動物の餌付け、していいの?

皆さんは動物を飼われていますか? 私は、子どものころ実家で猫を飼っていました。両親は今も猫を飼っているのですが、息子がひどい猫アレルギーで少しの毛でも反応してしまうため、実家に遊びにいく際は、両親が死に物狂いで、掃除機やコロコロをかけてくれています。娘は今のところアレルギーはなさそうで、たまに、「ねこちゃんやわんちゃんをかいたーい」などと言いますが、息子のアレルギーがひどいのでうちではペットを飼うのは難しそうです。
話は少しずれますが、最近、熊による被害が全国で多発していますね。熊の餌となる山の実の凶作、過疎地化による耕作放棄地の増加などにより熊が人里におりてくることで、人に被害を加えるという事件が増えてきているようで、熊の襲撃による死亡事故も多数起きている状態です。
あるニュースでは、観光客などが、熊に餌付けをしていたのではないかということが記載されていました。
自然公園法という法律で、国立公園などでは、野生動物(哺乳類、鳥類)へのみだりな餌付け行為が禁止され(37条1項3号)、違反した場合には罰金刑も定められていますが、罰則が適用されるためには職員の指示したがわなかった場合にのみ限定されているため、処罰されることは現実的には難しいのではないかと思います。
正直ニュースを見たときに、熊に遭遇して餌をあげるという行為自体なかなかできないのではないかと思いましたが、万が一そういった行為をしてしまうと、ますます熊が人里に下りてきてしまい、ますます事故が多発してしまうので、絶対やめておいた方がいいでしょう。
また、自然公園ではなく、通常の公園や街角で野良犬や野良猫、鳩などに餌をあげる行為は問題になるのでしょうか。
こうした餌やりに関して直接的に違法であると規定している法律はありません。動物愛護法で、悪臭などによる苦情が多数上がっている場合など極めて限定的な場合のみ規制していたり、一部の県において条例で禁止されている程度です。
ですが、むやみにえさを上げてしまうと、食べ残しや糞の問題、においの問題、鳴き声などの騒音問題、衛生面の問題など近隣に住む人に様々な迷惑をかけてしまうことになるため、むやみにえさを上げる行為はくれぐれもお控えいただいた方がいいと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
芸能人と事務所のトラブルについて

皆さんは、芸能人と聞くとどのような方をイメージされますか?私の小さい頃のイメージですと、「テレビに出ている人」=芸能人と思っていました。ですが、今の時代ですと、テレビ以外の様々なコンテンツが存在しており、テレビに出ていない人も、YouTuberやVTuberなども芸能人に含まれると思いますし、SNSなどのインフルエンサーも芸能人といえるのではないでしょうか。 このように、現代では、様々な人が芸能人として、活動しうる状況になっています。芸能人として活動する場合、基本的には、芸能事務所と契約を行い、事務所所属の芸能人として活動される方が多いと思います(最近では、どの事務所にも所属しないフリーの芸能人の方もいらっしゃいますね)。
事務所に所属する場合、事務所との間で契約を結ぶことになるのですが、長年、事務所と芸能人との間の契約関係には不当な慣行がありました。一般的に芸能人と芸能事務所は専属マネジメント契約を結び、事務所がテレビ局やレコード会社と出演契約などを結ぶようになります。したがって、出演することができるのか否かなどは基本的に事務所の次第になってくるので、芸能人は弱い立場に置かれやすくなっていました。
こうした力関係が問題なるのは、事務所との関係が良好な時ではなく悪化して、退所などを検討する際にトラブルに発展していました。具体的には、契約期間を定めていないにもかかわらず、事務所側が合意しない限り退所を認めない場合や、移籍・独立するとその後の芸能活動が一切行えなくなると脅すケース、芸能人の退所後、テレビ局に「退所の際にトラブルがあった」などと伝えて出演を妨げるといった行為がなされたりしていました。また、事務所に所属していた際に芸能人の方が使用していた芸名について、使用を制限され、中には、本名で芸能活動を行っていた方の本名(=芸名)の使用を事務所から制限されていた人もいらっしゃいました。
