弁護士コラム

2026.09.07

逮捕後に不起訴となったにもかかわらず解雇された場合|解雇の無効を主張できるケースを弁護士が解説


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逮捕後に不起訴となったにもかかわらず解雇された場合|解雇の無効を主張できるケースを弁護士が解説

 

逮捕後に不起訴となったにもかかわらず解雇された場合、納得できないと感じる方は少なくありません。本記事では、そのような場合に、解雇無効を主張できる可能性があるケースや、取るべき対応を弁護士が解説します。

第1章 逮捕後に不起訴になっても解雇されることはあるのか

1-1 不起訴になれば当然に解雇が無効になるわけではないこと

不起訴になったことは重要な事情ですが、それだけで解雇の有効・無効が決まるわけではありません。不起訴であっても、事件の内容や担当業務との関連性、会社の業務・信用への影響などが問題になることがあります。
一方、逮捕されたという事実だけで会社が自由に解雇できるわけでもありません。
実際には、逮捕の内容、業務への影響、就業規則の定め、会社の調査や手続などを総合的に考慮して判断されます。

1-2 事件内容や業務・信用への影響も判断材料になること

会社が解雇を検討する際には、単に逮捕された事実だけでなく、次のような事情が問題になります。

・長期間勾留され、勤務を継続できなかった
・事件内容と担当業務との関連性が強い
・取引先や顧客との関係に具体的な支障が生じた
・会社の信用や職場秩序に重大な影響が及んだ

そのため、不起訴後に解雇された場合は、会社がどのような事実を確認し、何を根拠に解雇したのかを把握することが重要です。

第2章 逮捕を理由とする解雇が有効かどうかの基本的な考え方

2-1 解雇には合理的な理由と社会通念上の相当性が必要になること

日本の労働法では、解雇は労働者の生活に重大な影響を及ぼすため、厳しい要件が設けられています。解雇が有効となるためには、労働契約法第16条が定める要件を満たさなければなりません。同条では、解雇は「客観的に合理的な理由」を欠き、「社会通念上相当」と認められない場合には、権利を濫用したものとして無効になると定められています。

「客観的に合理的な理由」とは、会社側だけの主観ではなく、第三者から見ても解雇に相当する事情があるといえることを意味します。
また、「社会通念上相当」とは、解雇という重い処分を選択することが社会一般の常識から見てもやむを得ないと評価できることをいいます。
そのため、会社が「逮捕されたから信用できない」「職場に置いておきたくない」と考えているだけでは足りず、解雇を正当化できる事情が客観的に存在するかが問題になります。

2-2 懲戒解雇と普通解雇では判断のポイントが異なること

一口に「解雇」といっても、懲戒解雇と普通解雇では法的な意味合いが異なります。

懲戒解雇とは、従業員に重大な規律違反があった場合に制裁として行われる解雇です。
また、懲戒解雇には、解雇について定めた労働契約法第16条だけでなく、懲戒処分について定めた同法第15条も問題となります。
これに対し、普通解雇は、勤務成績や能力不足、長期間の欠勤など、労働契約を継続することが困難であることを理由として行われる解雇をいいます。
逮捕を理由とするケースでは、会社が懲戒解雇を選択することもあれば、長期間出勤できなかったことなどを理由に普通解雇として処理することもあります。
もっとも、どちらの場合であっても「解雇だから会社の自由」というわけではありません。
懲戒解雇であれば、就業規則に懲戒事由が定められていることや、その規定に該当することが重要になり、処分の重さが行為の内容に見合っているかも判断対象となります。
一方、普通解雇では、休職や配置転換など、解雇以外の方法を検討できなかったかも考慮されます。

2-3 就業規則と解雇理由を確認すること

逮捕を理由とする解雇では、就業規則の内容も重要な判断材料になります。
就業規則に「会社の名誉や信用を著しく害した場合」などの規定があっても、逮捕だけで直ちに懲戒解雇できるわけではなく、処分の重さが行為に見合っているか、弁明の機会など所定の手続が守られたかも問題になります。
そのため、まず解雇通知書や解雇理由証明書、就業規則を確認し、会社がどのような根拠で解雇を判断したのかを把握することが重要です。

第3章 不起訴後の解雇について無効を主張しやすいケース

3-1 逮捕された事実だけを理由に解雇されている場合

逮捕は捜査のための身柄拘束手続であり、有罪を意味しません。
また、不起訴は、検察官が公訴を提起しない(裁判にかけない)と判断した処分です。
会社が事件内容や業務への影響を調査せず、「逮捕されたから」という理由だけで解雇した場合には、客観的に合理的な理由がないと評価される可能性があります。

