弁護士コラム

2018.01.10

離婚訴訟について

<ご相談者様からのご相談>

 夫との離婚調停が先日不成立になりました。これ以上話し合いではまとまりそうにありません。裁判しかないと考えています。離婚の裁判をするにはどうしたらいいのですか。また,どのくらいで裁判は終わるのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  これまでは,話し合いにより離婚が成立する場合として協議離婚,調停離婚についてご説明させていただきましたが,今回からは,裁判離婚についてご説明させていただきます。裁判による離婚を考える場合それまでの協議離婚や,調停よりも時間や労力,費用がかかることになります。今回は,離婚訴訟の大まかな流れをご説明させていただきます。

 離婚訴訟を提起するためには,家庭裁判所に対して訴状という書面を作成し,収入印紙(離婚とともにどのような請求を行うかによって金額は異なります。)や切手に加えて戸籍謄本,住民票などの必要書類を準備します。
 訴状には,請求の原因として,民法が規定している離婚原因に該当していることを主張する必要があります(民法が認める離婚原因については,別の機会にご説明させていただきます。)。また,裁判の特徴として,争点(相手方が争っている事項)については,単に主張するだけでは足りず,証拠がなければ裁判官に事実を認定してもらうことはできません(これを証拠裁判主義といいます。)。したがって,訴状の提出ともに,必要な証拠についても同時に提出することが一般的です。

  訴状を裁判所に提出すると,裁判所で訴状の体裁等に間違いないか確認した後,訴状が相手方に送達されます(訴えた人を「原告」,訴えられた人を「被告」といいます。)。相手方に対しては,訴状とともに第1回目の期日についての連絡書面が入っており,その日に出廷(裁判所に行くことです)するよう求められます。通常,第1回目の期日は,訴状を提出した日から1か月程度先に指定されます。

 裁判の期日では,離婚調停と異なり,基本的に話し合いの場は設けられません(別の機会にご説明しますが,和解の場面では話し合いの機会が設けられます。)。期日では,書面が提出されたことを確認する手続(「陳述」といいます。)と証拠の原本確認等が行われた後,裁判官から,原告被告それぞれ(もしくは一方のみに)に対し,次回期日までの準備事項(書面作成,証拠の準備等)が告げられ,次回期日を当事者及び裁判官と協議して決めたら,期日は終了になります。代理人として期日に出廷する場合でも,期日でのやり取りは上記と変わらず,早いときには5分程度で期日が終了してしまうときもあります。

  そして,複数回期日及び期日間での書面でのやり取りがなされた後に,裁判官から和解の提案などが出され,和解にも応じられない場合には,争点に関し尋問等の証拠調べ手続(尋問等の証拠調べ手続については別の機会にご説明させていただきます。)を行い,争点に関する審理が尽くされた段階で判決が言い渡されます。
  判決がでれば必ず終わるというわけではありません。相手方が判決に不服がある場合には,控訴してくるため,控訴審も行われます。場合によっては控訴のさらに次の段階である上告をしてくる方もいらっしゃいます(控訴・上告については別の機会にご説明させていただきます。)。

  当事務所にご相談いただく方からは,「裁判だとどのくらいかかるのですか。」とご質問いただくことが多くありますが,裁判が終結するまでの期間に関しては,争点の数,証拠の有無・量,裁判官の意向,当事者の意向等様々な要素によりどのくらいかかるのかが大きく異なってきます。早期に和解が成立すれば数か月で終了する場合もありますし,争点が多く,当事者の感情的にも対立している事案等の場合には,第1審の判決がでるまでに1年以上かかってしまう場合も少なくありません。あくまで私の感覚にはなってしまいますが,離婚の訴訟を行うのであれば最低でも半年程度は時間を要するのではないかと感じております。

  このように,裁判となるとこれまでの調停とは異なり,訴訟に移行するまでの手間や訴訟が始まってからも書面の作成に追われ,かつ,裁判官はあくまでも法律に則って判断するため,専門的な法的主張を行う必要があります。弁護士の立場かすると,早い段階(協議の段階)から弁護士に依頼していただいた方が,早期かつ円満に解決する可能性が高いと考えておりますが,協議や調停ではなんとかご自身のみで進めていた方であっても,訴訟を起こす場合,訴訟を起こされた場合のいずれでもあっても,おひとりで進めるのはほぼ困難です。
  したがって,いよいよ離婚訴訟となった場合には,なるべく早めに弁護士にご相談していただき,代理人としてご依頼ください。

