弁護士コラム

2019.02.20

婚姻費用と養育費とは

【ご相談者様からのご質問】

夫からのモラハラ、パワハラが理由で夫との離婚を考えています。ですが、私は現在、専業主婦で働いておらず、子ども1人もおり、別居後や離婚後の生活が不安です。

夫から養育費などお金をもらうことができると聞いたことがありますが、具体的な内容をよく知りませんので教えていただけますか。婚姻費用と養育費は離婚後もどちらももらえるのでしょうか。

【弁護士からの回答】

離婚のために夫婦が別居したとしても、離婚が成立するまでの間は、夫婦であることには変わりはありません。また、未成年のお子さんがいる場合には、別居後も離婚後もお子さんの生活費などは負担していく必要があります。

そこで、今回から複数回にかけて離婚事件における生活費の問題、すなわち、婚姻費用や養育費についてご説明させていただきます。

今回は、婚姻費用と養育費の定義等総論的な内容についてです。

1 婚姻費用とは

婚姻費用とは、夫婦と未成年(未成熟)の子どもの生活費のことを言います。

民法760条では、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定されていることから、夫婦は、婚姻から生ずる費用、すなわち、生活費を分担することになります。

また、民法752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と規定されている以上、夫婦である以上、収入がある方が他の配偶者を扶養する義務を負うことになります。

この点、夫婦や家族が同居している場合には、生活費の負担については問題になることはありません(数は少ないですが、同居しているが生活費を支払わないという場合もゼロではなく、その場合には同居していても婚姻費用が問題になることがあります。)。

もっとも、収入の少ない配偶者や子どもが別居している状況では、別居している状態で、婚姻費用(生活費)の分担について協議を要することになります。

2 養育費について

上記の婚姻費用は、簡単に言うと、収入の少ない方の配偶者と未成熟のお子さんの生活費のことを言いますが、離婚後は婚姻費用ではなく、養育費が問題となります。

すなわち、上記婚姻費用のうちの夫婦の扶養義務については、婚姻期間中のみ発生するものであり、離婚後は、夫婦ではなく、厳しい言い方にはなってしまいますが、他人になるため、元配偶者であったとしても、その配偶者自身の生活費を負担する必要はなくなります。

もっとも、夫婦間の関係は離婚により解消するものの、未成年のお子さんと夫婦との関係は、親の離婚に関係なく続いていくことになります。したがって、夫婦の離婚後は、収入のある配偶者が、未成年者の生活費を養育費という形で支払う必要があります。

ご相談者様の質問にあるように、婚姻費用と別に養育費がもらえるわけではなく、簡単に整理すると、離婚するまでは婚姻費用、離婚後は養育費というように、棲み分けがなされています。

婚姻費用や養育費にまつわる個々の問題については、次回以降でご説明させていただきます。

2019.02.20

面会交流について⑦

【ご相談者様からのご質問】

面会交流を拒否すると、間接強制としてお金を払わなければならないのですね。

ただ、逆を言えば、間接強制のお金だけ払っていれば子どもを相手に会わせなくても済むのですね。

【弁護士からの回答】

面会交流について、合意した内容や、審判で決定した面会交流の内容を頑なに実施しない方は少なからずいらっしゃいます。

これまで何度もお伝えしているとおり、面会交流についてはあくまで子の福祉の観点から実現すべきであるとして裁判所も判断を行っています。また、未成年のお子さんと離れて暮らす非親権者にとって、お子さんとの交流を実現するという利益は法的にも保護に値する利益であると認められています。

したがって、正当な理由なく面会交流を実施しない場合には、上記の間接強制以外の不利益を被る可能性があるため、今回ご説明させていただきます。

1 親権者変更

正当な理由なく、面会交流を拒否し続けることは、お子さんと非親権者の親との交流を阻害し続けていることになるため、親権者の適格性を欠くと判断されてしまったとしてもやむを得ないでしょう。

もちろん、面会交流を拒否したことのみをもって親権者変更が認められるというわけではありませんが、少なくとも、親権者変更の判断において、従前の親権者にとって不利な考慮要素となってしまうことは間違いありません。

