弁護士コラム

2018.01.20

離婚条件について

<ご相談者様からのご質問>

  夫との離婚を考えています。離婚の際には離婚すること以外にどのようなことを決めなければならないのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  これまでは,離婚するための方法や具体的な手続きについてご説明させていただきましたが,今回からは,離婚や離婚に関する法的問題の中身についてご説明させていただきます。今回は,離婚する際にどういったことが問題になるのかという離婚及び離婚に関する問題点についてご説明させていただきます。

  離婚及び離婚に関する諸問題については,当事者の置かれている状況によってどこまで決めなければならないかは異なるのですが,離婚及び離婚に関する問題については以下のようなものがあります。

 ① 離婚原因が認められるか否か

   当事者の一方が離婚の意思を争っている場合に,法律上離婚が認められるか否かという問題です。

 ② 親権者

   未成年のお子さんがいらっしゃる場合に,どちらが親権者となるかという問題です。

 ③ 養育費

   離婚後の子どもの生活に関する問題です。

 ④ 面会交流

   親権者でない親と,お子さんとの間の面会の方法,回数等についての問題です。

 ⑤ 財産分与

   同居期間中に夫婦によって形成された財産をどのように分配するかという問題です。

 ⑥ 慰謝料

   離婚に至った原因が,一方当事者の違法な行為に該当するか否か,該当する場合には,当該行為により離婚に至ったことに関する精神的苦痛について金銭的に評価するといくらになるかという問題です。

 ⑦ 年金分割

   同居期間に対応して,一方当事者のみが払い込んでいた年金の金額を分割する際の問題です。
  また,直接離婚とは関係ないものの,離婚するまでの間の問題として以下の2点も問題になります。

 ⑧ 婚姻費用

別居してから離婚するまでの間における当事者間の生活費の分担に関する問題です。

 ⑨ 監護権者

   離婚が成立するまでの間,未成年者の子どもを夫と妻のどちらが監護すべきであるかという問題です。

  このような離婚及び離婚に関する問題については,上記①~⑨のすべてについて必ず判断しなければならないわけではありませんが(未成年のお子さんが要る場合には必ず親権者を決めなければなりません。),特別な事情がない限り,離婚の際に夫婦間に関する問題を決めておいた方が,後々にトラブルが起きないで済みますので,決めることができる条件については,離婚の際に決めておいた方がよいでしょう。
  次回からは,各離婚条件に関する具体的な内容についてご説明させていただきます。

2018.01.19

控訴・上告について弁護士が解説

<ご相談者からのご質問>

  妻から離婚したいと言われて別居が始まりました。自分としては離婚など到底考えておらず,調停でも裁判でも離婚を争ってきましたが,先日,判決が出され離婚が認められてしまいました。自分としてはどうしても離婚はしたくありません。何か方法はありませんか。

 <弁護士からの回答>

  家庭裁判所での判決が確定してしまうと,法律上離婚が成立してしまい,それ以上離婚について争うことはできなくなってしまいます。そこで,今回は,離婚訴訟における不服申立制度である控訴と上告についてご説明させていただきます。

 日本の裁判は三審制という制度を採用しており,第一審である家庭裁判所での判決に不服がある場合には,高等裁判所に対し控訴することができます。控訴をするためには,高等裁判所宛の控訴状という書面を第一審の家庭裁判所に提出する必要があります。控訴状の提出は,第一審の判決書が送達された日の翌日から起算して14日(2週間)以内に行う必要があり,その期間を徒過してしまうと,第一審の判決が確定してしまうので注意が必要です。
 控訴状を提出してから50日以内に,不服申し立ての具体的な理由(控訴理由)を記載した書面(控訴理由書といいます。)を提出します。控訴審においても第一審と同じ流れて進むのですが,実際には,控訴理由書の記載内容で結論が決まってしまうので,控訴理由書がとても大事になってきます。