2018.01.09

調停でも離婚が成立しなかったら

<ご相談者様からのご質問>

 性格の不一致が原因で夫と離婚したいと決意し,半年前に別居をしました。これまで当事者同士での話し合いでも家庭裁判所での離婚調停においても,何回も期日を重ね協議を続けてきましたが,夫が離婚に応じてくれず,結局調停も不成立になってしまいました。
 この場合,もう裁判をするしかないのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 当事務所にも,調停が不成立になったので,裁判したいということでご相談いただく方も少なからずいらっしゃいます。しかし,裁判を提起するとなると,調停のように簡単に申し立てることができず,費用がかかり,また,離婚が成立するために長期間かかってしまうケースもあるため,調停が不成立になったからといって,直ちに裁判に移行するかどうかについては,慎重に判断する必要があります。
 そこで,今回は,調停が不成立になった場合の今後の進め方についてご説明させていただきます。

 法律上離婚調停が不成立になった場合に自動的に離婚訴訟に移行するような仕組みにはなっていません(これに対し,婚姻費用調停,養育費調停,面会交流調停,財産分与調停などは,調停が不成立になった場合には自動的に審判に移行することになります。)。また,調停が不成立になった場合には必ず訴訟を提起しないといけないと決まっているわけではありません。さらに,離婚調停の申し立てについて回数制限や期間制限が設定されていることもありません。

 したがって,離婚調停が不成立に終わった場合に今後考えられる選択肢としては,①協議離婚を行う,②再度離婚調停を行う,③離婚訴訟を提起するという3つの方法が考えられます
 この,3つの選択肢についてどれを行うのが適切であるかについては,離婚調停を申し立てるに至った理由・原因,別居期間の長さ,子どもの有無,財産状況,調停が不成立になった経緯(条件面が折り合わないのか,感情的なもので不成立になったのか)等様々な事情を考慮しなければ判断することはできません。たとえば,相手方の不貞が原因で離婚調停を申し立てたものの,相手方が頑なに離婚に応じないような場合には,裁判に移行しても早期に離婚が認められる可能性もあるので,離婚訴訟に移行することも選択肢として十分に考えられると思います。また,相手方から生活費(婚姻費用)をもらっていない場合には,婚姻費用を支払ってもらうために婚姻費用調停を申し立てるのに併せて再度離婚調停を申し立てるという選択肢も考えられます。

 ご相談者様のケースでは,性格の不一致が原因で別居しており,まだ別居期間が半年しか経過していない状況では,直ちに離婚訴訟を提起しても,離婚が認められない可能性が十分に考えられます。そこで,別居期間を離婚が認められる程度まで延ばすという点からも,協議離婚や再度調停を申し立てるということも十分有効な選択肢として考えられると思います。調停でも駄目であったのだから今さら話し合いなんかしてもしょうがないと思われるかもしれませんが,離婚事件ではひょんなことから相手方の考えが変わったりします。代理人としてお手伝いさせていただく中でも,少し条件面で譲歩したり時間を置いたりすることで,相手方の気持ちが柔軟になり,弁護士も予期していない形で早期に離婚が成立することも多くあります。

 いずれの選択肢を採るにしても,一度調停を申し立てて第三者を入れても話し合いが成立していない状況です。基本的に当事者のみではスムーズな解決が困難な状況になっているため,代理人である弁護士を通じて進めるべきであることは間違いありません。是非一度,これまでの経緯も含めて弁護士にご相談ください。

2018.01.08

調停に代わる審判

<ご相談者様からのご質問>

夫と間で離婚調停を行っています。離婚すること,親権者についても合意をしており,財産分与等の問題も解決していますが,養育費の金額だけ折り合いがつきません。私としては夫から提示されている金額では納得できないのですが,正直なところ裁判官がきちんと判断してくれた金額であればその金額で妥協したいと考えています。この場合,当事者間で合意ができていない以上,裁判をするしかないのでしょうか。あまり時間をかけたくありません。

<弁護士からの回答>

離婚調停は,離婚することだけでなく,当事者が調停で協議してほしいと考えている離婚に関する諸条件についても合意に至らなければ離婚自体も調停では成立することはできません。調停で成立することができない場合,原則として裁判を行う必要があります。しかし,裁判を起こして離婚を成立さえるためには時間や費用がかかります。ご相談者様の事例のように,せっかく養育費以外について合意できたのにも関わらず,ご破算にして裁判にしてしまうのは,双方にとってメリットは少ないでしょう。そこで今回は,調停に代わる審判という少し変わった調停の終わりかたについてご説明させていただきます。

