弁護士コラム

2019.04.08

【相談事例33】裁判員裁判について①~裁判員裁判とは~

【相談内容】

昨年の11月頃に突然裁判所から郵便が届き、私が裁判員の候補者に選ばれたという内容が書かれていました。

私はもう裁判員になったということでしょうか。そもそも、裁判員裁判についてよくわかっていないので教えてもらえませんか。

【弁護士からの回答】

平成16年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、平成21年5月21日から、裁判員制度が開始し、今年(平成31年)で、開始から10年が経過しようとしています。

皆様も裁判のニュースなどで裁判員裁判という名前自体は聞いたことがある方も多いと思います。
しかしながら裁判員としてどんな活動をするのかについては把握されていない方が多いと思いますので、今回から数回にかけて裁判員裁判制度についてご説明させていただきます。

1 裁判員制度とは

裁判員制度とは、一般の人が、裁判員として刑事裁判に参加し、起訴された人(被告人)が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑を被告人に科すかということを、裁判官とともに判断する制度をいいます。

重大な犯罪についての刑事裁判に一般の人が参加することにより、一般の方が持っている日常感覚や常識を刑事裁判に反映することを主たる目的として始まった制度になります(どのような事件が裁判員の対象となる事件かについては、別の機会にご説明させていただきます。)。

通常、裁判官3名、裁判員の6名、合計9名という構成(合議体といいます。)で裁判を行いますが、例外的に被告人が事実関係を争わない場合には裁判員4名、裁判官1名で審理する場合もあります。

2 裁判員の活動内容

裁判員は、裁判における審理に参加し、裁判官とともに、証拠調べを行い(書証や証言などを見聞きすることです。)、有罪、無罪の判断や有罪の場合にどのような刑を科すかという量刑についても判断することになります。

なお、法律に関する専門的な知識が必要な事項や、訴訟手続についての判断は、裁判官が行うことになります。

また、証人尋問や被告人質問の際には、裁判官のみならず、裁判員も被告人や証人に対し、質問をすることができます。

裁判員の具体的な活動内容については、別の機会にもご説明させていただきます。

3 裁判員の選任方法について

まず、全国の地方裁判所ごとに、翌年の裁判員候補者名簿をくじで選んで作成し、毎年11月頃に、裁判員候補者名簿に登録された人に対し通知を行います。

ご相談者様にも裁判員候補者名簿に登録されたという通知が来たとのことですが、この通知は、簡単にいうと、来年1年間裁判員裁判対象事件が起訴された場合に、裁判員に選ばれる可能性があるということを通知するものになるため、この通知が来た段階では、まだ裁判員になったというわけではありません。

その後、裁判員裁判対象事件が起訴された場合、事件ごとに、裁判員候補者名簿の中からくじ引きでその事件の裁判員候補者が選ばれることになります。

そして、裁判員候補者は裁判所において裁判官と面談などを行い、最終的に候補者の中から6名が裁判員として選ばれることになります。

次回は、どのような事件が裁判員裁判の対象となるかについてご説明させていただきます。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2019.04.05

【相談事例32】自由に名前を変えられる?~改名するためには~

【相談内容】

先日ニュースで、自身の変わった名前を変更することができた人のことを取り上げていました。

私の名前は変わった名前というわけではなく、今の名前で支障が生じたりすることはないのですが、他の名前に変えたいと考えているのですが、どのような場合に名前を変えることができるのでしょうか?

