弁護士コラム

2019.07.18

【離婚問題】認知について

近年、未婚のシングルマザーが増加しており、未婚で出産した芸能人の報道なども目にすることが増えました。未婚のまま子供を出産した場合、そのままでは子供の法律上の父親はいないということになり、戸籍の父親欄は空欄となります。

弊所では、子供の母親から、父親に認知をしてほしいが、相手に拒まれているという相談がよくあります。今回は、認知の手続や認知の効果についてご説明します。

1.認知とは

婚姻中に妻が懐胎した子供は、夫の子と推定され(民法第772条1項)、これを「嫡出推定」といいます。一方、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供(非嫡出子)は、嫡出推定が及ばないため、当然には法律上の父がいないということになります。その場合、ある男性が子供の父親であると認め、法律上の父子関係を発生させる行為を「認知」といいます。

認知をして法律上の父子関係が認められると、父親の戸籍には認知した子供の名前が、子供の戸籍には父親の名前が記載されます。また、親子としての権利義務関係が発生するので、父親に対して養育費の請求が可能になり、父親が死亡した場合には認知した子供にも相続権があります。

ただし、親子間の扶養義務は互いに負うため、将来的に父親の介護や金銭的な援助が必要となった場合、子供が面倒を見なければならない可能性もあります。

2.認知の方法

認知には任意認知と強制認知という二種類があります。

(1) 任意認知

任意認知は、父親である男性の側から行う認知です。基本的には市町村役場に認知届を提出することにより行いますが、遺言でも認知することが可能です。
子供の出生前、胎児の段階でも認知をすることができますが、その場合は母の承諾が必要です(民法第783条1項)。また、成年の子供を認知する場合には、子供本人の承諾が要ります(民法第782条)。任意認知は、父親が未成年者であっても、法定代理人の同意を要せずに行うことができます。

(2) 強制認知

母親は認知をしてほしいと考えていても、父親が認知を拒むというケースはよく見られます。妊娠を伝えたら父親側から中絶するように言われたが、それでも母親が出産した場合では、相手(父親)から「お前が勝手に産んだんだろう。」と言われる場合もあるようです。しかし、父親の同意なしに出産したからと言って、父親に認知をしてもらえないというわけではありません。

男性が認知を拒む場合は、法的な手続をとって認知させることができ、これを強制認知といいます。子供、その直系卑属(孫やひ孫)又はこれらの法定代理人が認知の訴えを提起することにより行います。

具体的な手続としては、まず相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に認知調停を申し立て(調停前置主義)、調停に父親が出席することが必要ですが、そこで認知をするという合意が成立し、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます。

父親が調停に参加してくれない場合や、合意が成立しない場合は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に認知の訴えを提起します。生物学的に父子関係があるかどうかは、DNA鑑定を行えばすぐに分かります。もし相手方がDNA鑑定に協力してくれない場合、強制的に鑑定をすること等はできませんが、鑑定を拒むという態度も含めて裁判所の判断材料となります。以上の手続きを経て認知がされると、出生のときに遡って法律上の親子関係が生じます。

なお、認知の訴えは、父親が死亡しても3年以内であれば行うことができ(民法787条)、この場合は検察官を相手方として請求することになります。死後に父子関係が認められた場合は、認知された子供は父親の相続人となるため、遺産分割協議に参加することができるようになります。

3.認知してほしくないとき

では反対に、父親に認知をしてほしくないという場合はどうでしょうか。認知をしてほしくない理由としては、子供の父親に一切関わりを持ってほしくない場合、子供の父親が他に家庭を持っていて、父親の戸籍に子供の名前が載ると、配偶者に不貞の慰謝料請求をされるおそれがある場合、父親と子供が面会交流などを行うのが嫌な場合、父親に借金等があり将来子供が迷惑を被るかもしれない場合など、いろいろなケースが考えられます。

しかし、子供が生まれる前の胎児認知には母親の承諾が要りますが、出生後は母親の承諾なく実の父親が認知をすることが可能です。そのため、いくら母親が認知をしてほしくないと思っていたとしても、認知を拒むことはできないという結論になります。

なお、認知をされると父親に子供の親権を取られてしまうのでは、と心配される方もいらっしゃいます。これについては、仮に父親から親権者変更調停が申立てられたとしても、これまで母親が子供を監護してきたという実績があるため、母親が子供を虐待している等の特別な事情がなければ、子供の親権が父親に変更されるということはありません。

4.まとめ

今回は、認知についてご説明しました。父親から認知を受けると、父親に対して養育費を請求することができます。非嫡出子だからといって、養育費の金額が嫡出子よりも低いということなどもありません。

人により様々な事情があるかとは思いますが、シングルマザーで子供を育て上げる際、養育費をもらうことが生活の助けになることも多いでしょう。本当に子供の父親であれば認知をさせることは可能ですが、相手方とトラブルになることが予想されますので、お悩みの方は弁護士に相談することをお勧めします。

2019.07.16

知らない間に自分の個人情報がネットに掲載されている!削除するには?

現代の生活やビジネスにおいて欠かせない存在となったインターネットですが、様々なサービスが登場し、個人の意見や情報の発信が気軽にできるようになった反面、匿名性を利用して特定人物の個人情報をネットの掲示板やSNS上に掲載し拡散させたり、誹謗中傷を行う等の悪質な行為も増えてきています。

以上のような行為により書き込まれた個人情報を削除したい場合はどのような対応をすれば良いのでしょうか。今回から複数回にわたり、書き込みの削除方法や、書き込みをした人物を特定する場合について説明します。

1.放置しておくと個人情報が悪用されてしまう

よくある例としては、ネットの匿名掲示板に、個人の氏名、住所、電話番号が書き込まれ、誹謗中傷されているケースです。当然ながら匿名のため、誰が書き込みをしたのかその時点ではわかりません。個人情報が書き込まれた場合に、対処方法が分からないから仕方がない、といって放置してしまうと、当該住所や電話番号が拡散され、更なる嫌がらせを受ける可能性があります。

実際に、個人情報が書き込まれた後に、イタズラ電話がかかってきたり、ダイレクトメールが大量に送り付けられた、という被害にあった人もいます。

多くのサイトでは、書き込んだ本人やサイトの管理者でなければ当該書き込みを削除することができないため、以下に紹介する方法で書き込みの削除を依頼することになります。

2.該当する書き込みを削除するには

(1)サイト管理者、プロバイダを調べる

書き込みを削除する方法としては、当該書き込みが行われているサイトの管理者やプロバイダへ依頼する方法があります。

まずは書き込みがあるサイト内に、連絡先が記載されているかどうか調べましょう。大抵のサイトには運営会社や会社概要などが記載されているページが存在します。

サイトの中には連絡先等の記載が全くないサイトもありますので、そういった場合には、登録されているドメイン名を検索できるサービスなどを利用し、サイト管理者やプロバイダを特定します。

有名な検索サービスでは、日本レジストリサービス社が提供する「JPRS Whois」があり、.jp/.co.jp/.or.jpなどのドメインが検索できます。

 