 ご相談者様の事例のように,養育費以外の条件に付いてはすべて当事者で合意が成立している場合,調停を成立させる方法としては,まず,養育費については離婚調停では合意せずに後日当事者間で協議,もしくは別途養育費調停を申し立てるという方法が考えられます。もっとも,相手方において養育費も含めてでないと合意できないという意向がある場合には,この方法を採ることはできません。

 そこで,このような場合には,調停に代わる審判という制度が利用される場合があります。調停に代わる審判とは,①調停委員会の調停が成立しない場合であり,②家庭裁判所が審判をするのを相当と認める場合に③調停員会を組織する家事調停員の意見を聴き,④当事者双方のための衡平に考慮し,一切の事情をみて,⑤当事者双方の申立の趣旨に反しない範囲で,家庭裁判所の裁量的な判断を行うことを言います(家事事件手続法284条)。法律上調停に代わる審判を行うためには上記の①~⑤の要件を充たしている必要があります。

 したがって,ご相談の事例の場合にもわざわざ調停を不成立にして,訴訟をするよりも,養育費の金額については,裁判官の判断にゆだねるため,調停に代わる審判の制度の利用を検討した方がよいと考えられます。
 調停に代わる審判の特徴としては,①調停に代わる審判が出された後には調停の取下げができないこと,②調停に代わる審判の告知が公示送達(当事者の所在が分からない際に行われる通知の方法です。)では行えないこと,③相手方へ告知ができない場合には取り消さなければならないことがあげられます。

 調停に代わる審判が出されると,審判書が当事者双方に送達されます。調停に代わる審判は,いわば家庭裁判所から解決案を提示して当事者を納得させようとする特徴を有しており,裁判と異なり,裁判所が強制的に判断するものではありません。したがって,調停に代わる審判は,審判書が送達された日(告知された日)から2週間以内に書面によって異議申立てがなされた場合には,調停に代わる審判の効力が失われることになります。なお,告知された日から2週間以内に異議申立てが出されない場合には,調停に代わる審判が確定し,審判書についても調停調書と同じように執行力を有することになります(調停に代わる審判により成立する離婚を「審判離婚」といいます。)。

 このように,調停に代わる審判は,相手方が異議申立てをしてしまうと,効力がなくなってしまうものなので,いかなるケースにも使えるようなものではありません。当事者間でごく僅かな金額の違いで合意ができていない場合や,相手方への感情的な理由により,体裁上合意をしたくはない場合には,異議申立てが出される可能性が少ないため,調停に代わる審判が有効とされています。

 なお,離婚,離縁に関する調停以外の調停の場合には,当事者双方が調停に代わる審判に服する旨の共同の申し出がなされた場合には,異議申立てができないと認められています。
 このように,離婚に関する些細な条件の違いにより話し合いにより解決が困難な場合には調停に代わる審判という方法により早期に離婚が成立する可能性が残されていますが,当事者同士のみで調停を進めている場合には,一方当事者に弁護士が代理人として入ることで,きちんと相手方を説得し,調停による解決を図ることも可能です。また,調停を継続すべきかそうでないかという点については非常に専門的な問題であるため,条件で揉めている場合には是非一度弁護士にご相談ください。

2018.01.07

離婚調停成立の手続き

<ご相談者様からのご質問>

 妻と離婚をしたくて,離婚調停を申し立てました。条件面での話し合いが難航しましたが,何回か調停の期日を経てようやく条件面もまとまりそうです。次回の期日で調停が成立するとした場合,何かすることはありますか。今後の流れを教えてください。

<弁護士からの回答>

 協議離婚も調停離婚も話し合いにより離婚する点では違いはありませんが,調停で離婚する際の手続きは,協議離婚とは異なったものになります。そこで本日は,離婚調停成立の手続きと調停成立後の手続きについてご説明させていただきます。

 離婚調停では,当事者間において離婚することに加えて離婚に関する諸条件(親権,養育費,財産分与等)について合意すると,調停が成立することになります。
具体的に調停がどのような形で成立するかというと,当事者で合意した内容について裁判所にてどういった文言の調停調書を作成すべきかを検討します。
そして,これまで双方の話を聞いていた調停委員に加え,担当する裁判官が当事者に対し,調停証書の内容を口頭で説明し,内容に問題ないかを確認します。
当事者双方から内容に問題がないと確認された時点で,調停が成立し,法律上は当事者間で離婚が成立することになります。このように,調停成立の日には書面になにかサインをする必要はありませんし,成立のその日に書面ができあがることはありません。

