【不動産】区分所有建物の管理(後編)
前編では、管理組合の概要について見ていきました。
後編では、区分所有建物を実際に管理する上で重要となる「規約」と、管理組合の内部の役割、そして管理を外部に委託する場合に利用される「管理会社」について解説していきます。
前回の記事はこちらから→「区分所有建物の管理(前編)」
1 管理規約
(1)規約の意義・効力
区分所有者の団体、つまり管理組合は、規約を定めることができ、その規約は区分所有者から物件を購入した特定承継人や占有者に対しても効力が生じます。
規約は、区分所有建物にかかる権利義務の根拠となり、法律関係を整理する際の出発点となるとても重要な存在です。
(2)規約の設定・変更・廃止
規約の設定・変更・廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議により行われます。
(3)規約の対象事項
規約は、建物又はその敷地、附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項について定めることができます。
区分所有法は、規約の対象を区分所有者の共有に属するものに限定せず、「建物」「その敷地若しくは附属施設」としています。
さらに、「管理」だけでなくそれらの「使用」についても規約の対象事項としています。
したがって、「管理」に関する事項として、専有部分に属する配管の点検を管理組合が行うことを可能にすることも、「使用」に関する事項として、ペット飼育を制限し、あるいは、専有部分の用途を住居のみに制限することも可能となるのです。
(4)規約の限界
規約の設定、変更または廃止の決議について、一部の区分所有者の権利に「特別の影響」を及ぼすべき時は、その承諾を得なければなりません。
また、規約では専有部分若しくは共有部分又は建物の敷地若しくは附属施設について、これらの形状、面積、位置関係その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定められなければなりません。
なお、この規約の衡平性の関係では、専有部分の面積と無関係に定められた管理費・修繕積立金の負担などが問題となりえます。
(5)マンション標準管理規約
マンション標準管理規約は、規約のモデルとして、国土交通省により作成され、公表されており、実際に多くのマンションの管理規約の参考にされています。(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html)
2 管理者(理事長)
管理者は、規約による別段の定めまたは集会の決議により、選任・解任され、①共用部分、区分所有者の共有に属する建物の敷地及び共有部分以外の付属施設を保存し、②集会の決議を実行し、③その他規約で定められた権利を有し、義務を負い、④その職務に関し、区分所有者を代理するものと定められています。
なお管理者の権限のうち、共用部分若しくは区分所有者の共有に属する建物の敷地等を保存する行為は、集会の決議などを経ることなく行うことができます。
3 理事・監事
法人化された管理組合においては、区分所有法上、理事は管理組合を代表する必須の機関であり、監事も、その執行等を監査する必須の機関であるとされていますが、法人化されていない管理組合では、理事・監事の規定を置いていません。
ところが実態として、多くのマンションでは規約により理事・監事が設置されています。マンション標準管理規約では、理事は理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当するとされ、理事会は、収支決算案等の総会提出議案を決議するといった役割を担っています。
監事は、一般的な法人と同様に業務の執行及び財産状況の監査を担当します。
4 管理の委託(管理会社)
・管理委託契約(標準管理委託契約書)
マンション標準管理規約においては、管理組合の業務として、管理組合が管理する敷地並びに共用部分等の保安、保全、清掃、消毒、ごみ処理やその他修繕の他、長期修繕計画の作成または変更、敷地及び共用部分等の変更及び運営、修繕積立金の運用など、多くの業務が列挙されています。
また、他にも、理事会の業務として、収支決算・予算案、事業報告・計画案、規約・使用細則などの変更案の作成など相応の知識が無ければ遂行が困難な業務が列挙されています。
そこで、マンション標準管理規約では、管理組合は、その業務の全部または一部をマンション管理業者等の第三者に委託し、または請け負わせ執行させることができると定めており、実際のところ、多くのマンションでは管理組合の業務をマンション管理業者に外部委託しています。
理事会・総会の運営についても、マンション管理業者の担当者が会議に出席し、その議事を補助ことが多く、総会の招集手続きも業者が代行することがほとんどです。
このように、管理組合の業務やその運営についての助言や事務の代行を管理会社に委託する契約が管理委託契約であり、管理組合と管理会社との法律関係はこの管理委託契約がその出発点となるのです。
管理組合と管理会社の間で発生するトラブルとして、例えば委託の範囲の理解についての齟齬が原因とみられるものが挙げられます。
両者の法律関係を整理するには、まずは管理委託契約の内容を確認することが必要となります。
なおこの点については、国交省が、管理委託契約の内容を適正化するためにモデルとして「標準管理委託契約書」を公表しており、同省のホームページからダウンロードすることができます。(http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000011.html)
SNSトラブルを防ぐ、ルール作りとチェック体制
