弁護士コラム

2023.06.14

保釈中の被告人にGPSの装着

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皆さんも、刑事事件のニュースで、保釈という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
保釈とは、刑事事件において起訴された被告人が保釈金を支払うことで、勾留されている状態から釈放される制度で、刑事事件訴訟法に規定されています。

保釈により、逮捕、勾留されていた人も、釈放され日常生活に戻ることができますが、後日行われる刑事裁判(公判といいます。)に出廷しなかったり、逃走してしまった場合には、再び勾留されることになり、また、支払った保釈金も没収されてしまうことになります(他方、きちんと公判に出廷している場合には、保釈金は後日返金されることになります。)。

このように、保釈金を担保として逃亡することを防いでいた保釈制度ですが、皆さんもご記憶に新しいと思いますが、日産の元会長であるカルロス・ゴーンが保釈中に海外に逃亡してしまう事件が起きたように、保釈金のみでは、釈放された被告人の逃亡を防ぐことができない状態になりました。

保釈中の被告人にGPSの装着

そのような中、先日、国会で、改正刑事訴訟法の法案が衆参両議院で可決されました。
その改正の1つとして、裁判所が保釈許可時に海外逃亡を防ぐ必要があると判断すれば、被告にGPS端末の装着を命令できるようになりました。
そのうえで、空港や港湾施設の周辺といった「所在禁止区域」への立ち入りや、端末の損壊・取り外しを行った場合、端末が違反を検知して裁判所に通知し、身柄が確保されることになります。

このように被告人がGPSの装着をすることにより、逃亡の恐れはなくなることにはなりますが、他方で、被告人の位置情報が把握されることによりプライバシーなどの人権侵害が起こる可能性があります。
改正刑事訴訟法では、被告人のプライバシーに配慮するために、裁判所や検察官は、違反行為が行われない限りGPSによる位置情報を確認することはできないとされているようです。

アメリカの一部の州では、性犯罪等一定の犯罪を起こした人に対し、居住する場所を制限し、かつ、GPSの装着を義務付けるなど、再犯を防ぐために課しているところもあります。

保釈中の被告人にGPSの装着

犯罪をなくすという必要性と、犯罪を犯してしまった人の人権というどちらも重要な利益の衝突場面で、どういった方策が正解なのか非常に難しい問題です(よく司法試験の憲法の問題でも出題されることが多い分野です。)。 時代の変化に伴い、新しい制度や法律が制定されますが、人権を過度に侵害したものではないかという点は、法律家として常に意識していきたいと思います。

 

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