(2)サイトにある問い合わせフォームなどで削除依頼する

サイトの連絡先とともに掲載されていることが多い「問い合わせフォーム」。

「問い合わせフォーム」には、氏名やメールアドレス、問い合わせ内容等を記入する欄があり、削除依頼にかかわらず、サイトについての意見や要望などを送るために設置されています。このフォームから、サイト管理者へ直接連絡ができるようになっているので、氏名とメールアドレス、削除してほしい内容について詳細に記載し、送信します。

削除して欲しい内容については、問題となっている当該URLとその部分を示して削除箇所を厳密に特定し、なぜ削除が必要なのかを詳しく説明しましょう。特定した書き込みが、自分の権利を侵害していること、書き込みされた内容が自分のことであるとわかる理由や事情などをわかりやすく記載します。また、オンラインでの削除請求を行う場合、問題の情報が削除されると同時に、その書き込みが行われた際の通信ログも削除されてしまう可能性があります。

誰が書き込みをしたのか情報を開示してもらう「発信者情報開示請求」という制度の利用を予定している場合には、ウェブ上の問い合わせフォームから削除請求を行う場合でも、併せて発信者情報開示請求を予定していること、通信ログを消去しないでほしいことは記載しましょう。発信者情報開示請求については、次回説明致します。

なお、サイトによっては、削除依頼の手順を公開しているところもありますし、問い合わせフォームでの削除依頼自体が不可のところもあります。
したがって、問い合わせフォームを送信する前に、まずはサイト内をよく探し、削除を依頼するにはどのような手順を踏めばよいかを確認するようにしましょう。

(3)プロバイダ責任制限法に基づいた書式で削除依頼をする

サイトに削除依頼の問い合わせ先がなかったり、フォームでの削除依頼に対応しない場合、プロバイダ責任制限法に基づいた書式で削除依頼をする方法があります。

一般社団法人テレコムサービス協会が作成、発信している、プロバイダ責任制限法関連のガイドラインでは、ネットでの権利侵害に対する削除手続きとして、「送信防止措置」を定めています。具体的な削除手続きは以下のとおりです。

まず、2(1)で説明した方法でサイト管理者やプロバイダを調べたら、同ガイドラインで公開されている「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」に必要事項を記載し、サイト管理者やプロバイダへ郵送します。ガイドライン内に、提出時に必要な本人確認書類等も記載されていますので併せて準備し、「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」と一緒に郵送しましょう。 

参照①:プロバイダ責任制限法 関連情報WEBサイト
http://www.isplaw.jp/index.html

参照②:テレコムサービス協会 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン(第4版)
https://www.telesa.or.jp/ftp-content/consortium/provider/pdf/provider_mguideline_20180330.pdf

 サイトの管理者にこの依頼書が届けられると、サイトの管理者は、書き込みをした発信者へ削除するかどうか照会を行います。そして、当該発信者から、定められている期間(7日以内)に反論がなければ、サイトの管理者が削除依頼を受けた書き込みを削除します。

(4)裁判で削除仮処分の手続きをする

送信防止措置依頼をしても削除に応じないサイトもあります。任意の削除がなされなかった場合は、裁判所に対し、民事保全法の仮処分を申し立てることもできます。裁判所というと手続きや申し立てに時間がかかるイメージを持っている方もいるかもしれませんが、仮処分であれば1,2カ月で決定が出ます。削除仮処分命令の裁判管轄は、削除を求める相手である債務者の住所地又は債権者の住所地を管轄する裁判所のいずれかとなります。

記事削除の仮処分は、仮処分命令の発令により債権者の請求が実現する「仮の地位を定める仮処分」「満足的仮処分」に当たるため、仮処分命令発令後の実効性の面においても訴訟と遜色はありません。「仮の地位を定める仮処分」に関する仮処分命令は、原則として債権者のみではなく、債務者に反論の機会を与えた上でなければ発令できません(民事保全法第23④)。そのため記事削除の仮処分は、訴訟と同様に双方が主張立証を戦わせることになります。また、債権者側の主張が認められた場合は、仮処分決定発令のために供託する担保金が必要となります。

そのため、サイト管理人に直接削除を依頼したり、送信防止措置依頼に比べると手順も少し複雑になりますので、裁判所への仮処分手続きについては法律の専門家に依頼することも一つの方法です。

仮処分の申し立てが認められれば、多くのサイト管理者やプロバイダが削除に応じます。

3.まとめ

今回はネット上に掲載された個人情報の削除方法について解説しましたが、削除と併せて「発信者の情報開示請求」も行っておくと良いかと思います。「発信者の情報開示請求」については、次回詳しくご紹介したいと思います。

最近では「削除依頼ページ」を分かりやすく表示したり、「問題のある投稿を報告する」ボタンを設置するサイト、ルール違反についての説明を掲載しているサイトも増えてきました。ネットサービスを利用する前に、サイトに利用規約や問題が発生した場合についての記載があるかをよく確認し、万が一個人情報が掲載されていた等の問題が起こってしまった場合には慌てずに、今回ご紹介した削除申請を行いましょう。

2019.07.11

【離婚問題】離婚と子供の問題―子供の戸籍と氏―

子供がいる夫婦が離婚したとき、離婚後の子供の戸籍、氏はどうなるのでしょうか?
今回は離婚後の子供の戸籍と氏、そして親権者が再婚した場合の子供の戸籍についてお話したいと思います。

1.子供の戸籍と氏について

夫婦が離婚をして、両親のどちらが子供の親権者になっても、子供の戸籍は変わりません。
例として、父を筆頭者とする戸籍に母、子供がいるケースで考えてみましょう。離婚に伴い、母が父を筆頭者とする戸籍から抜けて、新しい戸籍を作り旧氏に戻ったとします。この場合、子供は自動的に親権者である母の新しい戸籍に転籍するのでしょうか?

この場合、子供は、離婚後も夫を筆頭者とする戸籍に残り、子供の氏も妻の旧氏に変わることはありません。ただ、親権者は母となるため、子供の戸籍の記載事項に「父母が協議離婚をして親権者を母とする」という旨が記載されるだけなのです。

2.子供の戸籍と氏を変更する手続きについて

では、どの様にすれば子供を親権者の戸籍に入籍させ、氏を親権者と同一に出来るのでしょうか?

