弁護士コラム

2023.03.06

タイムパラドックスと裁判

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皆さんは、過去に戻ってみたいと思ったことはありますか?
私は、高校時代、大学時代や、司法試験合格後の司法修習生の1年間非常に楽しかったため、もう一度その楽しかった経験をしたいという気持ちや、財布を落としたり、酔いすぎてしまい終電でへんぴな終点で下りて野宿するところを探したりなどいやな出来事が起きないようにしたいなと思ったりします。

先日、オーストラリアの大学で行われた研究により、タイムトラベルで過去に行った人間は、自らの自由意思に従って行動することが可能なものの、パラドックスを起こすような行動は修正され、パラドックスが発生しない結果に落ち着くことが示されました。

タイムパラドックスと裁判

タイムトラベルでのパラドックスとは、「親殺し(祖父殺し)のパラドックス」と呼ばれ、ある人物が、過去に行き、幼い自分の両親(祖父母)を殺害した場合、親を殺害した本人は生まれてこないことになり、「生まれてこない子どもに殺害された親」という背理の状態になってしまうというものです。

私自身、パラドックスについて関心があったのですが、パラドックスは生じないと聞いて少しがっかりしました。

刑事事件にしろ、民事事件にせよ、裁判では事実関係に争いがあるケースが多く(むしろほとんどがそうです。)、仮にタイムマシン等が開発され、みんなが過去に戻ることができるようになった場合には、事実関係に争いがなくなるため、弁護士の仕事や、裁判所の仕事がなくなってしまうのではないかと思います。

しかし、現時点で、過去に戻ることはできないため、裁判所において全ての事件で事実関係を確定することができないということも出てくることになります(防犯カメラ、ドライブレコーダー等があれば事実関係を確定することはできます)。

タイムパラドックスと裁判

よくご相談者様や依頼者が誤解されている点なのですが、裁判所では、厳密に、その事実があったのかなかったのかという事実を探求する場ではなく、「ある事実を証拠上認定することができるか否か」を判断する場ということです。

上記のように過去に戻ることができない以上、ある事実があったのか否かについては証拠に基づいて判断することになり、証拠に基づいて、ある事実があったのか否かについて明確に確定することができる事案ももちろんありますが、証拠が十分ではない場合もあるためある事実があったのかなかったのかわからないという状況になることも多いです。

ある事実があったのかなかったのかわからないという状態になった場合には、裁判所は「その事実があったことは証拠上認定することができない」として、その事実を証明する責任を負っている当事者に対し、その事実を認定することができないため、請求は認められないと判断することになります。

証拠上認定できないので訴訟での勝ち目はあまりないということを、ご相談者様に説明する際に「私が嘘をついているということですか!?」などとおっしゃられることもまれにあったりするのですが、上記のような説明をしっかりしてご納得いただく作業があるため、その時には、いっそタイムマシンなどで過去に戻ることができたらいいのになと思ったりもします。

 

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