【弁護士からの回答】

数年前より、自分の子どもの名前に、キャラクターの名前や、当て字などで通常読み難い名前などのいわゆる「キラキラネーム」という言葉を多く目にするようになってから、今後、改名を希望する人が増えるのではないかと個人的には考えていました。

先日ニュースで話題になった、改名を行った方についても、同じように一般的にキラキラネームに該当しうるお名前のケースだと思います。
今回はどのよう場合に改名が認められるか等についてご説明させていただきます。

1 改名の手続きについて

改名とは、大きく分けると「氏の変更」「名の変更」の二種類があります。
「氏の変更」とは、苗字を変更する手続きであり、「名の変更」とは、苗字と名前のうち、名前を変更するものであり、いずれも戸籍法に記載されています。
いずれの手続きにおいても、裁判所の許可を得て役所へ届け出ることが必要になります。

これは、氏名というものは、その人を特定する唯一無二の呼称であるため、自由に変更を認めてしまうと、その人個人を特定することができず、社会的にも混乱が生じてしまう可能性があるため、裁判所が許可した場合に限り、氏の変更や名の変更を認めているのです。

2 「名の変更」について

上記のとおり、氏名とは、個人を特定するためのものであり、一度定められた氏名について自由に変更されてしまうと、個人の特定が困難になってしまいます。
したがって、戸籍法上、名の変更が認められるためには、「正当な事由」が必要とされています(107条の2)。

「正当な事由」が認められる場合とは、営業上の理由より先代の名を襲名する場合や、通称名を非常に長期間使用しており、通称名の方が社会的に定着しているっ場合や、同姓同名の人がいて、生活上で支障がある場合などには認められていますが、そのような事情がない場合には、従前の氏名を継続することと、改名することの利益不利益を総合的に考慮して、変更する利益が大きい場合には認められるとされています。

したがって、ニュースで取り上げられたようなキラキラメールといった珍奇な名前の場合にはその名前を使用することによる不利益が大きいと認められる場合が多いといえるため、名の変更は認められる可能性が大きいでしょう。
しかし、ご相談者様のような主観的な理由のみによる変更については、必要性がないとして一般的には認められていません。

3 「氏の変更」について

氏(苗字)については、出生により授けられ、結婚、離婚、養子縁組等身分関係が変更するときに変更される以外は、基本的に変更されるものではなく、親族関係等を基礎づけるものとして非常に重要であるため、氏の変更が認められる要件としては、戸籍法上「やむを得ない事由」が必要であるとされており(107条)、名の変更よりも厳格な要件が設定されています。

名の変更では同姓同名の人がいる場合には認められていましたが、同姓同名の場合に氏を変更することは認められていませんし、いわゆるキラキラネームの場合であっても氏を変更することは認められていません。

4 最後に

氏名というものは、個人のアイデンティティの観点から非常に重要なものですが、キラキラネーム等のように名前により、苦しい思いをされているかたもいらっしゃると思います。

現在の名前で苦しい思いをされている方であっても家庭裁判所にて許可を得なければ名前を変えることはできないため、氏名でお悩みの方は一度弁護士にご相談ください。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2019.04.02

不貞相手に慰謝料請求ができない??④~今後の問題点について~

【ご相談者様からのご質問】

第三者に離婚慰謝料を請求することができる場面はとても限られているのですね。

今回の最高裁所の判例がでたことにより、気を付けなければならないことはありますか。

【弁護士からの回答】

これまで、不貞行為を行った第三者に対する離婚慰謝料が否定された最高裁版所の判例についてご説明させていただきましたが、今回は、上記判例が出されたことによる、今後の検討課題や、注意しなければならない事項についてご説明させていただきます。

1 注意事項~消滅時効に注意~

夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対しては、「離婚」慰謝料の請求は認められず、「不貞」慰謝料の請求のみ認められることになります。
そして、不貞慰謝料の場合自身の配偶者が不貞行為を行ったこと及び加害者知った時点から3年以内に訴訟を提起しなければ、消滅時効により不貞慰謝料は消滅してしまうことになります。

したがって、不貞を行った第三者に対して慰謝料請求を行う場合には、不貞行為の事実や相手方を知った日から3年以内に請求しなければならないということは認識しておいた方がよいでしょう。

