【裁判例で見る】金銭感覚の違いで離婚したい|配偶者のお金の使いすぎはどこから離婚事由になる?弁護士が解説

配偶者がお金を使いすぎる、貯金をしてもすぐ使われる、借金までしている。このような状態が続き、「もう離婚したい」と考えているかもしれません。金銭感覚が合わないという理由だけで裁判で直ちに離婚が認められるとは限りませんが、実際、どこからが離婚事由になり得るのでしょうか。
本記事では、過去の裁判例を参考に、金銭問題が離婚事由となり得るラインと弁護士へ相談する際のポイントを解説します。
第1章 金銭問題を理由に離婚する場合の基本的な考え方
1-1 相手が離婚を拒否する場合は法律上の離婚事由が問題になる
夫婦の両方が離婚することに合意できるのであれば、「金銭感覚が合わない」という理由でも協議離婚はできます。
一方、浪費している相手が離婚を拒否し、最終的に裁判で離婚を求める場合には、民法が定める離婚事由が必要になります。浪費や金銭感覚の違いは、それ自体が独立した離婚事由として定められているわけではないため、浪費の程度や状況もふまえて、主に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し得るかが問題になります。
1-2 浪費の金額だけでなく家計や夫婦生活への影響も含めて判断される
毎月いくら以上無断で使っていれば離婚事由となるといった一律の金額基準はありません。ただし、夫婦の収入や資産に対してどの程度の金額を使っていたのかは、金銭問題の深刻さを判断する一つの材料になり得ます。
また、裁判では、何のために使ったお金なのか、家族の生活費や子どもの教育費にまで影響しているか、配偶者に隠れて借金をしているか、注意された後も繰り返しているかなどの事情もふまえ、金銭問題によって婚姻関係がどの程度損なわれ、婚姻生活を継続することが困難になっているかが判断されます。
では実際、具体的にどの程度になると離婚事由になり得るのでしょうか。次章では実際に離婚が認められた裁判例と認められなかった裁判例を見ながら整理します。
第2章 どこから離婚事由になりやすい?裁判例から見る3つの段階
金銭問題に関する裁判例を3つの段階に分けて見ていきます。なお、以下の3段階は裁判所が示した公式な基準ではなく、複数の裁判例から違いを分かりやすく整理したものです。
2-1 段階1|借金で家計が圧迫されていても、それだけでは離婚事由にならないことがある
配偶者に多額の借金があり、その返済のために家計へ入るお金が減っている場合、生活に支障が出ているので離婚事由になるのではと考えるかもしれません。
しかし、借金で家計が圧迫されていても、それだけで直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるとは限りません。
裁判では、借金がいくらあるかだけでなく、なぜその借金ができたのか、借金以外に夫婦関係を続けられない事情があるのか、婚姻生活を立て直す余地はないのかといった事情も含めて判断されます。
裁判例:約600万円の借金があり、生活費が月3万円程度でも離婚が認められなかったケース
夫には結婚当初から約600万円の借金があり、その後も借入れをしていました。借金の返済により、一時期には妻へ渡す生活費が1か月3万円程度となっていました。
それでも、裁判所は妻からの離婚請求を認めませんでした。(仙台地方裁判所 昭和60年12月19日判決)
この事案では、借金の原因に弟の大学進学費用、父の入院費用、夫婦の結婚費用などが含まれていました。
また、借金問題以外には婚姻生活を続けるうえで大きな支障が認められないことに加え、当時の判決では、妻も働いて家計に収入を入れれば借金の返済や生計の維持が容易になるとの事情も考慮されています。なお、この点は当時の社会状況や家族観を反映した判断であり、現在の夫婦にそのまま当てはめることはできません。
つまり、妻に渡される生活費が月3万円程度まで減っていたにもかかわらず、借金の原因や夫婦関係全体の状況によって離婚事由が認められなかったケースといえます。
2-2 段階2|生活費や教育費など家族のためのお金にまで手を付けている
お金の使い方が、自分の収入や自由に使える範囲に収まらず、生活費や教育費など家族のために確保していたお金にまで及んでいる場合には、問題は深刻になります。
たとえば、子どもの入学費用として用意していたお金や、生活費として渡したお金をギャンブルや買い物に使ってしまうといったケースです。
裁判例:子どもの中学校入学費用まで別の用途に使い、浪費を繰り返していたケース
妻は、競馬に毎月1~2万円を使うほか、夫に無断で不要な衣類や時計、貴金属などを割賦で購入し、代金を払い終わらないうちに質入れして現金化するなどの行為を繰り返していました。さらに、夫が長女の中学校入学費用として妻に渡した13万円についても、妻は別の用途に使っていました。
夫から浪費を注意されると反省する態度を示していたものの、その後も同じような行動を繰り返し、離婚調停中にも、夫から生活費を受け取っていながら自宅の冷蔵庫やステレオを質入れしていました。
裁判所は、このような一連の事情から「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚を認めています。(東京家庭裁判所 昭和41年4月26日審判)
このケースでは、子どもの入学費用13万円を使ったことだけを理由に離婚が認められたわけではありません。家族のために確保されたお金にまで浪費が及び、注意されても改善せず、同じような行為を繰り返していたことなどが重なっています。
つまり、配偶者がお金を使いすぎている場合には、その金額や使途に加えて、同じことを繰り返しているか、注意や話し合いをしても改善しないかといった事情も重要になるといえます。
2-3 段階3|隠れた借金や名義利用まで進み、家族の生活や信用に影響している
浪費によってお金が足りなくなるだけでなく、配偶者に隠れて借金をする、自分以外の名義を使って取引をするなどして、家族の信用にまで影響が及んでいる場合はさらに深刻です。
たとえば、買い物やギャンブルのために借金を繰り返す、配偶者に知られないよう消費者金融から借りる、配偶者やその家族の名義を無断で使うといった状況です。
裁判例:隠れて借金をし、夫や夫の父の名義まで利用していたケース
妻が支出を重ねて家計を不足させ、夫に隠れて質入れや借金を繰り返していたケースがあります。妻は夫名義の約束手形を無断で振り出し、月賦購入の際には夫の父の名義まで無断で使用していました。
夫婦はいったん話し合いをして再出発しましたが、その後も妻の生活態度は改善しませんでした。
裁判所は、このような事情から「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚を認めています。(東京地方裁判所 昭和39年10月7日判決)
このケースでは、浪費そのものに加えて、隠れて借金を繰り返し、夫やその家族の名義まで利用していたこと、さらに一度やり直す機会を設けても改善しなかったことなどが重なっています。
紹介した裁判例には、昭和時代のものも含まれています。当時と現在では物価や家族のあり方なども異なるため、古い裁判例の金額をそのまま現在のケースに当てはめることはできませんが、浪費や借金による離婚について、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるかを夫婦関係全体から判断するという基本的な考え方は現在も変わりません。
裁判所が重視していた、借金の使途や家計への影響、配偶者に隠していたか、問題を繰り返していたか、改善する可能性があったかなどの事情については、現在のケースを考えるうえでも参考になります。
第3章 浪費を理由に配偶者との離婚を考えたら準備しておきたいこと
3-1 金銭問題が始まってから現在までを時系列で整理する
弁護士へ離婚について相談する場合には、配偶者の金銭問題がいつ頃から始まり、その後どのように状況が変わってきたのかを時系列で整理しておくとよいでしょう。
たとえば以下のような出来事をまとめておきます。
・借金がいつ発覚したか
・生活費や貯金にどのような影響が出たか
・夫婦でいつ話し合ったか
・相手が改善を約束した後も繰り返したか
上記のような事項を時系列で整理しておけば、弁護士も金銭問題が一時的なものなのか、夫婦関係の破綻につながるほど継続しているのかを把握しやすくなり、今後の離婚の進め方も検討しやすくなります。
3-2 浪費や借金を裏付ける資料は確保しておく
配偶者がお金を使いすぎていることや借金があることを確認できる資料が手元にある場合には、なくさないように保存しておきましょう。
たとえば、自分が適法に確認できる範囲の預金口座の取引履歴、クレジットカード明細、借入れ関係の書類、家計簿、金銭問題について夫婦でやり取りしたチャットやメールなどです。
これらの資料があれば、「いつ、何に、いくら使っていたのか」「借金がどの程度あったのか」「問題が発覚した後に夫婦でどのような話をしたのか」を具体的に確認し、金銭問題を裏付ける資料として活用できる場合があります。
離婚調停や訴訟になれば、相手の浪費の程度や借金について争うこともあります。そのため、現在手元にある資料は、相談時に弁護士へ見せるためだけでなく、その後の離婚手続で金銭問題を説明するためにも保存しておくことが重要です。
まとめ|金銭問題を理由に離婚を考えている方は早めに弁護士へ相談を
配偶者の浪費や借金が離婚事由になり得るかは、金額だけでなく、家計への影響やこれまでの経緯などによって異なります。離婚を考え始めた段階で弁護士へ相談しておけば、現在の状況で離婚を求めることが現実的か、今後どのような資料を確保し、どのように進めるべきかを整理できます。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、離婚や財産分与をはじめとする夫婦間の問題についてご相談をお受けしています。配偶者のお金の使い方に悩み、離婚をどのように進めればよいか分からない場合は、お気軽にご相談ください。
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結婚後に配偶者の宗教活動が発覚したら離婚できる?隠されていた場合の慰謝料と必要な証拠を弁護士が解説

結婚した後で初めて配偶者から特定の宗教を信仰していることや、継続的に宗教活動をしていることを知らされ、「知っていれば結婚しなかった」と悩まれるケースがあります。宗教を隠していた事実だけで離婚や慰謝料請求が当然に認められるわけではありませんが、その事実が結婚生活に及ぼす影響が問題になる場合があります。
本記事では、結婚後に宗教活動が判明した場合の離婚の可否、結婚前の秘匿の評価、慰謝料請求の条件と必要な証拠を弁護士が解説します。
第1章 結婚後に宗教活動を知らされた場合、離婚できるのか
1-1 相手も離婚に応じる場合は宗教を理由に協議離婚できる
夫婦がともに離婚に合意している場合は、配偶者が宗教を信仰していることや、結婚前に宗教活動を隠していたことが法律上の離婚原因に当たるかを問わず、協議離婚ができます。
ただし、未成年の子どもがいる場合は、父母の双方またはいずれか一方を親権者と定める必要があります。子どもの監護の分担や養育費、財産分与、慰謝料についても、離婚届を提出する前に話し合っておくことが望ましいです。
宗教をめぐる対立が強い場合は、子どもを宗教行事に参加させるか、宗教教育をどのようにするかについても争いになりやすいため、離婚後の生活まで見据えて取り決めることが重要です。
1-2 相手が離婚を拒否する場合は婚姻関係が破綻しているかが問題になる
相手が離婚を拒否する場合は、家庭裁判所の調停を経て、最終的には離婚訴訟で判断を求めることになります。離婚の裁判を起こすには、原則として、先に調停を申し立てる必要があります。
現在の民法では、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合に裁判上の離婚を認めています。そのため、裁判では、宗教をめぐる対立によって夫婦の共同生活が成り立たなくなっているか、話し合いや生活上の調整を重ねても関係を修復する見込みがない状態に至っているかが判断されます。
1-3 信仰そのものではなく家庭生活への具体的な影響が重視される
憲法は信教の自由を保障しています。そのため、配偶者が特定の宗教を信仰しているという事実だけで、直ちに違法と評価されるものではありません。「自分はその宗教が嫌いである」「信者であることを受け入れられない」という事情だけでは、裁判離婚が認められない可能性があります。
一方、配偶者や子どもに入信や宗教行事への参加を強要する、多額の献金によって生活費が不足する、宗教活動を優先して家事や育児を継続的に行わないといった事情があれば、婚姻生活への具体的な影響として考慮されます。
実際の判決でも、配偶者の反対を押し切って子どもを宗教活動へ参加させ、夫婦関係を修復するために活動を自制する意思もなく、長期間の別居に至った事案について、双方の言動や別居後の状況も踏まえ、離婚が認められています。(東京高等裁判所平成2年4月25日判決)
反対に、活動が月に数回程度で、家事や仕事を顧みないほどのものではなく、妻が夫との同居を望み、夫が妻の信仰を許容すれば夫婦共同生活の回復が可能であるとされた事案では、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められないとして離婚請求が棄却されています。(名古屋地方裁判所豊橋支部昭和62年3月27日判決)
離婚が認められるかどうかは、宗教活動の頻度だけでなく、家計や子どもへの影響、別居期間、双方の対応などを総合して結論が分かれるといえます。
第2章 結婚前に宗教活動を隠していたことはどう評価されるのか
2-1 宗教について自分から話さなかっただけでは直ちに離婚原因にならない
前述の通り、結婚前に配偶者が宗教について「自分から話さなかった」ことだけで直ちに裁判上の離婚原因になるとは限りません。
信仰が本人の内心や個人的な活動にとどまり、結婚後の家計や、家事・育児、夫婦関係に具体的な支障が生じていない場合は、婚姻関係が修復困難なほど破綻しているとは評価されにくいためです。
2-2 質問に嘘をついた場合や結婚の条件を知って隠した場合は重く評価される
2-1のように、結婚前に宗教の話題が出なかったため自分から話さなかった場合と、質問されたのに「信仰していない」という嘘の回答をしていた場合では、評価が異なります。
また、「特定の宗教の信者とは結婚しない」と明確に伝えていたにもかかわらず、結婚できなくなることを避けるために信仰や活動歴を意図的に隠した場合は、夫婦間の信頼を損なう行為として重く評価される可能性があります。
夫が、妻が特定の宗教の信者とは結婚しない意思を持っていることを知りながら、自らの信仰を結婚前から意図的に隠していた事案では、裁判所は離婚を認めたうえで、夫が信仰を隠したまま結婚し、妻を婚姻関係の継続が困難な状況に置いたことなどを考慮し、妻への慰謝料を認めました。(東京高裁昭和58年9月20日 民事14部判決)