「気をつけたい企業におけるSNSトラブル」という記事でも前述しましたが、個人アカウント、企業アカウントに関わらず適切にSNS利用するためには、企業側でトラブルに対処できるような就業規則やガイドラインを作成し、従業員に周知させ、社内でチェックすることが重要です。
今回はSNSトラブルにも適応できる就業規則、ガイドライン作成のポイントと社内教育、社内チェック体制についてご紹介します。
1.就業規則を作成するポイント
就業規則に記載されているものは、労働者(従業員)の労働条件であり、懲戒処分などの人事措置を示す根拠でもあります。万が一、従業員がSNS上で問題を起こし、それが企業に多大な不利益を与え、重大な問題となった場合、就業規則に則って懲戒処分を検討せねばなりません。
ただ、SNSに限定した内容を就業規則に細かく記載してしまうと、流れの早いSNSのサービスに対応できず、何度も内容の変更をしなければならなくなってしまいます。
前述のとおり、就業規則を変更するには大変な時間と手間がかかるため、就業規則を作成する際には、SNSでの禁止事項を踏まえた一般的な内容にしていくことが重要です。
例えば、服務規律を定めた項目で「勤務中は業務に専念すること」等を記載すれば、業務中に不適切な行為を撮影し、SNSにアップすることが規則違反であると示すことができます。
他にも、機密保持の項目で情報の厳重管理と私的漏えいの禁止を定めることにより、SNSからの情報漏えいを防ぎ、また電子機器管理の項目では、社内PCや貸与されたスマートフォン等へのソフトやアプリの無断インストール禁止などを設けることで、貸与機器でのSNSアプリ等の使用禁止などを示すことができます。
このように、一般的に守るべき規則として記載し、SNSで生じたトラブルに対しても規則に則れるようにしていきましょう。
2.各ガイドラインを作成しましょう
(1)私的利用についてもガイドラインが必要
おおまかなルールについては就業規則で取り決め、SNSを利用する上で気をつけるべき注意点はガイドラインに記載し、適宜改正しながら運用していきましょう。
重要なのは、アルバイトやパートといった全ての従業員に対して周知してもらうよう、わかりやすく、端的に説明することです。高校生や大学生など、若い世代の人にも理解できるような文章、そして内容も長すぎると読み流されてしまうため、要点を絞ってまとめていくとよいでしょう。
具体的な内容としては、「なぜこのようなガイドラインを設けるのか」「SNSとはどのようなWEBサービスのことを指すのか」「その特徴はどんなものか」等を記載し、SNSを知らない人にも、これから利用するかもしれない人にも分かるように作成していきます。
そして一番重要な「SNSを利用する上での注意点」については、社外秘の情報、顧客情報をSNSに投稿しない、勤務時間中はSNSにアクセスしない、など勤務中に起こりうる行為に対して注意を促し、また飲食店では、「有名人が来店したとしてもSNSにアップしない」など業種やサービスに合わせた内容で作成していきましょう。
事例を挙げ、読む側に想像させることで自分自身の事とし、従業員として会社に与える影響が大きいということを認識してもらうという点がポイントです。
(2)公式アカウントを運営する上でのガイドライン
公式アカウントがある企業では、運用していく際の注意点、守るべき点を従業員向けのガイドラインと区別して、公式アカウント用に作成するのが望ましいです。
いつどのようなときに、どのような内容で投稿するのか、SNS上での顧客とのやり取りの方法、トラブルが起こった際の対処法、投稿はどの端末から行うのか(個人所有のものを利用していいのかどうか)などを取り決めていきましょう。
先述したように、SNSの特性上、全ての投稿内容を上長が確認し許可を与えるというのは現実的ではありません。
しかしながら、企業の業績や売上に関わる新商品や新サービスの告知等の際には、「投稿の最終確認作業を複数人で行うこととする」といった内容にしておけば、誤った情報の拡散予防にもなります。
SNSの公式アカウントには、企業の広報的な意味合いが強いもの、担当者の性格が出やすいものなど、様々なアカウントが存在します。それぞれのタイプに合わせた内容にし、例外のないようにガイドラインを作成していきましょう。
3.SNSへの取り組みを外部へアピールする
社内へのSNS対応に加えて、外部へ取り組みをアピールする上でしておきたいのがソーシャルメディアポリシーの作成です。WEBで「ソーシャルメディアポリシー」と検索すると、様々な企業のソーシャルメディアポリシーを見ることができます。
内容としては、「各SNSの公式アカウントがあること」「SNSに対する考え方」「社員への対応」についてなどです。これらを企業のWEBサイトに掲載することで、SNSへの取り組みをしている企業としてアピールでき、トラブルが起こった際にも、企業としての方針を記載しておけば対処している姿勢を示すことができます。
さらに、新商品の情報などは、企業が正式に運営しているサイトやアカウントからのみ行うことや、運営しているWEBサイトやSNS上での意見やクレームの連絡先を掲載することで、誤った情報が予期せず広まるのを防ぐことができます。
4. 社内教育と社内チェック体制の重要性
適切な私的利用、公式アカウント運営をするには、社内での研修や講習を行うのが望ましいでしょう。
新入社員に対しては、その企業に則した利用ができるよう、入社時点での研修等に盛り込むことでSNSが企業に対して与える影響の強さなど、認識を強く持ってもらう機会にもなります。もちろん、アルバイトやパート従業員に対しても入社時に研修を行い、全体で研修内容を把握することが大切です。
講師はSNSに通じた社員や外部講師でも良いですし、肖像権や著作権などに関係する問題も多いため弁護士に依頼するという手段もあります。
就業規則やガイドラインの説明、弁護士に依頼する場合は事例なども紹介し、「自分の身になって考える」というポイントで研修を進めていくと良いでしょう。