2 慰謝料請求

上記のとおり、面会交流を実施することは親の利益として法的な保護に値する利益になります。

したがって、正当な理由なく面会交流を拒否したことにより上記利益を害することになった場合には、親権者害された非親権者の精神的苦痛を慰謝料という形で賠償する義務があります。

どの程度の慰謝料が支払われるかについては、具体的な相場があるわけではないのですが、面会できない期間、お子さんの年齢などを考慮して判断されることになりますが、裁判例では「長男が7歳から10歳に成長する大切な時期に交流できなかった原告(長男の父)の精神的苦痛は相当大きい」などとして、相手方(元妻)らに対し合計100万円の支払い義務を認めたものもがあり、長期間、面会交流を拒否することで、多額の賠償責任を負うことも否定できません。

3 最後に

離婚に伴い、夫婦であった当事者の関係を、離婚後も円満な関係を継続することは原則として難しいと思われますが、夫婦が離婚したとしても、お子さんにとって親であることにはかわりはありません。

親権者の方には面会交流はあくまでもお子さんのために実施するものであるということをきちんと理解して面会交流を実施する必要があります。

もっとも、一度面会交流について合意に至ったのちに、状況が変わり、従前の面会交流を維持すべきでない場合もあります。

その際には、再度面会交流調停などを申し立てる必要があるため、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

2019.02.19

面会交流について⑥

【ご相談者様からのご質問】

妻と離婚したのですが、妻が子どもと会わせてくれないため面会交流の調停を申し立てました。調停でも話し合いがつかずに、審判になり、審判では子どもとの面会交流を認めてもらいました。ですが、審判が出たにも関わらず、妻は、子どもと会わせようとしません。

面会交流を強制的に実現する方法はないのでしょうか。

【弁護士からの回答】

面会交流について、調停で合意した場合や、審判で裁判所が判断した面会交流の条件については、未成年者のおかれた環境等に変化がない場合には、監護親において、お子さんと非監護親との間で面会交流を実施させるべき義務を負うことになります。では、監護親が調停や審判で認められた面会交流を実施させない場合に、強制的に面会交流を実施する方法はあるのでしょうか。

1 強制執行という手段

離婚に関する条件(養育費や財産分与)については、調停で合意した場合や、審判で判断されたには、相手方がすべき義務を怠った場合(養育費を支払わない場合、財産分与を支払わない場合)には、裁判所を通じて、強制的に相手方がすべき義務の履行を実現させることができません。この手続きを強制執行といいます。したがって、養育費や財産分与を支払うべき義務があるにも関わらず支払わない場合には、給料の差押を受けたり、預貯金口座を差し押さえられたり、不動産を差し押さえられ、競売にかけられるなど、強制的に金銭を回収されることになります。

2 面会交流における強制執行

では、面会交流の場合の強制執行の場合にはどのような方法で強制執行が実現されるのでしょうか。

強制執行の方法は2つあり、そのうちの1つの方法として口座を差し押さえたり、不動産を差し押さえることにより、返還を求めている動産(自動車など)を引き渡しを受けるなど、強制執行の目的物を直接譲り受けることで強制執行を実現するという直接強制という方法があります。

もっとも面会交流においてこの直接強制を仮に実行しようとすると、執行官(強制執行を実現する裁判所の職員です)が監護権者の自宅などに赴き、お子さんを連れていき非親権者との面会を実現させるという方法をとることになり、お子さんの福祉を害することになってしまいます。

したがって、面会交流における強制執行については、直接強制ではなく、間接強制という方法がとられることになります。間接強制とは、判決などにより一定の行為を行うよう義務付けられた人(債務者といいます。)が、義務を履行しない場合に、一定の金銭の支払いを強制することで、義務の履行の実現を図る強制執行の方法をいいます。

面会交流の場合には、1回面会交流をさせなかった場合には、金〇万円を払えというような命令がでることになります。

このように、面会交流を正当な理由なく拒否した場合には、間接強制として金銭の支払いを余儀なくされてしまうため、調停で合意した内容や、審判で確定した内容については順守することが必要になります。