 法律上控訴理由についえては制限されていないので,第一審の事実認定の誤り(事実誤認),法解釈の誤りに加え,新しい証拠が見つかった場合にも主張することが可能です。
 なお,控訴審での判断に納得が行かない場合には最高裁判所に不服申立を上告として行うことができますが,上告理由には法律上制限があり,憲法違反等の場合しか認められないため,離婚訴訟については,事実上,争う場合には控訴審までになります。
 もっとも,既に第一審で裁判官が第一審で現れているすべての資料をみて判断している以上,控訴審にて第一審の判断が覆る可能性は高くありません。
 どのような場合に結論が覆るかについては一概にはいえませんが,第一審の判決後に新たな有力な証拠が見つかった場合や,法的評価や事実評価に著しい誤りがあると認められるような場合でなければ,結論が変更するということはないでしょう。

 また,先ほど述べたとおり,控訴審では,控訴理由書でどれだけ説得的な主張や立証が行えるか否かで結論が大きく左右されるものです。したがって,控訴理由書の作成には,一審判決をよく読み込み,裁判所がどういった理由で判決を出しているのか,その理由に不合理な点はないか,その判断を覆すことができるような証拠が他にないか等を判断する必要があり,高度に専門的な作業になります。
 したがって,離婚訴訟において一審判決について納得ができない場合には,なるべく早く弁護士にご相談ください。

2018.01.18

裁判等の証拠について③

<ご相談者様からのご質問>

  夫が不貞をしていたことが分かりました。他の女性の人とLINEのやり取りを写真に収めています。証拠があるので勝てますよね?

<弁護士からの回答>

 ご相談にお越しいただく方から,「証拠があります。」とおっしゃっていただく際には,逆に注意をしてお話をお伺いするように心がけています。前回もお話したとおり,証拠があるから勝てるということではありません。証拠の中身が非常に重要になってきます。今回は証拠の証明力についてご説明させていただきます。

証拠を提出する目的は,主張する事実を裁判所に認定してもらうためです。したがって,証拠の中身が重要になってきます。

まず,書証(陳述書は除きます。)については記載されている内容が,主張している事実とどの程度関連性があるかが重要になってきます。ご相談者様の事例の場合,裁判等では,配偶者と女性との間の不貞行為(性行為)を立証する必要があるのですが,ご相談者様が所持しているLINEのやり取りについて,単に親密なやりとりをしているというだけでは,その証拠のみでは直ちに不貞行為を認定することは困難でしょう。LINEのやり取りが性行為を行っていることを前提とした内容である場合にはその証拠は極めて有力な内容といえるでしょう。

また,書証の場合には,その書面を作成した状況も重要になってきます。例えば相手方が不貞行為を認める旨の念書を作成した場合,相手方に暴力を振るったり脅したりして無理やり書かせてしまったような場合にはその書証の証明力は弱くなってしまいます。

次に,人証については,証言する人の地位が重要になってきます。証人が当事者と利害関係を有しているか否かによって証言の信用性が左右されることになります。また,証人の発言内容の具体性,供述態度,他の証拠(書証)との整合性等が人証の証明力を左右する事情になります。

 このように証拠といってもどのような内容の証拠を有しているかによって訴訟の結論は大きく異なってきます。
 ご相談をお受けする弁護士も,ご相談者様が現在保有している資料をもとに,「こういった資料はありませんか。」とお話をお伺いすることで,資料を集めていくことになります。また,現在資料を有していない場合にも,相手方との会話を録音したりなど今からでも証拠を作成することが可能な場合もあるため,証拠の作成についてもアドバイスをすることも可能です。

 こちらが主張する事実がどれだけ真実であったとしても,相手方がそれを認めず,証拠もない場合にはきちんと事実を認めてもらうことはできません。そのため証拠については非常に重要になってきますので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.01.17

