弁護士コラム

2019.06.19

テレビ番組制作において気をつけたいポイント~番組内容の著作権~

テレビ番組制作において一番重要なのは、その番組がどのような内容であるかという事ではないでしょうか。視聴者を惹きつけるような企画や番組構成であれば視聴率も上がり、話題になることでスポンサー広告収入なども得られることでしょう。
他方で、このような人気番組と内容も構成も似ている・・・というような番組も見かけることがあります。このような番組は法的に問題ないのでしょうか。

1.番組の企画は、著作物となる?

世の中にはたくさんのテレビ番組があり、ドラマ、クイズ番組、トークバラエティなどジャンルも様々です。そんな中、例えば、新しいクイズ番組の企画を立ち上げ、以前とは違った斬新なセットを組み、出題形式も目新しいものを制作したとします。その結果、高視聴率をあげる人気番組になりました。

しかしながら、その後この番組と似たような構成のクイズ番組が他局でも放送されるようになってしまいました。この場合、類似性の観点から著作権侵害にあたり違法ではないかと思われるかもしれませんが、実は違法ではありません。
まず、著作権が保護される著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。

先ほどの、クイズ方式やルール、競技は上記のような「思想」や「表現」ではなく「アイデア」と見なされており、著作権法の対象となる「著作物」にあたらないためです。
もちろん、その番組自体はテレビ局や制作会社の「著作物」ですので権利は発生しますが、企画や構成、ルールなどはアイデアと同等なので、他者がその部分を真似しても問題はありません。実際に、アイデアは著作物ではないことを示した裁判例もあります。

内容としては、独自のルールを用いてゲームを考案したXさんがいました。Xさんは、とある映画内で自分が考案した独自ルールに類似したゲームが使われていることを知ったため、当該映画の制作会社に対し著作権侵害を訴えましたが、裁判所は、アイデア自体は「著作物」ではないとして訴えを退けました。

なお、アイデアは著作物しかしながら、セット自体や小道具は「表現」として著作物とみなされる場合はあります。したがって、番組のセット(出演者の後ろに映るパネルや座席のデザインなど)や小道具が他の番組のセット等とよく似ていた場合、著作権侵害のおそれがあります。

前述しましたが、番組には様々なジャンルがあり、放送局も増えてきた中、番組を作ろうとするとどうしても企画が他の番組と似通ってきてしまうものです。現時点では、似たような番組構成についての訴訟で違法となった例はないようですが、あからさまに人気番組と同じ構成であった場合、視聴者に「二番煎じだ」と思われ不快感を与えかねません。
許容範囲を超えない、適切な番組制作・企画を行うようにしましょう。

2.ドラマや映画のパロディは問題ない?

1.ではクイズ番組を例に挙げましたが、他にもテレビ番組で見られるのがドラマなどのワンシーンをコント番組でパロディにし、笑いをとるといった場面です。
ドラマ自体は著作物となるわけですが、こういった「他人の著作物」を利用するということについて、どんな場合においても許諾が必要なのでしょうか。また、許諾申請をしなければ必ず著作権侵害になるのでしょうか。

(1)他人の著作物の利用

判例によると、他人の著作物と自身の著作物とで照らし合わせて、表現上の本質的特徴が同じと判断できれば類似性があると認められるため、他人の著作物の使用許諾が必要であり、許諾がなければ著作権侵害として違法となります。これに対し、本質的特徴が同じでなければ類似性が認められないため、他人の著作物の使用許諾は不要となります。

たとえば、時代劇や大衆演劇などについては話の展開や殺陣、振る舞いに一定のパターンがありますが、これは上記判例のいう、「表現の本質的特徴が同じ」と判断され、類似性が認められるのでしょうか。
まず、前提として、1.で述べた通り、著作物として保護されるものは、「思想」又は「表現」ですので、単なる「事実」や「事件」などは著作物にあたりません。そのため、著作物として保護されるためには、当該事実や事件を題材にして創作的な「表現」になっていることが前提です。

その上で、話の展開や、振る舞い等に一定のパターンがある場合は、他人の著作物の利用に該当するのではないかが問題になりますが、過去の裁判例の中には、こういった表現は武士の作法など歴史的史実も含まれており、さらに既存の作品にも多く登場していることから、「表現上の本質的特徴」とはいえないとして訴えを退けた裁判例があります。

以上を踏まえて、ドラマのパロディに上記の表現上の本質的特徴を照らし合わせてみると、ドラマの登場人物の設定はアイデアの部類になる、つまり表現に含まれないので、この設定を利用したコメディは問題ないといえます。

(2)節度を守った番組作りを

このようなドラマや映画のパロディは頻繁に行われていますが、今のところ、訴訟になった際に違法になった例はありませんが、著作権侵害にあたり違法になる可能性もゼロではありません。
パロディ元を揶揄したり、馬鹿にしたようなもの、質を落とすようなパロディは、権利者側が看過できないとして訴訟になってしまうこともあります。
そのパロディを放送することで、元となったドラマや映画の人気も上昇するなど、お互い有益になるような番組制作・企画作りを行うことがポイントです。

3.まとめ

今回は番組を企画する際や、他人の著作物の利用時に気をつけたい著作権や表現についてご説明しましたが、番組や作品というのはテレビや映画が存在する限り、これからも増えていくものです。

過去に似たような作品や番組がなかったか、また既存作品のパロディを行う場合は、既存作品の表現上の本質的特徴が同じではないか確認し、同じ場合は許諾を得るようにするなど、対策を行った上で番組制作を行いましょう。

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