こうした、芸能人と芸能事務所の契約をめぐる不当な慣行を是正するために、政府から契約の適正化に向けた指針を公表されました。具体的には、上記のような移籍・独立した芸能人のテレビ出演を妨害するなど、独占禁止法上問題となり得る行為を明示したうえで、上記指針に反する行為がなされた場合には、公正取引委員会が厳正に対処する方針が示されました。
上記の通り、現代では様々な人が芸能人として事務所との間でマネジメント契約を締結する可能性が、あり、何も知らないでただただ事務所から言われるがままに不当な立場に置かれてしまっている人も少なくないのではないかと思います。
こうしたトラブルに巻き込まれないようにするためには、まず、契約書を作成する前に、何か不当な条項が存在しないか等を確認する必要があります。また、契約書を作成した後であっても上記のような不当な制限が契約書に記載されていた場合には、無効になる可能性もあります。
したがって、これから芸能事務所とマネジメント契約を結ぼうとする方や、現在事務所に所属している方でも、ご不安な点などがあった場合には、ぜひ弁護士にご相談されてください。
当事務所では、フレックス顧問契約という、個人の方でも利用しやすい顧問契約のシステムを採用していますので、是非お気軽にお問い合わせください。
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他人の荷物が届いたら?

皆さんは、インターネットでお買い物されていますか?わたしは、子供たちが生まれてから、家族でベビー用品を買ったり、私のランニンググッズを買ったりするときにちょこちょこ使っています。妻は、セールの時やポイントが倍増するときなどに、子供たちの服や自分も服などをまとめて買っているようです。翌月のクレジットカードの請求金額をみて、「大変だ、不正請求だ!」と思って、明細見ると、全部自分たちの買い物で、安心したような、がっかりしたような気持になります。
インターネットでの購入した商品については、宅配業者の方が自宅まで持ってきてくれて、対面で受け取りをし、不在の場合には不在票がポストに入っており、後日、再配達の依頼をするというのが、一般的なやり取りですが、最近、「置き配」といって、指定した場所に、商品をおいてもらうことで配送を完了したことにする方法もよくとられています。
こうした「置き配」は、自宅になくとも荷物を受け取ることができる点では非常に便利ですが、対面での受け取りをしないことから、誤配、すなわち、他人宛の荷物が間違って、自宅の前に置かれているといったトラブルが多くあるようです。
誤配のトラブルについては、まず、他人宛の荷物が自宅の前に置かれてしまった人が、他人のものと知りながら、自分のものとして処分(使ったり、食品を食べること)した場合には、民事上の損害賠償請求の対象となってしまうだけでなく、刑法上の、遺失物横領罪として犯罪となってしまいます。これに対し、他人のものと知らずに開けてしまったというだけであれば、犯罪にはなりませんし、損害賠償の対象にもならないでしょう。ただ、この場合でも、他人のものと気づいたあとに、自宅で保管し続けるような場合には、自分のものとする意思があるものとして、上記は遺失物横領罪となってしまう危険性があります。したがって、他人宛の荷物が届いた場合には、開けたりするのではなく、直ちに配送業者などに連絡して、間違って届いていることを伝えた方がいいでしょう。配送業者が誰か連絡先が分からない場合には、警察に誤配されたと届け出て遺失物として処理してもらうようにしましょう。
これとは逆に、注文をしたのに、他の人の自宅に届けられてしまった人は、購入先や、通販サイトに対し、再度、同じ商品を配送するよう求めることができます。これは、通販での購入という契約の性質上、売主には、買主が指定した場所に、購入した商品を届ける義務があるため、誤配の場合にはその義務を果たしていないため、再度、届ける義務があるためです。
このような、インターネットでの通販については、商品を実際に手で触ってみることができないことや、配送間違いなど、トラブルが起きやすいので、自身が使う際にも、トラブルに巻き込まれないよう慎重に取引した方がいいなと思いました。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
被疑者?容疑者?メンバー?

