弁護士コラム

2018.02.15

交通事故に関する問題について

交通事故に関する問題について

  近年,技術の発達に伴い,衝突回避システム等を搭載した自動車が普及される時代になってきました。こうした技術に確信に伴い,近年交通事故の件数は減少しています。しかしながら,日本では1年間に約50万件以上の交通事故が発生しています(平均にすると1日約1600件,1分に1件以上発生していることになります。)。

 交通事故に関しては,運転中のほんの少しの気のゆるみで取り返しのつかない事態に発展してしまう可能性があるだけでなく,自分は問題ない運転をしていたにも関わらず,被害者として事故に巻き込まれてしまう可能性も否定できません。

 交通事故はあらかじめ起きることが分かっているものではなく,突然発生します。いきなり交通事故にあってしまいどうすればいいかわからないまま,現場での対応,病院への通院,相手方保険会社とのやり取り等(治療期間のやりとり,過失割合のやり取り,代車が認められるのかなど・・・・交通事故の被害に遭われた方でここが一番大変なところだと思います。)に負われてしまいます。
上記の各場面できちんと対応しなければ,事故により被った被害をきちんと回復することができなくなってしまう可能性も否定できません。
軽微な物損事故であれば,金額はそこまで大きくないので大きな問題にはならないかもしれませんが,重大な事故で,重篤な後遺障害が残ってしまった場合には,ケガを抱えたままで生活をしていかなければきちんとした賠償を得ることができなければ,今後のご自身の生活だけでなくご家族の生活もままならない可能性も否定できません。

 相手方保険会社から提示される賠償金額は,ご本人のみで交渉にあたっている場合には,残念ながら極端に低額である場合がほとんどであり,相手からの書面にサインをしてしまうと,やっぱりその金額では納得できないと思っても後から主張することは原則としてできないので,それを知らずにサインをしてしまうときちんとした金額での賠償を受けることができません。

今回のコラムでは,これまで,多くの交通事故案件に携わってきた弁護士として,交通事故にまつわる問題やよくご質問いただく事項等をご相談者さまからのご質問という形で紹介し,弁護士としてご質問に回答するという形でご説明させていただきます。もし,事故に遭われてしまった場合でも,このコラムをお読みいただき,これから何をすべきなのかということを把握していただけることで,事故に遭われた不安を少しでも解消できければと考えております。

2018.02.01

法定相続分について①

法定相続分について①

<ご相談者様からのご質問>

 自分が亡くなったとき誰にどのように財産が相続されることになるのかが気になっています。法律ではどのような割合で相続財産が分けられることになっているのですか。また,法律で決まっている割合と異なる割合で相続させることはできないのですか。

<弁護士からの回答>

  これまでは,相続において誰が相続人となるかについてご説明させていただきましたが,今回から数回にかけて,相続人に対しどのように財産が分けられるのかという法定相続分についてご説明させていただきます。

  以前にもご説明しましたが,法定相続人は,配偶者,第1順位の相続人である子,第2順位の直系尊属(親,祖父母等),第3順位の兄弟姉妹となります。したがって,相続人が配偶者しかいない場合には,配偶者が被相続人の相続財産を全て相続します。配偶者がいない場合には第1順位の子が,子もいない場合には,第2順位の直系尊属が,子も直系尊属もいない場合には,第3順位の兄弟姉妹が被相続人の財産を全て相続することになります(子,直系尊属,兄弟姉妹がそれぞれ複数名いる場合については別の機会にご説明させていただきます)。

では,相続人が,配偶者と子,配偶者と直系尊属,配偶者と兄弟姉妹であるような場合にはそれぞれ,どのように相続財産を分けるのでしょうか。
民法では,上記のように配偶者と他の相続人がいる場合(この場合の相続人を共同相続人といいます。)に,相続分に応じて被相続人の権利義務を承継すると規定しています(民法899条)。
そして,共同相続人間の相続分についても民法では規定しており,これを法定相続分といいます。

