弁護士コラム

2019.07.16

知らない間に自分の個人情報がネットに掲載されている!削除するには?

現代の生活やビジネスにおいて欠かせない存在となったインターネットですが、様々なサービスが登場し、個人の意見や情報の発信が気軽にできるようになった反面、匿名性を利用して特定人物の個人情報をネットの掲示板やSNS上に掲載し拡散させたり、誹謗中傷を行う等の悪質な行為も増えてきています。

以上のような行為により書き込まれた個人情報を削除したい場合はどのような対応をすれば良いのでしょうか。今回から複数回にわたり、書き込みの削除方法や、書き込みをした人物を特定する場合について説明します。

1.放置しておくと個人情報が悪用されてしまう

よくある例としては、ネットの匿名掲示板に、個人の氏名、住所、電話番号が書き込まれ、誹謗中傷されているケースです。当然ながら匿名のため、誰が書き込みをしたのかその時点ではわかりません。個人情報が書き込まれた場合に、対処方法が分からないから仕方がない、といって放置してしまうと、当該住所や電話番号が拡散され、更なる嫌がらせを受ける可能性があります。

実際に、個人情報が書き込まれた後に、イタズラ電話がかかってきたり、ダイレクトメールが大量に送り付けられた、という被害にあった人もいます。

多くのサイトでは、書き込んだ本人やサイトの管理者でなければ当該書き込みを削除することができないため、以下に紹介する方法で書き込みの削除を依頼することになります。

2.該当する書き込みを削除するには

(1)サイト管理者、プロバイダを調べる

書き込みを削除する方法としては、当該書き込みが行われているサイトの管理者やプロバイダへ依頼する方法があります。

まずは書き込みがあるサイト内に、連絡先が記載されているかどうか調べましょう。大抵のサイトには運営会社や会社概要などが記載されているページが存在します。

サイトの中には連絡先等の記載が全くないサイトもありますので、そういった場合には、登録されているドメイン名を検索できるサービスなどを利用し、サイト管理者やプロバイダを特定します。

有名な検索サービスでは、日本レジストリサービス社が提供する「JPRS Whois」があり、.jp/.co.jp/.or.jpなどのドメインが検索できます。

 

(2)サイトにある問い合わせフォームなどで削除依頼する

サイトの連絡先とともに掲載されていることが多い「問い合わせフォーム」。

「問い合わせフォーム」には、氏名やメールアドレス、問い合わせ内容等を記入する欄があり、削除依頼にかかわらず、サイトについての意見や要望などを送るために設置されています。このフォームから、サイト管理者へ直接連絡ができるようになっているので、氏名とメールアドレス、削除してほしい内容について詳細に記載し、送信します。

削除して欲しい内容については、問題となっている当該URLとその部分を示して削除箇所を厳密に特定し、なぜ削除が必要なのかを詳しく説明しましょう。特定した書き込みが、自分の権利を侵害していること、書き込みされた内容が自分のことであるとわかる理由や事情などをわかりやすく記載します。また、オンラインでの削除請求を行う場合、問題の情報が削除されると同時に、その書き込みが行われた際の通信ログも削除されてしまう可能性があります。

誰が書き込みをしたのか情報を開示してもらう「発信者情報開示請求」という制度の利用を予定している場合には、ウェブ上の問い合わせフォームから削除請求を行う場合でも、併せて発信者情報開示請求を予定していること、通信ログを消去しないでほしいことは記載しましょう。発信者情報開示請求については、次回説明致します。

なお、サイトによっては、削除依頼の手順を公開しているところもありますし、問い合わせフォームでの削除依頼自体が不可のところもあります。
したがって、問い合わせフォームを送信する前に、まずはサイト内をよく探し、削除を依頼するにはどのような手順を踏めばよいかを確認するようにしましょう。

(3)プロバイダ責任制限法に基づいた書式で削除依頼をする

サイトに削除依頼の問い合わせ先がなかったり、フォームでの削除依頼に対応しない場合、プロバイダ責任制限法に基づいた書式で削除依頼をする方法があります。

一般社団法人テレコムサービス協会が作成、発信している、プロバイダ責任制限法関連のガイドラインでは、ネットでの権利侵害に対する削除手続きとして、「送信防止措置」を定めています。具体的な削除手続きは以下のとおりです。

まず、2(1)で説明した方法でサイト管理者やプロバイダを調べたら、同ガイドラインで公開されている「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」に必要事項を記載し、サイト管理者やプロバイダへ郵送します。ガイドライン内に、提出時に必要な本人確認書類等も記載されていますので併せて準備し、「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」と一緒に郵送しましょう。 

参照①:プロバイダ責任制限法 関連情報WEBサイト
http://www.isplaw.jp/index.html

参照②:テレコムサービス協会 名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン(第4版)
https://www.telesa.or.jp/ftp-content/consortium/provider/pdf/provider_mguideline_20180330.pdf

 サイトの管理者にこの依頼書が届けられると、サイトの管理者は、書き込みをした発信者へ削除するかどうか照会を行います。そして、当該発信者から、定められている期間(7日以内)に反論がなければ、サイトの管理者が削除依頼を受けた書き込みを削除します。

(4)裁判で削除仮処分の手続きをする

送信防止措置依頼をしても削除に応じないサイトもあります。任意の削除がなされなかった場合は、裁判所に対し、民事保全法の仮処分を申し立てることもできます。裁判所というと手続きや申し立てに時間がかかるイメージを持っている方もいるかもしれませんが、仮処分であれば1,2カ月で決定が出ます。削除仮処分命令の裁判管轄は、削除を求める相手である債務者の住所地又は債権者の住所地を管轄する裁判所のいずれかとなります。

記事削除の仮処分は、仮処分命令の発令により債権者の請求が実現する「仮の地位を定める仮処分」「満足的仮処分」に当たるため、仮処分命令発令後の実効性の面においても訴訟と遜色はありません。「仮の地位を定める仮処分」に関する仮処分命令は、原則として債権者のみではなく、債務者に反論の機会を与えた上でなければ発令できません(民事保全法第23④)。そのため記事削除の仮処分は、訴訟と同様に双方が主張立証を戦わせることになります。また、債権者側の主張が認められた場合は、仮処分決定発令のために供託する担保金が必要となります。

そのため、サイト管理人に直接削除を依頼したり、送信防止措置依頼に比べると手順も少し複雑になりますので、裁判所への仮処分手続きについては法律の専門家に依頼することも一つの方法です。

仮処分の申し立てが認められれば、多くのサイト管理者やプロバイダが削除に応じます。

3.まとめ

今回はネット上に掲載された個人情報の削除方法について解説しましたが、削除と併せて「発信者の情報開示請求」も行っておくと良いかと思います。「発信者の情報開示請求」については、次回詳しくご紹介したいと思います。

最近では「削除依頼ページ」を分かりやすく表示したり、「問題のある投稿を報告する」ボタンを設置するサイト、ルール違反についての説明を掲載しているサイトも増えてきました。ネットサービスを利用する前に、サイトに利用規約や問題が発生した場合についての記載があるかをよく確認し、万が一個人情報が掲載されていた等の問題が起こってしまった場合には慌てずに、今回ご紹介した削除申請を行いましょう。

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