子供を親権者の戸籍に入籍させるためには、①子の氏の変更許可申立てを行い、子の氏を親権者の氏と同一にしたうえで、②親権者の戸籍への入籍手続きが必要となります。

なぜ、①子の氏の変更許可申立てを先に行う必要があるのでしょうか。それは、子供と親の氏が異なる場合、子供は親の戸籍に入ることができないからです。また、両親が離婚しても、子供の氏は当然には変更されません。離婚によって子供の親権者が旧姓に戻っても、子供の氏が変わるわけではありません。

そのため、母親が親権者であり旧氏に戻った場合には、親権者である母親と子供の氏が異なるということになります。また、親権者が婚氏続称の届け出をした場合であっても、「婚姻中の氏」と「続称の手続をとった氏」は、法律上、別の氏とされます。

ですので、呼び方は同じであってもその親と子の氏は異なることになります。そのため、親と子の氏を同一にする為には、「子の氏の変更許可」の申立てを行う必要があるのです。
以下では、各手続を具体的に見ていくことにしましょう。

《子の氏の変更許可申立て》
子供の氏を変更するには、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てます。なお、申立人は子供自身になりますが、子供が満15歳未満の場合は法定代理人(通常は親権者)が申し立てを行います。申し立てを認める審判がなされれば、子の氏が変更されることになります。

《入籍届の提出》
次に子供の戸籍を親権者の戸籍へ入籍する手続きへと移行します。手続きの方法は、子の氏の変更許可の審判書の謄本等を添えて市区町村役場の戸籍係へ入籍届を提出します。ここでも、子供が満15歳以上であれば子供自身で手続きを行うことができますが、満15歳未満であれば、法定代理人(通常は親権者)が行います。

◎親権者でない場合は?
前述した通り、子供が満15歳未満の場合は、子の氏の変更許可の申立ては親権者(法定代理人)でなければ行うことができません。つまり、離婚時に親権者と監護者を分ける方法を選択した場合、看護者が子供の氏を自身と同一にしたいと希望しても、親権者ではないため、子の氏の変更許可の申立ては出来ないのです。

監護者と子供の氏を同一にするためには、親権者から子の氏の変更許可を申立てるか、親権者変更の調停・審判を申し立て、監護者を親権者とするしか方法はありません。

3.離婚後に生まれた子供の戸籍はどうなるの?

では、離婚後に生まれた子供の戸籍はどうなるのでしょうか。離婚した日から300日以内に生まれた子供は、民法772条2項に基づき婚姻中に懐胎した夫の子供であると推定されます。つまり、離婚後300日以内に生まれた子供は、実際には父親が違っていても前夫の子供と推定され、出生届を提出すると、嫡出子として前夫の戸籍に入籍することになります。
例外として、妊娠時期が離婚後である場合には、その旨を証明する「懐胎時期に関する証明書」を医師に発行してもらい、その証明書を添付して出生届を出す方法があります。

この場合には、子供の出生日が離婚後300日以内であっても、元夫以外を父とする出生届を受理してもらえますので、子供が元夫の戸籍に入ることもありません。
 では、子供が前夫の戸籍に入籍した場合に、子供の戸籍を前夫の戸籍から外すにはどのような手続きを行う必要があるのでしょうか。以下に説明致します。

《嫡出否認の手続き》
生まれてくる子供、あるいは生まれた子供が前夫との子供ではない場合、前夫が、子供又は親権を行う母の住所地の家庭裁判所家庭裁判所に「嫡出否認」の調停の申立てることになります。「嫡出否認」は調停前置主義が採られているため、まずは嫡出否認調停を申し立てることになります。また、申立ては母側から行うことはできず、戸籍上の父親である前夫が行う必要があるため、注意が必要です。

そして、調停で当事者同士が「前夫の子供ではない」と合意することができ、家庭裁判所が調査を行い、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がなされます。その結果、前夫と子供との父子関係は否定されることになります。

この申立ては子供が生まれたことを知った時から1年以内にしなければなりません。また、嫡出否認の調停を申し立て、一度前夫が自分の子供であると認められると、再度「嫡出否認」の申立てをすることはできません。

《親子関係不存在確認手続きについて》
離婚後300日以内に生まれた子供であっても、夫が長期出張中であるなど、妻が夫の子供を妊娠する可能性がないことが客観的に明らかである場合には、相手方の住所地の家庭裁判所(例えば、母が前夫を相手方に申立てる場合は、前夫の住所地の家庭裁判所)に「親子関係不存在確認」の調停の申立てをすることができます。
この申立ては父母、実の父のみならず、子供自身も申立てをすることができ、摘出否認の申立てと違い、申立てる時期に制限はありません。

この場合も、当事者双方の間で、親子関係の不存在の合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がされます。

以上の手続きを行い、子供の戸籍を前夫の戸籍から外した後は、2.で述べたように、子の氏の変更許可申立てを経て母親の戸籍への入籍手続きを行うことになります。なお、前夫と子供の親子関係が否定されたとしても、それだけでは父親が誰であるかが確定していません。法律上も実の父の子供にするためには、実の父に認知してもらう必要がありますので、注意が必要です。

また、離婚した日から300日を過ぎて生まれた子供は「非嫡出子」として母親の戸籍に入ることになります。もし、子供が前夫の子供である場合は、前夫に対し認知請求をするという流れになります。

4.再婚した場合の子供の戸籍はどうなるの?

前夫と離婚後、子供を自分の戸籍に入れている母親が再婚した場合、母親と再婚相手は新しい戸籍を作ることになります。しかし、子供は母親と再婚相手の新しい戸籍に入るのではなく、再婚前の母親の戸籍に入っているままになります。そして、再婚により母親の氏が変わっても子供の氏は変わりません。

子供を母親と同じ戸籍に入れるためには、再婚相手と子供の養子縁組をする必要があります。養子縁組をすると、子供は母親と再婚相手の戸籍に入り、同じ氏になります。
そして、子供は再婚相手の嫡出子と同じ身分を得ることになるので、養父の財産も相続できるようになります。また、子供の戸籍や氏が変わっても実父との親子関係は継続するので、実父の財産も相続することができます。

5.おわりに

以上のように、子供の戸籍と氏についての手続きは多岐に及ぶため、状況に応じた対応が必要になります。裁判所での手続きなど不安に感じる方は一度弁護士に相談することをお勧めします。

2019.07.04

少年事件手続の概要

未成年者が犯罪行為をした場合には、どのように扱われるのでしょうか。

未成年者も逮捕されることがありますが、重大事件でない限りほとんど報道されないため、その後どのような手続が行われているのかよく分からないという方が多いのではないでしょうか。今回は、少年事件手続の概要をご説明します。

1 犯罪少年とは

犯罪少年とは、犯罪に該当する行為をした14歳以上20歳未満の少年です。少年の犯罪事件は、原則として、成人と同様に捜査機関による捜査が行われた後、その全てが家庭裁判所に送致されます。
家庭裁判所で少年保護事件として審理され、大部分は家庭裁判所の決定を受けて終了します。ただし、家庭裁判所において、刑事処分が相当と判断された事件は検察官に送致され(「逆送」といいます。)、成年の刑事事件手続と同様に取り扱われます。

2 虞犯少年とは

虞犯(ぐはん)少年とは、虞犯事由があり、その性格や環境からみて、将来罪を犯すおそれのある20歳未満の少年です。
虞犯事由とは、以下のものをいいます。

① 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
② 正当な理由なく家庭に寄り付かないこと
③ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること
④ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること

虞犯性があるかどうかは、将来における事実を予測するものですので、単なる推測ではなく経験則に基づく高度の蓋然性が必要とされます。したがって、虞犯事由の検討にあたっては、本人の問題点だけではなく、家庭、学校、交友関係等の環境的要因も総合的に検討されます。

 

3 犯罪少年・虞犯少年の手続概要

(1) 家裁送致前

少年の被疑事件についても、おおむね成人と同様の捜査手続を経ます(少年法40条)。ただし、少年の心身は未成熟であるため、身柄拘束については以下のように特別な配慮がなされています。

①検察官はやむを得ない場合でなければ勾留請求することができず(少年法43条3項)、裁判官もやむを得ない場合でなければ勾留状を発することはできません(少年法48条2項)。