2019.02.19

面会交流について⑤

【ご相談者様からのご質問】

3年前に夫と離婚し、子どもの親権者は私になっています。これまで、夫と子どもとの間で面会交流を問題なく実施してきたのですが、今後、私が再婚することになりました。

再婚相手の人は、子どもと養子縁組をしてもらう予定になっています。これまでは、離婚しても父親であることには変わりはないので、面会を認めてきましたが、私も再婚しますし、新しい父親もできるので、面会交流はなしにしてもらいたいと考えているのですが・・・・

【弁護士からの回答】

今回も面会交流制限すべき事由に該当するか否かについてご説明させていただきます。

ご相談者様のように、離婚をする人がいれば再婚する人もいらっしゃるため、お子さんをとりまく環境は変化していくため、面会交流を求める非監護親の方も、お子さん自身の環境の変化についても理解を示すことが必要です。

1 お子さんの自身の環境の変化

例えば、お子さんが小さいとき(3歳、4歳)の離婚をした際に、夫婦間で毎週、土日に面会交流を実施すると合意していたとします。

もっとも、お子さんが大きくなり、小学校や中学校に入った際に、毎週土日に面会交流を実施するということが現実的に困難になるということは明らかでしょう。

このように、お子さん自身の進学等に伴い、従前の面会交流を実現することが困難となった場合には、いったん面会交流について合意していたとしても、一生その合意に拘束されるということはなく、面会交流は制限されてしまうことが一般的です。

面会交流に関しご相談に来られる方からは「いったん合意した以上、どんなことがあっても守ってもらうのが普通ですよね」と聞かれることもあるのですが、以前にもお伝えした通り面会交流はあくまでもお子さんの利益のために実施されるべきものであるため、面会交流を求める親としては、お子さん自身の環境の変化によって面会交流の内容も変えざるを得ないということを理解されておいた方がよいと思います。

2 監護親の再婚やお子さんとの養子縁組

では、ご相談者様の事例のように、監護親が再婚し、お子さんと再婚相手との間で養子縁組が締結された場合には、非監護親との間の面会交流は認められないのでしょうか。

結論から申し上げますと、再婚や養子縁組を行ったとしても、非監護親との間の面会交流が一切認められないということにはならないのが通常です。

再婚や養子縁組をしたとしても、お子さんと、非監護親との間の親子関係がなくなるわけではなく、複雑な環境にはなりますが、お子さんにとっては、非監護親(実父)も再婚相手も(養父)も父親であることには変わりはありません。

したがって、監護親としては、再婚後も非監護親とお子さんとの間で面会交流を実施する必要があります。

もっとも、再婚相手(養父)とお子さんとの親子関係や再婚後の家族関係の構築も必要になってくるため、再婚前と同じような面会交流が実現できるというわけでもありません。

ここで、実父との面会交流と、養父との交流のどちらを優先すべきであるかという点については、法律上どちらが優先すべきであるかという点について決まっているわけではありませんが、再婚当初については、再婚相手との家族関係の構築という点が重視されるため、実父との面会交流については一定程度制限されることになるのが一般的です。 

3 最後に

これまで、何回かにわけて、面会交流を制限すべき事由についてご説明してきましたが、面会交流に関する問題は、父親側母親側のみならず、お子さんが置かれている環境によっても実施すべき面会交流の方法は千差万別であり非常に難しい問題であるため、面会交流についてお悩みの方は是非一度ご相談ください。

2019.02.19

面会交流について④

【ご相談者様からのご質問】

子どもが会いたくないと言っていても会わせなければならないということがあるのですね。少し納得がいかないです。

ただ、うちの夫は、子どもの養育費を一切払ってくれていません。養育費を払わない親に、子どもと面会する権利はありませんよね。

【弁護士からの回答】

今回も、面会交流を制限すべき事由に該当するか否かについてご説明さえていただきます。ご相談者さまのように、「養育費を払わないから面会させない」「面会させないのであれば養育費を払わない」という意見は本当によく聞かれます。

