弁護士コラム

2018.05.21

加害者側の保険会社について

<ご相談者様からのご質問>

 先日,交差点で停車中に後ろから追突されました。加害者の方はきちんと謝罪してくださって,今後は,加害者の保険会社が示談も含めて対応するとのことでした。疑問に思ったのですが,なぜ,保険会社が示談の代行のようなことをしているのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 交通事故の被害者の方からご相談いただく際に,「加害者の保険会社の対応が不満」であるとご相談いただくことが少なくありません。今回は,保険会社が示談交渉を代行することができる根拠についてご説明させていただきます。

 

 まず,原則として当事者間で紛争が生じた場合には当事者同士で話し合いを行い,当事者で協議って解決することが困難である場合には,第三者が当事者の代理人として相手方と話し合うことで解決の方法を模索することになります。第三者が代理人として活動する際には,弁護士法により規制がなされており,弁護士法72条において,弁護士以外の者が報酬を得る目的で他人の法律義務を業として行うことを禁じており,報酬を得て他人の法律問題について,代理人として活動することができるのは弁護士に限られています。

 加害者側の保険会社が示談代行をすることについては,保険会社は弁護士ではなく,示談代行サービスという保険をつけて保険を販売しており,報酬を得る目的や,業として行われることになるため,弁護士法に違反しているのではないかと疑念が生じ,過去には問題となっていました。

 もっとも,現在では,加害者側の保険会社が示談代行を実施することは弁護士法に違反していないと考えられています。その理由としては,自賠責保険や,任意保険において,被害者の直接払請求権というものが認められており,建前上,交通事故の被害者は加害者が契約している保険会社に対し,直接損害を請求することができるとされたため,保険会社が対応することは,「他人」の法律事務ではなく,自身の法律事務であとされ,弁護士法72条に抵触しないとされたからです。

 このように,保険会社が示談を代行することができる根拠が,被害者の直接払請求権によるものであることから,加害者の一方的な過失(停止しているところに衝突してきた場合等)がある場合には,相手方に損害賠償請求権が発生しないため,被害者側の任意保険会社は示談代行することができず,ご自身で加害者側の保険会社と交渉する必要があります。もっとも,現在の任意保険には,基本的に弁護士費用特約がついており,大きな事故など例外的な場合を除き,費用を負担することなく,弁護士を依頼することができますので,事故に遭われた際には,是非弁護士にご相談ください。

2018.05.20

物損事故の問題点(休車損害について)

<ご相談者様からのご質問>

 私は運送会社を経営しているのですが,私の会社の従業員が,仕事中に後ろから追突されてしまいました。幸い,従業員にけがはなかったのですが,車が大破してしまい,廃車となってしまいました。先生の話では,廃車(全損)の場合にはその車の時価を請求できるとのことですが,運送トラックが1台廃車になったことで,うちの会社の売上も下がってしまうのですが,これについては請求できないでしょうか。

 

<弁護士からの回答>

 これまでご説明したとおり,物損事故の場合には,原則として,被害車両の所有者が,修理費用若しくは自動車の時価を損害として請求できるにとどまりますが,会社が被害車両を用いて営利活動等を行っている場合には,当該車両が使用できなくなることにより,会社に損害が発生することになります。このような場合には,要件を満たすことにより,休車損という損害を請求することができますので,本日は,休車損についてご説明させていただきます。

 

 休車損とは,交通事故により損傷した自動車を修理若しくは買い替えるために要する相当な期間,当該車両を使用(運行)することができなくなったことにより,本来得ることができた利益を得ることができなかったことによる損害のことをいいます。

1 休車損の要件

 この休車損については,全ての場合に認められる損害ではありません。まず,休車損害が請求できる対象となる車両は,バス,トラック,タクシー等の営業車であることが必要です(いわゆる「緑ナンバー」の車などがこれに当たります。)。このような営業車ではない自動車(例えば個人事業用に使用している普通車)の場合には,通常,代車を手配してもらうことにより,営業を実施することは可能であるため,休車損は発生しません。

