに権利変更(債務の圧縮・弁済猶予等)が生じます。
 なお、可決要件は、㋐議決権を行使した議決権者の頭数による過半数が賛成し、かつ㋑議決権総額の2分の1以上の議決権を有する者が賛成することです。

<デメリット>

①費用がかかる。
⇒再生手続を申し立てる際、裁判所に費用を予納する必要がありますが、法人の再生手続の場合は最低でも数百万円はかかります。また、民事再生手続の申立ては複雑であり、通常は弁護士に依頼して行うため、弁護士費用もかかります。弁護士費用に関しては、各法律事務所によって異なりますが、法人の場合は数百万円は見込んでおいた方が良いでしょう。

②再生計画が可決・認可されると、確定判決と同一の効力を有するため、不履行の場合は強制執行が可能となる。
⇒再生計画は10年以内の期間を定めて分割弁済の計画を立てることになります。このようにわりと長期間の分割弁済計画となりますが、再生計画で決まった債務の内容については、責任を持って履行しなければなりません。不履行がある場合には強制執行が可能となりますし、再生計画の認可が取り消されてしまうおそれがあります。

③ブラックリストに載る
⇒これは、民事再生手続特有のことではなく、破産や任意整理の場合も同様ですが、ブラックリストにはのるため、クレジットカード等は作りづらくなります。

 

3 まとめ

 以上の通り、民事再生手続には、様々なメリットとデメリットがあります。なお、民事再生手続で決まった債務の内容は責任をもって履行しなければならないため、再生手続を選択する際には、慎重に見通しを立てる必要があります。債務整理にお悩みの方は、一度専門家の弁護士にご相談されることをお勧めします。

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