ですが、養育費も面会交流もお子さんの為の問題であるということ忘れてはいけません。

1 非監護親が養育費を払わない場合

これまでご説明したように、裁判所では、面会交流はあくまでお子さんの利益に資する場合には、面会交流をすべきという考え方にたっています。

したがって、たとえ養育費を支払わない親であっても、面会交流が制限される理由はなく、面会を希望すれば原則として面会は認められるということになります。

別の言い方をすれば、面会交流は養育費の支払いの対価ではないということになります。

逆をいえば、監護親が面会交流を認めない場合であっても、養育費を支払うべき非監護親の養育費を支払うべき義務はなくなりません。

2 非監護親の暴力

まず、非監護親が同居期間中に、お子さんに暴力を日常的に振るっており、将来にわたっても暴力が振るわれる可能性が否定できない場合には、面会させることで、お子さんの利益を害しかねないので、面会交流は認められないと判断されることになります。

もっとも、お子さんへの虐待の事実については、きちんと証拠として残しておかなければ、非監護親が虐待の事実はないと主張した場合、単に、監護親の主張のみではその事実を認定することはできないため面会交流を認めるとの判断がなされることは少なくありません。

他方、非監護親が同居中に、監護親に対し暴力を振るっていた場合は、面会交流を制限すべき事由にはなりえますが、ただちに、禁止すべきであると判断されることにはなりません。というのも、監護親にとっては非監護親に対する暴力がなされる恐怖があるため、監護親自身が引渡しに立ち会うことは難しいでしょう。

もっとも、お子さんに対して暴力を振るっていない場合には、お子さんと非監護親を会わせることが直ちに、お子さんの利益を害するとは言い難い状況もあります。

したがって、調停での進め方としては、監護親不在での面会交流の実施を検討することができないかを検討することになります。

具体的にはお子さんが幼い場合には、面会交流を支援する団体(別の機会にご説明さえていただきます。)の利用や、監護親の親(お子さんからすると祖父母)等が引き渡したりすることができないかを検討し、また、お子さんがある程度成長している場合には、お子さん自身が直接非監護親と面会する方法をとることができないかを検討することになります。

2019.02.19

面会交流について③

【ご相談者様からのご質問】

先日、夫と離婚しました。5歳の長男の親権者は私なのですが、夫からは面会交流を求められています。私自身夫とは顔も見たくないので、正直息子とも面会交流をしてほしくありません。

また、息子も「お父さんと会いたい」と積極的に言ってくることもありません。息子も会いたいと言ってこない以上会わせたくないのですが・・・

【弁護士からの回答】

面会交流に関するご相談のなかで、ご相談者様から多く寄せられるご意向が、「相手方に子どもを面会させたくない」ということがあります。そこで、今回から複数回にかけて、面会交流が認められないケースについてご説明させていただきます。

1 はじめに(原則は面会させる方向に)

以前にもお伝えした通り、面会交流は未成年のお子さんの利益のために実施されるものであります。したがって、裁判所としては、親と子が交流することは子の利益に資すると考えています。

したがって、非監護親から面会交流が求められた場合には、原則として認めるべきであるという前提のもと調停や審判が進むことになります。

2 夫に子どもを会わせたくないという意向は?

では、ご相談者様のように、監護親が非監護親に会わせたくないという意向を有している場合はどうでしょうか。

監護親が単に感情的に会わせたくないという理由は、上記子の利益とは関係のないものになってしまうため、単に会わせたくないという理由のみでは面会交流が認められないということにはならないでしょう。

そのような理由のみで調停に臨んだ場合、通常、調停委員や裁判官から会わせる方向で説得されてしまうことになるでしょう。

3 お子さんが会いたくないと言っている場合は?