研修後は誓約書に署名し、企業の一員であるという意識を強く持ってもらうことも重要です。
社内でのSNSチェックについては、広報担当や管理部門が業務の一環として、いわゆる「エゴサーチ」(自社名、サービス名で検索し関係性を確認)もしくは「モニタリング」(社内PCが適切に使用されているか)を行い、問題が生じた場合には削除依頼や指導等の対応をとる方法、外部専門業者にチェックを依頼する方法、などが挙げられます。
また、公式アカウントで問題が発生した場合、調査対象として投稿した端末やメール等のチェックも行うと原因の究明につながります。
ただし、調査が行き過ぎてしまうとプライバシーの侵害となる可能性もありますので、どの段階までを調査し違反と判断するのかをガイドラインに明示するなど、従業員も配慮し行うことが重要です。
5.まとめ
今回はガイドラインの作成、社内チェック体制などについて説明しましたが、いかがだったでしょうか。企業の管理部門や総務の担当をされている方は、この先起きるかもしれないトラブルへの予防策として、対応が後手にならないよう、ガイドラインについては速やかに作成していきましょう。
次回は、トラブルが起こってしまった際の対処方法についてご説明します。
不貞相手に慰謝料請求ができない??④~今後の問題点について~
【ご相談者様からのご質問】
第三者に離婚慰謝料を請求することができる場面はとても限られているのですね。
今回の最高裁所の判例がでたことにより、気を付けなければならないことはありますか。
【弁護士からの回答】
これまで、不貞行為を行った第三者に対する離婚慰謝料が否定された最高裁版所の判例についてご説明させていただきましたが、今回は、上記判例が出されたことによる、今後の検討課題や、注意しなければならない事項についてご説明させていただきます。
1 注意事項~消滅時効に注意~
夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対しては、「離婚」慰謝料の請求は認められず、「不貞」慰謝料の請求のみ認められることになります。
そして、不貞慰謝料の場合自身の配偶者が不貞行為を行ったこと及び加害者知った時点から3年以内に訴訟を提起しなければ、消滅時効により不貞慰謝料は消滅してしまうことになります。
したがって、不貞を行った第三者に対して慰謝料請求を行う場合には、不貞行為の事実や相手方を知った日から3年以内に請求しなければならないということは認識しておいた方がよいでしょう。
2 検討課題①~離婚の有無が慰謝料金額に及ぼす影響~
従前、「不貞」慰謝料を第三者に対し請求をする場合には、当該夫婦が離婚したか否かという点が、慰謝料金額を算定する上で考慮の対象になるという考え方がありました。
もっとも、今回の判例により、離婚するか否かは、あくまでも夫婦での問題であるということであるため、この判例を素直に読むと、不貞慰謝料を第三者に対し請求する場合には、夫婦が離婚をするのか、婚姻関係を継続するのかについては、あまり影響しないようにも読めるため、「不貞」慰謝料の金額が離婚の有無により影響を及ぼすのか否かについては、今後の裁判例の蓄積を待つ必要があると考えています。
3 検討課題②~配偶者と第三者の連帯責任の範囲~
別の機会にご説明させていただきますが、不貞行為を行った配偶者と第三者は2人で不貞行為という違法な行為を行っているため、連帯して慰謝料を支払う義務をおっており、これを共同不法行為による連帯債務といいます。
今回の最高裁の判例で、配偶者に対しては、不貞慰謝料のみならず離婚慰謝料も認められるものの、第三者に対しては不貞慰謝料のみ認められることになったため、配偶者と第三者は、「不貞」慰謝料の範囲のみ連帯して責任を負うということになると解するのが自然であるため、訴訟において、配偶者に対しては、離婚慰謝料、第三者に対しては不貞慰謝料を請求した場合にはどの範囲で連帯債務を負担することになるのかについては、今後の検討課題になると思います。
4 不貞行為以外で、第三者が離婚慰謝料を負う場合はあるのか?
最高裁判所は、「当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情」がある場合には、第三者に対し「離婚」慰謝料を請求することができる旨判断しているところ、この判断が、不貞行為により離婚を余儀なくされた場合に限定した判断であるのか、それとも不貞行為に至っていなくても、第三者が暴力や脅迫により離婚を余儀なくされた場合等においても、離婚慰謝料を認めるという判断になるのかについては今後、問題になっていくと思われます。
5 最後に
これまで、数回にわたり、不貞行為に関する最高裁の判例についてご説明させていただきましたが、この判例のみならず、不貞行為の慰謝料請求は、法的に複雑であり、専門的な内容が多々ある分野ですので、慰謝料請求については、是非早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。
不貞相手に慰謝料請求ができない??③~最高裁判例の検討~
【ご相談者様からのご質問】
先日、妻から離婚を切り出されました。理由としては、不倫相手から、離婚して一緒になろうと言われたらしく、妻も不倫相手との将来を考えているとのことでした。
妻がそう言う以上、妻との関係は考えていませんが、妻と、不貞相手に対してはきちんと慰謝料を請求したいと考えております。
しかし、先日、ニュースで、不貞相手には離婚の慰謝料が請求できないと知り、どうすればいいか悩んでいます。
【弁護士からの回答】
前回は、夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対する慰謝料請求に関する最高裁の判例についてご説明させていただきました。
