弁護士コラム

2017.09.09

【離婚問題】遺産分割後に新たな相続人が出てきた!どうすれば良い?

遺産分割後に新たな相続人が出てきた!どうすれば良い?

<相談内容>
父が亡くなり,相続人は私と妹です。私たち二人での遺産分割協議も無事終わり,相続登記も完了しました。ところが,その後,父の子と称する人が現れ,父の子であることを認知する旨の判決が出ました。その人は「私も相続人なので遺産分割協議に参加させて下さい。」と言ってきました。既に終えた遺産分割協議をやり直さなければならないのでしょうか。

 遺産分割は,相続人全員で行わなければなりません。しかし,遺産分割を終えた後に新たな相続人が現れるというケースがあります。今回は,そのような場合,遺産分割はどう扱われるかという点についてご説明していきます。

1 原則

 遺産分割協議は,共同相続人全員の合意に基づき行わなければなりません。もし一部の相続人を除外して遺産分割をしてしまった場合には,無効となります。そのため,遺産分割協議にあたっては,被相続人の戸籍を出生から死亡まで収集し,調査をして,相続人を正確に把握することが不可欠です。戸籍を調べて初めて「実は父は再婚で,前妻との間に子がいた」という事実を知るケースはよく見られます。この場合,前妻との間の子も含め遺産分割協議をしなければ無効となってしまうため,注意が必要です。相続人の一部の者の所在が不明な場合には,不在者財産管理人を選任し,遺産分割手続を進めることになります。

2 遺産分割後に新たな相続人が判明するケース

⑴ 死後認知

 冒頭の相談事例のように,被相続人の死後に認知がなされる場合があります。
認知は出生のときに遡ってその効力が生じるため,遺産分割後に認知された者も相続開始のときに相続人であったということになります。しかし,この認知の遡及効は,第三者が既に取得した権利を害することができないとされています。そのため,遺産分割後に認知され相続人となった者は,遺産分割の無効を主張することはできません。そこで,このような相続人の権利を保護するために,遺産分割が終了した後に認知された者については,価額請求の方法による救済が規定(民法910条)されています。
上記の事例では,相談者と妹は,死後認知された人に対し,遺産のうち法定相続分(被相続人の子が3人なので,3分の1)に対応する価額を支払うことになるでしょう。遺産分割協議をやり直す必要はありません。
なお,これは死後認知の場合です。生前に認知されていた者に気付かず遺産分割協議をしてしまった場合には,無効となってしまうため気を付けてください。

⑵ 母子関係存在確認の裁判が確定した場合

Aさんの母が亡くなり,相続人はAさんと弟です。遺産分割協議の結果,Aさんが母のマンションを取得し,その後第三者に売却しました。しかし母には他の夫婦の子として出生届がなされた子Bさんがおり,訴訟で母子関係の存在が確認されました。Aさんと弟が行った遺産分割協議の効力はどうなるでしょうか。
 遺産分割後に母子関係存在確認訴訟によって母子関係が認められた場合は,死後認知の価額請求の規定は類推適用されません。なぜなら,父子関係は認知によって形成されますが,母子関係は母の認知等は不要で,分娩の事実により当然に発生するところに違いがあるからです。

 そのため,遺産分割後に母子関係が認められた者がいる場合,遺産分割は無効となり,新たに判明した相続人も含め遺産分割手続を行わなければなりません。
 今回の事例でも,Aさんと弟が行った遺産分割協議は無効となり,Bさんも含め3人で遺産分割を行う必要があります。これは,遺産が第三者にわたっている場合でも変わりありません。Bさんは,Aさんがマンションを売却した第三者に対し,自己の相続持分を主張するか,マンションの売買契約を認めた上で,Aさんに対し不当利得返還請求をすることになると考えられます。また,マンションを譲り受けた第三者は,Bさんから相続持分を主張された結果,Aさんとの売買契約を解除し,Aさんに損害賠償請求をする可能性もあります。

3 まとめ

 今回は,遺産分割後に新たな相続人が出現した場合についてご説明しました。
 遺産分割をするにあたって,まず不可欠なのが,被相続人の戸籍を調べることです。現状で把握している相続人以外に相続分を有する人がいないか,きちんと確認することが重要です。ご自身で調べることに不安がある場合には,弁護士に相続人調査を依頼することも可能です。

 また,遺産分割時に判明している相続人全員で協議を行った場合でも,今回ご説明したように後から相続人が出現する可能性もあります。遺産分割が終了し,遺産を第三者に売買してしまったケースなどでは権利関係が複雑になります。新たな相続人が出現した場合には,なるべく早急に弁護士に相談しましょう。遺産分割協議をやり直すことになっても,交渉次第では揉めないで済むこともあります。ご自身で手続を進めることなく,交渉のプロである弁護士に依頼することをお勧めします。

2017.08.25

どんな場合に残業代の請求はできますか?

どんな場合に残業代の請求はできますか?

【Aさん】

残業しても一切残業代が支払われていません。おかしいと思って会社に聞いたところ,「雇用契約書に残業代支給なしと書いてあるでしょ?」と一蹴されました。契約書にそのような記載がある場合,一切残業代は認められないのでしょうか。

【Bさん】

残業代の支払いはありますが,残業時間に見合ってない気がします。どんなに残業が多い月でも,残業代は一定額で打ち止めになっています。残業代はどのように計算するのでしょうか。

近年,労働者保護の流れで労働法改正の動きが進んでいますが,現実社会では,Aさんの会社のように残業代を一切払わないような法令違反の会社は多数存在します。会社は様々な理由付けをして残業代の支払いを拒否してくることがあります。また,Bさんのように,残業代の支払いはあるものの,その計算が適正に行われているかについて疑わしいケースもあります。そこで,今回は,どのような場合に残業代が発生し,残業代はどのように計算するのかについてご説明したいと思います。

1 残業代が発生する場合

以下の場合には,残業代が発生していると考えられます。

①法定労働時間(1日8時間,週40時間)を超えて労働した場合

労基法は,労働者保護の見地から,労働時間に限度時間を設けています。これを法定労働時間といい,法定労働時間を超えて労働させた場合は,原則として違法であり刑事罰対象行為となります。(もっとも,36協定を締結して労基署に届ける等,会社が一定の手続きを踏んでいれば法定労働時間を超えても労働させることが可能となります。)
労基法は,法定労働時間として,1日8時間,1週間40時間と定めており,これを超えた労働時間は残業時間となり残業代が発生します。よく見かけるのは,1日あたりの法定労働時間は遵守しているものの,1週間当たりの法定労働時間を超えている場合に残業代が支払われていないケースです。例えば,1日8時間,週6日勤務の場合は,週合計労働時間は48時間ですので,週法定労働時間の40時間を超えた8時間分については残業代が発生しますので,注意が必要です。