3-2 不起訴の内容や事件の事実関係を十分に確認していない場合

会社が報道だけを前提に判断したり、本人から事情を聞かずに処分を決めたりした場合には、調査が不十分である可能性があります。
不起訴には、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予などがあります。
起訴猶予は、犯罪の嫌疑が認められる場合でも、事件の軽重、反省、被害弁償などを考慮して起訴しない処分です。そのため、不起訴になったことだけで、問題となった行為がなかったとは判断できません。
もちろん、会社が不起訴理由のすべてを把握できるとは限りませんが、少なくとも処分を決めるに当たり、必要な事実確認を尽くしたかどうかは重要な判断要素になります。
十分な調査を行わずに解雇した場合には、その判断が合理性を欠くと評価される可能性があります。

3-3 業務への支障や会社の信用への影響が乏しい場合

事件が私生活上のもので、会社名が報道されておらず、取引先や顧客との関係にも具体的な支障が生じていない場合には、逮捕だけを理由とする解雇の合理性が疑われることがあります。ただし、売上減少などの現実の損害がなくても、事件内容、本人の職種や地位、会社の事業内容から、会社の社会的評価への悪影響が重大と評価されることがあります。
そのため、具体的な損害の有無だけで判断することはできません。

3-4 同種の事案と比べて処分が重すぎる場合

同じ会社で類似の事案が発生しているにもかかわらず、自分だけが著しく重い処分を受けている場合もあります。例えば、過去には戒告や減給で済んでいた事案について、自分だけが懲戒解雇となっているようなケースです。
会社には一定の裁量がありますが、その裁量にも限界があります。
同種の事案との均衡を著しく欠く処分である場合には、「社会通念上相当」とはいえないとして、解雇が無効と判断される可能性があります。
もちろん、事件の内容や役職、過去の勤務態度などによって処分が異なることはありますが、その違いを合理的に説明できるかどうかが重要です。

3-5 弁明の機会がないなど手続に問題がある場合

解雇の有効性は、処分の理由だけでなく、処分に至る手続も重要になります。
例えば、本人への事情聴取がない、弁明の機会が与えられていない、就業規則所定の懲戒手続が守られていない場合には、解雇の有効性に影響することがあります。
ただし、手続上の問題があるだけで直ちに解雇が無効になるとは限らず、裁判では、手続違反の内容や程度、事件の性質などを踏まえて総合的に判断されます。
そのため、「会社から突然解雇を言い渡され、事情を説明する機会すらなかった」という場合には、その経緯も重要な事情となります。
以上のように、解雇の有効性は個別の事情によって大きく左右されるため、会社がどのような理由や手続で解雇を行ったのかを丁寧に確認することが大切です。

第4章 解雇が有効と判断される可能性があるケース

4-1 事件内容と担当業務との関連性が強い場合

事件の内容が担当業務と密接に関係している場合には、会社との信頼関係が大きく損なわれたとして、解雇が有効と判断される可能性があります。
例えば、会社が相応の根拠に基づき、経理担当者による横領、配送担当者による飲酒運転、介護職員による利用者への暴行などの事実を確認した場合が考えられます。
もっとも、このようなケースでも、不起訴となった理由や会社が把握している事実関係によって結論は変わり得ます。
重要なのは、「その事件が担当業務にどの程度影響するのか」という点です。

4-2 会社の信用や事業活動への影響が大きい場合

事件が大きく報道され、会社名や本人の勤務先まで広く知られた結果、売上の減少、取引停止、顧客からの苦情など、会社の信用や事業活動に具体的な影響が生じている場合には、解雇を基礎づける事情となる可能性があります。
また、このような現実の損害がまだ生じていない場合でも、事件の内容、会社の事業内容、本人の職種や地位などから、会社の社会的評価への悪影響が相当重大と評価されることがあります。

4-3 以前から勤務上の問題が繰り返されていた場合

解雇の有効性は、今回の事件だけで判断されるとは限りません。これまでにも無断欠勤や勤務態度の問題が繰り返され、改善指導や懲戒処分を受けても改善されなかった場合には、その経緯が解雇の相当性を判断する事情となることがあります。
ただし、同一の行為について重ねて懲戒処分を科すことは、原則として許されません。
つまり、今回の事件について会社が確認した具体的な行為や業務への影響に加え、それ以前から繰り返されていた勤務上の問題も踏まえ、「雇用関係を維持することが困難である」と判断される可能性があります。