ただし、必ずしもこの判決と同じ結論になるとは限らず、離婚や慰謝料請求が認められるかは事案ごとに判断されます。
2-3 発覚後に相手がどのように対応したかも離婚の判断に影響する
結婚前の秘匿が問題となる場合でも、裁判所は発覚後の対応を含めて婚姻関係の回復可能性を判断します。
相手が事実を説明し、献金額や活動時間を家庭生活に支障がない範囲へ見直し、配偶者や子どもに信仰を強要しないと約束して実行している場合は、直ちに婚姻関係が破綻したとは判断されないことがあります。
反対に、発覚後も説明を変える、活動内容や支出を隠す、配偶者の意思を無視して入信を迫る、子どもの参加について話し合わないといった対応が続けば、信頼関係の回復は難しいと判断される可能性があります。
第3章 宗教活動を隠していた相手に慰謝料を請求できるのか
3-1 離婚が認められても慰謝料が当然に発生するわけではない
慰謝料は、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。そのため、宗教を理由に離婚が成立しても、直ちに慰謝料を請求できるわけではありません。
慰謝料を請求するには、相手が信仰や宗教活動について事実を隠したり、事実と異なる説明をしたり、配偶者や子どもに入信や宗教活動への参加を強いたりした行為が違法と評価され、それによって精神的苦痛を受けたという事実が必要です。
離婚に伴う慰謝料を求める場合は、その行為が婚姻関係の破綻や離婚にどの程度影響したかも考慮されます。
3-2 意図的な秘匿や強要が婚姻破綻の原因なら慰謝料が認められる可能性がある
慰謝料が問題となりやすいのは、結婚の判断に影響すると分かっていながら、信仰を意図的に隠したり、事実と異なる説明をしたりした場合です。
ただし、慰謝料の金額は、相手がどのような意図で信仰を隠し、その結果として夫婦関係がどの程度悪化し、配偶者がどれほどの精神的苦痛を受けたかを中心に判断されます。婚姻期間や双方の言動、支払う側の経済状況などもあわせて考慮されます。
3-3 個人的な信仰にとどまる場合や双方に原因がある場合は慰謝料請求が認められにくい
配偶者が自分の時間と金銭の範囲で宗教活動を行い、家計や家事、育児に支障を生じさせておらず、入信も強要していない場合は、慰謝料請求は認められにくいといえます。
また、宗教活動が発覚した後に、信仰を全面的に捨てるよう相手に迫ったり、相手の人格を否定する言動を繰り返したりしたことで夫婦関係が悪化した場合には、相手だけに婚姻破綻の責任があるとは言いにくくなり、離婚が成立しても慰謝料が否定されたり、金額が低く抑えられたりすることがあります。
第4章 離婚や慰謝料請求を考える場合に集めておきたい証拠
4-1 結婚前にどのような説明があったかを残す
まず確認したいのは、交際中や婚約中に、宗教についてどのような話をしていたかです。
メッセージやメールに「特定の宗教には入っていない」「家族も活動していない」「結婚後に勧誘することはない」といった説明が残っていれば、虚偽説明を示す資料になります。
また、自分が宗教を結婚相手選びの重要な条件として伝えていた記録も重要です。口頭で話した場合は、その場にいた家族や知人、当時相談していた相手が証人になり得ます。いつ、どこで、誰が、何を話したかを時系列で書き残しておきましょう。
4-2 宗教活動が家計や子どもに与えた影響を記録する
離婚や慰謝料請求では、宗教活動が婚姻生活に与えた具体的な影響を示す必要があります。
献金や物品購入が分かる預金通帳や振込履歴、クレジットカードの明細を保存する、お子さんを無理に集会へ連れて行ったような場合はその日時も記録しておきます。
入信の強要や暴言がある場合は、無理のない範囲で録音し、発言の前後が分かる形で残すことが考えられます。家事や育児への支障、話合いの内容、別居に至った経緯についても、日付を付けて継続的に記録しましょう。
ただし、相手のパスワードを勝手に使ってアカウントへログインするなど、自分が法的責任を問われるおそれのある方法は避けなければなりません。証拠の集め方に迷う場合は、行動する前に弁護士へ確認してください。
まとめ|宗教をめぐる離婚問題は相手を問い詰める前に弁護士へ相談を
結婚後に配偶者の宗教活動を知り、それを理由に離婚をしたいと思った場合でも、すべての状況において裁判所が離婚を認めてくれるとは限りません。
相手に嘘をつかれていた、多額の献金等を隠れてやっていたなど、状況によって宗教活動が婚姻を継続し難い重大な事由にあたるかは結論が変わってきます。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、事情を丁寧に伺い、必要な証拠や相手との話合いの進め方を整理したうえで適切な方法をご提案します。配偶者の宗教活動を知り、今後の夫婦関係についてお悩みの方は、相手に離婚を切り出す前にご相談ください。
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養育費を一括でもらうとデメリットはある?将来の養育費不足や追加請求のリスクを弁護士が解説

養育費を一括で受け取れば、未払いや滞納されることを心配せずに済むように思えます。しかし、一括払いには、子どもの成長に伴う想定外の費用を反映しにくい、受け取った金銭を長期間管理しなければならないといった側面もあります。
本記事では、養育費の一括払いを選ぶ前に知っておきたいデメリットと、養育費に関する合意書を作成する際に決めておくべきポイントを弁護士が解説します。
第1章 養育費を一括でもらう主なデメリット
養育費は、子どもの生活費や教育費、医療費などを父母で分担するためのものです。一般的には毎月一定額を支払いますが、父母が合意すれば、将来分をまとめて支払うこともできます。一括払いには未払いを防ぎやすいというメリットがありますが、将来必要となる金額を先に決めることによるデメリットもあります。
1-1 将来、一括金だけでは足りなくなる可能性がある
養育費を一括でもらう場合には、子どもが成長するまでに必要となる費用を、離婚時点でまとめて見積もることになります。
しかし、子どもの進路や健康状態、将来の物価まで正確に予測することはできません。そのため、合意した時点では十分に思えた金額でも、実際には足りなくなる可能性があります。
進学先によって、想定以上の教育費がかかることがある
離婚時には公立学校への進学を想定していても、子どもが成長して私立学校や県外の大学を希望することがあります。また、塾や予備校、留学や資格取得などに費用がかかることもあります。県外へ進学すれば、授業料だけでなく、家賃や生活費なども必要です。
病気やけがにより、予想していなかった費用が生じることがある
子どもが病気やけがをした場合には、治療費や入院費、通院に伴う交通費などが必要になることがあります。また、療育や継続的な通院、特別な教育支援が必要になれば、長期間にわたって費用が生じることもあります。
物価や授業料の上昇によって、一括金の実質的な価値が下がる
一括金を受け取った時より物価が上昇した場合、同じ金額でまかなえる生活費は少なくなります。たとえば、現在の月額5万円と、10年後の月額5万円では、負担できる生活費や教育費が同じとは限りません。
物価上昇の影響は、食費などの生活費だけに限りません。学校の授業料や塾代、教材費などが上昇する可能性もあります。
このように、一括払いでは、子どもの成長に伴う教育費、予想外の医療費、物価上昇などによって、受け取った金額だけでは足りなくなるリスクがあります。
1-2 不足しても、当然に追加請求できるとは限らない
一括金が足りなくなったとしても、相手に請求すれば当然に追加で支払ってもらえるわけではありません。
当初予測できなかった大きな事情の変化が生じた場合には、追加の負担を求める余地があります。ただし、相手が任意に応じなければ、家庭裁判所で調停などの手続を行わなければならないことも考えられます。
特に、離婚合意書に「将来の教育費を含めてすべて支払済みとする」「今後、子どもに関する費用を一切請求しない」といった文言がある場合、相手から追加負担を拒まれ、合意の範囲をめぐって争いになる可能性が高くなります。
そのため、「将来不足したら、そのときに請求すればよい」と安易に考えることはできません。
1-3 受け取った金銭を長期間管理しなければならない
一括で受け取った養育費は、自由に使える余裕資金ではありません。将来の子どもの生活費や教育費を先に受け取ったものです。
たとえば、10年分の養育費を一括で受け取った場合、その金銭を10年間にわたって計画的に管理する必要があります。
日常生活に使う口座へ入れてしまうと、通常の生活費との区別がつきにくくなり、想定より早く使ってしまうことがあります。その結果、子どもの進学時など、まとまった費用が必要になったときに残高が不足してしまうかもしれません。
一括払いを選ぶ場合には、養育費専用の口座を設ける、進学費用として残す金額を決める、毎年使用する金額の目安を立てるなど、受け取った後の管理方法も考えておかなければなりません。
1-4 毎月払いより受取総額が少なくなることがある
一括払いの交渉では、支払う側から「まとめて支払う代わりに総額を減らしてほしい」と提案されることがあります。
たとえば、月額5万円を10年間支払う場合、単純な合計額は600万円です。しかし、一括払いでは500万円や550万円など、毎月払いを続けた場合より少ない金額を提示されることがあります。
この減額幅が大きければ、子どもの将来の生活費や教育費が不足する可能性も高くなります。
そのため、一括金を提示されたときは、まとめて受け取れる金額の大きさだけで判断せず、毎月払いを続けた場合の合計額との差を確認することが重要です。
第2章 養育費の一括払いに合意する前に確認すべきこと
もちろん、養育費の一括払いが、常に不利になるわけではありません。相手に将来の支払能力があるか分からない場合や、すでに未払いの不安がある場合には、支払える時点でまとまった金額を受け取る方がよいこともあります。
ただし、一括払いに合意する場合は、どの費用を含むのか、将来発生する費用をどのように扱うのかまで決めておくことが重要です。
2-1 毎月払いの場合の金額と一括金を比較する
一括金を提示されたら、提示された金額が妥当かを確認しましょう。
はじめに、養育費を毎月払いにした場合の月額の目安を出します。父母双方の収入や子どもの人数・年齢などをもとに、およその金額を見積もりましょう。その月額を支払開始時期から支払終了時期まで受け取った場合の合計額を計算します。
そのうえで、相手から提示された一括金と比較し、毎月払いの場合の合計額とどの程度の差があるのかを確認します。一括金が大きく減額されている場合には、その金額で将来の生活費や教育費をまかなえるかを検討する必要があります。
2-2 一括金に含める費用と、将来協議する費用を分ける
養育費に関する合意書には、一括金がどの期間の、どの費用を対象とするのかを具体的に記載しておくことが重要です。
たとえば、通常の衣食住にかかる費用や、日常的な教材費、通常の通院費などは、一括金に含めることが考えられます。一方、離婚時点では発生するか分からず、金額も予測しにくい高額な学費や留学費用などについては、必要になった時点で別途協議すると定める方法があります。
一括金とは別に協議する費用の例
・県外進学に伴う下宿費用
・留学費用
・長期入院や手術などによる高額な医療費
・療育や特別な教育支援に必要となる費用
単に「養育費として〇万円を一括で支払う」とだけ定めると、将来、進学費用や医療費などが一括金に含まれているのかをめぐって争いになる可能性があります。
また、上記のような将来別途協議する費用を定める場合には、合意書の中に「今後一切請求しない」など、その定めと矛盾する文言が含まれていないかも確認しましょう。
2-3 全額一括以外の支払方法も検討する
養育費の支払方法は、全額を一括で受け取るか、毎月払いにするかの二択だけではありません。
たとえば、次のような方法も考えられます。
一括払いと毎月払いを組み合わせる例
・通常の養育費は毎月払いとし、入学金などだけを先に受け取る
・高校卒業までの養育費を一括で受け取り、大学進学にかかる費用は進路決定後に協議する
相手に現在まとまった資産があっても、子どもがまだ幼い場合には、将来必要となる費用を正確に見通すことはできません。
そのようなときは、一部を先に受け取り、残りは子どもの成長や進路に応じて支払ってもらう方法などもあります。未払いに備えながら、将来の状況にも対応しやすい方法を検討するのがいいでしょう。
第3章 【FAQ】養育費の一括払いに関するよくある質問
Q1. 一括でもらうと贈与税がかかりますか?
A1. 使い方や保管状況によっては、贈与税がかかる可能性があります。
子どもの生活費や教育費として通常必要な金額を、必要な都度受け取り、その用途に直接充てる場合は、原則として贈与税の対象になりません。
ただし、将来分を一括で受け取り、すぐに生活費や教育費として使わずに長期間預貯金として保有する場合などは、税務上の取扱いが問題になる可能性があります。
一括金が高額になる場合は、合意する前に税理士へ確認しておくと安心です。
Q2. 一括払いの後に子どもが支払った側と同居することになった場合はどうなりますか?
A2. 同居後の養育費について調整が必要になることがあります。
子どもが支払った側と同居し、その親が日常の生活費を負担するようになった場合には、養育費の負担状況が大きく変わります。
ただし、同居を始めただけで、受け取った一括金を当然に全額返還しなければならないわけではありません。同居が一時的なものか、今後も継続するのか、一括金がどの期間の養育費に対応するのかなどを踏まえ、今後の養育費負担や一括金の取扱いについて協議が必要になることがあります。話合いがまとまらない場合には、利用すべき手続も含めて弁護士へ確認する必要があります。
Q3. 養育費の一括払いは、児童扶養手当などに影響しますか?
A3. 児童扶養手当の支給額に影響する可能性があります。
児童扶養手当では、受け取った養育費の8割相当額を所得に加えて支給額を判定します。そのため、将来分として受け取った一括金の扱いによっては、児童扶養手当の支給額に影響する可能性があります。
将来分をまとめて受け取った一括金が、児童扶養手当の所得判定上どのように扱われるかは自治体へ確認する必要があります。合意する前に、お住まいの自治体の児童扶養手当担当窓口へ相談しておきましょう。
Q4. 一括払いの後に再婚した場合、養育費の扱いは変わりますか?
A4. 再婚しただけで、一括金を返す必要は原則ありません。
養育費を受け取った側が再婚しても、それだけで受け取り済みの一括金を返還する必要はありません。
ただし、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合や、支払った側に新たな扶養家族ができた場合などには、扶養関係や生活状況が変化します。将来の追加費用を請求する場合には、その事情が負担額の判断に影響する可能性があります。
Q5. 子どものために使ったことを示す領収書などの証拠は必要ですか?
