弁護士コラム

2024.06.10

相続放棄ですべて失う?

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前回は相続放棄をする理由についてのご説明をさせていただきましたが、本日は、相続放棄をしたいけどできないのではないかと相談者様が誤解されている事項についてご説明させていただきます。

前回の記事はこちらから:相続放棄をする理由

生命保険の死亡保険金

結論からお伝えすると、生命保険の死亡保険金を受取人である相続人が受領しても、相続放棄をすることは可能です(保険金を受領しても、相続放棄は可能とお伝えすると驚かれる方が多いです。)。

健康診断の結果

まず、相続放棄をすることになる相続財産とは、被相続人が死亡していた時点で、有していた一切の権利義務のことをいいます。例えば、現金であれば所有権という権利、預金であれば預金債権という権利、借金であれば債務という支払義務ということになります。
そして、生命保険の死亡保険金は、死亡保険金を請求する権利になるのですが、これは、死亡時点で被相続人が有しているわけではなく、受取人が有している権利になります。もう少し詳しく説明すると、生命保険の契約を行ったのは、保険会社と被相続人ですが、契約の内容は「私が死亡したら保険金を受取人に支払ってください」という内容になり、契約者(被相続人)が金銭を請求できる権利を有することにはなりません。

したがって、死亡保険金を請求する権利は、死亡時に受取人に直接発生する権利であり、相続財産には含まれないので、相続放棄をしたとしても、保険金を受け取ることは可能となります。 なお、少し難しい話になるので、詳細は割愛しますが、契約者が被相続人ですが、被保険者が、被相続人ではない保険の場合、被相続人が死亡しても、死亡保険金は発生せず、被相続人が保険会社に対する解約返戻金請求権を有していることになるため、この場合の解約返戻金は相続財産となるため、相続放棄をする場合、受けとることはできません。

祭祀財産について

次に、墓石、仏壇、墓地等の祭祀財産についても、相続財産には含まれず、相続放棄をした相続人であってもこうした祭祀財産を譲り受けることができます。 理由としては、まず、民法896条では

「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」

と規定されているのですが、次条の897条1項では、

「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条(896条)の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。」

と規定されています。つまり、祭祀財産については、相続財産としての承継ではなく、慣習等によって承継されることになるため、相続放棄をした相続人であっても祭祀財産を承継することは可能になります。

最後に

このように、相続放棄をする場合であっても、受け取れるものは一部存在します。しかし、保険については、医療保険は相続財産、死亡保険も先ほど説明した通り、被保険者が相続人ではない場合、相続財産となるなど、どの場合に受け取ってよいかという問題は非常に専門的です。そして、相続財産を受け取ってしまうと基本的に相続放棄をすることができなくなってしまいます。
したがって、相続放棄をお考えになられている場合には、是非当事務所にご相談ください。

 

執筆弁護士紹介 後藤祐太郎

 

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