弁護士コラム

2018.04.03

親権とは

親権とは

<ご相談者様からのご質問>

   先日,妻から,離婚したいと言われ,自分もこれ以上妻とはやっていけないと考えていたため,離婚に応じることにしました。妻との間には,3歳の息子が1人いるのですが,妻は息子の親権については自分(妻)が欲しいと話しています。これまで仕事中心であったため,息子については妻が中心として育てることについては私も異論はありませんが,そもそも親権ということについてよくわかっていないので教えてください。

<弁護士からの回答>

 離婚する際,夫婦の間に未成年の子がいる場合には,離婚の際に子の親権者を父か母のいずれかに指定しなければなりません。
 そこで,今回は,親権の内容についてご説明させていただきます。

 親権とは,成年に達しない子を監護,教育し,その財産を管理するため,その父母に与えられた身分上及び財産上の権利・義務のことをいい,未成年の子に対し親権を有している人を親権者といいます。
 未成年の子どもは,未熟であり1人では生活したり,内容を理解して法律行為等を行うことが困難であるため,親権者が親権を行使し,本人の生活を支え,財産などを管理していくことになります。
 親権の定義にもあるように,親権は「身上監護権」と「財産管理権」の2つに分けられます。

 「身上監護権」とは,子の身分行為に関する同意権,代理権居住指定権(子どもをどこに住まわせるのかを決める権利),懲戒権(監護や教育に必要な範囲内で懲戒,しつけを行う権利),職業許可権(子が職業を営むにあたり,その許可を行う権利)などを言います。簡単にいうと,実際に子どもとともに生活し,子どもを監護養育してく権利のことをいいます。
 また,「財産管理権」については文字通り子の財産を管理する権利です。子ども名義の預貯金を管理したり,子ども本人にかわって売買契約などの法律行為を行ったり,子が勝手に法律行為を行った場合には,親権者としてその法律行為を取り消すことができます。

 夫婦(父母)が婚姻中の場合には,親権について,父母が共同して行うことになりますが(共同親権の原則,民法818条3項本文),日本では,離婚する際には,父または母のどちらか一方しか親権者となることができません(英国やフランス等諸外国では,離婚後も元夫婦が共同して親権を有するとしている国の方が一般的なようです。)。したがって,離婚により親権者とならなかった親には上記の「身上監護権」や「財産管理権」が認められなくなります。

 したがって,離婚の際には,父と母のどちらが親権者となるかについて深刻な争いに発展するケースも少なくありません。
 次回からは,離婚の際に親権者を決める際にはどのような判断要素が考慮されることになるのかについてご説明させていただきます。

2018.04.02

よくあるご質問(離婚原因と慰謝料について)

よくあるご質問(離婚原因と慰謝料について)

<ご相談者様からのご質問>

 これまで夫とは些細なことでケンカが絶えなかったのですが,先日,大きなケンカをした際,夫から離婚して欲しいと言われて,私もこれ以上夫とは一緒にいられないと思い,離婚に応じたいと思っています。ですが,夫から離婚を切り出している以上夫が悪いので慰謝料を払ってもらいたいと考えているのですが慰謝料は認められるでしょうか。

<弁護士からの回答>

 ご相談者様からは,弁護士に対し,「相手が原因で離婚をすることになったのだから慰謝料を払ってもらえますよね。」とご質問いただくことがございます。そこで,これまで法定離婚原因についてご説明させていただきましたが,今回は,ご離婚原因と慰謝料の関係について弁護士がご説明させていただきます。

 ご相談者様の中には「離婚の原因を作った」=「慰謝料を払う義務がある」と考えられている方が非常に多くいらっしゃいます。
 しかし,離婚をしたら必ず慰謝料を支払わなければならないという決まりは,日本の法律では一切ありません。相手方において慰謝料の支払いを命じるのが相当であるような違法な行為(「不法行為」といいます。)を行ったことにより,夫婦が離婚するに至った場合に限り法律上,慰謝料を支払う義務が発生します。

