弁護士コラム

2018.01.28

民事再生手続ってなぁに?

【A社社長の相談】

うちの会社は飲食事業を経営しており、直近の売上は約1億円ですが、負債が約3億円あり、税金の滞納が500万円程あります。3年前に、新店舗を開店し、設備投資をしたことが原因でその後赤字に転じてしまい、現在に至っています。それまでは経営は順調でした。月末に、仕入先に対して500万円を支払わなければならないのですが、資金調達の見込みが立ちません。経営が上手くっている店舗もあるので、なんとか会社を継続したいのですが、現状の債務を完済することはできません。どうすればいいでしょうか。

今回は、A社のように、債務の完済は難しいものの、不採算部門を切り捨てれば事業再建の見込みがある場合に適する債務整理の方法として、民事再生手続についてご説明したいと思います。

1 民事再生手続とは?

 民事再生手続とは、裁判所を利用した債務整理手続の1つです。裁判所を利用する債務整理手続は、大きく分けて清算型と再建型の2つがあります。どちらの手続も、債務が一定程度免除されるため、今まで返済に充てていたお金を生活や事業に回すことができ、生活や事業を立て直すことができます。
清算型とは、破産手続のことで、原則として保有財産を全て換価して弁済に充て、返しきれない債務については免責するという手続です。他方で、再建型の手続は、一定程度債務を圧縮した上で、将来の収入を原資に長期間の弁済計画を立て、分割弁済を行って債務を整理していく手続のことです。再建型の手続には、法人も個人も利用できる一般的な手続として民事再生手続がありますが、実際は会社において利用されることが多く、個人向けの再生手続としては、小規模個人再生手続や給与所得者等再生手続が準備されています。なお、上場企業等、大規模な会社の再建手続として会社更生手続もあります。

2 民事再生手続のメリットとデメリット

 民事再生手続には、以下のとおり様々なメリットやデメリットがあります。

<メリット>

①破産に至る前の経済状況でも申立てが可能。
⇒破産する場合は、破産開始原因(債務超過又は支払不能の状態にあること)が必要となりますが、民事再生手続の場合は破産開始原因まで存在しなくとも、「破産開始原因が生じるおそれがある場合」又は「事業の継続に著しい支障を来たすことなく、弁済期にある債務を弁済することができない場合」であれば、申立てができます。
*例えば、事業用資産を売却すれば債務を返せるが、その資産を売ってしまうと事業の継続が困難になってしまうというような場合、破産手続は行うことはできませんが、民事再生手続であれば申立てが可能となります。

②現在の資産を保有し続けることが可能。(車や家を手放さなくてよい)
⇒破産手続の場合は、申立時に保有している財産を弁済原資とするため、自由財産に該当しない限り原則として全ての財産が換価の対象となりますが、民事再生手続であれば、将来  の収入を弁済原資とするため、現状保有している資産については引き続き保有することができます。

③免責不許可事由があっても問題ない。
⇒破産手続の場合、免責不許可事由があれば負債は消えず、債務整理の意味をなしませんが、民事再生手続では免責不許可事由の有無に関わらず債務整理が可能です。

④資格制限がない。
⇒破産手続の場合、職業の内容によっては資格制限が生じますが、民事再生手続の場合はその心配がありません。

⑤再生計画の定めで認められた権利を除いて、再生債務者の再生債権は免責される。
⇒再生計画が認可されると、再生計画に定められた債務を返済すれば、残りの債務は免除されます。任意整理手続と異なり、利息のみならず元本についても大幅なカットが見込めます。

⑥再生計画に反対する債権者がいても、可決要件を満たせば権利変更が生じる。
⇒任意整理の場合は、同意しない債権者がいる限り、当該債権者との間の債務については減免されませんが、再生手続では、可決要件を満たせば反対債権者も再生計画に拘束することができ、再生計画の通りに権利変更(債務の圧縮・弁済猶予等)が生じます。
 なお、可決要件は、㋐議決権を行使した議決権者の頭数による過半数が賛成し、かつ㋑議決権総額の2分の1以上の議決権を有する者が賛成することです。

<デメリット>

①費用がかかる。
⇒再生手続を申し立てる際、裁判所に費用を予納する必要がありますが、法人の再生手続の場合は最低でも数百万円はかかります。また、民事再生手続の申立ては複雑であり、通常は弁護士に依頼して行うため、弁護士費用もかかります。弁護士費用に関しては、各法律事務所によって異なりますが、法人の場合は数百万円は見込んでおいた方が良いでしょう。

②再生計画が可決・認可されると、確定判決と同一の効力を有するため、不履行の場合は強制執行が可能となる。
⇒再生計画は10年以内の期間を定めて分割弁済の計画を立てることになります。このようにわりと長期間の分割弁済計画となりますが、再生計画で決まった債務の内容については、責任を持って履行しなければなりません。不履行がある場合には強制執行が可能となりますし、再生計画の認可が取り消されてしまうおそれがあります。

③ブラックリストに載る
⇒これは、民事再生手続特有のことではなく、破産や任意整理の場合も同様ですが、ブラックリストにはのるため、クレジットカード等は作りづらくなります。

 

3 まとめ

 以上の通り、民事再生手続には、様々なメリットとデメリットがあります。なお、民事再生手続で決まった債務の内容は責任をもって履行しなければならないため、再生手続を選択する際には、慎重に見通しを立てる必要があります。債務整理にお悩みの方は、一度専門家の弁護士にご相談されることをお勧めします。

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