弁護士コラム

2019.06.17

【不動産】専有部分のリフォーム

Q.私は現在、中古マンションに母と同居しています。将来的に母の介護が必要になることを見据え、床材を全面フローリングに張り替え、段差をなくしたいと考えています。
加えて、防犯対策のために現在の窓枠の内側にもう1枚窓枠を取り付け、二重サッシにすることも検討しています。こういった工事をする場合、管理組合の理事会の承認は必要ですか?

1.問題の所在

区分所有者が専有部分を利用するにあたっては、室内の不具合の補修や、居住する家族構成の変化などに応じた住環境の改善のため、模様替えや家具の取り付け、取り換え、修繕工事などのリフォームが必要となる場合があります。

しかしながら、マンション標準管理規約では、区分所有者は、

・建物の保存に有害な行為
・その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為

をしてはならないと定められています。マンション標準管理規約とは、国土交通省によって、管理組合が各マンションの実態に応じて、管理規約を制定、変更する際の参考として作成されたものです。

そして、リフォームの要否や内容に関する判断を区分所有者へ全面的に委ねた場合、後々管理組合や他の区分所有者との間でトラブルを発生させかねません。こういった状況を回避するため、マンション標準管理規約では、占有部分の修繕等の実施について、以下の規定が定められています。

理事会の承認が必要な場合

まず、専有部分の修繕の実施に際して、管理組合の理事会の事前承認が必要な場合があります。規約は以下のとおりです。

区分所有者が専有部分の修繕等を行おうとする場合、予め理事長に申請し、書面による承認を得なければならない。

① 対象となる修繕の内容

「床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管の取り付け及び取り換え、間取りの変更」等が、理事会による承認の必要な工事として想定されています。
よって、見出しで挙げた「床材を全面フローリングに張り替える」ことは上記に該当するため、理事会の承認が必要になります。

② 申請時に必要なもの

区分所有者が理事会に修繕の申請を行うに際しては、設計図・仕様書・工程表を添付した申請書を理事長に提出することと定められています。施工業者等へ依頼し、必ず準備しておきましょう。

(書式:国土交通省 「マンション標準管理規約」より)

③ 理事会による承認

理事長が区分所有者から修繕工事の承認申請を受けたとき、その申請について、理事会の決議により、その内容を承認するか、それとも不承認とするかを決定します。
 
承認申請時に提出された設計図等をもとに検討することとなりますが、その内容によっては専門的な判断が必要なケースも想定されることから、専門知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を仰ぐことが望ましいとされています。特に、今回例として挙げたフローリング工事の場合には、床の構造、工事の仕様、使用する材料等により影響が異なるため、専門家への確認の必要性が高いと言えます。
 
また、実際に専門家へ確認を依頼した場合には、区分所有者の提出した設計図等では情報が足りないため、工事予定の箇所を直接視認して調査を実施できる状況にする必要があります。つまり、理事長又はその指定を受けた者(専門家等)は、工事の施工の判断について必要な範囲内で、修繕予定の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことが出来ます。調査時には区分所有者の専有部分に立ち入ることとなりますが、正当な理由が無ければ、当該区分所有者は、立ち入りの要請に応じなければなりません。

(書式:国土交通省「マンション標準管理規約」より)

3.理事会の承認が不要な場合

次に、例示したケースの後半で挙げている、「既存の窓の内側に窓枠を設置して二重サッシにする」という工事について検討していきます
 
まず、窓に関わる工事は理事会の承認が必要なのかという点です。区分所有建物における窓は、専有使用権が付着する共用部分であるため、マンション標準管理規約では、窓を対象とする工事のうち、「現在と異なる部材を用いるもの」が、理事会の承認を必要とする工事であると定められています。

よって、例えば、現在設置されている窓ガラスを防音ガラスや強化ガラスの窓へ交換する場合は、「現在の窓を異なる部材(=防音ガラス・強化ガラス)」を用いた他の窓と交換することになるため、理事会の承認が必要となります。

一方、今回例に挙げたケースでは、窓の素材を交換するわけではなく、「内側にもう1枚窓枠を取り付け、二重サッシにする」という工事内容であり、共用部分である窓そのものを修繕したりするものはないため、理事会の承認は不要であるといえます。

しかしながら、窓枠の取り付け工事に限らず、リフォームを行う際には建物を工事業者が出入りすることが想定されます。また、工事の種類によっては騒音や粉塵が発生することもあります。これらの状況が他の区分所有者に何ら告知の無い状況で発生した場合、他の区分所有者に迷惑をかける可能性が高く、後から苦情が発生しかねません。

これらを避けるために、たとえ理事会の承認が不要であっても、工事を実施する際には、
・管理組合へ工事期間や工事の内容、業者名を届け出る
・騒音や振動の発生が予想される場合には、他の区分所有者にもわかる形で工事期間と工事内容を掲示する
・工事予定の物件の上下、また隣戸には、事前に騒音等が発生することを直接伝えに行く
といったような対策を取ることが良いと考えられます。

4.まとめ

区分所有建物内で専有部分のリフォームをする際には、必ず事前に管理規約を確認し、理事会の承認の要否、他の区分所有者に与える影響、事前調査の可能性等々あらゆる点を注意する必要があります。

折角自分がより住みやすい環境を整えるためにすることですから、後からトラブルが発生しないよう心掛けることが望ましいですね。

2019.06.14

【離婚問題】離婚と子供の問題―養育費について―

離婚をすることになった夫婦の間に未成年の子供がいる場合、子供に関する問題を解決しなければなりません。
親権者の決定、養育費の金額や支払い方法、子供の戸籍と姓、面会交流については離婚前によく考えて決めておくことが大切です。今回は子供の養育費について詳しく説明します。

1.養育費について

養育費とは、子供が生活するために必要な費用のことです。衣食住の費用のほかにも教育費、医療費に加え、娯楽費用(お小遣いなどの適度な金額)も含まれます。父母の収入によりますが、一般的には子供を引き取り育てている親に、引き取らなかった親が養育費を支払うケースが多くなります。

例え離婚して親権を有しない親であっても、未成年の子供を扶養する義務があり、子供には扶養を受ける権利があるためです。ですので、養育費は子供から親に請求することもできます。

養育費を支払うべき対象となる子供の年齢については、父母の話し合いで決める事ができます。家庭裁判所の調停や審判の場合は、「子供が成人するまで」とすることが一般的ですが、「高校を卒業するまで」「大学を卒業するまで」とすることももちろん可能です。

2.養育費の金額について

養育費の金額は法律で定められているものではありません。父母の収入や財産、生活レベルなどに応じて話し合いで決められます。離婚後も、親には子供に親と同レベルの生活をさせる義務があると考えられているため、生活に最低限必要な金額を支払えばいいという訳ではありません。

なお、裁判所を利用し養育費を取り決める場合には、「養育費算定表」が参考資料として広く活用されています。養育費算定表とは、夫婦の収入、子供の年齢、人数などから養育費の目安となる金額を示すものです。協議離婚、調停離婚など当事者の話し合いで養育費を決める場合、最終的な養育費は算定表の額を参考にその他の状況を考慮に入れて定められます。