②所定労働時間(雇用契約書や就業規則で定められた労働時間)を超えて労働した場合

雇用契約書や就業規則には,始業,終業時刻が規定されていると思いますが,「始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間」を所定労働時間と言います。例えば,始業時刻10時,終業時刻18時,休憩1時間の場合,所定労働時間は7時間となります。この場合,所定労働時間を超えて労働した時間は残業時間となりますので,例えば今述べた例で19時まで労働した場合,実労働時間は8時間で法定労働時間内ですが18-19時の労働は所定労働時間外の残業ですので,残業代が発生します。(但し,割増はつきません。)
 なお,所定労働時間は,会社が自由に決めることができますが,法令に違反する定めはできませんので,法定労働時間超えの所定労働時間の設定(例えば,1日10時間等)については原則として無効となります。

2 残業代はどのように計算するの?

それでは,残業代が発生するとして,その計算はどのようにすればいいのでしょうか?
まず,残業代は以下の計算で算出します。

残業代=「①1時間あたりの賃金」×「②割増率」×「③残業時間数」

上記算定式の「①1時間当たりの賃金」については,時給制の場合は時給となります。
月給制の場合は以下の通り算定します。

★月給制の場合の1時間当たりの賃金
=基本給÷(1月あたりの平均所定労働時間数)
=基本給÷{(365日―所定休日日数)÷12×1日の所定労働時間数}
(*なお,閏年の場合は366日で計算となります。)
【例】
 基本給30万
 年間の休日日数105日
 1日の所定労働時間数8時間の場合
⇒30万÷{(365日-105日)÷12×8時間}=1734円…「①1時間当たりの賃金」

★②の割増率とは?
・②の割増率は,残業の内容により以下の通り数字が変わります。
・法定労働時間を超えて行われた部分の残業→1.25
 ※所定労働時間を超えるが法定労働時間を超えない残業部分(ex,所定労働時間が7時間で,1時間残業した場合の1時間部分)については,割増はありません(=1で計算)。
・法定休日に行われた労働→1.35
・深夜帯(夜10時―朝5時)に行われた労働→0.25

★③残業時間数とは?
 所定労働時間や法定労働時間を超えて労働した時間数をいいます。

3 こんな場合でも残業代は請求できるの?

①雇用契約書や就業規則に残業代は支給しないと規定されている場合

→請求できます。
(∵残業代を支払わない旨の労働契約や就業規則は,労基法に違反し無効となるため,規定の有無にかかわらず残業代を請求できます。)

②試用期間中だから残業代は支払わないと言われた!

→請求できます。
(※試用期間であっても労働契約は成立している以上,残業代は発生します。)

③年俸制だから残業代は支払わないと言われた!

→請求できます。

④固定残業手当を払っているため,それ以上は支払えないと言われた!

→固定残業代で賄えない部分については別途残業代を請求できます。

⑤タイムカードや就業規則等の資料が手元になく残業代の計算ができない!

→手元にタイムカード等の資料がなければまずは使用者に対してその開示を求めましょう。それでも開示を拒否する場合は,弁護士に依頼しましょう。

 

4 まとめ

 以上の通り,残業代はどのような場合に発生し,どのように計算するのかについてご説明してきました。しかし,実際は,そもそも残業代を計算する上で必要な資料の開示を拒まれて残業代を算出できないケースや,証拠がなく残業時間を立証できないケース,残業時間を立証できても,会社が残業時間と認めないケース(従業員が勝手に残っていただけだ等と主張されるケース)等,様々な点が問題となります。
そのため,未払い残業代の請求をお考えの方は,労働問題に強い弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

2017.08.24

夫が逮捕されました!今後の手続きはどうなるの?

夫が逮捕されました!今後の手続きはどうなるの?

【Aさんの相談】

先程,突然警察から,「旦那さんを傷害罪で逮捕しました。今から警察署で調べがあるので今日はご自宅には帰れません。」との連絡が入りました。私は,突然の逮捕の連絡にパニックになり,とりあえず「主人に会わせてください。」と頼みましたが,警察の方から,「接見禁止処分が付いているから今はご家族の方も会えません。連絡を取りたいなら弁護士さんを通されてください。」と言われました。親族なのに,事件の詳細も主人がいつ戻ってくるのかも全く教えてもらえず,勤務先にもどのように説明したらいいのか不安でいっぱいです。仮に弁護士さんを頼むとしても,費用がどのくらいかかるのか,また,国選弁護人や私選弁護人といった制度の違いもよく全く分かりません。
今後についてはどう対応すればいいのでしょうか。

今回は,Aさんのように,身近な人が突然刑事事件に巻き込まれた場合に,残された親族はどのように対応すればいいのか,刑事事件の流れと共にご説明していきたいと思います。

1 逮捕→勾留→起訴の流れ

 逮捕後の捜査状況については,たとえ親族の方であっても捜査秘密ですので詳しい事情を教えてもらえないのが普通です。そのため,どのように手続が進んでいるのか,目に見えなくて余計に不安になることもありますが,逮捕後の手続きの流れやスケジュールについては,法律で厳格に決まっています。逮捕後の大まかな流れとしては,①逮捕→②勾留→③起訴(又は不起訴)の流れで進んでいきます。

⑴ 逮捕~勾留まで

逮捕は,短期間の身柄拘束のことで,その時間は最大でも72時間(3日間)に限られています。捜査機関は,逮捕後72時間の間に急ピッチで取り調べを進め,その人を釈放するか,引き続き捜査を続けるか判断します。
 そして,捜査機関側でさらに取り調べに時間を要すると判断した場合には,検察官が裁判所に勾留請求を行い,裁判所が勾留を認めた場合には,追加で10日間身柄を拘束されることになります。この10日間は,原則的な勾留期間の長さであり,10日間で足りない場合には,さらに10日以内の範囲で勾留期間を延長できるとされています。
そのため,逮捕後最長で20日間勾留される可能性があります。(なお,内乱,外患,外交,騒擾等の重大犯罪については最大25日の勾留が可能とされています。)一般論にはなりますが,大抵の案件では勾留延長がなされる場合が多く,事実上,20日間勾留の事案が多いように思われます。
 そして,検察官はこの勾留期間が満了するまでに,本人を起訴するか不起訴にするかを決め,不起訴にする場合は,勾留期間満了後は釈放されます。