まず,子と配偶者が相続人である場合には,法定相続分はそれぞれ2分の1となります(民法900条1号)。

  次に,配偶者と直系尊属(親,祖父母等)が相続人である場合には,法定相続分は,配偶者が3分の2,直系尊属が3分の1となります(900条2号)。
  また,配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合には,法定相続分は,配偶者が4分の3,兄弟姉妹が4分の1となります(900条3号)。

  このように,共同相続人間ではどのように相続されるのかについては,法定相続分という形で法律上規定されていますが,相続分に関しては,遺言という形で,被相続人の意思に基づき自由に設定することができ,これを指定相続分といいます(民法902条1項)。指定相続分は法定相続分に優先するため,法定相続分と異なった割合で財産を相続させたい場合には,遺言を作成する必要があります。

もっとも,相続分の指定については,遺留分の問題や,遺言をどのように作成するかによって,後々のトラブルが生じる可能性がありますので,ご自身で作成するのではなく,弁護士に作成を依頼するのがよいでしょう。

2018.01.31

代襲相続について③

代襲相続について③

<ご相談者さまからのご質問>

   先日,私の母方の祖父がなくなりました(祖母は既に亡くなっており,祖父には兄が1人おります。)。母は祖父が亡くなる前に既に亡くなっていたのですが,祖父の相続手続きのために,戸籍を取り寄せていたら,実は,母と祖父は血がつながっておらず,養子縁組を行っていたことが分かりました。母と祖父の関係について知らなかったので大変ショックなのですが,この場合,私は,代襲相続により祖父の相続人になるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

  相続の手続きを行うと,被相続人の戸籍をたどっていく必要があり,その中で,ご相談者様の事例のようにそれまで知らなかった身分関係が明らかになることは少なくありません。特に今回のように養子縁組にまつわる問題は多くあり,これまでお話ししてきた,代襲相続との関係で複雑な問題があるため,ご相談事例に即してご説明いたします。

  ご相談者様の事例では,ご相談者様のお母さまは祖父の養子であり,「被相続人の子」にあたり,そして,お母さまは,祖父が亡くなる前に死亡しているため,「相続の開始以前に死亡」していることという代襲相続の要件も満たしています。

  もっとも,代襲相続に関する規定では,「被相続人の直系卑属でない」場合には,代襲者にはなれず,代襲相続は認められないとされています(民法887条2項但書)。そこで,養子の子であるご相談者様が「被相続人の直系卑属」に該当するか否かが問題となります。

  民法では,養子と養親については,養子縁組の日から同一の親族関係を生ずるとされており(民法727条),養子は,養子縁組を行った時点で,実子と異ならない身分関係を有することになります。したがって,養子縁組後に生まれた養子の子については,実子の子と異なりませんので,縁組後に生まれた子は,養親の「直系卑属」に該当することになります。

  ご相談者様の事例でも,お母さまと祖父が養子縁組をした後に,ご相談者様が生まれた場合には,被相続人の直系卑属に該当するため,代襲相続により,祖父の相続人は,ご相談者様お一人となります。

  これに対し,養子縁組の前に生まれた子(養子の連れ子)の場合には,親が養子になったことにより,自動的に連れ子が養親と身分関係を有することにはなりません。したがって,ご相談者様の事例で,お母さまと祖父が養子縁組を行う前に,ご相談者様が生まれていた場合には,ご相談者様は祖父(被相続人)の「直系卑属」には該当しないため,代襲相続は認められません(この場合,祖父の相続人は,祖父の兄1名となります。)。
  被相続人において養子の連れ子にも相続をさせたい場合には,養子の連れ子との間で直接養子縁組を行う必要があります。