2 検討課題①~離婚の有無が慰謝料金額に及ぼす影響~

従前、「不貞」慰謝料を第三者に対し請求をする場合には、当該夫婦が離婚したか否かという点が、慰謝料金額を算定する上で考慮の対象になるという考え方がありました。

もっとも、今回の判例により、離婚するか否かは、あくまでも夫婦での問題であるということであるため、この判例を素直に読むと、不貞慰謝料を第三者に対し請求する場合には、夫婦が離婚をするのか、婚姻関係を継続するのかについては、あまり影響しないようにも読めるため、「不貞」慰謝料の金額が離婚の有無により影響を及ぼすのか否かについては、今後の裁判例の蓄積を待つ必要があると考えています。

3 検討課題②~配偶者と第三者の連帯責任の範囲~ 

別の機会にご説明させていただきますが、不貞行為を行った配偶者と第三者は2人で不貞行為という違法な行為を行っているため、連帯して慰謝料を支払う義務をおっており、これを共同不法行為による連帯債務といいます。

今回の最高裁の判例で、配偶者に対しては、不貞慰謝料のみならず離婚慰謝料も認められるものの、第三者に対しては不貞慰謝料のみ認められることになったため、配偶者と第三者は、「不貞」慰謝料の範囲のみ連帯して責任を負うということになると解するのが自然であるため、訴訟において、配偶者に対しては、離婚慰謝料、第三者に対しては不貞慰謝料を請求した場合にはどの範囲で連帯債務を負担することになるのかについては、今後の検討課題になると思います。

4 不貞行為以外で、第三者が離婚慰謝料を負う場合はあるのか?

最高裁判所は、「当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情」がある場合には、第三者に対し「離婚」慰謝料を請求することができる旨判断しているところ、この判断が、不貞行為により離婚を余儀なくされた場合に限定した判断であるのか、それとも不貞行為に至っていなくても、第三者が暴力や脅迫により離婚を余儀なくされた場合等においても、離婚慰謝料を認めるという判断になるのかについては今後、問題になっていくと思われます。

5 最後に

これまで、数回にわたり、不貞行為に関する最高裁の判例についてご説明させていただきましたが、この判例のみならず、不貞行為の慰謝料請求は、法的に複雑であり、専門的な内容が多々ある分野ですので、慰謝料請求については、是非早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。

2019.04.01

不貞相手に慰謝料請求ができない??③~最高裁判例の検討~

【ご相談者様からのご質問】

先日、妻から離婚を切り出されました。理由としては、不倫相手から、離婚して一緒になろうと言われたらしく、妻も不倫相手との将来を考えているとのことでした。

妻がそう言う以上、妻との関係は考えていませんが、妻と、不貞相手に対してはきちんと慰謝料を請求したいと考えております。

しかし、先日、ニュースで、不貞相手には離婚の慰謝料が請求できないと知り、どうすればいいか悩んでいます。

【弁護士からの回答】

前回は、夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対する慰謝料請求に関する最高裁の判例についてご説明させていただきました。

今回は、前回ご説明した最高裁の判例の内容の解説とともに、今後検討すべき課題についてご説明させていただきます。

1 第三者には「離婚」慰謝料の請求は認められない。

前回ご説明したとおり、最高裁は、夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対する「離婚」慰謝料は原則として認められないと判断しました。

他方、不貞行為を行ったことを理由とする慰謝料(不貞慰謝料)については認められると判断しました。

離婚慰謝料が原則として認められないと判断した理由として、最高裁判所は、「夫婦が離婚するまでに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来当該夫婦の間で決められるべき事柄である。」と述べられています。

すなわち、不貞行為があったとしても離婚するかしないかは夫婦で決めるべき事情であるため、離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料は、配偶者に対し請求すべきであって(最高裁も、配偶者に対しては離婚慰謝料を請求することができると判断しています。)、離婚するかしないかに関与することができない第三者に対しては原則請求することはできないと判断しました。

