弁護士コラム

2019.04.17

労働時間と休日・休暇の基礎知識①

日本では過重労働が社会的に問題となっており、是正が求められています。
これに伴い、働き方の見直しに取り組んでいる会社も増えてきているのではないかと思います。そこで、今回は、働き方を見直すにあたり知っておく必要がある、労働時間や休日・休暇に関する基礎的な事項をご説明します。
また、労働基準法改正に伴う年次有給休暇の取得義務についてもお話しします。

1. 労働時間と労働時間管理

会社には、労働基準法により、労働時間を適切に把握し、管理する責務があります。では、この労働時間とは一体何を指すのでしょうか。

労働時間とは、休憩時間を除いた実労働時間のことです。定められた始業時刻より早い時間から、あるいは終業時刻を超えて労働した場合は、その時間も労働時間となります。

労働時間に関しては、原則として1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないことが労働基準法32条に定められています。
この時間を「法定労働時間」といいます。法定労働時間には休憩時間は含みません。

法定労働時間に対して、就業規則等で会社が定めた始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた時間を「所定労働時間」といいます。

また、会社は、労働基準法34条に基づき、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与える必要があります。

休憩時間は労働者が労働から離れた状態が保証されていなければなりません。よって、もし従業員が、電話に出なければならない、来客の対応をしなければならないといった状態になった場合は、会社は別途休憩時間を与えなければなりません。

冒頭で述べた会社の責務ですが、単に1日に何時間働いているということを把握するだけでは足りません。

タイムカードを利用するなどの方法によって始業・終業時刻を確認・記録し、それらをもとに何時間働いているのかを把握するようにしましょう。

2. 休日と休暇の違い・有給休暇の取得義務

(1)休日と休暇の違い

上記の1.労働時間と労働時間管理 で、会社は原則として従業員に法定労働時間を超えて働かせてはならないことや、労働時間によって一定の休憩時間を与えなければならないことをご説明しました。

この他にも、会社には従業員に休日を与える義務があります。この休日とは、よく耳にする休暇とは何が違うのでしょうか。

休日とは、元から労働義務のない日のことを指します。
会社は、労働基準法35条に基づき、従業員に毎週少なくとも1日、あるいは、4週を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
この休日を「法定休日」といいます。法定休日は会社で自由に決めることができるので、就業規則等で「何曜日を法定休日にする」と特定する必要はありませんが、決まっている場合は就業規則等に記載しておくほうが望ましいです。

業務の関係で休日労働の可能性がある場合、法定休日に労働させると割増賃金(割増賃金については、次の記事でご説明します。)が発生するので、法定休日を特定しないほうが良いかもしれません。
また、会社は就業規則等で休日を任意に定めることができ、これを「法定外休日(所定休日)」といいます。

多くの会社では、法定休日のほかに、法定外休日(所定休日)を定めています。これは、1日の所定労働時間が8時間の場合に、休日が週に1日しかないとすると、前述した1週40時間の法定労働時間を超えてしまうためです。

これに対し、休暇とは、従業員の労働義務が免除された日のことを指します。「育児休暇」や「介護休暇」など法律に定められている休暇を「法定休暇」と呼びます。

法定休暇は付与する義務が法律で定められているので、労働者から請求をされた場合は必ず付与しなければなりません。
そして、「夏季休暇」や「リフレッシュ休暇」など会社が就業規則等で任意に定めることができる休暇を「法定外休暇」と呼びます。

つまり、「休日」と「休暇」の違いは、もともと労働義務がない日であるか、もともと労働義務はあったがその義務を免除された日であるかという点にあります。

(2)年次有給休暇の取得義務

ここで、(1)休日と休暇の違いで出てきた「年次有給休暇」についてより詳しくご紹介します。

年次有給休暇とは、一定期間勤続した従業員に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される、取得しても賃金が減額されない休暇のことです。

従業員が、①入社日から6か月継続して勤務し、②その期間の全労働日の8割以上出勤しているという2点を満たしていれば、10日間の年次有給休暇を付与しなければなりません。

勤続期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

ただし、パートタイマーなど所定労働時間が少ない(所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下である)従業員については、所定労働時間に応じて比例付与されます。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 勤続期間
6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

年次有給休暇は、従業員が請求する時季に与える必要があります。
年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に変更でき、これを時季変更権といいます。

ただし、単に忙しいから、という理由だけでは足りず、その日にその従業員が勤務しなければ会社が損害を被るといったほどの理由でなければ認められません。

つまり、原則として年次有給休暇をいつ取得するかは従業員が決めます。しかし、同僚に気を遣ってしまったり、上司に言いだし辛かったりして年次有給休暇の取得をためらっているという話をよく耳にしませんか?そういった背景から、年次有給休暇の取得率は低調です。

上記のような現状を踏まえ、2019年4月から、全ての会社は、年次有給休暇が10日以上付与される従業員(管理監督者を含む)に、年5日の年次有給休暇を取得させる義務があります。

つまり、パートタイマーやアルバイトでも、付与日数が10日以上であれば、その対象となるということです。

会社は、従業員ごとに、年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。

この時季の指定ですが、面談や取得計画表など任意の方法によって従業員の意見を聴取し、できる限り従業員の希望に沿うように努める必要があります。

もし、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している従業員がいる場合には、時季の指定をする必要はありません。

これに伴い、会社は、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する義務があります。また、休暇に関することは、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」です。

計画的に年次有給休暇を付与するなどの仕組みによらず、年次有給休暇の時期指定を行う場合は、その対象となる従業員の範囲や指定方法等について、就業規則に記載する義務があります。

最後に、もし、「年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合」や、「会社による時季指定を行う場合において、就業規則に記載がない場合」には、30万円以下の罰金が科されますので注意してください。

3. まとめ

残業時間や休日出勤が増えると、精神的にも肉体的にも悪影響があります。
日々の仕事を効率化し、仕事以外では心身をリフレッシュさせるために、社内での労働時間や休日・休暇の管理について再度確認しましょう。

見直しているうちに、今のままで大丈夫かな?など不安や疑問に思うことがあれば、すぐに社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

 

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