
突然、大切な家族が逮捕された場合、その後の対応に不安を感じるのは当然のことです。特に、逮捕後に本人と連絡が取れない状況では、どのように行動すればよいのか分からず、戸惑ってしまうことも多いでしょう。本記事では、家族が逮捕された場合に直面しがちな「本人と連絡が取れない」という問題について、弁護士がどう対応するか、家族として何をすべきかを詳しく解説します。
第1章 逮捕された本人と連絡がとれない理由
1-1 逮捕直後は家族でも面会できないことが多い
家族が逮捕されたと知ったとき、多くの方は「すぐに警察署に行けば会えるのではないか」と考えます。
しかし、実際には、逮捕直後の段階で家族が本人と面会できるとは限りません。
むしろ、逮捕されてから勾留が決まるまでの初期段階では、家族による面会が認められないことが一般的です。
逮捕後の刑事手続では、警察が逮捕してから検察官へ送致するまでに原則として48時間以内、その後、検察官が勾留請求をするかどうかを判断するまでに原則として24時間以内という時間制限があります。
つまり、逮捕後、警察が検察官へ送致するまでの時間と、検察官が勾留請求をするか判断する時間を合わせて、最大72時間程度が重要な初期段階となります。
この間は、事件の内容確認や取調べが進められるため、家族との面会が認められないことが多いです。
家族としては、「本人は無事なのか」「何を疑われているのか」「こちらから何かできないのか」と不安になるのが当然です。
しかし、逮捕直後に連絡がとれないこと自体は、制度上起こり得る状況です。
そのため、「本人が連絡してこないから何か隠しているのではないか」「家族を避けているのではないか」と考える必要はありません。
本人自身も、外部と自由に連絡できない状況に置かれていることが多いのです。
1-2 接見禁止が付くと家族との面会や手紙も制限される
逮捕から勾留に進んだ後であれば、通常は家族との面会が認められる可能性があります。
しかし、事件の内容によっては、裁判所が「接見禁止」という処分を付けることがあります。接見禁止とは、弁護士以外の人との面会や手紙のやり取りを制限する命令です。
接見禁止が付くと、たとえ配偶者、親、子どもであっても、本人と面会できないことがあります。警察署の窓口に行っても、「接見禁止が付いているため面会できません」と言われてしまいます。
接見禁止は、主に次のような事件で付くことがあります。
・本人が容疑を否認している事件
・証拠隠滅の可能性があると判断されている事件
・薬物事件や組織的な事件
・関係者との口裏合わせが疑われる事件
もっとも、接見禁止が付くかどうか、どの範囲で制限されるかは、事件の内容や捜査状況によって異なります。すべての事件で必ず接見禁止が付くわけではありません。
ただし、家族からすれば、接見禁止が付いているかどうか自体も分かりにくく、
「なぜ会えないのか」「いつになれば会えるのか」が見えないまま時間が過ぎてしまいます。
このような場合には、弁護士を通じて本人の状況を確認することが重要になります。
1-3 スマートフォンや電話を本人が自由に使えない
逮捕された本人と連絡がとれない大きな理由の一つが、スマートフォンや電話を自由に使えないことです。
逮捕されると、本人が持っていたスマートフォン、財布、鍵、身分証などの所持品は、
警察に預けられることになります。スマートフォンについては、事件との関係で証拠品として扱われる場合もありますし、証拠品でない場合でも、留置中に本人が自由に操作することは通常できません。
そのため、本人が家族に電話をかけたり、LINEやメールで連絡したり、SNSで状況を伝えたりすることはできません。
家族の側からすると、「なぜ一言も連絡してこないのか」と感じるかもしれません。
しかし、本人が連絡したくても、物理的に連絡手段を使えない状態に置かれている可能性が高いのです。
特に、普段からスマートフォンで連絡を取り合っているご家族ほど、急に既読が付かなくなったり、電話がつながらなくなったりすると強い不安を感じます。
このように、逮捕後に連絡がとれないことは、本人の意思というよりも、刑事手続上の制限によるものと理解しておく必要があります。
第2章 警察への問い合わせで分かること・分からないこと
2-1 収容先や安否を確認できる場合がある
家族が逮捕された可能性がある場合、まず気になるのは「本人がどこにいるのか」という点です。警察から家族に連絡が入っていれば、まずは連絡元の警察署に本人が収容されているかを確認することになります。
その場合は、警察署の代表番号に電話し、留置係などに取り次いでもらうことで、面会や差し入れの可否を確認できることがあります。