A5. 通常は逐一提出する必要はありません。
養育費を受け取った側が、支払った側に対して、食費や衣料費などの領収書を毎月提出しなければならないという一般的なルールはありません。
ただし、合意書で使途の報告や領収書の提出を定めた場合には、その取決めに従う必要があります。また、高額な進学費用や医療費を別途請求する場合には、請求額を裏付けるため、請求書や領収書を保管しておくことが重要です。
税務上も、生活費や教育費として必要な都度、その用途に直接充てた金銭であるかが問題になるため、高額な一括金については、支出記録を残しておくと説明しやすくなります。
第4章 まとめ|一括払いでは合意書の内容が将来を左右する
養育費を一括で受け取れば、まとまった金額を確保できる一方、子どもの進路や物価の変化によって、将来不足する可能性があります。
そのため、合意書では、一括金に含まれる費用を明確にしたうえで、留学費用や高額な医療費などが発生した場合の負担方法も定めておくことが重要です。物価や教育費が大きく上昇した場合に、追加負担について協議する条項を設けることも考えられます。
一方で、合意書に、今後一切養育費を請求しない旨の文言が入っていると、将来の追加請求をめぐって不利になるおそれがあります。特に、相手方が作成した合意書案には、相手方に有利な条件が含まれていることもあるため、そのまま署名しないことが大切です。
Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、養育費の一括払いに関する条件の検討や、離婚協議書・公正証書の作成、相手方から提示された合意書のチェックに対応しています。養育費の一括払いを提案されている方は、署名する前にまずはご相談ください。
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養育費を一括で支払ってもらうことはできる?未払い不安・贈与税・追加請求の注意点を弁護士が解説

離婚後の養育費について、「途中で支払いが止まるくらいなら、一括で受け取りたい」と考える方は少なくありません。養育費は、夫婦間で合意できれば一括払いにすることも可能です。ただし、贈与税、将来の追加請求、公正証書の作り方を誤ると、後から不利な合意になってしまうことがあります。この記事では、養育費を一括で支払ってもらう場合の注意点を弁護士が解説します。
第1章 養育費を一括で支払ってもらうことは法的に可能なのか
1-1 夫婦間で合意できれば養育費の一括払いは選択できる
養育費とは、子どもの監護や教育のために必要となる費用のことです。衣食住に必要な費用だけでなく、学費、教材費、医療費なども含まれます。
養育費は、実務上は「月額〇万円を毎月末日までに支払う」という形で取り決められることが一般的です。しかし、父母間で合意できるのであれば、将来分の養育費をまとめて一括で支払う内容にすることも可能です。
たとえば、子どもが10歳で、20歳まで支払うと合意する場合、月額5万円で単純計算すると10年分で600万円になります。この金額を、離婚時に一括で支払うという合意をすること自体は、法律上ただちに禁止されているわけではありません。
ただし、一括払いは、相手がまとまった資金を用意できるか、その金額が子どもの生活費・教育費として相当か、税務上問題がないか、将来の事情変更に対応できるかといった点を慎重に確認する必要があります。
1-2 相手が拒否した場合、裁判所で一括払いを命じてもらうのは簡単ではない
相手が任意に一括払いへ応じる場合は、協議離婚や離婚調停の中で合意を目指すことになります。
問題は、相手が「毎月払いなら応じるが、一括払いはできない」と拒否した場合です。
この場合、家庭裁判所に調停や審判を申し立てたとしても、将来分の養育費を必ず一括で支払うよう命じてもらえるとは限りません。
家庭裁判所では、父母双方の収入、子どもの年齢、人数などをもとに、養育費算定表を参考にしながら月額を検討することが一般的です。
そのため、一括払いを希望する場合には、裁判所に一括払いを強く求めるというよりも、まずは相手方との交渉で合意形成を目指すことが現実的です。
相手の資産状況、預貯金、不動産売却予定、親族からの援助の有無などを踏まえ、どの程度であれば一括払いが可能なのかを見極める必要があります。
1-3 裁判所手続では月払いが前提になりやすい理由を理解しておく
裁判所手続で月払いが前提になりやすいのは、養育費が子どもの成長に応じて継続的に発生する費用だからです。
子どもが小学生の時点では教育費がそれほど高くなかったとしても、中学・高校・大学への進学、塾代、部活動、病気やけが、進路変更などによって、将来必要となる費用は変わります。
また、支払う側の収入が減ったり、受け取る側の収入が増えたりすることもあります。
養育費は、離婚時に一度決めれば絶対に変わらないものではありません。事情が大きく変わった場合には、増額や減額が問題になることがあります。そのため、裁判所手続では、将来分をすべて現時点で確定させる一括払いではなく、月払いを前提に整理されやすいのです。
第2章 養育費を一括で受け取るメリットと安心できる場面
2-1 将来の未払いや滞納への不安を大きく減らせる
養育費を一括で受け取る最大のメリットは、将来の未払いリスクを減らせることです。
令和3年度全国ひとり親世帯等調査では、離婚した父親から養育費を「現在も受けている」母子世帯は28.1%とされています。養育費を取り決めても、長期間にわたって確実に支払いを受け続けることが簡単ではない現実がうかがえます。
離婚時には、毎月きちんと払うと言っていたとしても、数年後に転職、失業、再婚、病気、自営業の業績悪化などが起きることがあります。支払う側に悪意がなくても、結果的に養育費が滞るケースは珍しくありません。
一括払いであれば、少なくとも合意した金額については、離婚時点で確保できます。
特に、相手にまとまった預貯金がある場合や、離婚時に不動産売却代金・退職金・解決金などが入る見込みがある場合には、一括払いを検討する価値があるといえます。
2-2 離婚後に元配偶者と連絡を取り続ける負担を軽くできる
養育費の月払いでは、支払いが遅れるたびに元配偶者へ連絡をしなければならないことがあります。今月分が振り込まれていない、いつまでに振り込めるのかといった連絡を、離婚後何年も続けることは精神的負担になります。
特に、夫の浮気や長年の不仲が原因で離婚する場合には、できるだけ関わりたくないと感じるのも自然なことです。
一括払いにより、通常の養育費部分については支払いの確認や督促の必要がなくなります。
もちろん、子どもの進学や病気などで別途協議が必要になることはありますが、毎月の支払いをめぐる連絡がなくなるだけでも、離婚後の生活を落ち着かせやすくなるといえます。
2-3 子どもの進学や生活設計に必要な教育資金を確保しやすい
一括払いには、子どものための資金を早い段階で確保できるというメリットもあります。
たとえば、私立中学・高校への進学、大学進学、留学、塾代など、子どもの教育にはまとまった費用が必要になる場面があります。毎月の養育費だけでは、その時々の大きな支出に対応しにくいこともあります。
離婚時に一定額を確保できれば、教育資金として計画的に管理できます。特に、相手が自営業で将来の収入に波がある場合や、現在は収入が高いものの今後の収入が読みにくい場合には、今ある資金から子どものための費用を確保しておく意味があります。
第3章 養育費を一括で受け取る場合の注意点とリスク
3-1 まとまった金額を受け取る場合は贈与税の問題に注意する
養育費は、通常、子どもの生活費や教育費として必要な範囲で支払われる限り、贈与税の対象にはなりにくいものです。
ただし、一括払いの場合は金額が大きくなります。そのため、税務上、本当に養育費なのか、子どもの生活費・教育費として通常必要な範囲なのかといった点が問題になることがあります。
国税庁は、扶養義務者から生活費や教育費に充てるため取得した財産で、通常必要と認められるものは贈与税がかからないと説明しています。一方で、生活費や教育費として必要な都度直接充てるためのものに限られ、預金したままにしたり、株式や不動産の購入資金に充てたりする場合には贈与税がかかることがあるとしています。
つまり、養育費という名目で受け取れば常に非課税になるわけではありません。
特に、数百万円から数千万円単位の一括払いを受ける場合には、贈与税の問題について、弁護士や税理士に確認したうえで進める方が安心といえます。
3-2 贈与税の課税対象と疑われやすい具体的なケース
贈与税の問題が生じやすいのは、養育費としての実態が不明確な場合です。
たとえば、次のようなケースでは注意が必要です。
・養育費として受け取った金銭を、親自身の住宅購入資金や投資資金に使う場合
・子どもの生活費や教育費に使った記録がほとんど残っていない場合
・慰謝料、財産分与、解決金、養育費の区別をしないまま総額だけを決めている場合
・夫本人ではなく、夫の両親から直接まとまった金銭を受け取る場合
特に、夫の実家に資金力があり、夫の両親が支払いを援助するケースでは、資金の流れを整理する必要があります。夫の両親から妻や子へ直接支払われる形にすると、養育費なのか、祖父母からの贈与なのかが曖昧になりやすいためです。
このような場合には、夫が両親から借入れや援助を受け、その資金をもとに父として養育費を支払う形にするのか、祖父母から子への教育資金として整理するのかなど、法務・税務の両面からの検討が求められます。
3-3 子どもの状況が変わったときに追加請求できるかを確認しておく
一括払いを受けた後に、子どもの状況が変わることがあります。
たとえば、離婚時には公立高校への進学を前提にしていたものの、後に私立高校や大学への進学を希望することがあります。子どもが病気やけがをして、継続的な医療費が必要になることもあります。発達特性への支援、療育、専門的な学習支援など、離婚時には具体的に想定できなかった費用が生じる場合もあります。
このような事情が生じた場合に、追加で請求できるかどうかは、離婚時の合意内容に左右されます。
離婚協議書や離婚公正証書に、「将来の教育費、医療費を含めて一切請求しない」といった文言を入れてしまうと、後から追加請求をしたい場面で相手から拒まれる可能性があります。
一方で、「通常の生活費・教育費として本合意をするが、進学、病気、事故その他予期しない特別の費用が生じた場合は、父母で別途協議する」といった文言を入れておけば、将来の協議の余地を残しやすくなります。
一括払いを受ける場合ほど、将来の例外場面を書面に残しておくことが重要です。
3-4 一括払いの合意で将来請求を制限する文言に注意する
離婚協議書や公正証書では、最後に「本件離婚に関し、当事者間には本書に定めるほか何らの債権債務がないことを確認する」という清算条項を入れることがあります。
清算条項自体は、離婚後の紛争を防ぐために用いられる一般的な条項です。しかし、養育費の一括払いと組み合わせる場合には注意が必要です。
たとえば、養育費、慰謝料、財産分与をまとめて「解決金」として受け取り、さらに清算条項で今後一切請求しないと記載してしまうと、後になって、清算条項を根拠に養育費の追加請求を拒まれるおそれがあります。
養育費は子どものための費用であり、親同士の慰謝料や財産分与とは性質が異なります。そのため、離婚協議書や公正証書では、養育費、慰謝料、財産分与をできる限り分けて記載することが望ましいです。
特に、一括払いを受ける場合には、どの金額が養育費なのか、何歳までのどの費用を対象にしているのか、特別費用は別途協議できるのかなどの点まで明確にしておく必要があります。
3-5 相手方から減額を求められることがある
養育費を一括で受け取る場合、相手方から「まとめて払うのだから、その分は減額してほしい」と言われることがあります。
これは、中間利息控除という考え方に近い主張です。
簡単にいうと、将来受け取る予定だったお金を今受け取る場合、受け取る側はそのお金を早く使ったり管理したりできるため、将来の総額をそのまま現在支払うのは多すぎるのではないか、という発想です。
たとえば、月額5万円を10年間受け取る場合、単純計算では600万円です。しかし、相手方が「一括で支払うなら500万円にしてほしい」と交渉してくることがあるのです。
このような減額に応じるべきかどうかは、一概にはいえません。
一括で確実に受け取れるメリット、相手の支払能力、財産分与や慰謝料との全体バランスなどを踏まえて判断する必要があります。
単純に「本来の総額より低いから損」と見るのではなく、実際に回収できる可能性がどの程度あるかという視点も重要です。
第4章 養育費の一括払いを安全に進めるための実務ポイント
4-1 税務リスクを抑えるために養育費信託などを検討する
養育費を一括で受け取る場合、税務リスクや資金管理の問題を抑える方法として、いわゆる養育費信託などの活用が検討されることがあります。
信託とは、一定の財産を信託銀行などに預け、決められた目的に従って管理・給付してもらう仕組みです。養育費の場面では、将来分の養育費に相当する金銭を信託し、子どものために毎月または一定時期ごとに支払われるように設計することが考えられます。
このような設計ができれば、受け取った側が自由に全額を使える状態にはなりにくく、子どもの生活費・教育費として管理していることを客観的に説明しやすくなります。また、支払う側にとっても、本当に子どものために使われるのかという不安を軽減しやすく、一括払いに応じる動機になることがあります。
ただし、実際に信託を利用できるか、どのような税務上の扱いになるかは設計内容によって異なるため、弁護士や税理士、金融機関に確認しながら進める必要があります。
4-2 贈与とみなされにくいように離婚協議書や公正証書の記載を具体化する
養育費の一括払いでは、離婚協議書や離婚公正証書の作り方が非常に重要です。
単に「夫は妻に解決金として〇〇万円を支払う」と記載するだけでは、その金額の内訳が分かりません。後から、養育費なのか、慰謝料なのか、財産分与なのかが客観的に説明しにくくなる可能性があります。
そのため、離婚協議書や離婚公正証書では、養育費の対象期間、その金銭が子どもの生活費・教育費に充てられること、慰謝料、財産分与、解決金とは別の性質であること、特別な教育費・医療費が発生した場合の協議方法などを整理しておくことが望ましいです。
税務上は、金額の根拠を資料で示せる状態にしておくことも大切です。
算定表を参考にした月額、子どもの年齢、支払期間、進学予定などをもとに計算過程を残しておくと、養育費としての相当性を整理しやすくなります。
4-3 将来の予期しない事情変更に備えた文言を残しておく
養育費の一括払いで避けたいのは、離婚時点で予想できなかった事情が起きたにもかかわらず、追加の協議ができなくなってしまうことです。
離婚協議書や離婚公正証書には、通常の養育費に含める範囲と、将来別途協議する範囲を分けて記載することが考えられます。
たとえば、通常の衣食住、学校生活に必要な基本的費用、一般的な教材費などは一括払いの対象に含める一方で、私立学校への進学、大学進学、留学、長期入院、高額な医療費、特別な支援費用などについては、発生時に父母で協議するという形です。