⑵ 起訴後の手続

起訴された場合,通常は1~2ヶ月後に第1回公判期日が指定されます。事件の内容が複雑でなければ(簡易な事案で,被告人が犯した犯罪事実を全て認めているような場合),審理は1回のみで終わり,次回判決となることも多いです。(なお,1回目で判決まで行く場合もあります。)他方で,事件が複雑で,証拠調べに時間がかかる場合には,複数回にわたって裁判期日が開かれます。
 裁判中の身柄拘束については,起訴前から勾留されている場合は,起訴後も勾留の効力は自動的に継続するため,保釈請求等により釈放されない限り,裁判が終わるまで勾留が続きます。

⑶ 本件のAさんの場合

 以上の通りですので,Aさんの場合も,逮捕後最大23日間(72時間+勾留10日+勾留延長10日)身柄を拘束され,それまで家に帰って来れない可能性があります。また,起訴された場合には裁判が終わるまで帰って来れない可能性もあります。
 ただ,最終的にどの程度勾留が続くのか,起訴されるのか,いつ釈放されるのかは,事案によって異なりますので,見通しが不透明です。このような状況で逮捕されたことを勤務先に伝えると,懲戒解雇扱いにされる会社もありますので,ご注意ください。
 そのため,勤務先等に対しては,「体調不良で入院している」等,長期間の不在でも不自然に思われないような理由づけをして説明をしておいた方がいいでしょう。

2 弁護士は頼むべき?

 刑事事件は,身体拘束が長期化すれば,社会生活上の不利益も大きく,処分の内容も今後の人生を左右する重大事ですので,どのような事件であっても弁護士はつけておくべきでしょう。しかし,弁護士を頼むとなると,まず気になるのは費用の点だと思います。
しかし,資力がない方でも弁護人は選任できます。現行の刑事訴訟制度では,本人に資力がない場合が(目安としては,月収が50万円未満とされています),国の費用で弁護人を選任できるという国選弁護人制度を設けているからです。国選弁護人制度を利用するには,一定の要件があり,起訴前の場合は,対象となる事件が限られており,一定の重大犯罪(死刑・無期・長期3年を超える懲役又は禁固の罪)の場合に限られています。他方で,起訴後に関しては,事件の内容を問わず,資力がない場合は,選任請求すれば国選弁護人が選任されます。なお,弁護人は名簿に従って裁判所が選任するため,本人や親族の側で選ぶことはできません。

3 国選弁護人と私選弁護人,どちらに頼むべき?

 国選対象事件じゃない場合などで,国選弁護人を利用できない場合や,個人的に信頼している知り合いの弁護士に弁護人になってもらいたいとき等には,私選弁護人の選任を検討します。私選弁護人の場合,国選弁護人と異なり,本人や親族で弁護人を探してきて,個別に委任契約を締結することになります。この場合,費用は各弁護士事務所の基準によります。
なお,国選の場合は一般的に私選よりも報酬が安いことが多く,あまり能動的に動いてくれない弁護士も多いと言われています。そのため,国選弁護人を利用できる場合でも,あえて私選弁護人を選任するというケースもあります。なお,私選弁護人が選任された場合,国選弁護人は選任されることはありません。既に国選弁護人がついていた場合は,解任され,私選弁護人のみになります。
 しかし,国選弁護人でも本当に一生懸命弁護活動を行ってくれる弁護士も多数いますので,国選弁護人だからという一事をもって判断されるのは避け,弁護人としっかり話して方針を検討されてください。

4 勾留前に弁護人を

 被疑者段階での国選弁護人は,勾留されないと選任されないことになっています。そのため,逮捕段階では弁護人が付いていないケースが大多数です。この段階でも,早急に手を打てば,本来行われるはずの勾留を避け,在宅事件として釈放してもらえる可能性もありますので,早急に弁護人を依頼されることをお勧め致します。

5 最後に

 以上の通り,逮捕された場合は,事案の内容にもよりますが,ある程度長期間の身体拘束も覚悟する必要があり,忍耐強く対応していく必要があります。刑事事件は,捜査機関という強大な国家権力を相手に,被疑者という弱い立場で取り調べを受けざるを得ず,捜査状況も外部からは見えないため,本人も親族も心身共に疲弊していくことが多いです。身近な人が刑事事件に巻き込まれた際は,1人で抱え込まず,まずは親身に相談に乗ってくれる弁護士にすぐに相談に行きましょう。

2017.08.23

【婚姻問題】入籍しないとダメ?婚姻以外の男女の在り方

○入籍しないとダメ?婚姻以外の男女の在り方

現代日本には,婚姻だけでなく,様々な男女の関係があり得ます。婚約,内縁,事実婚…。言葉だけは聞いたことがあっても,その内容まではご存じでない方が多いのではありませんか? 今回は,そんな様々な男女関係についてお話していきたいと思います。

1 婚姻ってなあに?

 「婚姻」という言葉は,日常的にはなじみが薄いかもしれません。婚姻とは,日常用語で言うところの「結婚」と同じだと思っていただいて構いません(厳密にいうと,婚姻の方が結婚よりも広い概念になります。)。
 では,婚姻とはどのような要件を満たせば成立するのでしょうか?
我が国では,①夫婦共同生活を営む意思(以下,「婚姻意思」といいます。)を持っているだけでなく,②役所に対して婚姻届を提出することによって,法律上の婚姻をする意思を確認するという届出婚主義が採用されています。
そのため,婚姻が成立するためには,婚姻意思だけでなく,婚姻届の提出が必要になります。なお,婚姻には,ほかにも婚姻障害の不存在(再婚禁止期間内でないことや婚姻できる年齢であることなどがこれにあたります。詳しくは○○でお話ししたいと思います。)も必要となります。
このように,法律で定められた方式を踏むことが必要とされていることから,我が国では法律婚主義が採用されているといえます。これに対して,後述する婚約,内縁,事実婚といったものは法律に規定されていません。したがって,法律上,明文で認められているのは,婚姻のみということになります。それでは,その他の男女関係に何らの法的保護も認められないのでしょうか?

2 婚約ってなあに?