 また,営業車両が損害にあった場合の全てに休車損が認められるというわけではなく,①被害者が保有している車両の中に,遊休車や,予備車などの代替車両が存在しないこと②他の保有車両の運航スケジュール等を調整しても,当該事故車両の業務の穴埋めをできなかったことが認められた場合には,休車損を請求することができます。①と②が認められない場合には,事故が原因で利益を得ることができなかったと認められないため(法律上「因果関係」が認められないといいます。),休車損を請求することはできません。

2 休車損の金額

 上記,休車損が認められる要件を満たす場合に,加害者に対し請求することができる休車損の金額についてですが,事故前直前の1日当たりの売上から経費を引いた金額について休車日数分の金額を請求することができます。1日あたりの売上については,事故日直近3か月前の売上合計を90日で割ることで算出するのが一般的です。また,経費については,当該事故車を使用しないことで支払いを免れることになった経費をいい燃料費,道路使用料や,休車にともない運転手も仕事を休んだ場合には,人件費についても経費として計上することになります。休車日数については,修理された場合には,修理工場への入庫から出庫までの期間とされ,全損となり買い替えが必要となった場合には,買い替えに通常要する期間とされます。

 

 このように休車損を請求するためには非常に複雑な手続きになりますので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.05.19

物損事故の問題点(多数当事者の事故)

<ご相談者様からのご質問>

 トラック会社に運転手として勤務しているのですが,先日大きな事故に遭ってしまいました。県道を会社のトラックで業務で走っていたのですが,隣の車線を走っていた車が急に車線変更してきたためぶつかってしまいました。ぶつかった衝撃で相手の車(運転手が所有者です。)は県道沿いの民家の壁に衝突し,壁に穴が開いてしまいました。また,私が運転していたトラックも信号機にぶつかってしまい,信号機が倒壊してしまいました。

 これだけの大きな事故ですが,奇跡的にけが人は1人もでませんでした。これだけ大きい事故だと相手方との間で修理費だけ話し合うということではすまないと思うのですが・・・・

 

<弁護士からの回答>

 自動車は非常に速い速度で動いていることからひとたび交通事故が起きた場合には,ご相談者様の事例のように,多数の人や物を巻き込んだ大きな事故になってしまう可能性も否定できません。そこで,今回は,多数の人を巻き込んでしまった交通事故における,処理についてご説明させていただきます。

 

1 損害賠償を請求できる人

 まず,交通事故により所有している自動車を損壊させられた人,すなわち自動車の所有者は損害賠償請求権者です。したがって,ご相談者様の事例では,相手方車両の運転手がその車を所有しているとのことなので,相手方には損害賠償請求権が発生します。一方,ご相談者様はトラックを所持しておらず,トラックの所有者はご相談者様の勤務している会社であるため,ご相談者様は損害賠償請求権を持っているわけではなく,会社が持つことになります。また,今回の事例では,会社には車両が使えなくなったことによる損害(休車損といいます。)が請求できる可能性がありますがこれについては次回ご説明させていただきます。

 つぎに,本件では相手方の車両が民家の壁を損壊しているため,民家の所有者も壁の修復費用等を損害賠償として請求することができます。また,ご相談者様が運転するトラックが信号機に衝突し,倒壊してしまっているので県や国土交通省は信号機の損害を請求することができます。信号機だけでなく,ガードレールや標識,電柱などは皆さんが想像しているよりも非常に高額で時には数百万円もの賠償請求がなされる場合もあるので,対物賠償保険については必ず無制限の保険に入っていた方がよいでしょう。

 

2 損害賠償請求義務を負う人

 次に,損害賠償を支払う義務がある人ですが,まず,事故の当事者である運転手は当然賠償義務を負います。それだけでなく,今回のケースでは,ご相談者様は会社の業務として交通事故を起こしてしまっているので会社は使用者責任(民法715条1項本文)を負うことになります。

 

