<ご相談者様からのご質問>
夫が以前,他の女性とホテルに入っていく様子を目撃したのですが,いきなりのことだったので,気が動転してしまい,写真や動画はありません。証拠がないので泣き寝入りなのでしょうか。
<弁護士からの回答>
結論から言うと,どんな事件であっても全く証拠が提出されない事件はありません。しかし,証拠の中身がとても大事であって,証拠がたくさんあるから勝てる,証拠が少ないから勝てないということはありません。今回と次回にかけて証拠の種類と証明力についてご説明させていただきますが,今回は,証拠の種類についてご説明させていただきます。
証拠には大きく分けると,①物的証拠(物証)と②人的証拠(人証)の2つがあります。
物証とは,文章や物など,ある事実を証明しようとする手段がものである場合をいいます。
民事訴訟では物自体を証拠として提出することはほとんどなく,物自体を撮影し,写真撮影報告書という書面を提出することになります。したがって,民事訴訟における物証の大半は書証ということになります(録音したものに関してはCD-R等の媒体を提出するとともに,録音内容を反訳した書面(「反訳書」といいます。)を提出することになります。
書証にはついては,証明しようとする事実と関係性が認められるものであれば全て証拠になりえます。不貞行為の事実,期間,場所,回数等を認めた念書だけでなく,事件が発生してから原告本人が自ら見たり聞いたりしたことを作成した書面(陳述書といいます。)も証拠自体にはなりえます。
人証(「にんしょう」といいます。)とは,証明しようとする手段が物ではなく人発言などである場合を言います。人証の種類としては,訴訟の当事者(原告,被告)以外の証人に話を聞く証人尋問と,訴訟の当事者から話を聞く当事者尋問があります。
ご相談者様は,ご主人の不貞に関する証拠が何もないとおっしゃられていますが,たとえば,ご相談者様が毎日日記を作成していたり(日記を書証として提出),不貞を目撃したことを誰かにメールしていたり(メールを印刷若しくは写真に収めて書証として提出),電話で話していた場合(知り合いの人の陳述書を提出若しくは,証人として発言してもらう)など,考えられる証拠はたくさんあります。
また,そういったものが何一つなくても,ご相談者様ご自身の陳述書や法廷での証言も証拠になるのです。したがって,証拠が全くないという事件はほとんどないといっていいでしょう。もっとも,証拠があるから勝てるというわけではありません。次回では,証拠の証明力についてご説明させていただきます。