以上のような方法で養育費は決められますが、養育費の支払いは長期にわたるため、将来的に様々な事情により取り決めた養育費の支払いが難しくなるケースがあります。その様な場合は、当初の取り決めた養育費の金額を変更することも可能です。

養育費の変更については、双方の話し合いによって決めることも可能ですし、話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に養育費の変更を目的とした「養育費請求」の調停を申し立てることになります。ただし、当初取り決めた養育費の金額を変更するためには正当な理由が必要です。

《養育費を増額する場合の正当な理由の例》
■子供の進学や授業料の値上げによって教育費が増加した
■子供の病気やケガで多額の医療費がかかる
■監護者の病気やケガで収入が低下した
■リストラや会社の倒産などで、監護者の収入が低下した 等

《養育費を減額する場合の正当な理由の例》
■リストラや会社の倒産などで、支払う側の収入が低下した
■監護者が再婚や就職などで、経済的に安定した 等

3.養育費について決めたなら…

養育費の支払いは長期間に及ぶため,養育費の支払い義務を負う親の経済状況や生活環境の変化で、養育費が途中から支払われないというトラブルも多くあります。そのため、離婚時に養育費の内容が取り決められた場合、口約束だけでなく文書化することをお勧めします。後に養育費について「約束した」「していない」の水掛け論になることを避けるためです。

文書には、①支払いの期間(例:子供が満○歳になる月まで)②金額(例:子供一人につき●円)③支払い方法(例:毎月●日までに●●の口座に振り込む)を必ず明記しましょう。また文書については公正証書で作成することが望ましいです。当事者間で作成した念書、合意書等の文書では、記載内容に不備があり後々文書の有効性を争われることもあります。

また、養育費の未払いが発生して、相手の給与等の財産を差し押さえるにしても、公正証書が無ければ、例えば、訴訟を提起したり、養育費調停を申し立てる等して、債務名義を取得してからでなければ強制執行の手続きに移行できません(公正証書以外の債務名義の取得については、4.で具体的に説明致します)。

その点、公正証書は公証役場で公証人の助言を受けながら作成できるため、法的に不備の無い内容での作成が可能となります。また、公正証書には強制執行認諾文言が付いていることが一般的であり、強制執行認諾文言がある場合、養育費の未払いがあった場合に訴訟の提起等を挟まずに、強制執行の手続きが可能となります。

4.養育費の支払いが滞ったときの対応

養育費の未払いが発生した場合には、手紙や電話などで支払いの催促を行います。それでも支払われない場合は、養育費をどの様な方法で定めたかによってその後の方針が変わってきます。

協議離婚で離婚協議書は作ったものの、協議書を公正証書にしていない場合は、強制執行をすることができません。なので、まず、相手方の所在地を管轄する家庭裁判所に「養育費請求」の調停の申立てをします。調停でも解決しない場合は審判に移行します。調停や審判で解決すると、「調停調書」「審判書」が作成されます。その後も支払いがない場合には、この「調停調書」「審判書」を債務名義として、「強制執行」ができるようになります。

ここで、強制執行は相手方(債務者)の預貯金や不動産、給与、退職金、賞与といった財産の差押を行い、支払いを受ける権利のある人(債権者)がそこから取り立てることができる制度です。給与の差押えの範囲は、一般の債務では給与の4分の1までですが、子供の養育費や婚姻費用などについては給与の2分の1まで差押えることが可能となります。

強制執行は調停離婚、審判離婚、判決(裁判)離婚、和解離婚のほか、協議離婚の場合でも養育費の支払いについて執行文認諾文言付公正証書を作成していれば申し立てができます。ただし、差し押さえるべき相手方の財産を把握できていなければ強制執行をすることはできません。強制執行を申し立てる場合には、差し押さえるべき財産を調査する必要があります。

また、調停離婚、審判離婚、判決(裁判)離婚、和解離婚で養育費の支払いについて取り決めがある場合は、家庭裁判所の「履行勧告」「履行命令」制度を利用しましょう。履行勧告を裁判所に申し立てると、裁判所が支払い状況を調査し、相手方に支払うように説得、勧告します。申出に費用はかかりません。

ただし、法的な強制力はありません。相手方が勧告を受けても支払わない場合は、裁判所が期限を決めて支払いを命じることができます。これが「履行命令」です。法的な拘束力はありませんが、相手方が支払わない場合は10万円以下の過料が課せられます。

5.おわりに

養育費の支払い期間は長いものだと20年以上になるものもあります。この20年の間に養育費を支払ってもらう権利がある側も、養育費を支払う義務がある側も様々な変化が生じると思われます。養育費について取り決めたときには予想していなかった状況の変化が生じることもあるでしょう。

その時は、冷静になって適切な対処をとることが大切です。養育費の算定、未払養育費の請求について当事者で全ての決定をすることも可能ですが、子供にとって最も良い選択をするために一度専門家に相談することをお勧めします。

2019.06.14

企業が備えておくべき試用期間のリスク

多くの企業では、本採用前に一定の試用期間を置き、面接では知り得なかった社員の能力や適性を見極める期間を設けています。実際に試用期間とは、どのような目的で設定されており、試用期間中の雇用契約はどうなっているのでしょうか?

また、企業は試用期間中の従業員に対して、解雇や試用期間の延長、本採用の拒否などを行いたい場合はどのような点に気を付けなければならないのでしょうか?今回は企業が理解しておくべき試用期間の法的性質についてご説明いたします。

1. 試用期間とは法的に見てどのような雇用形態なの?

試用期間は、正社員に限らず、アルバイトやパート、契約社員などに対しても設けることが可能です。企業は試用期間を定める場合には、期間を明確に定めなければなく、「〇ヵ月前後」といった不明確な取り決めは認められていません。

試用期間の長さについて制限する法律は定められていませんが、過去に1年を超える試用期間を設けたケースは、公序良俗違反と判断され試用期間が無効となった裁判例があり、過度に長期となる試用期間の設定は認められないものと考えられます。(裁判例:名古屋地判昭59.3.23)

では、試用期間中の企業と従業員の雇用契約は厳密にどの様な状況になっているのでしょうか?試用期間中の雇用契約は「解約権留保付労働契約」が締結されていると考えられています。「解約権留保付労働契約」とは、企業が従業員を解雇することが出来る解約権を有している労働契約を意味しています。ただ、企業側が解約権を有しているからといって、何の制限もなく企業側が従業員を解雇できるというわけではありません。

試用期間中の従業員の立場は、不安定で不利な立場であり、試用期間中は他の企業へ就職する機会を放棄している状態になります。よって、企業が試用期間中の従業員に対して解雇や延長を行うのであれば、客観的で合理的な社会通念上相当の理由が必要です。

次からは、企業が試用期間を延長する場合及び試用期間中に解雇を行う場合について具体的に見ていくことにします。

2. 試用期間の延長は法律に違反するの?