裁判等の証拠について②

<ご相談者様からのご質問>

 夫が以前,他の女性とホテルに入っていく様子を目撃したのですが,いきなりのことだったので,気が動転してしまい,写真や動画はありません。証拠がないので泣き寝入りなのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 結論から言うと,どんな事件であっても全く証拠が提出されない事件はありません。しかし,証拠の中身がとても大事であって,証拠がたくさんあるから勝てる,証拠が少ないから勝てないということはありません。今回と次回にかけて証拠の種類と証明力についてご説明させていただきますが,今回は,証拠の種類についてご説明させていただきます。

 証拠には大きく分けると,①物的証拠(物証)と②人的証拠(人証)の2つがあります。

 物証とは,文章や物など,ある事実を証明しようとする手段がものである場合をいいます。
 民事訴訟では物自体を証拠として提出することはほとんどなく,物自体を撮影し,写真撮影報告書という書面を提出することになります。したがって,民事訴訟における物証の大半は書証ということになります(録音したものに関してはCD-R等の媒体を提出するとともに,録音内容を反訳した書面(「反訳書」といいます。)を提出することになります。

 書証にはついては,証明しようとする事実と関係性が認められるものであれば全て証拠になりえます。不貞行為の事実,期間,場所,回数等を認めた念書だけでなく,事件が発生してから原告本人が自ら見たり聞いたりしたことを作成した書面(陳述書といいます。)も証拠自体にはなりえます。

 人証(「にんしょう」といいます。)とは,証明しようとする手段が物ではなく人発言などである場合を言います。人証の種類としては,訴訟の当事者(原告,被告)以外の証人に話を聞く証人尋問と,訴訟の当事者から話を聞く当事者尋問があります。
 ご相談者様は,ご主人の不貞に関する証拠が何もないとおっしゃられていますが,たとえば,ご相談者様が毎日日記を作成していたり(日記を書証として提出),不貞を目撃したことを誰かにメールしていたり(メールを印刷若しくは写真に収めて書証として提出),電話で話していた場合(知り合いの人の陳述書を提出若しくは,証人として発言してもらう)など,考えられる証拠はたくさんあります。
また,そういったものが何一つなくても,ご相談者様ご自身の陳述書や法廷での証言も証拠になるのです。したがって,証拠が全くないという事件はほとんどないといっていいでしょう。もっとも,証拠があるから勝てるというわけではありません。次回では,証拠の証明力についてご説明させていただきます。

2018.01.16

裁判等の証拠について①

<ご相談者様からのご質問>

裁判では,証拠がないと勝ち目がないと聞いたりするのですが,どんなときに証拠が必要になるのですか。弁護士に相談に行くときにはどういったものを持ってくればいいのでしょうか。今回は弁護士が「証拠」について解説致します。

<弁護士からの回答>

裁判官は証拠に基づき事実を認定するため,裁判では証拠がどれだけ揃っているかが,重要になってきます。そこで,今回から数回にかけて離婚訴訟における証拠についてご説明させていただきます。離婚訴訟においてどのような場面で証拠が必要になるのかという一般論についてご説明させていただきます。

裁判では,全ての事実について証拠が必要であるというわけではありません。「当事者間で争いのある事実」について証拠により証明する必要がありまます。したがって,訴訟においてこちらが主張している事実について,相手方もその事実を認めている場合には,証拠がなくとも裁判所はその事実をそのまま認定するのが通常です(以前のコラムでは,離婚訴訟では職権探知主義を採用していると書きましたが,職権探知主義において当事者間で争いの無い事実に関してはそのまま事実認定がなされているようです。)。

ご相談いただく方からは,よく,「私が先生にお話ししていることが真実なので相手方も認めると思います」とおっしゃられるのですが,これまでの経験上,特に自分に不利な事実に関しては,相手が認めずに争いになるケースは珍しくありません。もちろん確たる証拠が既にこちらにある場合には相手も否定しようがないため認める場合もありますが,相手方において,こちらが証拠を有していないのではないかと考えている場合には,あえて真実とは異なる主張をされるケースがほとんどであります。
そして,裁判においては,単に「相手は嘘をついている!」とだけさんざん主張したとしても,中立な立場にたっている裁判官としては,どちらが嘘をついているかについては,わからないため,あまり意味をなしません。そこで,争いのある事実に関しては,証拠に基づいて主張を行う必要があります。