 ご相談者様のケースでの離婚の原因については,夫婦喧嘩の際にご主人が離婚を切り出したと伝えたことにありますが,離婚を切り出すことが民法上の不法行為には該当しません。したがって,「離婚の原因を作った」ということが直ちに「慰謝料を支払う義務がある=不法行為に該当する」ということにはなりません。離婚の原因を作った行為が不法行為に該当するような違法な行為に該当することが必要になります。

 もちろん,不貞行為や暴力行為など「離婚の原因を作った行為」が直ちに「不法行為」に該当するケースもありますが,よくある「性格の不一致」が原因で離婚するような場合に,一方当事者が慰謝料の支払いを求め,相手方が支払いを拒んだ場合には,裁判などをしても慰謝料が認められないことが一般的です。

 もっとも,相手方が任意で慰謝料を払ってくれる場合には(この場合には厳密にいうと慰謝料という名目よりも解決金という名目の方が適切かもしれません。),金銭を受け取ることは可能です。

 弁護士にご相談いただいた際には,離婚に至るまでの経緯をお聞きした上で,法律上慰謝料の支払いが認められるのか否かについてもアドバイスをさせていただきますので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.03.31

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論③~

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論③~

<ご相談者様からのご質問>

  夫の両親との折り合いが合いません。夫は何とかして仲を取り持ってくれてはいるのですが,夫の両親とは根本的に合わないのだと思います。
  夫との両親との不仲を理由に離婚することはできるのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  これまで,「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しうる行為についてご説明してきましたが,今回は,単にそれだけでは「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しない事情やそれにどういった事情が加われば該当しうることになるのかを弁護士がご説明させていただきます。

1 相手方配偶者の両親との不和

   一般的にも嫁姑問題に限らず,相手方配偶者の両親との間で折り合いが合わないことにより離婚を考える方は多く,離婚調停等においても,配偶者の両親との不仲を理由に離婚を希望される方は少なくありません。
   しかし,結婚が当事者だけでなく家族の問題であったとしても,婚姻関係が破綻しているか否かの判断において考慮されるのはあくまでも夫婦当事者の関係であることから,単に相手方の両親との折り合いが悪いということのみでは「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとはいえないでしょう。
   もっとも,夫が妻と自分の両親との折り合いが悪いことを知っているにも関わらず両者の関係を良好にすることについて何ら努めてこなかったこと等の事情が認められる場合には離婚事由として主張できる場合があります。

2 宗教活動

  日本の憲法では,信仰の自由や宗教活動の自由が保障されていることから,相手方配偶者が特定の宗教に入信したことや宗教活動を行っていること自体をもって「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当することはありません。しかし,結婚当初宗教活動に関し,家族を巻き込まないと約束していたにも関わらず子どもたちにも宗教活動を強要していたり,宗教活動(勧誘活動や集会への参加等)にのめりこみすぎたことにより,仕事,家事,育児等をおろそかにしていたという事実が認められる場合には離婚事由として主張できる場合があります。

3 ギャンブル,浪費,借金

  ギャンブルや浪費,借金についてもそれ自体を禁じる法律等は存在しないため,ギャンブルをしていたことや,借金を有していることのみでは離婚事由たりえません。ただし,ギャンブルや浪費により家庭が経済的に困窮するような事態を招いたり,返す見込み無く借金を行い,配偶者や親族等が返済を強いられたような場合には,離婚原因として主張しうることになります。

4 犯罪を犯したこと等

  相手方配偶者が犯罪を犯したことや,それに伴い服役していたとしてもそれをもって直ちに婚姻関係が破綻していると認定されるものではありません。もっとも,犯した犯罪が殺人などの重大な犯罪である場合には犯罪の悪質性や長期間服役することが明らかであるため離婚が認められやすいでしょう。また,軽微な犯罪を何回も繰り返していたり,当事者間で次何か悪いことをして捕まったら離婚する旨誓約していたにも関わらずそれに反して再び罪を犯したような場合には離婚事由として認められうるでしょう。