 婚約という言葉は,日常会話でも耳にしますよね。婚約とは,将来婚姻をしようという当事者間の約束をいいます。つまり,日常的に使う婚約という言葉通りの意味であると思っていただいて大丈夫です。
 もっとも,婚約が成立しているかの判断は,プロポーズの有無だけでなく,婚約指輪の授受・婚姻式場の下見・両親への挨拶・結納式の実施等,様々な事情を総合して決定するので判断が難しいかもしれません。
 婚約は,婚姻の前段階にあることから,婚約の不当破棄について損害賠償請求をすることも可能です。また,婚約については他にも結納関係なども問題になることもありますが,それについては別の記事で詳しく述べたいと思います。

3 内縁ってなあに?

 「内縁の妻」といった言葉を聞いたことはありませんか?長年同棲しているカップルに対して用いられたりしますよね。

(1) 内縁とは?

 内縁とは,婚姻する意思をもって生活を営み,社会的には夫婦と同視して良いにもかかわらず,婚姻届を提出していないため,法的には夫婦と認められない場合を指します。
ここで,内縁関係にあるといえるかは,夫婦共同生活の実態とその継続性,性的関係の継続性,妊娠しているか否か,家族や第三者への紹介,見合い・結納,挙式など慣習上の婚姻儀礼の有無などから判断することになります。そのため,具体的な事案をみてみないとわかりませんが,ただ長年同棲しているだけというのでは内縁の妻ということは難しいかもしれません(なお,内縁関係というものは,争われる場面によって求められる度合いが異なりますので,必ず専門家に相談をしましょう。)

(2) 法的保護

 もし仮に内縁が成立するとしたらどんな法的保護が認められるのでしょうか?
 内縁は,婚姻届を提出していないので法律上の婚姻ということはできませんが,お互いの意思に着目すれば,婚姻と差はないのですから,婚姻に準ずる関係ということができます。そのため,婚姻関係とすべて同じとまではいえませんが,様々な法的保護を受けることができます。
 具体的には,内縁関係を不当に破棄されたことに対する慰謝料請求権,内縁関係の終了に伴う財産分与,内縁関係にある者が死亡した際の居住権の保護といったものがあります。

4 事実婚ってなあに?

 最近,男女の関係で増加しているのがいわゆる事実婚というものです。
 事実婚とは,法律的には,内縁と同義といえるのですが,婚姻に対する考え方に違いがあると言われています。事実婚は,内縁と異なり,意識的に結婚に伴う義務(たとえば夫婦同姓など)を避けるため,意識的に婚姻届を提出していない関係を意味します。
 基本的に事実婚に対する保護は,内縁関係とほぼ同じですが,子供の性や戸籍,遺族年金など,制度的な問題点に直面することがあり得ます。

5 まとめ

以上のとおり,婚姻届を提出していない状況では,その男女関係がどのような法的保護を受けられるか,判断が極めて難しいものです。これは専門家に相談をしても判断が分かれるでしょう。そのため,正確な見通しを立てるには,多数の解決事例に基づいたノウハウが必要不可欠ですので,必ず経験豊富な専門家に相談するよう心掛けてください。

2017.08.22

【離婚問題】配偶者ビザは離婚するとどうなるの?離婚後の在留資格について

「日本人の夫と婚姻して日本に住んでいる外国人ですが、現在、夫と仲が悪くなり、離婚係争中です。このまま離婚してしまったら私の配偶者ビザはどうなってしまうのでしょうか?」

法律事務所へご相談にいらっしゃる外国の方には、離婚だけでなく配偶者ビザがどうなるのかについてもお悩みである方が多く見られます。

実際、日本に住む外国人の方にとってビザがなくなってしまうと生活の基盤を失う可能性があるのですから、配偶者ビザがどうなってしまうのかは重大な関心事だと思います。
そこで、今回は、離婚と配偶者ビザの関係についてお話しさせていただきます。

1 日本人の配偶者の在留資格

日本人と婚姻して日本に住んでいる外国人には、入管法2条の2、別表2に定められた「日本人の配偶者等」の在留資格が認められます。これが一般に配偶者ビザと呼ばれるものです。

この記事をご覧になっている方は、すでに配偶者ビザをお持ちだと思いますが、そうではない方のために念のためにお話ししておくと、「外国人配偶者と婚姻して、婚姻届さえ提出すれば入国管理局に申請する必要はない」と考えておられる方がいらっしゃいますが、これは誤りです。

配偶者ビザを獲得するためには、必ず入国管理局に申請をする必要がありますので、忘れずに申請するようにしましょう。
なお、配偶者ビザは偽装結婚の可能性があることから、必ず取得できる訳ではないことに注意して下さい。

以下の話は、配偶者ビザを取得していることを前提としてお話しさせていただきます。

2 離婚係争中(離婚に至っていない場合)の在留資格

(1) 在留資格取消の可能性

平成16年に入管法が改正され、配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留している場合、配偶者ビザを取り消すことが出来るようになりました。

配偶者ビザが取り消されるかは、婚姻の実体を有していないかを同居の有無、別居の場合の連絡の有無及びその程度、生活費の分担の有無、別の異性との同居の有無などを総合的に考慮して判断されることになります。

もっとも、在留資格は正当な理由がある場合には取り消されません。
そして、離婚調停又は離婚訴訟中の場合は正当な理由があるとされています。
そのため、離婚係争中であれば正当な理由が認められますので、配偶者ビザが取り消されることはありません。

(2) 在留資格の更新

離婚係争中に在留期間が終了する場合、配偶者ビザの更新が不許可になる場合があります。
これは、配偶者ビザをもって日本に在留するためには、単に日本人配偶者との間に法律上有効な婚姻関係にあるだけでは足りず、当該外国人が日本において行おうとする活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当することを要するとされているからです。

とはいえ、同居・協力・扶助等の活動が事実上行われなくなっている場合であっても、その婚姻関係が実体を失って形骸化しているとまでは認められない場合について入管の不許可処分を取り消した裁判例や、日本人配偶者から提起された婚姻無効確認訴訟に応訴していたことが日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当する可能性があるとした最高裁判決があるなど、更新が不許可になったとしても延長が認められたケースも存在します。

更新が認められなかった場合は在留資格の変更をすることになりますが、それよりもまず弁護士に相談して入管との交渉を依頼すべきでしょう。

3 離婚が成立した場合

(1) 在留資格の取消

配偶者ビザで日本に在留している外国人は、日本人配偶者と離婚した場合、14日以内に入管に対して届出をしなければなりません。

もっとも、この届出をしたからといって、すぐに日本から出て行かなければならない訳ではなく、在留期間のうちは日本に在留することが可能です。

(2) 在留資格の変更

日本人の配偶者と離婚し、配偶者ビザが取り消された場合や取り消されなかったとしても在留期間が終了する場合、以後は配偶者ビザの更新は出来ませんので、日本に住み続けるためには在留資格の変更が必要です。