2 例外的に離婚慰謝料が認められる場合

上記のとおり、最高裁判所は、夫婦が離婚するか否かは夫婦で決められるべき事柄であることを理由に、第三者に対する離婚慰謝料を否定しています。

したがって、最高裁判所も、第三者が「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がある」場合には例外的に、第三者に対する離婚慰謝料が認められると判断しています。

どの程度の干渉があれば、特段の事情があると認められるかについては、今後、の裁判例の蓄積を待つ必要がありますが、第三者が不貞している夫婦の一方に対し、配偶者と離婚するよう積極的に働きかけた、その結果として離婚するに至った場合や、第三者自身が、不貞をしていない配偶者に対し、離婚するようメールや電話などで執拗に要請した場合などは、第三者の不貞行為等によって、離婚を余儀なくされたと認められ得るため特段の事情の有無を検討してよいのではないかと思います。

次回は、今回の最高裁判所の判例が出されたことによる、今後の検討課題や注意すべき事項等についてご説明させていただきます。

2019.03.29

不貞相手に慰謝料請求ができない??②~各裁判所の判断は?~

【ご相談者様からのご質問】

慰謝料には、離婚慰謝料と不貞慰謝料の2種類があるのですね。

不貞が原因で離婚するのだから、不貞慰謝料だけでなく離婚慰謝料も当然、第三者にも請求できると思うのですが・・・。

【弁護士からの回答】

前回は、最高裁判例の事案のご説明と、どのような点が問題になっているのかについてご説明させていただきました。

この事件、第1審、第2審と最高裁との間で判断が分かれたのですが、ポイントは、不貞行為を行ったことと、夫婦が離婚することをどのように考えるのかというところにあります。

1 第1審及び第2審について

第1審及び第2審は、妻とAとの不貞行為により、夫と妻との間の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったものであるから、Aは両社を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い、Aは夫に対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができると判断しました。

すなわち、第1審及び第2審では、不貞行為を行った第三者に対しても離婚慰謝料を請求することができると判断し、原告の慰謝料請求の一部を認容しました。

判決の理由にもあるように、不貞が原因で離婚したのであるから、離婚慰謝料を支払う義務があるというのは自然なようにも思えます。

もっとも、不貞行為の第三者に対し離婚慰謝料が認められるとすると、不貞により直ちに離婚した場合には、離婚してから3年間相手から請求がない場合には、時効により、請求を逃れられることになりますが、不貞が原因で家庭内別居が続き、不貞行為から10年経過した後に、離婚したような場合には、第三者はその場合でも慰謝料を支払う義務があることになってしまい、いつまでも損害賠償を受けるリスクにさらされることになり、妥当ではないという考え方もあります。

2 最高裁判所の判断

上記第1審及び第2審の判断を不服としたAが、最高裁判所に上告を行った結果、平成31年2月19日、最高裁判所において、それまでの判決のうち、Aの敗訴部分(離婚慰謝料を認めていた部分)を取消した上で、原告である夫の請求を棄却しました。
そして、最高裁判所は、以下のような判断を行いました。

①夫婦の一方は他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害を求めることができる。

②夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合はあることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない

③第三者がそのこと(夫婦離婚させたこと)を理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不法行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる。

上記①~③の詳細な内容については次回ご説明させていただきますが、上記判断のうち②については、第三者に対し、「不貞慰謝料」は認められるものの、「離婚慰謝料」は原則として認められないと判断した点で非常に重要な判例とされています。

次回は、最高裁判所の判断の内容について解説させていただきます。

2019.03.28

不貞相手に慰謝料請求ができない??①~最高裁判例の争点とは~

【ご相談者様からのご質問】

1年前に夫がほかの女性と不倫していることが判明しました。現在、夫とは離婚協議中なのですが、夫が離婚に応じてくれないのと親権等の問題があり、まだまだ離婚については長引きそうです。