  このように,婚姻関係が破綻している(「婚姻を継続しがたい重大な事由」が存在する)と主張する際にはどのような事情が有力な事情に該当するかについては,とても複雑であり,ご依頼者様ご本人での取捨選択はとても困難であると思います。したがって,離婚したいと考えられている方は,是非早めに弁護士にご相談いただき,弁護士に対し,離婚したいと考えた理由については,それが有力な事情であるかという点についてはいったん度外視して全て弁護士にお伝えいただいた方がよいと思います。

2018.03.30

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論②~

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論②~

 <ご相談者様からのご質問>

  単に離婚がしたいということだけでは簡単には離婚事由にはならないのですね。
  他には,どのような事情が離婚原因として主張しうるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 夫婦が結婚してから,離婚に至るまでには,当事者のみならずときには両家の家族をも巻き込んで様々なことが起きているのが通常です。一方当事者が離婚に応じていない場合,「婚姻関係を継続しがたい重大な事由」が認められるか否かについては,上記の様々な出来事についてどれだけ説得的に主張及び立証(証拠により証明することです。)できるかが重要になってきます。前回に引き続き,今回もどういった事情が該当しうるのかについてご説明させていただきます。

1 暴力,暴言(DV,モラハラ等)

  暴力や暴言等を行うことが,夫婦の関係を破綻させることにつながることは当然であり,裁判所としても,DV(ドメスティック・バイオレンス)等に対して厳しく対応しており,きちんと証拠に基づきDVとして認定される場合には,離婚事由に該当することになります。また,近年ワイドショーなどでも使われているモラハラ(モラルハラスメント)についてもDVと同視しうるような程度のものであれば離婚事由足りえるでしょう。ここで大事なのが,単に当事者が「DVだ」「モラハラだ」と主張するのみでは,足りず,あくまでも客観的に裁判所からみてDVとして評価されるうる事実が存在することが必要になってきます。また,「ドメスティック(=家庭内)」というだけあって,DVやモラハラの立証はとても困難を伴います。したがって,録音,録画,毎日日記を書く,程度がひどい場合には警察や,市などの相談窓口に連絡を取っておくなど地道な証拠集めが重要になってきます。

2 性生活の問題

  最高裁判所の判例においても夫婦間の性生活が夫婦関係の重要な要素であること自体は認めています。したがって,相手方が拒否しているにも関わらず異常な性行為(SMプレイ等)を強制させることを継続的に行っている場合などには離婚原因の1つとして主張しうる事情になりえます。
  逆に,正当な理由がないも関わらず性交渉を拒否する(いわゆるセックスレス)状態が長期間に渡り継続していた場合にも離婚事由として主張しうることになります(あくまで正当な理由もなく拒否していることが必要になりますが,長期間にわたり拒否し続けた場合には慰謝料の支払いが認められた裁判例もあります。)。

2018.02.24

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論~

婚姻を継続しがたい重大な事由について~各論~

<ご相談者様からのご質問>

  よく,性格の不一致が原因で離婚するなんてことを聞くのですが,性格の不一致という法定離婚原因はありませんよね。性格の不一致が原因で離婚できるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 前回は,法定離婚原因の1つである「婚姻を継続しがたい重大な事由」について,総論的な内容をお話しさせていただきました。今回から数回にかけて,「婚姻を継続しがたい重大な事由」になりうる具体的な事情についてご説明させていただきます。

1 性格の不一致

日本での離婚原因(離婚に関する紛争に至った原因(理由)のことを意味し,法定離婚原因とはことなります。)の約半数をしめるのが,この性格の不一致というもので,ワイドショーなどでも,芸能人夫婦が性格の不一致により離婚等と報道されることもあり,身近な言葉として認識されているのではないかと思います。
 しかし,単に性格の不一致ということだけで,「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するということはほとんどありません。夫婦とはいえ,生まれも育ちもことなる他人同士である以上性格や価値観が異なるのは当然であり,一度夫婦になった以上,単に性格や価値観が違うということのみでは離婚は難しくなります(ワイドショーで報じられている離婚については,協議離婚(当事者の合意)により離婚が成立している場合であるのがほとんどなので,性格の不一致が原因で離婚ができるとの誤解を生んでしまっているのかもしれません。)。性格の不一致については,あくまでも離婚を巡る問題に至ったきっかけ(入り口)に過ぎず,その後の夫婦関係が悪化し,修復不可能になっていることを主張,立証しなければ,離婚は認められることはないでしょう。その意味で,性格の不一致はそれ単体で主張することは少なく,後述する,別居期間に関する主張を合わせて主張を行うのが一般的です。