試用期間が終了したときに企業側が本採用とするか否かの判断がつかずに、試用期間を延長してもう少し様子を見たいといったケースもあると思います。その様な場合、試用期間を延長すること自体は法律に違反しませんが、次の点に注意しなければなりません。

① 就業規則や雇用契約書などに試用期間を延長する可能性を明記しておくこと
② 試用期間の延長について従業員との間で合意がなされたこと
③ 客観的で合理的で社会通念上相当性のある理由があること

以上3点については企業側が試用期間の延長という選択をする場合に必ず守らなければならない事情となります。もし、これらを守らずに一方的に試用期間の延長を決定した場合、従業員から試用期間の延長の是非について争われ、その結果試用期間の延長を無効と判断されるケースもあるため注意が必要です。

ここからは、上記の各注意点についてもう少し詳しく説明することにします。
前述した通り、試用期間中の従業員は非常に不安定な立場であるため、企業は試用期間の延長が可能であること、及び延長する場合の期間などを、予め就業規則や雇用契約書などに明記しておく必要があります(①)。

また、従業員との間で試用期間の延長について合意がなされていなければなりません(②)。ただ、仮に従業員との間で合意がなされたとしても、試用期間については延長前の期間を含めて最長でも1年以内であるべきと考えられています。試用期間の延長について合意がなされたとしても、延長前の試用期間がリセットされるわけではありませんので、気を付けましょう。

最後に、試用期間の延長には、客観的で合理的な社会通念上相当性のある理由が必要になります(③)。延長の理由が認められる可能性が高いとされる例は、従業員が何らかの理由により長期の欠勤があり試用期間中に従業員の適性を見極めることが難しいケースや、業務内容の変更に伴い改めて適性を見極める必要性が認められるケースなどが挙げられます。

3. 試用期間中の解雇はできるの?

試用期間中において、企業は解約権留保付労働契約に基づく解約権を留保しているため、一定の「解雇の自由」が認められています。しかし、どの様な理由でも解雇が認められるわけでは無く、試用期間の延長と同じように「客観的に合理的で社会通念上相当と是認できる」場合に限られています。具体的には、重大な経歴詐称、正当な理由なく遅刻・欠勤を繰り返す場合等です。

また、試用期間の開始から14日を経過して解雇する場合、本採用後の社員を解雇する場合と同様の手順を踏む必要があります。解雇という判断をした場合には、従業員に対し解雇日の30日前までに解雇予告を行うか、解雇予告を行わなかった場合には従業員に対して「解雇予告手当」を支払う必要があります。

もし、企業側が本採用をしない決定をした場合でも、企業側の意思表示が従業員に明確に伝えられていないまま試用期間を終えると、従業員は本採用になったものと判断されます。試用期間に解雇を判断した場合は、試用期間が経過する前に従業員へ解雇の意思表示を行いましょう。
 

4.まとめ 

企業側にとって試用期間を設けることは、正確な採用判断を行うことが可能であり必要な期間となります。しかしながら、予め就業規則や雇用契約書を整備しておかなければ、試用期間の運用を誤った場合の企業へのリスクを防ぐことはできません。

就業規則や雇用契約書を不備の無いようにきちんと整えることで、リスクから会社を守るツールとして役立てましょう。就業規則の整備等については、法的な知識が必要となるため一度専門家へ相談することをお勧めいたします。

2019.06.12

ハンコの種類と特徴

会社や家、銀行など様々な場面で使う機会のあるハンコ。どんな種類があるのか、特徴は何なのか、知っていますか?

まず、ハンコとは何でしょうか。よく、「ハンコお願いします。」「ハンコ押してください。」と言ったり言われたりすることがありますよね。このハンコとは、あの小さな物体のことなのか、それとも紙についたインクのことなのか、どちらのことを指しているのでしょうか?

1.「ハンコ」とは?

実は、私たちがよく言う「ハンコ」とは、物体のことで、「印章」と呼ばれるものになります。紙についたインクの方は「印影」と呼ばれています。分かりやすく言うと、「ここにハンコお願いします。」のハンコは、「印影」、「ハンコ買わないと。」のハンコは「印章」のことなのです。
ちなみにハンコと同じくらいよく使う言葉である「印鑑」とは、市区町村に印鑑登録を行った「印章」のことを指し申請をすれば証明書がもらえます。「実印」とも言います。

このように、ハンコひとつでも、「印章」「印影」「印鑑」などいくつかに分けることができるのです。

2.「ハンコ」のもつ力

普段の生活の色々な場面でハンコを使いますが、なぜ書類や契約書など手続きを行うのにハンコが必要なのでしょうか?
日本は「ハンコ文化」と言われるほど、何かとハンコが必要とされます。銀行に行って手続きをしようと思ったら、「登録されているハンコと違うので手続きができません。」と言われたり、後日これだ!と思って違うハンコを持って行ったのに、また違うハンコだと言われ、どのハンコが正解なのか分からなくなってしまった経験が1度はあると思います。

免許証や保険証で本人確認をせず、登録されているハンコで手続きできるかどうかが決まるほど、日本ではハンコのもつ力が大きいのです。

例えば3,000万円の借用書があり、そこに自分の印影があったとします。そして、借用書の印影が、自分の印章によって顕出されたものであるときは、事実上その印影は自分の意志に基づいて顕出されたものとだと推定されます。その結果、自分が3,000万円という大金を借りたことが推定されてしまうのです。
例え自分がハンコを押したのではなく、誰かが勝手に押していたとしても、です。

では、ハンコにはどれくらいの種類があるのでしょうか?3では、ハンコの種類と、それぞれの特徴についてみていきたいと思います。

3.「ハンコ」の種類と特徴

ハンコにはどんな種類、特徴があるのでしょうか。
初めに、個人が使うハンコについてです。主に、実印、銀行印、認印、そしてシャチハタがあります。

実印:
市区町村に登録を行い、申請をすれば証明書がもらえるもの。
登録するには本人確認が必要で、証明書を出してもらうにも、身分証明書による本人確認が行われる。

銀行印:
銀行や信用金庫などの金融機関に印影を届け出ているもの。
預金を払い戻してもらう際に、お金を受け取る人が本人かどうかを確認するために必要。

認印:
印鑑登録をしていないハンコ全般のこと。
書類に確認や承認の証明としてよく使われる。

シャチハタ:
使う度に朱肉をつかって捺印するのではなく、印章自体にインクが入っている「浸透印」のこと。認印に含まれる。
シャチハタとよばれているが、シャチハタとは製造しているメーカーのことで、重要な書類や公的な場面などでは使うことができない。

上記のように、個人が主に使う印鑑だけでも4種類存在します。

では次に、会社が使うハンコについてお話します。種類として、代表者印、社印、割印等があります。

代表者印:
会社の実印のことで、会社を設立する際に法務局に登録したもの。
印鑑証明は法務局で発行することができ、丸印と呼ばれることもある。
「株式会社〇〇 代表取締役印」と彫られていることが多い。

