面会交流について③
【ご相談者様からのご質問】
先日、夫と離婚しました。5歳の長男の親権者は私なのですが、夫からは面会交流を求められています。私自身夫とは顔も見たくないので、正直息子とも面会交流をしてほしくありません。
また、息子も「お父さんと会いたい」と積極的に言ってくることもありません。息子も会いたいと言ってこない以上会わせたくないのですが・・・
【弁護士からの回答】
面会交流に関するご相談のなかで、ご相談者様から多く寄せられるご意向が、「相手方に子どもを面会させたくない」ということがあります。そこで、今回から複数回にかけて、面会交流が認められないケースについてご説明させていただきます。
1 はじめに(原則は面会させる方向に)
以前にもお伝えした通り、面会交流は未成年のお子さんの利益のために実施されるものであります。したがって、裁判所としては、親と子が交流することは子の利益に資すると考えています。
したがって、非監護親から面会交流が求められた場合には、原則として認めるべきであるという前提のもと調停や審判が進むことになります。
2 夫に子どもを会わせたくないという意向は?
では、ご相談者様のように、監護親が非監護親に会わせたくないという意向を有している場合はどうでしょうか。
監護親が単に感情的に会わせたくないという理由は、上記子の利益とは関係のないものになってしまうため、単に会わせたくないという理由のみでは面会交流が認められないということにはならないでしょう。
そのような理由のみで調停に臨んだ場合、通常、調停委員や裁判官から会わせる方向で説得されてしまうことになるでしょう。
3 お子さんが会いたくないと言っている場合は?
お子さんが、非監護親と会いたくないと主張している場合、子の利益を考えると、会わせない方向に働くのではないかとも考えられます。
しかし、お子さんの意向を尊重するか否かはお子さんの年齢にかかわってきます。
お子さんが幼い場合には、お子さんは環境に影響されやすく、特に監護親が、非監護親に対し悪感情を持ち合わせている場合、監護親の顔色を窺って、本当は会いたいのに会いたくないと話している場合も少なくありません。
したがって、お子さんが幼い場合には、お子さんの意向についてはそれほど尊重されず、お子さんが会いたくないと言っていても、面会させる旨の審判が出されることもあります。
他方、ある程度の年齢が達しているお子さんの場合には、逆にお子さんの意向が非常に重要な要素となり、お子さんが会いたくないと主張している以上、面会交流すべきでないという審判が出されるということも見受けられます。
では、お子さんが何歳であれば、意向が重要視されるのかという点についてですが、年齢による画一的な基準があるわけではありませんが、一般的には10歳未満のお子さんの場合には、そこまで意向が尊重されないのではないかと思います。
もっとも、お子さんの意向を尊重するか否かについては、単に年齢のみをもって判断するものではなく、実際には、家庭裁判所の調査官がお子さんと面会して、どのような理由で会いたくないと話しているのか、お子さんの状態等を考慮して判断することになります。
次回も、面会交流を制限すべき事情に該当するか否かについてご説明させていただきます。
面会交流について②
【ご相談者からのご質問】
面会交流についてはいつでも子どもと自由に会える権利ではなく、子どものことを考えなければならないということは理解できました。
では、面会交流の方法はどのようにして決まるのでしょうか。相手方と話し合いで決まらない場合には裁判で決まるのでしょうか。
【弁護士からの回答】
今回は面会交流をどのように実施するかという面会交流の方法がどのように決まるのかという点についてご説明させていただきます。
1 当事者における話し合い
当事者間で離婚すること及び未成年者の親権者について合意に至った際に、非監護親と未成年者との間の面会交流について当事者間で協議する場合があります。
法律上離婚をする際に面会交流について合意ができていなくても、離婚すること及び親権者をどちらかに指定するかについて合意ができていれば離婚すること自体は可能です。
もっとも、面会交流についてはお子さんのための権利であることから、可能であれば離婚の際に当事者間で話し合っておいた方がよいのではないかと思います。
なお、離婚時に面会交流について話し合っていなかったとしても、離婚後に協議することは可能であるため、離婚時に面会について協議しておらず、お子さんと面会したいと考えられている場合にはお気軽にお問合せください。
