弁護士コラム

2018.05.19

物損事故の問題点(多数当事者の事故)

<ご相談者様からのご質問>

 トラック会社に運転手として勤務しているのですが,先日大きな事故に遭ってしまいました。県道を会社のトラックで業務で走っていたのですが,隣の車線を走っていた車が急に車線変更してきたためぶつかってしまいました。ぶつかった衝撃で相手の車(運転手が所有者です。)は県道沿いの民家の壁に衝突し,壁に穴が開いてしまいました。また,私が運転していたトラックも信号機にぶつかってしまい,信号機が倒壊してしまいました。

 これだけの大きな事故ですが,奇跡的にけが人は1人もでませんでした。これだけ大きい事故だと相手方との間で修理費だけ話し合うということではすまないと思うのですが・・・・

 

<弁護士からの回答>

 自動車は非常に速い速度で動いていることからひとたび交通事故が起きた場合には,ご相談者様の事例のように,多数の人や物を巻き込んだ大きな事故になってしまう可能性も否定できません。そこで,今回は,多数の人を巻き込んでしまった交通事故における,処理についてご説明させていただきます。

 

1 損害賠償を請求できる人

 まず,交通事故により所有している自動車を損壊させられた人,すなわち自動車の所有者は損害賠償請求権者です。したがって,ご相談者様の事例では,相手方車両の運転手がその車を所有しているとのことなので,相手方には損害賠償請求権が発生します。一方,ご相談者様はトラックを所持しておらず,トラックの所有者はご相談者様の勤務している会社であるため,ご相談者様は損害賠償請求権を持っているわけではなく,会社が持つことになります。また,今回の事例では,会社には車両が使えなくなったことによる損害(休車損といいます。)が請求できる可能性がありますがこれについては次回ご説明させていただきます。

 つぎに,本件では相手方の車両が民家の壁を損壊しているため,民家の所有者も壁の修復費用等を損害賠償として請求することができます。また,ご相談者様が運転するトラックが信号機に衝突し,倒壊してしまっているので県や国土交通省は信号機の損害を請求することができます。信号機だけでなく,ガードレールや標識,電柱などは皆さんが想像しているよりも非常に高額で時には数百万円もの賠償請求がなされる場合もあるので,対物賠償保険については必ず無制限の保険に入っていた方がよいでしょう。

 

2 損害賠償請求義務を負う人

 次に,損害賠償を支払う義務がある人ですが,まず,事故の当事者である運転手は当然賠償義務を負います。それだけでなく,今回のケースでは,ご相談者様は会社の業務として交通事故を起こしてしまっているので会社は使用者責任(民法715条1項本文)を負うことになります。

 

 3 請求できる(請求される)金額について

 今回の事故では,ご相談者様と相手方が運転手の双方に過失がある事故であることから,被害者(損害賠償を請求することができる人)は,被った債権額を過失割合に応じて各加害者に請求しなければならないのでしょうか。結論からお伝えすると,被害者は当事者間の過失割合に関係なく,損害額全額を,賠償義務を負う人に請求することができます。ご相談者様の事例では,民家の壁を壊された人は,ご相談者様,相手方,さらに,ご相談者様の勤務する会社の誰に対しても損害額全額を請求することができます。これは,複数の人が不法行為を行っているいわゆる共同不法行為においては,加害者は全額を支払う責任(不真正連帯債務といいます。)を負わせ,被害者には誰に対しても全額請求できるようにし,被害者救済を図るべきであるとの考え方に基づいています。

 したがって,被害者から請求された加害者(若しくは,会社)は,被害者の被った損害を全額支払う必要があります,もっとも,加害者は,自己の過失割合を越えた範囲の金額については,他の加害者に請求することができます(これを「求償権」といいます。)

 このように,多数当事者が巻き込まれる事故の場合には,誰に対し請求できるのかという複雑な問題がありますので,是非一度弁護士にご相談ください。

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