 3 請求できる(請求される)金額について

 今回の事故では,ご相談者様と相手方が運転手の双方に過失がある事故であることから,被害者(損害賠償を請求することができる人)は,被った債権額を過失割合に応じて各加害者に請求しなければならないのでしょうか。結論からお伝えすると,被害者は当事者間の過失割合に関係なく,損害額全額を,賠償義務を負う人に請求することができます。ご相談者様の事例では,民家の壁を壊された人は,ご相談者様,相手方,さらに,ご相談者様の勤務する会社の誰に対しても損害額全額を請求することができます。これは,複数の人が不法行為を行っているいわゆる共同不法行為においては,加害者は全額を支払う責任(不真正連帯債務といいます。)を負わせ,被害者には誰に対しても全額請求できるようにし,被害者救済を図るべきであるとの考え方に基づいています。

 したがって,被害者から請求された加害者(若しくは,会社)は,被害者の被った損害を全額支払う必要があります,もっとも,加害者は,自己の過失割合を越えた範囲の金額については,他の加害者に請求することができます(これを「求償権」といいます。)

 このように,多数当事者が巻き込まれる事故の場合には,誰に対し請求できるのかという複雑な問題がありますので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.05.18

物損事故の問題点④~慰謝料について~

<ご相談者様からのご質問>

  先日,長年乗っていた愛車にぶつけられてしまいました。何年も乗っていて非常に愛着のある車ですが,廃車にするしかなさそうです。とてもショックなのですが,精神的苦痛を被ったとして,慰謝料などは認められないのでしょうか。

 

<弁護士からの回答>

  物損事故に遭われた方がご相談に来られた際に,ご相談者様と同じように慰謝料を支払ってもらえないのかというご相談が少なくありません。結論から申してしまうと,物損事故の場合には,慰謝料が認められることはほとんどありません。

  そこで,本日は,物損事故における慰謝料についてご説明させていただきます。

 

 慰謝料とは,不法行為(交通事故)により,精神的苦痛を被った場合にかかる苦痛を損害として金銭的に補填するためのものです。この点,ご相談者様のように,事故により愛用してきた車両が使えなくなったことにより,物損事故であっても事故による精神的苦痛を被っていることは否定できません。しかし,自動車の物損事故においては,修理費若しくは当該車両の時価(全損の場合)等の財産的な損害が填補されたことにより,精神的苦痛も同時に填補されていると考えられています。

したがって,自動車の物損事故において,財産的な損害を越えた慰謝料が認められることはありません。

 このように,自動車の物損事故の場合には,慰謝料の支払いが認められることはありませんが,例外的に,①事故により飼っているペットが亡くなってしまったり,ケガをして後遺症が残ってしまった場合や,②事故により墓石が損壊してしまった場合などには物損事故であっても慰謝料が認められています。

 ①のペットについては,ペットを飼われている方からは異論が出るかもしれませんが,法律上,ペットは「物」として扱われます。過去の裁判例では,この「物」である側面のみ強調され,ペットの時価のみが損害であるとされ,長年育て飼い主の愛着が増したペットのほうが,時価が低いと判断するものもありました。

しかし,近時の裁判例では,ペットは「飼い主との交流を通じて,家族の一員であるかのように,買主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくない」として,ペットが亡くなった場合や後遺症が残ってしまった場合には,慰謝料を認めています。

 また,②の墓石に関しては,「先祖や故人が眠る場所として,通常その少輔者にとって,強い敬愛追慕の念を抱く対象となる。」として,墓石が壊れたことによる精神的苦痛の賠償を認めています。

 このように,例外的に,その物に特別の愛着を抱くことが一般的に争いがない物については,例外的に物損の慰謝料が認められますが,自動車に関しては愛着を持たれている方がいらっしゃることは事実ではありますがそれが一般的に争いがないとまでは認められない以上(単に移動手段としか捉えていないかたもすくなからずいらっしゃるでしょう。),自動車の物損における慰謝料の請求は認められないでしょう。