当事者での面会交流の話し合いについて、合意に至った場合には、後々のトラブルを防ぐために、離婚が成立していないのであれば離婚協議書として、離婚が成立した後であれば、面会交流に関する合意書といった形で書面として残しておいた方が良いでしょう。書面の作成に関しても弁護士にお気軽にご相談ください。
2 調停及び審判
当事者間で面会交流に関する話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所を通じて、面会を実現することになります。面会交流に関しては、法律上、まず調停を申し立てることが必要になります(調停前置主義)。
調停においては、父母双方の希望する面会交流の条件について話し合いを行います。場合によっては、家庭裁判所の調査官という、子の監護等に関する専門の職業の方に、面会の様子などを見てもらう調査などを実施することもあります。
調停において話し合いが成立すれば、地話し合った内容をまとめた書面(調停調書)を作成することになります。
調停でも話し合いがまとまらない場合には、審判といって、家庭裁判所の裁判官が、証拠や調査官の調査結果に基づき、どのように面会をすべきであるのかについて、審判(判決と同じです。)にて判断することになります。
面会交流について①
【ご相談者様からのご質問】
妻との離婚を考えています。自分は仕事人間で、基本的に家庭のことは妻にまかせていたため、息子(5歳)の面倒は基本的に妻がみていました。
私自身で息子を育てることは困難であるため、親権者は妻でよいかと思っているのですが、親権者でなくても息子と会えると聞きました。面会交流というのですよね。
会いたいときにいつでも自由に息子と会えることができるのであれば、問題ありません。
【弁護士からの回答】
これまで、離婚に伴う未成年者の親権者についてご説明させていただきました。
今回から数回に分けて、未成年者との間の面会交流についてご説明させていただきます。今回は、面会交流の内容等、総論的な内容をご説明させていただきます。
1 面会交流とは
面会交流とは、未成年者の子を養育・監護していない親(「非監護親」といいます。)と未成年者の子とを面会させることにより、子と未成年者との交流を行うことをいいます。
離婚後の面会交流のみならず、離婚する前の段階で面会交流が問題になることもあります。
民法766条第1項には「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と規定されています。
「子の監護をすべき者」とは親権者のことであり、「子の監護に要する費用の分担」については別の機会にご説明する養育費のことを指します。そして、「子の面会及びその他の交流」が面会交流について規定しています(面会交流は別名「面接交渉」ともいいますが、内容は同じです。)。
2 面会交流は「親の権利」?
弁護士が作成する色々な様々ブログを見ると、面会交流については、「親の権利」であるとしているものも見かけますが、法律上、面会交流を親の権利だと明確にうたっている規定はありません。
また、権利であるという点を強調しすぎると、非監護親が会いたいときに、好きなだけ面会できるということにもなりかねません。面会交流が親の権利であるかそうでないのかという点について議論があるとは確かなのですが、私としては、面会交流はあくまでも、お子さんのために行われるものであるという点が非常に重要であると考えています。
民法766条にも「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定されていることから、面会交流の実施の際にもあくまでも子どものために行うものであるという意識が重要になります。
したがって、面会交流については、基本的に認められるものですが、ご相談者様がご主張するように、親が会いたいときにいつでも自由に会えるというものでもありません。
次回からは面会交流の具体的な内容についてご説明させていただきます。
親権者にこだわる理由について
【ご相談者様からのご質問】
妻と離婚を考えています。妻との間には、4歳の息子がいるのですが、息子の親権はどうしても私が欲しいです。
妻は専業主婦で、私は土日以外、基本仕事で家にはいません。また、私の実家は他県で離れており、私の代わりに息子の面倒を見てくれる人もいない状況です。
