弁護士コラム

2024.04.25

盗品の転売、所有権は??

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先日、ある男性が百貨店に展示されていた純金製の茶碗を盗んだというニュースを目にしました。 純金で出来ている茶碗だとさぞかし重いだろうな等思ってニュースを見ていましたが、その後、盗んだ犯人が、その日のうちに買取業者に茶碗を売却し、その買取業者もその日のうちに別の人に、転売をしたようです。 今回の事件では盗品が売買、転売されていますが、そもそも盗品である以上売買も無効になるのではないかと考えられる人もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は盗品や他人の物についての売買についての問題についてお話しさせていただきます。

1.盗品や他人の物の売買も有効

まず、盗品の売買の場合、売主は、自分が所有者ではない他人の物を買主に売っていることになります。 そして、民法561条では、

他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

と規定しています。 つまり、売買の目的物が他人の物(他人の所有権)であっても売買契約自体は有効であり(「他人物売買」といいます。)、売主は他人から所有権を取得して、買主に移転する義務を負うことになるのです。簡単に言うと、先に売買契約をして後から他の人から商品を買って、買主に渡すという方法による契約も有効ということになります。 したがって、盗品であっても、窃盗犯と買取業者との間の売買契約自体は有効ということになります。

2.所有権について

このように、盗品であっても契約自体は有効となります。
もっとも、盗品である以上、売主の犯人は所有権を取得することはできません。そうなると、買主は所有権を取得できないようにも思えます。

しかし、不動産の場合には、登記を見れば所有者が分かりますが動産(物)の場合にはいちいち名前などが書いていないことが多く、他人の物であることが分からないケースも多いと思います。取引をした後で後から他人のものであることが分かった場合に、返さないといけないとなると購入する際に、本当にこの人の物であるかということをいちいち確認しなければ取引が出来なくなってしまいます。

金の器

そこで、民法には即時取得という制度があり(192条)、取引の際に、買主が売主に権利があることを過失なく信じていた場合には、買主が所有権を取得することになります。 したがって、上記ニュースの事案でも買取業者において、売主がその純金製の茶碗の所有者であると過失なく信じていた場合には、買取業者が茶碗の所有権を取得することになります。

そもそも純金製の茶碗というものが市場で流通する物ではないと思いますし、頻繁に金の取引をしている相手ならともなく、いきなり、純金製の茶碗を買ってほしいと行ってきた人に対し、どこで入手してきたものなのかなど質問したりすることで、この人の所有物ではないことは容易に知りうると思いますので、即時取得は認められる可能性は低いのではないかと思います。

なお、民法193条には、即時取得の特例が規定されており、即時取得の対象となる物が盗品や逸失物(なくした物)である場合には、盗まれたり失くしたときから2年間、その物の回復を請求する権利があるため、今回の事件で万が一即時取得が成立したとしても、所有者(被害者の方)は2年間は現在の持ち主に対し、返却するよう請求することができます。

3.犯罪になる場合

では、ニュースの事例で、買取業者が、事前にニュースなどを見ていて、茶碗が盗まれたことを知っており、売りに来た茶碗がその盗まれた茶碗であると知っていた場合にはどうなるのでしょうか。この場合には買取業者は盗品であると知りながら、購入したことになり、被害者の取り戻す権利を侵害したものとして、犯罪行為になります。刑法256条では、盗品と知りながら無償で譲り受けた場合には3年以下の拘禁刑、また運搬、保管、有償で譲り受けた場合や有償処分をあっせんした場合には、10年以下の拘禁刑及び50万円以下の罰金と規定されており、盗品であると知りながら購入した場合には、盗品等有償譲受罪という犯罪になります。

以上が盗品の取引についての説明になりますが、個人的には純金製の茶碗なんて普通に生活していたらなかなかお目にかかれないものですし、万が一もらっても使い道もないでしょうから、百貨店などで目にするくらいがちょうどよいのではないかなと思いました。

 

執筆弁護士紹介 後藤祐太郎

 

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