今回は、前回ご説明した最高裁の判例の内容の解説とともに、今後検討すべき課題についてご説明させていただきます。
1 第三者には「離婚」慰謝料の請求は認められない。
前回ご説明したとおり、最高裁は、夫婦の一方と不貞行為を行った第三者に対する「離婚」慰謝料は原則として認められないと判断しました。
他方、不貞行為を行ったことを理由とする慰謝料(不貞慰謝料)については認められると判断しました。
離婚慰謝料が原則として認められないと判断した理由として、最高裁判所は、「夫婦が離婚するまでに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが、協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来当該夫婦の間で決められるべき事柄である。」と述べられています。
すなわち、不貞行為があったとしても離婚するかしないかは夫婦で決めるべき事情であるため、離婚に至ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料は、配偶者に対し請求すべきであって(最高裁も、配偶者に対しては離婚慰謝料を請求することができると判断しています。)、離婚するかしないかに関与することができない第三者に対しては原則請求することはできないと判断しました。
2 例外的に離婚慰謝料が認められる場合
上記のとおり、最高裁判所は、夫婦が離婚するか否かは夫婦で決められるべき事柄であることを理由に、第三者に対する離婚慰謝料を否定しています。
したがって、最高裁判所も、第三者が「当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がある」場合には例外的に、第三者に対する離婚慰謝料が認められると判断しています。
どの程度の干渉があれば、特段の事情があると認められるかについては、今後、の裁判例の蓄積を待つ必要がありますが、第三者が不貞している夫婦の一方に対し、配偶者と離婚するよう積極的に働きかけた、その結果として離婚するに至った場合や、第三者自身が、不貞をしていない配偶者に対し、離婚するようメールや電話などで執拗に要請した場合などは、第三者の不貞行為等によって、離婚を余儀なくされたと認められ得るため特段の事情の有無を検討してよいのではないかと思います。
次回は、今回の最高裁判所の判例が出されたことによる、今後の検討課題や注意すべき事項等についてご説明させていただきます。
不貞相手に慰謝料請求ができない??②~各裁判所の判断は?~
【ご相談者様からのご質問】
慰謝料には、離婚慰謝料と不貞慰謝料の2種類があるのですね。
不貞が原因で離婚するのだから、不貞慰謝料だけでなく離婚慰謝料も当然、第三者にも請求できると思うのですが・・・。
【弁護士からの回答】
前回は、最高裁判例の事案のご説明と、どのような点が問題になっているのかについてご説明させていただきました。
この事件、第1審、第2審と最高裁との間で判断が分かれたのですが、ポイントは、不貞行為を行ったことと、夫婦が離婚することをどのように考えるのかというところにあります。
1 第1審及び第2審について
第1審及び第2審は、妻とAとの不貞行為により、夫と妻との間の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったものであるから、Aは両社を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い、Aは夫に対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができると判断しました。
すなわち、第1審及び第2審では、不貞行為を行った第三者に対しても離婚慰謝料を請求することができると判断し、原告の慰謝料請求の一部を認容しました。
判決の理由にもあるように、不貞が原因で離婚したのであるから、離婚慰謝料を支払う義務があるというのは自然なようにも思えます。
もっとも、不貞行為の第三者に対し離婚慰謝料が認められるとすると、不貞により直ちに離婚した場合には、離婚してから3年間相手から請求がない場合には、時効により、請求を逃れられることになりますが、不貞が原因で家庭内別居が続き、不貞行為から10年経過した後に、離婚したような場合には、第三者はその場合でも慰謝料を支払う義務があることになってしまい、いつまでも損害賠償を受けるリスクにさらされることになり、妥当ではないという考え方もあります。
2 最高裁判所の判断
上記第1審及び第2審の判断を不服としたAが、最高裁判所に上告を行った結果、平成31年2月19日、最高裁判所において、それまでの判決のうち、Aの敗訴部分(離婚慰謝料を認めていた部分)を取消した上で、原告である夫の請求を棄却しました。
そして、最高裁判所は、以下のような判断を行いました。
①夫婦の一方は他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害を求めることができる。
②夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合はあることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない
③第三者がそのこと(夫婦離婚させたこと)を理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不法行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる。
上記①~③の詳細な内容については次回ご説明させていただきますが、上記判断のうち②については、第三者に対し、「不貞慰謝料」は認められるものの、「離婚慰謝料」は原則として認められないと判断した点で非常に重要な判例とされています。