可能性としては、①「定住者」ビザへ変更する方法②就労ビザへ変更する方法などがあり得ます。
例えば、日本での在留期間が相当長期間の場合であれば、永住者あるいは「定住者」への変更が認められる可能性があります。

また、元夫との間に未成年・未婚の子供がいて、離婚後その子を引き取って育てる場合、その親子関係、当該外国人が当該実子の親権者であること、現に当該実子を養育、監護していることが確認できれば、「定住者」(1年)への在留資格の変更が認められます。

このように、一定の要件を満たせば離婚した後であっても、日本に在留し続けることが可能です。

4 まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、離婚と配偶者ビザについてお話しさせていただきました。

外国人の方の離婚では、離婚そのものだけではなく、それに付随する在留資格のような行政分野も問題になってきます。

そして、離婚もそうですが、在留資格が争われたときに貴方の代理人として活動できるのは、渉外離婚の経験が豊富な弁護士だけです。
もっとも、弁護士であっても、渉外離婚事件の経験が少ないと満足のいく解決を得られない可能性もあります。

そのため、外国人の方で離婚・ビザでお悩みの方は離婚事件について経験豊富な弁護士にご相談すると解決の糸口が見えてくるかもしれません。

2017.08.21

【離婚問題】外国人の夫(妻)と離婚することになったらどんな風に進めたらいいの?

 国際結婚はピークであった2006年の約4万4,701組から減ってはいますが,2015年時点の時点でも2万976組ものカップルが国際結婚をしています(平成27年 人口動態調査より)。一方で離婚した国際結婚の夫婦の数は,1万3,675組にのぼっています。国際結婚も日本人同士の夫婦における結婚の場合よりも複雑ですが,離婚の場合はもっと複雑です。しかも,離婚の場合は婚姻の場合よりも非常に大きな精神的負担となります。そこで,今回は,外国人との離婚でお悩みの方の負担を少しでも減らせるように国際離婚の場合の手続きや注意点についてお話しさせて頂きたいと思います。以下では,日本人との婚姻数の多い中国・台湾,韓国に焦点を当ててお話し致します。

1 離婚手続の進め方

 まず,知っておいてもらいたいのは,日本では,裁判所を介さず夫婦間で話し合って離婚届を役所に届ければよい協議離婚が認められていますが,諸外国において協議離婚が認められているのは中国,韓国などに限られるということです。
 夫婦の常居住地が日本にある場合ですと,日本法が適用されることになりますので,例えば協議離婚を選択することも可能であり,日本では効力を生じます。しかし,夫婦のうち外国人配偶者の本国でも有効な離婚として承認されるかは,それぞれの本国法によることになります。
そこで,日本で外国人の夫(妻)と離婚することになったら,日本の法律に基づく離婚手続きと,外国人パートナーの国籍国の法律に基づく離婚手続きと2つの手続きを進めていく必要があるため,相手方の国法に基づいた裁判上の手続きをよく理解する必要があります。各国の制度概要を中国・台湾,韓国の順に見て行きましょう。

(2)国別にみる手続き

ア 中国人・台湾人との離婚の場合
中国・台湾ではいずれの国においても協議離婚が認められています(中国婚姻法31条,中華民国民法1049条)。そのため,中国人・台湾人の方と国際離婚をする場合,協議離婚をすることは可能です。
もっとも,中国では調停離婚が認められていますが,台湾では日本の調停調書が認められない場合があるので注意が必要です。そのため,台湾人の方と離婚する場合,協議離婚が望めないときは,審判離婚、裁判離婚を選択すべきでしょう。

イ 韓国人との離婚の場合
韓国でも日本と同じように協議離婚が認められています。もっとも,韓国法の場合,協議離婚の意思確認は裁判官が行うこととされていますが,日本においては「方式」の問題とされ,日本での協議離婚の成立は離婚届を提出することで足りると考えられています。
また,日本だけではなく韓国でも離婚の効力を発生させるためには,原則どおり,韓国の家庭法院で裁判官による確認を受け,韓国の役場に離婚届を提出することとなります
ちなみに,韓国においては協議離婚の場合,裁判上の離婚の場合と異なり,慰謝料等の離婚に伴う損害賠償請求を認める規定が存在しないことから,損害賠償請求はできないと考えられています。しかし,日本においては,離婚慰謝料を認めない韓国民法を適用することは公序良俗に反するとして,韓国民法の適用を排除した裁判例があるなど,韓国人との協議離婚の場合でも慰謝料を認める傾向にあると考えられます。

2 国際離婚をする際に注意しておくべきこと

(1)離婚協議書の作成

日本人同士の協議離婚でも言えることですが,協議離婚をする際には,絶対に書面で離婚協議書を作成して下さい。離婚協議書の中では,離婚することだけではなく,親権をどうするか,財産分与,慰謝料など金銭の支払いの約束についても記載して下さい。そして,金銭の支払いに関しては,「金銭を支払わなかったときは強制執行をしても構いません。」のように強制執行を受け入れる旨を記載の上,公証役場で公正証書にしておくべきです。
こういった書面を作成しておけば,裁判手続きを経ることなく,直ちに相手方の給料を差し押さえるなどの強制執行が可能になります。
もっとも,相手方が日本国外に出てしまった場合,我が国の執行管轄は外国には及びませんので,日本法に基づく強制執行はできません。現地法の手続きを踏んで強制執行手続きを申し立てることになるでしょう。

(2)金銭の支払いを求める場合は可能な限り一括請求する!

 前にお話ししたことと関わってくるのですが,長期分割にすると,相手方が日本国外に出てしまった場合,日本法に基づく強制執行ができなくなってしまいます。そのため,金銭の支払いは可能な限り,一括で請求するようにしましょう。

(3)ビザ変更の手続

日本国内において離婚が成立した場合,外国人配偶者は「日本人の配偶者等」としてビザの更新が出来なくなってしまいます。もっとも,「日本人の配偶者等」としてビザを更新出来なくなってしまったとしても,更新までは日本を出て行かなくても大丈夫ですし,他のビザ,例えば「定住者」や就業ビザなどに変更することも可能です。

3 まとめ

今回は,国際離婚の手続きや注意点についてご説明させて頂きました。ピークに比べれば,国際婚姻の熱は冷めつつあるものの,社会の国際化が発達していくにつれ国際婚姻の波はまたやってくることになるでしょう。
国際離婚は,日本人同士の離婚とはかなり異なっているところが多く,付け焼刃で知識を入れたとしてもかなり難しいところがあるでしょう。まだ文献の多い中国や韓国,アメリカであれば自分で対応することも可能かと思いますが,ほとんどの諸外国との関係では経験豊富な弁護士でなければ対応することは難しいと思います。
 国際離婚でお悩みの際は,離婚事件の経験豊富な弁護士にご相談下さいませ。

2017.08.20

【離婚問題】外国人の配偶者と離婚するときに知っておきたい知識!