 もっとも,前回お伝えした通り,事故に遭った車の内容によっては,評価損が損害として認められる場合もあるので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.05.17

物損の問題点③~評価損について~

<ご相談者様からのご質問>

  先日,買ったばかりの新車にぶつけられてしまいました。加害者の保険会社の人は,きちんと修理代金は払いますとおっしゃっていただいているのですが,せっかくの新車だったのに,これで事故歴や修理歴が記録されてしまい,事故車になってしまうのがとてもショックです。事故車になったことについても何か請求できないのでしょうか。

 

<弁護士からの回答>

  物損事故の場合,基本的に修理費用が当該交通事故の損害と判断されます。しかし,ご相談者様のように,事故歴や修理歴が記録されることにより,自動車の価値全体が下がるという事実は否定できません。そこで,本日は,物損事故における評価損についてご説明させていただきます。

 

  物損事故にあった場合,修理により,外観や性能が回復することが一般的であるため,「欠陥が認められない」「性能や外観の低下がない」などとして,当該車両に事故歴,修理歴が残ることによる損害については認められないとされた裁判例も過去には存在しました。

  もっとも,自動車は非常に精密かつ複雑な構造をしており,かつ,骨格部分等内部がどのようになっているのかについては,修理の際に正確に把握することは困難であるといえます。したがって,修理されたといっても,完全に修理されているとはいえない可能性があり,隠れた損傷があるかもしれないということや,修理後車両を使用していく際に,無事故の自動車よりも不具合が発生しやすくなるのではないかという懸念が残る以上。事故車であるということ自体により,現実門隊として,中古車市場において価格が非常に低く評価されてしまうのは事実です。

  したがって,一定の場合には,修理歴が存在することによって価値が下がったことによる損害(評価損)が裁判例においても認められるケースが多くなってきました。この評価損(格落ち損ともいいます。)ですが,上記のように修理することが前提となっていますので,修理することができない全損事故の場合には,損害として認めることができません。

  また,全損事故でない場合であっても,全てのケースで評価損が認められているわけではありません。当該自動車が初年度登録から何年間経過しているか(3年以上経過している自動車の場合,認められる可能性が低くなる印象があります。)走行距離がどの程度あるか(距離が多いほど認められない方向に働きます。),車両のどの部分に損傷があるか(骨格部分に損傷がある場合には認められやすい方向に働きます。)など様々な事情を総合的に考慮して判断することになります。 

  また,評価損が存在すると認められた場合にどの程度損害額が認められるのかについては,修理額の20%~30%と判断するもの(これが一般的です。)や,中古車販売価格等を調査したり,修理業者等に事故歴があることによる評価の下落分を査定してもらう等様々な方法があり,高級外車の場合等は比較的高額な評価損が認められる場合もあります。

  いずれにせよ,評価損の請求については非常に専門的な分野なので,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.04.09

物損の問題点②~経済的全損について~

<ご相談者様からのご質問>

 物損事故に遭いました。相手が一方的に悪い事故なので,きちんと修理してもらえると思ったのですが,相手方の保険会社から,「経済的全損状態なので,修理代金は出せません。」といわれました。事故にあって修理が必要なのにどうして修理してもらえないのですか。

<弁護士からの回答>

 物損事故の場合,原則として修理代金が支払われるのですが,事故に遭った自動車によっては,無過失事故であっても修理代全額が支払われないことがあります。
 今回は,物損事故における経済的全損についてご説明させていただきます。

 まず,交通事故における損害賠償請求は,物そのものを事故の前の状態に戻すことではなく,文字通り事故により被った「損害」を金銭的に評価し,その損害を賠償(補填)することができる権利です。
 ここで,事故当時の車の価額(時価)が修理額よりも高い場合には,修理額が事故により被った損害になりますので,修理額支払われることになります。
 もっとも,車の時価額が,修理額よりも高額である場合には,当該交通事故による損害は,その当時の被害車両の時価に限定されることになります。したがって,修理費用が当該車両の時価を上回る場合には,経済的全損として当該車両の時価のみが賠償されることになります。