社印:
会社の認印のこと。会社の認印として、主には注文書や請求書などの社外文書の他、稟議書などの社内文書に用いる。角印と呼ばれることもある。
「株式会社〇〇之印」と彫られていることが多い。

割印:
複数ある書類にまたがって押すハンコのこと。
書類が2部になる場合などに、同一、関連書類であることを証明するために押す。割印を押しておくことで、「契約書」を作成したあとに、内容を改ざんされるリスクを回避することができる。
「株式会社〇〇之印」と彫られていることが多いが、形は押しやすいように、縦長になっている。

以上が、会社でよく使われるハンコになります。
ハンコによって、持つ効力や役割も異なりますので、それらについては、次回お話ししたいと思います。

4.まとめ

今回は、ハンコとは何なのか、種類や特徴にはどんなものがあるのかについてお話ししました。
普段よく使うハンコですが、種類や呼び方など意外と知らないことばかりですし、この契約書だからこのハンコを押す、これは認印でも大丈夫なものだから社印を押す、などといった覚え方をしている方も少なくないと思います。

きちんと、それぞれのハンコについて知っておけば役に立つ場面がたくさんあると思いますので、この記事を読んで今後の生活に生かしていってください。

2019.06.11

テレビ番組制作において気をつけるべきポイント~未成年者の実名報道編~

テレビ番組などでは、未成年者が起こした事件について実名などを伏せて報道されているかと思います。
なぜ匿名でなければならないのでしょうか。また、過去に起きた事件の中には、未成年である被告人に死刑判決が下された後から一部メディアで実名報道されるということもありました。
そこで浮かんでくる疑問は、未成年者の実名報道についての特例や、例外があるのか、ということです。以下では、未成年の犯罪に関する報道について見ていくことにします。

1.未成年の犯罪についての報道と少年法

(1)少年法61条

少年法61条では、「記事等の掲載の禁止」として下記のように未成年者の報道について定めています。

第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

※ここでいう「少年」とは、20歳未満の男子女子すべての未成年者を意味しています。

(2)テレビ報道と少年法61条

未成年者の犯罪等が発生し逮捕された場合、新聞などでは少年法に基づき匿名で報道されています。しかしながら、テレビ報道は、出版物ではないため、同条の適用はないのでしょうか。新聞と並び記載されている「その他の出版物」について、テレビ報道が含まれないのでしょうか。

現在、テレビ局の報道番組では実名を伏せ、「18歳男子が殺傷事件を起こし逮捕された」というような報道を耳にするかと思います。同条の「その他の出版物」の中に、雑誌やテレビ局、いわゆるメディア全般が行う報道も含まれるとする裁判例があり、現在はこれに基づいてテレビ局も報道を行っています。
多くのテレビ局はこの少年法61条を重視しており、自局のガイドラインで報道について細かく定めるなどし、後述する死刑や死亡の場合を除いて、現時点では実名報道をしないとしているようです。

(3)「推知することができる」とは?

「推知」という言葉自体、あまり聞きなれないかもしれませんが、文字通り推測して知ることができるかどうかという意味です。そして、判例によって同条の「推知」は、「不特定多数の人間が、その報道によって本人を推察し知ることができるかどうか」と解釈されています。

例えば、報道番組の中で、未成年被疑者についての詳細が放送されたとします。
被疑者がどんな人物であったかという部分で、被疑者の職歴や友人、知人との関係を放送しても視聴する多くの人は、本人を推察し特定することはできないため、少年法的には問題ないとされます。
ただし、被疑者本人を知っている者が、この放送で言われている内容で、本人の名前や顔などが推知できる場合、肖像権やプライバシーの侵害にあたる可能性もあります。

少年法61条には罰則がなく、違反しても刑事責任は問われませんが、民事上の責任(賠償責任)を問われることも過去の裁判例ではあるようです。
事例として、ある週刊誌が、被疑者である少年の職歴、交友関係、非行歴、法廷での様子を記した記事を掲載したため、被疑者である少年が、当該週刊誌の出版社を相手取り、少年法61条違反と肖像権・プライバシー権の侵害を主張して損害賠償を求めたケースがあります。

上記の事例で裁判所は、不特定多数の一般人からしてみれば、面識のない少年について、この記事だけでは本人を特定することはできないとして、少年法には違反しないと結論づけました。
しかしながら同じようなケースで訴訟となった際、民事上の責任を負うという判決も示された事例もあり、すべての裁判例が同様であるとは言えない現状となっています。

2.少年法をどこまで適用させるのか

さて、少年法61条に基づくと、犯行時に未成年だった場合、永久に匿名のまま取り扱われるということになります。これを、どこまで匿名報道し続けるのか、どういった場合に実名報道に切り替えるのかは、テレビ局によって違いがあるようです。

多くのテレビ局が、実名報道に切り替えるケースとしては、
・被疑者・被告人が死亡したとき
・被告人の死刑が確定したとき
が多く、なぜ切り替えるのかを明確に説明した上で実名や顔写真を報道しています。その理由としては、
・死刑の対象は明らかに報道すべきであるという指針
・社会復帰の可能性が事実上消失したこと
・事件の重大性、社会に与える影響を考慮した
などという点を挙げています。

当時18歳の少年が起こしたいわゆる光市母子殺害事件では、少年に死刑判決が言い渡された後、社会復帰の見込みがなくなったとして実名報道に切り替えるメディアと、再審の可能性もあるなどして、匿名報道を続けたメディアとで対応が分かれました。
当時の法務大臣や法務省は、上記のような理由に基づき行う被告人への実名報道に対しては、経緯を説明して行っているので、一定程度の理解はできると会見しています。

3.まとめ

テレビ局などのマスコミは、ガイドライン(放送指針)を定めています。
特にNHKや民放連のガイドラインは未成年の実名報道がどんな時になされるのか、などを詳しく表記しています。テレビ事業に新規参入するなど、ガイドラインを新たに策定する場合や、現在のガイドラインを見直しする際には参考にするとよいでしょう。

警察庁の調査によると、1900年代と比較して2000年代以降、未成年者による犯罪は減少傾向にあるようです。しかしながら、未成年の凶悪犯罪は依然として注目を集めやすく、社会に与える影響も大きいものです。
取り扱う場合には十分注意を払い、法的な問題やガイドラインに抵触していないかをよく確認するようにしましょう。

2019.06.10

起業する前に知っておくべきこと1~注意点~

「起業したい!」と思った場合、「今勤めている会社を辞めずに起業しても大丈夫?」「法人を設立すべき?それとも、個人でやっていくべき?」といった様々な疑問が浮かんでくるのではないかと思います。
そこで、今回の記事から数回にわたり、起業する方または起業するかどうか悩んでいる方に、実際に起業をする前に知っておいていただきたいことについてご説明します。

