弁護士コラム

2026.09.15

10対0の加害者でも弁護士費用特約は使える?自動車事故で弁護士に依頼すべきケースを解説


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10対0の加害者でも弁護士費用特約は使える?自動車事故で弁護士に依頼すべきケースを解説

 

自動車事故を起こし、自分の過失が100%となる「10対0」の加害者になった場合、加入している保険の弁護士費用特約は使えるのでしょうか。一般的な弁護士費用特約は、主に被害事故で相手方へ損害賠償請求する際に利用するものですが、保険商品によっては加害事故の刑事事件にも利用できる場合があります。
本記事では、10対0の加害事故で弁護士費用特約を利用できる場合や、保険会社とは別に弁護士への相談・依頼を検討した方がよい場面について弁護士が解説します。

※本記事では、自分の過失が100%、相手方の過失が0%となる事故を「10対0の加害事故」として解説します。

第1章 弁護士費用特約とは?一般的な補償範囲と利用する場面

まずは、弁護士費用特約の一般的な補償内容と、どのような事故で利用されるのかを確認しましょう。

1-1 一般的な弁護士費用特約は相手への損害賠償請求にかかる弁護士費用を補償する

自動車保険に付帯する一般的な弁護士費用特約は、自動車事故などで自分が被害を受けたとき、相手方へ損害賠償を請求するために弁護士へ相談・依頼する費用を補償するものです。けがをした場合の治療費や慰謝料、休業損害、壊れた車の修理費などについて相手方と交渉するため弁護士に依頼した場合に、その弁護士費用を契約上の限度額まで保険でまかなうことができます。
補償内容は保険会社や商品によって異なりますが、代表的な商品をみると、弁護士費用について1事故・被保険者1名につき300万円、法律相談費用は10万円を上限としているものがあります。これは目安ですので、利用する際には自身が加入している保険内容を確認してください。

1-2 典型的に利用するのは自分の過失が0%のもらい事故

弁護士費用特約が一般的に利用されるのは、自分の過失が0%となる「もらい事故」の場面です。
自分に損害賠償責任がない事故では、自分が加入している対人・対物賠償保険を使わないため、保険会社に相手方との示談交渉を任せることができません。そのため、相手方の保険会社と自分で話し合うことになります。
しかし、相手方の保険会社から慰謝料や休業損害などの賠償金を提示されても、その金額が事故やけがの程度に見合ったものなのかを判断するのは簡単ではありません。
このような場合に、相手方の保険会社との交渉を弁護士に任せ、その弁護士費用を補償するのが弁護士費用特約の基本的な役割です。

では、自分が10対0の「加害者」側になった場合、弁護士費用特約は利用できないのでしょうか。

第2章 10対0の加害者でも弁護士費用特約を使える場合がある

10対0の加害事故では、被害者への損害賠償と、加害者本人の刑事事件とで対応する人が異なります。弁護士費用特約が使えるかどうかも、この2つを分けて考えると分かりやすいです。

2-1 被害者への損害賠償では一般的な弁護士費用特約は通常使えない

自分の過失が100%、相手方の過失が0%であれば、自分から相手方に対して交通事故による損害賠償を請求することはありません。そのため、自分の過失が100%の場合には、相手方への損害賠償請求を対象とする一般的な任意保険の弁護士費用特約は通常利用できません。

ただし、保険商品によっては、刑事事件における弁護士費用を補償しているものもあります。

2-2 対人加害事故の刑事事件まで補償する弁護士費用特約もある

自動車事故で相手にけがをさせたり、死亡させたりした場合には、被害者への損害賠償とは別に、運転者本人の刑事責任が問題になることがあります。
保険商品によっては、このような対人加害事故について、刑事事件への対応に必要となる弁護士費用や法律相談費用を弁護士費用特約の対象としているものもあります。

2-3 加害者でも使えるかは弁護士費用特約という名称だけでは判断できない

このように、「弁護士費用特約」と呼ばれるものには、被害事故についての損害賠償請求のみを対象とする商品もあれば、対人加害事故の刑事事件まで対象とする商品もあります。また、刑事事件が対象であっても、死亡事故、逮捕、起訴など一定の条件が設けられている場合もあります。

そのため、交通事故の加害者となってしまい、弁護士への相談を考えている場合には、まず自分が加入している弁護士費用特約の範囲を確認することが重要です。

第3章 10対0の加害事故では損害賠償と刑事事件で弁護士の役割が異なる

10対0の加害事故における弁護士の役割は、「被害者への損害賠償」と「加害者本人の刑事事件」とで異なります。自身で弁護士を付けるべきかを考えなければならないのは、加害者本人の刑事事件対応についてです。

3-1 被害者への損害賠償交渉は通常は自分の保険会社が対応する

10対0の加害事故では、通常、相手がけがをした場合の治療費や慰謝料、車の修理費用などについて損害賠償責任が生じます。
任意保険の対人賠償保険・対物賠償保険に加入し、示談交渉サービスを利用できる場合には、このような被害者との損害賠償交渉は一般的に保険会社が加害者に代わって行います。
そのため、損害賠償交渉については、自身で弁護士への相談を検討する場面は通常ありません。