 もっとも,以前にもお話ししましたが,調停が成立する際に作成される調停調書は,執行力を有しており,そこに記載されている内容の債務を履行しないと強制執行がされてしまうという強い効力を有しています。調停成立の際には実際に調停調書の文言をみることはできません。したがって,裁判官が口頭で説明する内容が,本当に自分が合意した内容と合致するものとなっているのか,自分に不利な内容になっていないかという点については慎重に確認する必要があります。可能であれば,調停が成立するまえに,家庭裁判所に対し「調停条項案」というものを作成してもらい,その内容で合意をしても問題ないかという点を一度弁護士にご相談いただくのがよいのではないかと思います。

  また,調停成立により法律上離婚は成立するものの,自動的に戸籍が変わるわけではありません。調停成立後に家庭裁判所が作成する調停調書をもって,当事者の一方(通常は女性側になります。)が役所に行き,調停調書とともに離婚届(相手方の署名などは不要です。)を提出することにより,戸籍上も離婚したことが反映されることになります。この離婚の届出ですが,離婚調停成立の日から10日以内に行う必要があるので注意が必要です。また,本籍地ではない役所に離婚届を提出する場合には,従前の戸籍謄本が必要になります。別居して本籍地と離れたところの役所に離婚届を提出する場合にはあらかじめ戸籍謄本を準備しておいた方がよいでしょう。

2018.01.06

離婚調停における秘匿事項について

<ご相談者様からのご質問>

  夫からの激しいDVに耐えられなくなり,夫に内緒で引越先を探し,別居をしています。夫と離婚しようと思い,家庭裁判所から離婚調停の申立書をもらってきました。申立書の中に私(申立人)の住所を記載する欄があるのですが,今住んでいる住所を夫に知られてしまうと,夫が家に押しかけてきて暴力を振るわれてしまうかもしれません。住所だけでなく,職場等も夫に知られたくないのですが,どうすればいいですか。

<弁護士からの回答>

 ご相談内容にあるように,様々な理由から,相手方配偶者に住んでいるところや職場を知られたくないという方は少なくありません。
 こうした相手方に知られたくない情報について,ひとたび相手方に知られてしまうと,取り返しのつかない事態に発展してしまう可能性があります。
 そこで,本日は,相手方に知られたくない情報がある場合に,離婚調停をどのように進めて行けばよいかをご説明させていただきます。

 離婚調停の申立書には,申立人の住所を記載する必要があり,原則としては現住所を記載する必要があります。住民票を同居していた場所から移していない場合であっても現住所としては現在住んでいるところの住所地を記載する必要があります。
 もっとも,相手方が住所を知らないに,申立書にその住所を記載してしまうと,申立書は相手方に送付されますので,相手方に住所が知られてしまうことになります。そこで,相手方に住所を知られたくない場合の方法としては大きく分けると2つの方法があります。

 1つ目の方法としては,申立書に記載する住所を,相手方に知られてもよい住所,すなわち,住民票を移していない場合には,住民票上の住所地を記載するか,住民票を移している場合には,同居していた際の住所地を記載することが考えられます。
 もっとも,実際に住んでいない住所地を記載する場合には,「連絡先等の届出書」という書面に,連絡がつく電話番号や,書類の送付先を記載し,家庭裁判所に提出する必要があります。この方法では,申立書からは現住所が判明しませんが,法律上,調停の当事者には,家庭裁判所の許可を得て記録の閲覧や謄写が可能になっているので(家事事件手続法254条),上記「連絡先等の届出書」について,閲覧されてしまう可能性はゼロではありません。

 もう1つの方法としては,家庭裁判所に対し,「非開示の希望に関する申出書」を提出することにより,相手方からの閲覧や謄写の請求の際,当事者から非開示の希望が出ているという事情を斟酌してもらえるため,住所が知られないようにすることができます。この,「非開示の希望に関する申出書」は,申立書だけではなく,基本的には調停中に提出する資料全般に使用することができます。例えば,養育費の金額等を決める際の給与明細等に記載されている自分の職場が知られたくない場合には,給与明細の提出の際に,同時に申出書を提出することになります。