このような状況では、自分が親権者になることは不利な状況ではあるとはわかっているのですが、どうしても親権は欲しいです。これだけ親権を欲しいということを主張すればどうにかならないでしょうか。
【弁護士からの回答】
お子さんの親権について主張されるご相談者様の中にも、「これだけ、親権者になりたいと思っている」ということを熱く語られる方がいらっしゃいます。おそらく、その方は、どれだけ親権者になりたいかという点が、親権者の判断に大きく左右するのだと考えているのでしょう。
しかし、これまでもご説明してきたとおり、親権者の判断はあくまで「子の福祉」を基準に判断するものであることを親としてきちんと理解する必要があります。
そこで、今回は、親権者になりたいという思いや、親権者に固執する理由、必要性についてお話しさせていただきます。
1 親権者の判断要素と親権者の思い
これまで、何度もご説明しているように、「子の福祉」を基準に判断します。簡単に言えば、父親、母親のどちらの監護下で生活するのが、そのお子さんにとって適しているかという点を判断します。
そのような判断要素の中で、確かに、未成年者に対する愛情の深さについては、考慮要素自体になることには争いはありません。しかし、一番大事な要素としては、生活環境がどのような環境であるのかであるため、環境が悪いときに、どれだけ愛情があると主張したとしても、親権者になれるわけではありません。
したがって、調停等においては、自分が親権者としてふさわしいと思う事情を主張するときに、「どれだけ、自分がお子さんを想っているか」という点を主張するよりも、「これだけの環境を確保することができるので、こちらの環境の方が子どもの福祉の観点から適切である」という主張を行う方が効果的であると言われています。
したがって、ご相談者様の事例では、主たる監護者は相手方の奥さん(母)であり、その監護状況が問題ない場合には、親権者について争ったとしても、相手方に指定される可能性が高いでしょう。
2 親権者に固執する理由
ご相談者様の事例のように、弁護士からも客観的にみて、親権者は相手方になるのではないかと思われる状況でも、親権に固執されるご相談者は少なくありません。
しかし、そのようなご相談者様のお話を聞いてみると、親権についてよく理解をしておらず、とりあえず、親権者という名目が欲しいという意識の方も多く見受けられます。
よくよく話をきくと、現実的に、お子さんを養育することは困難である場合や、親権者でなくなると、子どもと触れあることができないと考えている方がいらっしゃるようです。
親権者でなくとも、お子さんの親であることには変わりはありません。別の機会にご説明させていただきますが、親である以上、お子さんと面会交流等で触れ合うことは親やお子さんの権利であるため、親権者でなくともお子さんと触れ合うことは十分にできるのです。
ご相談者様の事例のように、ご相談者様の元よりは相手方の監護下の方がお子さんの健全な養育には適切な環境である場合、本当にお子さんのことを考えるのであれば、監護養育については、相手方へ任せ、面会交流などによりお子さんと父親として接することでお子さんの成長を見守るということも選択肢として考えるべきではないかと考えています。
客観的に見て、相手方が親権者として適切である状況であるにもかかわらず、親権を主張するとなると、どうしても相手方の生活環境やはたまた人格等を攻撃してしまうことも少なくありません。
そうなると、離婚後、相手方が親権者となった後、お子さんとの面会交流をスムーズに行えなくなる可能性もあります。
離婚により、夫婦としての関係は終了しますが、お子さんの親としての関係まで完全に断ち切ることは通常困難です。したがって、未成年のお子さんがいらっしゃる場合には、離婚後の関係も考慮して離婚を進める必要があります。
離婚後のお子さんとの関係を考えて離婚を進めるためにも、是非一度、弁護士にご相談ください。
不貞行為と親権者について
【ご相談者様からのご質問】
妻と結婚して20年になります、娘が1人おり17歳です。1年程前から妻の様子がおかしかったのですが、先日、妻が他の男性と不貞行為を行っていることわかりました。
自分を裏切った妻とは婚姻関係を継続していくことは考えられないため、離婚を考えていますが、娘の親権については、絶対に渡したくありません。
不貞行為を行っている人は親権者としてふさわしくはないと思います。
【弁護士からの回答】