次回は、最高裁判所の判断の内容について解説させていただきます。
マイナンバーと特定個人情報に関する安全管理体制
平成28年1月から、社会保障、税、災害対策の3分野で行政機関などに提出する書類にマイナンバーの記載が必要になりました。
マイナンバー制度において、多くの方が懸念しているのは「個人情報の漏えい」です。
マイナンバーを取り扱う側である事業者は、外部への漏えい・紛失を絶対防がなくてはなりません。
仮にマイナンバーの情報を漏えい・紛失してしまった場合は社会的信用を失うことにもつながります。そのため安全管理対策の徹底化は急務です。
事業者は、①組織的安全管理措置(組織的に管理する)②人的安全管理措置(人的に管理する)③物理的安全管理措置(物理的に管理する)④技術的安全管理措置(技術的に管理する)の4つの安全管理対策(措置)を講じる必要があります。
前者2つがソフト面、後者2つはハード面の対応と言えますが、今回はソフト面の安全管理対策について検討してみましょう。
1.組織的安全管理措置~組織体制、取扱規定
最初にすべきは、事務における責任者を決めることです。
そのあとに事務を行う担当者を決めて、担当者の役割と取り扱うマイナンバーや「特定個人情報(マイナンバーを含む氏名、生年月日、住所等の個人情報)」の範囲を明らかにします。
事業者はマイナンバーや特定個人情報を安全に取り扱うためのルールである取扱規定等を作成したら、これに基づく運用状況を確認するため、システムログや利用実績を記録する必要があります。
例えば、マイナンバーや特定個人情報に関して、以下のような行為を記録することが考えられます。
・ファイルの利用や出力の記録
・書類や媒体等の持ち出しの記録
・ファイルの廃棄や削除の記録
・情報システムのログインやアクセスログなどの記録
そして、もし担当者が取扱規定等に違反したり、情報漏えいなどがあったりした場合に責任者へ報告するための仕組みを整えます。
複数の部署で取り扱う場合における各部署の任務も明確にしましょう。
2.組織的安全管理措置~取扱状況の把握、情報漏えいなどへの対応
事業者は、マイナンバーや特定個人情報を記録したファイルの取扱状況を確認するための手段を整備する必要があります。
例えば、管理簿を作成し、「ファイルの種類」「名称」「責任者」「取扱部署」「利用目的」「作成日」「廃棄日」「廃棄や削除の状況」「アクセス権を有する者」などを記録する等です。
なお、取扱状況を確認するための記録などには、マイナンバーを記載しないようにしてください。
情報漏えいなどがあったり、その兆候を把握したりした場合に、適切に、且つスムーズに対応する仕組みを整える必要があります。
また、情報漏えいに伴う二次被害の防止などの観点から、再発防止策を早急に公表することが重要です。例えば以下のような対応を行うことを定めておくなどです。
・事実関係の調査及び原因の究明
・影響を受ける可能性のある本人への連絡
・特定個人情報保護委員会及び主務大臣などへの報告
・再発防止策の検討及び決定
・事実関係及び再発防止策などの公表
事業者はマイナンバーや特定個人情報の取扱状況の確認を定期的に行う必要があります。整備した対策は定期的に見直し、必要があれば改善しなければなりません。
3.人的安全管理措置
事業者は、マイナンバーの事務を行う担当者に対し、適切な教育を実施することが求められます。
マイナンバーの取り扱いの留意事項や、新たな制度などに関する研修を定期的に行うなど、常に教育をすることが重要です。
また事業者は、マイナンバーの事務担当者に対し、適切な監督を行うことが必要です。
マイナンバーや特定個人情報について、「秘密保持に関する事項」を就業規則や雇用契約書に盛り込むことなどで、担当者を監督できる体制を構築する必要があります。
4.中小規模事業者の対応
中小規模事業者でも、責任者と担当者を区別することで組織的に管理することが望ましいとされています。情報漏えいなどがあった場合に備え、従業者から責任者へ報告する仕組みを確認し、責任ある立場の者が定期的な点検を実施しましょう。
中小規模事業者の実務担当者には、取扱規定等に基づく運用状況の確認において、取扱状況がきちんと分かるように記録を保存することが求められます。
その方法として、管理簿や業務日誌などにマイナンバーや業務日誌などにマイナンバーなどの入手や廃棄、本人への交付などを記載したり、事務を行う際に利用したチェックリストを保存したりするなどが考えられます。
マイナンバーや特定個人情報の取扱状況の把握においても、同様の記録・保存が必要です。
5.まとめ
マイナンバーの安全管理体制においては、組織的に管理し、情報漏えいを防いでいくことが重要です。
中小規模事業者にも、マイナンバーの事務を行う実務担当者に対し、適切な教育や監督が求められます。
教育や監督の一環として、定期的に外部の専門家による研修等を活用するのも有効です。
不貞相手に慰謝料請求ができない??①~最高裁判例の争点とは~
【ご相談者様からのご質問】
1年前に夫がほかの女性と不倫していることが判明しました。現在、夫とは離婚協議中なのですが、夫が離婚に応じてくれないのと親権等の問題があり、まだまだ離婚については長引きそうです。
夫の不倫相手へ慰謝料については、夫との離婚が解決してからゆっくり請求しようと考えています。
【弁護士からの回答】
先日、最高裁判所において、不貞行為を行った第三者への慰謝料請求に関する重要な判決が出されました(テレビのニュースでも報道されていたので、一般の方でも知られている方もいらっしゃるかもしれません。)。
もっとも、ニュースの見出しなどでは、「不貞行為を行った第三者に対し慰謝料を請求できない」というような誤った情報を与えるような内容も見受けられました。
そこで今回から、最高裁判例の事案の概要や争点(何が法的な問題となったのか)についてご説明するとともに、最高裁判所がどのような判断を行ったのかについてご説明させていただきます。