夫の不倫相手へ慰謝料については、夫との離婚が解決してからゆっくり請求しようと考えています。

【弁護士からの回答】

先日、最高裁判所において、不貞行為を行った第三者への慰謝料請求に関する重要な判決が出されました(テレビのニュースでも報道されていたので、一般の方でも知られている方もいらっしゃるかもしれません。)。

もっとも、ニュースの見出しなどでは、「不貞行為を行った第三者に対し慰謝料を請求できない」というような誤った情報を与えるような内容も見受けられました。

そこで今回から、最高裁判例の事案の概要や争点(何が法的な問題となったのか)についてご説明するとともに、最高裁判所がどのような判断を行ったのかについてご説明させていただきます。

1 事案の概要

原告の夫は、平成6年3月に妻となる女性と婚姻し、その年の8月に長男、平成7年に長女をさずかりました。しかし、夫は仕事のため帰宅しないことが多く、妻も働くようになった平成20年12月以降は、夫婦の間で性交渉がない状態になっていました。

その後、妻は入社した直後に会社で知り合った男性(訴訟の被告です。以下、Aとします。)と親密になっていき、平成21年6月以降、Aと不貞行為に及ぶようになりました。

そして、夫は、平成22年5月頃、妻とAの不貞関係を知るに至りましたが、そのまま同居を続けていました。また、妻とAとの不貞関係は、同じころ解消しました。

夫と妻はそのまま同居を続けていましたが、平成26年4月頃、長女が大学を進学したのを機に、夫と別居し、半年間夫のもとに帰ることも連絡を取ることもなかったため、夫において平成26年11月頃、離婚調停の申し立てを行い、平成27年2月に調停離婚が成立しました。

そして、離婚成立後、夫から不貞相手のAに対し、妻とAが不貞行為を行ったことにより夫婦が離婚するに至ったとして慰謝料請求等を500万円の支払いを求める訴訟を行いました。

2 問題点

今回の事案で問題となるのが、慰謝料請求権の消滅時効との関係で、「何を原因とする慰謝料請求を行うか」という点にあります。
まず、慰謝料請求権は、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条、710条)であり、かかる請求権の消滅時効は、被害者が「損害及び加害者を知った時から三年間」になります(民法724条)。

そして、不貞と離婚の関係では、「不貞行為を原因とする慰謝料」(「不貞慰謝料」といいます。)と、「離婚を余儀なくされたことによる慰謝料」(「離婚慰謝料」といいます。)の2つの慰謝料があり、各慰謝料では、時効期間の開始時期(起算点といいます。)が異なります。

すなわち、不貞慰謝料は、不貞行為をされたことにより被った精神的苦痛が損害になります。したがって、時効の起算点、すなわち「損害及び加害者を知った時」というのは、不貞行為の事実及び不貞行為の相手方を知ったときになります。

最高裁判例の事例では、夫は平成22年5月ころ妻とAの不貞の事実を知っているため、3年後の平成25年5月の時点で、時効期間が満了してしまい、夫はAに対し、「不貞」慰謝料が請求できないことになってしまいます。

これに対し、「離婚慰謝料」の場合には、離婚を余儀なくされてしまったことによる精神的苦痛が損害になります。したがって、「損害」を知ったときが時効期間の起算点になるため、離婚慰謝料の場合には、離婚した時が起算点となります。

最高裁判例の事例でも、「離婚」慰謝料の構成をとれば、離婚をしたのが平成27年2月であるため、そこから3年以内であれば離婚慰謝料を請求することができます。
おそらく夫(原告)の訴訟代理人も不貞慰謝料では時効期間の問題があるため、離婚慰謝料として構成して訴訟提起したのでしょう。

したがって、最高裁判例での一番の争点は、「不貞行為を行った第三者(夫婦以外の不貞行為の当事者)に対し、「離婚」慰謝料を請求することができるか」という点になり、この点について、最高裁判所が初めて判断を行ったことで注目が集まっていました。