2 長期間の別居

 以前にもお伝えした通り,夫婦関係すなわち,夫婦の共同生活関係が破綻し,その修復が困難な場合に「婚姻を継続しがたい重大な事由」が存在すると認められることになります。そして,夫婦が別居している場合には,共同生活関係がなく,その状態が長期間にわたって継続している場合には,もはや,共同生活関係を修復することは困難であると判断されることになります。したがって,裁判所において上記要件を判断する際には,夫婦の別居という事実の有無及び別居期間がどの程度存在するのかという点は非常に重要な考慮要素となります。

 どのくらい,別居期間が長期になれば,婚姻関係が破綻していると認められるかについては,一律の基準があるわけではありませんが,以前は,5年程度別居期間が必要であると考えられておりましたが,最近では,2~3年程度で離婚を認める裁判例も存在している状況です。もっとも,上記裁判例においても単に別居期間のみを根拠に離婚を認めたわけではなく,以前お伝えしたように,それ以外の諸般の事情を考慮して判断しているため,離婚訴訟においても,単に別居期間が長期であることのみを主張するのではなく,別居に至った経緯や,別居期間中の経緯(復縁の申出がなされたかいなか等)を詳細に主張する必要があります。

2018.02.23

婚姻を継続しがたい重大な事由について~総論~

婚姻を継続しがたい重大な事由について~総論~

<ご相談者様からのご質問>

  夫が離婚に反対している場合には,離婚原因がないと離婚することができないのですね。夫には不貞行為もありませんし,悪意の遺棄や,精神疾患もありません。離婚原因の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する事情があるのでしょうか。私は,夫とはこれ以上一緒にやっていく意思は全くないのですが,これは,「婚姻を継続し難い重大な事由」にはならないのでしょうか

<弁護士からの回答>

 民法上の法定離婚原因については,民法770条1項1号から4号において個別の離婚原因を記載しつつ,770条1項5号にて,「婚姻を継続し難い重大な事由」として,包括的な離婚原因を定めています。不貞行為などの大きな離婚原因がない場合には,この「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在するとして離婚を求めていくことになります。裁判でも頻繁に争点になることが多い離婚原因ですので,どのような場合に「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかを理解して離婚に望むことはとても重要です。今回から数回にかけて,どういった場合に婚姻を継続し難い重大な事由に該当するのかをご説明させていただきます。今回は総論的な部分のお話をさせていただきます。

 「婚姻を継続し難い重大な事由」とは,一般的には,婚姻関係(共同生活)が破綻し,その修復が不可能もしくは著しく困難な状況をいいます。どのような場合に婚姻関係が破綻しているのかについては,形式的に定められているわけではなく,夫婦の同居期間,同居期間中の夫婦関係,子どもの有無,別居に至った理由,別居期間,別居中のやりとり,婚姻関係に対する当事者の意思等諸般の事情を総合的に考慮して判断することになります。
 ご相談者様がおっしゃられるように,当事者が再び夫婦関係を築く意思がないということは,婚姻関係が破綻していることを基礎づける事情にはなりますが,それだけで,離婚が認められることにはなりません(もし,それだけで離婚が認められるとなると,離婚したいと強く思うだけで,すべての事案で離婚が認められてしまうことになってしまいます。)。