 この,「非開示の希望に関する申出書」ですが,提出すれば必ず非開示になるというものではありません。先程お話ししたとおり,記録の閲覧請求は,裁判所が許可した場合には認められるものですので,いくら非開示の希望が出されていたとしても,開示する必要性があると裁判所が認めた場合には,開示されてしまいます。

 上記の2つの方法ではいずれの方法でも完全に,住所を秘匿することはできません。しかし,弁護士を代理人として依頼することにより,申立書の住所地には相手方に知られてもよい住所地を記載し,連絡先については代理人の弁護士の事務所の所在地を記載することにより,相手方に現住所を知られる可能性はほぼゼロにすることができます。

 相手方に住所地を知られたくないケースとなると,離婚の問題自体も相当やっかいな状態になっていることが通常です。相手方に住所を知られずに離婚を進めたい場合には是非一度弁護士にご相談ください。

2017.12.25

調停前置主義について

調停前置主義について

<ご相談者様からのご質問>

  性格の不一致が原因で夫と別居して1年が経とうとしています。夫とこれまで離婚の話し合いを行ってきましたが,夫がいっこうに離婚に応じてくれません。夫の意思は固そうなので,調停にして,調停委員を間に入れても離婚に応じないという考えは変わらないと思います。夫と早く離婚したいので調停を経ることなく裁判にすることはできないのですか。いきなり訴訟を申し立てたらどうなるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

  結論からお伝えすると,離婚調停を経ることなく,離婚訴訟を行うことができません。離婚調停だけでなく,家事事件に関する手続きの多くは,当事者での話し合いを経てそれでも解決できない場合に,初めて裁判官の最終的な判断にゆだねるべきであるという原則を採用しています。したがって,ご相談いただいている方の場合もいきなり離婚訴訟を起こすことはできません。今回は,離婚調停のみならず,家事調停における調停前置主義についてご説明させていただきます。

  調停前置主義とは,裁判(もしくは審判)を前に調停をしなくてはならない制度をいいます。通常の民事事件,例えばお金を貸したのに返してくれないといった紛争の場合には,交渉で解決しない場合に,訴訟に移行するか,それとも調停(民事調停)を申し立てて話し合いで解決するかについては,当事者の自由な意思に委ねられています。

  これに対し,家事事件のうち,ある一定の事件に関しては,(家事事件手続法257条1項,244条),調停前置主義が採用されています。
  家事事件において調停前置主義が採用されている主な理由は,家事事件の家事事件の場合,事件が終了したあとも親子関係などが継続していくケースもあり,そのような家庭内の問題(紛争)を,いきなり訴訟手続に持ち込んでしまい,白黒つけるという解決方法よりも,当事者が十分に協議をすることにより,できるだけ当事者双方の関係を改善することが望ましいと考えられているためです。

  家事調停において調停前置主義が採用されている事件は,離婚調停だけでなく,婚姻の無効,嫡出否認,認知の無効等に関する特殊調停事件と離婚,離縁等の一般調停事件が対象となっています(調停の種類については,別の機会にでもご説明させていただきます。)。
  調停前置主義が採用されている離婚事件に関し,調停を経ることなくいきなり離婚訴訟を提起した場合には,原則として,裁判所が職権で,事件を家事調停に付す(移す)ことになります(家事事件手続法257条2項,調停に付されることから,「付調停」と言われています。)。

  もっとも,裁判所において「事件を家事調停に付することうが相当でないとみとめるとき」には,例外的に,いきなり訴訟を起こせる場合があります。付調停の例外としては,相手方が行方不明であったり,精神障害等で協議による解決が見込めないことが明らかである場合などには認められる可能性があります。
  いずれにせよ,基本的には離婚訴訟するためには原則調停を経る必要があります。早期に離婚を進めていくためには,離婚に応じないという方であっても協議や調停において充実した活動を行い,訴訟の前に離婚が成立するのがよいと思います。そのためにも早く離婚したいと考えられているかたは,是非一度弁護士にご相談ください。

2017.12.22

離婚調停の管轄について

離婚調停の管轄について

<ご相談者からのご質問>

これまで東京で夫と子ども2人と生活していましたが,離婚を考えて子を連れて福岡市にある実家に別居してきました。離婚調停を申し立てることを検討していますがどの裁判所に申し立てる必要がありますか。東京の家庭裁判所に申立てなければいけないときには必ず裁判所まで行かないといけないのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