次回には、上記争点について、第1審、第2審理及び最高裁判所がどのような判断を下したかについてご説明させていただきます。

2019.03.11

【相談事例31】~迷惑動画④動画の拡散や実名を晒すのは違法?~

【相談内容】

先日、僕が通っている大学の同級生が身内のSNSで迷惑動画をアップしていました。

迷惑動画を投撮影することは悪いことですよね?動画を拡散するだけでなく、彼の名前や出身大学などを投稿して懲らしめたいと考えています。

【弁護士からの回答】

自らの正義感や面白半分などという理由により、迷惑行為を撮影した動画を拡散したり、ネット上で迷惑動画などの問題行動を行った当事者の個人情報を探し当て、その情報を拡散することが頻繁になされています。
ニュースなどでは、迷惑動画を撮影した人などを問題視するものが多く、動画を拡散したり、個人情報を晒したりする人の問題については取り上げられていることがなかったため、今回、そのような行為の法的リスクについてご説明させていただきます。

1 肖像権、プライバシー権侵害

判例上認められている個人の生活上の自由(権利)として、承諾なしにその容貌、姿態を撮影されないことが認められており、これを、肖像権やプライバシー権といいます。

したがって、迷惑動画を拡散することは、承諾なしにその容貌などを不特定多数の人に拡散してしまう行為であるため、肖像権やプライバシー権を侵害する行為として損害賠償の対象になりうる行為です。

迷惑動画を撮影するという行為自体は違法なのですが、違法な行為をした人は肖像権が失われるという考え方はなされておりません。
したがって、迷惑動画を撮影した人を拡散する行為も違法な行為に該当しうることになります。(逮捕された容疑者などを無断で撮影し、報道する行為についても肖像権との関係では一応問題となりうるといえるでしょう。)。

2 個人情報の拡散について

迷惑動画の拡散に加えて、動画に映っている人の氏名、住所、出身大学等個人情報についても拡散した場合にはどのような問題があるのでしょうか。

自分自身で行っているので、自業自得という側面は否定できないものの、特定の人物が店の信用を損なうような行為を行っているということは、一般的にその人の名誉を毀損する内容であることが一般的であるため、個人情報を含めて動画を拡散した場合には、かかる行為が民事上違法な行為であることに加え、名誉毀損罪として刑事責任を問われてしまう可能性も否定できません。

以前にご説明したことがありますが、名誉毀損行為を行ったとしても公益的な目的である場合には、違法性が認められない場合もありますが、いわゆるジャーナリズムとは異なり、一般の人がSNSで拡散する行為は、面白半分である場合やリツイート数や「いいね」の数を稼ぐためであることが多いと思われますので、違法性が否定される場合は少ないでしょう。

3 まとめ

スマートフォン及びSNSの普及により、今では誰でも簡単に情報発信をすることができる時代であり、迷惑動画に限らず、ほんの軽い気持ちで投稿したことで他人に多大なる損害を与えてしまう場合や、自分自身を傷つけてしまうことが容易に想定されます。

技術の進歩は素晴らしことですが、それに伴って、技術を用いる人のリテラシーの向上も進歩に比例して必要不可欠になっていると思います。
もし、自分の行うとしている行為が、法的に問題があるのではないかと不安を抱いた場合には、行動を起こす前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2019.03.11

【相談事例30】~迷惑動画③会社側の対策は?~

【相談内容】

個人で居酒屋を営んでいます。うれしいことに毎日繁盛しており、自分や家族だけでは到底手が回らなくなってきてしまったため、一挙に学生さんのバイトを3名採用することになりました。

ですが、最近話題の迷惑動画の投稿による炎上騒動などを目にするようになり、他人事ではないなと思ってしまいました。
学生のアルバイトなどを雇うにあたって、迷惑動画等の迷惑行為を防止するためにはどのような手だてがあるのでしょうか。