第5章 解雇された後に確認すべき実務上のポイント

5-1 解雇通知書や解雇理由証明書を確認すること

まず、会社がどのような理由で解雇したのかを確認します。解雇通知書を確認し、解雇理由証明書を受け取っていない場合は、会社に交付を請求することも検討しましょう。
労働基準法第22条では、労働者が請求した場合、会社は、退職事由や解雇理由など、請求された事項について証明書を遅滞なく交付しなければならないとされています。

5-2 退職届や合意書に安易に署名しないこと

自己都合退職を求められたり、退職合意書への署名を求められたりしても、その場で応じるのは避けましょう。内容を十分に確認しないまま署名すると、後から解雇の有効性を争うことが難しくなる可能性があります。
特に、書類に会社への請求権を放棄する条項や、今後異議を申し立てないという条項が含まれていることがあります。会社から書類への署名を求められた場合には、その場で判断せず、一度持ち帰って内容を確認することをお勧めします。

5-3 会社とのやり取りを記録として残すこと

会社とのやり取りは、後の交渉や裁判で重要な証拠となることがあります。
例えば、解雇を告げられた日時、説明した人物、面談の内容、メールやチャットなどを保存しておきましょう。特に、「不起訴になっても関係ない」「逮捕された以上辞めてもらう」といった説明があった場合には、会社がどのような理由で解雇を判断したのかを検討する上で重要な資料となる可能性があります。

5-4 刑事事件に関する資料を整理すること

不起訴となったことを示す資料も、可能な範囲で保管しておくことが重要です。
例えば、不起訴処分告知書、釈放日が分かる資料、弁護士から受け取った書類、示談書などを整理します。
もっとも、不起訴処分告知書には通常、不起訴の理由までは記載されません。
そのため、「不起訴だから解雇は違法である」と主張するのではなく、不起訴となった経緯や会社への影響なども含めて総合的に整理することが重要です。

5-5 希望する解決方法を整理すること

解雇が無効となる可能性がある場合でも、最終的な解決方法は一つではありません。
例えば、

・元の職場への復職を希望する
・一定の解決金の支払いを受けて退職する
・解雇期間中の賃金などの支払いを求める

など、希望する解決は人によって異なります。
そのため、会社との交渉を始める前に、「自分はどのような解決を望んでいるのか」を整理しておくことが大切です。

第6章 解雇無効を主張する場合に請求できる可能性があるもの

6-1 従業員としての地位確認

解雇が法律上無効と判断されれば、会社に対して一定の権利を主張できる可能性があります。まず問題となるのが、「従業員としての地位確認請求」です。
これは、「解雇は無効であり、現在も会社の従業員としての地位を有している」ことの確認を裁判所に求める請求です。解雇が無効となれば、法律上は雇用契約が終了していないことになるため、会社は原則として従業員として取り扱わなければなりません。
もっとも、実際には会社との信頼関係が大きく損なわれているケースもあります。
そのため、法的には復職が可能な場合であっても、交渉の結果として解決金を受け取り退職するという形で解決することも少なくありません。

6-2 解雇期間中の賃金

解雇が無効であり、解雇後も労働者に就労の意思・能力があったにもかかわらず、会社側の責任によって働くことができなかった場合には、解雇期間中の賃金を請求できる可能性があります。もっとも、解雇期間中に他社で収入を得ていた場合には、その収入が一定の範囲で控除されることがあります。

第7章 不起訴後に解雇された場合は早めに対応を検討しましょう

逮捕後に不起訴となったからといって、解雇が当然に無効になるわけではありません。
一方で、逮捕の事実だけを理由に解雇された場合や、会社が十分な事実確認をしないまま処分を決定した場合には、解雇無効を主張できる可能性があります。
解雇に納得できない場合には、解雇通知書や解雇理由証明書、就業規則、会社とのやり取りなどを早めに整理することが重要です。時間が経過すると、資料を失ったり記憶が薄れたりして、会社との交渉に必要な証拠を確保しにくくなることもあります。

Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)グループでは、不当解雇をはじめとする労働問題や刑事事件に関連する民事上のトラブルについて幅広く対応しています。
また、グループ内には弁護士だけでなく、社会保険労務士、税理士、司法書士、行政書士が在籍しており、それぞれの専門分野を活かしたワンストップでのサポートが可能です。
状況を丁寧にお伺いした上で、解雇無効を主張できる可能性や、今後取り得る対応について分かりやすくご説明いたします。
「この解雇は有効なのだろうか」とお悩みの方は、一人で判断せず、できるだけ早い段階で当グループへご相談ください。

 

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