1. 会社勤めの人が起業するときの注意点

今、どこかの会社で働いている人にとっては、一口に「起業する」といっても、(1)会社を辞めて起業する(独立)、(2)会社は辞めずに起業する(副業)という2つの選択肢があります。以下では、選択肢ごとに注意点を見ていくことにします。

(1)会社を辞めて起業する(独立)

今勤めている会社を辞めて起業する場合、いくつか気を付けなければならないことがあります。

住民税や国民健康保険料は前年度の収入に基づいて決まる
⇒会社を辞めてから収入が減ってしまうということは十分に考えられます。しかし、納付する住民税、国民健康保険料は、前年度の収入、つまり会社勤めで収入が多かった頃の金額に基づいて決定されます。収入が減ってしまう可能性を考えて、余裕を持って貯金しておきましょう。

起業したばかりだとクレジットカードが作りにくい
⇒クレジットカードの作成を申し込んだとき、クレジットカード会社は「この人はちゃんと貸したお金を返してくれるかな?」という点を見て判断します。会社勤めの頃は、安定した収入がありますが、起業してすぐだと何の実績もなく信用度は低いため、審査に必ずしも通るとは限りません。
しかし、事業がうまくいかず資金繰りをしなければならないという状況になることもあり得ます。それを見越して、会社を辞める前にクレジットカードを作っておきましょう。

家の購入や引っ越しが難しくなる
⇒クレジットカードの作成申し込みと同様に、家を購入するときや引っ越しをするときにも、不動産会社はその人が信用できるかどうかを見ています。会社勤めの場合は、源泉徴収票を見せれば大丈夫なところが多いですが、起業した場合は源泉徴収票と会社の決算書が必要となることが多いです。

それらに記載されている金額で信用度が変わってくるので、会社勤めであればある程度の信用は得られます。しかし、「起業したもののあまり事業がうまくいっていない…」という場合、どうしても信用度が低くなるため、家の購入や引っ越しは当分難しいかもしれません。クレジットカードの作成と同様、家の購入や引っ越しを考えている場合も、会社を辞める前に済ませておきましょう。

(2)会社は辞めずに起業する(副業)

(1)に対して、今の会社で働きながら起業するということも考えられます。例えば、今働いている会社の休日に活動するといった場合です。この場合も、注意すべき点があります。

副業が禁止されていないか確認
⇒会社によっては、業務への影響や、利益相反等を理由に副業を禁止していることがあります。会社を辞めずに起業したいという場合は、まず、会社において副業が禁止されていないかどうか、就業規則などの規程を見て確認しましょう。

会社に副業がばれてしまう可能性がある
⇒もしかすると、「副業は禁止されていないけれど、なんとなく会社にばれるのは嫌だ」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、確定申告のやり方によっては、会社に副業がばれてしまう可能性があります。
(確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得と、その所得にかかる所得税を計算し、精算する手続きのことです。)

基本的に、従業員の住民税は、給与から天引きをして、会社から市町村に納付します。この天引きは、毎年5月頃までに会社に送られてくる特別徴収税額決定通知書をもとに行われます。そのため、会社から支給されている給与と副業で得た収入を合算して確定申告をしてしまうと、それに基づいた住民税額が会社に通知されてしまいます。この通知書を見て、会社が支給した給与よりも総所得額が多いことが発覚して、会社にばれてしまうというわけです。

このような事態を防ぐために、確定申告の際に、副業の収入について「普通徴収(給与から天引きするのではなく、自分で納付する)」を選択すれば、納付書によって別途自分で納付することになるので、会社にばれにくくなります。

ただし、会社との思わぬトラブルを避けるためには、副業を禁止する定めの有無にかかわらず、事前に会社に相談することをおすすめします。

2. 個人事業と法人の違い

1を踏まえて、早速起業しようと考えた方に質問です。個人事業と法人の違いをご存知ですか?「個人事業と法人って何が違うの?どっちにすればいいの?」とお思いの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
個人事業とは、会社を作らず個人で行う事業のことをいいます。俗に言う自営業のことです。これに対し、法人は想像しやすいかと思いますが、会社のように、法律上別の人格が認められたもののことをいいます。

では、個人事業で始めるか、法人を設立して始めるか、どちらが良いのでしょうか。

一概には言えませんが、個人事業と法人にはこのような違いがあります。どちらにも良い点、悪い点があるので、「絶対にこっちにすべき!」と言い切ることは難しいです。両者を比較して、自分にはどちらが合っているか考えてみましょう。

3. まとめ

今回は、会社勤めの人が起業するにあたり気を付けるべきことと、個人事業と法人の違いについてご説明しました。
「何事も早いに越したことはない!」と考え、急いで起業の準備を始めたい方もいらっしゃるかもしれませんが、起業には金銭面など多くのリスクがあります。「ちゃんと考えてから動けばよかった…」と後悔しないように、この記事を参考にしていただければ幸いです。

2019.06.07

【離婚問題】離婚と子供の問題ー親権についてー

未成年の子供がいる夫婦の離婚では、親権、養育費、子供の姓、面会交流等の様々な内容について決めなければなりません。

今回は親権に関わる部分に特化して説明したいと思います。

1.親権者の権利

未成年の子供がいる夫婦の離婚では必ず親権者を決めなければなりません。親権の取得を簡単に説明すると、子供を引き取り育てていく権利という理解が一般的ではないかと思います。では、実際には親権の取得により具体的にどの様な権利が発生するのでしょうか?代表的な権利として2つの例を挙げます。

① 身上監護権
子供の衣食住にかかる日常の世話、教育やしつけをする権利・義務。

②財産管理権
子供の財産を管理し、契約等の財産管理に関する法律行為を代理で行う権利・義務。

以上2つの権利は、子供を育て教育すると同時に、金銭管理と未成年の期間における契約行為を代理で行うという権利です。両方の権利とも子供を育てるにあたり必ず必要な権利になります。
また、親権のうち、①身上監護権には次のような内容も含まれています。

㋐子供の住む場所を指定する権利
㋑子供が悪いことをしたときに注意し罰を与える権利
㋒子供が仕事をするときに判断し許可を与える権利

以上、親権に含まれる代表的な権利を紹介しました。このように、親権と一括りになっているものの、本来は細かい権利を複合して親権という言葉が成り立っています。

2.親権者の決定

離婚では親権の取得が最大の争点となり、離婚に際し取り決めるべき事項のうち、その他の問題点については全て合意していても親権の問題がネックとなり、離婚手続が長期化、複雑化するケースは少なくありません。
離婚手続には、協議離婚や調停離婚等、段階に応じて各手続が用意されていますが、親権の問題が各離婚手続へどの様に影響するのかを簡単に説明します。なお、各手続の詳細は別記事で改めて説明していますので、そちらをご参照ください。

① 協議離婚
協議離婚では、当事者が離婚届を市町村役場へ提出し、役所から受理された場合に離婚が成立します。提出する離婚届の必要記載事項には、親権者の欄があり、夫婦のうちどちらが親権者になるかを明記する必要があります。
もし、親権者の欄が空欄であれば離婚届は受理して貰えないため離婚自体が成立しないことになります。夫婦間で話し合って親権者を決定出来ない場合には、協議離婚での解決はできないため、離婚手続は離婚調停へと進んでいきます。