先日、某ダンス&ボーカルグループの方が、罪を犯し、検察庁に書類送検されたというニュースを目にしました。そのニュースでは、書類送検された人のことを「○○メンバー」と記載していました。以前、ほかのニュースでもアイドルグループの人やお笑い芸人などが書類送検された際にも「メンバー」と記載されていたのを目にしたことがあったため、なんでこのような呼称になっているのか気になりました。
まず、事件を起こした人などについて、法律上存在する呼称は「被疑者」と「被告人」の2つしかありません。「被疑者」とは、起訴される前の状態で、犯罪の疑いをかけられて、捜査の対象となっている人のことをいいます。交通事故で、お相手の方を汚させてしまった際には、過失運転致傷罪という犯罪の疑いがあり、捜査の対象となるため、被疑者となってしまいます。また、「被告人」とは、検察から起訴された人のことをいいます。
このように、法律上では、起訴される前で、捜査の対象となっている人は全て被疑者であるため、上記書類送検された人たちについても「○○被疑者」と呼称することは法律上間違ってはいません。
しかし、共同通信社発行している「記者ハンドブック」という記事を書く際の統一的なルールをまとめた本(記事をわかりやすく読みやすくするために、用語の統一を図るためのもので、新聞だけではなく多くの媒体で参考にされているようです。)の中では、
「実名を出す場合の任意調べ、書類送検、略式起訴、起訴猶予、不起訴処分」の場合、「肩書」または「敬称(さんや氏)」を原則とする。
と記載されています。これは、書類送検などは逮捕と違い、全ての刑事事件で行われる手続きであり、罪を認めている場合でも、逮捕とは違い、逃亡や証拠隠滅の恐れがない場合に取られるものであるため、人権に配慮して、「肩書」などで呼称しているようです。逆に、逮捕状がでた指名手配犯、逮捕された場合には「容疑者」という呼称を使用するようですが、この「容疑者」という言葉は、法律上の言葉ではなく報道機関が独自で使用している用語になります。
したがって、冒頭のアイドルグループ等の場合でも、「さん」での呼称は不自然であるため、肩書として「メンバー」と記載しているとのことでした。
そもそも、厳密にいうと、起訴されたからといって、その人が本当に悪いことをしたか(罪を犯したか)はまだわからない状態であり、裁判で有罪の判決が確定して初めて、罪を犯したか否かが決まることになります(これを「推定無罪の原則」といいます。)。ですが、ニュースで「容疑者」などとインパクトのある呼び名が記載されているのを見ると、「悪いことをした人」というイメージが強くなってしまうと思うので、ニュースなどの呼称については、ちゃんと配慮されているのだなと勉強になりました。
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傘の持ち方にはご用心

またまた、私事から始まり恐縮ですが、前にも少し話していた趣味のランニングですが、今年の11月9日に行われる福岡マラソンの抽選に当選しました!!(倍率2倍以上だったため、だいぶうれしいです。)。目標のサブ3.5(3時間半切り)を実現するため、今から少しずつ走っているのですが、6月から異常なくらい暑くて、早朝出ないとしのげない日が続いています。
日中はとても暑く、歩いていると、大人の女性だけでなく、男性や、小学生なども日傘をさしているのを見かけます。
梅雨も明け、日傘の需要も増え、また、夏は台風の季節でもあるため、これからも傘が活躍する季節となりますが、先日、傘の「横持ち」、すなわち、傘を横向き(武士が剣を腰に携えるような形ですね。)で持った際に、背後にいる人にどの程度の衝撃が加わるのかという実験を、東京都が行い、その結果を公表したというニュースを目にしました。
その実験では、振り子の装置を使用し、歩行中に衝突した状況を再現したものであり、衝突の際の衝撃は最大で240kgfで、これはピアノ1台分の衝撃力であるとのことでした。
通勤ラッシュの際にはみんな急いでおり、腕を振って歩く際、横持ちをしている傘の先端が、後方にいる人の身体に当たった場合には、骨折や失明など重傷を負わせてしまう危険性があるとのことでした。