②検察官は、勾留の要件がある場合でも勾留に代わる観護措置を請求することができます(少年法43条1項)。

③勾留場所を少年鑑別所とすることができます(少年法48条2項)。
なお、虞犯少年については、虞犯事由自体は犯罪に該当しないため、他に犯罪行為がない限り、逮捕・勾留等は行われません。

(2) 家裁送致と観護措置

捜査を経た後は、全ての事件が家庭裁判所に送致されます。これは、少年保護の専門機関をもつ家庭裁判所に、全ての事件について保護処分と刑事処分のいずれを行うべきか、専門的判断をさせるためです。

家庭裁判所では、まず少年に対して観護措置をとるか否かを決定します。観護措置とは、家庭裁判所が調査・審判を行うために、少年の身柄を保全し、調査・鑑別などを行いながら少年を保護するための措置です。観護措置の期間は、少年法上は原則2週間と規定されています(少年法17条3項)が、実務上は、ほとんどの事件で更新される(同条4項)ため、原則4週間の運用となっています。

また、非行事実の存否や内容に争いがあり、証人尋問等を実施する事件では、更に2回更新され、最大で8週間になることがあります。
虞犯少年についても、捜査の結果虞犯事由があると思料されるときは、犯罪少年と同様に家庭裁判所に送致されます。

(3) 家庭裁判所調査官による調査

家庭裁判所調査官は、裁判官の調査命令によって、少年の要保護性に関して調査を行うことになります。要保護性とは、少年による再非行の危険性があり、少年に対しふさわしい保護処分(「保護処分」については後ほど、ご説明します。)を行うことにより再非行の防止をする必要性のことをいいます。
少年保護事件の処遇は、非行事実とこの要保護性に応じて決定されますが、保護事件としての性質上、要保護性の有無・程度の判断が重要な意味を持つため、調査結果は最も重要な資料となります。

(4) 少年鑑別所における鑑別

少年鑑別所は、観護措置により送致された少年を収容し、医学、心理学、教育学、社会学等の専門的知識に基づいて、少年の資質を鑑別する機関です。
 
少年鑑別所では、知能検査、性格検査等各種の心理テスト、面接、行動観察等の結果を総合的に分析・検討して少年の心身の鑑別を行います。少年の問題点、有効な処遇の方法、予後の見通しなどの分析と処遇意見を付して家庭裁判所に書面で通知します。

(5) 審判と保護処分

審判の手続は、①人定質問、②黙秘権の告知、③非行事実の告知と少年の弁解録取、④非行事実の審理、⑤要保護性の審理、⑥調査官・付添人の処遇意見録取、⑦終局決定告知 の順に進行されるのが一般的です。
審判で決定される保護処分としては、以下のものがあります。

①保護観察
少年を施設に収容せず、在宅で、保護観察所・保護司の指導監督の下、少年の更生を図る社会内処遇です。

②児童自立支援施設。児童養護施設送致決定
施錠のない開放施設で生活指導等を行う処遇です。

③少年院送致決定
少年院とは、身柄を収容した上で少年に対して矯正教育を施す施設です。対象少年の年齢と特性に対応して、初等、中等、特別、医療の4種類に分けられています。

④試験観察決定
①から③の終局的な保護処分のほか、終局処分の決定を一定期間留保する中間処分として、試験観察決定がなされることがあります。試験観察には、少年を家庭に戻してその経過を見る在宅試験観察と、適当な施設、団体、個人に補導を委託する補導委託があります。

⑤検察官送致(逆送
死刑、懲役、禁錮にあたる罪を犯した少年について、家庭裁判所が保護処分でなく刑事処分を相当と認める場合には、検察官送致がなされることがあります。この場合、刑事訴訟法の定めに従って裁判手続が進められます。

4 まとめ

今回は、少年事件手続の概要についてご説明しました。少年事件は、犯罪の内容によってその後の手続が大きく変わってきます。未成年者が逮捕されてしまった場合、ご親族が動揺し、不安になるのは当然です。今後どのような手続が行われるのかを知り、心積もりをしておくことが重要です。

2019.07.03

意外と知らない、「契約」とは?

みなさんは、「契約」とは何か、答えることができますか?
なんとなく分かっているつもりだけれど、どんなものかと聞かれると答えに困ってしまう、そんな感じではないでしょうか。
今回は、「契約」とは何か、お話していきます。

1.「契約」とは?

(1)はじめに

何か新しいことを始めるとき、新しいものを買うときなど、私たちの生活の中では何かと契約、契約書が必要とされます。名前や住所を書いて、署名押印をして、それも1枚ではなく何枚も・・・正直、面倒だと感じることもありますよね。

なぜわざわざ契約書を作成しなければならないのでしょうか?約束をするだけでは足りないのでしょうか?
今回は契約をすること、契約書を作ることの必要性についてお話します。

(2)契約と約束の違い

先ほど、「契約ではなく約束をするだけではだめなのか」と書きましたが、そもそも契約と約束の違いは何でしょうか?
例えば、「今度の土曜日映画をみに行こう。」「明日、一緒に買い物に行こう。」というのは約束であり、「この家を買います。」というのは契約になります。これらの違いは、一定の権利や義務が発生し、合意内容の実現が法律的に強制されるか否かという点にあります
 
もちろん、約束は守らなければならないものですが、仮に約束を破られたとしても、それ以上何かできる訳ではありません。しかし、契約では、法律上の権利や義務が発生するため、契約を破った者に対しては、裁判所に訴え、損害賠償や契約内容の履行を強制的に求めることができるのです。

2.「契約」が成立するまで

では次に、どのようにすれば「契約」が成立するのかをお話していきたいと思います。
ハンコについての記事の中で、「契約」は当事者が契約内容に合意をすれば成立するとお話しました。

参考記事:ハンコの持つ効力と役割

例えば、AさんがBさんから10万円で車を買うことになったとします。Aさんは車を10万円で買うこと、Bさんは10万円で車を売ることに同意しています。したがって、この時点で契約は成立したことになります。
ですので、もしAさんが車の代金10万円を支払わなかったときには、契約書の有無に関わらず、BさんはAさんに対して、売買代金支払債務の履行を求めることができます。

以上のことからすると、当事者が契約内容に合意をしていれば、口頭でも契約成立となりますので、契約書を作成する必要はありません。ですが、私たちは何か契約をするたびに契約書を作成し、そしてその契約書に署名や押印をします。
契約書がなくても契約は成立するはずなのに、手間をかけて契約書を作成する理由は何なのでしょうか?