これまで、有責配偶者からの離婚請求についてご説明させていただきましたが、今回は、少し違う側面として、不貞行為と親権者の関係についてです。
ご相談者様の事例のように不貞行為をした配偶者との間で親権について問題になるケースは少なくありません。
そこで、今回は、不貞行為が親権者の判断に及ぼす影響についてご説明させていただきます。
以前にもお伝えした通り、親権者を夫と妻のいずれとすべきかについては、「子の福祉と利益」を基準に判断することになります。具体的には父母の属性、監護状況、子の心身の状態や場合よっては子の意向等を総合的に考慮して判断していくことになります。
したがって、不貞行為を行ったことが親権者としての適格性を欠くというふうにダイレクトにつながるものではありません。
ご相談者様のように、「不貞を行っているのだから親権者にはなれない」というようなロジックは働かないため注意が必要です。
もっとも、不貞行為を行っていたことにより、上記親権者の判断に影響を及ぼす場合があります。
例えば、夜に幼い子をおいて不貞相手のところに頻繁に出向いていたような場合には、育児放棄と同視し得るため、不貞行為を行ったということよりも、育児を行っていないとして、不利に判断されることになると思われます。
ご相談者様の事例では、未成年者のお子さんが17歳とある程度自立されているため、育児放棄とまで認められるかについては、不貞行為の内容にもよりますが、微妙なところではないかと思います。
また、未成年者のお子さんが、親が不貞行為を行っていることを知っていた場合には、不貞行為を行っている親に対する悪感情から、未成年者自身が拒絶する場合も少なくなりません。親権者の判断要素において、年齢が一定程度(12歳程度)になれば、未成年者自身の意向が非常に重視されることになります。
したがって、ご相談者様のケースでも、娘さん自身が、母親のことを拒絶している場合には、親権者として父であるご相談者様が指定される可能性も十分に考えられます。
他方で、娘さんが母親と一緒にいたいという意向が強い場合には、仮に、母親が不貞行為を行っていたとしても、ご相談者さまが親権者に指定される可能性は低くなるのが一般的です。
このように、親権者の判断は、相手方が不貞行為を行っているからといった単純な理屈で判断されるものではないため、親権者の判断についてお悩みの方は、是非一度、弁護士にご相談ください。
有責配偶者について⑤~有責配偶者からの婚姻費用請求~
【ご相談者からのご質問】
私は結婚しているのですが(子どもはおりません。),夫以外の他の人を好きになってしまい,その人と不貞までしてしまいました。その人はあまり収入がないので,別居後の生活がきちんとできるか心配です。ですが,インターネットで調べたのですが,私が別居した場合,夫から婚姻費用として一定の生活費がもらえると知りました。夫の収入はある程度あるので,何とか生活ができそうです。
【弁護士からの回答】
不貞行為については,夫だけが行うものではなく,妻が不貞行為を行うケースも少なくありません。婚姻費用についての具体的な内容や問題点については,別の機会でご説明させていただきますが,今回は,有責配偶者からの婚姻費用の請求の可否についてご説明させていただきます。
民法760条では,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており,かかる規定から,夫婦の一方は,別居していたとしても相手方配偶者の生活費を婚姻費用として支払う義務があります。したがって,収入がある配偶者は,別居した他方の配偶者に対し,離婚が成立するまでの間若しくは,別居が解消するまでの期間については婚姻費用を支払う必要があります。
では,相談事例のように,妻が不貞行為を行い別居した場合のように,有責配偶者が,他の配偶者に対し,婚姻費用を請求することは認められるのでしょうか。
民法752条では,「夫婦は同居し,互いに協力し扶助しなければならない。」と規定されており,夫婦間には同居義務があることを定めています。
そして,裁判例では,自らが不貞行為を行ったことで婚姻関係を破綻させ,夫婦での同居することを困難にさせた有責配偶者であるにも関わらず,婚姻費用を請求することは,信義誠実の原則に反するとして,有責配偶者からの婚姻費用の請求がなされた場合には,請求を否定するか若しくは,通常の場合に認められる婚姻費用の金額から減額されるべきであるとしました。したがって,ご相談者様の事例のように,別居の原因がもっぱら不貞行為にある場合には,婚姻費用の請求は認められないでしょう。他方で,不貞行為をしてしまったものの,それ以前より夫婦関係が相当程度悪化していた場合や,相手にも落ち度がある場合には,減額された婚姻費用が認められる可能性があります。
