弁護士コラム

2019.05.08

【相談事例52】故意がないとどうなるか?~故意とは①~

【相談内容】

ニュースなどを見ていると、殺人罪の容疑で逮捕された被疑者の人が、「殺意を否認しています。」などと報道されているのを見かけます。

殺意を否認するとどうなるのですか?殺意とか故意とかニュースで聞くのですが、故意とはどういった場合に認められるのでしょうか。

【弁護士からの回答】

一般の言葉でも「故意」という言葉は使われると思いますが、刑事事件において、故意が認められるのと認められないのでは、成立する犯罪が変わることや、無罪になるなど大きな意味を持ちます。
そこで、今回から複数回にかけて刑事事件における故意についてご説明させていただきます。

1 故意犯処罰の原則

辞書などでは、「故意」とは「わざとすること」などと規定されています。つまり、知りながらあえてすることを一般に故意ということになります。
日本の刑法では、原則として、故意がある場合のみ犯罪として成立するという「故意犯処罰の原則」を採用しており、故意がなくても犯罪が成立する場合、すなわち、過失犯については特別に規定がある場合にのみ犯罪が成立するとされています(刑法38条1項では「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と規定し、故意犯処罰の原則を規定しています。)。

2 故意の有無でなにが変わるか

上記のように、刑法では故意犯処罰の原則を採用しています。したがって、同じ行為をしたとしても故意が認められなければ犯罪が成立しない、もしくは成立する犯罪が異なることになります。

たとえば、人を殴った結果、その人が死亡してしまったという事件において、人を殺す故意(殺意)がある場合には殺人罪が成立しますが、殺意がなかった場合には殺人罪は成立せず、傷害致死罪が成立するにとどまります。

また、結果的に他人の物を自分のものとして持ち帰ってしまったとしても、他人の物と知りながら持ち帰れば窃盗罪が成立しますが、自分の物であると誤信して持ち帰った場合には、窃盗の故意がないとして犯罪は成立しないことになります。

3 故意

このように、故意とは、犯罪の成立に関し大きな意味を有するものではありますが、では、刑法上の故意とは何を意味するのでしょうか。
刑法上の故意(「罪を犯す意思」)とは、「特定の犯罪構成要件に該当する具体的事実の認識、認容」をいうとされています。

簡単にいうと、刑法に規定されている犯罪が成立する要件に該当する事実を認識しかつ認容することで故意が認められることになります。この「認容」ですが、積極的に求める場合(例えば「その人を殺したい」と思って行動する場合)のみならず、その結果が生じてしまっても構わないという程度の認識(先ほどの例では「その人を殺してしまうかもしれないが構わない」と思って行動する場合)でも足りるとされています。

よく、「この行為が犯罪になるなんて知らなかった」などという言い訳をされるかたもいるかもしれませんが、刑法上では、その行為が犯罪に該当すると知らなくても、その犯罪に規定されている要件に該当する事実を認識していれば故意が認められることになるため、かかる言い訳は通用しないことになります。

次回では、殺意を中心にどのように故意があるか否かを判断していくかについてご説明させていただきます。

 

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