弁護士コラム

2019.02.01

【離婚問題】住宅ローンの連帯保証と連帯債務。知っておきたいデメリット

住宅ローンの契約をした時に、夫婦で「主債務者」と「連帯保証人若しくは連帯債務者」の関係となっている場合、離婚したとしても、住宅ローンの完済まで、連帯保証人・連帯債務者の関係は続きます。

この連帯保証・連帯債務の違いや、ローン残債がある場合の名義変更などについて見ていきましょう。

〇住宅ローン控除の違いを確認しましょう

<連帯保証人>
債務者の返済が滞った場合、代わりに返済する義務があります。「連帯して」保証をしているので、催告の抗弁(まずは債務者に請求してくださいと言えること)や検索の抗弁(先に債務者の財産を差し押さえてくださいと言えること)ができません。

<連帯債務者>
連帯債務者は主債務者と連帯して債務を負っています。つまり、連帯債務者は主債務者と同一の立場ということになるため、いつでも金融機関から返済請求を受ける立場にあります。要するに、債務者本人ですね。

連帯保証人、連帯債務者の違いはご理解いただけましたでしょうか?
住宅ローンの契約において、連帯保証、連帯債務のどちらの形式での契約となるかは金融機関によって取り扱いが異なるので、事前によく確認して各々の性質を理解したうえで契約するようにしましょう。

〇所有名義と住宅ローン名義はまるで別物

<ローン残債があるとローン名義の変更はまず無理>
 離婚時に夫婦の共有財産として不動産が存在する場合、財産分与の過程で不動産の名義をどちらにするかを話し合う必要があります。
住宅ローンの残債の無い不動産については、夫婦間の協議によりどちらが不動産を所有するかを決定し、法務局で所有権移転登記を行うことで不動産を取得する側の名義にすることは可能です。
しかし、問題となるのは住宅ローンの残債がある不動産を所有するケースです。

「それは、なんで???」

住宅ローンを借りる際に金融機関と取り交わす「金銭消費貸借契約」…これが厄介なのです。
なぜならば、契約において「住宅ローンの名義を変更する場合は、金融機関の承認を得なければならない」という決まりを設けている場合がほとんどだからです。
金融機関はローン残債がある間は、簡単に名義変更に応じてくれません。

「妻が不動産を取得するので、今後の住宅ローンの支払いも妻が引き受けます。妻が新たに単独で住宅ローンを申し込むので、ローンの名義人である妻へ名義変更するというのはどうですか?」

まず妻に返済基準を満たす収入があるのかが大きな問題となります。
加えて、担保となる自宅があっても、担保に入れる「自宅の時価が住宅ローンの残債を下回る」いわゆるオーバーローンの状態では、住宅ローンの借り換えは難しいのが現状です。

「妻に所有権移転登記だけする!というのはどうですか?」

名義変更することは可能ですが、万が一、住宅ローンの借入先である金融機関に無断で不動産の所有名義を変更したことが知られると、住宅ローンの契約内容によっては契約違反となり一括返済を求められることがあります。

以上の通り、住宅ローンの残債がある不動産の所有名義変更には、一定のハードルがあるのです。

〇離婚破産のカギを握るのは、オーバーローンかアンダーローンか

<八方ふさがりなのはどっち?>
離婚後、家を売却する際に問題になるのが「不動産の価格(時価)」と「住宅ローン残高の有無」です。ここでは、2つのケースが考えられます。

①アンダーローン【不動産の価格(時価)>住宅ローン残高】
②オーバーローン【不動産の価格(時価)<住宅ローン残高】

そもそも、住宅ローンが完済されている場合、不動産の売却益を夫婦間で財産分与の対象とするだけであり、残る問題は売却益を取得する割合の問題だけです。
また、住宅ローンの残高が残っている場合でも、売却する不動産の価値が住宅ローンの残高を上回る場合は、先に述べたアンダーローンの状態となり特に住宅ローンによる問題は発生しません。
不動産の売却後は、売却代金を住宅ローンの残債に充当し、残る売却益を財産分与の対象とすることになります。そのため、離婚に伴って破産に追い込まれる等は起こらないでしょう。