 法定離婚原因とは,以前もお話ししたように,裁判において相手方 が離婚に反対していたとしても,強制的に離婚を成立させるものであり,夫婦一方の意思に反してでも離婚を認めるべき事由であることが必要になります。したがって,「婚姻を継続し難い重大な事由」についても,民法770条1項1号から4号までに規定されている離婚原因と同程度の事情であることが必要になります(そもそも770条1項1号から4号については,それぞれが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する事由であるとされています。)。

 次回からは,「婚姻を継続し難い重大な事由」になりうる具体的な事情についてご説明させていただきます。

2018.02.22

不貞行為に関する証拠

不貞行為に関する証拠

<ご相談者さまからのご質問>

 最近,夫の様子がおかしく他に女性がいるのではないかと考えております。もし,他の女性がいたら離婚したいと考えているのですが,どういった証拠があれば夫が不貞行為をしていると裁判でも認めてもらえるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 客観的な証拠や有力な証拠がない場合,相手方配偶者は,本当は不貞行為をしている場合であっても,不貞をしていないとして離婚や損害賠償を回避しようとすることも少なくありません。今回は,不貞行為に関する証拠についてご説明させていただきます。

 前回ご説明させていただいたように,不貞行為にあたるためには,相手方配偶者が,他の異性と性的関係(性交及び性交類似行為)があることが必要になりますので,証拠についても,性的関係があったことを立証することができる証拠が必要になります。では,どういったものが,不貞行為を立証するための証拠になるのかを具体的にご説明いたします。

1 メール(LINE)でのやり取り

 最近では,スマートフォン等の普及に伴い,メールやLINEでのやり取りがきっかけで,配偶者の不貞行為が発覚することも少なくありません。もっとも,配偶者が異性とメールやLINEのやり取りをしているだけでは,直ちに不貞行為を立証することにはつながりません。メールやLINEでのやり取りの内容が,不貞行為を確認できる内容,もしくは推認することができる内容である必要があります。単に,親密なやり取りであることが窺える程度の内容のである場合には,親密であったことは直接立証することができるものの,それを越えて不貞行為があったとまで推認することには無理があるでしょう。したがって,仮に,LINE等のやり取りを入手した場合には,そのやり取りで不貞行為を立証することができる内容であるかについては,一度弁護士に相談した方がいいでしょう。

2 写真や動画について

 配偶者と異性がホテルや互いの家に入っていく写真や動画,2人で旅行に行っている際の写真や動画については,非常に有力な証拠になりえます。もっとも,ホテルや家に入っていく際には,ホテルの場合にはどういったホテルにはいっていったのか(ラブホテルは通常性行為などを行うことを想定しているホテルであるため,ラブホテルに入ったとなるとより有力になります。)ということや,家やホテルに滞在した時間(あまりにも短い場合だと不利になってしまいます。)が非常に重要になりうるため,より確実な証拠を得ようとするのであれば,何時に入り何時に退出したかについてもきちんと証拠に収めておくようにした方がよいでしょう。また,ごくまれにではありますが,配偶者と異性が,ベッドなどで服を着ていない状態で撮影された写真や,性交渉そのものを撮影した記録などが保管されているケースもあり,最近では,インターネットクラウドサービスにより,本人の予期していないところで,そういった写真がバックアップとして夫婦共通のPCに保存されているといったケースもあるそうです。

3 興信所などの調査報告書

 上記のような証拠の収集に関しては,不貞行為については,相手にバレないようにこそこそ隠れて行うものであるため,ご自身で収集するのはとても難しい場合が多いです。興信所などに依頼を行うと,不貞行為に関する証拠をしっかり集めてもらえるという点では非常にメリットがあるのではないかと思います。もっとも,興信所等に依頼すると,調査費用等が発生してしまうところがネックになってくるため,確実に慰謝料などを回収できるのかという側面からも検討が必要です。

4 その他

 上記以外で,一般的に不貞の証拠になりうるものとしては,例えば,不貞相手からのプレゼント,クレジットカードの明細,相手と宿泊したホテルの領収書等が考えられますが,上記①~③の証拠に比べて証明力の点では弱くなってしまいますが,何も資料がない場合よりはよいと思うので,手持ちの証拠で立証することができるのかについては一度資料をご持参いただいた上で,弁護士にご相談いただいた方がよいでしょう。

