弁護士コラム

2026.01.15

離婚調停で母親が親権を取れないことはある?不利になるケース・状況を弁護士が解説


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離婚調停で母親が親権を取れないことはある?不利になるケース・状況を弁護士が解説

 

近年の裁判所は、母親というだけで親権を判断せず、より具体的な子どもの利益を重視する傾向になっています。
母親であれば親権は取れるはずと思っている方も多いかもしれませんが、実務の現場では、母親側が思わぬ理由で親権を断念せざるを得なくなるケースも起こります。
この記事では、母親が親権争いで直面するリスクや、不利になりやすいシチュエーション、後悔しないために確認すべきポイントについて弁護士がわかりやすく解説します。

第1章 母親が親権を確保できない事態はなぜ起こるのか

1-1. 性別よりも実際の育児実績と子の利益が重視される傾向

現代の離婚調停において、裁判所が親権者を決める基準は「子の利益(子の福祉)」です。これは、どちらの親と暮らすことが子どもの幸せに繋がるかという視点です。
かつて裁判実務上重視されていた「母性優先の考え方」により母親が有利な傾向にありましたが、現在はそれだけで決まることはなく、これまで誰が食事や寝かしつけ、通院などの育児を主導してきたかという具体的な監護の実績がより多角的・実質的に評価されるようになっています。
まずは、母親であるというだけで自動的に親権が決まるわけではないことを理解しておく必要があります。

1-2. 「母親だから有利」という甘い見通しによる準備不足

生活設計が不明確、離婚後の育児体制を具体的に練れていないなどお子さんの養育に関する準備が不十分な状態で、母親だからおそらく大丈夫だろうとして調停を進めてしまうのは少し危険です。
父親側が同じように親権を欲しいと思っているときに、綿密な養育計画や親族のサポート体制を整えて調停に臨んだ場合、こうした差があると、調停委員や裁判官に対して父親の方が子どもを育てる覚悟と環境が整っているというような印象を与えてしまい、結果として不利な判断を下されるリスクが高まります。

第2章 母親が親権を取れない可能性がある養育環境の例と解決のためのヒント

2-1. 深夜勤務や不規則な就労による直接監護の困難さ

仕事を持つ母親が親権を争う際、懸念されるのが就労形態です。働いていること自体が不利になるわけではなく、深夜まで及ぶ勤務や、休日が不定期で子どもとの時間が確保しにくい状況は、裁判所から「直接の監護(日常的な育児や生活の世話、見守り)が困難である」と見なされる要因になります。
特に、子どもがまだ幼い時期に、母親が夜間に家を空けざるを得ない場合、その間の監護を誰が行うのかは厳しく問われます。

解決のヒント

まずは勤務先に相談し、育児短時間勤務や始業・終業時刻の変更が可能か確認してみましょう。調整が難しい場合は、実家の両親による送迎や宿泊を伴う協力体制を具体化し、書面で提示することが有効です。また、病児保育や民間のベビーシッターなどを利用登録し、具体的な緊急時のフローを可視化しておくことで、直接監護の不足を補う姿勢を示すことができます。

2-2. 経済的な困窮により住居や食事を提供できない状況

親権の判断において、親の年収の額がそのまま決め手になることはほとんどありません。経済力に差があっても、養育費の支払いなどによって補完されるべきと考えられているからです。
しかし、母親側の収入があまりに不安定で、生活保護基準を大きく下回るような困窮状態にあり、かつ実家などの支援も期待できない場合はその限りではありません。
たとえば、定まった住居がなくネットカフェを転々としている、子どもに適切な食事を満足に与えられないといった実態がある場合は、親権者としての監護体制に慎重な判断がなされる可能性があります。

解決のヒント

現在の収入が低くても、離婚後に受け取れる養育費や児童扶養手当、児童手当などを合算した「将来の家計収支見込み」を詳しく算定しましょう。住居については、公営住宅への入居申し込みや、実家での同居など、安定した居住基盤が確保できることを証明する必要があります。自治体の福祉窓口で利用可能な公的支援制度を把握し、生活再建の具体的な計画を立てることから始めましょう。

2-3. 親族からの協力が得られず、母親一人での育児環境

母親がフルタイムで働きながら一人で子どもを育てる場合、裁判所は、子どもの発病や母親の残業など、突発的な事態になった場合のサポート体制を問う傾向があります。
近隣に頼れる親族がいないようなほぼ母親だけでの育児環境になるような場合は、少し注意が必要です。特に、父親側の実家が強力な育児支援体制をアピールしている場合、ここの充実度の差が判断に影響を与える可能性があります。

解決のヒント

遠方などで親族の協力が物理的に得られない場合は、地域のファミリーサポートセンターや民間サービス、放課後児童クラブなどの複数を組み合わせ、突発的な事態が起こった際のサポート体制をつくりましょう。可能であれば、実際に面談などを済ませ、離婚後に実際に利用ができるということを具体的に提示できると監護体制を整えようとしているということへの信憑性も高まります。

2-4. ギャンブルや過度な浪費癖などの生活態度

母親自身の生活態度に著しい問題がある場合も親権獲得には不利にはたらきます。代表的なのは、パチンコや競馬などのギャンブルにのめり込み、育児放棄(ネグレクト)に近い状態になっているケースや、借金を繰り返して家庭生活を破綻させているケースなどです。
こうした行為は、「子どもに適切な生活習慣を身につけさせることができない」という判断を促す傾向があります。また、自宅がゴミ屋敷化しているなど、衛生環境を維持できない場合も、子どもの心身の健康を損なうおそれがあるとして、親権者としての適格性を否定される要因になりやすいといえます。

解決のヒント

過去に問題があったとしても、現在は改善されていることを客観的に示す必要があります。家計簿をつけて支出を適切に管理している事実や、借金の完済証明、依存症克服のためのカウンセリング受診記録などが客観的な資料になり得ます。
自宅の清掃状況を写真で記録するなど、衛生環境を維持できているということを客観的に証明することも有効です。

2-5. 安全確保が難しいと判断される精神的な疾患

うつ病や統合失調症など母親が精神的な不調を抱えている場合、病状の程度によっては親権判断において慎重に検討される対象となる場合があります。
ただし、病気であること自体を理由に即座に親権を失うわけではありません。裁判所が検討対象とするのは、病状が「子どもの安全な養育を妨げる要因になっていないか」という実態です。たとえば、幻覚や妄想によって子どもに危害が及ぶおそれがある場合や、重度の意欲低下により子どもの食事や衛生管理ができないなどの状況があれば、親権獲得が難しくなる可能性があります。

解決のヒント

主治医による「適切な監護が可能である」旨の診断書や、治療に前向きに取り組んでいる通院実績を提示しましょう。また、体調が優れない時に育児を代行してくれる親族や福祉サービスとの連携が取れていることを明確に示すことも大切です。

第3章 不倫をした母親の親権獲得は難しいのか?

3-1. 離婚原因としての不倫と親権判断は別問題

法律相談の場でよくある誤解が、「不倫(不貞行為)をした親は親権を持てないのではないか」というものです。法律上の原則としては「不倫という離婚原因を作ったこと(有責性)」と「親権者としての適格性」は別問題とされています。つまり、夫以外の男性と関係を持ったからといって、それだけで即座に親失格という判定が下るわけではないということです。
不倫はあくまで夫婦間の問題であり、子どもへの愛情や適切な監護が行われている場合、親権が認められるケースはあります。

3-2. 不倫が親権判断に影響するケース①:不倫相手を優先し、子どもの食事や身の回りの世話を怠った場合

一方で、不倫が親権判断に直結するケースもあります。
それは、不倫行為によって「子どもの監護がおろそかになっている」場合です。たとえば、不倫相手と会うために夜な夜な子どもだけで留守番をさせたり、不倫相手との時間を優先して子どもの食事を作らなかったり、保育園の送迎を忘れたりといった事実がある場合です。
このような場合は、裁判所から監護能力に欠けると評価され、親権獲得が難しくなる可能性があります。

3-3. 不倫が親権判断に影響するケース②:子どもの前で不倫相手と接触するなど精神面に悪影響を与えた事実

さらに深刻なのは、不倫相手を自宅に連れ込み、子どもの目の前で接触を持つようなケースです。こうした行為は、子どもに多大な心理的ストレスを与え健全な発育を阻害するものとして、親権判断において心理的虐待に近い行為と見なされる可能性があります。
また、不倫相手が子どもに対して暴言を吐いたり、不倫相手による子どもへの体罰を母親が黙認したりしている状況が客観的証拠をもとに認められた場合、母親の親権確保は非常に難しくなるといえます。
親権判断は常に「子の利益」に立ち返るため、母親の行動が子どもに直接的な悪影響を及ぼしているかどうかが判断の境界線となります。

第4章 一定の年齢に達している子どもの希望が尊重され親権判断に影響があるケース

4-1. 10歳以上の子どもが「父親と暮らしたい」と明確に希望した場合

子どもが一定の年齢(おおむね10歳以上、特に法的に意思が尊重される15歳以上)に達している場合、親権判断における子ども自身の意思の重要性は高まります。
子どもが「お母さんとは一緒に暮らしたくない」「お父さんと暮らしたい」とはっきり意思表示した場合、たとえ母親側に大きな落ち度がなくても、子どもの意思に反して母親を親権者とする判断が慎重に検討される傾向が強まります。思春期を迎えた子どもの場合、無理に母親との生活を強いることは、子どもの精神的な不安定さや、非行などを招くおそれがあると判断される傾向があるからです。