警察へ問い合わせる際には、次の情報を整理しておくとよいでしょう。
・本人の生年月日
・本人との関係
・警察から連絡があった日時
・心当たりのある事件や場所
・本人の住所や勤務先
ただし、電話では本人確認が難しいため、警察が詳細を教えてくれないこともあります。
実際に警察署へ行き、身分証明書を提示することで、収容の有無や差し入れの可否などを教えてもらえる場合もあります。
もっとも、警察から得られる情報には限界があります。
警察に問い合わせれば事件の全体像が分かる、というわけではありません。
2-2 事件の詳しい内容や本人の言い分は教えてもらえない
警察への問い合わせで、家族が最も知りたいのは、「本人は何をしたと疑われているのか」「本人は認めているのか、否認しているのか」「今後どうなるのか」という点だと思います。
しかし、警察が家族に対して、事件の詳細や取調べの内容、本人の供述内容を詳しく説明することは通常ありません。
たとえば、次のような情報は、家族であっても教えてもらえないことが多いです。
・被害者の氏名や連絡先
・本人が容疑を認めているかどうか
・取調べで何を話しているか
・証拠がどの程度あるか
・今後、勾留されるかどうか
・起訴・不起訴の見込み
これは、捜査の秘密を守る必要があるためです。
また、家族を通じて関係者に情報が伝わり、証拠隠滅や口裏合わせにつながることを防ぐ
目的もあります。「家族なのに教えてもらえないのか」と感じるかもしれません。
しかし、刑事事件では、家族であっても捜査情報を自由に知ることはできません。
そのため、警察への問い合わせだけで本人の状況を把握しようとすると、どうしても限界があります。
2-3 どこの警察署にいるか分からない場合の確認方法
本人が逮捕されたらしいものの、どこの警察署にいるか分からないというケースもあります。
この場合は、まず次のような警察署に問い合わせることが考えられます。
・事件が起きたと思われる場所を管轄する警察署
・本人の勤務先や学校の近くの警察署
・警察から着信があった番号の警察署
問い合わせる際には、「家族の〇〇と連絡がとれず、逮捕された可能性があるため、
収容の有無を確認したい」と丁寧に伝えるとよいでしょう。
ただし、警察署によって対応は異なります。電話で収容の有無を明確に教えてもらえないこともありますし、個人情報や捜査上の理由から回答を控えられる場合もあります。
このようなときも、弁護士に相談することで、収容先の確認や今後の対応について助言を受けられる可能性があります。
第3章 逮捕後に本人の状況を確認するには弁護士の接見が重要
3-1 弁護士であれば接見禁止中でも本人と会える場合がある
逮捕されて本人と連絡がとれない場合、状況を確認するために重要になるのが、弁護士による接見です。
接見とは、弁護士が逮捕・勾留されている本人と面会し、事件の内容や本人の状況を確認することをいいます。
刑事事件では、弁護人または弁護人になろうとする弁護士は、原則として、立会人なく本人と面会し、書類や物の授受をすることが認められています。接見禁止が付いている場合でも、弁護士との接見は通常、家族との面会とは別に扱われます。
そのため、家族が会えない状況でも、弁護士であれば本人と接見し、状況を確認できる場合があります。
ただし、弁護士の接見についても、捜査の必要性から日時や場所などが調整されることはあります。
3-2 本人の状況や家族への伝言を確認できる
弁護士が接見を行うことで、家族が知りたい情報を一定程度確認できる可能性があります。
たとえば、弁護士は本人から次のような内容を聞き取ります。
・逮捕された経緯
・容疑を認めているか、否認しているか
・取調べでどのような対応をしているか
・家族に伝えたいこと
・職場や学校に連絡してほしいこと
・差し入れてほしい物
・今後の弁護方針に関する希望
家族にとっては、「本人が無事なのか」「何を考えているのか」「家族に何を求めているのか」が分からない時間が一番つらいものです。
弁護士が接見して、「本人は落ち着いて話せていました」「体調に大きな問題はなさそうです」「家族にこのように伝えてほしいと言っていました」と報告できれば、ご家族の不安は大きく軽減されます。
もちろん、弁護士には守秘義務があるため、本人が家族に伝えないでほしいと話した内容まで無断で伝えることはできません。しかし、本人の了解を得た範囲で、家族に必要な情報を共有することは可能です。
3-3 取調べへの対応を早い段階で助言できる
弁護士の接見が重要なのは、家族への情報共有だけではありません。