お子さんが、非監護親と会いたくないと主張している場合、子の利益を考えると、会わせない方向に働くのではないかとも考えられます。

しかし、お子さんの意向を尊重するか否かはお子さんの年齢にかかわってきます。

お子さんが幼い場合には、お子さんは環境に影響されやすく、特に監護親が、非監護親に対し悪感情を持ち合わせている場合、監護親の顔色を窺って、本当は会いたいのに会いたくないと話している場合も少なくありません。

したがって、お子さんが幼い場合には、お子さんの意向についてはそれほど尊重されず、お子さんが会いたくないと言っていても、面会させる旨の審判が出されることもあります。

他方、ある程度の年齢が達しているお子さんの場合には、逆にお子さんの意向が非常に重要な要素となり、お子さんが会いたくないと主張している以上、面会交流すべきでないという審判が出されるということも見受けられます。

では、お子さんが何歳であれば、意向が重要視されるのかという点についてですが、年齢による画一的な基準があるわけではありませんが、一般的には10歳未満のお子さんの場合には、そこまで意向が尊重されないのではないかと思います。

もっとも、お子さんの意向を尊重するか否かについては、単に年齢のみをもって判断するものではなく、実際には、家庭裁判所の調査官がお子さんと面会して、どのような理由で会いたくないと話しているのか、お子さんの状態等を考慮して判断することになります。

次回も、面会交流を制限すべき事情に該当するか否かについてご説明させていただきます。

2019.02.18

面会交流について②

【ご相談者からのご質問】

面会交流についてはいつでも子どもと自由に会える権利ではなく、子どものことを考えなければならないということは理解できました。
では、面会交流の方法はどのようにして決まるのでしょうか。相手方と話し合いで決まらない場合には裁判で決まるのでしょうか。

【弁護士からの回答】

今回は面会交流をどのように実施するかという面会交流の方法がどのように決まるのかという点についてご説明させていただきます。

1 当事者における話し合い

当事者間で離婚すること及び未成年者の親権者について合意に至った際に、非監護親と未成年者との間の面会交流について当事者間で協議する場合があります。
法律上離婚をする際に面会交流について合意ができていなくても、離婚すること及び親権者をどちらかに指定するかについて合意ができていれば離婚すること自体は可能です。
もっとも、面会交流についてはお子さんのための権利であることから、可能であれば離婚の際に当事者間で話し合っておいた方がよいのではないかと思います。
なお、離婚時に面会交流について話し合っていなかったとしても、離婚後に協議することは可能であるため、離婚時に面会について協議しておらず、お子さんと面会したいと考えられている場合にはお気軽にお問合せください。

当事者での面会交流の話し合いについて、合意に至った場合には、後々のトラブルを防ぐために、離婚が成立していないのであれば離婚協議書として、離婚が成立した後であれば、面会交流に関する合意書といった形で書面として残しておいた方が良いでしょう。書面の作成に関しても弁護士にお気軽にご相談ください。

2 調停及び審判

当事者間で面会交流に関する話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所を通じて、面会を実現することになります。面会交流に関しては、法律上、まず調停を申し立てることが必要になります(調停前置主義)。
調停においては、父母双方の希望する面会交流の条件について話し合いを行います。場合によっては、家庭裁判所の調査官という、子の監護等に関する専門の職業の方に、面会の様子などを見てもらう調査などを実施することもあります。
調停において話し合いが成立すれば、地話し合った内容をまとめた書面(調停調書)を作成することになります。

調停でも話し合いがまとまらない場合には、審判といって、家庭裁判所の裁判官が、証拠や調査官の調査結果に基づき、どのように面会をすべきであるのかについて、審判(判決と同じです。)にて判断することになります。

2019.02.18

面会交流について①

【ご相談者様からのご質問】

妻との離婚を考えています。自分は仕事人間で、基本的に家庭のことは妻にまかせていたため、息子(5歳)の面倒は基本的に妻がみていました。
私自身で息子を育てることは困難であるため、親権者は妻でよいかと思っているのですが、親権者でなくても息子と会えると聞きました。面会交流というのですよね。
会いたいときにいつでも自由に息子と会えることができるのであれば、問題ありません。

【弁護士からの回答】

これまで、離婚に伴う未成年者の親権者についてご説明させていただきました。
今回から数回に分けて、未成年者との間の面会交流についてご説明させていただきます。今回は、面会交流の内容等、総論的な内容をご説明させていただきます。

1 面会交流とは

面会交流とは、未成年者の子を養育・監護していない親(「非監護親」といいます。)と未成年者の子とを面会させることにより、子と未成年者との交流を行うことをいいます。
離婚後の面会交流のみならず、離婚する前の段階で面会交流が問題になることもあります。
民法766条第1項には「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と規定されています。

「子の監護をすべき者」とは親権者のことであり、「子の監護に要する費用の分担」については別の機会にご説明する養育費のことを指します。そして、「子の面会及びその他の交流」が面会交流について規定しています(面会交流は別名「面接交渉」ともいいますが、内容は同じです。)。

2 面会交流は「親の権利」?