4-2. 子どもの意向を無視し、母親の都合で転校などを強いるような場合

お子さんが「今の学校に通い続けたい」「この町を離れたくない」という強い希望を持っているとき、母親のもとで養育をすることで転居や転校が発生するような場合は、親権判断において影響が出る可能性があります。
裁判所は、子どもの生活環境の継続性を重視するため、母親が親権者になることでお子さんの生活基盤が大きく壊れてしまうような場合は、その判断が慎重になる場合があります。

4-3. 子どもの母親に対する「本音」が調査官に認定されたとき

調停の中で、家庭裁判所の調査官が子どもから直接話を聞く状況も起こり得ます。その際、子どもが母親に対して強い恐怖心を抱いていたり、あるいは極端に冷淡な態度を示したりすることがあります。
その原因が、過去の過度な叱責や感情的な爆発、あるいは「母親の顔色を常に伺わなければならない」という圧迫的な家庭環境にあったと調査官が判断した場合、母親への親権指定は回避される傾向にあります。
子どもが母親の前では「お母さんといたい」と言っていても、調査官との面談で本音が明らかになるケースは少なくありません。

第5章 不利な状況を回避し、子どもとの生活を守るために

現代の離婚調停において母親が親権を確保するためには、「母親であること」だけに甘んじず、以下のような点に留意する必要があります。

• 「子どもの利益」を最優先する裁判所の視点を理解する
• 仕事と育児を両立させるための具体的かつ現実的な養育計画
• 自身の健康状態や生活態度が子どもに悪影響を与えていないか客観的に見つめる
• 子どもの意思が尊重されることを理解し、子どもの気持ちを置き去りにしない

ただし、親権の判断は個々の家庭の事情により大きく異なります。本記事の内容がすべてのケースに当てはまるわけではないため、具体的な状況については弁護士へ個別に相談することをおすすめします。
私たちNexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスは、地域に根差した弁護士として、お一人お一人に沿った最適な戦略を提案いたします。大切なのは、「親権を取れないかもしれない」という不安を一人で抱え込まないことです。自信を持ってお子様との新しい生活に踏み出せるよう、私たちが全力でバックアップいたします。まずはお気軽にご相談ください。

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2026.01.10

親権を左右する離婚調停の判断基準|後悔しないための準備と裁判所の判断基準を弁護士が解説


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親権を左右する離婚調停の判断基準|後悔しないための準備と裁判所の判断基準を弁護士が解説

 

離婚調停において、親権を誰が持つのかという判断は、ただの感情や親の事情ではなく、裁判所が定める「子の利益」という客観的な基準によって決まります。本コラムでは、すでに調停に臨んでいる、あるいは直前に控えている方が、有利な心証を得るために不可欠な監護実績の証明方法から家庭裁判所調査官調査への対応まで、実務に即した重要ポイントを弁護士が詳しく解説します。

第1章 離婚調停で親権を勝ち取るための核心「子の利益」の原則

離婚調停において、裁判所が親権者を指定する際の基準となるのは「子の利益(子の福祉)」という考え方です。これは、どちらの親と暮らすことが子どもの心身の健やかな成長にとってより望ましいか、という視点を指します。「子の利益」は多角的な状況から総合的に判断されますが、実務上、まずは以下のような視点が重視される傾向にあります。

1-1 生活環境の安定性を重視する継続性の原則への対応

裁判所は「現在の安定した生活環境をみだりに変えないことが子どもの心身の成長に望ましい」と考える傾向があり、これを「継続性の原則」と呼びます。現在、子どもと一緒に暮らし、平穏に生活できている事実は親権判断において有利な要素となり得ます。逆に、別居期間が長くなっている場合は、自分と暮らす環境がいかに子どもにとって最適であるかを客観的に説明する準備が必要となります。

1-2 これまでの関わりを重視する「監護実績」の視点

かつては「乳幼児には母親が必要」という母性優先の原則が強く意識されていました。しかし現代では、性別そのものではなく「これまで実際に誰が子どもの日々の生活を支えてきたか」という監護の実態がより重視される傾向にあります。食事、寝かしつけ、通院、学校行事への参加など、具体的な育児をどちらが主体となって担ってきたかが重要なポイントとなります。

1-3 子どもの年齢に応じて尊重される「本人の意思」

子どもがある程度の年齢に達している場合、本人の気持ちも重要な判断材料になります。法的には15歳以上の子どもについては意見を聴くことが義務付けられていますが、実務上は10歳前後、あるいはそれ以下の年齢であっても、家庭裁判所調査官による調査などを通じて、子どもの真意が慎重に確認される場合があります。その意思が必ずしも最終判断を左右するわけではありませんが、他の事情と併せて総合的に判断する際の判断材料の一つとなります。

1-4 兄弟姉妹を離さない「不分離の原則」

「兄弟姉妹は可能な限り一緒に育つのが望ましい」という考え方も、裁判実務において考慮される視点の一つです。特別な事情がない限り、兄弟を引き離して別々の親が引き取るという形は避けられる傾向がありますが、それぞれの年齢や意思、これまでの監護状況によっては例外的に分離が検討されることもあります。
複数の子がいる場合は、全員を育てるための具体的な体制が整っていることを示すことが望ましいでしょう。

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関連記事:親権を夫に取られたら取り返すことは可能?子どもを連れ去られた際の対処法と親権獲得のポイントを弁護士が徹底解説

第2章 離婚調停の基本的な流れと親権争いの進み方

離婚調停は、裁判官1名と調停委員2名(男女各1名)で構成される「調停委員会」が、夫婦双方の主張を交互に聞き取る形で進められます。親権が争点となる場合、通常の話し合いに加えて専門的な手続きが組み込まれるのが特徴です。

2-1 調停成立・不成立までの一般的なプロセス

調停はおよその目安として、1回あたり約2~3時間、1〜2ヶ月に1回のペースで行われます。

申立てと初回期日

裁判所から期日呼出状(案内)が届き、双方が主張を記した書面や証拠を提出します。

争点の整理

財産分与や慰謝料と並行し、親権についても「どちらが監護すべきか」を議論します。

合意または移行

双方が合意すれば「調停成立」となります。一方、話し合いが平行線で親権の対立が激しい場合は、調停手続の中で調査官調査が行われ、それでも、合意に至らなければ、調停不成立となり、離婚訴訟において裁判官が親権者を決定することになります。

2-2 親権問題が深刻な場合の家庭裁判所調査官

話し合いだけで決着がつかない場合、裁判官の命令によって家庭裁判所調査官による具体的な調査が開始されることがあります。これは単なる話し合いの延長ではなく、子どもの生活実態や意向を専門職が客観的に見極める重要なフェーズです。
この調査結果をまとめた調査報告書は、調停不成立後の裁判における裁判官の判断に大きな影響を及ぼします。

第3章 調停委員の心証を左右する「監護実績」の客観的証拠

離婚調停の場で「私はこれだけ子どもを愛して一生懸命育ててきた」と訴えても、それだけでは裁判所の判断を決定づけることはできません。調停委員や裁判官は、あなたの言葉だけでなく、それを裏付ける証拠を求めているからです。特に相手方と監護実績をめぐって主張が食い違っている場合、客観的な証拠の有無が心証を大きく左右します。本章では、日々の暮らしの中にある資料となり得るもの、それらをどのように整理して提出すべきかを具体的に解説します。

3-1 母子手帳・育児日記・学校の連絡資料など継続的な関わりの可視化

育児の記録は、主たる監護者(日常生活において主に子どもの身の回りの世話や意思決定を担ってきた親)としての責任を果たしてきたことを示す重要な証拠です。子どもが乳幼児の場合は、母子手帳の健診記録や保育園の連絡帳が、日々の成長を誰が近くで支えてきたかの証明になります。一方、中学生などに成長している場合、過去の連絡帳などは直接的な判断材料にはなりにくいものの、「幼少期から現在に至るまで、一貫して深い愛着関係を築いてきた証し」として、その積み重ねが評価の土台になり得ます。また、現在進行形の証拠として、学校からの配布物への対応、三者面談のスケジュール、あるいは部活動の送迎や弁当作り、塾の進捗管理といったサポート状況を記した手帳やスマートフォンのアプリ、カレンダーの記録などは、あなたが主たる監護者であることを示す証明になり得ます。

3-2 通院履歴や学校行事への参加実績による「養育の主体性」の立証

子どもの年齢に関わらず、健康管理や教育へどちらが主体的に関わってきたかは、裁判所がよく見るポイントの一つです。学校の通知表や、行事で撮影された子どもとの写真や、保護者会への出席実績なども、教育への関心度を示す指標となります。単に同じ家で暮らしているという事実だけでなく、子どもの成長の節目に常に寄り添い、具体的なアクションを起こしてきた事実を整理し、提示できるようにしましょう。

3-3 子どもの心理状態や生活リズムの把握度を示すエピソード

証拠は紙の資料だけではありません。あなたが子どもについてどれだけ詳細に把握しているかという情報の具体性も証拠となり得ます。「子どもが今どのようなことに悩み、何を楽しみにしているか」「どのような時に不安になり、どう接すれば落ち着くのか」といった問いに対し、具体的に、かつエピソードを交えて話せることは、日々の深い対話と観察があってこそのものです。特に思春期の場合、親子の信頼関係が良好であることは、家庭裁判所調査官による調査においても重視されるポイントです。日常の何気ないやり取りをメモに留めておくだけでも、調停におけるあなたの主張に説得力を持たせる一助になります。