現代日本では,国際化の影響を受け,昨年にも2万組を超える日本人と外国人の夫婦が結婚し,国際結婚が身近なものになってきています。しかし,何も幸せな話ばかりではありません。国際結婚が増えるにつれ,どうしても国際離婚の数も増加しています。そこで,今回は,離婚後も後悔をしないために外国人の配偶者と離婚する場合に知っておきたい知識をご紹介したいと思います。なお,前提として夫婦とその子供が日本で暮らしているものとします。

1 子供の問題

 まず,外国人の配偶者との離婚で気になるのがお子さんのことだと思います。日本人同士の場合と異なり,外国人との離婚となりますとどうしても国を跨ぐことが多くなりますので,子供に会うのが難しく問題が大きくなってしまいます。そのため,知識を身に着けることで後悔を防ぎましょう!
 まず,前提としてお話ししておきたいのが,子供の親権や面会交流といった親子関係については,通則法32条が適用されることが多く,子供が日本国籍を有する場合には日本法に従うことになると考えられることが多いということです。このように判断された場合,子供が日本国籍を有している場合は,親が外国人であったとしても,日本人同士の両親の子供と同様に考えることが出来ます。そのため,以下は通則法32条が適用されることを前提としてお話しさせて頂きます。

(1) 親権

 先程申しましたように,子供が日本国籍である場合,親権については日本法が適用されることになります。そのため,父母が離婚する場合,未成年の子供がいるときは,父母の一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項,2項)。
 他方で,子供の国籍が外国人配偶者の親と同じである場合,その外国の法律が適用されることになります。このときは,適用される外国法を基に検討することになります。
 これらのいずれでもない場合,通常,子供は日本にいることが前提でしょうから,日本法が適用されることになります。

(2) 面会交流

 先程申しましたように,子供が日本国籍である場合,面会交流についても日本法が適用されることになります。例えば,離婚後に子供の親権者に日本人の親がなった場合,外国人である方の親には子供との面会交流権が原則として認められることになります。
 もっとも,日本人の両親の場合と同様,子供が同居する親権者とその再婚相手と暮らしており,面会交流を許すと心理的な混乱を招く恐れがあると考えられる場合などには例外的に面会交流が認められないこともあります。

(3) 養育費

 今までは通則法32条が適用されることを前提としてお話しさせて頂きました。しかし,養育費の場合は,親族関係から生ずる扶養義務については,扶養準拠法という特別法が制定されており,通則法の適用がありません。そのため,養育費については,通則法32条が適用されないことになります。
 すなわち,扶養を受ける子供の「常居所」地があるときは,その常居所地法によることになります。常居所とは,人が常時居住する場所で,相当長期間にわたって居住する場所を言います。
例えば,子供が日本に相当長期間にわたって居住しているのであれば,日本法が適用されることになります。このような場合は,未成年の子供は親に扶養を請求する権利を有していますから(民法877条),これに従って養育費を請求することができます。
 もっとも,養育費については,子供が今後どの国で養育されるのか,外国人配偶者が外国に行ってしまった場合,外国人配偶者の財産が外国にある場合など当該外国の法律をもとに考えなければならず,専門的な知識を必要とします。

2 お金の問題

 離婚には子供の問題だけでなく,どうしてもお金の問題も関係してきます。そのため,次はお金に関する問題について説明しておきましょう。

(1) 慰謝料請求

 離婚に伴う慰謝料については,①離婚そのものによる慰謝料と②離婚に至るまでの暴力や不貞行為と言った個々の不法行為による慰謝料の二つがあり,これらは分けて考えられています。そのため,以下では,この2つを峻別して説明させて頂きたいと思います。

ア 離婚そのものによる慰謝料
 離婚そのものによる慰謝料は,離婚の際における財産的給付の一環をなすものですから,離婚の効力に関する問題として離婚の準拠法の適用を受けることになります。そのため,夫婦が日本に住んでいる場合,離婚そのものによる慰謝料については,日本法に従って判断されることになります。

イ 個々の不法行為による慰謝料
 この場合,どこの国の法律を適用するかについて考え方が分かれており,問題が生じます。つまり,暴力,不貞行為などの不法行為が日本ではなく,外国で行われた場合,どこの国の法律を適用するかについて見解が分かれているのです。
 そのため,例えば,韓国で夫から妻に対して暴力が振るわれ,日本で離婚するといった場合,韓国法を適用すべきか,日本法を適用すべきかが争われることになるのです。どちらを適用すべきと主張するかは,日本法だけでなく韓国法についても詳しい知識が必要となりますので,専門家に相談するようにしましょう。

ウ 慰謝料の金額
 外国人との離婚の慰謝料が争われる場合,日本とその外国人の本国の物価の違いが慰謝料に影響するかが問題となりますが,これについては具体的事例を見てみないことには結論を話すことがどうしても困難です。ただ,あまり物価の違いが影響することは少ないかと思います。

(2) 財産分与請求

 財産分与請求も,離婚そのものによる慰謝料と同様に,離婚の準拠法の適用を受けることになると考えられています。そのため,夫婦が日本に住んでいる場合,財産分与についても,日本法に従って判断されることになります。

3 まとめ

 いかがでしたでしょうか?今回は,外国人配偶者と離婚する場合の注意点についてお話しさせて頂きました。国際離婚は,どうしても日本法だけではなく外国法の知識も必要となってしまいますので,専門家に依頼しなければ対応することが難しいと思います。
 とりわけ養育費においては複雑な知識が求められる一方,慰謝料請求については裁判例が分かれており,適切な法的主張が求められる場面が多く存在しています。そのため,専門家の中でも経験豊富な弁護士に依頼することが求められます。
 そこで,一度,経験豊富な弁護士に相談するようにしましょう。

2017.08.19

【離婚問題】別れた妻が再婚したのですが養育費って支払わないといけないのですか?