 ご結婚され同居されているご夫婦であっても,離婚を考え,別居する際には,仕事の関係で,近隣に引越しをされる方もいれば他県にあるご実家に帰られるかたもいらっしゃります。このように,離婚を前提として別居をする際に,当事者が別々の県や地域等で生活を行うようになると,離婚調停について,どこの裁判所に申し立てなければいけないかという点で問題になることがあります。そこで,本日は,離婚調停をどこで行うかという管轄の問題についてお話しさせていただきます。

 離婚調停は,家庭裁判所に申し立てを行うのですが,どの家庭裁判所でも自由に申し立てをすることができるというわけではなく,法律上,原則として離婚調停は相手方の住所地を管轄する(取り扱う)裁判所に申し立てをしなければなりません(家事事件手続法245条1項)。したがって,ご質問された方の場合には,原告として家庭裁判所へ申し立てる必要がありますが,他方で,相手が離婚調停を申し立てる場合には,反対に福岡家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。

 このように,原則は相手方の住所地を管轄する裁判所に申し立てる必要があるのですが,例外的に別の場所でも認められる場合があります。その例外の1つが,当事者が合意をしている場合には,当事者の住所に関わらず,全国どこの家庭裁判所であっても調停を行うことができます。当事者が管轄に合意することを合意管轄といい,当事者が合意している場合には,通常,管轄合意書という当事者が管轄について合意していることを証する書面を作成し,申立書等の書類と一緒に合意した裁判所に申し立てることになります(家事事件手続法245条2項,民事訴訟法11条2項,3項)。

 また,相手から合意を得られない場合であっても,法律上,「事件を処理するために特に必要があると認めるとき」に限り,管轄外の家庭裁判所であっても調停を起こすことが可能となります(裁判所が職権で自ら事件を処理することから「自庁処理」といいます(家事事件手続法9条)。)どういった場合に自庁処理が認められるのかについて,一律の基準があるわけではないのですが,例えば幼い子どもがおり調停に出席する際に預けることができる人がいない場合や,経済的な事情や,病気等で遠隔地の裁判所に赴くことが困難になる場合などを主張していくことになります。特に離婚の際にお子さんの親権について争いになっている場合には,後日お話ししますが,家庭裁判所の調査官がお子さんの様子を自宅に訪問するなどして確認するケースがあり,調査を容易にすることができるという点も自庁処理を希望する際には主張すべき事由になります。

 とはいえ,調停は本来相手方の住所地で行うべきものであるため,自庁処理が認められるためには,相当な理由がないと認められません。また,自庁処理を行うかの判断を決める際には必ず相手方の意見も聞かなくてはならないため,相手方側の都合から自庁処理に反対する場合には,原則通り相手方の住所地で調停が行われることになると考えておいた方がよいと思います。

 相手方の住所地での調停を行うとなっても必ず調停に出席しなければならないわけではなく,弁護士を代理人につけていれば弁護士のみ調停に出席することも可能ですし,場合によっては,電話会議システムにより実際に裁判所に行かなくても電話にて調停に参加することも可能な場合があります。もっとも,代理人がついている場合であっても,離婚が成立する際には必ず本人が裁判所へ行き裁判官の面前で離婚することや他の条件について間違いがないかを確認することが求められているので少なくとも1回は裁判所に赴く必要があります。
 どの裁判所に申し立てるべきかという問題は非常に専門的な問題でもあるので,是非一度弁護士にご相談ください。

2017.12.19

離婚調停について③

離婚調停について③

<ご相談者からのご質問>

 離婚調停はある程度時間がかかってしまうものなのですね。あくまでも話し合いということなので,自分1人でやってみようと思いますが大丈夫でしょうか。

<弁護士からの回答>

当事務所は,離婚事件等家事事件についてご依頼いただく件数が比較的多いため,私もご依頼者様の代理人として,ご依頼者さまとともに家庭裁判所へ赴き,調停に出席することが,多々あります。調停の待合室でご依頼者様とお待ちしていると,お一人で調停に臨まれている方のため息や,悩まし気なお顔を拝見することが多々あります。調停も必ずしもつけなければいけないわけではありませんが,調停もケースによっては,協議離婚による場合よりも感情的な対立が激しくなってしまい,ご自身のみでは対応が難しくなってしまうケースが多いです。本日は,離婚調停における注意点についてご説明させていただきます。