弁護士が作成する色々な様々ブログを見ると、面会交流については、「親の権利」であるとしているものも見かけますが、法律上、面会交流を親の権利だと明確にうたっている規定はありません。
また、権利であるという点を強調しすぎると、非監護親が会いたいときに、好きなだけ面会できるということにもなりかねません。面会交流が親の権利であるかそうでないのかという点について議論があるとは確かなのですが、私としては、面会交流はあくまでも、お子さんのために行われるものであるという点が非常に重要であると考えています。
民法766条にも「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定されていることから、面会交流の実施の際にもあくまでも子どものために行うものであるという意識が重要になります。 

したがって、面会交流については、基本的に認められるものですが、ご相談者様がご主張するように、親が会いたいときにいつでも自由に会えるというものでもありません。
次回からは面会交流の具体的な内容についてご説明させていただきます。

2019.02.18

親権者にこだわる理由について

【ご相談者様からのご質問】

妻と離婚を考えています。妻との間には、4歳の息子がいるのですが、息子の親権はどうしても私が欲しいです。
妻は専業主婦で、私は土日以外、基本仕事で家にはいません。また、私の実家は他県で離れており、私の代わりに息子の面倒を見てくれる人もいない状況です。
このような状況では、自分が親権者になることは不利な状況ではあるとはわかっているのですが、どうしても親権は欲しいです。これだけ親権を欲しいということを主張すればどうにかならないでしょうか。

【弁護士からの回答】

お子さんの親権について主張されるご相談者様の中にも、「これだけ、親権者になりたいと思っている」ということを熱く語られる方がいらっしゃいます。おそらく、その方は、どれだけ親権者になりたいかという点が、親権者の判断に大きく左右するのだと考えているのでしょう。
しかし、これまでもご説明してきたとおり、親権者の判断はあくまで「子の福祉」を基準に判断するものであることを親としてきちんと理解する必要があります。
そこで、今回は、親権者になりたいという思いや、親権者に固執する理由、必要性についてお話しさせていただきます。

1 親権者の判断要素と親権者の思い

これまで、何度もご説明しているように、「子の福祉」を基準に判断します。簡単に言えば、父親、母親のどちらの監護下で生活するのが、そのお子さんにとって適しているかという点を判断します。
そのような判断要素の中で、確かに、未成年者に対する愛情の深さについては、考慮要素自体になることには争いはありません。しかし、一番大事な要素としては、生活環境がどのような環境であるのかであるため、環境が悪いときに、どれだけ愛情があると主張したとしても、親権者になれるわけではありません。
したがって、調停等においては、自分が親権者としてふさわしいと思う事情を主張するときに、「どれだけ、自分がお子さんを想っているか」という点を主張するよりも、「これだけの環境を確保することができるので、こちらの環境の方が子どもの福祉の観点から適切である」という主張を行う方が効果的であると言われています。

したがって、ご相談者様の事例では、主たる監護者は相手方の奥さん(母)であり、その監護状況が問題ない場合には、親権者について争ったとしても、相手方に指定される可能性が高いでしょう。

2 親権者に固執する理由

ご相談者様の事例のように、弁護士からも客観的にみて、親権者は相手方になるのではないかと思われる状況でも、親権に固執されるご相談者は少なくありません。
しかし、そのようなご相談者様のお話を聞いてみると、親権についてよく理解をしておらず、とりあえず、親権者という名目が欲しいという意識の方も多く見受けられます。
よくよく話をきくと、現実的に、お子さんを養育することは困難である場合や、親権者でなくなると、子どもと触れあることができないと考えている方がいらっしゃるようです。
親権者でなくとも、お子さんの親であることには変わりはありません。別の機会にご説明させていただきますが、親である以上、お子さんと面会交流等で触れ合うことは親やお子さんの権利であるため、親権者でなくともお子さんと触れ合うことは十分にできるのです。