第4章 家庭裁判所調査官調査の対策と心構え

親権争いで対立すると、家庭裁判所の「調査官」による調査が行われます。話し合いを仲裁する一般有識者の調停委員とは異なり、調査官は心理学や社会学などの専門知識を用いて、子どもの意向や環境を調べる裁判所の専門職です。調査官の報告書は裁判官が判断する際の重要な資料の一つとして参照されるため、評価ポイントや懸念する点を把握した上で、戦略的に準備を整えて臨むことが大切です。

4-1 調査官面談で必ず問われる質問事項と、NG回答

面談では、これまでの監護状況や今後の養育プラン、離婚に至る経緯などが詳しく聞かれます。ここで多くの人がしてしまう誤った対応の一つに、相手方への非難に終始してしまうことがあげられます。調査官が知りたいのは「相手がいかに悪いか」ではなく「あなたが子どもをどう幸せにするか」です。質問に対しては感情的にならず、子どもの将来を見据えた建設的な回答を心がけるよう意識しましょう。

4-2 自宅訪問でチェックされる生活環境と準備のポイント

調査官が実際に自宅を訪れ、子どもの生活環境を確認することもあります。清潔さはもちろんですが、単に綺麗な部屋であることよりも「子どもが安心して過ごせる居場所があるか」「危険な箇所はないか」「年齢に応じた玩具や学習環境が整っているか」といった点が見られます。

4-3 試行面会において子どもとの自然な関係性を示すには

場合によっては、裁判所内のプレイルームなどで、あなたと子どもが一緒に過ごす様子を調査官が観察する「試行面会」が行われる場合もあります。
ここでは、親子の愛着関係が確認されます。無理に良いところを見せようとしたり、子どもに過剰に干渉したりせず、普段通りの自然な関わりを意識しましょう。子どもがリラックスして甘えたり、一緒に遊んだりする姿こそが、良好な関係性の証明となります。

第5章 仕事と子育ての両立や経済力を証明するには

多くの方が直面するのが「フルタイムで働いているので、相手より子どもと接する時間が短いことがネックになるのではないか」、反対に「専業主婦(主夫)だから経済力がないと見なされるのではないか」という不安です。しかし、現代の裁判実務においては、単に年収の高さや労働時間の長さだけで親権が決まるわけではなく、子どもにとって安定した養育環境をどのように構築していくかという具体的なプランを示すことが重要となっています。

5-1 経済的な格差は「養育費」で補完されるという法的ルール

経済力の差については、年収の高い親から低い親へ支払われる「養育費」によって補完されるのが法的な大原則とされています。そのため、相手より収入が低いという一点のみで親権を諦める必要はありません。また、児童手当や児童扶養手当などの公的扶助、自治体独自の支援制度も生活の原資として考慮されます。

5-2 実家や行政サービスの活用による「監護体制」の具体化

フルタイム勤務などで育児時間が限られる場合に、重要となるのが監護補助者の存在です。監護補助者とは、主に実家の祖父母や親族など、親に代わって子どもの世話を日常的に手伝ってくれる人を指します。
裁判所は、親が一人で完璧な育児ができるかを見ているのではなく、周囲のサポートを得ながらでも子どもが安全で健やかに育つ環境を維持できるかを重視する傾向があります。実家の両親の協力が得られる場合は、「平日の18時から20時までは実母が食事を補助し、自分は20時半には帰宅して寝かしつけを行う」といった、時間単位の具体的なサポート体制を主張しましょう。
近隣に親族がいない場合でも、学童保育、延長保育、民間シッターなどの利用予定を具体的にリストアップし、「仕事と育児が両立可能なシステム」が既に整っていることを立証できれば、仕事の忙しさがそのままマイナス評価につながることを避けられます。

5-3 離婚後の具体的な生活スケジュールと教育環境の継続性の提示

離婚後の「一日のタイムスケジュール」を可視化して提示する方法も効果的です。起床、朝食、登校(登園)、帰宅、宿題の確認、入浴、就寝といった一連の流れにおいて、いつ誰が子どもに寄り添うのかを明らかにします。
さらに、子どもが現在通っている習い事や塾、学校生活を可能な限り中断させないプランを示すことで、「親の離婚による環境変化のストレスを最小限に抑えようとしている」という姿勢を伝えることができます。

第6章 調停中に避けたい、親権を失うリスクのあるNG行動

離婚調停というストレスの中では、何気ない行動が、裁判所の目には「親権者として不適格」と映ってしまうことが実は少なくありません。調停期間中のあなたの言動、SNSでの発信、そして子どもとの接し方は、すべてが親権判断の材料としてチェックされると考えましょう。本章では、良かれと思ってやってしまいがちな行動の中に潜むリスクと、裁判所から信頼される親であり続けるために守るべき行動ルールについて解説します。

6-1 子どもに相手方の不満を漏らす「心理的虐待」とみなされる行為

「パパ(ママ)があんなことをしたから、離れて暮らすことになった」といった、相手方への不満や非難を子どもに聞かせることは、してはならない行動です。こうした言動は、裁判所から親としての適格性に欠けると判断される要因になり得るからです。
親としては「事実を伝えて理解してほしい」という心理が働くかもしれません。しかし、相手方の悪口を子どもに聞かせる行為は、「親のエゴを優先し、子の福祉を害する親」というマイナスな評価につながりかねないことを覚えておきましょう。

6-2 不当な連れ出しや、一方的な面会拒絶という実力行使

「相手に親権を取られるくらいなら、今のうちに子どもを連れて逃げよう」といった実力行使は、現代の裁判実務において悪影響を及ぼす可能性が高い行為といえます。たとえそれまで主たる監護者であったとしても、法的な手続きを経ない強引な連れ出しは裁判実務上、親権判断において不利に評価されるおそれがある行為とされています。
同様に、正当な理由(虐待やDVの明白な証拠)がないにもかかわらず、自分の感情だけで相手方との面会交流を拒否し続ける行為も、「相手方の親としての存在を認められない、寛容さに欠ける親」と判断されるリスクをはらんでいます。

6-3 SNSでの発信や調停外での感情的な接触

無意識にやってしまう方が多いのがSNSへの投稿です。鍵付きのアカウントであっても、情報はどこから漏れるか分からないものです。相手方への誹謗中傷や、夜遅くまで遊び歩いているような投稿が相手側に証拠として押さえられた場合、調停の場で「育児に専念していない」「精神的に不安定である」と主張される材料になることも少なくありません。
また、調停の場以外で相手方に直接電話やメールをし、感情的な言葉をぶつけることも控えましょう。

第7章 相手方の心無い主張に対する適切な反論

離婚調停の場では、親権を争う相手方から、あなたの親権者としての適格性を否定するような心ない主張がなされることも珍しくありません。「過去の失敗」を掘り返されたり、「性格や持病」を持ち出されたりすることで、親としての自信が揺らいでしまう方もいらっしゃいます。しかし、相手方の主張がすべて裁判所に認められるわけではありません。感情的に言い返すのではなく、裁判所が重視する「子の利益」という原則に基づいて、論理的かつ客観的に反論することが大切です。

7-1 不貞行為(不倫)の有責性は親権判断にどう影響するか

「不倫をした親に子どもを育てる資格はない」という主張は、調停でよく出される理由の一つです。しかし、法律上「配偶者に対する裏切り」と「子どもに対する養育能力」は、別個の事案として扱われるのが原則です。そのため不貞行為のみをもって、直ちに親権者として不適格と判断されることは一般的ではありませんが、子どもの生活や監護状況に具体的な悪影響が及んでいる場合には、判断に影響することもあります。
相手方の追及に対しては、不貞の事実とこれまでの監護実績を切り離し、子どもとの間には良好な愛着関係が維持されていることを証拠とともに主張することが重要といえます。

7-2 持病やメンタルヘルスを理由に子の養育不能を主張された場合

「うつ病などの持病があるから、一人で育てるのは無理だ」といった主張もよくあります。しかし、病気や障害があること自体が親権をあきらめる直接の理由にはなりません。重要となるのは、現在の症状が「日常の育児にどの程度影響するか」という具体的な視点です。
まずは主治医の診断書などを通じて、病状が安定していることや、適切な治療を受けながら育児が可能であることを示しましょう。あわせて、体調がすぐれない時にサポートを受けられる監護補助者(親族や福祉サービス)の存在を具体的に提示することで、子どもの安全な養育が担保されていることを論理的に証明していくことが重要です。

7-3 過去の育児ミスをネグレクトと言い換えられた場合

不注意で子どもがケガをしたことや家事の不手際、寝坊など、親であれば誰しもが経験するようなミスを、相手方が「虐待」や「ネグレクト」として誇張して主張してくるケースもあります。こうした主張に対しては、それが育児の中で思いがけず起こり得る事象であることを客観的に説明した上で、視点を「長期間にわたる全体的な監護実績」へと引き戻す必要があります。日々の健康的な食事の提供、学校生活への適切な関わりなど、あなたが積み重ねてきたプラスの事実を提示することで、相手方の指摘がいかに部分的であるか、子どもの成長の全体像を無視した偏ったものであるかを浮き彫りにしていくことができます。

第8章 寛容な親として評価されるための面会交流の考え方

相手方への拒絶感が強いと「子どもを合わせたくない」という感情を抱くのは自然なことです。しかし、現在の実務では「フレンドリー・ペアレント原則(寛容な親の原則)」という考え方が重視されています。これは、離れて暮らす親と子どもの交流を寛容に認められる親こそが、子どもの健やかな成長を支える親権者としてふさわしいという評価基準です。本章では、裁判所から適切な評価を得られる、かつ子どもの福祉に則した面会交流の設計方法について詳しく解説します。