 以前にもお伝えした通り,調停では当事者同士面と向かって話し合いを行うのではなく,中立的な第三者である調停委員に話をするため,当事者同士の感情的な対立を避けることができるというメリットがあります。
しかし,この調停委員の方はあくまでも中立的な立場にたって調停を進めなくてはいけないのですが,調停委員も人間ですので,話を進めていく中で夫婦のどちらか一方の肩をもって話を進めて行こうとするケースは少なくありません。例えば,相手方からこちらが不貞をしたとして離婚と慰謝料を請求されているケースで,こちらは事実無根であると主張しているにも関わらず,不貞行為をしているだろうという前提で話を進められたため,話にならないとして,当事務所にご相談いただいた方もいらっしゃいました。

また,調停委員もなるべく早期に調停を成立させるために動く傾向にあるため,本来であれば中立・公正な立場でなければいけないのにもかかわらず,多少強引に進めてくる調停の方も多くとはいいませんが,少なからず存在することは事実です。調停委員をこちらから選ぶことも,替えてほしいと頼むことも基本的にはできません。

したがって,中立性・公平性な調停員にあたるか,そうでない調停委員にあたるかは,いわばギャンブルのような側面も有しております。中立性・公平性に反する調停員に当たってしまった場合には,たとえこちらの主張が法的に正当性を有している主張であるしてもきちんと耳を傾けてくれず,最終的に自分に不利な内容で調停をまとめるよう押し切られたまま,調停が成立してしまうというケースも少なからずあるようです。当事務所にご相談に来られた方もはじめは自分ひとりで調停を行っていたのだが,調停委員と折り合いが合わず,これ以上1人では進められないとして代理人を依頼される方もいらっしゃいます。

調停の段階できちんと弁護士を代理人として入れておくことで,調停委員からの提案が法的に妥当でない場合には代理人としてきちんとその旨の伝え,不利な内容で離婚に応じることがないように進めることが可能になります。また,こちらの主張の正当性をきちんと伝えることで,ある意味調停委員を味方につけて,解決に向けて,相手方を説得してくれる方向に導くことも可能です。
したがって,調停を申し立てることを考えられている方や,相手方から調停を申し立てられた場合には是非,ご相談いただければと考えております。

 次回では,離婚調停を申し立てる裁判所の場所(管轄)のお話をさせていただきます。

2017.12.18

離婚調停について②

離婚調停について②

 <ご相談者様からのご質問>

  離婚調停の大まかな流れについてはわかりました。期日は月に1回しか行われないのですね。調停はだいたい何回くらいで終わるのでしょうか。

 <弁護士からの回答>

  当事務所にご相談に来られる方から「調停は何回で終わりますか。」というご質問をいただくことが多いのですが,法律上何回で調停を終了させなければいけないということは決まっていません。
  今回は,離婚調停の終結の方法についてご説明させていただきながら上記質問にご回答させていただきます。

  前回お話ししたとおり,離婚調停は,当事者がそれぞれ30分ずつ交互に調停委員を介し,離婚に向けた話し合いを行います。1回の期日は2時間程度で終了し,約1か月後に次の期日が設定され,次回期日までの間に,資料を準備したり,相手方からの条件に応じることができるか否かを検討したりします。

  調停の終了の具体的な内容についてですが,話し合いがまとまった場合には①調停成立により,調停調書(裁判所が作成する合意内容を記載した書面です。調停調書については別の機会にご説明させていただきます。)を作成し,離婚が成立して終了となります。他方,話し合いがまとまらない場合には,②不成立(「不調」といいます。)となり,離婚は成立しないまま,調停の手続きが終了することになります。また,申立人において,これ以上調停を続けたくないと考える場合には,③調停を取り下げることで,調停の手続きを終了することができます。また,別の機会にご説明させていただきますが,争点につき裁判官が判決と同じように判断する④調停に代わる審判という方法により調停が終了する場合もあります。以上のように調停の終わり方については大きく分けると①~④の種類がありますが,ほとんどの事件では,①か②,すなわち,調停の成立か不成立により終了します。

  ご質問にあった,調停が何回で終了するかについてですが,先程お話ししたとおり,法律上,調停を何回で終了しなければならないということは決まっていません。調停は話し合いによる解決を模索する手続きであるため,回数を重ねることで,話し合いがまとまる可能性がある場合にはずっと続くことになります。
離婚調停の場合には,当事者が離婚すること自体には応じていたとしても調停の中で他の条件について合意していない場合には,調停は成立しません。そこで,一般的に争点が多い案件ほど,長期化する傾向にあります。