1 事案の概要
原告の夫は、平成6年3月に妻となる女性と婚姻し、その年の8月に長男、平成7年に長女をさずかりました。しかし、夫は仕事のため帰宅しないことが多く、妻も働くようになった平成20年12月以降は、夫婦の間で性交渉がない状態になっていました。
その後、妻は入社した直後に会社で知り合った男性(訴訟の被告です。以下、Aとします。)と親密になっていき、平成21年6月以降、Aと不貞行為に及ぶようになりました。
そして、夫は、平成22年5月頃、妻とAの不貞関係を知るに至りましたが、そのまま同居を続けていました。また、妻とAとの不貞関係は、同じころ解消しました。
夫と妻はそのまま同居を続けていましたが、平成26年4月頃、長女が大学を進学したのを機に、夫と別居し、半年間夫のもとに帰ることも連絡を取ることもなかったため、夫において平成26年11月頃、離婚調停の申し立てを行い、平成27年2月に調停離婚が成立しました。
そして、離婚成立後、夫から不貞相手のAに対し、妻とAが不貞行為を行ったことにより夫婦が離婚するに至ったとして慰謝料請求等を500万円の支払いを求める訴訟を行いました。
2 問題点
今回の事案で問題となるのが、慰謝料請求権の消滅時効との関係で、「何を原因とする慰謝料請求を行うか」という点にあります。
まず、慰謝料請求権は、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条、710条)であり、かかる請求権の消滅時効は、被害者が「損害及び加害者を知った時から三年間」になります(民法724条)。
そして、不貞と離婚の関係では、「不貞行為を原因とする慰謝料」(「不貞慰謝料」といいます。)と、「離婚を余儀なくされたことによる慰謝料」(「離婚慰謝料」といいます。)の2つの慰謝料があり、各慰謝料では、時効期間の開始時期(起算点といいます。)が異なります。
すなわち、不貞慰謝料は、不貞行為をされたことにより被った精神的苦痛が損害になります。したがって、時効の起算点、すなわち「損害及び加害者を知った時」というのは、不貞行為の事実及び不貞行為の相手方を知ったときになります。
最高裁判例の事例では、夫は平成22年5月ころ妻とAの不貞の事実を知っているため、3年後の平成25年5月の時点で、時効期間が満了してしまい、夫はAに対し、「不貞」慰謝料が請求できないことになってしまいます。
これに対し、「離婚慰謝料」の場合には、離婚を余儀なくされてしまったことによる精神的苦痛が損害になります。したがって、「損害」を知ったときが時効期間の起算点になるため、離婚慰謝料の場合には、離婚した時が起算点となります。
最高裁判例の事例でも、「離婚」慰謝料の構成をとれば、離婚をしたのが平成27年2月であるため、そこから3年以内であれば離婚慰謝料を請求することができます。
おそらく夫(原告)の訴訟代理人も不貞慰謝料では時効期間の問題があるため、離婚慰謝料として構成して訴訟提起したのでしょう。
したがって、最高裁判例での一番の争点は、「不貞行為を行った第三者(夫婦以外の不貞行為の当事者)に対し、「離婚」慰謝料を請求することができるか」という点になり、この点について、最高裁判所が初めて判断を行ったことで注目が集まっていました。
次回には、上記争点について、第1審、第2審理及び最高裁判所がどのような判断を下したかについてご説明させていただきます。
【不動産】区分所有建物の管理(前編)
区分所有建物の管理について、前後編の2回に分けて見ていきましょう。
前編では、主に管理組合の成り立ちやその役割について説明していきます。
1 区分所有法と区分所有建物の管理の概要
マンションで共同して生活していくためには、玄関ホールや廊下の清掃、エレベーターの保守点検といった日常的なものから、建物全体の補修といった中長期的な修繕計画に基づく建物の修繕まで、多種多様な管理行為が必要となります。そして、当然にこういった管理を行う役割を担う人が必要となります。
(1)区分所有法上の管理に関わる規定
区分所有法は、区分所有者の共有に属するマンションの共用部分の管理について、建物の保存行為を除き、その決定を、①区分所有者らで構成される管理組合の集会決議、または②規約によるものとして、③管理者(管理組合が法人である場合は、管理組合法人)がこれらの管理組合の決議や規約を執行するものと定めています。
しかしながら実際のところ、マンションを管理していくためには多くの知識と労力が必要とされるため、専門業者の助力が必要な場合が圧倒的に多くなるため、外部へ委託されているのが一般的です。
次に、管理組合の内部組織について見てみましょう。
区分所有法は、法人化されている管理組合については理事・監事の規定を置いていますが、法人化されていない管理組合についてはこれらの規定を置いていません。
しかしながら実際のところは、法人化されていない管理組合であっても上記のような役職が設置され、管理組合の意思決定が行われることが一般的となっています。
つまり、実際のマンションの管理は、区分所有法に規定のない管理委託契約により外部に委託され、具体的な管理組合の内部組織は規約により構成されていることが多いため、区分所有法のみの理解ではマンション管理に関わる法律関係を理解することはできないということです。
以下に、管理組合、管理規約、理事長(管理者)、理事・監事、管理会社(管理の委託)について順次解説していきます。(管理規約以降の項目は後編にて)
2 管理組合
(1)管理組合の成立
区分所有者は、その個々人の意思にかかわらず、建物等を管理するための団体の一員となり、所有者全員で建物等の管理のための団体を構成し、この団体を「管理組合」といいます。
(2)管理の対象物
管理組合が管理する対象は、どういった物になるのでしょうか?