8-1 相手方との適切な交流を認める姿勢の重要性

裁判所は、離婚後も子どもが両方の親から愛されていると実感できる環境を理想としています。そのため、調停の場でも「自分こそが親権者にふさわしい」と主張するのと並行して、「離婚後も相手方と子どもが健全に交流できるよう、このような配慮をしたい」という前向きな姿勢を示すことは原則として大切です。この寛容な姿勢は、調査官や裁判官に対して、あなたが「自分の感情よりも子どもの利益を優先できる、精神的に成熟した親である」という印象を与えることにつながります。

8-2 子どもの福祉を最優先した「無理のない面会ルール」の具体案

「寛容であること」とは、相手方の言いなりになることではありません。子どもの年齢や性格、生活リズムを最優先に考えた持続可能なルールを提案することが重要です。たとえば、乳幼児であれば「短時間の面会から始め、徐々に時間を延ばす」、遠方の場合なら「ビデオ通話による定期的な交流や写真の送付を組み合わせる」といった具合です。子どもの負担を抑えながら、親子の絆を絶やさないための具体的で柔軟な提案を行うことで、裁判所に対し、子どもの未来を真剣に設計していることを論理的にアピールできます。

第9章 子どもの未来を守るために

離婚調停における親権争いは、精神的にも肉体的にも大変なプロセスです。しかし、一つひとつの事実を丁寧にかみ砕き、客観的な証拠に基づいて主張を組み立てていくことで道は開けます。
本記事で解説したポイントを振り返ってみます。

・裁判所が重視するのは親の都合ではなく養育の継続性や監護実態といった「子の利益」
・母子手帳や連絡帳などこれまでの育児実績を証明する証拠を整理する
・調査官調査では感情的にならず、子どもとの愛着関係や具体的な養育プランを伝える
・仕事や経済力については、周囲のサポートや養育費を含めた総合的な監護体制として主張する
・相手方への非難よりも、子どもと離れて暮らす親との交流を認める「寛容な姿勢」が評価につながる

親権をめぐる問題では、子どもの心理面への配慮や戦略的な主張の組み立てが不可欠です。一人で抱え込み、焦りから誤った判断をしてしまう前に、専門家のアドバイスを受けてみるのも解決策の一つといえます。
専門的な対応が必要な場合はNexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスまでお気軽にご相談ください。

 

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2026.01.09

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親権を夫に取られたら取り返すことは可能?子どもを連れ去られた際の対処法と親権獲得のポイントを弁護士が徹底解説

 

「夫に子どもを連れて行かれた」「協議離婚で親権を夫に譲ってしまったが、やはり取り戻したい」――離婚において親権は、最も譲れない権利の一つといえます。一度夫に渡ってしまった、あるいは夫が事実上確保している親権を取り戻すことは簡単ではありませんが、状況や適切な法的手段によっては、再びお子様と一緒に暮らせる可能性も残されています。本コラムでは、親権を夫に取られた状況から「親権者変更」や「子の引き渡し」を目指すための具体的な法律知識と、裁判所が重視する判断基準、早期解決に向けた行動を、弁護士の視点で分かりやすく解説します。

第1章 親権を夫に取られた状況別の「取り戻せる可能性」

「親権を夫に取られた」という状況は、いくつかのパターンに分類されます。どの段階にいるかによって、法的に取り得る手段や、親権を取り戻せる難易度が大きく変わってきます。まずは冷静に、ご自身の状況を整理してみましょう。

1-1 離婚届の提出時に夫を親権者として指定した場合

協議離婚において、離婚届の親権者欄に夫の名前を書いて提出してしまったケースです。一度戸籍に記載された親権者を変更するには、当事者間の合意だけでは足りず、必ず家庭裁判所での手続きが必要になります。この場合、家庭裁判所からは「なぜ当時は夫を親権者としたのか」「その後、どのような事情の変化があったのか」などが問われます。

1-2 離婚調停・裁判で夫が親権者として認められた場合

裁判所の手続きを経て、一度「夫が親権者として適任である」という公的な判断が下されたケースです。これを覆すには、前回の判断を維持することが「子の利益」に反すると証明しなければならず、実務上は高いハードルといえます。夫側の監護状況に重大な欠陥が生じているなど、決定的な証拠が求められます。

1-3 離婚前だが、夫が子どもを連れて別居を開始した場合

まだ離婚は成立していないものの、夫が強引に子どもを連れ去り、別居先で育てているケースです。日本では「監護の継続性」という考え方が重視されるため、放置すると「今の環境で安定している」とみなされ、最終的な親権争いで不利になるリスクがあります。早急に法的なアクションが必要といえます。

1-4 事実上、夫が子どもを監護しており手出しできない状態

離婚後、親権は自分にあるにもかかわらず、夫が子どもを返してくれない、あるいは面会交流の際にそのまま連れ去ってしまった場合です。このケースでは親権の有無にかかわらず、実力行使での奪還はリスクが伴うため、裁判所を通じた「子の引き渡し」の手続きを検討する必要があります。

第2章 夫に取られた親権を取り戻すための法的ルート

感情的に「返して」と訴えるだけでは、状況は好転しません。法律の専門家である弁護士が介入する場合、主に以下の法的ルートを軸に戦略を立てます。

2-1 「親権者変更調停・審判」による親権の移転

すでに離婚が成立し、戸籍上の親権者が夫になっている場合の対処です。家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立て、話し合いを行います。合意に至らない場合は「審判」に移行し、裁判官が諸般の事情を考慮して決定を下します。民法第819条第6項に基づき、「子の利益のために必要があると認めるとき」に変更が許されます。

2-2 「子の引き渡し請求」と「監護者指定の申し立て」

離婚前、あるいは事実上の連れ去りが発生している場合の有効策の一つです。親権争いの決着には時間がかかるため、まずは監護者(実際に日常的な養育を行う人)として自分を指定してもらう「監護者指定の申立て」を行い、同時に「子の引き渡し」を求めます。
裁判所の決定が出ても相手が応じない場合は、間接強制などの強制執行手続きが検討されることがあります。ただし、子どもの心身への影響を考慮し、実務上は慎重に運用されるため、必ずしも直ちに引き渡しが実現するとは限らない点には注意が必要です。

2-3 緊急性が高い場合の「審判前の保全処分」

子どもの教育環境が著しく損なわれている、あるいは夫が子どもを海外へ連れ出そうとしているなど、一分一秒を争う状況では「審判前の保全処分」を申し立てます。これは正式な決定が出る前に、暫定的に子どもを保護したり、引き渡しを命じたりする手続きです。

第3章 裁判所が「親権を夫から妻へ変えるべき」と判断する基準

裁判所が親権者を判断する際に重視するのは、「子どもの幸せ(子の利益・福祉)」です。抽象的に聞こえるかもしれませんが、実務ではいくつかの明確な指標があります。親権を取り戻すためには、これらの基準に照らして「自分がいかに適任か」を客観的に示し、裁判官や調査官の心証を好転させる準備が必要です。

3-1 母親だから有利とは限らない「子の利益」の原則

かつては「母性優先の原則」がありましたが、現代では「どちらが主たる監護者として機能してきたか」という実態が重視されます。単に性別が女性であることだけでは、親権奪還の決定打にはなり得ません。
例えば、子どもの食事の好み、予防接種の履歴、学校での友人関係など、これまでいかに深く育児に関わってきたかを具体的なエピソードや記録(育児日記や写真など)とともに整理しておくことです。これらを証拠として提示することが、家庭裁判所調査官に対し「母親が子どもの心身の状況を細かく把握しており、主たる監護者として不可欠な存在である」という心証の形成につながり、判断を有利に導ける可能性が高まります。

3-2 継続性の原則:今の生活環境が安定しているか

裁判所は「環境の急変は子どもにストレスを与える」と考えます。そのため、夫のもとで子どもが長期間安定して生活し、心身ともに健やかに育っている場合、あえてその環境を壊してまで親権を変えるべきではないと判断されやすい傾向があります。これを打破するには、夫のもとでの生活環境が必ずしも安定していないことを論理的に主張しなければなりません。例えば、子どもが情緒不安定になっている、転校を繰り返しているといった客観的な事実があれば、環境を維持することの難しさを立証する材料となります。憶測ではなく、学校の欠席日数や通知表の所見、医師の診断といった客観的資料を収集することで、裁判所に「環境を変えることの正当性」を認めさせる一助となり得ます。

3-3 監護能力と生活環境:どちらが適切に育てられるか

親自身の心身の健康状態、経済力、居住環境、また仕事で忙しい親に代わり、親族(子の祖父母など)がどの程度サポートできるかといった監護補助者の存在も重要な評価対象となります。
親権を取り戻した後の生活について、自分が働いている間、実家の両親などがどのように協力してくれるかを具体的に書面化し、プランを提示しましょう。

3-4 子どもの意思の尊重:15歳以上と10歳前後の扱いの違い

子どもが15歳以上の場合は、本人の意見聴取が義務付けられており(家事事件手続法152条)、10歳前後でもその意思は調査官調査を通じて強く尊重されます。
子どもの意思が判断を左右するからといって、決して「お母さんと暮らしたいと言って」と無理強いをしてはいけません。こうした働きかけは調査官に対しても不利な心証を与えてしまいます。
本心で「お母さんといたい」と思ってもらえるよう、面会交流などの限られた機会に、安心感を与える関わりを積み重ねることが親権獲得への道を切り拓くことにつながるといえます。

3-5 兄弟姉妹不分離の原則:子どもたちが離ればなれにならない配慮

兄弟姉妹は一緒に育つのが望ましいという「兄弟姉妹不分離」の考え方は、裁判実務において今も存在します。もし兄弟が離ればなれになっている、あるいは夫が一部の子どもだけを連れ去っている状況であれば、全員をまとめて引き受ける体制を整えていることが対抗策の一つになり得ます。一人だけを引き取るという主張は、本人の強い希望など特別な事情がない限り、裁判所に「子どもの福祉を二の次にする提案」と受け取られるリスクがあるため慎重な検討が必要といえます。

3-6 面会交流の許容性:相手に会わせる寛容さはあるか

近年、親権者としての適格性を判断する上で「もう一方の親との交流をどの程度認めるか」という寛容性が重視されるようになってきています。夫への憎しみや葛藤が深くても、裁判手続きの中では「子どもにとって父親との交流が必要であること」を理解し、円滑な面会交流に協力する姿勢を明確に示しましょう。この姿勢は「フレンドリー・ペアレント(寛容な親)」という考え方に通じるもので、日本の裁判実務でも「子どもの利益を優先できる親である」という評価につながりやすい傾向があります。逆に交流を頑なに拒否する態度は、親権奪還において足かせとなるリスクがあることを念頭に置いておきましょう。

第4章 親権変更が認められるための「事情の変化」とは?