  このように,養子縁組を行う場合には,後の親族関係にも大きく影響を及ぼすことになりますので,一度弁護士にご相談いただくのがよいと思います。

2018.01.30

代襲相続について②

代襲相続について②

<ご相談者さまからのご質問>

  先日,夫が自分の実家に帰省中に,交通事故に遭いました。夫のお父さんも同乗しており,2人とも亡くなってしまいました。夫のお父さんには妻(夫の母)がおり,子供は夫以外に,夫の姉がおります。また,夫と私の間には子供が1人いるのですが,この場合,夫の父の財産に関してはどのように相続されるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

  今回の事例においてはご相談者様のご主人とご主人のお父様がどのような順序や方法で相続が発生したかによって誰が相続人となるかが大きく異なってきます。本日は,複数の人が同時に死亡した際の取り扱いと,その際に代襲相続が認められるのかを中心にご説明させていただきます。

 民法上相続の開始時期は,被相続人が死亡した時点とされています(民法882条)。したがって,今回の事例の場合にもご主人とご主人のお父様がいつ死亡したかによって相続人の範囲も異なってきます。
 まず,事故により,お父様が現場で即死し,ご主人はその後,搬送された病院で死亡した場合,お父様が死亡した時点で,相続が発生するため,相続人はお父様の妻,子供であるご相談者様のご主人とその姉になります。そして,ご主人が亡くなったことにより,ご主人が有していた法定相続分は,妻であるご相談者様と,お子さんに相続されることになります。したがって,この場合,お父様の妻,ご主人の姉,ご相談者様,お子様の4名が相続人となり,ご主人のお父様の遺産に関しては,この4名で遺産分割協議を行うことになります。

 次に,順番が逆になり,ご相談者様のご主人が現場で即死の状態となり,その後お父様が病院で亡くなられた場合には,まず,ご主人の相続が発生し,その後,お父様の相続が発生することになります。そして,お父様の相続発生時には,ご主人は既に亡くなっていることから,相続人は,お父様の妻,ご主人の姉,そして,代襲相続によりご主人の(ご相談者様の)お子さんの3名が相続人となり,ご相談者様は相続人とはなりません。

 では,事例を変えて,ご主人とお父様が事故により即死の状態であり,厳密にどちらが先に死亡したかが分からないような場合にはどのように扱われるのでしょうか。
 民法では,数人の者が死亡した場合において,そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは,これらの者は,同時に死亡したものと推定するとされています(民法32条の2,同時死亡の推定といいます。)。そして,同時に死亡したとされる以上,相続開始の時点で死亡しているため,お父様とご主人との間では相続は発生しないことになります。

 また,代襲相続の要件の1つとして,相続の開始「以前」に死亡していることが必要であり,この「以前」には,同時に死亡した場合も含まれるため,この場合にも代襲相続が発生します。
したがって,結論としては,先に,ご主人が亡くなっている場合と同様に,お父様の相続に関する相続人は,お父様の妻,ご主人の姉,ご主人を代襲相続したお子さんの3名となります。
このように,複数のご親族がお亡くなりになられた場合には,相続人が誰になるのかは複雑な問題ですので,早めに弁護士にご相談ください。

2018.01.29

代襲相続について①

代襲相続について①

<ご相談者さまからのご質問>

  先日,祖父が亡くなりました。相続人には私の父を含めて祖父の子が3人いたのですが,長男である私の父は以前,祖父にひどいことをしてしまったらしく,生前に推定相続人の廃除を受けています。また,祖父の二男は祖父が死亡する前に既に亡くなっており,さらに,二男の息子も祖父が死亡する前に亡くなっておりその息子(二男の孫,祖父の曾孫)がおります。また,祖父の三男は既に自分は相続したくないとして相続放棄の手続きを完了しており,三男にも子どもがおります。
  この場合,誰が祖父の相続人になるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

  以前にも少しお話ししましたが,民法では,相続に関するルールとして,本来相続人であった者の子等が相続人となる代襲相続というルールを採用しています。代襲相続については,これまで話してきた相続欠格,相続人の廃除等様々仕組みと関連する問題ですので,今回から数回に分けて,代襲相続にまつわる問題についてご説明させていただきます。