区分所有法では、区分所有者の共有に属する①共用部分と②建物の敷地及び共用部分以外の付属施設(これらに関する権利を含む)の管理・変更に関する事項は管理組合の集会の決議または規約によるとしており、これらが管理組合による管理の対象物となります。
管理組合による管理の対象物として区分所有法3条に列挙されているのは「建物」「その敷地」「付属施設」であり、上記にある①共用部分・②建物の敷地及び共用部分に限定されているわけではありません。
更に、規約では「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理または使用に関する区分所有者相互の事項(法30条)」について定めることができるため、管理の対象物を、規約によって上記①や②以外に拡大することも可能なのです。
なお、専有部分に属する物は、当然ながらその部分の区分所有者自身が管理することが原則ですが、例えば水道管を思い浮かべると分かるように、その枝管・支管が専有部分に属する設備であっても、その本管は共用部分に属しており、配管としては構造上一体となっているため、専有部分・共用部分に関わらず一体的に管理する方が効率的な管理対象もあります。
そういった場合にも、規約によって区分所有者ではなく管理組合がその管理を行うよう定める事が可能となっています。
(3)管理組合の法的性格と権限
1の(1)でも少し触れましたが、区分所有建物の管理組合には、①法人化されている場合と②法人化されていない場合の2つのケースが想定されます。
①法人化されている場合
管理組合そのものが権利・義務の主体となり得る
管理組合法人は、その事務に関して区分所有者らを「代理」するものであり(法47条6項)、管理組合法人の法律行為の効果は最終的には区分所有者に帰属します。
②法人化されていない場合
管理組合の法的性格は、その組織の実態に応じて判断されることとなり、組合内で規約を定めて集会が行われている場合は、その多くが権利能力なき社団と判断されます。
また、①と同様に②の管理組合における管理者も、その職務に対し、あくまでも「区分所有者」を代理するもの(法26条2項)と定められています。
つまり、管理組合が法人化しているか否かに関わらず、区分所有建物の管理に関する法律関係は、その本来的な権利・義務の帰属主体が組合ではなく区分所有者にあるということを理解する必要があるのです。
(4)決議の効力と決議事項
管理組合の決議の効力は、決議当時の組合の構成員のみならず、その特定承継人にも及び、更には建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき賃借人などの占有者にも及びます。
なお、区分所有法が定めている決議事項は表1の通りで、「区分所有者及び議決権の各過半数」で決するべき普通決議事項(法39条)と決議用件が加重された特別決議事項があります。
また、区分所有法に規定されていない事項についても、区分所有法や公序良俗、その他の法律に反しない範囲で、規約で集会の決議事項とすることも可能です(法30条1項)。
【普通決議事項】
1 | 18条本文 | 区分所有者の共有に属する共用部分の管理に関する事項 |
---|---|---|
2 | 21条、18条本文 | 区分所有者の共有に属する敷地または付属設備の管理に関する事項 |
3 | 25条1項 | 管理者の選任・解任 |
4 | 26条4項、47条8項 | 管理者等に対する訴訟追行権の授権 |
5 | 33条1項但書、42条5項、45条4項 | 法人でない管理組合において管理者がないときの規約、集会議事録、書面決議の書面の保管者の選任 |
6 | 39条3項 | 集会における電磁的方法による議決権の行使 |
7 | 41条 | 集会の議長の選任 |
8 | 49条8項、50条4項、25条1項 | 管理組合法人の理事および監事の選任・解任 |
9 | 49条5項 | 理事が数人ある場合の代表理事の選任または共同代表の定め |
10 | 49条の3 | 理事の代理人の選任の禁止 |
11 | 52条1項本文 | 管理組合法人の事務 |
12 | 55条の3 | 管理組合法人の清算人の選任 |
13 | 57条2項・4項 | 区分所有者等の共同利益は違反行為の停止等の請求の訴訟提起 |
14 | 57条3項・4項、58条4項、59条2項、60条2項 | 区分所有者等の共同利益は違反行為に関する法57条から60条までの訴訟に関する管理者等への訴訟追行権の授権 |
15 | 61条3項 | 建物の小規模一部滅失の際の復旧 |
【特別決議事項】
1 | 17条1項 | 区分所有者の共有に属する共用部分の変更 |
---|---|---|
2 | 21条、17条1項 | 区分所有者の共有に属する敷地または付属設備の変更 |
3 | 31条1項 | 規約の設定・変更・廃止 |
4 | 47条1項 | 管理組合の法人化 |
5 | 55条1項3号、2項 | 管理組合法人の解散 |
6 | 58条1項・2項 | 区分所有者等の共同利益は違反行為に対する専有部分の使用禁止請求 |
7 | 59条1項・2項 | 区分所有者の共同利益は違反行為に対する区分所有権等の競売請求 |
8 | 60条1項・2項 | 占有者の共同利益は違反行為に対する引き渡し請求 |
9 | 61条5項 | 建物の大規模一部滅失の際の復旧 |
10 | 62条 | 建物の建て替え |
(5)決議の限界
管理組合の決議といえども、区分所有法の規定に反することは勿論できません。
区分所有法では、集会の招集・議事の手続について34条以下に規定を置いています。
また、決議の内容についても、決議の内容が公序良俗に反してはならず、かつ区分所有法の規定に反することもできません。
後半に続きます。
【相談事例31】~迷惑動画④動画の拡散や実名を晒すのは違法?~
【相談内容】
先日、僕が通っている大学の同級生が身内のSNSで迷惑動画をアップしていました。