もちろん、協議条項を入れたからといって、必ず相手が追加負担に応じるわけではありません。しかし、何も記載がない場合と比べると、一括払いで全て解決済みと反論をされるリスクを下げやすくなります。
4-4 口約束や私的な念書で終わらせず離婚公正証書を作成する
養育費の一括払いを合意する場合は、口約束や簡単な念書で終わらせるべきではありません。できる限り、離婚公正証書を作成することを検討してください。
公正証書とは、公証人が作成する公的な文書です。
養育費について、支払義務者が支払いを怠った場合には強制執行を受けてもよいという強制執行認諾文言を入れておくことで、調停や審判を経ずに強制執行手続を利用できる場合があります。
一括払いの場合でも、支払期限を離婚成立後や不動産売却後に設定することがあります。その場合、約束どおり支払われなかったときに備え、公正証書で支払義務を明確にしておく意味があります。
一括払いではなく、「半分を離婚時、残りを半年後に支払う」といった何回かに分けて支払うという設計になることもあります。このような場合には、なおさら公正証書の重要性が高まります。
第5章 まとめ
養育費を一括で支払ってもらうことは、夫婦間で合意できれば可能です。離婚後の未払いや滞納への不安を減らし、元配偶者との連絡負担を軽くできるという意味では、一括払いには大きなメリットがあります。
もっとも、養育費の一括払いは、金額が大きくなれば贈与税の問題が生じる可能性がありますし、離婚協議書や公正証書の書き方によっては、将来、子どもの進学費用や医療費が必要になったときに追加請求が難しくなるおそれもあります。また、相手方から中間利息控除を理由に減額を求められることもあり、財産分与や慰謝料を含めた離婚条件全体の中で検討する必要があります。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、弁護士だけでなく、税理士などの士業が連携し、離婚条件の整理、公正証書作成、贈与税を含む税務面の確認までワンストップで対応できる体制を整えています。養育費を一括で支払ってもらいたいと考えている方や、相手方から一括払いを提案されて不安を感じている方は、合意書を作成する前に、一度ご相談ください。
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別居中の不貞行為で慰謝料は請求できる?離婚時への影響と婚姻関係の破綻について弁護士が解説

別居中の配偶者に不貞行為があった場合、「別居していたから慰謝料は取れないのでは」と思うかもしれません。しかし、別居中であっても、不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していなければ、慰謝料請求を検討できる可能性があります。本記事では、別居中の不貞行為が離婚や慰謝料にどう影響するのかを弁護士が解説します。
第1章 別居中に不貞された場合でも、慰謝料請求は可能
1-1 別居中だからといって不貞慰謝料が当然に否定されるわけではない
別居中であっても、法律上の婚姻関係が続いている以上、不貞行為に対する慰謝料請求は可能です。
もっとも、別居中の不貞行為では、通常の同居中の不貞と比べて、「その時点で夫婦関係がどうなっていたのか」が争点になりやすいです。単に別居していたというだけで慰謝料請求が否定されるわけではありませんが、反対に、別居中であっても必ず慰謝料が認められるともいえません。
1-2 離婚時に影響するのは主に慰謝料と離婚原因の場面
別居中の不貞行為が離婚に影響する場面としては、主に次の3つが考えられます。
・不貞相手に対する慰謝料請求
・不貞をした側から離婚を求められた場合の対応
たとえば、別居後であっても、不貞行為によって夫婦関係が決定的に悪化し、離婚に至ったといえる場合には、配偶者に対して慰謝料請求を検討することがあります。また、不貞相手が、相手に配偶者がいることを知っていた、または通常であれば知ることができたといえる場合には、不貞相手に対する慰謝料請求も問題になります。
さらに、不貞をした配偶者の側から離婚を求められた場合には、夫婦関係を壊した側からの離婚請求ではないかという形で争点になることもあります。
1-3 財産分与・親権・養育費とは分けて考える必要がある
別居中の不貞行為があったからといって、離婚条件のすべてが当然に有利になるわけではありません。
特に、財産分与、親権、養育費は、不貞慰謝料とは判断の枠組みが異なります。財産分与は、基本的には夫婦が婚姻中に築いた財産を清算する制度です。不貞をされた側だから財産分与が大きく増える、不貞をした側だから当然に財産分与を受けられない、という関係ではありません。
親権についても、不貞行為をしたことだけで直ちに親権者として不適格と判断されるわけではありません。子どもの監護実績、生活環境、子どもの意思、今後の養育体制など、子どもの利益を中心に判断されます。
そのため、別居中の不貞行為をめぐる問題では、慰謝料の問題と、財産分与・親権・養育費の問題をそれぞれ分けて整理することが大切です。
第2章 別居中の不貞では、「不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたか」が重要になる
2-1 不貞行為の時点で夫婦関係が続いていれば、慰謝料請求の対象になり得る
別居中の不貞行為で慰謝料請求を検討する場合、最も重要なのは、不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたかどうかです。
ここでいう破綻とは、夫婦としての共同生活を回復する見込みがなく、実質的に婚姻関係が終わっていると評価できる状態を指します。
別居はしているものの普段の生活費や子供のことについて日々連絡を取り合っている、同居再開について話し合いをしていたなどの場合は、婚姻関係が完全に破綻しているわけではないとして不貞に対する慰謝料請求を検討できるといえます。
2-2 不貞行為の時点ですでに婚姻関係が破綻していた場合、慰謝料請求は難しくなる
一方で、不貞行為の時点ですでに婚姻関係が破綻していたと判断される場合には、慰謝料請求が難しくなることがあります。特に不貞相手への慰謝料請求では、不貞行為の時点で夫婦関係がすでに破綻していたかどうかが重要な争点になります。
なお、夫婦関係の破綻の有無については、別居の期間や理由、日々の夫婦間のやり取りやお子さんとの関わりなどから総合的に判断されるため、相手が「破綻していた」と言っていることだけを理由に夫婦関係が破綻しているといえるわけではないです。
2-3 不貞がいつ始まったかも慰謝料請求に関係します
別居中の不貞行為に対する慰謝料請求では、不貞関係がいつから始まっていたのかも重要です。
たとえば、別居前から不貞関係があり、それが原因で別居に至った場合と、長期間の別居が続き離婚協議も進んでいる最中で不貞が始まった場合とでは慰謝料請求の見通しや金額が変わってきます。
第3章 婚姻関係が破綻していたかを判断するときに見られやすい事情
3-1 別居期間がどのくらい続いていたか
婚姻関係の破綻を判断する際、別居期間は重要な事情の一つです。
一般的には、長期間別居している場合、夫婦としての共同生活が失われていたと評価される方向に働きやすくなります。特に、何年も別居が続き、生活も完全に別々で、離婚に向けた話し合いも進んでいたような場合には、婚姻関係が破綻していたと主張されやすいでしょう。
一方で、別居期間が短い場合や、冷却期間として一時的に別居していたような場合には、別居していたというだけで破綻と評価するのは早いことがあります。
3-2 離婚協議や離婚調停がどこまで進んでいたか
離婚協議や離婚調停の進行状況も、婚姻関係が破綻していたかを判断するうえで重要です。
すでに離婚条件について具体的に話し合っていた、離婚届の提出を前提に財産分与や親権について協議していた、離婚調停が申し立てられていたといった事情があれば、夫婦関係が相当程度悪化していたことを示す事情になります。
もっとも、一方が離婚したいと言っていただけで、他方は離婚を拒否していたという場合には、直ちに婚姻関係が破綻していたとはいえません。夫婦の一方が離婚を希望していたとしても、他方が関係修復を望んでいた場合や、実際には離婚条件の話し合いが進んでいなかった場合には、破綻の有無を慎重に見る必要があります。
3-3 夫婦間の連絡や生活上のつながりが残っていたか
別居中であっても、夫婦間に生活上のつながりが残っているかどうかというのも重要なポイントです。
たとえば、次のような事情です。
・子どもの行事や進学について相談していた
・将来の生活について話し合っていた
・同居再開について連絡を取っていた
・家族として会う機会が残っていた
一時的に別居はしていたものの、夫婦としての関係修復を前提とした連絡があった場合や、お互いの生活を完全に切り離していないような場合には、婚姻関係が完全には破綻していなかったということを主張できる材料になり得ます。
3-4 不貞が別居や離婚の原因になったか
不貞行為が、別居や離婚の原因になったかどうかも重要です。
たとえば、不貞行為が発覚したことで夫婦関係が悪化し、別居に至った場合には、不貞が婚姻関係を壊したという主張がしやすくなります。また、もともと夫婦仲に問題があったとしても、不貞行為が決定打となって離婚を決意した場合には、慰謝料請求の余地があります。
反対に、不貞行為より前から夫婦関係が実質的に終わっており、別居も長期間続き、双方が離婚を前提に生活していた場合には、不貞行為と離婚との関係が薄いと判断される可能性があります。
第4章 別居中の不貞で慰謝料請求できる相手
4-1 不貞をした配偶者に対する慰謝料請求
別居中の不貞行為について、まず検討するのは、不貞をした配偶者に対する慰謝料請求です。
配偶者に対する慰謝料請求では、不貞行為そのものによる精神的苦痛や、不貞行為によって婚姻関係が破綻し、離婚に至ったことによる精神的苦痛が問題になります。
離婚協議の中では、財産分与、親権、養育費、婚姻費用などとあわせて、慰謝料の有無や金額を話し合うことが多いです。ただし、財産分与と慰謝料は性質が異なるため、相手から「財産分与で多めに渡すから慰謝料はなしにしてほしい」と言われた場合には、その内容が本当に妥当かを慎重に確認する必要があります。
4-2 不貞相手に対する慰謝料請求
不貞相手が、相手に配偶者がいることを知っていたもしくは通常であれば知ることができたといえる場合は、配偶者だけでなく、不貞相手に対しても、慰謝料請求を検討できます。
なお、不貞相手に慰謝料を請求する場合には、「不貞行為そのものを理由とする慰謝料」と「不貞を理由に離婚したこと自体を理由とする慰謝料」を混同しないこともポイントになり、不貞行為そのものを理由とする慰謝料請求だけでなく、離婚したこと自体についてまで責任を問えるかは別問題となります。
4-3 配偶者と不貞相手の両方に請求する場合の注意点
配偶者と不貞相手の両方に慰謝料請求を行うこともできますが、同じ精神的損害について二重取りができるわけではありません。たとえば、配偶者から相当額の慰謝料を受け取った場合には、不貞相手に対して請求できる慰謝料の金額が調整される可能性があります。
また、配偶者と不貞相手の両方に請求できる可能性がある場合、どちらに先に請求するかという点も検討が必要です。
離婚条件を優先するなら配偶者との協議を先に検討する
たとえば、離婚の成立や条件の話し合いを優先したい場合には、まず配偶者との間で、慰謝料、財産分与、親権、養育費などをまとめて協議した方が進めやすいことがあります。不貞相手への請求を先に行うことで、配偶者との対立が強まり、離婚協議全体がこじれる可能性があるためです。
不貞の証拠や交際開始時期を重視するなら不貞相手への請求を先に検討する
一方で、不貞相手に対する請求を早めに検討した方がよいケースもあります。たとえば、配偶者と不貞相手が口裏を合わせるおそれがある場合、時間の経過によってLINEやSNSの投稿などの証拠が消えてしまうおそれがある場合、不貞相手への請求や交渉を通じて、不貞の事実や交際開始時期を明らかにしたい場合などです。
第5章 別居中の不貞で慰謝料請求を検討する場合に重要な証拠
5-1 不貞行為があったことを示す証拠が必要
別居中の不貞慰謝料を請求する場合でも、まずは不貞行為があったことを示す証拠が必要です。
単に親しくしている証拠だけでなく、肉体関係を推認できる証拠があるかが重要になります。
たとえば、ラブホテルに出入りしている写真や動画、不貞相手の自宅に宿泊していることが分かる資料、肉体関係をうかがわせるメールやSNSのやり取りなどが証拠になり得ます。
特に、別居中に配偶者が不貞相手と同棲している場合、その事実は不貞行為を推認させる重要な事情になります。
5-2 不貞関係が始まった時期を示す証拠
別居中の不貞慰謝料では、不貞行為そのものの証拠だけでなく、それがいつ始まったのかを示す証拠も重要となります。
まずは、次のような資料がないかを確認します。
・プレゼントや旅行などの写真
・不貞関係の開始時期をうかがわせるSNS投稿
・知人や関係者からの情報
直接的な証拠がなくても、複数の事情を組み合わせることで、別居前から関係が続いていたと推認できる場合があります。
5-3 不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していなかったことを示す証拠
別居中の不貞行為では、その時点で婚姻関係が破綻していなかったことも重要です。
たとえば、次のような資料がある場合には、夫婦関係が完全には終わっていなかったことを示す事情になり得ます。
・生活費等の支払記録
・家族で会っていた写真や予定表
・別居が一時的なものであることを示すやり取り
・離婚ではなく関係修復を前提にした話し合いの記録
特に、別居直後の不貞や、別居理由そのものが不貞に関係している場合には、早めに証拠を整理しておくことが重要です。
第6章 別居中の不貞慰謝料に関するよくある質問
Q1. 別居中に相手が不貞相手と同棲している場合、慰謝料は増えますか?
A1. 増額事情になる可能性があります
相手が不貞相手と同棲している場合、その関係が一時的なものではなく、継続的・安定的な関係であることを示す事情になり得ます。また、不貞相手との同棲によって、夫婦関係の修復がさらに難しくなったといえる場合には、慰謝料額の判断で考慮される可能性があります。
ただし、慰謝料額は婚姻期間や別居の経緯など、さまざまな事情を総合的にみて判断されるため、同棲しているから必ず慰謝料が大きく増える、というわけではありません。
Q2. 別居後に初めて不貞関係が始まった場合でも、慰謝料は取れますか?
A2. 請求できる余地はあります
別居後に不貞関係が始まった場合でも、不貞関係が始まった時点で婚姻関係が破綻していなかったといえるのであれば、慰謝料請求を検討できる可能性があります。たとえば、冷却期間として別居していた、復縁に向けて話し合っていた、生活費や子どものことで夫婦としての連絡が続いていた、といった事情がある場合、別居後に始まった不貞関係が夫婦の修復を難しくさせたと判断され、慰謝料請求の対象になる可能性があります。
Q3. 離婚せず別居を続ける場合も、不貞慰謝料は請求できますか?
