
新築住宅やリフォーム後に施工ミスが見つかった場合、どこまで補修してもらえるのか、補修費用以外にも賠償を求められるのか気になる方も多いでしょう。施工不良があっても、必ずしも全面的なやり直しや建て替え費用まで請求できるとは限らず、不具合の程度や補修方法によって賠償の範囲は変わります。
本記事では、軽微な不具合から構造上の重大な欠陥まで、施工不良の程度に応じてどこまで補修・賠償を求められるのかを弁護士が解説します。
第1章 施工不良の程度によって求められる補修・賠償は変わる
施工不良が見つかった場合、重要なのはミスがあったかどうかだけではなく、その不具合を解消するためにどの程度の補修が必要なのかという点です。民法上、施工内容が契約に適合していない場合には、修補などの追加対応や損害賠償、代金減額などが問題になります。
1-1 軽微な施工不良は部分的な手直し・補修が中心となる
クロスの一部に施工不良がある、建具の取付けにずれがある、塗装の一部分に不具合があるといったケースでは、その部分を手直しすることで契約どおりの状態にできることがあります。
このような場合は、内装全体のやり直しや工事代金全額に相当する賠償まで求められるとは限りません。まずは不具合を解消するための補修工事が基本となります。
1-2 生活や建物の機能に支障がある施工不良は補修範囲が広がることがある
水漏れや排水不良、断熱材の施工不良、床の傾きなど、日常生活や住宅の機能に影響する不具合では、より広い範囲の補修が必要になることが考えられます。
たとえば、配管の施工ミスによる水漏れで床や壁まで損傷した場合には、配管だけではなく、水漏れによって傷んだ部分の補修費用も賠償の対象となる可能性があります。
1-3 構造上の重大な施工不良では大規模補修や建て替え費用が問題になることもある
基礎や柱、梁など建物の安全性に関わる施工不良では、部分的な手直しだけでは十分な性能を回復できず、大規模な補修が必要になることがあります。
最高裁判所も、建築請負の目的物である建物に重大な欠陥があり、補修によって契約目的を達成することができず、建て替えが必要となる場合には、建て替えに必要な費用相当額が損害として認められる場合があると判断しています(最高裁平成14年9月24日判決)。
この事案では、建物全体の強度や安全性に著しく欠け、地震や台風などを契機に倒壊しかねない危険性があるとされました。
第2章 施工会社に責任を求められる施工不良とは?
2-1 契約書・設計図・仕様書と異なる施工は責任を求められる可能性がある
指定した建材とは違うものが使われている、設計図と異なる位置に設備が取り付けられている、依頼した工事の一部が行われていないなど、契約で決めた内容と実際の施工が異なる場合には、施工会社に補修や損害賠償を求められる可能性があります。
そのため、施工不良かどうかを確認する際には、完成した建物だけを見るのではなく、契約書や設計図、仕様書、見積書などと実際の施工内容を照らし合わせて確認することが重要です。
2-2 図面どおりでも必要な品質や性能を欠いていれば施工不良になることがある
施工不良は、設計図や仕様書と違う場合だけに限りません。
たとえば、防水施工が不十分で雨漏りする、配管の施工に問題があり水漏れする、構造部分の施工に問題があり建物の安全性に影響しているといった場合には、図面上は明確な違いがなくても、住宅として通常求められる品質や性能を欠いているとして責任が問題になる可能性があります。
また、建築基準法などの法令上の基準を満たしていても、それだけで施工会社の責任が否定されるとは限りません。契約で法令上の基準を上回る品質や仕様を約束していた場合には、その契約内容を満たしているかどうかも施工不良かどうかを判断する要素となります。
2-3 施工会社から許容範囲と言われても個別に確認する必要がある
施工不良を指摘した際、施工会社から「この程度のずれは施工上の許容範囲」と説明されることがあります。実際、わずかな施工誤差や、施主の好み・イメージとの違いだけで、すべてが施工不良になるわけではありません。
ただし、施工会社が許容範囲と説明しただけで当然に責任がないと決まるものでもありません。契約内容や施工基準、不具合の程度、住宅の使用や安全性への影響などを踏まえて判断する必要があります。
特に、施工会社と施主で施工不良かどうかの認識が大きく異なる場合には、建築士などによる専門的な調査結果も踏まえて判断することが重要です。
第3章 施工不良に気づいたらどうする?賠償を求めるまでの段階別対応
3-1 まずは施工会社に現地確認を求め、補修内容を確認する
不具合を見つけたら、補修前の状態を写真などで残したうえで、まず施工会社に連絡し、現地を確認してもらいます。その際は、単に「直してほしい」と伝えるだけでなく、不具合の原因をどのように考えているのか、施工上の問題を認めるのか、どの範囲をどの方法で補修するのかを確認しましょう。
施工会社が施工不良を認め、適切な補修を提案しているのであれば、この段階で無償補修によって解決できることがあります。補修箇所だけでなく、施工ミスによって床や壁など別の部分まで損傷している場合には、それらの補修・交換なども含めて協議します。
合意できる場合は、補修内容や工期のほか、補修後に同じ不具合が再発した場合の対応についても確認しておくとよいでしょう。