 当該車両の時価については,オートガイド社の自動車価格月報(通称「レッドブック」といいます。)に基づき判断されますが,走行距離等で価額が異なるため,
中古車販売市場等で平均的な価額を算定したりします。
 このように,経済的全損の場合には,修理代金全額は支給されませんが,別の車両を購入する際二発生する検査・登録料,車庫証明費用等の買い替え諸費用については,買い替えに付随するものとして損害に含まれることになります。

 なお,経済的全損ではなく物理的全損(客観的に修理することが困難な状況)の場合にも同様に損害額は時価相当額ということになりますが,この場合,損害額には,廃車料や買い替えに通常要する期間の代車料についても請求することができます。
  事故に遭われた方は,修理してもらえるのが当然であるという考えであるため,経済的全損の場合には修理代金が支払われないことに対しとても憤りを感じられてしまうかもしれません。しかし,物損事故の場合,損害額に関する正しい知識がないと無用なトラブルが発生してしまいますので,是非一度弁護士にご相談ください。損害額についても正しいアドバイスをさせていただき,トラブルの解決にご協力させていただきます。

2018.04.08

物損事故の問題点①~代車料について~

<ご相談者様からのご質問>

 物損事故に遭ったのですが,相手方の保険会社の担当者から「過失事故なので代車料は支払えません」と言われましたが本当でしょうか。

<弁護士からの回答>

 今回から数回にかけて物損事故において問題になる事項についてご説明させていただきます。今回は,物損事故の際に発生する代車料についてご説明させていただきます。

 物損事故が起きた際に,自動車の損害を回復するためには,自動車を修理する必要があります。その修理期間中に自動車を使用する必要が生じた場合,代車を使用する際の代車料は交通事故により発生した損害であるため,加害者には代車料を請求することができます。代車料が請求できる期間は,一般的に当該損傷を修理するために要する期間です。

なお,代車の車種(グレード)についてですが,代車を使用する必要性や代車使用の目的との関係で,代替できる車種(グレード)に限定されてしまうことが一般的です。例えば,外車が事故に遭った場合には,国産高級車で代替可能であると判断されることが一般的です。

このように,代車料は,交通事故により発生した損害であることから,双方に過失が認められる事故であっても,損害として発生していることに変わりはありません。したがって,ご相談者様のケースでの相手方保険会社の担当者の対応は間違っており,過失事故であっても代車料を請求することができます。

もっとも,保険会社においては,被害者ご本人のみで対応している際には,過失事故の場合には代車料を支払わないとの対応をすることがあります。そのような場合には弁護士を代理人としてつけることにより,過失事故であっても代車料は支払うべき義務があるということをきちんと説明し,相手方保険会社と交渉することができます。

ここで気を付けなければならない点としては,過失事故の場合,被った損害の全てが賠償されるわけではありません。自身の過失割合に相当する金額は支払われないことになります。したがって,代車料についても,全額が支払われるわけではなく,自身の過失割合に相当する金額については支払われないことになります。

2018.04.07

賠償に至るまでの流れ~人身事故編~

<ご相談者様からのご質問>

  交差点に入ったところで脇道から入ってきた車にぶつけられました。相手は減速せずにぶつかってきたため,とても強い衝撃で,首も肩も腰も痛いです。今日から病院で入院することになりました。仕事も休まないといけないです。今後どうなるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 前回ご説明したとおり,物損事故の場合には,過失割合が問題にならないときには紛争になることもなく,スムーズに解決することが多いです。もっとも,人身事故の場合には過失割合のみならず,治療期間,慰謝料等交渉すべき事項が多岐にわたります。今回は,人身事故における賠償にいたるまでの経緯についてご説明させていただきます。

