弁護士コラム

2026.04.22

外国籍の配偶者と離婚をする際の親権・面会交流はどう決める?子どもの国外移動リスクについても弁護士が解説


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外国籍の配偶者と離婚をする際の親権・面会交流はどう決める?子どもの国外移動リスクについても弁護士が解説

 

外国人との離婚では、離婚そのもの以上に、子どもの親権や面会交流に加え、「どの国で子どもを育てるのか」といった点が大きな争点になりやすいといえます。特に、相手が海外に住む可能性がある場合や、子どもを国外に連れて行く話が出ている場合には、深刻な対立に発展する可能性があります。この記事では、外国籍の配偶者との離婚において話し合いだけでは解決が難しくなりやすい、親権・面会交流・子の国外移動リスクについて、調停や裁判の実務も踏まえながらポイントを整理します。

第1章 外国人との離婚で親権はどう決まる?日本のルールと判断の考え方

1-1 どの国の法律で親権を判断するのか

国際離婚において、子どもの親権をどの国の法律に基づいて決めるべきかという問題は、法律用語で準拠法(じゅんきょほう)の決定と呼ばれます。日本では法の適用に関する通則法という法律にそのルールが定められています。
原則として、子どもと父母に共通する本国法(国籍)がある場合にはその国の法律が適用されますが、夫婦の国籍が異なり、子どもが二重国籍であるようなケースでは、子どもが実際に生活の基盤を置いている場所の法律が優先されることが一般的です。
したがって、日本で生活している家族であれば、相手が外国籍であっても日本の民法に従って親権を判断することになります。

1-2 家庭裁判所が重視する「子どもの利益」とは何か

日本の家庭裁判所が親権者を指定する際、最大の基準となるのが「子どもの利益」です。これは、どちらの親が親権者になることが、子どもの心身の健やかな成長にとって望ましいか、という視点です。
親権の獲得には、経済力がある方が有利と思われがちですが、実際にはそれだけで決まるわけではありません。親権者の決定は、これまでの育児への関わり方、子どもとの情緒的な結びつき、現在の生活環境の継続性、そして将来にわたって安定した養育ができる体制が整っているか、といった多角的な要素を総合して判断されます。さらに、子どもの年齢によって、どの事情をどの程度重視するかは変わるため、年齢も重要な前提事情として考慮されます。

1-3 共同親権が導入されても注意が必要?実務で気をつけるべき点

これまで日本の民法では、離婚後は父母のどちらか一方が親権者となる単独親権のみが認められてきました。しかし、2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の共同親権が導入され、父母の協議によって共同親権か単独親権かを選択できるようになりました。
もっとも、共同親権が常に選ばれるわけではなく、実務上は単独親権が認められる場面も引き続き想定されます。
この点、国際離婚の実務においては、相手方の国の制度との違いに引き続き注意が必要です。例えば、欧米諸国の多くでは共同親権が原則とされているため、日本で単独親権が認められた場合であっても、相手国においてはもう一方の親の関与が十分に確保されていないと評価される可能性があります。
将来的に子どもを連れて相手の母国へ行く可能性がある場合は、日本の法律上の結論がそのまま海外で受け入れられるとは限らない点について留意しておく必要があります。

第2章 親権で揉めたときに見られるポイント|実務で重視される5つの事情

2026年4月1日施行の法改正により、調停や裁判における親権の判断では、まず父母が共同で親権を行使できる状況にあるかが検討され、そのうえで具体的な事情が総合的に考慮されるようになりました。したがって、これらの事情は、単にどちらの親が主として子を養育するかだけでなく、父母が協力して子の養育に関与できるかという観点からも評価されることになります。以下では、実務上特に重視される代表的な事情について整理します。

2-1 これまで誰が子どもを育ててきたか(監護実績)