このように、傘を水平に横持ちして、背後の人にぶつかってケガさせてしまった場合には、刑事上は過失傷害罪(刑法209条1項)、過失の程度が重ければ重過失傷害罪(刑法211条後段)が成立することになります。自分は傘を持っていただけでなんで罪に問われなければならないのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、人がいる場所において、傘を水平に持つこと自体が危険な行為であるということについては、容易に認識できることであるため、横持ちをしていること自体が過失と判断されてしまうでしょう。
また、上記の刑事責任だけではなく、不法行為に基づく損害賠償請求として、治療や、入通院の慰謝料を支払う義務が生じます。特に、ケガが上記のような失明や骨折など重大なものになってしまった場合には、多額の賠償責任が発生するリスクがあります。
このように、単に傘を水平に持っていただけで、多大な損害が発生するリスクがあります。特に、小さいお子さんなどは、傘の持ち方がさだまっていなかったり、振り回してしまう子も少なくないため、きちんと指導したり、注視していないと、親御さんが賠償責任を負うことになってしまうため、注意が必要です。
日常生活の必需品となっている便利な傘ですが、わずかな油断で重大なトラブルに巻き込まれてしまう恐れがあるので注意が必要です。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
自転車の運転にはご注意を

いきなり私自身の話で恐縮ですが、私は、当事務所に入所する前は、長崎県佐世保市の法律事務所で弁護士をしていました(東京出身の私がなぜ長崎の最西端で弁護士をすることになったのかについては、とてもここでは書ききれないので割愛させていただきます。)。佐世保で一人暮らしをする際、東京で住んでいた時の感覚で、家具や家電を購入する際、一緒に自転車を購入しました。それを当時の事務所の人に話したら「自転車なんて使うことないよ」と言われました。佐世保もそうですが、長崎は、坂が非常に多いため、あまり自転車を使う人はいないようです。現に私も佐世保では坂が多く、ほとんど自転車を使いませんでした。
今は福岡でしていますが、福岡は逆に自転車で移動されている方が非常に多いと感じます。シェアリングサービスで自転車を利用される方も多いように思います。
そんな自転車ですが、来年(2026年)4月1日から、悪質な自転車の運転に対する取り締まりが強化されます。具体的には、反則金といって、違反した内容に応じて定められている金銭を支払うことで刑事裁判を受けなくて済むという取り締まりが始まることになりました。いわゆる「青切符」というものが自転車の運転でも切られるようになりました。そして、2025年6月17日に、道路交通法施行令改正案が閣議決定され、取り締まり対象となる行為や反則金の金額が決定されました。
主な青切符と対象となる行為と反則金は以下の通りです。
・スマホを見ながら運転するなどの「ながら運転」:1万2000円
重大な事件の要因となるため(実際にスマホを見ながら自転車を運転し、歩行者に衝突し、歩行者が死亡してしまった事故も起きています。)高額に設定されています。
・イヤホンで音楽を聞きながらの運転:5000円
・夜間の無灯火での運転:5000円
・信号無視:6000円
それ以外には、逆走(右側を走行)する行為や、歩道走行等の通行区分違反行為については6000円の反則金が設定されています。
この歩道走行については、すべてが禁止されるのかという意見や歩道が危険な場合に歩道を走行した場合にも違反になるのかなどの意見(パブリックコメント)が警察庁に寄せられました。
そこで、警察庁からは、歩道通行のルールが示されました。
まず、自転車は道路交通法上「軽車両」に分類されています。そのため、道路交通法17条1項により、歩道と車道が区別されている道路では、自転車は原則として、車道を走行しなければならず、歩道を走行できるのは、「普通自転車歩道通行可」の標識がある場所でのみとなります。
それに加えて、今回の警察庁から示されたルールでは、3歳未満の子ども、70歳以上の高齢者の場合や、工事などをしており、車道通行が危険な場合、車道が狭くて危ない場合などには、車道を走行しても、取り締まりの対象外となるとされています。