 代襲相続については,民法887条2項に規定してあり,被相続人の子が,①相続の開始以前に死亡したときか,②民法891条(相続人の欠格事由)の規定に該当したとき,もしくは,③廃除によって,その相続権を失ったときに,①~③に該当する者の子が相続人となるとされています。
 したがって,ご相談者様の事例では,ご相談者様のお父様(被相続人の長男)は,相続廃除されているので,相続権を失ってはいるものの,代襲相続により,ご相談者さまご自身が相続人(代襲相続の結果相続人となった者を代襲者といいます。)となります。

 また,民法887条3項では,代襲者自身に①~③の事由が発生した場合には,代襲者の子が相続人となるとされており,再度代襲相続が発生していることから再代襲相続といわれています。
 したがって,ご相談者様の事例でも,相続人の二男の方は既に亡くなられており,代襲相続が発生しておりますが,代襲者(二男の息子,被相続人の孫)も既に亡くなっているため,代襲者の子である二男の孫(被相続人の曾孫)が再代襲相続により相続人になります。

 このように,代襲相続は,相続人の死亡,相続欠格,廃除の場合には認められますが,相続人が相続放棄を行った場合,相続放棄を行うと,はじめから相続人とならなかったものとみなされるため(民法939条参照,相続放棄については別の機会にご説明させていただきます。),代襲相続は認められず,相続放棄を行った者の子は,相続人にはなりません。
したがって,ご相談者様の事例でも,相続放棄を行った被相続人の三男のお子様は,相続人にはなりません。
 代襲相続がからむと相続人が誰かという問題についてはとても複雑になってきます。相続人に関して複雑な状況が発生していると感じられた場合には,なるべく早く弁護士にご相談ください。

2018.01.28

欠格事由と廃除について(2)~相続人の廃除について②~

欠格事由と廃除について(2)~相続人の廃除について②~

<ご相談者さまからのご質問>

 相続人の廃除という方法を使えば,特定の相続人に相続させないようにすることができるのですね。どのような場合に相続人の廃除は認められるのですか。また,相続人の廃除をするためにはどのような方法があるのですか。

<弁護士からの回答>

 今回は,相続人の廃除の要件及び相続人の廃除を行うための手続きについてご説明させていただきます。
 相続人の廃除の要件は,民法892条に規定されており,①遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいいます。)が,②被相続人を虐待,被相続人に重大な侮辱を与える,もしくは,推定相続人にその他の著しい非行があった場合には被相続人において,当該推定相続人を廃除することができます。

 廃除される推定相続人は,①「遺留分」を有する推定相続人なので,配偶者,子または直系尊属(つまり兄弟姉妹以外の推定相続人になります。)が廃除の対象になります(遺留分については別の機会にご説明させていただきます。)。したがって,兄弟しか推定相続人がいない場合には,被相続人の廃除ではなく,特定の相続人に相続させない旨の遺言を作成するのがよいでしょう。
 次に,②の要件のうち,「虐待」とは,被相続人に向けられた暴力や耐え難い精神的苦痛を与えることをいいます。また,「重大な侮辱」とは,被相続人に向けたれた,名誉や感情を著しく害する行為をいいます。「その他の著しい非行」については,多額の借金を肩代わりさせた場合や,介護が必要な被相続人を全く介護しなかった場合等が該当するものですが,「虐待」や「重大な侮辱」に匹敵するような非行でありことが必要です。

 次に,相続人の廃除をするための手続きとしては,被相続人が生前に家庭裁判所に対し,推定相続人廃除審判を申し立てる方法(民法892条,俗に「生前廃除」と呼ばれています。)と,被相続人が遺言により廃除の意思を表示する方法(民法893条,「遺言廃除」と呼ばれています。)があります。
廃除が認められると,生前廃除の場合には廃除の審判が確定した時点,遺言廃除の場合には廃除の審判確定後,被相続人の死亡時にさかのぼって相続人の資格が失われる効果が発生します。生前廃除の場合には被相続人において,後日廃除した推定相続人と和解できた場合など,廃除を取りやめたい場合には,家庭裁判所への請求や遺言により廃除の取り消しをすることができます。また,遺言廃除の場合には,相続開始後,遺言にしたがって相続手続きを行う遺言執行者を選任しなければならないため,あらかじめ遺言で遺言執行者も定めでおくべきでしょう。

