弁護士コラム

2018.01.31

破産するとどうなるの?家族や職場に知られますか?

 皆さんは、「破産」という言葉に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。破産という言葉に抵抗心を抱かれる方は多いと思いますが、中には、破産することがまるで罪を犯すことであるかの様に罪悪感を抱かれる方や、極度に否定的なイメージを抱いている方もいらっしゃいます。
 また、「選挙権がなくなる」「職場に通知が行く」「会社を辞めさせられてしまう」等、誤った先入観を持たれている方も多く、本来であれば破産することがその人にとって最適であるにもかかわらず、誤ったイメージのために破産に踏み出せない人も多くいらっしゃいます。
 そこで、今回は、破産したら債務者(破産者)に対してどのような法的効果が生じるのかについてお話しようと思います。

1 破産の事実は第三者に知られますか?

 破産すると、身内や職場に破産した事実が知られてしまうと思っている方もいます。
しかし、法的には、破産したからといって、当然に身内や職場に破産の事実についての通知が来ることはありません。
 法的には、破産した場合、官報に、破産者の氏名と破産した事実が載りますが、官報以外に破産の事実を第三者に知らせることは義務付けられていません。官報とは、法律の制定・改定等があったときに、その内容を国民に対して知らせるために国が出している新聞のようなもので、一般の方であれば、日常生活の中で官報を目にする機会はほとんどないでしょう。ですので、法的には、第三者が破産の事実を知る機会としては、官報を見る以外にないため、破産の事実を知る人はごく一部の人に限られます。
 しかし、事実上破産の事実が広がってしまうということはよくあります。例えば、破産手続を申し立てる際、債権者に対しては、債権を調査するために通知を送るため、債権者に対しては破産予定であることは知られてしまいます。また、破産する場合、保証人にも通知が行きますので、債権者や保証人に対しては、事実上破産の事実が知られてしまうでしょう。
 ですので、身内や職場に破産の事実を知られるのではないかと不安に思われているのであれば、身内や職場に対して借入をしていたり、保証人になってもらったりしていない限り、破産の事実を知られることはありませんが、破産の事実を知った債権者から破産の噂が広まってしまうという事実上のリスクはあります。

2 破産した場合に債務者に生じる効果

 次に、破産した場合、債務者(破産者)にどのような法的効果が生じるかについてみていきます。

①説明義務

 破産する場合、破産者は、債務や資産の状況、破産に至った経緯等について、裁判所や債権者に説明する義務を負います。そのため、裁判所から出頭を求められたら、出頭しなければならず、出頭を拒んだ場合は、強制的に引致される可能性もあります。

②居住地の制限

 上記のとおり、破産者は諸々の説明義務を負っていますので、当該説明義務を果たすために、裁判所と連絡がつく状況を確保する必要があります。そのため、債務者は転居の際や旅行・出張等で居住地を離れる場合には、裁判所の許可が必要になります。
 なお、居住地の制限は、上記の通り、破産者に逃亡を防止して説明義務を履行させるために課されるものですので、裁判所から、「この家に住みなさい」「この家は家賃が高いから居住を認めない」等といった具体的な居住地を指定されるような制限ではありません。

③重要財産開示義務

 破産者は、不動産、現金、有価証券、預貯金等の重要な財産について開示義務を負い、その内容を記載した書面を裁判所に提出する義務があります。この書面は、破産管財人や債権者等の利害関係人に閲覧されるものになり、閲覧の制限はできません。
 なお、①の説明義務及び③の重要財産開示義務に違反した場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となり、免責不許可事由にも該当します。

④郵便物の管理

 破産手続に破産管財人が選任されている場合、破産手続きが終わるまでの間、破産者に対して届く郵便物については、管財人が郵便物を管理し、中を見ることができるとされています。これは、郵便物の中から、新たに破産者の財産を発見することもありますし、財産が隠匿されていないかを確認する契機となるため、管財人が郵便物を管理することになっています。

⑤資格の制限

 破産した場合、職種によっては資格制限を受ける場合もあります。例えば、弁護士や税理士、公認会計士等の仕業や、宅地建物取引士、貸金業者、生命保険募集人等、各種法令によって制限される資格が規定されています。また、後見人等、他人の財産を管理する役職については欠格事由となります。
 なお、資格については、永久的に制限されるわけではなく、免責許可の決定が確定すれば資格制限は外れ、従前通り業務に従事できます。

⑥信用情報の毀損、ブラックリストへの掲載等

 破産する場合、債権者に対して通知を送るため、事実上ブラックリストに載ることになります。そのため、破産後一定期間はローンやクレジットが組めなかったり、借入れを拒否される等の支障が生じ得ます。なお、ブラックリストへの掲載は、法的効果ではなく、事実上行われていることですので、どのくらいの期間ブラックリストに掲載されるのかについての明確な基準はありません。5~10年と言われることもありますが、破産後もすぐにカードが作れたというケースもあり、取り扱いはケースによって異なるようです。
 なお、信用情報の毀損は、必ずしも破産手続特有のものではなく、債務整理手続として弁護士が債権者に対して受任通知を送付する場合でも生じるものといえます。ですので、破産せざるを得ない状況の方々は、すでに滞納が多数発生しており、すでに信用情報が毀損されている場合が通常です。だとすれば、破産してもしなくても、信用情報は毀損されている状況ですので、これを恐れて破産を躊躇するのはあまり意味がないでしょう。

3 まとめ

 以上のように、破産した場合は、債務者(破産者)に対して諸々の義務や法的効果が生じますが、実際の生活では、クレジットカードが作れなかったり、一定の職業の場合は資格が制限される等の支障が生じる程度で、選挙権が奪われたり、会社をクビになったり、近所の人に知られたり等の法的効果はありません。
 破産という言葉の響きに、極度のマイナスイメージを抱いて破産を躊躇される方が多いですが、破産は、経済的更生を確保するために法的に認められた権利ですので、有効に活用すべきです。まずは、弁護士と相談をして、ご自身が破産した場合に日常生活にどのような支障が発生するのか、詳しく検討してみましょう。
 多重債務問題にお悩みの方や、破産手続きに不安を抱かれている方は、早いうちに一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

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