例えば、先ほどの例で、BさんがAさんに車を引き渡したあとに、Aさんが「車を10万円で買うなんて言っていない。5万円しか支払わない。」と言ってきたとします。当事者の合意によって10万円での車の売買契約が成立していますので、AさんはBさんに対して10万円の売買代金支払債務を負っています。
しかしながら、口頭での契約だったため、車の売買代金が10万円だという証拠がありません。

このようなとき、契約書を作成していれば、車の売買代金は10万円だと証明することができるため、訴訟に至った場合でも、特段の事情がない限り、勝訴判決を得ることができ、Aさんに10万円を支払わせることができます。
 
上記例のように、契約書は当事者が契約に同意したことの証拠となりますので、後のトラブルを防ぐためにも、契約書を作成することをおすすめします。

3.「契約」の種類

1と2で、「契約」とは何か、どのように「契約」が成立するかなどについてお話をしてきました。3では、「契約」の種類について会社員Cさんの1日に沿って紹介していきます。
 
朝、Cさんは会社までDさんから購入した車(売買契約)に乗って出社しています。
会社に着きました。会社はとあるビルの5階にあり、会社がビルのオーナーと賃貸借契約を結んでいます。また、Cさんは会社との間で雇用契約を結んでいます。

仕事上で、何かを外部の業者に依頼するときは、会社と当該業者の間で委任契約を結ばれることになり、会社が複合機をリースしているときにはリース契約が結ばれています。
帰宅時間になり、Cさんは自宅マンションへと帰宅しました。マンションは、オーナーのEさんから借りている物件です。(賃貸借契約)
このように、私たちは様々なところ、数多くの契約をしています。
 
普段、この家は賃貸借契約を結んだうえで住んでいるのだ、この車は売買契約を結んだうえで乗っているのだなど、毎回考えたりしませんよね。ですが、私たちの生活はたくさんの契約の上に成り立っています。この記事を読んだことを機に、契約の大切さについて是非考えてみて下さい。

4.まとめ

今回は、「契約」とは何なのか、どのように「契約」が成立するのか、「契約書」の必要性、「契約」の種類などについてお話しました。
 
私たちの生活の中には契約が溢れていますので、簡単に契約を結び、契約書にもサインをしてしまいがちですが、契約を守らなければ法的な措置を取られることにもなりかねません。ですので、何か契約を結ぶ際には、契約内容についてよく考え、契約書を十分確認をして署名押印をしましょう。

2019.07.02

架空請求の被害に遭わないために

「架空請求」という言葉を皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
架空請求は近年増加し続けている犯罪の手口です。
今日はそんな架空請求についてお話したいと思います。

1.架空請求とは

架空請求とは、実際には利用した覚えのないサービスの利用料金や登録料を、あたかもどこかで契約したことがあるかのように消費者に請求し、金銭をだまし取ろうとする詐欺の手口のことです。
架空請求では、メールやはがき等で、無差別に金銭の請求を行います。そのため、誰でも架空請求のターゲットになり得ます。そんな架空請求の被害に遭わないためにも、実際に架空請求ではどのような手口が使われているのかを見ていきましょう。

2.具体的な手口

架空請求は、インターネット上のサービスの利用について、本当は登録の事実がないにも関わらず、「先月分のサイト利用料金が未納です」や「無料期間が経過したが退会手続きが取られていない」などともっともらしい理由をつけて、はがきや郵便、メールなどで料金の請求を行ってきます。

それだけではなく、「訴訟手続きを開始する」や「差押えの強制執行手続きとる」などと消費者の不安を煽る内容を記載した上で、「今日中に支払えば間に合う」「連絡がない場合は裁判になる」などと謳い、すぐに料金を支払うことや連絡を要求してきます。
中には、「民事訴訟 管理センター」などと、行政機関を装い請求してくる場合もあるので、要求に応じてしまう消費者も少なくないようです。

しかし、ここで要求に応じてしまうと相手の思うつぼです。
なぜなら、一度でも金銭を支払ったり、相手に連絡をしてしまうと、電話番号や氏名等の個人情報がばれてしまい、相手から直接電話がかかってきたり、その後も延滞料などと名目をつけて、金銭を要求されるようになってしまうからです。
一度でも金銭を支払ってしまうと二次被害、三次被害に及んでしまうということを覚えておきましょう。

次に、架空請求かどうかの見分け方についてご説明したいと思います。

3.架空請求の見分け方

架空請求は、インターネット上のサービス利用に関しての金銭の請求がほとんどです。自分の身に覚えのないサービス利用に関して請求が来た場合、「あの時にあのサイトを見て、うっかり登録してしまっていたのかな」なんて思い、素直に支払いに応じてしまってはいけません。
インターネットのサービスの登録では、消費者が、「うっかり、いつの間にか登録してしまっていた」という事態に陥らないように、法律上事業者に一定の行為が求められています。

ですので、身に覚えのない請求が来た場合は、架空請求と考えてよいでしょう。では、具体的に事業者には、どのような行為が求められているのでしょうか。

まず、インターネット上のウェブサイトにおけるサービスの提供は、特定商取引法第11条に定められている「通信販売による役務の提供」に当たります。インターネットで契約を結ぶ場合(有料サービスの利用など)、消費者はサービス提供者と会話をしたり、品物を確認したりすることが出来ません。
そのため、消費者の意思に反した売買契約や、サービス提供の申込みが成立してしまうことになりかねません。

このような、消費者が不利益を被ることを防ぐために、事業者がインターネット上で契約申込を受ける場合には、消費者がコンピューター操作を行う際に申込みの内容を簡単に確認でき、訂正できるようにしておくことが求められています(特定商取引法第14条2号、同施行規則第16条2号)。

会員登録を行う際に、以下のような画面が出てくるのを、皆さんも一度は目にしたことがあるかもしれません。これは特定商取引法に基づく登録フォームの形式になっているのです。

このような手順を踏む登録なしに、いきなり金銭の請求のみが来た場合は架空請求を疑いましょう。
次に、架空請求のメールやはがきが届いたら、どのように対処したら良いのかを見ていきましょう。

4.架空請求がきたときの対処法

架空請求と思われるメールやはがきが自分のもとに届いた場合の対処法は、極めてシンプルです。
それは無視することです。具体的な手口でも述べた通り、メールに返信したり、電話をしたりしてしまった場合は、その後もしつこく連絡が来る恐れがあるため、何もしないのが一番重要です。

それでも不安な場合は、消費者向けの相談窓口(例えば、消費者生活センター等)などに相談してみるのがいいでしょう。
ただし、上記はあくまでも基本的なケースであって、中には無視してはいけない架空請求もあります。次はそちらを見ていきましょう。

5.無視すると危険な架空請求

架空請求の手口の中には、裁判所からの支払督促や少額訴訟の手続きを悪用して行うものもあります。この2つの手口は実際に裁判所で手続きを行い、それを犯罪利用してくるというものです。
支払督促手続とは、債権者からの申立てに基づいて、原則として、債務者の住所地の管轄の簡易裁判所の裁判所書記官が、債務者に対して金銭等の支払を命じる制度です。債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払い請求を争う訴訟であり、原則として1回の期日で審理を完了して判決を言い渡します。

どちらも比較的簡易な手続きで進めることができるため、架空請求に、より信ぴょう性を持たせるために悪用する手口が見受けられます。

この場合、金銭の請求自体は架空であっても、裁判所から来た通知は本物なので、通知が手元に届いた場合は応じる必要があります。この時なにも対応しなければ、相手方(架空請求をしてきた業者)の請求を認めたこととなり、法律上支払いの義務が発生してしまいます。

そうならないためにも、裁判所から通知があった場合は、裁判所に出頭するか、答弁書を提出し、請求が架空請求であることを主張する必要があります。

この場合は裁判所とのやり取りが必要になりますので、専門家に相談するのが良いでしょう。
 

6.まとめ

架空請求の手口は近年ますます巧妙化しています。判断を誤って金銭を振り込んだり、必要な手続きを無視したりしてしまうと、思わぬ被害を被ってしまう可能性があります。

そうならないためにも、架空請求か疑わしい場合は、すぐに警察に連絡するか、もしくは専門家へ相談するようにしましょう。

2019.06.27

収入印紙とは?