 このように,要件に合致し,適切に手続きを行えば相続人の廃除を行うことが可能です。しかし,審判の申立や遺言の作成など手間や専門的な作業を要することに加え,親族間での対立関係が発生したり,それまでの対立関係が悪化する等深刻な状況になりかねないため,相続廃除を希望される場合には,是非一度,弁護士にご相談ください。ご相談者さまの御意向をお聞きして円滑に解決することができるようお手伝いさせていただきます。

2018.01.27

欠格事由と廃除について(2)~相続人の廃除について①~

欠格事由と廃除について(2)~相続人の廃除について①~

<ご相談者さまからのご質問>

 自分も高齢になってきたので,自分が亡くなったときに自分の残された財産がどのように妻や子ども達に相続されるのかが気がかりです。私には妻がと息子が2人おり,長男はとても粗暴な性格で長年私に対し暴力を振るってきました。このような親に対して不誠実な行為を行う長男には財産を相続させたくはありません。
 どうすればいいでしょうか。

<弁護士からの回答>

 前回は,相続人の欠格事由についてご説明させていただきましたが,今回から3回にわたって相続人の廃除についてご説明させていただきます。相続欠格の場合には法律上当然に相続人たる資格を喪失するものですが,相続人の廃除については被相続人の意思により相続人たる資格をはく奪するものであります。今回は,特定の相続人に相続をさせたくない場合にどのような選択肢が存在するかについてご説明させていただきます。

 特定の相続人に相続をしてほしくない場合に被相続人がとりうる方策としては(相続欠格事由に該当する行為がないことを前提としています。),①相続人に被相続人の死後,相続放棄をしてもらうことを期待する,②自分の財産のすべてを特定の相続人の相続させる(特定の相続人には相続させない)旨の遺言を作成する,③相続人の廃除を行うという3つの方策が考えられます。

 ①の方法については,被相続人の死亡前における相続放棄が認められておりませんので(民法915条1項では,相続放棄は「相続の開始があったことを知った時から」3か月以内にしなければならないと規定しており,死亡前の相続放棄を認めておりません。),いくら相続人が相続放棄すると約束していたとしても,死後,相続放棄をしない場合には,相続されてしまいます。

 ②の方法については,相続人となる予定の人(推定相続人といいます。)が兄弟しかいない場合には,兄弟には遺留分がないため(遺留分については別の機会にご説明いたします。),この方法により相続させたくない人に相続させないことが可能です。

もっとも,推定相続人が遺留分を有する配偶者や子である場合には,特定の相続人に対して一切相続をさせないという遺言を作成したとしても,後日,遺留分減殺請求権を行使されることにより,いくらか財産を回収されてしまう可能性が十分に残ってしまいます(生前に,遺留分の放棄をしてくれている場合には,こうした問題は起きませんが,遺留分の放棄を強制することはできません。
遺留分の放棄については別の機会にご説明させていただきます。)。また,残された相続人の方に遺留分にまつわるトラブルに巻き込んでしまうという側面もあります。

 そこで,被相続人において③相続人の廃除を行うことで,欠格事由に該当する場合と同様に,相続人たる資格を喪失させることができるため,自らの意思で,相続させたくない人から相続人たる資格をはく奪することができます。

