弁護士コラム

2019.04.18

恋人の自傷癖・薬物使用等でお悩みの方へ~法律で保護できるひと~

「大切な人が自分を見失っている」

恋人に自傷癖があり、自殺をほのめかされてお困りの方や、恋人の薬物使用でお困りの方は一定数いらっしゃいます。

自傷癖と薬物依存、どちらも、精神衛生上、放置しておくことは望ましいものではありません。だからと言って大切な人を警察につき出すのも気が引ける・・・。どこに相談すればいいかわからない・・・。なんだか自分も気分が沈んできた・・・。

そんな方に、なるべく関係を壊さないで穏便に解決する一手段をご紹介したいと思います。
知っておくだけでも安心な情報で、なおかつあまり公にはされていない情報なので是非要点だけでも知っておくといいですよ。

要点は前半にまとめています。根拠となっている法律の解説は後半にまとめています。
要点だけ知りたい方は前半をお読みになって下さい。

1.話し合いでなんとか出来ないことだってある

例えば、身近な人が自傷癖を持っていたり、薬物依存に陥っていたりしてお困りの際に、なんとか説得して、立ち直らせられないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、精神医学の専門知識がない場合、話し合いや、道具の取り上げを行うことで逆に自傷や薬物依存に拍車をかけてしまう場合もあります。

自分だけが相手のことを一番分かっているとは思わずに、一旦、客観的な専門家の意見をあおぐことも本人のためを思えば適切な判断であると思われます。

そして、往々にして自傷行為や薬物使用をしている本人は病院へは行きたがらないケースが多いものと思われます。本当に立ち直ってほしいと思うのであれば、公共の制度を利用し、治療を受けてもらうのが最適解でしょう。

2.不幸にも病んでしまった大切な人を保護する制度

突然ですが、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律という法律をご存知ですか?
簡単にいえばこの法律は精神的な健康を促進するための法律です。

この法律には、錯乱や過度な自傷・薬物使用など精神的な疾患の疑いがある方のうち、ご本人に病識がない場合に、ドクターに適切な治療を行ってもらう制度があります。

パートナーが自傷行為をやめないのに、病院に行きたがらない場合や、パートナーが薬物を使用して錯乱することがある場合には、この法律によって、保健所に申請し、調査・指定医に診察をしてもらうという手段があるのです。

しかしながら、精神的な錯乱状態にある方・希死念慮の方で治療を拒否している方を保健所へ連れて行くことは現実的には困難ですので、治療をさせようとする方がご本人の症状を記録し、その他の記載事項を書いて申請することとなります。
その後保健所の調査のうえ、指定医の診察を経て治療や措置入院が開始される運びとなります。

このように治療を受けさせるには「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に基づいた都道府県知事に対する申請を経ることが必須条件になりますので、まず法律事務所に依頼して、事情を弁護士などに話した上で、法律事務所を通して申請することもできます。
また、法律事務所を通すことで申請後の本人の処遇の流れを知ることができます。

申請が認められ、指定医2名の診察により、措置入院が妥当であるという判断がされれば、病床において、本人を治療させることができます。
病床の区分には一般病床・療養病床・精神病床・結核病床・感染症病床と5種類ありますが、そのうちの精神病床に入院することになります。

精神病床というと「隔離」をご想像されるかもしれませんが、精神病床にも開放病棟という施錠されていない病棟もあり、一定の自由は保証されています。

なお、希死念慮をお持ちの方などは、「保護室」などと称される、閉鎖・隔離で、自傷に使える道具のない、施錠・閉鎖された病床に入院することになります。
ここへ入院することになると、自傷や薬物は使えず、一定期間は治療を受けてもらうことが出来るので一安心といえるでしょう。

なお、今回は恋人の自傷他害行為についてご紹介しましたが、ご家族が自傷他害のおそれのある状態に陥っている場合には、少しソフトな医療保護入院制度というものもあります。

医療保護入院は申請を行う必要はなく、本人を病院に連れて行き入院させ、治療させるものですので特段の申請を行う必要はありません。
詳しくは「医療保護入院」で検索をかければ制度が出てきます。

3.法律上の根拠

法律上、人の自由を制限することはそう簡単には認められていません。
人の自由を制限する場合は法律の根拠が必要となります。今回のように法律の規定によって精神病床に入院させる場合も一定の手続が要求されています。

申請による措置入院の場合であれば精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第22条1項で都道府県に申請し、第27条1項で指定医の診察、第29条で都道府県知事の措置入院決定となります。

4.まとめ

よく恋人がリストカットやアームカットをしているといったことや、薬物を身近な人が使っていてやめさせたいという話を聞きます。

法律には、自傷行為を止めて保護する制度もありますので、身近にそのような方がいらっしゃったら、法制度を使うことも手段の一つとしてお考えになるのもよいのかもしれません。

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