② 離婚調停
調停離婚は、家庭裁判所を利用し、調停委員という第三者を介して離婚の内容や条件を話し合う手続となります。真っ向から親権が争われる場合は、家庭裁判所の調査官が選任され、夫婦のどちらが親権者として適切かの調査が行われ、調査結果を基に協議を行う場合も多いです。
ここで親権者について合意することが出来れば問題無いのですが、あくまでも話し合いであり、裁判所が親権者を指定することはできないため、お互いに主張が対立した場合は不成立となり審判、若しくは訴訟に移行します。

③ 審判
審判離婚は、離婚やその条件の大筋については当事者間で合意がまとまっているものの、合理的な理由によらずに細かい点について合意がまとまらない場合に、裁判官の決定で離婚、親権を含めたその他の諸条件を決定することが出来る手続きです。親権で互いの主張が真っ向から対立している場合に裁判所が審判を出すケースはほとんどないと思われます。
また、審判の通知を受け取ったとしても異議申し立てにより審判の効力を失わせることが可能なため審判で離婚が決定するケースは離婚手続全体の割合から見ても少ないです。審判の効力が失われると、次は離婚訴訟となります。

④ 離婚訴訟
調停の不成立、審判の取り消しから移行するのが離婚訴訟です。訴訟では実際に裁判期日が開かれ、裁判官が離婚の成立を認める判決を出した場合には親権者等の諸条件も合わせて決定されます。

 

以上、①から④で分かるように離婚手続きにおいて親権者を話し合いで決定できるのは②の離婚調停の段階までで、審判、訴訟となると裁判官が決定権を持つことになります。
家庭裁判所が親権者を指定するときの傾向として、子供が乳幼児の場合は母親が優先されています。母親に育児放棄、虐待等で子供を養育出来ないことが明らかな場合などの特別な事情が認められる場合は、父親が親権者に指定されるケースもあります。

そして、家庭裁判所は子供の現在の生活環境を維持することを優先的に考えられています。裁判所を利用して離婚手続を進めている夫婦は別居しており、子供は夫婦どちらかが監護していることが一般的です。その様な状態で、裁判官が現在監護していない親を親権者として指定した場合には、子供にとっては家、同居人などの生活環境全般、保育園や小学校などに通っている場合は周辺との関係性も含め大きく変わることになるため、子供への負担を強いることになってしまうためです。

では、仮に子供が2人以上いるケースでは、親権者はどの様に指定されるのでしょうか?子供が2人居る場合には、子供1人1人につき親権者が定められます。そして、兄弟姉妹は同一の親権者が指定されることが一般的です。

また、子供が満15歳以上であれば、裁判所は親権者の指定について子供の意思を確認することが義務付けられています。仮に15歳未満であった場合でも発達状況により子供の意思が親権者の指定に大きな影響を与えることは多々あります。

もし、子供を妊娠している間に離婚することになってしまった場合はどうなるのでしょうか?その時点では子供生まれていないため、親権者という立場も存在しません。そして、この様な場合では原則として生まれた時点で母親が親権者となります。もしろん、生まれた後に親権者を父親に変更する手続きも可能となります。

稀なケースとしては、親権から身上監護権(子供の世話や教育に関する権利、義務)を分けて親権者と監護者(監護権者)に分ける事で解決をはかることもあります。このケースでは、監護者が子供を引き取り日常的な世話や教育を行っていくことになりますが、あくまでももう一方の親が親権者として親権の内、他の権利を有することとなります。

3.離婚後の親権者の変更について

離婚時に定めた親権者を後日変更することは可能です。しかし、元夫婦間の話し合いだけで全てを決定できるわけではありません。もし、話し合いで簡単に親権者を変更出来てしまうと、その都度子供の生活環境が大きく変わるため、子供に不利益を与える結果となります。

その様な状況を防ぐために親権者を変更したい場合には、家庭裁判所へ親権者変更調停の申立てを行う必要があり、調停が成立すれば親権者を変更することが可能となります。調停が不成立となった場合には審判に移行することになります。
親権者の変更が認められるには主に次のようなケースが考えられます。

①親権者が病気等により子供の世話が不可能となった場合
②子供への虐待が認められる場合
③子供の養育環境が著しく劣悪な状態であるとき
④ その他、親権者の変更が子供にとって必要であると認められるとき

親権者の変更が確定したら、確定した日から10日以内に市町村役場へ「親権者変更届」を提出します。なお、親権者と監護者がそれぞれ分かれているケースで、監護者のみを変更したいとうときは当事者の話し合いだけで変更をすることが可能です。

4.おわりに

以上のように親権者の決定は離婚手続全般と大きく連動しており、互いに影響を及ぼしています。また、一度指定された親権者を後日変更するには一定の条件があるため簡単ではありません。離婚時の親権者の決定は、その後への影響を考えると互いに簡単に折り合いがつかないケースが多いです。

加えて、親権の問題は互いに感情面の対立に発展するケースが多く、本来は対立していなかった部分まで問題化してしまうこともあります。その様な事態に陥る前に、弁護士に問題点の整理や見通しなどを相談することも解決策への1つとなります。

2019.06.04

標準報酬月額②~算定基礎届(定時決定)のポイント~

毎年6月ごろに年金事務所から届く「算定基礎届」。今年もこの時期がやってきました。毎年1回、実際の報酬と標準報酬月額が大きくかけ離れないように、「算定基礎届」を提出しなければなりません。全員提出すればいいというものでもありませんので、しっかり要件を確認してみましょう。
ちなみに、提出期限は、7月1日~7月10日ですので、ご注意ください。

1.定時決定とは

原則として毎年7月1日現在の被保険者全員が対象となり、標準報酬月額の見直しを行います。これを、定時決定といいます。

▼定時決定(健康保険法41条)
標準報酬月額は、原則として、当然被保険者全員について毎年1回決定され、その決定された標準報酬月額が、1年間使用されます。
(1)算定方法

定時決定の算定の対象となる、4月・5月・6月のことを「算定基礎月」と言い、算定基礎月に支払われた給与(報酬額)を対象とします。
この金額を、期間の月数で割った額を報酬月額として、標準報酬月額を決定します。

例:末日締め、翌月10日払いの場合
4月…4月10日支給 21万円
5月…5月10日支給 18万円 → 合計60万円÷3か月
6月…6月10日支給 21万円   =平均20万円

支払われた給与・・・?どの手当を含むの?こちらの記事に詳しく解説があります。

標準報酬月額①~基礎知識と報酬に含む手当~ はこちらから

4・5・6月の給与が多いと、その後1年間の社会保険料が高くなります。
7月以降の給与が少なかったとしても、この3ヶ月で算出された社会保険料は基本的に変わらないので、4-6月は極力残業を少なくすることをお勧めします。
しかし、業務の性質上、4-6月に残業や歩合が多く発生することが見込まれる場合については(算定基礎月とその他の月を比べて2等級以上の差がある場合)、「定時決定の特例」として扱われ、年間平均額を算出し、別途、理由を記載した申立書や同意書を提出し、年間平均額にて決定することもできます。