2018.02.21

不貞行為とは

不貞行為とは

<ご相談者様からのご質問>

 最近ワイドショーなどでも,芸能人の不倫や浮気が問題になっています。不倫や浮気と不貞行為は何か違うのですが,そもそもどういった行為が不貞行為というのでしょうか。

<弁護士からの回答>

不貞行為に関しては,離婚事件の中でも大きな争点となることが頻繁にあります。そこで,今回から数回にわけて,不貞行為についてご説明させていただきます。今回は,不貞行為の内容についてご説明し,どういった行為が不貞行為に該当するのかについてご説明させていただきます。

民法770条1項1号の不貞行為とは,「配偶者のある者が,その自由意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を持つこと」をいいます。夫婦は互いに,その配偶者以外の異性と性交をしてはならないという義務を負っており(これを貞操義務といいます。),その義務に違反して,配偶者以外の者と性的関係に至った場合には離婚原因となります。
不貞行為と似た言葉で,不倫,浮気という言葉もありますが,不倫,浮気は法律用語ではありませんが,不倫については,不貞行為と同じ意味合いで使用されていることが多い気がします。また,浮気については,婚姻関係にない男女間でも使用することがあるのではないかと感じています。

上記のように,不貞行為に該当するためには性的関係を持つこと(俗に言う「一線を越える」といったことになるのではないでしょうか。)が必要になります。具体的には,性交及び性交類似行為があると認められた場合には,不貞行為に該当することになります。

したがって,単に手をつないだり,キスをしたりといった程度では,不貞行為に該当しないことになります。もっとも,配偶者以外の異性とそのような行為を行うことは,正常な婚姻生活に支障をきたす事情であることは争えないため,不貞行為に該当しないとしても「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性は十分にありえます。
また,1回でも性的関係を持った場合には,不貞行為には該当することになります。また,風俗に行って性交類似行為を行った場合であっても,風俗だからお咎めなしということにはならず,不貞行為には該当することになります。

もっとも,不貞行為により離婚が認められるためには,当該不貞行為が原因で婚姻関係が破綻したことが必要になります。したがって,別の機会にもご説明しますが,離婚のために別居した後に,配偶者が他の人と性的関係を持ったとしても,その前に婚姻関係が破綻していると認められる場合には,不貞行為による離婚請求及び慰謝料請求は認められないことになります。次回は,不貞行為に関する証拠についてご説明させていただきます。

2018.02.20

離婚原因について~各論①~

離婚原因について~各論①~

<ご相談者様からのご質問>

  離婚したいと思っても,相手が反対していると,法律上の離婚事由がないと離婚が認められないのですね。法定離婚原因の具体的な内容について教えてください。

<弁護士からの回答>

  前回は,法定離婚原因の種類等について大まかにご説明させていただきました。今回からは,各法定離婚原因の具体的な内容についてご説明させていただきます。
 法定離婚原因のうち,「不貞行為」と「婚姻を継続しがたい重大な事由」については,訴訟でも頻繁に争点になる離婚原因ですので,別の機会にご説明させていただき,今回は,それ以外の離婚原因の内容についてご説明させていただきます。

1 悪意の遺棄(民法770条1項2号)について

  「夫婦は,同居し,互いに協力,扶助し合わなければならない。」とされており(民法757条),夫婦は相互に同居義務,協力義務,扶助義務を負っていることになります。悪意の遺棄とは,夫婦の一方が正当な理由がないのにも関わらず,上記義務を怠り,夫婦の共同生活が維持できなくなる状況を作出していることをいいます。
  具体的には,一方が同居を希望しているのに,正当な理由なく家を出ていき帰ってこない場合や,収入があるにも関わらず,配偶者に生活費を渡さない場合や,正当な理由がなく家事を全くしない場合等が悪意の遺棄に該当しうる行為です。もっとも,単に別居をしていても,単身赴任や長期出張の場合や,夫婦間の冷却期間の為の別居,病気療養や出産のための別居等正当な理由に基づく別居の場合には,同居義務違反には該当せず,悪意の遺棄に該当することはありません。訴訟等においては,悪意の遺棄のみを主張することは少なく,婚姻を継続しがたい重大な事由にも該当すると主張することが一般的です。