このように,有責配偶者からの婚姻費用請求は原則として認められませんが,相談事例とことなり,別居した有責配偶者側に未成年の子がいる場合には,有責配偶者自身の生活費分の婚姻費用は認められないものの,子の生活費に相当する部分の婚姻費用は認められることになります。
このように,有責配偶者からの婚姻費用の請求は原則として認められません。そればかりか,不貞行為を行ったことにより,ご自身や,不貞行為の相手方において慰謝料を支払うことにもなるため,くれぐれもお控えいただいた方がよいでしょう。
有責配偶者について④~離婚を実現するためには~
【ご相談者様からのご質問】
私の不倫が原因で妻とは別居して4年になります(子どもはいません。)。これまで妻に対しては,生活費以外に給料のほとんどを渡していましたし,今,住んでいる私名義の不動産についても妻に譲ろうと考えています。さすがに,これ以上妻と一緒にいることは考えていないのですが,やはり,離婚の原因が私にある以上,離婚は認められないのでしょうか。
【弁護士からの回答】
これまで,有責配偶者からの離婚請求が認められる要件についてご説明させていただきましたが,ご相談者様の事例のように,別居期間が若干短い等のように,離婚請求が認められる要件を充たさない場合であっても,直ちに離婚自体をあきらめなければならないわけではありません。そこで,今回は,離婚を実現するために考えられる方策についてご説明させていただきます。
これまでご説明してきた,有責配偶者からの離婚の請求が認められないのは,あくまでも,訴訟での場面に過ぎません。したがって,有責配偶者であっても,協議により相手方が離婚することを承諾した場合は,離婚が成立することになります。
したがって,有責配偶者において離婚を実現するための一番の方策は,協議により離婚を成立させることがもっとも重要であると考えられます。
もっとも,現在は,インターネットの発展や,弁護士による無料法律相談の機会等が増えたことにより,有責配偶者からの離婚請求は原則として認められないということを,事前知識として有している方も少なくありません。したがって,協議により離婚を成立させるためには,相手方に対し,現時点で離婚に応じた方がよいと思っていただく必要があります。そのためには,相手方へ提示する離婚に関する給付(慰謝料や財産分与)や養育費等について,相場以上の金額や,法律上認められている以上の割合を提示する必要があると考えられます。特に,相手方配偶者が女性の場合には,離婚後の生活の安定が確保されるかについては,非常に不安になっていることが通常であるため,養育費の金額や,住居に関する条件(住宅ローンの支払いをこちらが行い,相手方に無償で住まわせることや,ときには住宅ローン完済後に不動産の名義を相手方に譲ることも検討した方がよいかもしれません。)については,相手方の要望に沿った形での条件に応じる必要があると思われます。
もっとも,相手方としても,不貞行為等を行った本人からの提案では,感情的な対立もあって素直条件を提示しない場合も多いと思います。したがって,代理人である弁護士を通じ,相手方の希望する条件を出してもらうことから始めるべきであると考えます。
相手方の配偶者ともしても,代理人を選任したことで,こちら側が離婚することに本気であると考えますし,今後,調停→裁判になった際の経済的,精神的負担等を考えて,離婚を前提とした話し合いを行ってくれる可能性が高まります。
また,協議による,解決が困難であるとしても必ずしもあきらめる必要はありません。これまで,説明してきた有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件については,すべての要件を充たしていないと必ず離婚が認められないものであると判示した裁判例もあるのですが,すべての事情を総合的に考慮して判断するため,1つの要件を充たさないとしても,離婚の請求が認められるとした裁判例もあります。有責配偶者からの離婚請求が認められないのは,それを認めることが信義に反するという大前提からすれば,各要件にとらわれずに,総合的に判断し,離婚請求が信義に反していないのであれば離婚請求が認められると考えるべきであると考えが一般的になっています。現に,裁判例では,不貞期間や,不貞回数などの有責性の程度や,相手方配偶者にも破綻に至る原因がある場合,離婚を拒否する理由が単に,有責配偶者に対する敵対心しかない場合など,様々な事情を総合的に考慮して,離婚が認められるか否かを総合的に判断しているため,1つの要件を充たさないからといってあきらめる必要はないと考えています。