3-2 施工不良を認めない・補修方法で折り合わない場合は第三者の調査を検討する
実際には、施工会社が「施工上の許容範囲」「経年劣化が原因」などとして責任を認めないことがあります。また、施工不良自体は認めても、施主は広範囲のやり直しが必要と考えている一方、施工会社は部分補修で足りると主張することもあります。
このような場合には、建築士など第三者の専門家に、不具合の原因や必要な補修方法を調査してもらうことを検討します。第三者調査の意味は、施工不良かどうかを判断するだけではありません。どこまで直せば本来の品質・性能を回復できるのかを客観的に明らかにする点にもあります。
調査結果を施工会社に示し、施工不良や必要な補修範囲について合意できれば、その内容に沿った補修を求めて解決することになります。
3-3 それでも対応しない場合は期限を定めて補修や費用負担を求める
第三者の調査結果を示しても施工会社が補修に応じない場合や、連絡をしても対応が進まない場合には、要求する内容を具体化して書面で請求します。
たとえば、「どの不具合について、どのような補修を、いつまでに行ってほしいのか」を明確にし、回答期限を定めます。
この段階で施工会社と合意できれば、施工会社自身による補修だけでなく、事情によっては他社による補修費用の負担について話し合うことも考えられます。また、施工不良によって設備や家具などに損害が生じている場合や、必要な調査費用・仮住まい費用が発生している場合には、それらを含めた解決を検討します。
ただし、施主が希望した補修方法や支出した費用のすべてを当然に施工会社へ請求できるわけではありません。第1章で説明したとおり、どの範囲の補修が必要か、費用が相当かという点は別途検討が必要です。
3-4 施工会社が責任を認めない場合は早めに弁護士への相談を検討する
施工会社が施工不良を認めない場合や、補修範囲について見解が大きく異なる場合は、話し合いが長期化する前に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談したからといって、直ちに裁判をする必要はありません。施工会社との交渉を続けながら、契約書や設計図、これまでのやり取りを確認し、どのような資料を揃えるべきか、建築士などにどの点を調査してもらうべきか、どこまで補修や損害賠償を求められるのかを整理することができます。
特に、施工会社に補修を任せてよいのか、第三者による調査を先に行うべきか、他社による補修を検討してよいのかといった判断は、その後の請求にも影響することがあります。
まずは話し合いによる解決を目指しつつ、必要に応じて弁護士が施工会社との交渉を行い、それでも解決できない場合に建設工事紛争審査会などのADR(裁判外紛争解決手続)や訴訟を検討することになります。
※建設工事紛争審査会…建設工事の請負契約をめぐる紛争について、あっせん・調停・仲裁を行う公的機関
第4章 【FAQ】新築・リフォームの施工不良の場面でよくある疑問
Q1. 施工会社から「保証期間が過ぎている」と言われたら、もう請求できませんか?
A1. 保証期間が過ぎても請求できる場合があります。
施工会社が独自に定めている保証期間と、民法などに基づいて法的責任を追及できる期間は必ずしも同じではありません。そのため、保証期間が終わったという理由だけで直ちに諦める必要はありません。
ただし、民法上の通知期間や消滅時効など別の期間制限もあるため、不具合に気づいた場合は早めに確認する必要があります。
Q2. 新築・リフォーム工事から数年後に雨漏りが発覚した場合でも、直してもらえますか?
A2. 新築かリフォームか、時期や原因によって異なります。
新築住宅では、屋根や外壁などの雨水の浸入を防止する部分について、住宅品確法により引渡しから10年間の責任が定められています。そのため、数年後に雨漏りが発覚した場合でも、この特則によって責任を求められる可能性があります。
一方、リフォーム工事には、新築住宅と同じ10年間の責任が当然に適用されるわけではありません。契約上の保証期間や民法上の契約不適合責任を確認する必要があります。
いずれの場合も、雨漏りを発見した時点で早めに施工会社へ連絡することが重要です。
まとめ|施工会社との話し合いで解決しない場合は弁護士へご相談ください
施工不良のトラブルでは、施工会社が不具合を認めない場合だけでなく、「補修はするが範囲が狭い」「他社に依頼する補修費までは負担できない」など、責任の範囲をめぐって話し合いが進まなくなることがあります。
このような場合、契約書や設計図などを確認し、建築士による調査結果などもふまえ、どこまで補修や賠償を求められるのかを法的に整理したうえで交渉することが重要になります。施工会社から補修案や金銭による解決案を提示されている場合も、その内容で合意してよいか自己判断する前に弁護士など専門家へ相談することをおすすめします。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、不動産トラブルや損害賠償請求などのご相談に対応しています。施工不良について施工会社との話し合いが進まない場合や、どこまで請求できるのか判断に迷っている場合は、お気軽にご相談ください。
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