1 治療

  事故に遭いケガをしてしまった場合には,まずはケガの治療を第1に優先されてください。骨折など重傷を負っている場合など,ケガが治るまでに相当の期間を要する場合には,治療が終了するまで損害額を確定することができないため,事故後直ちに示談が行われるということはありません。また,入院をした際等には仕事にでることができませんが,治療により欠勤した際の損害(休業損害といいます。)については請求することができます。相手方保険会社との交渉により,休業損害については,示談前であっても,先に支払われることが多いです。
  治療期間が経過していくと,相手方保険会社から「そろそろ治療を打ち切ってください」等といわれることがあります。治療については一般的に保険会社が判断できる事項ではなく,医師が判断すべき事項であります。したがって,弁護士が代理人としてお手伝いさせていただく際には,治療を行っている医師の診断内容を踏まえつつ,相手方保険会社に対しまだ,治療の必要性があると伝え,治療費を負担するよう交渉することになります。

2 治癒,症状固定(後遺症の申請)

  ケガの治療を継続していくと,どこかのタイミングで,ケガが完全に治った状態(治癒といいます)になるか,医師においてこれ以上治療を続けても症状が改善しない状態(症状固定といいます)のいずれかの状態になります。治癒の状態になった場合には,直ちに示談の交渉に移行しますが,症状固定の状態になった場合には,残存している症状が,後遺障害として認定された場合には後遺障害による損害(慰謝料,逸失利益)も請求することになります。後遺障害の認定を売るためには医師に後遺症診断書を作成してもらう必要があります。

3 示談~裁判

  ケガが治癒したあとや,後遺障害が認定されると損害額について,加害者側の保険会社と協議を行うことになります(双方に過失が認められる場合には過失割合についても協議を行います。)。損害額の協議が整わなかった場合には,物損事故と同様裁判によって賠償を求めることになります。
物損事故の場合には賠償額が減額されるということはありませんが,人身事故の場合には慰謝料の金額について,保険会社の基準で非常に低い金額が提示されることが多々あります。したがって,人身事故における慰謝料の交渉については弁護士を代理人として入れた方が基本的には慰謝料の金額が上がるため依頼した方がよいでしょう。

2018.04.06

賠償に至るまでの流れ~物損事故編~

<ご相談者様からのご質問>

  交差点で相手の車とぶつかってしまいました。お互いケガはありません。
  これまで交通事故に遭ったことがないので,今後どのように進んでいくのかがわかりません。ケガはないので弁護士さんに依頼しなくても大丈夫でしょうか。

 <弁護士からの回答>

  物損事故といえども,相手方の保険会社との間でトラブルになることは少なくありません。今回は,物損事故に遭ってしまった場合に事故後から解決に至るまでの一連の流れについてご説明させていただきます。

1 損害額の確定

  物損事故の場合には,基本的には,当該車両の修理費(もしくは時価額。時価額が損害になる場合については別の機会にご説明させていただきます。)が損害額となります。事故に遭った場合には,修理工場にて修理の見積もりを行い,見積が確定した後に,賠償額が決まることになります。

2 賠償額の確定

  停車中に後ろから衝突された場合など,加害者の一方的な過失(0:100)の事故の場合には,上記の損害額(修理額若しくは時価額)がそのまま賠償されることになります。賠償額の支払方法としては,修理が行われている場合には,加害者側の保険会社から直接修理工場に対し修理代金が支払われるという方法と,修理代金を加害者側保険から被害者が直接支払いを受けるといった2つの方法が考えられますが,自動車の修理が先行することが多いため,前者の方法がとられることが多いのではないかと思います。
  これに対し,交差点での事故や,双方の自動車が動いている際の事故の場合には,当該事故がどちらの過失がどの程度認められるのかという過失割合が問題になります。物損事故の場合にはこの過失割合について相手方保険会社との間で交渉する際にトラブルとなり,弁護士にご依頼いただくことが多いです。自身にも過失があると判断された場合には,自分の損害額のうち自身の過失割合に相当する金額は,賠償されません。それどころか,相手方の損害のうち,自身の過失割合に相当する金額については賠償する必要があります。具体例で説明すると,ご自身の車の修理額が40万円,相手車両の修理額が20万円,自分と相手の過失割合が20:80(自分が2割の過失,相手が8割の過失)の場合には,自車の修理代の2割(8万円)と,相手方の修理代金の2割(4万円)は負担しなければなりません。