親権争いにおいて最も重視されるのが「継続性の原則」です。これは、これまで主に子どもの面倒を見てきた者(監護親)が、今後も一緒に暮らして育てるのが子どもにとって心理的な負担が少ないという考え方です。
具体的には、日々の食事の用意、入浴、寝かしつけ、学校や保育園の送り迎え、病院への通院といった子どもの生活全般にどの程度関与してきたかが判断の対象となります。特に子どもが幼い場合には、生活の連続性や安心感が重視されるため、この監護実績がより大きな意味を持つ傾向があります。
国際離婚の場合には、日本で生活する子どもの環境に適切に対応できているかという点も併せて検討されます。例えば、日本語での意思疎通が日常生活に支障なく行われているか、学校生活や地域での生活に無理なく関与できているかといった事情は、調停や裁判においても評価の対象となることがあります。

2-2 今後の生活環境は安定しているか(住居・学校・生活基盤)

離婚後の住居が確保されているか、転校を伴う場合に子どもへの影響が過度にならないかなど、生活基盤の安定性も重要な判断要素です。特に学齢期の子どもについては、学校や友人関係といった現在の生活環境を維持できるかどうかが重視される傾向があります。
そのため、外国籍の親が将来的に母国へ子どもを連れて帰ることを希望している場合には、現地での生活環境や教育体制、支援の有無などについても具体的な裏付けが求められることになります。

2-3 子どもの意思はどこまで考慮されるのか(年齢との関係)

子どもの年齢が上がるにつれて、本人の意思はより重く受け止められるようになります。実務上、おおむね10歳前後から子どもの意向が確認され、15歳以上になるとその意思が判断に大きく影響する場面も少なくありません。
家庭裁判所では、調査官が子どもと面談を行い、どちらの親と暮らしたいかだけでなく、その理由や日常の関係性、生活状況を把握します。
国際離婚の場合には、子どもがどちらの親と暮らしたいかという意思に加えて、どの国で生活することになるのかという点も問題となるため、その意思の内容が現実の生活環境とどのように結びついているかも踏まえて検討されます。

2-4 日本で育てるか、海外で育てるかという選択の考え方

国際離婚において特徴的な論点が、子どもをどの国で育てるかという問題です。この点については、言語、教育環境、医療体制、親族の支援など、複数の要素を踏まえて比較検討されます。特に学齢期以降の子どもについては、教育言語の変更や学習環境の違いが大きな影響を与える可能性があるため、その適応可能性や将来への影響が慎重に考慮されます。
一方で、幼い子どもの場合には、どの環境で安定した養育が継続できるかという観点がより重視される傾向があります。

2-5 別居親との面会にどれだけ配慮できるか(協力姿勢)

もう一方の親と子どもの関係をどのように維持できるかという点も、親権者の適格性を判断する要素の一つです。他方の親との面会交流に対して協力的であるかどうかは、子どもの健全な成長にとって重要と考えられているからです。
特に、2026年4月1日に施行された法改正により、父母が協力して子の養育に関与できるかという点は、これまで以上に重要な判断要素として位置づけられています。そのため、合理的な理由なく、他方の親と子どもとの交流を一方的に制限する態度は、調停や裁判において不利に評価されやすくなります。
特に国際離婚の場合には、面会交流が国内で完結せず、海外との往来やオンラインでのやり取りを前提とする場面が生じることがあります。こうした事情を踏まえ、移動に伴う負担や言語の違いといった現実的な事情を踏まえながら、どの程度柔軟に対応できるかが、調停や裁判においても考慮されることがあります。

第3章 面会交流で後から揉めないために|離婚時に決めておくべき具体的な内容

3-1 オンライン面会・連絡頻度など日常的な交流の決め方

相手が子どもを連れて海外や遠方に住むことになる場合、物理的に子どもと面会できる回数は限られます。そのため、オンラインによるビデオ通話を利用した交流が重要になります。
例えば、「毎週土曜日の日本時間20時から30分間」というように、曜日と時間を特定しておくことがトラブルを防ぐ有効策となり得ます。また、子ども自身が直接デバイスを操作できない年齢の場合は、監護している親がどの程度サポートするかについても合意をとっておくことが重要です。