「離婚後、養育費を支払っていたのに,別れた妻が再婚し,経済的に豊かになったのに同額の養育費を支払い続けないといけないの?」このようなお悩みをお持ちの方は決して少なくないと思います。養育費は長年にわたって支払われるものですので,同額の養育費を支払うことが不適切な場面もあります。そこで,今回は,養育費を受け取っている元妻が再婚した場合,養育費を減額することが出来るかお話ししたいと思います。

1 一度決めた養育費の額って変更出来るの?

(1) 養育費の額って変更出来るの?

 養育費は,長期間にわたって支払われるものです。そのため,離婚当時に予測できなかった個人的,社会的事情の変更が生じたと認められる場合,養育費の額を変更することが可能です。

(2) 変更できるのってどんな場合?

 先程も申しましたように,離婚当時に予測しえなかった個人的,社会的事情の変更が生じたと認められる場合,養育費の額を変更することが認められます。
 具体的には,
・ 支払う側の勤めていた会社が倒産したことによって収入が大きく減った
・ 支払う側が大怪我をしてしまった事によって収入が大きく減った
・ 子供が病気や怪我をして入院・その他の医療費が必要になった
などの事情が認められる場合,養育費の金額を変更出来る可能性があります。

2 別れた妻が再婚した場合、養育費の減額は請求できるの?

 では,別れた妻が再婚したことは養育費の減額事情に当たるのでしょうか?
 子供を育てている親が再婚したかどうかは,養育費を支払っている親の扶養義務に直接、影響を与えるものではありません。そのため,養育費を受け取っている別れた妻が再婚したとしても,必ずしも養育費を減額できる訳ではありません。

(1) どのような事情があれば養育費の減額を請求できるの?

 子供を連れて親が再婚しても再婚相手と連れ子との間に,当然には親子関係は発生せず,養子縁組をして初めて法律上の親子関係が発生します。養子縁組により,養親である再婚相手が連れ子に対して扶養義務を負うのは当然ですが,それにより実親の扶養義務が当然になくなる訳ではありません。
 ただし,再婚により,通常,子供は養親と共同生活をしながら扶養されることになりますので,養親が一次的に扶養義務を負い,実親は二次的な扶養義務者になると考えられます。そのため,再婚相手が養子縁組をした場合,養育費の減額を認めた審判例があるなど裁判所においても養育費の減額を認める傾向にあると言えます。

(2) 養子縁組をしていないと養育費は減額出来ないの?

 もっとも,再婚相手との間で養子縁組がなされていないとしても,減額が認められない訳ではありません。養育費が減額されることになるかは,元妻の再婚相手が経済的に余裕がある場合,元妻の収入が離婚時に比較して増えている場合など再婚後の経済状況が良好であること,養育費を支払っていた元夫の収入が大きく減少している場合や元夫も再婚して扶養する家族が増えた場合など元夫側の経済的状況が悪化したことといった事情を考慮して判断されることになります。
 例えば,再婚相手が養子縁組はしないものの,経済的に豊かで子供の養育費を含め,生活費全般を負担する意思も能力もあるような場合には養育費の減額請求が認められる可能性があります。

3 養育費減額はどうやってすればいいの?

(1)まずは話し合い!

まずは,元妻に養育費の減額をしてもらえないか話し合いを持ちかけてみましょう。話し合いに際しては,あまり感情的にならず,あなたの収入が離婚時よりも減少していることの資料(給与明細、収入証明など)を示して説得するようにしましょう。

(2)話し合いでまとまらなければ、養育費減額調停!

いくら話し合いをしても,元妻が減額を拒むような場合やそもそも話し合いが出来ない場合,養育費減額調停の申し立てをしましょう。
養育費減額調停を申し立てるにあたっては,以下の資料を揃えるようにしましょう。
・ 養育費調停申立書
・ 事情説明書
・ 調停に関する進行照会書
・ 未成年者の戸籍謄本
・ 申立人の収入関係資料(源泉徴収票、給与明細など)
・ 収入印紙(子供一人につき1,200円)
・ 郵便切手代(800円前後)
これらの資料を揃えたうえで,元妻の住所地の家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てるようにしましょう。なお,離婚の際に,申立てをする裁判所を定めていた場合には,その家庭裁判所に申し立てることになります。

4 まとめ

今回は別れた妻が再婚した場合に養育費を減額することが出来ないかお話しさせて頂きました。子供が再婚相手に引き取られたとしても,あなたも子供の親である以上,経済的に援助をしたいと思うところでしょう。しかし,そうは言っても養育費の負担は経済的に重いものだと思います。そのため,少しでも負担を減らしたいというのが人情でしょう。
もっとも,養育費の減額を認めさせるのは決して容易ではありません。自分で交渉しようにも一度別れた相手との交渉になりますからお互いどうしても感情的になってしまい,話し合いを行うのは困難でしょう。しかし,交渉経験の豊富な弁護士に依頼することで養育費の金額だけでなく,その他の支払方法などの細かい事情についても調整することが出来る可能性があります。
交渉経験豊富な弁護士に相談してみてはいかがでしょうか?

2017.08.18

【財産】長年同棲していた彼と別れちゃった…。財産ってどうなるの?

「私と彼は,婚姻届を出さないまま,夫婦として同居し,長い間,彼の経営するレストランを手伝ってきました。しかし,最近どうしても夫とうまくいかず,別れようかと思っています。関係の解消に際して財産はどうなるのでしょうか?」今回は,内縁関係の解消においても財産分与が認められるのかについてお話ししたいと思います。

1 内縁関係ってなあに?

内縁とは,婚姻する意思を持って共に生活を営み,社会的には夫婦として認められているにも関わらず,法の定めた手続を行っていないため,法律的には夫婦と認められない場合をいいます。
ここで,内縁関係といえるかは,夫婦共同生活の実態とその継続性,性的関係の継続性,妊娠の有無,家族や第三者への紹介,見合い・結納,挙式等,慣習上の婚姻儀礼の有無等から判断することになります。

2 内縁関係の解消でも財産分与ってされるの?