また、歩道走行をした場合のすべてを取り締まるのではなく、「悪質なケース」を取り締まり対象としているとのことでした。「悪質なケース」の具体例としては、スピードを出して歩行者を驚かせた場合、警察官の警告に従わない場合、事故に直結するような危険な運転をした場合などが挙げられています。
この「悪質なケース」に該当するか否かについては、非常にあいまいで、取り締まる警察官次第で基準が変わってきてしまう恐れがあるのではないかと思います。
ですが、自転車といっても上記の通り、軽車両であり、危険な運転をすれば重大な事故を起こしてしまう危険なものであるという意識をもって、安全に運転するようにしたいですね。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
無料求人広告でトラブルが起こったら?「掲載無料」と言われて高額請求されたときの対処法を判例をもとに解説
「無料だから安心して掲載したのに、突然高額な広告費用を請求された」──そんな相談が近年急増しています。
本コラムでは、無料求人広告を巡り広告費用の請求が棄却された代表的な裁判例を解説したうえで、請求書が届く前後で取れる具体的な防御策をまとめました。
請求に疑問を感じたら支払う前に必ず証拠を集め、弁護士へご相談ください。
1. 無料求人広告トラブルの全体像と初動対応
無料求人広告とは、「掲載料ゼロ、採用決定時のみ成果報酬」というモデルが主流です。多くは電話・飛び込み営業で契約が始まり、ウェブ上の管理画面で求人票を公開する仕組みになっていますが、広告料金を巡ってトラブルになるケースも多くなっています。
トラブルの典型的な例としては、①完全無料のはずが採用後に高額の成功報酬を請求される、②トライアル終了後に自動で有料プランへ切替わる、③成果が出ないまま最低契約期間を理由に費用が発生するというようなケースです。
また、解約・掲載停止の際も、オプトアウトの期限が短い、FAX解約しか認めない、解約書類の受領日を巡って主張が対立するなど、解約手続条項の不備によるトラブルも多くなっています。
このような無料求人広告に関するトラブルが発生したら、必ず請求された費用を支払う前に弁護士に相談をされてください。
関連記事:無料求人広告の「無料」は要注意?被害事例と対策を那珂川の弁護士が解説
2. ケーススタディ:無料求人広告トラブルの代表的な裁判例
2-1. “無料3週間→自動で1年契約”は説明不足で無効
・東京地裁令和元年9月9日判決(平成31年〈ワ〉4528号)
3週間の無料掲載期間が過ぎると、解約手続きをしない限り自動で1年分の広告料(約60万円)が発生する仕組みだったケースです。営業担当は無料期間だけを強調し、有料期間への切替と高額請求の仕組みを口頭で一切説明していませんでした。裁判所は「利用者に本質的な負担を知らせないまま契約させるのは社会常識に反する」として契約全体を公序良俗違反で無効と判断。広告会社の請求を全面的に退けました。
2-2. 求人内容が確定せず“停止条件不成就”で支払義務なし
・東京地裁令和元年11月13日判決(令和元年〈ワ〉7890号)
こちらは「無料掲載→有料移行」モデルですが、広告主が掲載する求人内容を最終確定しないまま請求書だけが送られてきたケースです。裁判所は「求人原稿が確定して初めて契約の効力が発生する」という停止条件を読み取り、条件が成就していない以上、支払い義務は発生しないと判断。広告会社の請求を全面否定しました。
2-3. 有料契約へ自動移行する契約であることを一切理解しておらず、詐欺認定
・那覇簡易裁判所令和3年10月21日判決(令和3年〈ハ〉204号)
電話営業で「完全無料・期間無制限」と案内され求人広告に申し込んだところ、その後に広告掲載料を請求されたケースです。店舗側は「無料と聞いていた」と支払いを拒否。 裁判所は①営業トークの録音で「ずっと無料」という部分のみを強調していたことが確認できた、②無料期間掲載終了後は自動的に有料掲載に移行するという説明がなく有料契約に自動移行するという契約になっていることを全く認識していなかったという事実より、広告会社側の詐欺を認定し、契約の取り消しを認めました。
特徴的なのは、簡易裁判所が「零細事業者であっても消費者に近い立場であり、情報の非対称性が大きい」と指摘し、契約書よりも営業現場での説明内容を優先した点です。
3. 無料求人広告を利用する際のリスク低減策とは?