もっとも,各夫婦の別居に至るまでの事情は千差万別であるため,離婚を実現されたい場合には,これまでの夫婦生活に関する事情等さまざまな事情をお伺いする必要があるため,是非,一度弁護士にご相談ください。
有責配偶者について②~例外について~
<ご相談者様からのご質問>
主人の不貞が原因で夫婦関係が破綻している以上,有責配偶者として離婚が原則として認められないということは分かりました。でも,例外的に離婚請求が認められる場合もあると聞いたのですが,どのような場合でしょうか。
<弁護士からの回答>
前回ご説明させていただいたとおり,不貞行為等婚姻関係を破綻させる原因を作出した有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。もっとも,後の最高裁の判決により,例外的な要件のもと,有責配偶者からの離婚の請求が認められるようになりました。そこで,今回は,有責配偶者からの離婚請求が認められる要件についてご説明させていただきます。
有責配偶者からの離婚請求が認められる要件について判断したのは,昭和62年9月2日の判決であり,
① 夫婦の別居が長期間であること
② 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
③ 相手方配偶者が離婚により,苛酷な状況に置かれないこと
という,3つの要件を満たした場合には,有責配偶者からの離婚請求が認められると判断しています。
このように,例外的とはいえ,有責配偶者からの離婚請求が認められることになったのは,婚姻関係に対する裁判所の考え方に変化が見られたことが原因であると考えられています。
すなわち,有責配偶者からの離婚請求を一切認めていなかった,昭和27年の最高裁判決が出された時点では,自分で婚姻関係を破綻させておきながら,離婚の請求をすることは許さない(社会的正義に反する)という考え方が強く(これを「有責主義」と呼んでいます。),形だけでも婚姻関係を継続させることが望ましいと考えられていました。もっとも,上記昭和62年の最高裁判決では,結婚(婚姻)の本質を,両性(夫婦)が精神的肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるとして,夫婦の一方にその意思がなく,共同生活の実体を欠き,回復の見込みがない場合には,戸籍だけの婚姻を存続させることはかえって不自然であるとして,婚姻の実体がなく回復が困難であると判断される場合には,夫婦関係は解消した方が良いという考え方(これを「破綻主義」といいます。)へ考え方を変えたと考えられています。
有責配偶者の事例とは異なりますが,性格の不一致等で,別居に至り,別居の長期化を理由に離婚請求を求める際にも,裁判所は,従前よりも短期間の別居であっても離婚を認めるようになってきており,裁判所全体として破綻主義を採用しているのではないかと考えられています。
もっとも,破綻主義を採用しているからといっても,有責配偶者からの離婚請求が認められることはあくまでも例外的な場合であることに変わりはありません(この点では,裁判所も「有責主義」を完全に排除しているわけではないといえます。)。次回は,上記でご説明した,各要件の具体的内容についてご説明させていただきます。
有責配偶者について①~原則について~
【ご相談者様からのご質問】
結婚して15年になる夫から,数年前より他の女性と不倫をしており,その人と一緒になりたいので離婚して欲しいと言われました。突然のことでとても驚いています。まだ子どもも小さいですし,私としては離婚せずに家族での生活を続けていきたいと考えています。以前,先生のブログを見て,別居期間がある程度あると,離婚したくないと主張しても離婚が認められるとのことなのですが,私の場合でもそうなってしまうのでしょうか。
【弁護士からの回答】
夫婦のいずれかの不貞行為が発覚した際,通常,不貞行為が行った人が,配偶者から離婚を突きつけられるのが一般的ですが,ご相談者様の事例のように,不貞行為をした側から離婚を求めるケースも少なくありません。