A3. 請求できる場合があります
離婚しない場合でも、不貞行為によって精神的苦痛を受けたとして、慰謝料請求を検討できることがあります。もっとも、離婚せずに別居を続ける場合や、将来的に同居再開・関係修復を考えている場合には、慰謝料請求の進め方に注意が必要です。不貞相手に請求することで、配偶者との関係がさらに悪化したり、別居解消に向けた話し合いが難しくなったりすることがあるためです。
また、離婚に至った場合と比べると、慰謝料額は低く評価される傾向があります。離婚しない場合の慰謝料請求では、法的に請求できるかだけでなく、今後も別居を続けるのか、同居再開を目指すのか、最終的には離婚も視野に入れるのかを整理したうえで判断する必要があります。
第7章 別居中の不貞で悩んだら、早めに弁護士へ相談することが大切です
別居中に不貞行為があった場合に慰謝料請求ができるかどうかの重要な判断ポイントになるのは、不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたといえるかどうかです。
特に、相手が夫婦関係はすでに破綻していたと主張している場合は、その言い分だけで判断せず、早めに弁護士に相談することをおすすめします。また、不貞相手と同棲している場合、別居後の証拠しか手元にない場合、離婚条件と慰謝料請求を同時に整理したい場合にも、ケースごとの状況整理や証拠の収集などをふまえたうえで法的な見通しを立てる必要があるため、自己判断だけで進めることは避けた方がよいでしょう。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、離婚に関する幅広い相談に対応しています。別居中の不貞行為について、慰謝料を請求できるのか、離婚時にどのような影響があるのか不安がある場合は、早めにご相談ください。
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第1章 共同親権の法改正は子連れ再婚にどう関係するのか
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2026年4月1日から、離婚後の親権に関するルールが変わり、離婚後も父母双方を親権者とする共同親権を定めることができるようになりました。しかし、この法改正はあくまで共同親権という選択肢が設けられた、というものです。
現在、既に単独親権で子どもを育てている場合、この法改正によって自動的に共同親権へ変わるわけではありません。また、元配偶者が役所へ届出をしたり、戸籍を変更したりするだけで、ただちに元配偶者が親権者になるものでもありません。
ただし、元配偶者が家庭裁判所に親権者変更を申し立て、共同親権を求めてくる可能性はあります。つまり、自動的には変わらないが、将来的に手続の中で争われる可能性はあることを理解しておく必要があります。
第2章 まず確認すべきは、再婚相手と子どもが養子縁組をするかどうか
子連れ再婚では、再婚相手と子どもが一緒に生活するため、法律上も親子のように扱われると考えがちです。しかし、再婚と養子縁組は別の手続です。
2-1 再婚しただけでは、再婚相手は子どもの法律上の親にはならない
自分が単独親権者として子どもを育てており、その後に再婚した場合でも、再婚相手は当然には子どもの親権者になりません。
つまり、学校行事に参加したり、日常的に子どもの世話をしたりしていても、法律上の親権者として重要事項を決められる立場になるわけではありません。法律上の親子関係を作るには、原則として養子縁組が必要です。
2-2 養子縁組をする場合としない場合で、親権者の整理が変わる
養子縁組をしない場合、現在の親権関係は基本的にそのままです。現在、自分が単独親権者であれば、再婚後も自分が親権者であり、再婚相手は親権者にはなりません。
一方、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が生じます。連れ子養子の場合には、養親となった再婚相手と、実親であるあなたが親権者になります。
第3章 再婚相手と養子縁組をする場合、親権関係はどうなるのか
ここでは、再婚相手と子どもが養子縁組をする場合を整理します。
3-1 単独親権の状態で、再婚相手と子どもが養子縁組をすると、元配偶者は共同親権を求めにくくなる
単独親権者として子どもを育てている場合、元配偶者はそもそも親権者ではありません。
この状態で、再婚相手と子どもが養子縁組をすると、連れ子養子として、再婚相手が親権者になります。つまり、子どもの親権者はあなた(実親)と再婚相手になります。
この養子縁組後に、元配偶者が共同親権を求めて親権者変更を申し立てても、すでに再婚相手が親権者になっているため、通常の親権者変更とは場面が異なります。そのため、元配偶者が当然に共同親権者になれるわけではありません。
3-2 共同親権の場合、再婚相手との養子縁組を進めること自体が難しくなる
法改正後に元配偶者と共同親権になっていた場合も、養子縁組が成立した後の親権関係については、基本的に同じ考え方になります。一方の実親の再婚相手と子どもの養子縁組が有効に成立した場合は、その再婚相手が親権者となり、共同親権者であっても、他方の実親は親権を失います。
ただし、15歳未満の子どもが養子縁組をする場合は、親権者が養子縁組の手続に関与する必要があります。そのため、元配偶者と共同親権になっている場合、元配偶者が再婚相手との養子縁組に反対する可能性が高く、養子縁組の手続きを進めること自体が難航することが想定されます。
家庭裁判所が養子縁組について親権行使者を指定する場合がある
法改正では、こうした対立を家庭裁判所が調整する手続きも新設されました。子どもの利益のために必要があると認めるときに限り、家庭裁判所はどちらかの親権者を特定の事項について単独で行使できる親権行使者を指定します。
そのため、家庭裁判所によって養子縁組についての親権行使者に指定された場合は、元配偶者の同意を得ずに、再婚相手と子どもの養子縁組を進めることができます。
第4章 再婚相手と養子縁組をしない場合、共同親権は再婚後の生活にどう影響するのか
次に、再婚相手と子どもが養子縁組をしない場合を整理します。養子縁組をしない場合、再婚相手は子どもの親権者にはなりません。送迎や学校行事への参加、生活費の負担などをしていても、法律上の親権者ではないため、子どもの重要事項を決める立場にはない状態です。
元配偶者から共同親権への変更を求められる可能性は残る
養子縁組をしていない場合、元配偶者から共同親権への変更を求められる可能性は残ります。
もっとも、元配偶者が希望すれば必ず共同親権になるわけではありません。当事者間で話し合いが行われることはありますが、実際に親権者を変更するには、家庭裁判所の手続が必要です。家庭裁判所では、子どもの利益を基準に、単独親権を維持するか、共同親権に変更するかが判断されます。
元配偶者に共同親権を求められた場合の具体的な流れは、以下の記事の2章で確認いただけます。
共同親権はすでに離婚している場合でも関係ある?元配偶者から共同親権を求められた場合や単独親権を維持したい場合のポイントを弁護士が解説
第5章 既に再婚している場合・これから再婚する場合で確認すべきこと
5-1 再婚済みの場合|養子縁組の有無と現在の親権者を確認する
既に子連れで再婚している場合、まず確認すべきなのは、再婚相手と子どもが養子縁組をしているかどうかです。再婚相手と子どもの養子縁組が有効に成立していれば、再婚相手と実親であるあなたがすでに親権者になっています。
一方、養子縁組をしていなければ、再婚相手は法律上の親権者ではなく、現在の単独親権の状態が基本的に続いていると考えられます。この場合、元配偶者から突然、共同親権を求める連絡や書面が届く可能性があります。
5-2 これから再婚する場合|共同親権のリスクも踏まえて養子縁組を検討する
これから子連れで再婚する場合、再婚相手と子どもを養子縁組するかどうかは、再婚時点で一度整理しておくことが大切です。以前であれば、再婚相手と子どもを養子縁組するかどうかは、新しい家庭での親子関係、氏や戸籍、扶養、相続などを中心に検討されることが多かったかもしれません。
しかし、共同親権の法改正後は、元配偶者から将来共同親権への変更を求められる可能性も踏まえて検討する必要があるといえます。養子縁組をしない場合に、元配偶者から共同親権を求められたときどう対応するのかも、再婚時に検討しておくとよいでしょう。
第6章 【FAQ】子連れ再婚と共同親権についてよくある疑問
Q1. 子連れ再婚後に共同親権になった場合、再婚相手との新しい家庭生活に元配偶者が関与してくることになりますか?
A1. 重要事項では協議が必要になる可能性があります。
共同親権になった場合でも、再婚後の家庭生活のすべてについて元配偶者の同意が必要になるわけではありません。一方で、子どもの転居、進学先の決定、重大な医療行為など、子どもの生活や将来に大きく関わる事項については協議が必要になる可能性があります。そのため、再婚相手の転勤、住宅購入などにより、転居や転校を予定している場合には、元配偶者との協議が必要になる場面も生じ得ます。
共同親権で具体的に何が変わるのか、変更点の詳細については以下の記事でも確認いただけます。
関連記事「共同親権で何が変わる?法改正で見直された親権・養育費・親子交流のポイントを弁護士がわかりやすく解説」
Q2. 元配偶者が共同親権を主張してきそうです。先に再婚相手と子どもを養子縁組すれば対策になりますか?
A2. 親権上の影響はありますが、慎重な判断が必要です。
現在、単独親権者であり、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、あなたと再婚相手が親権者になります。養子縁組後は、元配偶者が共同親権を求めることは原則として難しくなる状況と考えられます。
ただし、養子縁組は、共同親権対策だけを目的に決めるものではありません。養子縁組をすると、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が生じ、扶養、相続、氏、戸籍など、親権以外の家族関係にも影響します。共同親権を避けたいという理由だけで養子縁組を急ぐのではなく、子どもの生活全体にとって適切かどうかを慎重に検討する必要があります。
Q3. 共同親権の元配偶者が再婚し、その再婚相手と子どもを養子縁組させたいと言ってきた場合、どうなりますか?
A3. 成立すれば、あなたが親権を失う可能性があります。
共同親権の元配偶者が再婚し、その再婚相手と子供の養子縁組が有効に成立した場合、元配偶者とその再婚相手が親権者になり、あなたが親権を失う可能性があります。もっとも、実際に養子縁組を成立させられるかどうかは別問題です。特に、子どもがあなたと生活している場合は、より慎重に判断されるといえます。ただし、元配偶者側からこのような話が出た場合には、親権に影響し得る重要な問題として早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
第7章 子連れ再婚で共同親権に不安がある場合は早めに相談を
法改正によって日本でも共同親権が選択できるようになりました。既に離婚し、単独親権者として子どもを育てている場合、単独親権から共同親権へ自動的に変わるわけではありません。しかし、元配偶者から、ある日突然、共同親権への変更を求められる可能性はあります。
共同親権の問題は、家庭ごとの事情によって対応が大きく変わります。不仲な元配偶者から共同親権を求める通知が届いた、元配偶者が反対しているが再婚相手と子どもの養子縁組をしたいなどの問題がある場合は、Nexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスへお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
共同親権はすでに離婚している場合でも関係ある?元配偶者から共同親権を求められた場合や単独親権を維持したい場合のポイントを弁護士が解説

2026年4月1日から日本でも共同親権制度が始まりました。すでに離婚して単独親権となっている場合、「自動的に共同親権へ変わってしまうのではないか」と不安を感じている方もいるかもしれません。結論からいうと、自動的に共同親権へ変更されることはありません。ただし、元配偶者から親権者変更を求められる可能性はあります。本記事では、現在単独親権の方が今の状態を維持するために、共同親権について知っておきたいポイントを弁護士が整理します。
第1章 【結論】既に離婚している場合、単独親権が自動的に共同親権へ変わることはない
まず押さえておきたいのは、今回の法改正によって現在の単独親権が自動的に共同親権へ変更されることはない、という点です。
1-1 法改正後も現在の単独親権はそのまま維持される
これまでの日本の法律では、離婚後は父母のどちらか一方を親権者として定める必要がありました。今回の法改正によって変わったのは、「共同親権を選択することもできるようになった」という点です。つまり、法改正後も単独親権という制度自体がなくなるわけではなく、共同親権と単独親権のいずれも選択できる形になります。
そのため、既に離婚して単独親権となっている場合、それが自動的に共同親権へ変更されるものではありません。したがって、役所へ新たな届出をしたり、戸籍の変更手続をしたりする必要もありません。
1-2 ただし、元配偶者が共同親権を求める可能性はある
単独親権が共同親権へと自動的に変わることはありませんが、今後も単独親権を維持できるかが確定しているわけでもありません。
今回の法改正によって、既に離婚している場合でも、家庭裁判所の手続を通じて単独親権から共同親権への変更が制度上可能になりました。そのため、元配偶者からある日突然、共同親権への変更を申し立てられる可能性はあります。
第2章 元配偶者が共同親権を求めた場合、どのような流れで決まるのか
元配偶者から共同親権を求められた場合、共同親権になるか、そのまま単独親権が維持されるかは、話し合いや家庭裁判所の手続を経て決まることになります。
2-1 まずは父母間で協議が行われることが多い
実務上は、まずは父母間で話し合いが行われるケースが多いと考えられます。例えば、元配偶者から「今後は共同親権にしたい」といった連絡が来る可能性がありますが、相手から共同親権を求められたとしても、直ちに応じなければならないわけではありません。
共同親権は、親の希望だけで決まるものではなく、あくまで子どもの利益にかなうかどうかが重視されます。そのため、不安や疑問がある場合には、安易に返事をしたり、結論を出したりはしないようにしましょう。
2-2 協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停へ進む
父母間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所での調停手続へ進むことになります。
調停は、現在親権を持っていない親が、共同親権への変更を求めて家庭裁判所へ「親権者変更」の手続を申し立てることから始まります。そのため、現在親権を持っている親は、家庭裁判所から書類が届いて初めて申し立てが行われたことを知ることになります。
共同親権に関する調停では、どのような事情が重要視されるのか、どの資料を整理しておくべきかによって、その後の対応が大きく変わる可能性があります。そのため、家庭裁判所から書類が届いた段階で、申立書の内容を確認し、ご自身だけでよくわからなければ裁判所から届いた書類を持参の上で一度弁護士に相談に行かれることをお勧めします。
2-3 調停で合意できなければ家庭裁判所が審判で判断する
調停で合意に至らなかった場合、家庭裁判所が審判という形で判断を行います。
審判では、父母双方の主張や提出資料、必要に応じた家庭裁判所調査官による調査結果などを踏まえながら、どの親権形態が子どもの利益にかなうのかを裁判所が判断します。
例えば、現在の生活環境が安定しているか、主に誰が監護を担ってきたか、父母間で必要な協議ができる状況にあるか、子どもへ精神的負担が生じないかなど、さまざまな事情が具体的に検討されることになります。
2-4 家庭裁判所は「子どもの利益」を最優先に判断する
共同親権に関する手続で、最も重要になる考え方が「子どもの利益」です。今回の法改正でも、親権は「子どもの利益のために行使しなければならない」と明記されています。
そのため、家庭裁判所は、どの形が子どもにとって安定した生活につながるかという観点から判断を行います。
例えば、DVや虐待のおそれがある場合や、父母間の対立が極めて強く、現実的に共同での意思決定が困難と考えられる場合には、共同親権が認められない可能性があります。
一方で、離婚後も一定の協力関係が保たれ、子どもの養育について現実的な連携ができているケースでは、共同親権が検討される可能性もあります。
第3章 共同親権になった場合、生活上は何が変わるのか
共同親権になった場合、子どもの生活や将来に大きく関わる事項については、父母間で協議が必要になる場面が増える可能性があります。
3-1 日常的な監護や急迫の事情がある場合は単独で判断できる場面もある
共同親権となった場合でも、すべてについて常に元配偶者の同意が必要になるわけではありません。例えば、食事や服装、習い事などの日常的な監護教育に関する事項や、緊急の医療行為が必要なケース、DV・虐待から避難するために転居が必要なケースなどでは、単独で親権を行使できるとされています。
しかし、将来や生活環境に関わる重要事項については、元配偶者との協議が必要になる可能性があります。
3-2 転居・進学・重大な医療行為では協議が必要になる可能性がある
共同親権になった場合、子どもの生活環境や将来に大きな影響を与える事項については、双方で協議しながら決める必要があるとされています。
例えば、県外への引っ越しを考えている場合や進学や受験、海外留学、病気の際の治療方針など、子どもの将来や生活環境に大きく関わる事項については、これまでのように自分だけで決められるとは限らなくなります。
離婚後、長期間にわたって実際に子どもを育ててきた側からすると、「なぜ今さら、普段子育てをしていない相手と重要事項を協議しなければならないのか」と感じる場面も出てくるかもしれません。
共同親権で具体的に何が変わるのか、変更点の詳細については以下の記事でも確認いただけます。
関連記事「共同親権で何が変わる?法改正で見直された親権・養育費・親子交流のポイントを弁護士がわかりやすく解説」
3-3 父母の意見が対立した場合に利用される「親権行使者」制度
共同親権では、父母双方で協議して決めるべき事項について、意見がまとまらないケースも想定されています。
法改正では、そのような場合に家庭裁判所へ親権行使者の指定を求める手続が設けられました。例えば、子どもの留学や進学、転居などについて父母間で意見が対立した場合、家庭裁判所が、子どもの利益のため必要があると判断した場合は、その事項に限って一方の親が単独で親権を行使できる可能性があります。
もっとも、どのような状況の場合に家庭裁判所が親権行使者の指定を認めるのかについては個別の事情によって判断されるため、一概にはいえません。
第4章 単独親権を維持したい場合に整理しておきたいこと
元配偶者から共同親権への変更を求められた場合、共同親権にはしたくないと主張するだけでは足りません。重要なのは、「現在の単独親権を維持する方が子どもの利益にかなう」と家庭裁判所に判断してもらえるかどうかです。そのため、単独親権を維持したい場合には現在の生活環境の安定性や、父母間の関係性、これまでの監護状況などを客観的な事情に基づいて整理していくことが重要になります。
4-1 これまでの監護実績や現在の生活状況を記録しておく
家庭裁判所は、現在の子どもの生活環境が安定しているかどうかを重視します。そのため、これまで誰が主に監護を担ってきたのか、現在どのような生活状況にあるのかを整理しておくことが大切です。
例えば、毎日の送迎や通院対応、学校との連絡、食事や生活管理など、日々の子育てを継続して担ってきた実績は重要な事情になり得ます。具体的には、学校や保育園との連絡アプリ、通院履歴、子どもに関するLINEのやり取り、学校行事の写真など、日常生活の中で自然に残っているものが後から重要な資料になることもあります。
もっとも、こうした資料は意識していない段階では、スマホの機種変更やデータ整理の際に消去してしまうことも少なくありません。将来的に共同親権への変更を求められる可能性が想定される場合には、子どもの生活状況や監護実績を示す記録を、意識して残しておくことが望ましいといえます。
4-2 元配偶者との協議が困難であることを示す客観的事情を整理する
共同親権では、父母間で継続的に協議できる関係にあることが重要になります。そのため、現実的に協議が難しい場合には、その状況を整理しておく必要があります。
例えば、離婚後も強い対立状態が続いている場合や、暴言・威圧的な連絡が繰り返されている場合、必要な連絡すら円滑に成立しないようなケースでは、共同で意思決定を行うこと自体が難しい可能性があります。
そのような問題が起きている場合には、それを証明する客観的な記録が必要です。具体的には、相手方とのメールやLINE、調停記録などを保存しておくことが重要といえます。
4-3 養育費の支払状況や親子交流の実態を整理しておく
家庭裁判所では、離婚後に元配偶者がどのように子どもの養育へ関与してきたかも確認されます。
例えば、養育費が継続して支払われていたのか、親子交流がどのように実施されてきたのか、子どもとの関係性がどの程度築かれているのかといった事情です。
もっとも、養育費を支払っているから必ず共同親権になるわけではなく、逆に未払いがあるから直ちに認められないというものでもありません。
ただ、離婚後にどのような形で子どもと関わってきたのかは、家庭裁判所が子どもの利益を考える上で無関係ではないため、一定程度親権を考慮するうえで重要視されるといえるでしょう。
第5章 【FAQ】既に離婚している場合の共同親権についてよくある質問
Q1. 共同親権への変更を求める申立てに回数制限はありますか?一度、単独親権維持の判断が出た場合でも、再び申し立てられることはあるのでしょうか?