問題となるのは、住宅の価値が住宅ローンの残高を下回るオーバーローンの場合です。オーバーローンといっても、住宅の価値と住宅ローンの残高の差額により対応は変わってきます。差額が小さく、他の財産で補える状態であれば大きな問題とはなりません。
しかし、差額が大きく、差額を補えるだけの財産を有していない場合には大きな問題となります。このような場合に、住宅ローンの残債を支払い続けることが現実的に難しく、「自己破産」という選択肢を選ばざるを得ないことがあります。

本来、オーバーローンのケースでは、夫婦のどちらかがそのまま住み続け、住宅ローンの支払いを続けることが一般的です。しかし、離婚が前提となっている場合、どちらも「家が必要ない」「家に住みたくない」ということは多々あります。
こうなると、家を売却し住宅ローンの残債だけ残すわけにはいかず、しかし家も必要ないという状況に陥ります。このようなケースでは家を賃貸物件として活用し、賃料収入で毎月の住宅ローンを補おうという方も多いです。
しかし、賃貸として活用するには、事前にリフォーム代として一定額が発生し、その後も長期に及び借り手が現れない、修繕の発生による支出などデメリットも考慮しておかなければなりません。また、住宅ローンの契約内容によっては、賃貸として活用することを禁止している場合もあるため事前の確認が必要です。

よくあるトラブルとしては、「不動産と住宅ローンの名義は夫のまま」で「ローンも夫が支払っていく」が、「家には妻が住み続ける」という状況です。
そもそも、住宅ローンが残る他人名義の家に住むということは、住宅ローンの返済が滞ることにより、実際に住んでいる妻の知らないところで住宅ローンの支払いが滞ることがあり得ますし、それが深刻化して競売に発展することもあります。

また、妻が知らないうちに家を第三者へ売却されてしまい、新たな所有者から急に退去を求められるというケースもあり、常にリスクに脅かされ生活することになります。
そして、妻が連帯保証人若しくは連帯債務者になっている場合、債権者から妻へ対し住宅ローンの残額を一括で請求され、自己破産に陥るという結果に繋がります。
八方ふさがりともいえるようなこのオーバーローン状態が離婚破産に陥る一番の原因です。

〇自己破産してしまったら、人生はどうなってしまう?

<借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度>
「どうしても、住宅ローンが支払えない!」となれば、最終手段は自己破産となります。離婚の話とは少しずれてしまいますが、ここで自己破産についてお話したいと思います。

自己破産とは、借金に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える制度です。
破産をするためには、財産があればできないので、基本的に家や車、有価証券、貴金属など一定の価値のある財産は換価され債権者に配当されます。一定額以上の預貯金も債権者への配当の対象となります。

<自己破産のメリットとデメリット>
以下、自己破産のメリットとデメリットです。

●メリット
・免責が得られれば、借金がなくなる(税金等の非免責債権は除く)
・負債を相続人に残さないですむ
・自己破産手続きを代理人に依頼した場合、債権者からの連絡はすべて代理人(弁護士)が受けるので、督促などを受けなくてすむ

●デメリット
・官報に名前と住所が載る
・クレジットカードが使用できなくなる
・信用情報機関に破産の事実が記録される(→通称ブラックリストに載る)
・信用情報が回復するまで新たにローンを作成することが難しくなる
・資産を手放さなければならない
・破産手続き中は一部の仕事に制限がかかる

自己破産をした後は債務もなくなり、普通の生活を送ることには支障がありません。
しかし、長期間に及びローンを組むことが出来ないなど一定の制限はありますので、可能であれば自己破産せざるを得ない状況に陥る前に何らかの対策を講じるべきです。

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