 次回は,相続人の廃除に関する要件についてご説明させていただきます。

2018.01.26

欠格事由と廃除について(1)~欠格事由について~

欠格事由と廃除について(1)~欠格事由について~

 <ご相談者様からのご質問>

 父が先日亡くなったのですが,父の遺言が見つかりました。ところが,遺言の中身を見た母(配偶者)が遺言を破り捨ててしまいました。私自身遺言書の内容がどのようなものであったのかは分からないのですが,父の生前の遺志がわからず,母に対してはとても憤りを感じています。こんなひどいことをした母にも相続する資格はあるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 相続人が誰になるのかという問題について,これまでは法定相続人,すなわち,法律上相続人となることができる親族は誰かということについてご説明させていただきました。今回からは,形式的には法定相続人に該当する者であっても,不誠実な行為をしたことより,法律上相続人となる資格を失う場合や,被相続人や他の相続人の意思に基づき相続人としての資格を失う場合として,欠格事由と相続人の廃除についてご説明させていただきます。今回は,欠格事由として法律上当然に相続人としての資格を失う場合についてご説明いたします。

 相続における欠格事由とは,相続人が当該欠格事由に該当する行為を行った場合,法律上当然に相続人たる地位(資格)を失うものをいいます。
 欠格事由については,民法891条に規定されており,891条の各号に規定されている事由に該当するものは「相続人となることができない」とされています。
 欠格事由の具体的な内容として,「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」(1号),「被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者」(2号,ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは除く),「詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者」(3号),「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」(4号),「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」(5号)があります。

 上記の欠格事由に該当する者がいる場合には,法律上当然に相続人たる地位を失うことになります。その結果,遺産分割協議については,欠格事由に該当する者を除いて遺産分割協議を行うことが可能です。
 しかし,相続欠格事由に該当する場合であっても,戸籍等で客観的に欠格事由であることが明らかにならないため,実際の遺産分割の手続では,その人が欠格事由に該当することを客観的に証明する必要があります。具体的には,自分が欠格事由に該当していると認めている場合には,その者に欠格者であることの証明書に署名いと実印を捺印してもらい,印鑑証明書を添付して登記手続等を行うことになります。他方,自分が欠格者ではないと主張している場合には,別の機会にもご説明させていただきますが,民事訴訟(相続人の地位不存在確認の訴え)により確定判決を得る必要があります。

 ご相談者様の事例では,母親が被相続人の遺言書を破棄しているため,欠格事由(民法891条5号)に該当するため,ご相談者様の母親には相続権はありません。
 欠格事由については,別の機会にもご説明しますが,代襲相続とも関連する問題であり非常に複雑であるため,是非一度弁護士にご相談ください。

2018.01.25

相続人について②~第一順位の相続人(子)にまつわる問題~

相続人について②~第一順位の相続人(子)にまつわる問題~ 

<ご相談者様からのご質問>

【ケース1】

  祖父が先日なくなりました。祖父のこどもは私の父を含めて5人います。
私の父は祖父が亡くなるよりも数年前に亡くなっているのですが,この場合,祖父の財産は父以外の兄妹で分けることになるのでしょうか。

【ケース2】

 現在,私は妊娠しています。夫が急になくなってしまいこれからの生活をどうしようかと悩んでいます。夫の両親はすでに亡くなっておりますが,夫の兄妹が6人もいます。この場合,夫の財産はわたしと夫の兄妹でわけることになってしまうのでしょうか。
 子は,第一順位の相続人として相続の問題に巻き込まれる頻度が高いといえます。ケース1,ケース2の場合には子が相続人になる場面ではなさそうですが,法律上こういったケースに対する保護を及ぼしています。今回は代襲相続や胎児の問題についてご説明させていただきます。