A1. 再度申し立てられる可能性はあります。
親権者変更の手続について、「一度変更が却下されたら二度と申し立てできない」という回数制限は設けられていません。そのため、過去に単独親権維持の判断が出ていたとしても、その後の事情変化などを理由に、再び相手方が親権者変更を申し立てる可能性はあります。もっとも、過去の調停や審判の内容が無意味になるわけではなく、家庭裁判所はこれまでの経緯や現在の状況も踏まえて判断を行います。
Q2. 共同親権になった場合、児童手当など育児に関する補助金は父母で半分ずつになるのでしょうか?
A2. 自動的に半分ずつになるわけではありません。
共同親権になった場合でも、児童手当などの支給方法が直ちに父母で半分ずつになるわけではありません。実際には、制度ごとに受給要件や取扱いが異なっており、誰が主として子どもを監護しているのか、どちらと同居しているのかなどが考慮される場合があります。
Q3. 「共同親権にしないでほしい」と家庭裁判所へ申し立てることはできますか?
A3. 単独で予防的に止める制度はありません。
現時点では、相手方による共同親権への変更申立てを、あらかじめ制限する制度はありません。そのため、単独親権者の側から先に家庭裁判所に「共同親権は認めない」という判断を取ってもらうことはできず、相手方から親権者変更の申立てが行われて初めて対応することになります。離婚時に親権をめぐって大きな負担を経験している方にとっては、不安を感じることもあるでしょう。将来的に相手方から申立てがされる可能性も見据えて、早い段階から状況整理をしておくことが備えになるといえます。
Q4. 面会交流を認めない方が単独親権の維持のために有利になるのでしょうか?
A4. 単純に「交流を減らせば有利」とはいえません。
「面会交流を認めていると、後から共同親権を主張されやすくなるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。実際、相手方が継続的に親子交流を行い、子どもとの関係を築いていることは、家庭裁判所が事情を判断する際に無関係ではありません。だからといって、単独親権を維持したいという理由で相手方の親子交流を不当に制限した場合には、こちらが不利に評価される可能性があります。
第6章 既に離婚済みの単独親権者こそ、早めに状況整理をしておくことが大切
今回の法改正によって、既に離婚して単独親権となっているケースでも、将来的に元配偶者から共同親権への変更を求められる可能性が生じることになりました。単独親権者が知っておきたい事実として、相手方が親権者変更を申し立てることをあらかじめ禁止したり、防いだりする制度はないという点です。つまり、相手方が共同親権を希望した場合には、ある日突然、家庭裁判所から調停関係書類が届き、再び親権に関する手続へ対応しなければならなくなる可能性があります。
特に、父母間の対立が大きいケースでは、相手方も早い段階で弁護士へ相談し、法的主張や資料準備を進めていることが考えられます。そのため、共同親権への変更を求められた場合には、早い段階で弁護士へ相談し、現在の状況を整理することが重要といえます。
私たちNexill&Partners那珂川オフィスでは、離婚後の親権問題や共同親権に関するご相談にも対応しています。「相手から共同親権の話をされた」「家庭裁判所から書類が届いた」「自分のケースでは何を準備すべきか分からない」といった段階でもご相談いただけますので、お一人で不安を抱え込まず早めにご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
共同親権で何が変わる?法改正で見直された親権・養育費・親子交流のポイントを弁護士がわかりやすく解説

2026年4月1日より、離婚後の親権について、従来の単独親権に加えて共同親権を選択できるようになりました。これにより、「共同親権で何が変わるのか」「自分のケースにどう影響するのか」といった点が気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、法改正によって見直された制度のポイントを整理し、離婚時に押さえておきたい点を弁護士がわかりやすく解説します。
第1章 共同親権で何が変わるのか
1-1 離婚後の親権は「共同」か「単独」かを選べるようになった
これまでの日本の法律では、父母が離婚した場合には、どちらか一方のみを親権者とする「単独親権」しか認められていませんでした。
しかし、2026年(令和8年)4月1日より施行された改正民法により、離婚後の親権について、父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択することも可能になりました。
親権とは、未成年の子どもを養育・保護し、その財産を管理する権利と義務の総称です。これまでは、離婚した場合、どちら一方の親が親権を諦めなければなりませんでしたが、改正後は、離婚後も父母が協力して子どもの成長を支えていける選択肢が加わりました。
1-2 共同親権と単独親権のどちらになるかは父母の協議または家庭裁判所の判断で決まる
共同親権にするか、あるいはどちらか一方の単独親権にするかは、まずは父母の話し合い(協議)によって決めます。もし話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が子どもの利益を最優先に考えて、どちらの形式が適切かを判断することになります。
裁判所が判断を下す際は、これまでの育児の実績や父母それぞれの生活環境、子どもの意向などが総合的に考慮されます。
1-3 一定の場合には単独親権が選ばれる
共同親権が選択肢に加わったとはいえ、どんなケースでも共同親権が認められるわけではありません。子どもの心身に危害が及ぶおそれがある場合や、父母が協力して親権を行使することが明らかに困難な場合には、裁判所は単独親権とする方向で判断することになります。
具体的には、一方の親によるDV(ドメスティック・バイオレンス)や子どもへの虐待がある場合です。
また、父母間の対立が極めて激しく、子どもに関する意思決定を共同で行うことが、かえって子どもの利益を害するおそれがあると裁判所が判断した場合も、単独親権を命じられることになります。
第2章 共同親権で何が変わる?① 離婚時に決めるべき事項が増えている
2-1 共同か単独か、親権の形を選ぶ必要がある
法改正によって選択肢が増えたということは、裏を返せば、離婚時に決めなければならない重要な項目が増えたことを意味します。これまで離婚における親権は「どちらが親権者になるか」を争うことが中心でしたが、今後は「そもそも共同親権を目指すべきか、それとも単独親権の方が子どものためになるか」という一段階手前の検討が必要になります。
共同親権は、父母が円滑にコミュニケーションを取れる場合には機能しやすいと考えられますが、そうでない場合には、離婚後にも対立を生じさせる要因となる可能性があります。このような点を踏まえ、まずは自身の状況において、どちらの形態が適切かを見極めることが重要です。
2-2 共同親権の場合は役割分担を整理することが重要になる
共同親権を選択した場合、単に「二人で親権を持つ」という抽象的な合意だけでは不十分です。実務上は、どちらが主に子どもと一緒に暮らすのか(監護者を定めるかどうか)や、重要事項の決定方法をどのように整理するかといったことを具体的に検討しておくことが重要になります。
例えば、進路相談や高額な医療行為が必要になった際、どのような手順で話し合うのか。あるいは、日常的な習い事の選択などはどちらの判断に委ねるのか。
こうした具体的なルールを決めておかないと、共同親権とした場合に、かえって子どもの生活に混乱を招く可能性があります。
2-3 親子交流や養育費についても具体的に決める必要がある
親権のあり方に注目が集まりがちですが、子どもの生活を支える養育費や、親子の関係を維持する親子交流(面会交流)についても、今回の法改正によりルールが見直されています。
共同親権を選択したからといって養育費の支払義務がなくなるわけではなく、また、単独親権であっても親子交流が当然に制限されるものではありません。
こうした前提を踏まえ、経済的な支援と親子交流の双方について、具体的な取り決めを行っておくことが重要になります。
第3章 共同親権で何が変わる?② 親権の行使方法が明確化された
3-1 共同親権では、重要な事項は父母で話し合って決める
共同親権のもとでは、親権は父母が共同して行使することが原則とされています。そのうえで、子どもの進学や転居など、重要な事項については、父母が協議のうえで決定することになります。
重要な事項の代表例としては、以下のようなものが挙げられます。
・手術や長期の入院を伴う治療方針などの医療に関する決定
・居住地の指定や変更(引っ越し)
これらは子どもの生活に大きな影響を与えるため、離婚後も父母が意見をすり合わせ、合意形成を図る努力が求められます。
3-2 日常のことや緊急時は単独で判断できる場面もある
子どもについてすべての物事を二人で決めなければならないとすると、日常生活に支障が生じるおそれがあります。そのため、改正法では、親権は父母が共同して行使することを原則としつつも、一定の場合には一方の親が単独で判断できる場面があることが明確にされています。
具体的には、食事や通学、習い事の選択など日々の生活における監護や教育に関する事項については、日常の監護教育に関する行為として単独で判断することができます。
また、子どもの生命や身体に関わるような緊急の医療対応や、DVなどからの避難といった急迫の事情がある場合にも、相手の同意を待たずに判断することが認められています。
3-3 意見が対立した場合は家庭裁判所の関与も想定される
重要な事項について父母の意見がどうしても一致しない場合、そのままでは子どもの生活に支障が生じるおそれがあります。このような場合には、家庭裁判所に対して申し立てを行い、特定の事項についてどちらの親が親権を行使するかを定めることができます。
裁判所は、父母それぞれの状況や子どもの利益を踏まえたうえで、個別の事情に応じて判断を行います。ただし、こうした手続きは時間や労力がかかることも少なくありません。こうした点を踏まえ、できる限り協議の段階で、意見が対立した場合の対応方法(例えば第三者を介した話し合いの利用など)についても整理しておくことが、実務上は有効といえます。
第4章 共同親権で何が変わる?③ 養育費のルールが強化されている
4-1 養育費の支払を確保する仕組みが強化された
共同親権が選択できるようになったとしても、子どもの生活を支えるための養育費の支払義務がなくなるわけではありません。親権の形にかかわらず、父母はそれぞれ子どもを扶養する責務を負うことになります。
これまで養育費については、取り決めをしても実際に支払われないという問題が指摘されてきました。今回の改正では、こうした問題に対応するため、養育費の支払を確保する仕組みが見直されており、その一つとして、養育費債権に「先取特権(さきどりとっけん)」と呼ばれる優先権が付与されることとなりました。
従来は差押えを行うために公正証書や調停調書などの債務名義が必要とされていましたが、今回の改正により、父母間で作成した文書(離婚協議書や養育費に関する合意書など)に基づいて差押えの手続を進めることができるようになります。
4-2 養育費の金額が決まる前でも暫定的に一定額を請求できる制度が新設された
共同親権を選択した場合であっても、養育費について事前に十分な取り決めがされていないケースは少なくありません。
これまでは、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合、改めて調停などを申し立てて金額を決める必要があり、その間は養育費を受け取れない状態が生じることがありました。
今回の改正では「法定養育費」という制度が新設されました。これは、事前に取り決めがない場合であっても、離婚のときから引き続き子供の監護を主としている側の親が、もう一方の親に対して暫定的に一定額の養育費を請求できる仕組みです。
具体的には、子ども1人あたり月額2万円の養育費を請求することができ、この請求は離婚時から発生し、当事者間で養育費の取り決めが成立するか、家庭裁判所の審判が確定するまで継続します。
この制度はあくまで暫定的なものであり、最終的には収入などを踏まえた適切な金額を別途定める必要がありますが、離婚直後の生活を支える最低限の仕組みとして位置付けられています。
4-3 相手の収入が分からない場合の手続も整備された
共同親権のもとでは、父母双方が関わりながら子どもの養育を行うことになりますが、その前提として、養育費の金額を適切に定めることが重要になります。その際に問題となりやすいのが、相手方の収入状況が分からないという点です。
今回の改正では、こうした問題に対応するため、家庭裁判所が当事者に対して収入情報の開示を求めることができる仕組みが整備されています。
これにより、相手の収入状況が明らかでない場合であっても、一定の範囲で情報を把握したうえで、より適切に金額を決めていくことが可能になります。
第5章 共同親権で何が変わる?④ 親子交流(面会)の考え方が整理された
5-1 親子交流は子の利益を最優先に定められる
共同親権を選択した場合には、離婚後も父母双方が子どもと関わることになりますが、親子交流の在り方については、親権の形にかかわらず、子どもの利益を最優先に判断される点は変わりません。
改正法では、親子交流について「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記されており、別居している親の意向だけでなく、子どもが健全に成長していくためにどのような関わり方が望ましいかという観点から検討されることになります。
したがって、単に会う回数を決めるだけでなく、子どもの体調や学校行事、精神的な負担を十分に考慮したスケジュールを組むことが重要になります。
5-2 祖父母などとの交流についても制度が整備された
共同親権のもとでは、父母双方が子どもに関わる形になりますが、それに加えて、父母以外の親族(祖父母など)との関係についても問題となる場面があります。
今回の改正では、一定の場合に家庭裁判所が関与し、祖父母などと子どもとの交流について判断できる仕組みが設けられています。
これにより、父母の離婚後であっても、子どもの利益の観点から必要と認められる場合には、祖父母などとの交流を継続することができる可能性があります。
第6章 親の関係性によって裁判所の共同親権・単独親権の判断はどう変わるか
6-1 協議ができる関係かどうかが大きな判断要素になる
共同親権が適切に機能するかどうかは、父母間で一定の意思疎通が可能な関係にあるかどうかに大きく左右されます。
形式的に共同親権を選択したとしても、連絡が取れない状況が続いたり、意思決定のたびに対立が生じたりする場合には、子どもの生活に影響が及ぶおそれがあります。
このような事情を踏まえ、裁判所は、父母が協力して親権を行使することができる状態にあるかどうかを踏まえて判断を行います。父母間で建設的な話し合いが可能な関係にある場合には共同親権が検討されますが、そうでない場合には単独親権が相当と判断されることもあります。