 離婚する場合,二人で築き上げてきた財産について,財産分与を行うというのが一般的な理解でしょう。では,婚姻届を提出していなければどうなるのでしょうか?内縁関係の解消にあたって財産分与がされるのでしょうか?
 この点について,裁判所は,内縁関係の解消にあたっても夫婦関係同様,財産分与がされることを認めています。つまり,法律婚も内縁も,同じく夫婦として共同生活を営み,同じく協力して財産を築き上げた以上,別れる際には適正に財産を分けましょうと考えられています。

では,財産分与において分けるべき財産とは,どのようなものを指すのでしょうか?
この点は,離婚における財産分与と同様の議論ですので,そちらも参考にしていただければと思いますが,夫婦が協力して築き上げた共有財産が財産分与の対象となります。これに対して,内縁関係前から有していた財産や相続にて取得した財産などは特有財産として財産分与の対象とはなりません。
また,一般的に言われる財産分与とは,「清算的財産分与」と呼ばれるもので,夫婦で築き上げた共有財産を適正に清算することを目的としていますが,他にも「扶養的財産分与」や「慰謝料的財産分与」と呼ばれるものも存在します。したがって,分与すべき財産が決まっても,それをどのように分与すべきかは,多種多様な事情を考慮して決することとなります。

3 相談への回答

 今回の相談の場合,長期間にわたり夫婦として同居し,内助の功だけでなく,夫の経営するレストランを実際に手伝ってきたのですから,内縁の夫名義となっている財産が築き上げられる過程において,内縁の妻が寄与していると考えられます。よって,夫婦共有財産の清算として,内縁の夫名義となっている財産についても,財産分与が可能であると考えられます。
 また,内縁解消後,自立が困難な場合には,継続的な生活費を財産分与として受け取ることも検討しなくてはなりません。
 もっとも,具体的な金額がどの程度となるかは,一度詳細にお話を伺った上で,共有財産や寄与度を確定させなくては分かりません。そこで,内縁関係解消に伴う財産分与でお悩みの方は,豊富な経験やノウハウを有する弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

2017.08.17

【親子問題】絶対に親になりたい!親権者はどうやって決めるの?

離婚をする際には,「子供をどちらが引き取るのか?」という話が大きな話題になることがよく見られます。これは法律的には,「親権・監護権」をどちらが持つかという問題になります。そのため,今回は,子供を引き取るため,親権・監護権の内容やその決め方などをお話ししたいと思います。

1 親権ってなあに?

「親権」という言葉は,日常的にもよく用いられていますが,これを定義すると,未成年者の子供を監護・養育し,その財産を管理し,その子どもの代理人として法律行為をする権利義務のことを言います。一見すると親の権利のように見えますが,子供が社会に出て生活できるように育てるという意味で親の義務という側面もあります。
成年に達しない子供は親の親権に服することになり,その親権は父母が共同して行使することが原則です。ただし,父母が離婚する場合,父母が共同して親権を行使することはできませんから,父母のいずれかを親権を行使する親権者として定める必要があります。そのため,父母が協議上の離婚をする場合は,その協議で親権を行使する親権者を定め,裁判上の離婚をする場合は,裁判所が父母の片方を親権者と定めることになります。
具体的な親権の内容としては,身上監護権と財産管理権の2つがあります。

〈身上監護権〉

① 居所指定権(親が子供の居所を指定する権利)
② 懲戒権(子供に対して親が懲戒・しつけをする権利)
③ 職業許可権(子供が職業を営むにあたって親がその職業を許可する権利)
④ 身分法上の行為(婚姻など)に関する同意権,代理権
などがあります。要するに,子供の肉体的な生育を図る監護と精神的な成長を図る教育を含むものがこれにあたります。

〈財産管理権〉

①  包括的な財産の管理権
②  子供の法律行為に対する同意権(民法5条)

2 親権者を決める手続

協議離婚の場合,話し合いにより夫婦のどちらか片方を親権者と決めます。未成年の子供がいる場合に離婚をするためには,親権者も同時に決めないと離婚はできません。離婚届には親権者を記載する欄が設けられており,親権者を記載しなければ離婚届自体を,役所で受け付けてもらえないからです。
離婚の際に取り決めるべき条件は複数あり,財産分与・慰謝料等については,離婚後に条件を決定することも可能ではありますが,親権者の決定だけは離婚する際に絶対取り決めねばなりません。

もっとも,親権者をいずれにするかが話し合いで決まらない場合,親権者の指定を求める調停を家庭裁判所に申し立て,裁判所における調停の話し合いを通じて親権者を決めていくことになります。親権の帰属は離婚の条件でも重要なものですので,親権をどちらにするか決まらない場合には,離婚調停の申立をしてしまって,その調停の中で親権の話し合いもしていくことになるでしょう。
親権者の決定について調停でも折り合いがつかない場合,親権者指定の審判手続に移行し,裁判所の判断により親権者を指定してもらうことになります。また,離婚調停で親権者の折り合いがつかず,離婚の条件がまとまらないために離婚調停が不調に終わったような場合,離婚訴訟を提起して離婚の成否や離婚の条件について争うことになります。このときに,離婚の条件のひとつとして親権をどちらにするかを裁判所に判断してもらうよう申立をすれば,裁判所が判決で親権者をどちらにするか決めることになります。

3 どうやって親権者って決めるの?

 では,調停がまとまらない場合,裁判所はどうやって親権者を決めているのでしょう。
 親権者の指定においては,子供の利益を最優先して考慮されなければなりませんが,だいたい裁判所の判断が必要になる事案においては,父母ともに子供に対する愛情と監護能力を有していることが多いため,下記の事情を総合考慮して決めることになります。

〈父母側の事情〉

監護能力,監護態勢,監護の実績(継続性),(同居時の)主たる監護者,子供との情緒的結びつき,愛情,就労状況,経済力,性格,生活態度など

〈子供の側の事情〉

年齢,性別,心身の発育状況,従来の養育環境への適応状況,監護環境の継続性,環境の変化への適応性,子供の意思など

また,15歳以上の子供の親権を審判や訴訟で定める場合には,裁判所が子供本人の意思を聞く必要があります。そのため,子供の年齢が上がれば上がるほど,親権者の決定には,子供自身の意思がかなり重要となってきます。なお,逆に子供が幼ければ幼いほど,親権の争いについては母親が有利といわれています。

4 まとめ

 以上のように,子供の親権がどちらになるかは様々な事情を考慮して決定されるものですから,事案にあった的確な主張をすることが求められます。そのためには,同種事案について経験豊富な弁護士に相談して,事情を説明することが大事になってくると思われます。子供の親権者が誰になるかというのは,親だけでなく,子供の一生を左右する重大な問題です。なお,親権に関する争いを見ていると,「自分が育てた方が子供のためになる」という主張ではなく「あんな父親が育てては,子供がダメになる」といった,相手方の人格批判に近い主張がよく見受けられます。どのような母親でも父親でも,子供にとっては大切な母親と父親です。親権者をいずれにするかは,子供のための問題ですので,相手方に対する感情論は横に置いて,客観的に子供の将来にとって良い結論を導くことができるよう,心掛けましょう。

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