3-1. 広告業者からの説明内容は録音・書面両方で記録を取る
那覇簡令和3年10月21日判決では、営業担当が電話で「完全無料」と強調した録音が決め手となり、広告会社側の詐欺が認められ、契約取消の判断がされました。
このように、営業担当者からの説明内容を明確に記録しておくことで証拠として使用できますので、録音・書面等できちんと残しておきましょう。
3-2. 「無料期間後に自動で有料化」を防ぐための事前確認
求人広告の契約前には必ず以下の点を確認しておきましょう。
・無料終了日と課金開始日が書面に明記されているか確認する
・「自動切替を了承します」というような記載がないか
・不明点はその場でメールで問い合わせ、回答も保存する(電話ではなく、文章として残しておいた方が良い)
4. 本コラムのまとめ:認識と違う請求をされたら支払う前に速やかに弁護士に相談を
「無料のはずが高額請求」「説明を受けていない自動更新料金」など、契約内容と食い違う請求書が届いたら、まずは入金を止めてください。一度支払ってしまうと返金交渉は難航しがちです。
弁護士名で内容証明を出すなどの法的対応を行うことで、請求側が減額・取り下げに応じる確率も大幅に上がります。
既に請求を受けてしまった場合は、できるだけ早めに弁護士へご相談ください。
ネタバレは違法?

みなさんは、マンガやアニメは見られますか?
私は、37歳ですが、恥ずかしながらまだマンガを結構見ています。子供のころ、大人になって家庭を持つようになったらマンガも卒業しているんだろうなと漠然と思っていました。ですが、今では、いったいいつになったらマンガやアニメを卒業できるんだろうかと思っています。
マンガやアニメだけではなく、映画などでも問題となる「ネタバレ」という言葉があります。文字通り、話の内容や、結末などのネタをバラされることをいいます。
私が子どものころは、インターネットがここまで普及していなかったので、ネタバレといっても、いち早く少年ジャンプを読んだ友達が、内容を言ってしまうというようなかわいいものでした。
ですが、現代では、インターネットが普及してきているので、単にネタバレと言っても様々なものがあるようで、法律上問題となる行為もあるため、今回ご紹介させていただきます。
まず、マンガやアニメなどの1話すべてをそのまま動画サイトやネットにアップロードするものですが、これについては、著作権を侵害する違法行為で、そういった行為を行っている人やサイトを運営している人が著作権法違反で逮捕されているニュースなどは皆さんも、目にされたことがあるのではないでしょうか。
次に、マンガやアニメの1話全てではなく、その一部(マンガのある部分の1ページやシーン)をSNSやブログに掲載する行為があります。まず、マンガの1コマや、1シーンであっても、そのマンガ内における創作的な表現行為として著作権の対象となりえます。
したがって、そういったものをSNSやブログに無許可でアップロードする行為は著作権法に反する違法な行為となるのが原則です。
なお、こういったサイトを運営する人達の言い分としては、著作権法により規定されている「引用」行為に該当するため、著作権法に反しないというものがあります。たしかに、著作権法32条の「引用」に該当する場合には、他人の著作物であっても許可なく利用することができます。しかし、引用と認められるためには、様々な要件があるのですが、マンガの1ページを掲載する必要性があるかという点で疑わしいため、正当な目的とは認められないケースが多いのではないかと思います。
映画の映像を無断で短く編集し、字幕やナレーションをつけて、映画の内容を短時間でまとめたいわゆる「ファスト動画」を動画サイトにアップロードしたことで、逮捕された人のニュースを見られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、最近では、文字バレというネタバレの手法があります。これは、上記のように、マンガの1ページやコマを掲載するのではなく、マンガやアニメ、映画全体の詳細な内容について文書のみ掲示するというものです。画像や動画じゃなく、文字だけであれば問題ないだろうという考えのもと文字バレサイトを運営しているのだと思います。
ですが、文字だけであっても、マンガや映画のストーリーや物語の展開についても、その作品が持つ創作的な表現部分として、著作権の対象になります。
最近では、こういった文字バレのサイトを運営していた人も著作権法違反で逮捕されています。
他方で、上記のようなネタバレサイトと異なり、単に、抽象的なあらすじを説明するだけのものや、キャラクターの一部の決め台詞をつぶやいたりするだけは、著作権侵害とはなりません。