 他方で,調停当初から全く主張が食い違い,話し合いがまとまる余地がない場合には比較的短期間で調停が不成立になります。
 このように,調停が何回で終了するかについては,当該ご夫婦のおかれている状況や,争点の数,相手方がどこまで話し合いに応じる意向があるかによってことなってくるため,「ケースバイケースで異なってきます。」という回答しかできないところではありますが,通常,3~4回の期日を行い,話し合いを続けて行けば,調停が成立する見込みがあるかについては判断が可能かと思われますので,調停に移行することを検討される場合には,だいたい3~4か月程度かかるかもしれないという点を念頭において進められるのがよいのではないかと思います。
 次回では,離婚調停における注意点についてご説明させていただきます。

2017.12.16

離婚調停について

離婚調停について

 <ご相談者様からのご質問>

  夫と離婚したいのですが,いくら話し合っても離婚に応じてくれません。離婚調停という言葉は聞いたことがあるのですが,そもそも調停とはなんですか。

<弁護士からの回答>

 離婚の件が増えている現代では,調停により離婚が成立する件数も一定程度存在します。そこで,これから数回に分けて離婚調停についてご説明させていただきます。
 今回は,はじめに離婚調停の一般的な内容とおおまかな流れについてご説明させていただきます。

 離婚調停とは,正式には夫婦関係調整調停といいますが,夫婦間において離婚の話し合い(協議)ができないときや,うまく進まないときに,裁判所に間に入ってもらい,離婚するかどうかや,離婚に関する条件ついて話し合う手続きのことをいいます。夫婦関係調整調停には,離婚しようという場合ではなく,夫婦関係をやり直したい場合に申立てる調停(「円満調停」ともいいます。)もありますが,離婚したいと希望して調停を申し立てる場合を「離婚調停」と呼んでいます。

  離婚調停の場合,離婚を希望する人が,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(管轄裁判所といいます。調停に関する管轄については,別の機会にご説明させていただきます。)に対し,必要事項を記載した申立書と戸籍謄本等の添付資料を提出し,離婚の調停を申し立てます(調停を申し立てた人のことを「申立人」といい,逆に調停を申し立てられた人のことを「相手方」といいます。)。すると,相手方に申立書が送付され,申立てを行った日から1か月後をめどに第1回目の期日が開かれることになります。

 具体的な調停の進み方についてですが,調停は,裁判所が間に入る点で協議離婚とは異なりますが,あくまで話し合いにより合意しなければ離婚が成立しない点では,協議離婚と同じになります。
 裁判所が間に入るとお伝えしましたが,厳密にいうと,男性と女性の調停委員(弁護士,裁判官等の法曹資格を持っていない一般の方です。元公務員の方などがなられているので,若干年齢が高めの方がなられているのが通常です。)2名が間に入り,夫婦それぞれの話を30分程度ずつ交互に話を聞いていくことになります(申立人と相手方の待合室は別の部屋になっており,相手方が調停委員に話をしているときは,それぞれの待合室で待機していることになります。)。1回の期日では2時間程度で終わり,離婚が成立するか,話し合いが決裂するかが決まるまで何度か期日を重ねて話し合いを重ねていくことになります。
 このように,調停では,当事者同士で面と向かった話し合いをするのでなく(調停で当事者が顔を合わせることは調停が成立する最後の時など限られており,ほとんどありません。),調停委員が夫婦それぞれの話を聞き,離婚やその他の条件について当事者の合意に至ることができるよう話し合いを進めていくことになります(離婚調停では,親権者,養育費,面会交流,財産分与,慰謝料,年金分割等離婚の際に通常決めるべき条件についても同時に話し合うことができます。)。

 離婚調停のメリットは,上記のように,調停員という中立な第三者が間に入るので感情的になってしまい話し合いができないという状況は比較的防ぐことができます(場合によっては,より感情的になってしまう可能性もあるのですが,それについては別の機会でご説明させていただきます。)。また,別の機会にも説明しますが,調停が成立した際に裁判所において作成する調停調書は,以前お話した公正証書と同じように,執行力があり,相手方が債務を履行しない場合には直ちに強制執行を行うことが可能です。
  他方,調停のデメリットとしては,調停の期日は,1月ごとに2時間程度しか実施されないため,1回の期日で集中して充実した協議を行うことが困難であり協議離婚と比べてスピーディーな解決にはそぐわない点と,期日は平日にのみ実施されるため,特に勤務されている男性の場合には調停の期日に出席(出廷といいます。)することが困難となるケースが見受けられます。
  次回からは,離婚調停での終結の方法についてご説明させていただきます。

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