そこで,今回から数回にかけて,有責配偶者にまつわる問題についてご説明させていただきます。今回は,有責配偶者からの離婚請求に関する原則についてご説明させていただきます。
まず,離婚事由について規定している民法770条1項では,1号から4号については,「配偶者」と規定されていることから,相手方が不貞行為を行ったことや,悪意の遺棄を行った場合の規定であることは間違いありません。もっとも,770条1項5号は,単に「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」と規定してあり,条文上,夫婦のどちらからでも,離婚の請求をすることができるように規定されています。そこで,不貞行為を行った夫婦の一方が,婚姻関係が破綻しているとして,770条1項5号を根拠に離婚の請求をした場合,離婚は認められるのでしょうか。
この点について,昭和27年2月19日の最高裁判決では,不貞行為を行い,妻以外の女性と同棲している夫からの離婚の請求を行った事案において,離婚の請求を認めませんでした。その際の理由としては,不貞行為を行った夫からの離婚の請求が認められてしまうと,妻としては不貞もされて離婚もされてしまうというまさに,踏んだり蹴ったりである(実際の判決の理由中で「踏んだり蹴ったり」という文言が使われました。)ということを述べています。そして,上記最高裁判決以降,不貞行為等婚姻関係を破綻する原因を作った配偶者(「有責配偶者」といいます。)からの離婚請求は認められないとされてきました。
したがって,ご相談者様の事例においても,不貞行為を行っているご主人からの離婚請求は原則として認められないことになります。もっとも,例外的ではありますが,有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もありますが,それについては,次回,ご説明させていただきます。
親権者の判断基準⑤
<ご相談者様からのご質問>
勝手に連れ去ってしまうとダメなんですね。でも,そもそも妻が別居する際に子どもを実家に連れて行っているのはどうなのでしょうか。それも違法な連れ去りに該当するのではないですか。
<弁護士からの回答>
離婚問題で夫側からのご相談の場合に多く聞かれるご質問として,ご相談者様のように,妻が子どもともに,同居していた住居から別居したことで何か追及することができないかという点があります。今回は,離婚する際に子どもを連れ出して別居を実施することの適法性についてご説明させていただきます。
離婚を考えている夫婦の一方が子どもを連れ出して別居をする行為(いわゆる「連れ去り別居」といいます。)については,これまでご説明してきたとおり,親権者の判断において現状維持が非常に大事であるとの考えから,現状維持を確保するためにいわば連れ去ったもの勝ちであるとの認識が広まり,連れ去り別居が横行することになりました。
しかし,親権者の判断はあくまでも子の福祉に適しているか否かの判断であるため,子のことを考えず,ただただ親権が欲しいがために連れ去る行為が容認されてしまうと,子の福祉を害することになってしまいます。
したがって,現在では,連れ去り別居に関しても,直ちに適法であるとは判断されず,別居するに至った経緯等が慎重に判断されているのが現状です。
具体的には,従前の監護状況(連れ去った親が主たる監護者か否か監護能力に問題がないか否か。),や,子の年齢,別居に至る経緯(別居せざるを得ない状況が会ったのか否か。)別居の時期(子どもに影響を及ぼす時期であるのか否か。)別居先(遠方か否か),子の監護について夫婦間で話し合ったか否か,別居後の非監護親との面会交流の有無,別居後の未成年者の心身の状況等を総合的に考慮することになります。
別の機会にもご説明しますが,相手方に無断で連れ去り別居を実施した場合,相手方は基本的に,子どもを確保すべく,子の監護権者の指定及び子の引渡しの審判を家庭裁判所に申し立てることになります(緊急性が高い場合には保全処分の申立てもなされます。)。このように連れ去り別居により相手方との関係が紛争状態に発展することも否定できないため,お子さんを連れての別居に関しては,許容されるような状況に該当するか否かについては,別居を行う前に慎重に判断する必要があるため,是非一度,弁護士にご相談ください。