ですが、マンガですと週刊誌派と単行本派で分かれているように、単行本がでるまで待っていたいという人もいるため、一部であっても物語の核心部分の内容のセリフ等の場合には、マナー上の問題があるかなと思うので、なるべくネタバレはしない方が得策かなと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
リベンジ退職とは?

先日、4月5月は退職代行サービスへの問い合わせが増えているとのニュースを目にしました。5月で連休が入り、一切仕事をしなくなると、いわゆる5月病という形で仕事へのモチベーションが下がってしまったり、このままここで働いていいのだろうかなどと悩んで、退職を決意するという人が多いのではないかと報じられていました。
ニュースでも議論されていましたが、昭和や平成の頃は、退職するという状況がきわめてまれであり、終身雇用制度の前提として、多少の不条理があっても我慢して働き続けるというのが当たり前だったのが、最近では転職することが当たり前というような風潮になってきているため、退職される方が多いのではないかとのことでした。
そんな中、最近、「リベンジ退職」という言葉が流行っているとこれまたニュースで報じられていました。「リベンジ退職」とは要約すると、会社に悪感情を持った従業員が、会社に迷惑をかける形で退職することを指すそうです。そのニュースの中ではリベンジ退職について、様々なケースが紹介されていたので、各ケースで法律上どのような問題があるのか解説していきたいと思います。
ケース1 優秀になって退職
そのケースでは、会社の対応などに不満を持ち、やめることを決意した従業員の人が、そこから約2年、必死に仕事を頑張り、とても優秀になり、会社での重要なポスト等を任される段階になって退職するというものでした。会社はとても重要なポストについている従業員が退職されては困るため、退職を慰留したのですが、結局その人は退職し、きちんと引継ぎはなされたものの、その人が担っていたポストをこなせる人材がおらず、会社が混乱したということでした。
このケースでは、法律上問題となる場面は何ら存在しません。このポストについたから退職できないなという決まりは一切無く、退職については、民法に基づく期限内に退職の意思を伝えれば何ら問題なく退職することができます(個人的にはやめるのを決意してから何年も働けるのであれば、そのまま働き続けた方がいいのではないかとも思いました。)
ケース2 繁忙期に退職
そのケースでは、退職を決意した人が、その会社で、一番の繁忙期のさなかに退職を申し出て退職をしたというもので、人員不足などにより会社が混乱したというものでした。
このケースも上記と同様繁忙期に退職してはいけないという決まりは一切ありません。民法672条では、期間の定めのない社員(一般でいうところの正社員)は退職する2週間前に申し出ることが必要であり、繁忙期であっても退職を申し出てから2週間経過すると退職が認められます。
よく、会社から人手不足になってしまうので、やめられては困るなどということが言われますが、厳しい言い方になってしまいますが、人員不足はあくまでも会社側の責任であるので、人員不足を理由として退職を止めることはできないのです。
ケース3 SNSに投稿
そのケースでは、会社を退職した従業員が、匿名でSNSで「会社がパワハラをしている」「下請けいじめをしている」などと、事実に反する投稿を行うというものが紹介されていました。
このケースは退職云々ではなく、単純に名誉毀損行為であり、犯罪かつ損害賠償の対象になるケースです。近年では匿名で投稿していても、発信者情報開示請求などにより投稿者を割り出すことが可能になっているため、会社に対して何か悪感情を持たれている場合であってもこのような行為はくれぐれもお控えいただいた方がいいでしょう。
※もっとも、本当にパワハラを受けていたり、給料が支払われていない等会社が違法行為を行っている場合には、弁護士に相談いただいたり、労働基準監督署などに相談することは何ら問題ありません。
今回は、リベンジ退職についてケースごとにお話しさせていただきました。立つ鳥跡を濁さずという言葉があるように、やめる際には、少しでもお世話になった会社に迷惑をかけないようにという考えが一般的かと思ったのですが、最近の人の感覚は少し違うようで、少し残念だなという気もしています。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
ストリートピアノと著作権?