<弁護士からの回答>

【ケース1について】

 ご相談者さまのお父様は被相続人よりも先に死亡しているため,相続人にはなれず,それ以外の子4人で分割することになるかとも思われます。しかし,この場合,ご相談者様のお父様が被相続人よりも後に死亡していた場合には,被相続人の相続分をご相談者様が相続することになるため,被相続人の直系卑属がいつ死亡したかにより不平等な結果となってしまいます。そこで民法上,被相続人の子が相続の開始以前に死亡したときにはその者の子が代襲して相続人となるとされており(民法887条1項本文),これを代襲相続といいます(被相続人の子を被代襲者,被代襲者の子を代襲者といいます。)。したがって,今回のケースでも,ご相談者様が代襲者となるため,お父様の地位を引き継いで(お父様のかわりに)相続人になりますので,お父様のご兄弟とともに遺産分割協議を行うことになります。
代襲相続については他にも多くお伝えしたいことがありますので,別の機会にまとめてご説明させていただきます。

【ケース2について】

 民法上「私権の享有は,出生に始まる。」(3条1項)と規定されており,権利義務の主体となることができる始期は出生時となっています。この規定に従うと,被相続人の死亡により相続が発生するところ,相続人となるためには被相続人が死亡している時点で出生している必要があり,胎児は相続人になれないことになります。
 そこで,民法ではこうした胎児の権利保護を図るために,例外規定として,「胎児は,相続については,既に生まれたものとみなす。」(民法886条1項)として,相続開始時に胎児であれば相続人たりうることになります。したがって,ケース2の事例でも,胎児はすでに出生しているものとみなされるため,相続人は配偶者の奥さんと第一順位である子(胎児)ということになります。もっとも,胎児が死産してしまった場合には先程の規定が適用されなくなるため(民法886条2項),ケース2の場合でも,相続人は配偶者の奥さんと,第三順位にあたる被相続人のご兄弟6人になります。

2018.01.24

相続人について①

相続人について①

<ご相談者さまからのご質問>

 先日,夫が急になくなってしまいました。これから相続のことについて考えなければなりません。夫との間には子どもが1人おり,夫の両親もご兄弟も健在です。この場合,誰が相続人になるのでしょうか。

<弁護士からの回答>

 ご家族の方がお亡くなりになられたとき,どなたが相続人に該当するのかという問題は,誰に財産を分けなければならないのかという問題だけにとどまらず,誰が相続税を負担しなければならないのかという問題にも関わってきます。そこで本日は,誰が相続人となるのかという法定相続人について総論的なお話をさせていただきます。

誰が相続人になるのかということに関するルールは民法の886条から895条に規定されており,民法上相続人となることができると規定されている人のことを法定相続人といいます。
 まず,配偶者は必ず法定相続人になります(民法890条)。この配偶者については,民法が法律婚主義(婚姻届の提出により初めて法律上夫婦と認める制度のことをいいます(民法739条1項)。)を採用していることから,法律上の配偶者のみを指しており,内縁の妻や,事実婚状態のパートナーは相続人に含まれず,被相続人の財産を一切相続することができません(したがって,なんらかの理由があって法律婚ではない状態でいるパートナーに死後財産を残したい場合には遺言を作成しておく必要があります。)。

 配偶者以外の法定相続人は,第一順位の相続人として子(民法887条1項),第二順位の相続人として直系尊属(最も親等の近い者,民法889条1項1号),第三順位の相続人として兄弟姉妹(民法889条1項2号)となっています。第二順位,第三順位に該当する人は自分より前の順位に該当する人がいる場合には相続人にはなれません。
 したがって,ご相談者様の事例では,まず,配偶者である奥様は相続人になります。また,第一順位の相続人であるお子さんがいらっしゃるので,お子さんは相続人になります。第一順位の相続人であるお子さんがいらっしゃる以上,第二順位に該当するご両親,第三順位に該当するご兄弟は相続人にはなりません。

ご主人にどれだけ財産があったとしても一切相続財産を手にすることができません。事例を変えてお子さんがいらっしゃらない場合には第二順位のご両親が相続人になりますが,第三順位のご兄弟は相続人にはなりません。さらに事例を変えてお子さんもご両親もいらっしゃらない場合に初めてご兄弟が相続人になります。
 このように,誰が相続人になるかについては,ケースによって様々です。それ以外にも相続の手続きは複雑であるため,是非一度弁護士にご相談ください。

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