次に,離婚訴訟において一般的に争いになりやすい事実については,以下のような事実が挙げられます。
① 婚姻関係は破綻しているか否か
② 不貞行為の有無
③ 財産分与の金額
④ 親権者の判断に際し,同居時の監護状況等

 上記①~④の争点に関して,どのようなものが証拠足りうるのかという点については,各争点の内容によって様々であり(各争点の内容をご説明する際に,具体的にどのようなものが有力な証拠になるのかという点についてもご説明させていただきます。),ご相談者様ご自身で証拠になるのではないかという資料の取捨選択を行うのはとても困難であると思います。

 したがって,弁護士にご相談いただく際には,ご自身でこれは証拠にならないなというような取捨選択をするのではなく,関係ありそうな資料等についてはなるべく弁護士に渡していただき,弁護士と話し合いながら取捨選択を行うのがよいのではないかと思います。ご自身では,関係ないと思っている資料であっても,弁護士の目から見て,有力な資料になりうることは少なくありません。離婚に関するご相談の際には是非,関係しそうな資料についても併せてご持参いただくのがいいと思います。

2018.01.15

離婚訴訟と損害賠償請求訴訟

<ご相談者様からのご質問>

   夫の不貞が原因で離婚を決意しました,調停では夫は,不貞は認めているものの,離婚したくないとの主張を続けていたため,調停は不成立になりました。不貞相手の女性に対しても慰謝料を支払うよう求めていたのですが,不貞相手の女性は払いたくないとの主張を続けています。夫とは早期に離婚したいし,不貞相手の女性には,不貞をして家庭を壊した責任をきちんととってもらいたいと考えているので,それぞれ裁判をしたいと考えています。
   それぞれの裁判は別々に起こさないといけないのですか。

 <弁護士からの回答>

   配偶者の不貞が原因で離婚に至るケースに関しては,相手方配偶者に対してだけでなく,不貞行為を行った相手方に対しても離婚に至ったことによる損害賠償(慰謝料)の請求をすることが可能です。今回は,離婚訴訟と,不貞相手に対する損害賠償請求訴訟を提訴する際の方法についてご説明させていただきます。

   まず,離婚訴訟については,人事訴訟として,地方裁判所ではなく家庭裁判所に訴えを提起しなければなりません(人事訴訟法4条1項。当事者間で,地方裁判所に提訴すると合意していても合意管轄は認められません。)。また,不貞行為の相手方に対する損害賠償請求訴訟については,当該訴訟単体で提起する場合には,請求する金額にもよって異なりますが,地方裁判所若しくは簡易裁判所に提起することになります。
   では,離婚訴訟と損害賠償訴訟を同時に提起する場合には,どの裁判所に提起することになるのでしょうか。この場合に,上記と同様に,家庭裁判所と地方裁判所(簡易裁判所)のそれぞれに提起しなければならないとなると,同じ不貞行為について問題としており,争点や証拠が共通しているにも関わらず別々の裁判所が取り扱うことになってしまうため,当事者にとっても不利益ですし,裁判所にとっても良いことはありません。

   そこで,人事訴訟法では,「人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求」については,家庭裁判所に対し1つの訴えの提起で足りるとされています(17条1項)。したがって,ご相談者様の事例であっても,離婚の原因となった,配偶者と相手方の不貞行為によってよって生じた損害賠償(慰謝料)請求訴訟は,家庭裁判所に対し,離婚訴訟とともに,1つの訴訟で提起することができます。