6-2 共同での意思決定が難しい場合は単独親権が選ばれることがある
すでに別居期間が長く交流がほとんどない場合や、価値観の相違が大きく、教育方針などについて継続的な協議が困難と考えられる場合には、共同親権とした場合に意思決定が円滑に進まないおそれがあります。
このような状況では、重要な事項について判断が滞ることを避けるため、裁判所は父母の関係性や子どもの利益を踏まえたうえで、単独親権とすることを含めて検討することになります。
自身のケースにおいて、共同親権のもとで適切に意思決定ができる状況にあるかどうかについては、個別の事情を踏まえた検討が重要になります。
第7章 共同親権に関して誤解されやすいポイント
7-1 共同親権が原則になるわけではない
ニュースなどの見出しで「共同親権導入」と大きく報じられたため、これからは離婚したら必ず共同親権になるといった誤解をされているケースも多いようです。しかし、あくまで今回の改正は「共同親権という選択肢が増えた」のであり、原則としてどちらかに決まったわけではありません。単独親権が適切なケースでは引き続き単独親権が採用されます。
制度としては、個別の事情に応じて適切な親権のあり方を選択できるようにするものとされています。
7-2 自動的に共同親権に切り替わるわけではない
すでに離婚して単独親権となっている方が、法改正によって「自動的に共同親権になる」ということもありません。
既に離婚している場合でも、法改正後に改めて家庭裁判所に申し立てを行い、親権者の変更が認められれば共同親権に移行することは可能です。ただし、そのためには、現在の監護状況や子どもの意向などを踏まえ、変更することが子どもの利益にかなうことを個別に証明する必要があります。
既に離婚している場合の共同親権については以下の記事で詳細を確認いただけます。
共同親権はすでに離婚している場合でも関係ある?元配偶者から共同親権を求められた場合や単独親権を維持したい場合のポイントを弁護士が解説
第8章 弁護士に相談すべきタイミングとポイント
共同親権という選択肢が広がったことで、離婚時に検討すべき事項は従来よりも増えています。もっとも、制度の内容を理解するだけでは足りず、実際の状況に当てはめてどのように判断すべきか、またどのような取り決めを行うべきかについて迷う場面も少なくありません。このような場面では、法的な観点から状況を整理し、どのように進めるべきかを考えるうえで、弁護士が一つの支えとなります。ここでは、共同親権に関する判断や取り決めにおいて、弁護士に相談することが有効となる代表的な場面を整理します。
8-1 親権の方針について相手と意見が対立している場合
例えば、単独親権を希望しているにもかかわらず相手が共同親権を主張している場合や、反対に、共同親権を希望しているのに相手が単独親権を主張している場合には、早い段階で弁護士に相談することが有効といえます。
親権の判断は、これまでの監護状況だけでなく、父母の関係性や将来の意思決定の在り方なども踏まえて行われます。当事者同士の主張が食い違ったままでは、何を基準に判断されるのかが分からず、議論がかみ合わないまま長期化することも少なくありません。
弁護士に相談することで、どのような事情が重視されるのかを踏まえて主張を整理し、適切な形で対応を進めていくことができます。
8-2 共同親権にした場合の運用に不安がある場合
共同親権を選択する場合には、その後の運用が現実的に可能かどうかを事前に検討しておくことが重要になります。例えば、日常的に連絡が取れる関係にあるか、重要な意思決定について話し合いができるかといった点は、意思決定や子どもの養育環境に大きく影響します。
こうした点に不安がある場合には、どのような取り決めをしておくべきか、また共同親権以外の選択肢も含めて検討する必要があるかについて、弁護士の助言を受けることで判断の精度を高めることができます。
8-3 共同親権を前提とした取り決めが不十分なまま進みそうな場合
共同親権は、離婚後も父母の双方が関与して意思決定を行うことを前提とした制度です。例えば、進学や転居といった重要な事項についてどのように判断するのか、意見が対立した場合にどのように調整するのかといった点が曖昧なままでは、離婚後、共同親権とした場合に意思決定が滞るおそれがあります。
そのため、共同親権を前提とするのであれば、将来の生活を見据えて、どのような取り決めが必要になるのかを事前に整理しておくことが重要になります。
こうした点について不安がある場合には、弁護士の助言を受けながら具体的な内容を詰めていくことが有効です。
第9章 共同親権で後悔しないために
共同親権という選択肢が増えることで、離婚後も父母が協力して子どもを育てる道が開かれました。しかし一方では、取り決めの不備や関係性の悪化が、かえって子どもの生活を不安定にするリスクもあります。
大切なのは、子どもの健やかな成長のために、親として取れる最善の形は何かを真摯に検討することです。共同親権と単独親権、それぞれのメリットとデメリットを正しく理解し、養育費や親子交流といった実務的なルールを盤石に整えることが、後悔しない離婚への鍵となります。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスは、お一人おひとりの状況に寄り添いながら最適な解決策をご提案いたします。これからのお子さまの未来を守るために、少しでも不安を感じられたら、ぜひお気軽に私たちへご相談ください。
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外国籍の配偶者と離婚をする際の親権・面会交流はどう決める?子どもの国外移動リスクについても弁護士が解説

外国人との離婚では、離婚そのもの以上に、子どもの親権や面会交流に加え、「どの国で子どもを育てるのか」といった点が大きな争点になりやすいといえます。特に、相手が海外に住む可能性がある場合や、子どもを国外に連れて行く話が出ている場合には、深刻な対立に発展する可能性があります。この記事では、外国籍の配偶者との離婚において話し合いだけでは解決が難しくなりやすい、親権・面会交流・子の国外移動リスクについて、調停や裁判の実務も踏まえながらポイントを整理します。
第1章 外国人との離婚で親権はどう決まる?日本のルールと判断の考え方
1-1 どの国の法律で親権を判断するのか
国際離婚において、子どもの親権をどの国の法律に基づいて決めるべきかという問題は、法律用語で準拠法(じゅんきょほう)の決定と呼ばれます。日本では法の適用に関する通則法という法律にそのルールが定められています。
原則として、子どもと父母に共通する本国法(国籍)がある場合にはその国の法律が適用されますが、夫婦の国籍が異なり、子どもが二重国籍であるようなケースでは、子どもが実際に生活の基盤を置いている場所の法律が優先されることが一般的です。
したがって、日本で生活している家族であれば、相手が外国籍であっても日本の民法に従って親権を判断することになります。
1-2 家庭裁判所が重視する「子どもの利益」とは何か
日本の家庭裁判所が親権者を指定する際、最大の基準となるのが「子どもの利益」です。これは、どちらの親が親権者になることが、子どもの心身の健やかな成長にとって望ましいか、という視点です。
親権の獲得には、経済力がある方が有利と思われがちですが、実際にはそれだけで決まるわけではありません。親権者の決定は、これまでの育児への関わり方、子どもとの情緒的な結びつき、現在の生活環境の継続性、そして将来にわたって安定した養育ができる体制が整っているか、といった多角的な要素を総合して判断されます。さらに、子どもの年齢によって、どの事情をどの程度重視するかは変わるため、年齢も重要な前提事情として考慮されます。
1-3 共同親権が導入されても注意が必要?実務で気をつけるべき点
これまで日本の民法では、離婚後は父母のどちらか一方が親権者となる単独親権のみが認められてきました。しかし、2026年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の共同親権が導入され、父母の協議によって共同親権か単独親権かを選択できるようになりました。
もっとも、共同親権が常に選ばれるわけではなく、実務上は単独親権が認められる場面も引き続き想定されます。
この点、国際離婚の実務においては、相手方の国の制度との違いに引き続き注意が必要です。例えば、欧米諸国の多くでは共同親権が原則とされているため、日本で単独親権が認められた場合であっても、相手国においてはもう一方の親の関与が十分に確保されていないと評価される可能性があります。
将来的に子どもを連れて相手の母国へ行く可能性がある場合は、日本の法律上の結論がそのまま海外で受け入れられるとは限らない点について留意しておく必要があります。
第2章 親権で揉めたときに見られるポイント|実務で重視される5つの事情
2026年4月1日施行の法改正により、調停や裁判における親権の判断では、まず父母が共同で親権を行使できる状況にあるかが検討され、そのうえで具体的な事情が総合的に考慮されるようになりました。したがって、これらの事情は、単にどちらの親が主として子を養育するかだけでなく、父母が協力して子の養育に関与できるかという観点からも評価されることになります。以下では、実務上特に重視される代表的な事情について整理します。
2-1 これまで誰が子どもを育ててきたか(監護実績)
親権争いにおいて最も重視されるのが「継続性の原則」です。これは、これまで主に子どもの面倒を見てきた者(監護親)が、今後も一緒に暮らして育てるのが子どもにとって心理的な負担が少ないという考え方です。
具体的には、日々の食事の用意、入浴、寝かしつけ、学校や保育園の送り迎え、病院への通院といった子どもの生活全般にどの程度関与してきたかが判断の対象となります。特に子どもが幼い場合には、生活の連続性や安心感が重視されるため、この監護実績がより大きな意味を持つ傾向があります。
国際離婚の場合には、日本で生活する子どもの環境に適切に対応できているかという点も併せて検討されます。例えば、日本語での意思疎通が日常生活に支障なく行われているか、学校生活や地域での生活に無理なく関与できているかといった事情は、調停や裁判においても評価の対象となることがあります。
2-2 今後の生活環境は安定しているか(住居・学校・生活基盤)
離婚後の住居が確保されているか、転校を伴う場合に子どもへの影響が過度にならないかなど、生活基盤の安定性も重要な判断要素です。特に学齢期の子どもについては、学校や友人関係といった現在の生活環境を維持できるかどうかが重視される傾向があります。
そのため、外国籍の親が将来的に母国へ子どもを連れて帰ることを希望している場合には、現地での生活環境や教育体制、支援の有無などについても具体的な裏付けが求められることになります。
2-3 子どもの意思はどこまで考慮されるのか(年齢との関係)
子どもの年齢が上がるにつれて、本人の意思はより重く受け止められるようになります。実務上、おおむね10歳前後から子どもの意向が確認され、15歳以上になるとその意思が判断に大きく影響する場面も少なくありません。
家庭裁判所では、調査官が子どもと面談を行い、どちらの親と暮らしたいかだけでなく、その理由や日常の関係性、生活状況を把握します。
国際離婚の場合には、子どもがどちらの親と暮らしたいかという意思に加えて、どの国で生活することになるのかという点も問題となるため、その意思の内容が現実の生活環境とどのように結びついているかも踏まえて検討されます。
2-4 日本で育てるか、海外で育てるかという選択の考え方
国際離婚において特徴的な論点が、子どもをどの国で育てるかという問題です。この点については、言語、教育環境、医療体制、親族の支援など、複数の要素を踏まえて比較検討されます。特に学齢期以降の子どもについては、教育言語の変更や学習環境の違いが大きな影響を与える可能性があるため、その適応可能性や将来への影響が慎重に考慮されます。
一方で、幼い子どもの場合には、どの環境で安定した養育が継続できるかという観点がより重視される傾向があります。
2-5 別居親との面会にどれだけ配慮できるか(協力姿勢)
もう一方の親と子どもの関係をどのように維持できるかという点も、親権者の適格性を判断する要素の一つです。他方の親との面会交流に対して協力的であるかどうかは、子どもの健全な成長にとって重要と考えられているからです。
特に、2026年4月1日に施行された法改正により、父母が協力して子の養育に関与できるかという点は、これまで以上に重要な判断要素として位置づけられています。そのため、合理的な理由なく、他方の親と子どもとの交流を一方的に制限する態度は、調停や裁判において不利に評価されやすくなります。
特に国際離婚の場合には、面会交流が国内で完結せず、海外との往来やオンラインでのやり取りを前提とする場面が生じることがあります。こうした事情を踏まえ、移動に伴う負担や言語の違いといった現実的な事情を踏まえながら、どの程度柔軟に対応できるかが、調停や裁判においても考慮されることがあります。
第3章 面会交流で後から揉めないために|離婚時に決めておくべき具体的な内容
3-1 オンライン面会・連絡頻度など日常的な交流の決め方
相手が子どもを連れて海外や遠方に住むことになる場合、物理的に子どもと面会できる回数は限られます。そのため、オンラインによるビデオ通話を利用した交流が重要になります。
例えば、「毎週土曜日の日本時間20時から30分間」というように、曜日と時間を特定しておくことがトラブルを防ぐ有効策となり得ます。また、子ども自身が直接デバイスを操作できない年齢の場合は、監護している親がどの程度サポートするかについても合意をとっておくことが重要です。
3-2 一時帰国や長期休暇中の面会ルールをどう決めるか
長期休暇などを利用して直接会う場合のルールも、離婚時に細かく詰めておくべきです。
例えば、「夏休みのうち5日間」と期間を定めるのか、「12月25日から30日まで」と日にちを特定するのか。また、日本国内で会うのか、それとも相手の国へ渡航して会うのか。渡航を伴う場合は、宿泊先情報の共有や、緊急時の連絡網についても、明確に決めておくのが望ましいです。
3-3 旅費・滞在費・通訳など現実的な負担の整理
相手が子どもを連れて海外に移住した場合、面会交流には多額の費用がかかることになります。航空券代、宿泊費、移動に伴う諸費用をどちらがどの割合で負担するのかを明確にしておかなければ、経済的な理由で交流が途絶えるおそれがあります。
また、子どもと別居した親との間で言語の違いが生じる場合には、どのようにコミュニケーションを取るのかについてもあらかじめ整理しておく必要があります。子どもが幼い場合、海外移住によって別居親の言語に触れる機会が減り、言葉による意思疎通が難しくなる場面も想定されます。そのため、状況に応じて通訳の利用や子どもと一緒に暮らしている親(同居親)の同席といった対応を検討しておくことも望まれます。
3-4 合意内容をあいまいにしないための書面化のポイント