会社で何か高額な買い物をしたときなど、領収書に切手によく似た「収入印紙」というものが貼ってあるのを見たことがありませんか?
普段の生活では、この「収入印紙」を中々目にすることがないかもしれませんが、契約書に貼り付けることもありますので、この記事を読んで、いざという時に役立ててください。

1.収入印紙とは

そもそも、収入印紙とは何なのでしょうか?言葉だけなら聞いたことがある、初めて聞いた、使ったことがあるなど、人によって様々だと思います。

収入印紙とは、印紙税等の租税を収めるために使用される証票のことをいいます。国税のひとつに印紙税というものがありますが、課される金額は、取引の金額や、書類によって異なります。印紙税を収める流れとしては、郵便局や市役所、コンビニ、法務局などで収入印紙を購入し、それを書類に貼り付けて、消印をすることによって税金を納めたことになります。

では、収入印紙を貼らなければならない書類にはどのようなものがあるのでしょうか?
まず、代表的なものとして領収書があります。5万円以上の金額が記載されている場合には、その金額に応じた収入印紙を貼り付けなければなりません。なお、この5万円は本体価格を指します。
例えば、領収書に「5万1,840円」と記載があったとしても、本体価格4万8,000円、消費税3,140円の場合には課税対象ではないため、収入印紙は不要となります。ただし、この場合は領収金額のうち、いくらが本体価格なのか、いくらが消費税なのかを明記する必要があります。

2つ目は契約書です。請負、不動産、消費貸借、信託などに関する契約書は、契約書の種類ごとに、契約書に記載された金額に応じて支払うべき印紙税が異なってきます。ですので、収入印紙を貼付する場合には注意が必要です。
3つ目は、約束手形、為替手形です。これも、領収書や契約書と同じく、金額に応じて収入印紙を貼り付けて、印紙税を収めます。

2.英文の契約書だった場合はどうする?

最近では、海外の会社と契約を結んだり、海外に進出したりする会社も増えて来ましたよね。1.で、契約書にはその種類及び契約書記載の金額に応じて収入印紙を貼らなければならないとお話しましたが、日本と海外で結んだ英文の契約書の場合も、収入印紙は必要なのでしょうか?

これについては、「契約書が作成された場所によって変わってくる」が答えになります。日本の法律で、印紙税が適用されるのは日本国内のみと定められているため、仮に契約書が作成された場所が海外だとすると、収入印紙を貼る必要はないのです。

それでは、印紙税を貼るべき契約書(以下「課税文書」といいます)の成立時期はいつなのでしょうか?ここで、印紙税法の課税文書の作成とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。

そのため、課税文書の成立時期としては、相手方に交付する目的で作成する課税文書(例えば、株券、手形、受取書など)は、その交付の時になりますし、契約書のように当事者の意思の合致を証明する目的で作成する課税文書は、その意思の合致を証明する時になります。

例えば、日本のA社、カナダのB社が契約を結ぼうとしているとします。まず、A社が日本で契約書を2通作成、署名押印し、それをカナダのB社に送りました。カナダのB社は、日本のA社から送られてきた契約書に署名押印し、1通を日本のA社に返送しました。こうして契約書が作成された場合、返送されてきた契約書、つまりA社が日本で保管しておかなければならない契約書に収入印紙の貼り付けは必要なのでしょうか?

この場合、A社が署名押印した段階では、契約当事者の意思の合致を証明することにはなりません。契約当事者の残りのB社が署名等するときに課税文書が作成されたことになり、その作成場所は日本国外ですから、結局、この契約書には印紙税法の適用はないことになります。したがって、収入印紙を貼る必要はありません。

逆に、カナダのB社が契約書を2通作成、署名押印し、それを日本のA社に送ります。日本のA社はB社から送られて来た契約書2通に署名押印し、1通をカナダのB社に返送し、B社はその1通を自社で保管します。
この場合、契約当事者の意思の合致を証明する時は、A社が契約書に署名等したときであり、この時に課税文書が作成されたことになるため、収入印紙の貼り付けが必要となるのです。また、収入印紙の貼り付けは、日本のA社で保管する1通だけでなく、カナダのB社で保管する契約書分についても必要となります。

3.収入印紙を貼り忘れてしまったとき

例えば、領収書に本体価格5万円以上の金額が記載されているときには、収入印紙を貼り付けることが必要だとお話しましたが、もしこの収入印紙の貼り付けを忘れていた場合、どうなってしまうのでしょうか?

仮に、収入印紙の貼り付けが必要な領収書や契約書に、印紙を貼り付けることを忘れてしまったとしても、領収書や契約書そのものが無効になることはありません。例えば、契約書の場合ですと、契約は双方の合意があれば有効なものとなり、契約書はその合意を形に残したものにすぎません。ですので、「収入印紙を貼り忘れたから契約が無効になるのではないか」、という心配をする必要はないのです。

しかし、契約書の効力に問題がないからと言って、貼り忘れた印紙税を収めなくて良いという訳ではありません。収入印紙を貼り忘れていた、貼らなければならないことを知らなかったなどの場合でも、過怠税という税金が課されることになります。過怠税とは、印紙税法第20条に基づき、印紙税を納付しなかった場合に課されるもののことです。

過怠税として納めなければならない金額は、本来納付すべき金額の3倍となります。ただし、文書の作成者が管轄の税務署長に対し、収入印紙を貼り忘れていた旨の申し出を自主的に行った場合には納付する金額は本来の金額の3倍ではなく、1.1倍で済む場合があります。

さらに、収入印紙を貼り付け忘れた場合だけでなく、消印をしていなかった場合にも過怠税がかかってきます。金額は、消印をしていなかった収入印紙の金額と同額のものとなりますので、消印の押し忘れにも気を付けてください。

4.まとめ

今回は、収入印紙の基本についてお話しました。
普段の生活の中で、収入印紙を使う機会は中々ないかもしれませんが、いざ使う機会が訪れたとき、貼り忘れてしまった、貼ったのに消印をわすれてしまったなど、本来収めるべき金額以上の金額を収めなくて良いように、この記事を読んで、いつか訪れるかもしれない、収入印紙を使う機会に役立ててください。

2019.06.27

【交通事故】ひき逃げ・無保険車との事故にあってしまったら・・・

自賠責保険に未加入の自動車や盗難車両による交通事故の被害にあった場合や、ひき逃げ事故により加害者が判明していない場合、被害者はどの様な方法で補償を受ければ良いのでしょうか。

今回はその様な事態に陥ったときに補償を受ける方法について説明していきます。

1 ひき逃げ事故と無保険事故

(1)自賠責保険・責任共済と被害者請求

自動車(農業作業用小型特殊自動車を除く)や原動機付自転車を運転するには、法律によって自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)、または自動車損害賠償責任共済(責任共済)への加入が義務付けられています。通常、交通事故で被害者となり、加害者から損害の賠償がなされない場合、自賠責保険会社(以下、「自賠責」といいます。)に対して被害者請求をすることになります。
 