迷惑動画を投撮影することは悪いことですよね?動画を拡散するだけでなく、彼の名前や出身大学などを投稿して懲らしめたいと考えています。
【弁護士からの回答】
自らの正義感や面白半分などという理由により、迷惑行為を撮影した動画を拡散したり、ネット上で迷惑動画などの問題行動を行った当事者の個人情報を探し当て、その情報を拡散することが頻繁になされています。
ニュースなどでは、迷惑動画を撮影した人などを問題視するものが多く、動画を拡散したり、個人情報を晒したりする人の問題については取り上げられていることがなかったため、今回、そのような行為の法的リスクについてご説明させていただきます。
1 肖像権、プライバシー権侵害
判例上認められている個人の生活上の自由(権利)として、承諾なしにその容貌、姿態を撮影されないことが認められており、これを、肖像権やプライバシー権といいます。
したがって、迷惑動画を拡散することは、承諾なしにその容貌などを不特定多数の人に拡散してしまう行為であるため、肖像権やプライバシー権を侵害する行為として損害賠償の対象になりうる行為です。
迷惑動画を撮影するという行為自体は違法なのですが、違法な行為をした人は肖像権が失われるという考え方はなされておりません。
したがって、迷惑動画を撮影した人を拡散する行為も違法な行為に該当しうることになります。(逮捕された容疑者などを無断で撮影し、報道する行為についても肖像権との関係では一応問題となりうるといえるでしょう。)。
2 個人情報の拡散について
迷惑動画の拡散に加えて、動画に映っている人の氏名、住所、出身大学等個人情報についても拡散した場合にはどのような問題があるのでしょうか。
自分自身で行っているので、自業自得という側面は否定できないものの、特定の人物が店の信用を損なうような行為を行っているということは、一般的にその人の名誉を毀損する内容であることが一般的であるため、個人情報を含めて動画を拡散した場合には、かかる行為が民事上違法な行為であることに加え、名誉毀損罪として刑事責任を問われてしまう可能性も否定できません。
以前にご説明したことがありますが、名誉毀損行為を行ったとしても公益的な目的である場合には、違法性が認められない場合もありますが、いわゆるジャーナリズムとは異なり、一般の人がSNSで拡散する行為は、面白半分である場合やリツイート数や「いいね」の数を稼ぐためであることが多いと思われますので、違法性が否定される場合は少ないでしょう。
3 まとめ
スマートフォン及びSNSの普及により、今では誰でも簡単に情報発信をすることができる時代であり、迷惑動画に限らず、ほんの軽い気持ちで投稿したことで他人に多大なる損害を与えてしまう場合や、自分自身を傷つけてしまうことが容易に想定されます。
技術の進歩は素晴らしことですが、それに伴って、技術を用いる人のリテラシーの向上も進歩に比例して必要不可欠になっていると思います。
もし、自分の行うとしている行為が、法的に問題があるのではないかと不安を抱いた場合には、行動を起こす前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」
【相談事例30】~迷惑動画③会社側の対策は?~
【相談内容】
個人で居酒屋を営んでいます。うれしいことに毎日繁盛しており、自分や家族だけでは到底手が回らなくなってきてしまったため、一挙に学生さんのバイトを3名採用することになりました。
ですが、最近話題の迷惑動画の投稿による炎上騒動などを目にするようになり、他人事ではないなと思ってしまいました。
学生のアルバイトなどを雇うにあたって、迷惑動画等の迷惑行為を防止するためにはどのような手だてがあるのでしょうか。
【弁護士からの回答】
これまでは、迷惑動画を投稿した側のリスク等についてご説明させていただきました。
今回は、迷惑動画を投稿されないよう、店側としてどのような対策をとればよいのかについて、純粋な法律問題ではないとは思いますが、弁護士としてアドバイスできる範囲でご説明させていただきたいと思います。
1 指導及び管理
まず、入社する従業員に対し、迷惑動画の投稿などを絶対に行わないよう指導すること及び、万が一そのようなことをした場合に店側として従業員に対し損害賠償等法的措置を講ずるという毅然した態度を示しておくことにより、迷惑動画の投稿行為自体を抑制することが期待できるでしょう。
この指導などについては、迷惑動画の投稿のみならず、仕事上知りえた個人情報を流出しないことなど仕事を実施する上での禁止事項をきちんと認識してもらう際に有効であると考えられます。
また、職務中の携帯電話の使用を禁じることや、職場で携帯電話を預かるといった選択肢もありうるところではありますが、その際には、家族からの緊急の連絡などへの対応が困難になりその際の法的責任などの問題もあり、採用する際には慎重な対応が必要になるでしょう。
2 身元保証契約
前回もご説明させていただいたとおり、学生の従業員が迷惑動画等の不法行為を行ったとしても、親に賠償責任を追及することはできません。
そこで、親族等を身元保証人とすることで、仮に従業員が会社に損害を与える行為を行った際には、身元保証人に対し、賠償額を請求することができることになります。
したがって、損害を確実に回収するためには、入社時に身元保証契約を作成するのがよいでしょう。
もっとも、身元保証契約を締結するためには、契約書が必要であり、他人の損害を肩代わりする契約であるため、要件が厳格に定められており、せっかく身元保証契約を締結したとしても、要件を充足していない場合には身元保証契約は無効になってしまうことになります。
したがって、身元保証書を作成する際には、弁護士に作成を依頼するか、作成した契約書が有効な内容になっているのかについて、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
掲載している事例についての注意事項は、こちらをお読みください。
「相談事例集の掲載にあたって」