   また,最初に離婚訴訟を提起し,しばらくしてから,不貞相手に対し損害賠償請求訴訟を提起する場合であっても,離婚訴訟が係属している(行われている)裁判所に対し提起することができます(17条2項)。
   逆に,先に損害賠償請求訴訟を地方裁判所若しくは簡易裁判所に提起し,後から離婚訴訟を提起する場合には,訴訟の当事者が,地方裁判所若しくは簡易裁判所に対し申し立てを行い,裁判所が相当であると判断した場合には,損害賠償請求訴訟を家庭裁判所へ移送し,1つの事件として処理すること(訴えの併合といいます。)ができます(人事訴訟法8条1項,2項)。

   このように,離婚訴訟と損害賠償請求訴訟については家庭裁判所にて1つの事件として処理することができますが,離婚だけでなく,相手方からもきちんと慰謝料を取りたい場合には,専門家に依頼し,きちんと裁判で主張立証を行うことが必要不可欠ですので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.01.14

離婚訴訟の特徴(職権探知主義)について

<ご相談者様のご質問>

  民事訴訟については一度簡易裁判所ですが自分で起こしたことがあります。その時は相手が欠席したので,すぐに勝訴判決を得ることができました。したがって,離婚訴訟も自分自身でできるのではないかと考えています。離婚訴訟と民事訴訟ではなにか違いがあるのですか。

 <弁護士からの回答>

  離婚訴訟については,原則として民事訴訟法が適用され,民事訴訟法のルールにしたがって運用,進行していきますが,人事訴訟でもあることから,人事訴訟法によって,通常の民事訴訟とは異なる仕組みやルールによって運用されていく場面もあります。その中でも,離婚訴訟の中でも大きな特色である職権探知主義についてご説明させていただきます。

 私人間の法律関係については,原則として当事者の自由な意思にゆだねるべきであるという私的自治の原則にしたがって,民事訴訟においても,当事者が主張しない事実を裁判所が勝手に認定することは許されません。まこれを弁論主義といいます。これに対し,離婚訴訟の場合には,夫婦関係という身分に関する事項を扱うものであり,公益性があることから,弁論主義は採用されておらず,職権探知主義というものが採用されています。人事訴訟法20条では,「裁判所は,当事者が主張しない事実をしん酌し,かつ,職権で証拠調べをすることができる。」と規定されており,裁判所は,当事者が主張していない事実であっても判決の資料とすることができます。また,当事者に対し積極的に証拠を提出するよう求めたり,主張を促したりすることができます。

  上記の職権探知主義が採用されていることにより,相手方が答弁書も提出することなく,かつ期日に出廷することがない場合であっても,民事訴訟のように擬制自白(民事訴訟法159条)が認められていわゆる欠席判決が出されることはなく,相手方が一切出廷しない場合であっても,きちんと証拠に基づき主張を行わなければ,離婚が認められないことになります。

  このように,離婚訴訟では職権探知主義が採用されていることから,相手方が出席しないために1回で期日が終了することもなく,何度か裁判所へ出廷する必要があります。
  また,期日では,裁判官から積極的に主張立証を促され(釈明といいます。),準備書面を作成したり,証拠を準備する必要があり,簡易裁判所での民事訴訟とは異なり,おひとりで訴訟を行うことは相当困難です。
 弁護士に依頼することで,第1回目の期日から充実した主張や証拠を提出することで,早期に離婚を成立させることも可能ですので,是非弁護士にご相談ください。

2018.01.13

遠隔地での裁判について

<ご相談者様からのご相談>

 私は福岡に住んでいるのですが,東京の実家に別居した妻から離婚訴訟を提起されました。移送の申立てをしましたが,認められませんでした。離婚訴訟の期日は月に1回程度行われると聞きましたが,毎回毎回東京の家庭裁判所に行かなければならいのですか。弁護士さんに依頼する場合には東京の弁護士さんに依頼した方がいいのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  裁判所が遠隔地になってしまった場合には,裁判所への出廷による経済的な負担等が生じてしまいます。そこで,離婚裁判においてもすべての場面において必ず裁判所に出廷しなければならないということはなく,出廷しなくても期日を進めることができる場合があります。代理人に離婚訴訟を依頼した場合には,実際にご依頼者様ご本人が裁判所に出廷することはほとんどないのが実情です。
そこで,今回は,遠隔地での離婚訴訟に関するご説明をさせていただきます。