3 示談~訴訟

  この過失割合については,相手方保険会社との間で協議を行い,協議がととのえば示談書を作成して解決するのですが,過失割合について協議が整わない場合には,裁判で賠償額を確定することになります。物損事故のみの場合の裁判は,金額も高額になることは稀であり,簡易裁判所で判断することになるため,比較的短期間機で解決することが多いですが,過失割合について複雑な事案等の場合には半年以上かかる場合もあります。
  いずれにせよ,過失割合が問題になった際には,弁護士に依頼することで,適切な過失割合をきちんと相手方保険会社に提示して交渉をすすめることができますので,是非弁護士にご相談ください。

2018.04.05

任意保険の特約について

 <ご相談者様からのご質問>

 任意保険を契約する際に,確か色々な特約もついていたと思うのですが,交通事故に遭ってしまったときに役に立つ特約というのは何かありますか。

 <弁護士からの回答>

 任意保険に関しては,各保険会社において補償内容については様々ですが,契約する際には保険の内容についてきちんと説明を受けてはいるものの,自分がどういった内容の特約が付いているのかについては,普段あまり意識していないと思われます。そこで,今回は任意保険についている特約のうち,交通事故に遭った際に役に立つ特約についてご説明させていただきます。

1 人身傷害特約,無保険車傷害特約

 停車しているところに相手方の自動車が追突してきた場合のように,相手方の一方的な過失によりケガをしてしまった際,加害者が任意保険者自賠責保険に加入していれば問題ないのですが,加害者が加入していない場合,事故により被った損害を加害者側から支払ってもらうことは現実的に難しくなってしまいます。そのような場合に,無保険車傷害特約が付いていると,自分が加入している任意保険会社から治療費や慰謝料,休業損害等が支払われることになります。
 また,無保険車傷害特約と似た内容ではありますが,人身傷害特約というものもあります。こちら側の過失の割合が大きい場合には,こちらのケガの治療費等損害額のうち,自身の過失割合に相当する額については自己負担しなければなりませんが,人身傷害特約に入っていれば,過失の割合に関係なく,治療費等損害額の全額を補填してもらえることになります。
 なお,無保険車傷害特約,人身傷害特約のいずれにも,支払うことができる限度額(保険金限度額)が設定されていますので,その限度額を超えた損害については支払いがなされないことになります。

2 弁護士費用特約

 交通事故で加害者側になった場合には,別の機会にもご説明いたしますが,加害者の任意保険会社の担当者が被害者側と交渉し,交渉が難航した場合には保険会社の費用負担で弁護士が対応することになります。
 他方で,被害者側の場合には,原則として被害者の弁護士費用については被害者ご自身が負担をしなければならず,物損事故や軽微なケガの事故の場合には,弁護士費用の負担を理由に弁護士への依頼ができないというような状況が一般的でした。
 そこで,弁護士費用特約に加入しておくと,被害者になった際に,自身の任意保険会社が依頼した弁護士の費用を負担してくれることになります。これにより,交通事故に遭われた方であっても,弁護士費用を気にすることなく,弁護士に依頼することができます。なお,弁護士費用特約を使っても保険料の等級が下がるということはありません。別の機会にもご説明いたしますが,物損事故であれ,軽微な人身事故であっても,適正な賠償を得るためには,弁護士を代理人として選任するのが一番の解決策であると考えています。
 したがって,ご自身の任意保険に弁護士費用特約がついている場合には,是非一度弁護士にご相談ください。

1 2 3
WEB予約 KOMODA LAW OFFICE総合サイト
事務所からのお知らせ YouTube Facebook
弁護士法人サイト 弁護士×司法書士×税理士 ワンストップ遺産相続 弁護士法人菰田総合法律事務所 福岡弁護士による離婚相談所