こうした面会交流に関する取り決めは、強制執行力のある書面に残すことが重要です。口約束やメールのやり取りだけでは、面会交流が実施されなくなった場合に是正することが難しく、子どもと会えない状態が継続してしまうおそれがあるためです。
日本の公証役場で作成する離婚給付等契約公正証書や、裁判所での調停調書として、面会交流の具体的な条件を記載しておくことが、紛争を未然に防ぎ、面会交流を確保するための実務的な備えとなります。
第4章 子どもを海外に連れて行っても大丈夫?連れ去りトラブルとハーグ条約
4-1 無断で海外に連れて行くと何が問題になるのか
離婚前や別居中に、もう一方の親の同意を得ずに子どもを国外へ連れ出す行為は、後の手続に大きな影響を与える可能性があります。日本では親権の行使と評価される場合であっても、相手方の国の制度によっては未成年者略取誘拐罪として刑事罰の対象になることがあるためです。
一度、連れ去りと評価されてしまうと、その後の親権裁判において「他方の親との関係を遮断する問題のある親」と評価され、不利な状況に追い込まれるリスクが高まります。
4-2 ハーグ条約の基本と、返還を求められるケース
子どもを他方の親の同意を得ずに、元々生活していた国とは異なる国に移動させた場合、もう一方の親から元の国に戻すよう求める手続がとられることがあります。
こうした場面で問題となるのが、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約「ハーグ条約」です。この条約は、子どもが不適切に国外へ移動された場合に、元の居住国へ速やかに戻すための国際的なルールを定めたものです。
日本で生活していた子どもを海外に連れ出した場合だけでなく、海外で生活していた子どもを日本に連れ帰った場合でも、この条約に基づく返還手続の対象となることがあります。
4-3 パスポート管理や渡航ルールで防げるトラブル
連れ去りの不安がある場合、実務的な予防策を講じる方法もあります。
例えば、子どものパスポートを信頼できる第三者や弁護士に預けておく、あるいは外務省に対してパスポートの発給制限を申請し、自分の同意なくパスポートが作成されないようにする手続きがあります。
また、離婚時の合意書において「国外へ渡航する際は、少なくとも1ヶ月前までに書面で相手の承諾を得る」といった渡航制限条項を設けておくことも有効な対策となります。
第5章 子どもの将来に影響するからこそ、早い段階で整理を
国際離婚における親権や面会交流の問題には、国ごとの制度の違いや国際条約といった枠組みが関係します。良かれと思って取った行動が、法的には不法な連れ去りとみなされ、重大な事態を招く可能性も否めません。また、一度決めた条件を後から変更することは、国内の離婚以上に困難な場合もあります。
まずは、子どもの生活環境をどのように維持していくのか、そして離婚後もどのように親としての責任を果たしていくかを整理したうえで、手続きを進めていくことが重要です。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスは、実務経験に基づき、納得のいく前進のためのお手伝いをさせていただきます。少しでも不安があるときには、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
自分が外国人で、日本人の夫と離婚したいときは?日本での離婚の進め方と在留資格の注意点を弁護士が解説

自分が外国人で、日本の法律や役所の手続に慣れていない場合、日本人の夫と離婚したいと思っても、どのように進めたらよいのか不安だと思います。この記事では、外国人の妻が、日本人の夫との離婚を考えるときに知っておきたい離婚手続の流れや、在留資格の注意点を、弁護士が説明します。
第1章 日本での離婚手続はどのように進むのか
1-1 夫婦の話し合いで成立する「協議離婚」の基本
日本で多い離婚の方法は、夫婦で話し合いをして決める協議離婚(きょうぎりこん)です。夫婦が二人とも離婚することに納得し、どちらが子どもを育てるか(親権)などの条件が決まれば、自分の住んでいる地域の役所に離婚届を出すだけで離婚が成立します。
1-2 離婚の合意ができない場合の「調停」と「裁判」
しかし、夫婦のどちらかが離婚に反対している場合や、お金の分け方などで意見が合わないときや、離婚届に自分と相手の両方がサインできないときには、役所に離婚届を提出するというかたちで離婚をすることができません。
その場合は、家庭裁判所を利用することになります。
まずは離婚調停(りこんちょうてい)という手続きを行います。これは、裁判所で調停委員という人が間に入って、あなたと夫がそれぞれの考えを話し、離婚の条件(お金や生活のことなど)を話し合う手続きです。
もし、この調停でも話がまとまらない場合には、最終的に離婚訴訟(りこんそしょう)へと進みます。これは裁判で離婚を目指す手続きとなり、裁判では、裁判官が離婚の原因となった証拠などを見て、離婚を認めるかどうかを判断します。
1-3 外国の方が手続で戸惑いやすいポイント
日本で離婚手続きを進める中で、外国人の方が特に難しいと感じることの一つは、言語の問題です。
役所や裁判所の書類はすべて日本語で書かれています。離婚届の記入だけでなく、裁判所に提出する証拠書類なども、すべて日本語で書いて提出しなければなりません。
また、裁判所での手続き(調停など)も日本語で行われます。日本語での会話に自信がない場合は、自分で通訳の人を準備するか、裁判所に通訳のサポートを相談する必要があります。
言葉の問題で自分の意見が正しく伝わらないと、不利な条件で手続きが進んでしまう可能性があるため、注意が必要といえます。
第2章 離婚した後の在留資格(ビザ)はどうなるのか
2-1 「日本人の配偶者等」の在留資格は離婚後どう扱われるか
今、「日本人の配偶者等」という在留資格で日本に住んでいる場合、離婚すると、そのまま同じ資格で日本に住み続けることが難しくなることがあります。この在留資格は「日本人の配偶者であること」を前提として認められているものだからです。
そのため、離婚したあとも日本で生活したい場合は、在留資格についてどうするかを考える必要があります。
2-2 日本に住み続けるためには在留資格の変更が必要
離婚した後も日本で生活を続けるためには、自分に合った別の在留資格に変更する必要があります。
例えば、日本人の子どもを育てている場合や、日本での結婚生活が長く、日本に生活の基盤がある場合などは、「定住者(ていじゅうしゃ)」という在留資格へ変更できる可能性があります。
他にも、仕事の内容によっては就労のための在留資格に変更できる場合もあります。
どの資格に変更できるかは、これまでにどれぐらい日本に住んでいるか、仕事をしているかどうか、子どもがいるかどうかなどによって個別に判断されます。
そのため、まずは出入国在留管理局(入管)に相談し、自分の場合はどの在留資格が考えられるかを確認することが大切です。
2-3 出入国在留管理局への届出と手続のタイミング
日本人の夫と離婚したときは、離婚が成立した日から14日以内に出入国在留管理局(入管)へ「配偶者に関する届出」を出さなければなりません。これは法律で決まっている義務です。
この届出を忘れてしまうと、次の在留資格への変更手続きに悪い影響が出たり、罰則を受けたりすることもあります。
第3章 離婚後の生活を支えるために整理しておきたいこと
3-1 離婚時のお金のこと(財産分与・慰謝料)
離婚をしたいと思った時には、まずはお金のことを考える必要があります。
日本での離婚では、財産分与(ざいさんぶんよ)と慰謝料(いしゃりょう)という2つのお金の問題が生じることがあります。それぞれ意味が異なるため、分けて理解しておくことが大切です。
財産分与とは何か
日本の法律では「結婚している間に得た財産は、離婚の際に夫婦で分ける」という考え方が基本になり、それを財産分与といいます。
たとえば、夫の口座にある貯金であっても、結婚してから増えた部分については、結婚している間に得た財産として、二人で分ける対象になります。
それぞれが独身時代に買った財産(家など)は、分ける対象にはなりません。
慰謝料とは何か
慰謝料とは、相手の行為によって精神的な苦痛を受けた場合に、その補償として支払われるお金です。例えば、夫の不倫や暴力など、婚姻関係を壊す原因となる行為があった場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。もちろんあなたに原因がある場合は、あなたが慰謝料を支払うことになる可能性もあります。
3-2 離婚後の生活のこと(家・収入)離婚後の生活に向けた住居・収入の確保
お金のことにプラスして、離婚ができた後の生活をどうしていくかというのも考えなければいけません。
まずは住む場所を検討します。夫が家を出るのか、自分が新しい部屋を借りるのかを決めなければなりません。外国籍の方が新しく部屋を借りる場合、保証人が必要になることがあり、時間がかかることもあります。そのため、早めの準備が必要です。
次に、仕事と収入です。現在の収入で生活ができるかを考え、足りない場合はどのような仕事を探すかを考えます。
また、日本にはひとり親家庭(シングルマザー)などを支援する公的な制度(児童扶養手当など)もあります。お住まいの市区町村の役所で、どのようなサポートが受けられるかを確認しておくことで、生活の不安を少しでも減らすことができます。
第4章 外国人の妻が弁護士に相談した方がよい場面
ここまで、日本での離婚の進め方や在留資格、生活の準備について説明してきました。
しかし、実際に離婚の話を進めると、相手が話し合いに応じなかったり、在留資格の問題が重なったりして、一人で対応するのが難しくなることもあります。
このような場合には、弁護士に相談することも一つの方法です。ここでは、どのようなときに相談した方がよいかを説明します。
4-1 話し合いが進まず、条件の整理ができない状態が続いている場合
夫に離婚したいと伝えても、「絶対に離婚しない」と言われたり、逆に「離婚したければお金は1円も払わない」といった条件を出されたりして、離婚の話し合いが止まってしまうことがあります。
当事者同士では話が前に進まないときは、弁護士に相談して話し合いを整理することが有効です。法律に基づいた条件を整理することで、夫側の考えが変わり、話し合いが進むこともあります。
4-2 日本語での書類対応や裁判所の対応に不安がある場合
裁判所の手続きは、非常に複雑な日本語の書類をやり取りします。一度書類にサインをすると、内容をよく理解していなかった場合でも、後から取り消すことは難しくなります。
「夫が用意した書類の内容が合っているか不安」「裁判所からの書類にどう返信すればいいか分からない」という状態であれば、専門家のサポートが必要です。弁護士に相談すると、書類の内容を分かりやすく説明してもらい、必要な対応についてアドバイスを受けることができます。
4-3 在留資格や生活の見通しまで含めて整理したい場合
「離婚はしたいけれど、その後のビザがどうなるか怖くて動けない」という不安を抱えている場合も、相談をしてみるタイミングです。
離婚の手続きだけを進めるのではなく、離婚後の在留資格の変更が可能かどうか、生活費をどのように確保するかといった、生活全体の見通しをセットで整理する必要があります。
今の状況を整理することで、不安を減らし、何を準備すればよいかが分かるようになります。
第5章 【FAQ】日本人の夫との離婚でよくある疑問
Q1. 離婚するとすぐに日本にいられなくなりますか?
A1. すぐに退去になるとは限りません
離婚したからといって、すぐに日本を出なければならないわけではありません。今の在留資格の期限までは、日本にいることができます。ただし、配偶者としての生活を6か月以上していない場合は、在留資格が取り消される可能性もあります。そのため、早めに別の在留資格への変更を考えることが大切です。
Q2. 今住んでいる家に、そのまま住み続けることはできますか?
A2. 住み続けられるかどうかは、その家の契約や名義によって変わります。
住み続けられるかどうかは、その家の契約や名義によって変わります。賃貸物件の場合は、あなたが契約者であれば、そのまま住み続けられる可能性が高いといえます。一方で、夫の名義で契約している場合には、離婚後に部屋を出ていくよう求められることもあります。また、夫の持ち家に住んでいる場合は、そのまま住み続けることは難しいことが多いです。ただし、離婚時の話し合いの内容によっては、ある程度の間、住み続けることが認められることもあります。
Q3. 夫との間にできた子どもは、どちらが引き取ることになりますか?
A3. 親権者を決める必要があります
日本では、離婚するときに、どちらが子どもを育てるか(親権者)を決める必要があります。親権は、これまでの子どもの生活や、これからの生活の環境などをもとに決められます。外国人が関係する場合には、子どもの住む場所や将来の生活に関する問題も含めて、慎重な判断が必要になります。
親権や面会交流については判断が難しくなることが多いです。もっと詳しく説明している別の記事も読んでみてください。
外国籍の配偶者と離婚をする際の親権・面会交流はどう決める?子どもの国外移動リスクについても弁護士が解説
Q4. 弁護士に相談すると、どのくらい費用がかかりますか?
A4. 費用の目安は数十万円程度からです。ただし、初回無料の相談も多くあります
多くの法律事務所では、初めての相談を無料で受けられることがあります。そのため、まずは相談してみて、自分の場合はどのような対応が必要か、どれくらい費用がかかるのかを聞いてみましょう。弁護士の費用は内容によって変わりますが、離婚の交渉や調停を依頼する場合、一般的には数十万円程度以上になる場合が多いとされています。
費用は安いものではありませんが、相手に不倫や暴力などの原因がある場合には慰謝料を請求できる可能性がありますし、財産分与として一定のお金を受け取れる場合もあります。そのため、今、手元に十分なお金がない場合でも、最終的に夫から受け取ることができる金銭から費用を支払う形で対応できるケースもあります。自分にとって無理のない進め方ができるかどうかを確認してみましょう。
第6章 あなたの新しい生活に向けて、早めの整理が大切です
日本で生活する外国人の方にとって、日本人の夫との離婚は、家族の問題だけでなく、日本での在留資格やこれからの生活に大きく関わる出来事です。日本語の書類や慣れていない手続きに戸惑うこともあると思います。一人で考えるのが難しくなることもあります。
大切なのは、後回しにせず、まずは今の状況を整理することです。どのように離婚を進めるのか、離婚したあとも日本で生活するために何を準備すればよいのかを知ることで、不安を減らすことができます。
私たちNexill&Partners(ネクシル&パートナーズ)那珂川オフィスでは、一人ひとりの状況に合わせたサポートを行っています。分からないことや不安なことがあるときは、一人で悩まずにご相談ください。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
