被害者請求では、被害者は、加害者に代わり加害者の加入している自賠責に対し、損害賠償請求をすることが可能です。
また、当面の費用が必要な場合には、損害賠償額の一部を仮渡金(*1)として請求することができます。

*1仮渡金
自賠責から保険金が支払われるまでには、「被害者が必要書類を揃え自賠責に請求を行い、自賠責による審査を経たうえでの支払い」となるため、一定の日数を要します。しかし、支払いがなされるまでの期間、経済的に困窮してしまう方もいるため、その様な方を救済するために仮渡金の制度が設けられています。

(2)被害者請求ができない場合

しかし、現実には全ての自動車が自賠責保険に加入しているとは限りません。自動車の中には、一切の保険に加入していない自動車があることも事実です。もし、自賠責保険に未加入の自動車、若しくは盗難車による交通事故の被害を受けた場合、被害者は自賠責保険からの補償を受けることが出来ません。ひき逃げにより加害者が特定出来ない場合も同様です。

その様な状況に陥ると、被害者は加害者から直接の補償を受けられない限り、何らの補償を受けることが出来なくなります。実は、その様な状況を避けるためにも、政府が被害者を救済する政府保障事業というものが存在しています。以下では、政府保障事業について詳しく説明をしていきます。

2 政府保障事業

政府保障事業とは、国が被害者に対し交通事故による損害を補償する制度のことです。なお、政府保障事業を利用できるケースは、「被害者が加害者から損害賠償を受けることが出来ずに被害者が利用できる社会保険を使用しても不足するとき」に限られています。

つまり、損害の補償を受けることが出来ない被害者を救済する最終方法として位置づけられているのです。そのため、加害車両が自賠責保険に加入している場合は、被害者請求により保険金の請求が可能となるため、政府保障事業を利用することが出来ません。

それでは、被害者が損害賠償を受けられないケースとはどの様な状況を想定しているのでしょうか?一般的には、『ひき逃げにより加害者の特定が困難な交通事故・加害車両が無保険である交通事故により被害を受けたケース』で利用されることが多い制度となっています。

例えば、ひき逃げによる被害を受けた場合、加害者が特定できないため、加害者・加害車両が加入する保険会社に対し請求が行えません。そのため、政府保障事業の利用が可能となります。なお、交通事故の被害にあったことを証明する必要があるため、警察が発行する交通事故証明書が必要となります。

仮に、軽い当て逃げで、その場では怪我も痛みも感じない状況であったとしても、後々事故の影響により痛みが出ることもあります。警察は加害者が逃亡していたとしても事故の処理を行ってくれるので、必ず警察に連絡をすることを怠らないようにすることが大切です。

また、医療費について、社会保険の給付が可能な部分については政府保障事業による補償の対象とはなりません。具体的な例を挙げて考えてみましょう。

【例】
 ① 損害額………180万円
 ② 社会保険からの給付額70万円
 ③ 政府保障事業の補償額50万円(補償限度額120万円―70万円(②))

ここで、政府保障事業では、補償限度額が定められており、その額は120万円となっています。被害者の損害額全額を補償するわけではないので、注意しましょう。

そして、例のケースでは損害額が社会保障事業の補償限度額120万円を上回っているので、120万円を補償の総額として取り扱い、社会保険からの給付額70万円を差し引いた50万円が政府保障事業により補償される金額となります。損害額全額から社会保険の給付額を差し引くわけではないため注意しましょう。

3 まとめ

今回は、ひき逃げ等により加害者からの損害賠償を受けることが出来ないときに、利用できる制度として政府保障事業についてご説明しました。手続きをご自身で行う場合は、制度をきちんと把握した上で手続きを進めることが大切になります。

ご自身が利用対象である可能性のある方、今から手続きを進めるご予定の方は、弁護士等の専門家に一度ご相談されてみることをお勧めします。

2019.06.24

【離婚問題】離婚と子供の問題―面接交渉権―

離婚に伴い子供の親権を取得することが出来なかった場合、今後子供との面会が出来るのか、どの位の頻度で面会が出来るのか分からないことはありませんか?今回は子供との面会交流についてご説明します。

1.面会交流権とは

離婚時に親権を取得することが叶わず、子供と離れて暮らすことになった親には、面会交流権が認められています。面会交流権とは、訪問、文通、電話などを通じて子供と交流する権利のことです。

この権利に基づいて、子供と親が連絡を取り合ったり、会ったりすることを一般的に面会交流と言います。なお、以前は「面接交渉」という言葉がよく使われていましたが、現行民法に、「父又は母と子との面会及びその他の交流」という文言が明記されたことから、「面会交流」という言葉で使われることが多くなりました。どちらも同じ意味ですので、ここでは「面会交流」という言葉を使います。

2.面会交流の内容を決めよう

面会交流の取り決めについては、離婚の成立前に離婚協議書等で文書化して残すことが理想ですが、実際にどの様な項目について調整する必要があるのでしょうか?

◆頻度と時間……週、月当たりの回数、1回当たりの所要時間
◆場所……面会場所の制限の有無
◆宿泊の有無……宿泊の可否
◆子供の受渡し……受け渡し場所、受け渡し場所までの交通費の負担
◆学校行事等……入学式、卒業式、運動会等の行事への参加の可否
◆長期休暇時……夏休み、冬休み等の連休中の対応
◆間接的な交流…手紙や電話、メール等間接的な交流の可否、制限
◆お小遣い等……面会時にお小遣いやプレゼントを渡すことの可否

以上が、面会交流に関して一般的に取り決めておくべき内容となります。他にも互いの生活状況によって個別に決めておくべきこともあるため、事前に弁護士などの専門家に相談し、決めるべきことを整理しておくことが理想です。
なお、夫婦間での協議が不調に終わったときには、家庭裁判所において調停等の手続きを利用することになります。

3.面会交流の拒否・制限について

離婚したときの理由、状況によっては、子供を監護している親側に、子供の面会交流を実施させたくない理由があるかもしれません。しかし、面会交流を拒否するだけの一定の理由がなければ面会交流を拒否することは認められません。

では、どの様な理由があれば面会交流を拒否することが可能なのでしょうか?基本的には「面会交流を実施することが子供の福祉に悪影響を及ぼす」場合には面会交流の拒否を認められる可能性があります。代表的な理由の一例を紹介します。

①子供が暴力を受ける可能性が高い
②子供の連れ去りの可能性がある

これらの理由については面会交流を拒否する理由として認められる可能性があります。その他にも、子供が自分の意志で考え話すとことが可能な年齢であれば、子供自身が面会交流を拒否する「子の拒否」も理由の1つになります。
仮に、例に挙げたような理由で面会交流の拒否を相手に伝え、相手が納得しないときは、家庭裁判所において調停等の手続きをとることになります。

面会交流の拒否についてはこちらもご覧ください。
面会交流~面会交流をさせたくないときは?~

4.子供が連れ去られたときの対処

もし、子供の親権を取得していたのに、相手が子供を引き渡してくれない場合や、面会交流時にそのまま連れ去ってしまった場合はどの様に対処すべきなのでしょうか?以下に具体的な対処法についてご説明致します。