3-2 損害賠償の交渉が難航した場合も保険会社側で弁護士が対応することがある

自分が加害者で被害者との話し合いがまとまらず、調停や訴訟に発展する場合もあります。
この場合も、示談交渉サービスの対象となる事故であれば、一般的には保険会社が弁護士の選任を含む調停・訴訟の手続を行い、その費用も保険会社が負担するため、直ちに加害者が自分で弁護士を選任しなければならない場面ではありません。

不安な場合には、加入している対人・対物賠償保険でどこまで対応してもらえるかを保険会社に確認しておくとよいでしょう。

3-3 刑事事件への対応は自分で弁護士への依頼を検討する

一方、人身事故では、3-1や3-2で確認した民事上の損害賠償とは別に、事故の内容によって過失運転致死傷罪などの刑事責任が問題になることがあります。
このような加害者本人の刑事事件については、保険会社が対応してくれるわけではありません。そのため、刑事事件について弁護士のサポートを受けたい場合には、加害者本人が弁護士への依頼を検討することになります。

ここで確認したいのが、弁護士費用特約です。
先述のとおり、加入している保険が加害事故の刑事事件にかかる弁護士費用まで補償している場合には、一定の条件・範囲で弁護士費用の補償を受けられることがあります。
まずは保険会社に連絡し、自身の事故について弁護士費用特約を利用できるかを確認する必要があります。

刑事事件の弁護士費用が補償の範囲外であり、自分で選んだ弁護士に依頼する場合には、原則として自費で依頼することになります。なお、勾留後など一定の場合には、国選弁護人制度を利用できることがあります。

第4章 弁護士費用特約が使えなくても弁護士への相談を検討した方がよいケース

弁護士費用特約が使えない場合でも、事故の内容によっては、自費であっても早い段階から弁護士に相談した方がよいケースがあります。
特に、事故そのものが重大な場合、すでに刑事手続への対応が必要になっている場合、被害者との示談や謝罪を刑事処分も見据えて進める必要がある場合には、本人だけで対応することが難しくなります。

4-1 死亡・重傷事故など刑事処分が重くなる可能性がある場合

被害者が死亡したり、重いけがを負ったりした事故では、軽微な人身事故と比べて刑事処分が重くなる可能性があります。
このような重大事故では、「まだ逮捕されていないから様子を見る」という対応はおすすめできません。事故後には警察による捜査が進み、事故の発生状況や運転状況、過失の内容などが確認されていきます。事故状況によって今後の刑事手続や対応方針も変わるため、早い段階から刑事事件としての対応を考える必要があります。

弁護士に早期に相談すれば、ドライブレコーダーなど事故状況を確認できる資料を整理し、どのような点が刑事責任の判断で問題となり得るのか、今後どのような手続が想定されるのかを確認できます。
死亡事故や重傷事故では、捜査が本格化してから対応を考えるのではなく、事故直後の段階から今後の見通しと対応方針を整理しておくことが重要です。そのためにも、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。

4-2 取調べや逮捕・勾留など刑事手続への対応が必要な場合

警察から取調べを受けている、逮捕される可能性を指摘されている、すでに逮捕・勾留されているなど、刑事手続が具体的に進んでいる場合には、弁護士の必要性はさらに高くなります。
弁護士に依頼すれば、取調べにどのように対応すべきかについて助言を受けることができます。また、逮捕された場合には弁護士が接見して本人から事情を聞き、勾留された場合には身体拘束からの早期解放に向けた対応や、勾留に対する不服申立てなどを検討することができます。

逮捕による身体拘束は最長72時間で、その後勾留されると、勾留期間は原則10日間、さらに最大10日間延長されることがあります。そのため、逮捕・勾留が問題となっている場面では、できるだけ早く弁護士と連絡を取ることが重要です。

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4-3 刑事処分を見据えて被害者への謝罪や示談を進めたい場合

人身事故では、被害者への謝罪や被害弁償、示談の状況が、起訴・不起訴や量刑を判断する際の事情の一つとなることがあります。
保険会社は治療費や慰謝料など民事上の損害賠償についての交渉は行いますが、刑事事件への影響まで考えて、被害者への謝罪や示談を進めてくれるわけではありません。
また、被害者やその家族が加害者本人との直接の連絡を望んでいない場合には、本人から連絡を取ろうとしても話し合いを進められないこともあります。

このような場合には、弁護士が窓口となって被害者の意向を確認し、刑事事件への影響も考慮しながら謝罪や被害弁償、示談を進めることが考えられます。
特に被害者との直接のやり取りが難しいケースでは、弁護士を付けることが被害者対応を進めるための重要な手段になります。

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まとめ 10対0の加害事故で対応に迷ったら早めに弁護士へご相談ください

10対0の加害事故では、保険会社に任せられる部分と、加害者本人が対応しなければならない部分があります。特に人身事故で刑事責任が問題になる場合には、事故後の対応や弁護士へ相談するタイミングによって、その後の進め方が変わることもあります。
「弁護士費用特約が使えるのか分からない」「保険会社から特約の対象外と言われたが、自費で弁護士を付けるべきか判断できない」といった場合には、弁護士費用の問題だけで依頼を見送る前に、まずは一度弁護士へ相談することをおすすめします。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、交通事故だけでなく刑事事件も取り扱っています。10対0の加害事故を起こし、今後の対応や弁護士への依頼が必要か判断に迷われている方は、お早めにご相談ください。

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