3-2 一時帰国や長期休暇中の面会ルールをどう決めるか

長期休暇などを利用して直接会う場合のルールも、離婚時に細かく詰めておくべきです。
例えば、「夏休みのうち5日間」と期間を定めるのか、「12月25日から30日まで」と日にちを特定するのか。また、日本国内で会うのか、それとも相手の国へ渡航して会うのか。渡航を伴う場合は、宿泊先情報の共有や、緊急時の連絡網についても、明確に決めておくのが望ましいです。

3-3 旅費・滞在費・通訳など現実的な負担の整理

相手が子どもを連れて海外に移住した場合、面会交流には多額の費用がかかることになります。航空券代、宿泊費、移動に伴う諸費用をどちらがどの割合で負担するのかを明確にしておかなければ、経済的な理由で交流が途絶えるおそれがあります。
また、子どもと別居した親との間で言語の違いが生じる場合には、どのようにコミュニケーションを取るのかについてもあらかじめ整理しておく必要があります。子どもが幼い場合、海外移住によって別居親の言語に触れる機会が減り、言葉による意思疎通が難しくなる場面も想定されます。そのため、状況に応じて通訳の利用や子どもと一緒に暮らしている親(同居親)の同席といった対応を検討しておくことも望まれます。

3-4 合意内容をあいまいにしないための書面化のポイント

こうした面会交流に関する取り決めは、強制執行力のある書面に残すことが重要です。口約束やメールのやり取りだけでは、面会交流が実施されなくなった場合に是正することが難しく、子どもと会えない状態が継続してしまうおそれがあるためです。
日本の公証役場で作成する離婚給付等契約公正証書や、裁判所での調停調書として、面会交流の具体的な条件を記載しておくことが、紛争を未然に防ぎ、面会交流を確保するための実務的な備えとなります。

第4章 子どもを海外に連れて行っても大丈夫?連れ去りトラブルとハーグ条約

4-1 無断で海外に連れて行くと何が問題になるのか

離婚前や別居中に、もう一方の親の同意を得ずに子どもを国外へ連れ出す行為は、後の手続に大きな影響を与える可能性があります。日本では親権の行使と評価される場合であっても、相手方の国の制度によっては未成年者略取誘拐罪として刑事罰の対象になることがあるためです。
一度、連れ去りと評価されてしまうと、その後の親権裁判において「他方の親との関係を遮断する問題のある親」と評価され、不利な状況に追い込まれるリスクが高まります。

4-2 ハーグ条約の基本と、返還を求められるケース

子どもを他方の親の同意を得ずに、元々生活していた国とは異なる国に移動させた場合、もう一方の親から元の国に戻すよう求める手続がとられることがあります。
こうした場面で問題となるのが、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約「ハーグ条約」です。この条約は、子どもが不適切に国外へ移動された場合に、元の居住国へ速やかに戻すための国際的なルールを定めたものです。
日本で生活していた子どもを海外に連れ出した場合だけでなく、海外で生活していた子どもを日本に連れ帰った場合でも、この条約に基づく返還手続の対象となることがあります。

4-3 パスポート管理や渡航ルールで防げるトラブル

連れ去りの不安がある場合、実務的な予防策を講じる方法もあります。
例えば、子どものパスポートを信頼できる第三者や弁護士に預けておく、あるいは外務省に対してパスポートの発給制限を申請し、自分の同意なくパスポートが作成されないようにする手続きがあります。
また、離婚時の合意書において「国外へ渡航する際は、少なくとも1ヶ月前までに書面で相手の承諾を得る」といった渡航制限条項を設けておくことも有効な対策となります。

第5章 子どもの将来に影響するからこそ、早い段階で整理を

国際離婚における親権や面会交流の問題には、国ごとの制度の違いや国際条約といった枠組みが関係します。良かれと思って取った行動が、法的には不法な連れ去りとみなされ、重大な事態を招く可能性も否めません。また、一度決めた条件を後から変更することは、国内の離婚以上に困難な場合もあります。
まずは、子どもの生活環境をどのように維持していくのか、そして離婚後もどのように親としての責任を果たしていくかを整理したうえで、手続きを進めていくことが重要です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスは、実務経験に基づき、納得のいく前進のためのお手伝いをさせていただきます。少しでも不安があるときには、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

 

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