【弁護士からの回答】

これまでは、迷惑動画を投稿した側のリスク等についてご説明させていただきました。
今回は、迷惑動画を投稿されないよう、店側としてどのような対策をとればよいのかについて、純粋な法律問題ではないとは思いますが、弁護士としてアドバイスできる範囲でご説明させていただきたいと思います。

1 指導及び管理

まず、入社する従業員に対し、迷惑動画の投稿などを絶対に行わないよう指導すること及び、万が一そのようなことをした場合に店側として従業員に対し損害賠償等法的措置を講ずるという毅然した態度を示しておくことにより、迷惑動画の投稿行為自体を抑制することが期待できるでしょう。
この指導などについては、迷惑動画の投稿のみならず、仕事上知りえた個人情報を流出しないことなど仕事を実施する上での禁止事項をきちんと認識してもらう際に有効であると考えられます。

また、職務中の携帯電話の使用を禁じることや、職場で携帯電話を預かるといった選択肢もありうるところではありますが、その際には、家族からの緊急の連絡などへの対応が困難になりその際の法的責任などの問題もあり、採用する際には慎重な対応が必要になるでしょう。

2 身元保証契約

前回もご説明させていただいたとおり、学生の従業員が迷惑動画等の不法行為を行ったとしても、親に賠償責任を追及することはできません。
そこで、親族等を身元保証人とすることで、仮に従業員が会社に損害を与える行為を行った際には、身元保証人に対し、賠償額を請求することができることになります。
したがって、損害を確実に回収するためには、入社時に身元保証契約を作成するのがよいでしょう。

もっとも、身元保証契約を締結するためには、契約書が必要であり、他人の損害を肩代わりする契約であるため、要件が厳格に定められており、せっかく身元保証契約を締結したとしても、要件を充足していない場合には身元保証契約は無効になってしまうことになります。

したがって、身元保証書を作成する際には、弁護士に作成を依頼するか、作成した契約書が有効な内容になっているのかについて、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2019.03.11

【相談事例29】~迷惑動画問題②親の賠償責任は?~

【相談内容】

迷惑動画を投稿してしまうと、とても大変なのですね。息子にもくれぐれもしないようにしっかり言い聞かせておきます。
ひとつお聞きしたいのですが、万が一息子が迷惑動画を投稿してしまい、損害賠償をしなければならない場合、法律上親である私も賠償責任を負わなければならないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

前回は、迷惑動画を投稿してしまったことによる、投稿者にどのようなリスクがあるのかについてご説明させていただきました。
今回は、親の法的責任についてご説明させていただきます。

1 誰が賠償責任を負うのか

結論からお伝えすると、迷惑動画を投稿したお子さんが賠償責任を負い、親御さんが賠償責任を負うことは原則として賠償責任を負うことはありません。

民法714条では、責任無能力者が不法行為を行った場合、監督責任者が賠償責任を負うと規定されており、お子さんが責任無能力者の場合には親御さんが責任を負うことになりますが、一般的に14歳以上のお子さんの場合には責任能力は認められると言われているため、アルバイトができるようなお子さんの場合には監督責任者である親が賠償責任を負うことはありません。

上記民法714条以外に民法上子どもが不法行為を行ったら親が賠償しなければならないと規定されているわけではないので、お子さん自身が賠償責任を負うことになります。

もっとも、親御さんはあくまでも法律上責任を負わないだけであって、アルバイトなどで働いていたお子さんが多額の賠償を行うことは困難であるため、事実上家族も支払いを余儀なくされてしまうのが通常だと思います。

2 身元保証契約

上記のように、お子さんが不法行為を行ったとしても原則として親御さんが賠償責任を負うことはありません。
もっとも、お子さんが入社するときに親御さんにおいて身元保証契約書等に署名・押印していた場合には、親御さん(身元保証人)も賠償責任を負う場合があります。
身元保証契約とは会社(使用者)が採用した労働者(従業員)の行為によって会社が被った損害を、本人にかわって保証する契約になります。