(2)支払基礎日数

「支払基礎日数」とは、給与を起算する基礎となった日数のことをいいます。
間違えやすいのが、4月・5月・6月に出勤した日数ではなく、それぞれに支払った給与の計算基礎となった日数となります。つまり、4月支給分の基礎日数は3月勤務分となります。

フルタイム勤務の場合
 4月…31日
 5月…30日
 6月…31日
(3)算定の対象月

①支払基礎日数(出勤日数)が17日以上ある月を計算の対象とします。

②短時間労働者:同一の事業所に使用される通常の労働者の、1週間の所定労働時間の4分の3未満、又は、1か月間の所定労働日数の4分の3未満であるときは、11日未満
※4分の3以上であれば、短時間労働者でも①と同様に17日。

③月給制:支払基礎日数の暦日数、休日や有休休暇も含み、欠勤は含みません。
     所定労働日数が20日で、2日欠勤した → 18日(支払基礎日数)

④日給制・月給制:支払基礎日数の出勤日数に有給休暇を足した日数。

⑤17日を満たしていない月は?(短時間労働者かつ4分の3未満の人は11日)
支払基礎日数が17日未満の場合は、算定の基礎から外して、給与を平均します。
 例:4月は20日勤務 5月は18日勤務 6月は15日勤務
 →17日未満となる、6月を除き、4月と5月だけで給与を平均します。

(4)「算定基礎届」の提出が不要な人

7月1日現在、被保険者である人で以下に該当する人は定時決定を行いません。

6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した人
 →定時決定ではなく、入社時決定方法で標準報酬月額が決まります。
 →7月1日に退職した人は、届出が必要です。

②4~6月に賃金の変動があり、7月~9月に標準報酬月額が随時改定される人、又は、産前産後休業や育児休業等を終了した際に標準報酬月額を改定される人。
 →定時決定ではなく、「月額変更届」が優先されます。
  4月や5月に昇給降給し2等級以上変更となる人は、9月の定時決定を待たずに、「月額変更届」と同様の改定となります。
 →産前産後・育児休業の方は、終了した後に提出する、報酬月額変更届により決まります。

(5)届出までの流れ

<有効期限>
定時決定によって決定された標準報酬月額は、原則として、その年の9月から翌年の8月までの各月の標準報酬月額とする。

2.事務手続き

届出先 管轄する年金事務所
期日 7月1日~7月10日
必要書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届
※70歳以上の方は、「厚生年金保険 70歳以上被用者算定基礎届」を提出します。
添付書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届総括表
注意1 算定基礎届出用紙は、管轄の年金事務所より事前に郵送で届きます。
被保険者1人ひとりについて、氏名・生年月日など印字されています。退職者の記載があったり、入社した人が記載されていないことがありますので、注意が必要です。
注意2 提出が不要な人やその他記載が必要な方は、備考欄に記載しましょう。
パートや短時間労働者な、備考欄の確認は必須です。

 

3.まとめ

算定基礎届出用紙がまだ届いていない場合は、管轄の年金事務所へ問い合わせてみましょう。「算定基礎届出」は、被保険者の報酬額に応じた保険料を算出する大切な作業ですが、各事業所の報酬の支払い状況や被保険者数などを年金事務所が把握する為というのも兼ねています。
提出が遅れたり金額を間違えると、本人たちが迷惑することもですが、会社も後日精算した金額を支払ったり手間となりますので、期限内の提出、適正な記入を行いましょう。

2019.05.31

クーリング・オフ期間を過ぎて契約を解除するにはどうするの?

前回、『一度結んだ契約が取り消せる?「クーリング・オフ制度」とは?』の記事で、エステの契約をし、契約書面を受領した日から8日間がクーリング・オフ制度の対象期間となり、その期間を過ぎてしまうと、原則としてクーリング・オフはできない、ということをご説明しました。
しかし、クーリング・オフできないからといって、契約を一切解除できないわけではありません。
今回は、クーリング・オフ以外に商品購入の契約を解除する方法を見ていきましょう。

1. 中途解約

まず1つ目の契約解除の方法が中途解約です。
クーリング・オフ期間が過ぎても中途解約できることが、特定商取引法第49条で定められていて、以下のように記されています。

役務提供事業者が特定継続的役務提供契約を締結した場合におけるその特定継続的役務の提供を受ける者は、第四十二条第二項の書面を受領した日から起算して八日を経過した後においては、将来に向かつてその特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる。

こちらを分かりやすく解説すると、
サービス提供事業者が、エステ等の特定継続的役務提供契約を締結した場合、消費者は契約書面を受け取った日から数えて8日が経過した後は、サービス提供期間内であれば、将来に向かって、契約を解除することができる、ということです。ここでいう「将来に向かって」というのは、それまでに提供されたサービスについては返金対象外であるが、それ以降の、まだサービス提供を受けていない部分に関しては返金を受けることができるという意味です。

このように、クーリング・オフ期間が過ぎても中途解約で契約解除をすることが可能なことがわかりましたが、中途解約の際に、注意しておかないといけないことがあります。

2.中途解約時に注意が必要なこと

中途解約時、気を付けておかなければならないことの1つ目が解約料についてです。

① 解約料

特定商取引法で定められている通り、中途解約を申し出ることで、サービスを受けていない分に関しては返金を受けることはできますが、一方で中途解約では、事業者に対して解約料(違約金・損害賠償額)を払わなければならないときがあります。この解約料を払う必要があるかどうかは、事業者の方針によって異なりますが、その額の上限は2万円と決められているので、この上限を超えた金額をエステの中途解約時に請求されることはありません。

上限2万円の範囲で解約料が発生するので、特に事業者で解約料の定めがなければ、
・サービスを受ける前であれば2万円、
・既にサービスを受けている場合は、2万円か、契約残額の10%のうちの低いほう
が解約料となります。つまり、契約残額の10%の額が2万円より少ない場合は、そちらが解約料となります。契約残額とは、契約に関するサービスの対価の総額から、すでに受けたサービスの分の対価を差し引いた金額のことです。

次に知っておいたの方が良いのが、関連商品についてです。

② 関連商品の中途解約

エステの契約を結んだ際に、サプリメントやボディケア商品などの関連商品も一緒に購入することがあります。これらの関連商品も、エステのサービス同様に中途解約の対象となります。
ただし、未使用品のみ解約の対象になりますので、開封・使用・消費したものに関しては対象外となってしまうので、注意が必要です。

このように、中途解約はサービスを受けた部分は返金対象外で、また解約には一定の解約料が発生します。また、使ってしまった関連商品は解約の対象外となりますので、その点を注意しておきましょう。
次に、クーリング・オフでも、中途解約でもない方法での契約解除の仕方を見ていきましょう。