2 3年以上の生死不明(770条1項3号)について

  相手方配偶者が行方不明になり,3年以上生死不明の場合には離婚が認められます。生死不明とは,生存の証明も死亡の証明もできない状態のことをいい,所在が不明でも生存が確認される場合には,生死不明には該当しません(その場合には,悪意の遺棄や婚姻を継続しがたい重大な事由に該当する旨主張することになります。)。3年間の起算点ですが,行方不明になった時点,すなわち最後に音信があったときからとなります。最後に音信以降行方不明であることを客観的な証拠として残すためにすぐに,警察に失踪届等を提出する必要があります。

3 回復の見込みがない精神病(770条1項4号)について

  専門医などが「強度の精神病」であり,かつ「回復の見込みがない」と判断した場合には,形式的には離婚事由に該当することになります。もっとも,瀬上記精神疾患を負っている配偶者は,離婚後,苛酷な状況に置かれてしまうことになることが想定されているため,裁判所において,上記要件のみを根拠に離婚を認めることに対しては非常に消極的です。具体的には,単に,上記要件に該当するのみならず。離婚後も公的な保護を受けることができる状態が確保されているなど,離婚後の生活の見通しが確保できている場合でなければ離婚を認めていないのが実情です。

 次回からは,離婚訴訟等で頻繁に争点になる不貞行為と婚姻を継続しがたい重大な事由の内容についてご説明させていただきます。

2018.01.21

離婚原因について~総論~

<ご相談者様からのご質問>

  夫と離婚したいと考えています。夫は離婚することに反対しているので,裁判になるかもしれません。裁判で離婚が認められるのはどんなときですか。

 <弁護士からの回答>

 離婚について当事者の意向が対立している場合には,当事者間に離婚原因が存在するか否かという点が大きな争点となります。今回からは,法律上の離婚原因についてご説明させていただきます。今回は,離婚原因がどのようなものがあるのかについて総論的なお話をさせていただきます。

  法定離婚原因とは,民法に規定されている離婚が認められる事由のことをいいます。離婚原因については,民法770条1項に記載されています。

①配偶者の不貞行為
②配偶者による悪意の遺棄
③配偶者の3年以上の生死不明
④配偶者の回復見込みのない強度の精神病
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由

 離婚訴訟では,離婚したいと考える当事者(通常,原告になります。)が上記の①~⑤の事由が存在することを証拠に基づいて主張,立証していくことになります。
そして裁判所において上記①~⑤の離婚原因のうち1つでも存在すると認められると判断した場合には,判決で離婚が認められることになります。
逆に,離婚原因が存在しないと判断された場合には離婚が認められないとの判決がだされることになります。

したがって,どういった場合に各離婚原因に該当するのかという点や,それを立証するためにどういった証拠が必要であるのかという点についてはきちんと理解することが重要になります。特に,上記の離婚事由のうち,①不貞行為や,⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由が認められるか(婚姻関係が破綻しているか)否かという点は,訴訟でも頻繁に争いになります。

そして,不貞行為を行っていることが明らかな場合や,別居が非常に長期にわたり,婚姻関係が破綻していることが明らかな場合については,そもそも訴訟に移行する前に解決することが多く,訴訟にて争われる場合には,不貞行為の有無関して証拠が微妙である場合や,婚姻関係が破綻しているか否かが微妙なケースが多いと思われます。
したがって,そういったケースにおいてきちんと離婚を認めてもらうためには,弁護士に依頼し,訴訟において十分な主張立証活動を行うことが必要不可欠になってきます。
次回からは,各法定離婚原因の具体的な内容についてご説明させていただきます。

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