一度決まった親権を変更するには、「離婚時には予想できなかった重大な事情の変化」があり、かつ変更することが「子の利益」にかなうと判断される必要があります。この高いハードルを超えるためには、法的に意味のある事実を積み上げなければなりません。

4-1 夫側(現在の親権者)の監護状況に問題が生じたケース

夫がギャンブルに溺れている、育児を放棄して夜な夜な出歩いている、あるいは仕事が多忙すぎて子どもが常に独りぼっち(孤食)であるなど、今の環境が子どもにとって不適切であると判断される場合、それは親権変更を検討すべき重大な事由となり得ます。
しかし、「夫は育児をしていないはず」という単なる思い込みや推測を主張しても、裁判所や調査官の理解は得られません。子どもからの具体的な聞き取り内容や、学校の先生・近隣住民からの指摘など、第三者が見ても「監護に欠陥がある」と判断できる客観的事実を時系列で整理して提示する必要があります。

4-2 夫が再婚し、継母との関係が子どもに悪影響を与えている場合

夫の再婚相手と子どもの折り合いが悪く、家庭内に居場所を失っているケースでは、親権変更が認められる可能性が浮上します。単に「再婚したから」というだけでは不十分であり、再婚を機に子どもの成績が急落した、表情が暗くなった、家に帰りたがらないといった「具体的な悪影響」が生じていることを立証する必要があります。子どもの変化を日記などに記録し、必要であれば児童精神科医などの診断を仰ぐことで、環境の変化が子どもの福祉を損なっていることを公的に証明する準備を進めましょう。

4-3 夫による虐待やネグレクトが発覚した緊急事態

暴力、暴言、食事を与えない、あるいは適切な医療を受けさせないといった不適切な関わりがある場合、裁判所は迅速な保護と親権の変更を検討する可能性が高まります。ただし、虐待の事実認定には厳格な証拠が求められるため、専門家と迅速に連携することが不可欠といえます。

4-4 妻側(自分)の受け入れ態勢が劇的に改善したケース

「離婚時は病気や経済的不安で育てられなかったが、現在は健康を取り戻し、安定した収入とサポート環境が整った」という状況は、親権変更の後押しになります。しかし、それだけでは「子の利益のために親権の変更が必要」とは判断されにくいのが現実です。前述したような「夫側のマイナス要因」とセットにし、こちらの整った状況と対比させる形で主張を組み立てることが重要といえます。
現在の健康診断書、雇用契約書、実家の協力体制を記した報告書などを取り揃え、「今の自分こそが子どもにとって安心できる居場所を提供できる」ということを、証拠に基づいて論理的に訴えかけましょう。

第5章 夫に子どもを連れ去られた直後に行うべき初動対応

5-1 自力で連れ戻す「自力救済」はNG

夫の家から無理やり子どもを連れ戻す行為は、その態様によっては、たとえあなたが親権者であっても「未成年者略取誘拐罪」に該当すると判断されるリスクがあります。このような行動をとってしまうと、裁判所からもマイナスな印象を受け、親権争いで不利になる可能性が高いといえます。

5-2 警察への相談と「安否確認」の重要性

夫の連れ去りが暴力的なものである場合や、子どもの安全が危ぶまれる場合は、警察に相談しましょう。民事不介入と言われることもありますが、「安否確認」の名目で状況を確認してもらうことは可能なケースが多いです。

5-3 速やかな弁護士への相談と証拠の確保

連れ去られた際の日時、態様、その後の夫とのやり取り(LINEやメール)はすべて保存しておきましょう。これらは後の裁判手続きで、夫の非協力性や不当な監護を立証する証拠になります。

第6章 親権争いで不利にならないための注意点

6-1 感情的な対立が子どもに与える心理的ダメージ

親同士が激しく罵り合ったり、互いを否定し合ったりする姿を見せることは、子どもの心に大きな傷をつくります。これが深刻化すると、家庭裁判所の調査の際、「お父さんもお母さんも嫌い」「どっちと暮らしたいか分からない」と心を閉ざしてしまうことにもなりかねません。
どんなに夫への怒りがあったとしても、子どもの前では「パパとママの問題であって、あなたのせいではない」と伝え続け、子どもを争いの道具にしないという断固たる姿勢を貫くことが大切です。調査官は、親が子どもの心理的な負担をどれだけ理解し、配慮できているかを監護能力の一部として評価します。子どもの心の安定を最優先する振る舞いを見せることは、結果として「この親こそが子どもの健やかな成長を支えられる」というプラスの評価につながるといえます。

6-2 相手を誹謗中傷することの法的デメリット

夫をSNSで攻撃したり、共通の知人や親族に悪口を言いふらしたりする行為は、現代の親権争いにおいて高いリスクを伴います。これらの証拠を夫側に握られてしまうと、裁判所から「相手との協調性(フレンドリー・ペアレントの精神)が著しく欠如している」と判断される要因になってしまうからです。
裁判所が求めているのは、離婚後も子どものために相手方と適切な連絡を取り合い、円滑な面会交流を許容できる親です。不満がある場合でも公の場や記録に残る形での発言は慎み、主張すべきことはすべて弁護士を通じて法廷という適切な場で行いましょう。

6-3 調査官調査(家庭裁判所)に向けた準備不足のリスク

家庭裁判所調査官は、心理学や社会学の専門家であるケースが多く、彼らの作成する調査報告書は、裁判官の判断に影響を及ぼします。しかし、限られた時間内で行われる調査官との面談で、自分の考えを正確に彼らに伝えるのは容易ではありません。自力だけで臨み、焦りから的外れな回答をしてしまったり、夫への非難ばかりに時間を費やしてしまったりするのは、判断を誤るリスクとなります。こうした事態を回避するため、頼りになるのが弁護士などの専門家です。調査官からの想定される質問を整理し、これまでのエピソードを具体的かつ客観的に話せるようシミュレーションしておくことが重要といえます。

第7章 よくある質問:親権を取り戻したいママたちの疑問

Q1 一度親権を譲ったら、一生取り戻せませんか?

いいえ、一生ではありません。しかし、簡単ではありません。

家庭裁判所に、以前とは事情がどのように変わり、自分と暮らす方が子の利益になる理由を明確に証明する必要があります。子どもの成長に伴い、本人が「お母さんと暮らしたい」とはっきり意思表示をすることも転機となり得ます。

Q2 経済力が夫より低くても親権者になれますか?

はい、可能性はあります。

経済力の差は、養育費で補填するという考え方が一般的です。あなたが子どもに対して適切な愛情を注ぎ、日々の世話を丁寧に行える環境であれば、夫より年収が低くても親権をあきらめる必要はありません。

Q3 夫が勝手に離婚届を出して親権を取った場合は?

離婚無効の調停を申し立てましょう。

無断で提出された離婚届は、当事者の真意に基づかないものであれば、無効と判断される可能性があります。この場合は「離婚無効の調停」を申し立てることになります。受理されてしまった後でも、手続きを踏めば親権を取り戻せるだけでなく、戸籍を正すことも可能です。

第8章 お子様の未来のために、今できる最善の選択を

親権を夫に取られたという現実は、言葉にできないほど辛いものです。子どもにとっての母親は世界に一人しかいません。もし、現在の状況がお子様にとって最善ではないと確信しているのであれば、法的な手段を通じてその環境を変える努力をすることは、親としての立派な責任です。
親権奪還への道は、決して平坦ではありません。手続きの煩雑さや相手との交渉、裁判所での調査など、精神的な負担も大きく、だからこそ一人で抱え込まないでほしいと思います。
Nexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスは、那珂川市および周辺地域の皆様の身近な相談者として、お子様との未来を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。専門的な対応が必要な場合はお気軽にご相談ください。

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2026.01.07

離婚時の財産分与で贈与税はかかる?課税される例外ケースと損をしないための注意点を弁護士が解説


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離婚時の財産分与で贈与税はかかる?課税される例外ケースと損をしないための注意点を弁護士が解説

 