お子さんが入社する際には、とくに意識せずにこの身元保証契約書に署名・押印されている親御さんがほとんどであると思いますが、身元保証契約を締結した場合には迷惑動画の投稿に限らず、お子さんの職場での行為により親御さん自身も多大な賠償責任を負ってしまう可能性があることを理解する必要があるでしょう。

この身元保証契約ですが、法律により有効期間が定められており(身元保証に関する法律第1条、2条)、不法行為を行った時期が有効期間外である場合には賠償責任を負うことはありません。

また、使用者側から提示された賠償額については、その金額が適正な金額であるのかについては精査をすう必要がある場合もありますので、お子さんが入社の際に身元保証契約を締結しており、会社から賠償の請求をされた場合には、是非一度ご相談ください。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

2019.03.11

【相談事例28】~迷惑動画問題①どのようなリスクが?~

【相談内容】

今度大学に入学する息子が飲食店でアルバイトすることになったのですが、最近、ニュースでコンビニや飲食店の従業員による迷惑動画が取り上げられているため、他人事ではないと感じてしまいます。
自分の息子に限ってそのようなことはないとは思うのですが、もし、息子が職場で迷惑動画を撮影し、その動画が流出することになってしまった場合、息子や私たちにどのようなリスクがあるのでしょうか。

【弁護士からの回答】

ここ数日、コンビニや飲食店の従業員が、店内の商品や食材等を雑に扱う様子などを撮影されたいわゆる迷惑動画がネット上に公開、拡散され、話題になっています。
先日、迷惑動画を撮影した従業員に対し、勤務していた店舗を経営する企業が、法的措置を講ずると発表したこともあり、軽い気持ちでふざけて撮影し、投稿した動画により、多大な迷惑や損害を被ることについては、知れ渡っているのではないでしょうか。

そこで、今回は、迷惑動画を撮影し投稿したことによりどのような法的責任が発生するのかについてご説明させていただきます。

1 刑事責任

店の従業員が、店の商品や食材を雑に扱った動画を撮影し公開することにより、そのお店ではそのように雑に商品を扱い提供させているという虚偽の情報を世間一般に公開している形になるため、迷惑動画を撮影し、公開する行為は、偽計業務妨害罪若しくは信用棄損罪(刑法第233条)が成立する可能性があります。
このように、軽はずみな気持ちで迷惑動画を投稿してしまうだけで、悪質な場合には逮捕されてしまう可能性があることは理解する必要があると考えています。

2 損害賠償責任

上記のように、従業員が違法な行為を行っている以上、不法行為として従業員には迷惑動画を行ったことにより、店舗(企業)が被った損害を賠償する民事上の責任を負うことになります。

賠償額として店の信用低下による売り上げ減少額にとどまらず企業の株価下落による損害まで請求できるのかという、不法行為と損害との因果関係の問題があり、今後の裁判例の蓄積を待つ必要はありますが、数百万円単位での賠償額が認められたとしても不自然ではありません。

3 その他の損害

迷惑動画を投稿した従業員については、解雇等懲戒処分を受けてしまうことは当然ですが、それ以外に怖いのが、ネット上で本人の氏名、住所、大学、家族、交友関係等の個人情報が特定されてしまうところにあると思います(個人情報の特定に関しては別の機会にご説明させていただきます。)。

いったんネット上に公開された個人情報については、削除することは事実上不可能であり、一生残ってしまうことになってしまうため、軽はずみに投稿してしまうことにより、取り返しのつかない事態になってしまうため、迷惑動画の投稿は絶対に辞めた方がよいでしょう。

 

掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」

1 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 24
WEB予約 KOMODA LAW OFFICE総合サイト
事務所からのお知らせ YouTube Facebook
弁護士法人サイト 弁護士×司法書士×税理士 ワンストップ遺産相続 弁護士法人菰田総合法律事務所 福岡弁護士による離婚相談所