弁護士コラム

2019.05.09

【交通事故】交通事故の過失相殺について

交通事故の示談交渉において、相手から提示された過失割合が本当に正しいものなのか疑問に思われる方は多々いらっしゃると思います。
しかし、自分自身でも正しい過失割合が分からないため相手に反論できず、納得していないまま示談書に署名する結果になることも多いでしょう。
今回はそのような方のために「過失割合」や「過失相殺」についてご説明します。

1 過失割合・過失相殺とは?

交通事故では、加害者だけではなく、被害者にも事故の発生原因となる何らかの落ち度・注意義務違反(=過失)が認められることが多くあります。この加害者と被害者の過失の程度を「過失割合」といいます。
被害者にも過失がある場合、被害者の過失を無視して、加害者にすべての損害を負担させることは、当然に公平性を欠くことになります。

過失相殺」とは、こうした不公平をなくすために、加害者と被害者の過失割合に応じて、当事者間で損害賠償責任を負担しあうという制度です。もちろん、無免許での泥酔運転や、法定速度オーバーといった、加害者側の常識外の危険運転が専ら事故の原因のような場合には、加害者側に100パーセントの過失が認められるケースもあります。

しかし、被害者側にも信号無視や道路への飛び出しなどにより一定の過失が認められる場合、加害者に交通事故によって生じた損害額を全額負担させると、加害者と被害者の間で不公平が生じてしまいます。そのため、過失の程度によって損害の負担は相殺されます。

例として「横断歩道の無い道路を渡ろうとした歩行者が車にはねられた事故」で考えてみましょう。この事故により、被害者は骨折等の重傷を負い総額1,000万円の損害が発生したと仮定します。

しかし、被害者は横断歩道の無い道路を横切ろうとしたため、被害者と加害者の過失割合は「被害者3:加害者7」となりました。この様になると、被害者は損害額1,000万円を全額補償して貰えるわけでは無く、1,000万円の内3割は被害者の過失として相殺され、加害者の過失7割相当分の700万円のみ補償されることになります。

つまり、過失相殺されることで、被害者が実際に受け取れる損害賠償額は加害者の過失割合分となるのです。過失相殺は、治療費、休業損害、慰謝料等、交通事故により発生する全ての損害を対象とするのが一般的です。

また、人身事故ではなく、車同士の車両事故(物損事故)の場合には、「それぞれの損害額」に、「それぞれの過失割合」を応じて自己負担額を算出し、互いに相殺処理して差額を支払うという処理をすることが多いです。

例として「車Aと車Bが衝突し、それぞれに修理代金が発生したケース」で考えてみましょう。この事故の過失割合を「50%:50%」とします。
車Aは、車の修理費用が20万円、車Bは車の修理費用が30万円かかりました。過失割合が「50%:50%」のため、A車の所有者は、B車の修理費用の50%を支払う義務があります。A車の所有者は、30万円×50%で15万円をB車の所有者に支払わなくてはいけません。

反対に、B車の所有者は、A車の修理費用の50%を支払う義務があります。そのため、20万円×50%で10万円の支払いをしなくてはいけません。
こういった場合、勿論それぞれが負担額を相手方に支払うこともできますが、手続きが煩雑ですので、通常A車の所有者は、相殺後の差額5万円をB車に支払うという形で処理することが一般的です。

2 過失相殺と保険金の支払い

過失割合を決めるのは警察ではなく、当事者若しくは当事者が加入する保険会社との話合いにより決定することが一般的です。警察は事故現場において現場確認を行い、当事者から事情を聴取し事故の記録を行います。

しかし、警察が行うのはあくまで確認された事故の記録を実況見分調書として作成することと、刑事上の責任の捜査であり、過失割合の決定は民事上の問題となるため警察が介入してくることはありません。
過失割合については、警察作成の実況見分調書や実際の事故現場の状況を考慮し、当事者双方若しくは当事者が加入する保険会社が協議し合意するのが通常です。

過失割合を協議する際に根拠となるのは、過去の交通事故判例等です。保険会社は、過去の判例と今回の事故を照らし合わせて、過失割合の数字を事務的に決めている事が多々あります。

保険会社が判断の基準とする過去の判例上の過失割合は一見すると適正な資料とも言えますが、過去の判例と全く同じ状況の交通事故があるとは限りません。よって、「よく似た事故判例」を探して出して当てはめることになります。

しかし、似たような交通事故でも過失割合が違うこともあるため、保険会社から提示される過失割合は保険会社にとって都合が良いものを選んでいる可能性も考慮することが大切です。当然、保険会社としては自社の出費を抑えることを優先的に考えます。

また、当事者の大半は適切な過失割合についての認定基準を知らないことが多いです。そのため、保険会社から「過失割合はこのくらいです」と言われてしまったら「そういうものかな」と納得してしまうケースが多く存在します。

また、自分が加害者側であったとしても、保険会社は支払いを抑えたいと思っている部分はありますが、同時に早く事件を終わらせたいとも考えています。
そうなると、厳密に過失割合の認定をすることなく、適当なところで纏まった示談金を提示し納めてしまうこともよくあります。このようなことから、保険会社は必ずしも適切な過失割合で話を進めていない可能性も認識しておきましょう。

3 まとめ

交通事故において、過失割合が争点になるケースは非常に多いですが、過失割合を決定するために保険会社と交渉をするためには、過去の交通事故判例などと事故を照らし合わせていく等、幅広い知識が必要です。
過失割合が争点となり協議が難航しているといったお悩みをお持ちの方は、弁護士等に相談した方が良いでしょう。

*本ブログに搭載されている内容はあくまで一般的な流れであり、発生事故によって異なることもございます。ご了承ください。

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