離婚にあたって避けて通れないのが「財産分与」の話し合いです。夫婦で築き上げた資産を分ける際、「受け取った財産に贈与税がかかるのではないか」と考える方も多いのではないでしょうか。結論からいうと、原則として離婚時の財産分与に贈与税はかかりません。しかし、分与の額が多すぎる場合や、不動産の譲渡を伴う場合など、例外的に課税対象となるケースが存在します。本記事では、離婚時の財産分与と税金の関係について、どのような場合に注意が必要なのか、実務に精通した弁護士の視点から分かりやすく解説します。

第1章 離婚時の財産分与で贈与税がかからない原則と理由

1-1 財産分与は贈与ではなく権利の清算

離婚に伴う財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際に清算してそれぞれに分け与えることを指します。
この行為は、一方が他方へ一方的に利益を与える「贈与」とは根本的に性質が異なります。 本来自分の持ち分であるはずの財産を返してもらう、あるいは共有状態を解消して個人のものにするという性質があるため、原則として受け取った側に贈与税が課されることはありません。実務上も、財産分与は「夫婦の共有財産の清算」としての側面が意識されています。

1-2 贈与税が非課税となる範囲と税務署の考え方

贈与税が非課税となるのは、あくまで「財産分与として妥当な範囲内」である場合です。ここでの妥当な範囲とは、婚姻期間中の協力度合い、共働きか専業主婦(主夫)か、分与される側の今後の生活基盤の確保などを総合的に考慮して判断されます。
一般的に、夫婦の共有財産を半分ずつ(2分の1ルール)分けるようなケースであれば、贈与税が問題になることはほとんどありません。

1-3 公的機関(国税庁)の指針と実務上の取り扱い

国税庁の指針においても、離婚による財産分与によって取得した財産については、原則として贈与税がかからないことが明記されています。
ただし、後述するような「あまりにも多すぎる分与」や「税金逃れを目的とした離婚」と判断される場合には、例外的に課税される仕組みになっています。
実務においては、預貯金や動産、不動産などを分ける際に、それらが「夫婦で協力して得たものか」という点が焦点となります 。

第2章 財産分与でも贈与税がかかってしまう「3つの例外ケース」

2-1 婚姻中の協力に見合わないほど「多すぎる額」

財産分与として受け取った財産の額が、婚姻中の夫婦の協力度合いや、その他一切の事情を考慮しても「多すぎる」と判断された場合、その「多すぎる部分」に対して贈与税がかかる可能性があります。
例えば、共有財産が1億円ある場合に、特別な理由もなく9,000万円を妻に分与するといったケースです。裁判例や実務上の基準に照らして、社会通念上適正な範囲を超えているとみなされると、税務署から「実質的な贈与である」と指摘されるおそれがあります。

2-2 離婚を手段として利用した「税金逃れ」とみなされる場合

本来、多額の財産を贈与すれば高い税率の贈与税がかかります。これを免れるために、形の上だけで離婚(偽装離婚)をして、多額の財産をパートナーに移転させるような行為は厳しくチェックされます。
離婚後も同居を続けている、生計が同一であるなど一般的な離婚との違和感がある場合や、明らかに税負担を軽減させることだけを目的としていると判断された場合などは、離婚による財産分与とは認められず、全額が贈与税の対象となるおそれがあります。

2-3 相手方以外の第三者(義父母など)から財産を受け取る場合

財産分与はあくまで夫婦間で行われるものです。そのため、離婚に際して相手方の親(義父母)や相手方の親族が経営する会社など、相手方本人以外の第三者から直接財産を受け取った場合、それは財産分与の枠組みには入りません。
この場合は、通常の贈与として扱われ、基礎控除(年間110万円)を超える部分に対して贈与税が発生します。たとえ相手方(元配偶者)に財産がない代わりに親(義父母)が支払ってくれたというような事情があっても、贈与税のリスクがあるため注意が必要です。

第3章 注意すべき「不動産」の財産分与に伴う税金

3-1 不動産を「渡す側」に発生する譲渡所得税の注意点

不動産を分与する場合、もらう側ではなく「渡す側」に譲渡所得税がかかるケースがあります。これは、時価が購入時よりも値上がりしている不動産を分与した際、その値上がり分(含み益)に対して課税される仕組みです。
法的には「時価で不動産を売却し、その代金で財産分与義務を履行した」とみなされるため、現金で分与する場合とは異なる税務リスクが発生します。
このように購入時よりも不動産価格が上がっている場合は特に、税理士など専門家を交えたシミュレーションを行うことが安全策といえます。

3-2 「もらう側」にかかる登録免許税と不動産取得税

不動産を受け取る側は、名義変更(所有権移転登記)を行う際に「登録免許税」を支払う必要があります。これは登記手続きに不可欠な税金です。
一方、「不動産取得税」については、適切な財産分与(共有財産の清算)であると認められれば、原則として課税されない、あるいは大幅に軽減される運用がなされています。
ただし、離婚後の生活維持を目的とする分与(不要的財産分与)として不動産をもらう場合など、例外的に課税対象にされるケースもあるため注意が必要です。

3-3 自宅分与で使える「3,000万円の特別控除」の適用条件

居住用不動産(自分が住んでいた家)を分与する場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例を利用できる可能性があります。この特例を使えば、多くのケースで譲渡所得税をなくしたり、大幅に減らすことができます。
ただし、この特例は「配偶者への譲渡」には適用されません。つまり、離婚届を出す「前」に分与すると特例が使えず、離婚届を出した「後」に分与することで初めて適用可能になるという、タイミングが非常に重要なルールとなっています。

持ち家やマンションの具体的な処分方法は別記事を参照

不動産の名義をどうするか、住宅ローンが残っている場合にどう対処するかといった具体的な実務については、当サイト内の別記事(「離婚でマンションはどうなる?」「離婚後の持ち家はどうする?」)で詳細に解説しています。実際の手続きを進める際は、そちらの記事も参考になるかと思います。

離婚でマンションはどうなる?財産分与の注意点を弁護士が解説|オーバーローンや住み続ける場合の対処法


離婚後の持ち家はどうする?住宅ローンが残る戸建ての売却・居住・名義変更を弁護士が解説

第4章 実務で失敗しないための財産分与の進め方

4-1 分与の対象となる共有財産を正確に洗い出す

適切な財産分与を行い、税務署に説明がつく状態にするためには、まず何が「共有財産」なのかを明確にしなければなりません。婚姻期間中に築いた預貯金、不動産、有価証券、生命保険の解約返戻金、さらには将来受け取る予定の退職金なども対象となります。
これらを漏れなくリストアップすることが、公平な清算の第一歩といえます。相手に財産を隠されている疑いがある場合は、弁護士を通じた調査(弁護士照会など)が必要になる場合もあります。

弁護士照会(23条照会)とは?

弁護士照会とは、弁護士が依頼を受けた事件の証拠や資料を集めるために、弁護士会を通じて、銀行や市役所、企業などの団体に対して必要な情報の回答を求める制度のことです。 個人で問い合わせても「個人情報なので教えられません」と断られてしまうような情報(隠し口座の有無や残高、勤務先など)についても、弁護士がこの制度を利用することで、法的な根拠に基づいて開示を求めることが可能になります。

4-2 特有財産(独身時代の預貯金や相続財産)を明確に切り分ける

一方、婚姻前から持っていた預貯金や、婚姻中でも自分の親などから相続した遺産などは「特有財産」と呼ばれ、原則として財産分与の対象にはなりません。
この特有財産を共有財産と混同して分与してしまうと、本来分ける必要のない財産を相手方に渡してしまうことになるだけでなく、前述の「多すぎる分与」として贈与税の対象になる可能性もあります。
通帳の履歴などを遡り、特有財産であることを証明できる客観的な証拠を整理しておくことが大切です。

4-3 財産分与の合意内容は「公正証書」に残して証拠化する

財産分与の合意内容(離婚協議書)は、私文書ではなく、公証役場で作成する公正証書として作成することをおすすめします。
公正証書は公的な書類であるため、後日、税務署から財産の移動について尋ねられた際にも、それが離婚に伴う適正な財産分与であることを証明する証拠となり得ます。
また、ローンや養育費の支払いなど相手方の金銭の支払いが滞った際に、裁判を経ずとも給与差し押さえなどの強制執行ができるというメリットもあります。

第5章 離婚と贈与税にまつわる、よくある勘違い

5-1 慰謝料として多額の現金を受け取った場合はどうなる?

離婚に伴う慰謝料も、基本的には非課税です。慰謝料には、精神的苦痛に対する損害賠償金という意味合いがあるため、原則として贈与税の対象にはならないのです。
しかし、これも財産分与と同様に、社会通念上「あまりにも高額すぎる」と税務署に判断される場合は、その超過部分に課税される可能性があります。慰謝料と財産分与の内訳を明確にしておくことが、税務上のトラブルを避けるポイントの一つといえます。

5-2 離婚届を出す前に財産を分けると「贈与」になってしまう?

これも注意すべきポイントです。戸籍上の夫婦である間に財産を移動させると、それは法律上「夫婦間の贈与」とみなされます。夫婦間の贈与には年間110万円の基礎控除しかなく、多額の財産の移動には贈与税がかかります。
離婚に伴う財産分与として非課税にするには、原則として「離婚成立後」に財産を移転させる、あるいは「離婚成立後に移転させる旨の合意」を成立させておく必要があります。

5-3 子どもの養育費を一括で受け取ると課税される?

