弁護士コラム

2018.01.06

離婚調停における秘匿事項について

<ご相談者様からのご質問>

  夫からの激しいDVに耐えられなくなり,夫に内緒で引越先を探し,別居をしています。夫と離婚しようと思い,家庭裁判所から離婚調停の申立書をもらってきました。申立書の中に私(申立人)の住所を記載する欄があるのですが,今住んでいる住所を夫に知られてしまうと,夫が家に押しかけてきて暴力を振るわれてしまうかもしれません。住所だけでなく,職場等も夫に知られたくないのですが,どうすればいいですか。

<弁護士からの回答>

 ご相談内容にあるように,様々な理由から,相手方配偶者に住んでいるところや職場を知られたくないという方は少なくありません。
 こうした相手方に知られたくない情報について,ひとたび相手方に知られてしまうと,取り返しのつかない事態に発展してしまう可能性があります。
 そこで,本日は,相手方に知られたくない情報がある場合に,離婚調停をどのように進めて行けばよいかをご説明させていただきます。

 離婚調停の申立書には,申立人の住所を記載する必要があり,原則としては現住所を記載する必要があります。住民票を同居していた場所から移していない場合であっても現住所としては現在住んでいるところの住所地を記載する必要があります。
 もっとも,相手方が住所を知らないに,申立書にその住所を記載してしまうと,申立書は相手方に送付されますので,相手方に住所が知られてしまうことになります。そこで,相手方に住所を知られたくない場合の方法としては大きく分けると2つの方法があります。

 1つ目の方法としては,申立書に記載する住所を,相手方に知られてもよい住所,すなわち,住民票を移していない場合には,住民票上の住所地を記載するか,住民票を移している場合には,同居していた際の住所地を記載することが考えられます。
 もっとも,実際に住んでいない住所地を記載する場合には,「連絡先等の届出書」という書面に,連絡がつく電話番号や,書類の送付先を記載し,家庭裁判所に提出する必要があります。この方法では,申立書からは現住所が判明しませんが,法律上,調停の当事者には,家庭裁判所の許可を得て記録の閲覧や謄写が可能になっているので(家事事件手続法254条),上記「連絡先等の届出書」について,閲覧されてしまう可能性はゼロではありません。

 もう1つの方法としては,家庭裁判所に対し,「非開示の希望に関する申出書」を提出することにより,相手方からの閲覧や謄写の請求の際,当事者から非開示の希望が出ているという事情を斟酌してもらえるため,住所が知られないようにすることができます。この,「非開示の希望に関する申出書」は,申立書だけではなく,基本的には調停中に提出する資料全般に使用することができます。例えば,養育費の金額等を決める際の給与明細等に記載されている自分の職場が知られたくない場合には,給与明細の提出の際に,同時に申出書を提出することになります。

 この,「非開示の希望に関する申出書」ですが,提出すれば必ず非開示になるというものではありません。先程お話ししたとおり,記録の閲覧請求は,裁判所が許可した場合には認められるものですので,いくら非開示の希望が出されていたとしても,開示する必要性があると裁判所が認めた場合には,開示されてしまいます。

 上記の2つの方法ではいずれの方法でも完全に,住所を秘匿することはできません。しかし,弁護士を代理人として依頼することにより,申立書の住所地には相手方に知られてもよい住所地を記載し,連絡先については代理人の弁護士の事務所の所在地を記載することにより,相手方に現住所を知られる可能性はほぼゼロにすることができます。

 相手方に住所地を知られたくないケースとなると,離婚の問題自体も相当やっかいな状態になっていることが通常です。相手方に住所を知られずに離婚を進めたい場合には是非一度弁護士にご相談ください。

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