  日本の裁判では,進行が迅速かつ充実したものとなるように,口頭弁論期日においては,原告・被告の双方の当事者が出席することを原則としています(民事訴訟法87条1項参照。)。したがって,離婚訴訟においても,遠隔地であっても当事者が裁判所に出向き,期日に出廷することが必要になります。
  もっとも,上記の原則に対しては例外がいくつか認められています。まず,訴訟された側の被告は,原告から訴状が送達された場合には,第1回目の期日までに答弁書(訴状に対する反論の書面)を提出することになるのですが,答弁書を提出していれば,第1回目の期日については,欠席したとしても,出席して答弁書の内容を陳述したものとみなされるため(民事訴訟法158条,擬制陳述といいます。),被告の場合には第1回目の期日には出席する必要はありません。

 また,第1回目の期日以外の期日であっても,裁判所が相当と認めるときには,一方の当事者が裁判所に出廷しているときに限り,他方の遠隔地の当事者は電話にて期日に出廷することができます(電話会議システムといいます,民事訴訟法170条3項)。もっとも,この電話会議システムについては実際に利用されるケースとしては,当事者に代理人がついている場合がほとんどであり,当事者本人のみで訴訟を行う場合には,裁判所から代理人をつけるように説得されるケースが多いと思われます。

  このように,遠隔地の裁判所であっても,実際に何度も何度も裁判所に出廷するということはほとんどありません。しかし,離婚裁判のうち,当事者尋問,証人尋問(人証)手続に関しては電話会議システムを使うことができないので,実際に裁判所に出廷する必要があります。また,裁判上の和解により離婚が成立する場合には,当事者は必ず裁判所に出廷する必要があります。

 遠隔地の裁判所で裁判を行う場合のケースでよくご相談されるのが「自分の住んでいるところで弁護士を依頼すべきか,遠隔地の裁判所の近くの弁護士に依頼すべきか。」ということです。これに関しては,どちらが正しいか間違っているということはありません。しかし,私の感覚では,離婚訴訟の場合には,期日の間に弁護士との間で充実した打合せを行うことが重要であると考えているため,遠隔地の弁護士だと充実した打合せは難しく,かつ,弁護士との間での信頼関係を築くのも難しいのが一般的です。

上記のように,電話会議システムにより,実際に遠隔地の裁判所に行く機会は1回~2回程度で済むケースがほとんどですので,遠隔地の裁判所で離婚訴訟を提起された場合であっても,是非一度当事務所にご相談ください。

2018.01.12

訴状の送達について

<ご相談者様からのご相談>

  2年前に夫が突如家を出てしまい,今どこに住んでいるのかわかりません。いつまでも夫との関係をこのままにしておこうとは思いません。こんな場合でも離婚訴訟をすることができるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 裁判を起こすためには,訴状を相手(被告)に送達する必要があります。相手の住所が分かっている場合には何ら問題はありませんが,相手の住んでいる場所が分からない場合には,訴訟を起こすのにも若干手間がかかります。そこで,本日は,離婚訴訟における送達の方法についてご説明させていただきます。

 訴状は,裁判所から当事者に正式に通知する送達という手続きを完了して初めて手続が進行することになります。そして,送達の方法についてはいくつかあるのですか,一般的な方法として,通常送達,就業先送達,付郵便送達,公示送達があります。
 通常送達は,相手方の居場所が分かっている場合に行われる送達方法であり,住所,居所等に特別送達(書留郵便に似たものであり,宛名となっている者に対し直接渡さなければならない郵便のことです。)により送付するものです(民事訴訟法103条1項)。