ご相談者様の事例のように、ご相談者様の元よりは相手方の監護下の方がお子さんの健全な養育には適切な環境である場合、本当にお子さんのことを考えるのであれば、監護養育については、相手方へ任せ、面会交流などによりお子さんと父親として接することでお子さんの成長を見守るということも選択肢として考えるべきではないかと考えています。
客観的に見て、相手方が親権者として適切である状況であるにもかかわらず、親権を主張するとなると、どうしても相手方の生活環境やはたまた人格等を攻撃してしまうことも少なくありません。
そうなると、離婚後、相手方が親権者となった後、お子さんとの面会交流をスムーズに行えなくなる可能性もあります。

離婚により、夫婦としての関係は終了しますが、お子さんの親としての関係まで完全に断ち切ることは通常困難です。したがって、未成年のお子さんがいらっしゃる場合には、離婚後の関係も考慮して離婚を進める必要があります。
離婚後のお子さんとの関係を考えて離婚を進めるためにも、是非一度、弁護士にご相談ください。

2019.02.18

不貞行為と親権者について

【ご相談者様からのご質問】

妻と結婚して20年になります、娘が1人おり17歳です。1年程前から妻の様子がおかしかったのですが、先日、妻が他の男性と不貞行為を行っていることわかりました。
自分を裏切った妻とは婚姻関係を継続していくことは考えられないため、離婚を考えていますが、娘の親権については、絶対に渡したくありません。
不貞行為を行っている人は親権者としてふさわしくはないと思います。

【弁護士からの回答】

これまで、有責配偶者からの離婚請求についてご説明させていただきましたが、今回は、少し違う側面として、不貞行為と親権者の関係についてです。
ご相談者様の事例のように不貞行為をした配偶者との間で親権について問題になるケースは少なくありません。
そこで、今回は、不貞行為が親権者の判断に及ぼす影響についてご説明させていただきます。

以前にもお伝えした通り、親権者を夫と妻のいずれとすべきかについては、「子の福祉と利益」を基準に判断することになります。具体的には父母の属性、監護状況、子の心身の状態や場合よっては子の意向等を総合的に考慮して判断していくことになります。
したがって、不貞行為を行ったことが親権者としての適格性を欠くというふうにダイレクトにつながるものではありません。
ご相談者様のように、「不貞を行っているのだから親権者にはなれない」というようなロジックは働かないため注意が必要です。

もっとも、不貞行為を行っていたことにより、上記親権者の判断に影響を及ぼす場合があります。
例えば、夜に幼い子をおいて不貞相手のところに頻繁に出向いていたような場合には、育児放棄と同視し得るため、不貞行為を行ったということよりも、育児を行っていないとして、不利に判断されることになると思われます。
ご相談者様の事例では、未成年者のお子さんが17歳とある程度自立されているため、育児放棄とまで認められるかについては、不貞行為の内容にもよりますが、微妙なところではないかと思います。

また、未成年者のお子さんが、親が不貞行為を行っていることを知っていた場合には、不貞行為を行っている親に対する悪感情から、未成年者自身が拒絶する場合も少なくなりません。親権者の判断要素において、年齢が一定程度(12歳程度)になれば、未成年者自身の意向が非常に重視されることになります。
したがって、ご相談者様のケースでも、娘さん自身が、母親のことを拒絶している場合には、親権者として父であるご相談者様が指定される可能性も十分に考えられます。
他方で、娘さんが母親と一緒にいたいという意向が強い場合には、仮に、母親が不貞行為を行っていたとしても、ご相談者さまが親権者に指定される可能性は低くなるのが一般的です。
 
このように、親権者の判断は、相手方が不貞行為を行っているからといった単純な理屈で判断されるものではないため、親権者の判断についてお悩みの方は、是非一度、弁護士にご相談ください。

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