将来分も含めて、養育費を一括で受け取りたいというニーズもあります。しかし、養育費は必要な都度支払われるのが原則です。そのため、養育費を一括で受け取ると、その資金が「当面必要のない資産」とみなされ、贈与税の対象になる可能性があります。
どうしても一括で受け取る必要がある場合は、信託銀行の仕組みを利用するなど、税務上の対策を検討してみましょう。

第6章 税金トラブルを防ぎ、適正な財産分与を実現するために

後悔しない離婚後の再スタートを

離婚時の財産分与は、新しい生活を始めるための大切な原資となります。原則として贈与税はかかりませんが、金額の妥当性・分与のタイミング・不動産の有無など、いくつかのハードルを正しく越えなければなりません。「離婚届を出す前に家を譲ってしまった」「相場を大きく超える金額を渡してしまった」といった、善意や無知によるミスが、後に大きな税金負担として跳ね返ってくるケースは実務上少なくありません。
失敗しないためのチェックポイントは以下の通りです。

• 財産のリストアップと特有財産の仕分けができているか
• 離婚成立前後のタイミングを間違えていないか
• 合意内容を公正証書など客観的で法的効力のある書類に残しているか

これらをご自身だけで完結させるのは決して容易ではありません。特に、財産の種類が多い場合や、不動産が含まれる場合には、早い段階で弁護士や税理士などの専門家に相談し、適切なスキームを構築することをおすすめします。
私たちNexill&Partnersグループでは、弁護士による法的な交渉や書類作成はもちろん、グループ内の税理士や司法書士と連携し、税務申告や不動産登記までをワンストップでサポートする体制を整えています。これからの人生が不安のない確かなものとなるよう全力でバックアップいたします。まずはNexill&Partners那珂川オフィスへお気軽にご相談ください。

 

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2025.12.27

離婚後の持ち家はどうする?住宅ローンが残る戸建ての売却・居住・名義変更を弁護士が解説


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離婚後の持ち家はどうする?住宅ローンが残る戸建ての売却・居住・名義変更を弁護士が解説

 

離婚に際し、多くの方の懸念事項となるのが持ち家の扱いです。特に戸建ては、マンションとは異なり土地と建物の権利が分かれているなど、法的な整理が複雑です。今回は、売却の判断基準から、名義変更の注意点、ローン返済トラブルの防ぎ方まで、新しい生活を守るための持ち家(戸建て)の解決策を弁護士が解説します。
※なお、「マンションの財産分与」については本サイト内の以下の記事でご確認いただけます。
【離婚でマンションはどうなる?財産分与の注意点を弁護士が解説|オーバーローンや住み続ける場合の対処法】

第1章 持ち家の現状を把握する3つのステップ

持ち家は、夫婦の資産の中で高額でありながら、負債(住宅ローン)を伴っているケースも多い複雑な財産といえます。話し合いを有利かつスムーズに進めるためには、まず客観的な事実を確認することから始める必要があります。

1-1. 【ステップ1】土地と建物の名登記事項証明書義人を「」で正確に確認する

まず行いたいのが、持ち家の「名義」を正確に把握することです。「夫が購入したのだから夫の名義だろう」「たしか共有名義にしていたはず」といった憶測や曖昧な記憶は、必ずしも法的な実態と一致しているとは限りません。
まずは法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)で持ち家の実態を確認しましょう。
特に戸建ての場合、建物は夫名義でも土地が夫の親の名義であったり、夫婦の共有持分になっていたりと、権利関係が複雑なケースが少なくありません。
誰がどれだけの権利を持っているかを正しく把握しておくことは、後の財産分与や売却の可否を判断する大前提となります。

1-2. 【ステップ2】住宅ローンの「返済予定表」で残高と契約内容を洗い出す

次に、住宅ローンの現状を把握します。銀行から定期的に送られてくる返済予定表やインターネットバンキングの画面で、現在のローン残高、完済予定日、金利などを確認しましょう。
また、単独ローンなのか、夫婦二人で組むペアローンなのか、あるいは一方が他方の連帯保証人になっているのか、契約形態を確認することも重要です。
ペアローンや連帯保証人になっていた場合、離婚したからといって銀行とのローン契約から外されるわけではありません。相手方との保証人関係を解消できるかどうかは、離婚後の生活にも大きく影響する重要な問題です。ローン契約に自分がどうかかわっているかを正確に把握しましょう。

1-3. 【ステップ3】不動産の一括査定を行い「今売ったらいくらになるか」を知る

現在の家の市場価値(査定額)も調べておきましょう。購入時の価格ではなく、「今売却したらいくらになるか」が重要です。
不動産会社などに査定を依頼し、現実的な売却予想価格を算出してもらいましょう。
この査定額と前述のローン残高を比較することで、持ち家を売却した場合にプラスが出るのか(アンダーローン)、借金が残るのか(オーバーローン)が明確になります。
この数字が確定してこそ、持ち家を売るべきか・住み続けるべきかの検討を始められるといえます。

第2章 戸建て特有の財産分与で知っておきたい基礎知識

マンションの財産分与に比べて、戸建ての財産分与には特有の難しさがあります。それは、土地と建物という異なる性質の資産が組み合わさっている点です。

2-1. マンションとは違う? 戸建ての資産価値評価の難しさ

マンションは、同じ棟内の過去の成約事例から相場を出しやすいという特徴がありますが、戸建ての場合、日当たりや道路からの距離、建物のメンテナンス状態など個別性が非常に強いため、査定額のバラつきが出やすい傾向があります。
また、建物は一般的に築年数とともに価値が下がりますが、土地の価値は市場動向によって上がることもあります。財産分与の額を計算する際、どの時点(別居時、離婚成立時など)の、どの評価手法を用いるかについて、夫婦間で意見が食い違うことも多く、客観的な説得力をもって相手方に対抗するには専門的な知見が必須といえます。

2-2. 土地が「借地」や「親名義」の場合の特殊なケースと注意点

戸建ての場合によくあるのが、土地が自分の持ち物ではないというケースです。
例えば「土地は夫の親の名義で、その上に夫婦の建物を建てた」という場合、土地自体は財産分与の対象外となります。しかし、建物は夫婦の共有財産となるため、離婚時にどちらかが住み続けるなら、土地の所有者である親との間で借地権や使用貸借の問題を整理・確認する必要があります。

2-3. 頭金を出してくれた親の援助は「特有財産」として守れるか?

購入時に一方の親から援助を受けた場合、その分は「特有財産」として扱われることが多いです。つまり、家の価値全体から親の援助額に相当する割合を差し引いた残りを、夫婦で半分ずつ分けることになります。
ただし、特有財産であることを主張するには、当時の振込履歴や贈与税の申告書などの証拠が不可欠です。「親がタンス預金から出してくれた」といった曖昧な主張では、相手方に「夫婦の共有財産だ」と反論された場合に、特有財産と認められない可能性もあるため、早めに客観的な証拠を確保しておくことが重要といえます。

第3章 離婚後の持ち家の選択肢①:家を「売却」して現金を分ける(換価分割)

離婚に伴う持ち家の扱いとして、実務上で推奨されることが多いのが売却(換価分割)です。家という不動産を現金化して分けるこの方法は、複雑な権利関係を清算し、互いの再出発を最もシンプルにする手段といえます。特に住宅ローンが残っている場合や、公平な財産分与を望む場合には、将来の不安を取り除くための有力な選択肢といえるでしょう。

3-1. 【メリット】将来のローン滞納リスクや連絡の必要性を完全に断てる

売却の最大のメリットは、夫婦間の経済的なつながりを完全に解消できる点です。家を売ってローンを完済し、残ったお金をきれいに分ければ、離婚後に「元配偶者がローンを払ってくれない」「家の修繕費を誰が持つか」といったやり取りが発生することもなくなります。精神的な決別という面でも、売却は有効な選択肢といえます。

売却を選択するメリットは、夫婦間の経済的なつながりを完全に、かつ物理的に解消できる可能性が高い点にあります。 家を売却して住宅ローンを完済し、諸経費を差し引いた残額を2分の1ずつなど納得のいく割合で分けることができれば、離婚成立後に「元配偶者がローンの支払いを滞納して、住んでいる自分が追い出される」「将来の修繕費や固定資産税をどちらが負担するか」といった、やり取りが発生するリスクもなくなります。金銭的な清算だけでなく、相手方と過ごした場所を手放すことが「精神的な決別」を促し、前向きな一歩を踏み出すきっかけになることも、大きな利点といえるでしょう。

3-2. 【デメリット】引越し費用や新居の確保など、当面のコストが発生する

一方で、住み慣れた家を離れることによる心理的な喪失感や、物理的な移動に伴う当面のコストが発生することは避けられません。 具体的には、不動産会社に支払う仲介手数料に加え、引越し費用、新居の敷金・礼金、新しい家具の購入費用など、まとまった支出が一度に重なります。また、お子さんがいる場合は、転校を避けるための通学圏内での住居探しがハードルとなる場合もあります。

3-3. 仲介売却と即時買取、どちらが離婚時の売却に向いている?