  相手方の所在が分かっていない場合や相手が受け取らない場合については,まず,相手の職場が判明している場合には,就業場所送達として,勤務先への送達が認められることがあります(民事訴訟法103条2項)。
  相手が受け取らず,かつ就業場所が分からない場合には,相手方が受け取らなくても,発送したときに送達したものとみなされるという付郵便送達(民事訴訟法107条1項3項)という方法により送達をすることができます。もっとも,この付郵便送達を行うためには,相手方が住民票上の住所地に住んでいることが明らかであることが必要になります。そのため,住民票上の住所地に現地調査(インターホンを鳴らしたり,近隣の人に聞き込みをしたり,ガスメーター,電気メーター等を確認したりします。)を行い,その結果を報告書として裁判所に報告をする必要があります。

 最後の公示送達ですが,就業場所もわからず,住民票上の住所地に居住している実態がなく,相手方の所在が不明であると裁判所が判断した場合には,公示送達(民事訴訟法110条)という,裁判所の掲示板等に掲示する方法により送達を完了することができます。
  このように,相手方の所在が不明であったとしても訴訟を提起することが可能ですが,付郵便送達や公示送達をするためには,現地調査を行って報告書を作成する等専門的な作業が必要ですので,弁護士に依頼して訴訟を行うべきです。

2018.01.11

離婚訴訟の管轄について

<ご相談者様からのご質問>

  裁判となるととても大変なのですね。弁護士さんに依頼して進めようと思いますが,一つ不安な点があります。現在夫とは,別居しており夫は東京,私は実家の福岡に住んでいます。離婚調停は夫が申し立てたので,福岡の家庭裁判所で行いました。離婚の訴訟の場合は調停と異なり,夫婦それぞれの住所地の裁判所に起こすこともできると聞いたことがあるのですが,本当ですか。

<弁護士からの回答>

  離婚調停においても管轄のご説明をさせていただきましたが,離婚訴訟における管轄に関するルールは調停におけるルールと異なるルールがあるので今回は離婚訴訟における管轄をご説明させていただきます。

 まず,離婚や認知など,夫婦や親子等の関係についての争いを解決する訴訟を「人事訴訟」といい,離婚訴訟も人事訴訟に含まれます。そして,人事訴訟に関しては通常の民事訴訟とは異なる点について,人事訴訟法という法律により規定しています。離婚訴訟の管轄については,当事者つまり夫又は妻の普通裁判籍を有する地(人事訴訟法4条1項)であり,夫又は妻の住所地を管轄する家庭裁判所に訴えを提起することになります。
  離婚調停の場合には原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄でしたが,離婚訴訟の場合には,夫婦いずれかの住所を管轄する裁判所に起こすことが可能になります。夫婦の住所が違って管轄裁判所が異なるときは,夫婦のどちらが先に訴えを提起したかによってどの家庭裁判所で離婚訴訟を行うかが大きく変わってきます。したがって,離婚訴訟を起こすことを決意されている場合には早期に訴えを提起した方がよいでしょう。
  仮に,相手方が先に自身の住所地を管轄する裁判所に訴えを提起した場合,自分の都合の悪い場合には,移送の申立(人事訴訟法7条)を行うのがよいでしょう。離婚調停を行っていた裁判所に対する移送などは認められる可能性があります。

  特に,夫婦間に未成年者の子がいる場合には,親権者をいずれかにするか等を調査する必要性があることから,人事訴訟法31条において,移送をするか否かに際して,その子の住所又は居所を考慮しなければならないと規定されていることから,未成年者の子がいる場合には,移送が認められる可能性が高いと考えられます。
  仮に,移送の申立が通らなかった場合には,遠隔地の裁判所に出廷する必要があり,経済的にも時間的にも大きな負担を被ることになります。相手から先に離婚訴訟を提起された場合にはできるだけ早く弁護士にご相談ください。

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