弁護士コラム

2019.05.09

【相談事例53】殺意の有無はどうやって判断するか?~故意とは②~

【相談内容】

その行為が犯罪になると知らなくても故意が認められるのですね。
でも、故意があるかないかという問題は、その人の内心の問題であって、他の人や外からではわからないと思うのですが・・・

殺意が争われている事件などではどうやって殺意があるかないかを判断するのでしょうか。

【弁護士からの回答】

前回は、故意の定義などについてご説明させていただきましたが、今回は、故意の有無についてどのように判断するのかについてご説明させていただきます。
故意について問題となるケースのほとんどが、殺人罪における殺意の有無が争点となるケースです。

殺意があり殺人罪が成立するか、殺意はなく傷害致死罪が成立するにとどまるかという非常に重要な問題であり、裁判員裁判対象事件として皆さんも判断しなければならない機会が来るかもしれませんので、今回、ご説明させていただきます。

1 故意=内心の問題

犯人が行為を行う際に「殺すつもりでやった」のか否かという問題は、内心の問題であり、少なくとも現代においては、内心を直接知りうる手段としては、犯人本人に確認するしか方法がありません。
しかし、本人の当時の記憶に基づいて殺意の有無を確認するとなると、本当は殺すつもりでやったにも関わらず「殺すつもりはなかった」と発言すれば、みんな傷害致死罪が成立するということになってしまいます。

したがって、殺意の有無にとどまらず、故意の有無の判断においては、その客観的に存在する証拠(状況証拠)をもとに、その行為の時点で故意があったのか否かを判断することになります。
以下では、殺人罪においてどのような状況証拠をもとに殺意の有無を判断するかについてご説明させていただきます。

2 創傷の部位、程度

犯人が被害者に対し行った行為により、被害者にどのような創傷(傷、ケガ)が発生し、死に至ったのかという点については、殺意を認定する際に、非常に重要な考慮要素になります。
具体的には、身体の四肢(手足)以外の部分(腹部や頭部などの「枢要部」)に対し、重大な創傷をつけたという事実が認められた場合には、殺害する意図があったと認定される方向に働きます。

また、腹部に複数回ナイフで刺した傷がある場合には、相当程度強い殺意があったという認定がされるのが一般的です。
もっとも、いくら枢要部に創傷があったとしても、犯人が枢要部に損害を加えることを認識している必要があり、例えば抑え込まれて咄嗟に手を前に出したところ腹部に包丁が刺さったというような場合には、枢要部であることを認識していなかったとして殺意が否定される場合もあります。

3 凶器の種類・用法

刃物の場合、形状や刃の長さ、鈍器の場合には形状や重さなど、犯人がどのような凶器を有していたか、そしてその凶器をどのように使用したかという点についても殺意の有無の判断には非常に重要に重要な考慮要素になります。

たとえばナイフを手にもって刺した場合とナイフを投げて刺さった場合では前者の方が殺意を認定する方向に働きうる状況です。また、自動車をつかって衝突する場合や、自動車につかまっている人を振り落とそうとする行為などの場合には、自動車の速度や運転の内容等から殺意の有無を判断することになります。

次回以降も殺意の有無の考慮要素についてご説明させていただきます。

 

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