逮捕直後の本人は、強い不安と緊張の中で取調べを受けることになります。何を話してよいのか、黙っていてよいのか、調書に署名してよいのか分からないまま、捜査機関の質問に答えてしまうこともあります。
特に注意が必要なのは、供述調書です。
供述調書とは、取調べで話した内容を警察官や検察官が書面にまとめたものです。
内容を十分に確認しないまま署名・押印してしまうと、後から「本当はそういう意味で言ったわけではない」と主張することが難しくなることがあります。
弁護士は、接見の場で次のような助言を行います。
・供述調書を確認する際の注意点
・分からないことを無理に認めないこと
・事実と違う内容には署名しないこと
・取調べで不当な誘導があった場合の対応
・今後の見通しと防御方針
逮捕直後の対応は、その後の処分や裁判に影響することがあります。
だからこそ、できるだけ早い段階で弁護士が本人と接見し、適切な助言をすることが大切です。
第4章 家族が本人のためにできる具体的な対応
4-1 現金や衣類などの差し入れを準備する
本人と直接連絡がとれなくても、家族ができる支援はあります。その一つが差し入れです。
留置場での生活は制限が多く、本人にとって精神的にも身体的にも負担が大きいものです。家族から必要な物が差し入れられることは、本人にとって大きな支えになります。
差し入れとして検討されることが多いものは、現金、衣類、眼鏡、書籍などです。
現金は、本人が留置場内で日用品などを購入するときに必要になるため、差し入れができると本人も役立ちます。
衣類については、警察署によって受け入れ基準が異なりますが、紐付きのパーカーやズボン、金具の多い服、フード付きの服などは受け取ってもらえないことがあります。
自傷防止などの観点から制限されるためです。
差し入れに行く前には、必ず警察署の留置係に連絡し、差し入れ可能な物、受付時間、必要な身分証明書などを確認しておきましょう。
4-2 職場や学校への連絡は慎重に行う
逮捕によって本人が仕事や学校を休むことになった場合、職場や学校への連絡をどうするかは非常に悩ましい問題です。
何も連絡しないまま無断欠勤・無断欠席が続けば、本人の社会生活に大きな影響が出る可能性があります。一方で、逮捕された事実を不用意に伝えてしまうと、職場や学校での立場が急速に悪化することもあります。実務上は、逮捕直後の段階では、まず詳細を伏せた形で欠勤・欠席の連絡をすることがあります。
たとえば、次のような表現が考えられます。
・一身上の都合により、しばらく出勤が難しい状況です。
・詳細が分かり次第、改めてご連絡いたします。
ただし、勤務先との関係、本人の職種、事件の内容、報道の可能性などによって、適切な対応は変わります。
特に、勤務先に対してどこまで説明するかは慎重に判断する必要があります。
弁護士に相談し、今後の身柄拘束の見通しを踏まえて、説明内容を検討することが望ましいです。
4-3 証拠隠滅を疑われる行動は避ける
家族が本人を心配するあまり、善意で動いたことが、結果的に本人に不利益を及ぼすことがあります。
特に避けるべきなのは、証拠隠滅を疑われる行動です。
たとえば、本人のスマートフォンやパソコンを勝手に操作する、メッセージや写真を削除する、関係者に連絡して口裏合わせのように受け取られるやり取りをする、被害者に直接連絡するなどの行動は危険です。
家族としては、「本人のために何かしたい」という気持ちから動いているかもしれません。しかし、捜査機関から見れば、証拠隠滅や関係者への働きかけと評価される可能性があります。その結果、接見禁止が付いたり、勾留が長引いたり、本人の立場が悪くなったりするおそれがあります。
被害者への謝罪や弁償についても、家族が直接行うのではなく、弁護士を通じて慎重に進めるべきです。被害者側が不安や怒りを感じている段階で不用意に接触すると、かえってトラブルが大きくなることがあります。
第5章 早期釈放や処分軽減のために弁護士ができること
5-1 勾留を避けるための活動を早期に行う
逮捕された本人のために弁護士が行う重要な活動の一つが、勾留を避けるための働きかけです。
勾留とは、逮捕後も引き続き身体拘束を続ける手続です。勾留が認められると、原則10日間、さらに延長されると最大でさらに10日間、身体拘束が続く可能性があります。
長期間仕事や学校を休むことになれば、本人の社会生活への影響は大きくなります。
家族の生活にも負担が生じます。
弁護士は、検察官や裁判官に対して、次のような事情を主張し、勾留を避けるための活動を行います。
・住所や勤務先が安定していること
・家族が身元を引き受ける意思を持っていること