皆さんは、「ストリートピアノ」はご存じでしょうか。 駅や、施設においてあるピアノで、許可された時間であれば誰でも弾いてよいピアノのことであり、上手な方が、突如ストリートピアノで有名曲を弾き始め、人だかりができるという動画を見られた方も少なくないのではないでしょうか。 私も小さいころ、エレクトーン教室に通っていたことがあるのですが、今でも楽譜は一切読めず、即興で演奏などもできないので、ストリートピアノとは無縁な生活を送っています。
ストリートピアノで演奏する際に、JPOPや洋楽などをアレンジして弾かれる方もいらっしゃると思いますが、あるとき、「これって著作権とはかは問題にならないのかな」と思い、調べてみることにしました。
まず、著作権法22条では
「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を有する。」
と規定されており、公の演奏、すなわち、不特定多数の公衆に聞かせることを目的とした演奏の場合には、著作権者の許諾が必要となります。 この規定だけをみると、ストリートピアノで演奏する場合にも著作権者の許可が必要になるように見えます。 しかし、著作権法上、公の演奏が、①営利を目的とせず、②聴衆又は観衆から料金を受けず、③演奏している人に対し報酬が支払われない場合には、著作権者の許可を得ずに演奏することが認められています(著作権法38条1項)。
したがって、ストリートピアノを演奏する方の場合、営利目的ではなく、お客さんや料金はもらわず、かつ、演奏の報酬ももらっていないため、手続きをすることなく演奏をすることができます。
しかし、ピアノが設置されている場所がショッピングモールなどの商業施設の場合、ピアノを設置することで、お客さんを誘引しているとして営利目的が認められ、商業施設側が許可を得なければならないという可能性もあります。 難しいお話になってしまうかもしれませんが、演奏する主体が、演奏者自身なのか、それとも場を提供している商業施設なのかという論点になります。 この点については、裁判例などがあるわけではないため、あくまでも私自身の見解とはなってしまいますが、そのピアノでどういった曲を演奏するのかについて、商業施設側では何ら指示などもないため、あくまでも演奏主体は、演奏者自身であり、商業施設側で特段手続きをする必要はないと思います。
このように、ストリートピアノでの演奏については、原則として手続きは不要となります。 しかし、演奏している方が、その様子を動画に収め、動画配信サイトで配信する場合には、営利目的があるため、著者区権者の許可が必要になります(ただし、基本的に動画サイトなどが、一括で許可を得ているケースが多いため、個別の手続きは不要であることが一般的です。)。
日常的な出来事をみて、法律的にどうなのかなと思ってしまうのは、弁護士の職業病なのかもしれませんが、何気なくしてしまった行為が法律に反し、刑罰や賠償金を払うなど不利益を被ってしまう可能性もあるため、皆さんもこれ大丈夫かなと思うことがあれば、行動する前に調べたり、弁護士に相談することをお勧めします。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。