①子の引き渡しを求める調停・審判

家庭裁判所に「子の引き渡し」の調停を申し立てます。調停では、調停委員を介して話し合いでの解決を目指します。しかし、親権者が子の引き渡しについて裁判所を利用するようなケースでは、問題が複雑化していることも多いため、調停では相手が引渡しに応じない可能性が高く、調停が不調に終わることも多くあります。

その様な場合は、自動的に審判に移行します。審判では、話し合いではなく裁判官が一切の事情を考慮して決定します。

②審判前の保全処分

子の引渡しの調停、審判は解決までに一定の時間を要するため、同時に「審判前の保全処分」を申し立てるケースが多いです。審判前の保全処分とは、調停、審判の終結を待っていると当事者の権利の実現が難しくなる場合に、裁判所が権利対象に対する保全(保護)を行うものです。あくまで調停、審判が終結するまでの暫定的な処置となります。

子の引渡しのケースでは、「審判前の保全処分」が認められると、調停、審判の決定を待たずに「子供を仮に引き渡すように」という保全命令が下されます。また、審判前の保全処分では「間接強制」をつけることもできます。具体的には「子供を引き渡すまで1日○○円を支払え」というような金銭的な負担を与え、相手が保全命令を履行することを促す効果が期待されます。

③人身保護請求

人身保護法第2条に基づく人身保護請求は要件が厳格であり、相手の手元に子供が居るというだけでは請求が認められることはありません。子の引き渡しの場合で言うと、子供の拘束について顕著な違法性があり、子供の自由な意思に反していることが要件となります。

そのため、個別具体的事情に鑑みて法律の要件を満たしているのか検討しなければなりません。また、要件のうちどれが問題となるかで主張すべき点が大きく異なってくるため、法的な知識も必要となります。更に、原則として弁護士を代理人として請求する必要もあるため、専門家へ相談のうえ、当該手続きを利用すべきかも含め検討すべきです。

5.おわりに

面会交流を実施するうえで大切なことは、子供の福祉を一番に考えつつ、将来的に面会交流についてトラブルが起きないように、離婚時に将来的なことも含めた条件を決めておくことです。

万が一、トラブルが発生したときには、子供が当事者であることからも可能な限り迅速に必要な手続きを進めることが大切です。もしトラブルが発生した場合には、速やかに専門家へ相談し、子供の安全の確保、その後の対策等について相談することをお勧めします。

2019.06.24

ハンコの持つ効力と役割

前回、「ハンコ」の種類と特徴についてお話しましたが、今回は「ハンコ」の持つ効力と役割についてお話したいと思います。

前回の記事を読むにはこちらから→「ハンコの種類と特徴

1. ハンコの持つ効力

個人が使うハンコには主に実印、銀行印、認印、シャチハタがあり、会社が使うハンコには主に代表社印、社印、割印があると前回お話しましたが、これらの効力はどのようになっているのでしょうか?

そもそもハンコには、ハンコの持ち主が契約書などの書類の内容を理解して、持ち主本人の意思でハンコを押したと思わせる力があります。これに加えて、それぞれ違った大きさの力を持っているのです。

例えば、借主の欄に自分の名前が書かれた、5000万円の借用書が3枚あったとして、それぞれに実印、銀行印、認印が押してあるとします。この場合、どの借用書が1番効力を持っているのでしょうか?
もちろん、実印が押された借用書です。実印は、他のハンコとは違い、印鑑登録を行うにも本人確認が必要であり、法律上、社会上の権利や義務の発生を伴う重要なハンコのため1番効力があるといえます。

一方、認印は大量生産され、100円ショップなどでも簡単に手に入れることができるもののため、本人ではない誰かが,自分で認印を準備して勝手に押したという可能性も考えられます。ですので、1番効力を持っているとは言えないのです。

2. ハンコの持つ役割

では次に、ハンコの持つ役割についてです。ハンコは、契約をするときに押すだけで
なく、様々な使い方をすることができます。以下に、使い方の例を挙げていきます。

(1)契印

2枚以上にわたる文書があるときに、その文書の境目のページに押した印影のことを言います。

意味:文書が勝手に追加されたり、差し替えられたりしていないもので、そのつながりが真正であることを証明します。法的な力はなく、契印があってもなくても文書としての効果に違いはありません。

(2)訂正印

文書に記載した文字や言葉を書き直したり、書き加えたり、削除したりしたいときに訂正部分に押すハンコになります。契約書などの書類の注釈のところに、「間違えた場合は該当部分に二重線を引いたうえで、訂正印を押してください。」という旨の記載が書かれているのを見たことがある方も多いと思います。

意味:訂正印を押すことで、その訂正が勝手に行われたものでないという証明になります。そのため、訂正印は、文書の最後に押したハンコと同じものを使う必要があります。最後の方で間違えてしまうと、修正液や修正テープを使いたくなりますが、訂正印を押して修正を行わなければなりません。

(3)捨印

文書の余白部分に押された印影のことを言います。この印影も、文書の最後に押されたものと同じものである必要があります。

意味:捨印があることで、文書の交付を受けた人に対し、捨印を押した人の了解を得なくても、ある程度まで文書の内容を訂正して良いという権限を与えるということを意味します。
ですが、捨印が押してあるからと言って、契約書の重要な部分まで訂正することはできませんので、注意してください。

(4)消印

収入印紙や切手、はがきなどの文書に使用済みのしるしとして押された印影のことを言います。
押す場所について、特に決まりはありませんが、角に押すことが多いようです。また、ハンコについてもその文書の最後に押されたものと同じものを使うことが多いようですが、違うハンコを使ったとしても効力に変わりはありません。

意味:はがきや切手が再利用されることを防ぎます。

3. ハンコをきれいに押すことができなかったときはどうする?

1と2で、ハンコの持つ効力と役割についてお話しましたが、実際にハンコを押す場面になったとき、斜めになってしまったり、印影が薄くなってしまったりした経験はありませんか?

せっかく大きな契約をとったのに、契約書に押したハンコが滲んでいたり、薄くついてしまったりしていたら、契約書が無意味なものになってしまうのではないかと不安になりますよね。ですが安心してください。押したハンコが薄くても、上下逆さまになっていても、契約が無効になることはありません。なぜなら、契約書は契約の存在を証明する重要な客観的証拠ではありますが、契約自体は当事者双方の合意により有効に成立するからです。

では、なぜわざわざハンコを押すのか。それは、合意があったことを形に残すものである契約書の価値を高めるためです。ですので、印影さえあればハンコがきれいに押されているかなんて関係ないのです。

4. まとめ

今回は、ハンコの持つ効力、役割、そしてハンコをきれいに押すことができなかった場合はどうなるのかについてお話しました。
ハンコは、大事な書類の最後に押すだけでなく、様々な使い方、意味があること、また、きれいにまっすぐ押さないといけないと思いがちですが、意外とそんなことはないということも分かっていただけたかと思います。
この記事を読んだ後、ハンコを押す機会があれば、ぜひ今回知ったことを生かしてみて下さい。

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