・証拠隠滅のおそれが小さいこと
・被害者や関係者に接触しない体制を整えていること
・本人が取調べに応じる意思を示していること
勾留を避けられれば、本人は早期に釈放され、在宅事件として捜査が進む可能性があります。
もっとも、すべての事件で勾留を避けられるわけではありません。
事件の内容、証拠関係、本人の生活状況、前科前歴の有無などによって判断は変わります。
それでも、逮捕直後に弁護士が動くことで、早期釈放の可能性を高めるための準備ができます。
5-2 家族が身元引受人として協力する
早期釈放を目指すうえで、家族の協力が重要になることがあります。
特に、家族が身元引受人となり、本人を監督する意思を示すことは、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいことを説明するうえで有利な事情になる場合があります。
身元引受人とは、本人が釈放された後、生活状況を見守り、必要に応じて本人に注意を促す立場の人です。刑事事件で身元引受人になる場合には、単に「家族だから引き受ける」というだけでなく、具体的にどのように本人を監督するかを整理することが大切です。
たとえば、次のような事情を整理します。
・家族と同居するか
・仕事や学校にどう復帰するか
・被害者や関係者に接触しないようどう管理するか
・再発防止のために家族がどのように関わるか
・本人の通院や生活改善が必要な場合にどう支えるか
弁護士は、これらの事情を踏まえて身元引受書などを作成し、裁判官や検察官に提出することがあります。
家族の協力体制が具体的であればあるほど、「釈放後も適切に生活できる」という説明がしやすくなります。
5-3 被害者がいる事件では示談交渉を進める
暴行、傷害、窃盗、痴漢、交通事故など、被害者がいる事件では、示談交渉が重要になることがあります。
示談とは、被害者に謝罪し、被害弁償や慰謝料の支払いなどについて合意することです。
被害者から許しを得られたかどうかは、処分の判断に影響することがあります。
ただし、本人は逮捕されているため、自分で被害者と連絡を取ることはできません。
また、家族が直接被害者に連絡することも、慎重に考える必要があります。
被害者側が連絡を望んでいない場合や、感情的な対立が強い場合、家族からの連絡がかえって負担になることがあります。場合によっては、「圧力をかけられた」と受け取られるおそれもあります。
そのため、示談交渉は弁護士を通じて行うことが望ましいです。弁護士であれば、被害者の意向を尊重しながら、謝罪の意思や被害弁償の提案を冷静に伝えることができます。
示談が成立すれば、早期釈放や不起訴処分に向けた事情として考慮される可能性があります。
ただし、示談が成立すれば必ず不起訴になる、必ず釈放されるとまではいえません。
事件の内容や証拠関係によって判断は変わります。
だからこそ、過度な期待を持つのではなく、弁護士と相談しながら現実的な見通しを確認することが大切です。
第6章 逮捕されて連絡がとれないときは早めに弁護士へ相談を
家族や大切な人が逮捕され、本人と連絡がとれない状況になると、ご家族は強い不安を抱えることになります。電話がつながらず、警察に問い合わせても詳しい説明を受けられず、面会もできないとなれば、「今、本人に何が起きているのか」と考え続けてしまうのは当然です。
ですが、逮捕直後の対応は、その後の身柄拘束の長さや処分に影響することがあり、ご家族だけで判断しようとすると、どこまで何をしてよいのか分からず、かえって本人に不利益な行動を取ってしまうこともあり得ます。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、刑事事件に関するご相談に対応するとともに、弁護士、社会保険労務士、税理士、司法書士、行政書士などが連携するワンストップ体制により、事件後に生じる生活面・職場面の不安にも幅広く対応できる体制を整えています。那珂川オフィスは、福岡県那珂川市および周辺地域に根ざした法律相談の窓口として、ご家族の不安に寄り添いながら、必要な対応を一つずつ整理してまいります。
逮捕されて本人と連絡がとれないときは、時間が経つほど不安が大きくなります。
状況が分からないまま悩み続けるのではなく、まずは弁護士に相談し、本人の状況を確認することから始めてください。
専門的な対応が必要な場合は、私たちNexill&Partnersグループへお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。