3. 消費者契約法における契約取消

消費者契約法においては、消費者取消権というものが認められていて、不当な勧誘によって結ばれた契約は、取り消すことができます。
エステにおける不当な勧誘による契約とは、以下のような、消費者に誤認や困惑がある状態で勧誘し、契約を結ぶことを言います。

① 不実告知

不実告知とは、重要事項について、事実と異なることを告げることです。その結果、消費者が告げられた内容を事実と誤認してしまうことにより、消費者取消権が認められます。
具体的には、施術内容やその効果について嘘(「エステを受ければ若返る」という)をつくこと、専門用語や専門知識を使い、消費者には理解し難い説明を行い契約させることや、クーリング⁺オフや中途解約に関する消費者の権利・義務について告げていないこと、「無料」と謳いながら、実際には有料の施術を受けさせた場合などが不実告知にあたります。

② 断定的判断の提供

断定的判断の提供とは「絶対に痩せます」「二度と元の体型には戻りません」などのように「絶対」、「二度と」などの断定的な表現を使い勧誘・契約を行うことを言います。代金を払いエステを受けたことで「絶対に」その効果を体感できるということは言い切れないので、そのような勧誘は消費者契約法違反になり、取消の対象となります。

このように、契約時に述べた内容が実際は違っていたり、「絶対」などと言い切れないことを断定したりして契約に結び付けると、消費者契約法の違反になるので、取消の対象となります。
また、いずれも取消できる期間は、誤認に気が付いたときから6か月間、また契約時から5年間です。契約後5年以上が経過してしまうと原則として取り消せなくなってしまうので注意が必要です。契約を解約したい人は、ご自身が契約時にどのようなやり取りをしたのか、記憶を辿ってみましょう。

4.まとめ

クーリング・オフは期間が短いですが、期間を過ぎてしまったからといって、後悔している契約の解除を諦めるのは早いです。
中途解約もできますし、また勧誘や契約の仕方が不当である場合は法律の定めで契約の取り消しが可能です。
しかし、不当な勧誘・契約と言っても様々なケースがあり、一概には言えず、ご自身で判断するのは難しいので、困ったときは専門家に相談するのが良いでしょう。

2019.05.31

意外と知らない会社法3~会社の設立~

世の中に数多く存在している「会社」ですが、それらは、どのようにして誕生するのでしょうか?

1. 「定款」の作成

会社を設立するためにはいくつかの手続きが必要になってくるのですが、その流れにはどのようなものがあるのでしょうか?

手続きの最終段階である登記が完了するまでには、大きく分けて4つの過程があり、その1つ目が「定款」の作成です。「定款」とは、会社を運営していく上で必要な基本的規則を定めたもので、「会社の憲法」と呼ばれるものになります。
これを、「発起人」と呼ばれる会社の設立を企画し、会社の経営を担っていく人物が作成し、会社の定款に認証を与える権限を有する「公証人」の認証を受けることになります。

定款の内容として、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の記載が必要で、これらの記載がないと定款の認証を受けることが不可能、つまり定款が無効となってしまいますので気を付けましょう。

・絶対的記載事項:定款に必ず記載しなければならない事項
(項目)会社の目的、商号、本店の所在地、出資額、発起人の氏名・住所、発行可能株式総数

・相対的記載事項:定款に定めなければ効力が生じない事項
(例)現物出資、財産引受、発起人の報酬・特別利益など

・任意的記載事項:定款ではなく、他の方法で定めても良いもの。会社法の規定や公序良俗に違反しない限りは定款で定めることが可能
(項目)定時株主総会の招集時期、役員の数、事業年度(決算期に関する事項)

2. 資金を集める

2つ目は、会社の資本金を集めることです。
「資本」とは一般的に、事業を行うために必要なお金のことですが、会社法で言う資本とは、「設立」又は「株式の発行」に際して株主となる者が、株式会社に対して「払込み」「給付」をした「財産の額」のこと(会社法第445条参照)つまり、会社の財産を確保するために株主から払込み、給付をされたお金のことになります。

会社にある程度の財産がないと、取引先の業者や銀行など、会社からお金を払ってもらう、返してもらう立場の人々に、お金が返ってこないのではないかという不安を与えかねませんし、信用の度合いも低くなってしまします。ですので、初めにある程度の資本金を集めておき、安心して取引を行えるようにしておく必要があるのです。
 
では、用意する資本金の最低額はいくらなのでしょうか?
平成18年に会社法が施行されるまでは、「最低資本金制度」という制度により、有限会社を設立するには最低でも300万円、株式会社だと1,000万円の資本金を用意しなければなりませんでした。しかし、会社法ができたことにより、「最低資本金制度」は廃止され、現在は設立時の資金が0円でも設立ができるようになったのです。

厳密に言うと、出資額を0円にすることはできません。しかし、例えば20万円出資したとして、登録免許税や定款の認証手数料に20万円使ったとなると手元には1円も残らないことになります。つまり、会社の資金が0円となるのです。
一般的には、会社の設立費用に20万円強かかりますので、それ以上の金額は資本金として会社に最初から入れておくケースが多いです。

3. 会社経営陣の選任と登記

定款の作成、資金集めが終わると今度は会社の経営陣を決定します。
まず経営陣とは、取締役、監査役、会計参与を総称して表す言葉のことで、簡単に言えば会社役員のことです。選任する際に気を付けることとして、取締役や監査役は、誰でもなれるわけではないということです。以下の人はなることができません。

【取締役の欠格事由】(会社法第331条参照)
一 法人
二 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)の規定に違反し、又は金融商品取引法第197条、第197条の2第1号から第10号まで若しくは第13号、第198条第8号、第199条、第200条第1号から第12号まで、第21号若しくは第22号、第203条第3項若しくは第205条第1号から第6号まで、第15号若しくは第16号の罪、民事再生法(平成11年法律第225号)第255条 、第256条、第258条から第260条まで若しくは第262条の罪、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成12年法律第129号)第65条 、第66条、第68条若しくは第69条の罪、会社更生法(平成14年法律第154号)第266条 、第267条、第269条から第271条まで若しくは第273条の罪若しくは破産法(平成16年法律第65号)第265条 、第266条、第268条から第272条まで若しくは第274条の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

上記の欠格事由に該当しない人を、1でも出てきた発起人が選任し、選任が終わると、発起人は選任決定書を作成します。
そして、最後に登記を行います。必要書類を揃え、本店所在地の管轄法務局に登記申請を行います。不備がなければ、申請から1週間ほどで登記が完了し、会社が誕生します。

4. まとめ

今回は、会社を設立するために必要な流れをおおまかに説明しました。
実際に会社を設立するとなると、印鑑を作成したり、誰から出資を募るかを決定したり、書類を集めたりと、様々な準備が発生しますので、まずは、登記までの流れを把握し、必要な準備を始めていきましょう。
その後、出資金をいくらにして、どのようなビジネスを行っていくか等は、専門家に相談しながら進めて行くことをお勧めします。

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