持ち家の売却方法には、市場で一般の買い手を探す「仲介」と、不動産会社が直接買い取る「買取」の大きく2つがあります。

仲介売却とは

不動産会社を通じて広く一般の買い手を探す方法です。市場価格に近い高値で売れる可能性がある一方、買い手が見つかるまで数ヶ月から半年以上の期間を要することもあります。「時間はかかっても、財産分与の額を最大化したい」という方に向いている方法といえます。

買取とは

不動産会社が自ら買い手となって、直接購入する方法です。価格は市場相場の7〜8割程度に下がる傾向にありますが、最短数週間で現金化が可能で、周囲に売却を知られるリスクも低いのも特徴といえます。「財産分与の額よりも、一日も早く離婚を成立させて新生活を始めたい」というスピード重視の方に適しています。

3-4. 戸建て売却時に見落としがちな「境界確認」と「契約不適合責任」

マンションと異なり、戸建ての売却で特に注意すべきなのが「土地の境界」と「建物の不具合」です。
隣地との境目が曖昧なままでは、買い手が住宅ローンの審査を通せず、売買が成立しないことがあります。また、古い戸建ての場合、売却後に雨漏りやシロアリ被害、配管の故障などが発覚すると、売主が「契約不適合責任」を問われ、多額の賠償金や修繕費を請求されるリスクも潜んでいます。
離婚後の新たな生活が始まってからこうした紛争に巻き込まれないためにも、売却前には確定測量を行って境界を明確にすることや、専門家によるインスペクション(建物状況調査)を受け、建物の状態を正直に開示しておくことが、自己防衛のための重要なステップといえます。

第4章 離婚後の持ち家の選択肢②:妻または夫が住み続ける

「子どもの環境を変えたくない」という理由で、どちらか一方が住み続けることを希望する場合、法的な権利関係の整理が必要となります。

4-1. 住宅ローンの名義人がそのまま住み続けるケース

夫名義で夫が住み続ける、あるいは妻名義で妻が住み続ける形が最もシンプルです。この場合、出て行く側に対して、家の価値の半分(ローン残高を差し引いた額)を代償金として支払うことで、公平な財産分与が可能になります。

4-2. 非名義人が住み続け、名義人がローンを払い続ける

「夫名義の家に、離婚後も妻と子が住み続け、夫がローンを払う」という約束を交わすケースがありますが、これはリスクが高い方法といえます。
一つは、銀行との契約違反です。多くの住宅ローン契約では「契約者本人が住むこと」が条件となっているため問題となる可能性があり、銀行の判断によっては一括返済を求められるリスクも否定できません。
もう一つは、元夫の支払いが滞った際、住んでいる妻や子が突然差し押さえや競売に直面し、家を追い出されるリスクもあります。

4-3. ローンの借り換えによる名義一本化。審査に通るための条件とは?

妻が住み続け、かつ名義も妻に変えたい場合、現在のローンを妻一人の名義で借り換える必要があります。しかし、銀行は、妻に十分な収入(ローンの返済能力)があるかを厳しく審査します。パート勤務や専業主婦の場合、単独での借り換えは困難であることが多いため、実家の親に連帯保証人になってもらうなどの対策が必要になる場合があります。

4-4. 親族間売買やリースバックという第3の選択肢を検討する

どうしても今の家に住み続けたいが、自分ではローンが組めない場合の一つの選択肢として「リースバック」という方法があります。これは、不動産会社や投資家に家を買い取ってもらい、その後は「家賃」を支払うことで賃借人として住み続ける仕組みです。所有権は失いますが、引越しの必要がなく、固定資産税の負担もなくなります。

第5章 住宅ローンが残っている(オーバーローン)場合の法的解決策

住宅ローンの残高が、現在の家の売却予想価格を上回っている「オーバーローン」の状態は、より慎重な判断が要されるケースです。売却しても借金が残るため、通常の不動産取引のようにスムーズに話が進まないことが多く、銀行との交渉や負債の分配について専門的な知識に基づいた戦略を立てる必要があります。

5-1. 売却しても借金が残る。不足分をどう補填し、誰が負担すべきか

家を売っても残る借金は、基本的にはローンの契約者(主債務者)が負うべきものですが、実務上は財産分与の協議において、他の預貯金などのプラスの財産と相殺して清算を図ることがあります。
ただし、ここで障害となるのが銀行の抵当権です。銀行は、住宅ローンが1円でも残っている状態では、担保となっている不動産の抵当権を抹消することを認めないのが原則です。そのため、不足分を自己資金で一括返済してローンを完済できない限り、通常の売却手続きを進めることは困難といえます。このハードルをどうクリアするか、あるいは「売却せずに維持するのか」を、夫婦それぞれの離婚後の収支シミュレーションを踏まえて検討する必要があります。

5-2. 任意売却のメリット:競売を避け、プライバシーを守りながら再出発する

自己資金での補填による一括返済ができず、かつ今後のローン支払いも困難な場合の救済措置として任意売却があります。これは、弁護士などの専門家が仲介し、銀行の同意を得た上で、住宅ローンが残ったままの状態で市場に近い価格で売却する特別な手法です。
裁判所の手続きによって強制的に家を売られる競売と比較して、以下のようなメリットがあります。

プライバシーの保護

通常の売却と同じ形式で行われるため、近所に経済的な事情を知られるリスクを抑えられます。

残債務の分割払い交渉

売却後に残った借金について、無理のない範囲での分割払いを銀行と交渉できる可能性があります。

費用の持ち出しが不要

売却代金の中から仲介手数料や引越し代の一部を捻出できるケースもあり、手元資金がなくても再出発の準備を整えられる可能性があります。

5-3. ペアローン・連帯債務・連帯保証人を外れるための銀行交渉の現実

離婚後のトラブルで深刻化しやすいのが、一方が他方の保証人になっている、あるいは共同で債務を負っている(ペアローン・連帯債務)ケースです。
「離婚届を出したのだから、銀行も保証人を外してくれるはずだ」と考える人がいますが、銀行にとって夫婦の離婚は内部事情に過ぎず、担保(保証人)を外すメリットはありません。そのため、単純な申し出は拒絶されるのが一般的です。
これを断ち切るには、主に以下の3つの方法があります。

1. 別の保証人を立てる

相手方の代わりの保証人として、支払い能力のある自分の親族などを立てることで銀行の承諾を得る。

2. ローンの借り換え

住み続ける側が、別の銀行で「自分一人の名義」でローンを組み直し、今のローンを一括返済する。

3. 売却による完済

持ち家の評価額がローン残高を上回る(アンダーローン)場合、家を処分した資金で債務そのものを消滅させる。
このペアローン・連帯債務・連帯保証人の問題を明確に整理せず、口約束などの曖昧な状態のまま離婚してしまうことはおすすめできません。数年後に元配偶者の支払いが滞った際、ある日突然、銀行から一括返済を求められるといったリスクを背負うリスクが残るからです。

第6章 後悔しないための「離婚協議書」と「公正証書」の活用法

6-1. なぜ口約束は裏切られやすいのか? よくある失敗パターン

「これまでローンの返済を欠かさず払ってくれていたから」「子どものためだと言えば納得してくれるはず」という一方的な信頼は、相手の再婚や失業、病気など、離婚後の生活環境の変化によって、容易に崩れることが多いのが現実です。口約束や私文書の離婚協議書の約束だけでは強制執行ができないため、いざ支払いが止まった時に相手方の給与差し押さえなどの法的手段を講じるまでに多くの時間と労力がかかってしまいます。

6-2. 強制執行認諾文言付き公正証書で住宅ローンの不払いに備える

金銭の支払いに関する合意は「公正証書」にすることをおすすめします。
特に強制執行認諾文言を入れておけば、相手がローンや代償金の支払いを怠った際、裁判を経ずに即座に銀行口座や給与を差し押さえることができます。現実的な対策としてだけでなく、心理的なプレッシャーになることで、将来的な不払いに対する心理的な抑止力として働くことも期待できます。

6-3. 登記手続きの期限を明記!「所有権移転登記」を確実に行うための条項

ローンが終わったら、持ち家の名義を相手方から変えるという口約束をしていても、いざその時になって元配偶者が非協力的だったり、連絡が取れなくなったりすると登記の書き換えができなくなってしまいます。
離婚協議書は公正証書で作成し、「〇年〇月までに登記手続きを行う」「協力しない場合は違約金を支払う」といった具体的な条項を盛り込むことが重要です。

第7章 離婚と不動産にまつわる「税金」と「登記」の落とし穴

離婚に伴う不動産の譲渡や名義変更には、思わぬ税金や法的な手続きが必要になる場合があります。これらを見逃していると、数年後に税務署から多額の課税通知が届いたり、いざ家を売ろうとした際に名義が変えられなかったりといった事態を招きかねません。

7-1. 知らないと損をする「居住用財産の3,000万円特別控除」の活用

所有している家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、通常はその利益に対して所得税や住民税が課税されます。しかし、自分の住んでいた家を売却した場合は、利益から最大3,000万円までを差し引ける「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という制度があります。
ただし、離婚して家を出てから時間が経ちすぎると適用されない、夫婦や親子間の売買には適用されない、などの要件や除外規定があるため、売却のタイミングや手続きには注意が必要です。

7-2. 財産分与で贈与税がかかる特殊なケース

原則として、離婚による財産分与で受け取った資産に贈与税はかかりません。しかし、以下のような場合、税務署から贈与税や他の税金を課せられる可能性があるため、注意が必要です。

分与額が多すぎると判断された場合

婚姻期間や夫婦の貢献度、その他の事情を考慮しても、分与された財産があまりに多額であると見なされると、その超過分に対して贈与税が課されることがあります。

不動産を渡す側にかかる譲渡所得税

不動産を財産分与として相手に渡す行為は、税務上「その時点の時価で相手に譲渡した」と見なされます。そのため、購入時よりも時価が値上がりしている場合、不動産を手放す側(家を出ていく側)に譲渡所得税が課せられることがあります。「一銭ももらわず家を譲ったのに、なぜ税金を払わなければならないのか」と思われる人も多く、見落としがちな点といえます。
不条理な事態を避けるためにも、分与を実行する前には税理士など専門家による税務シミュレーションを行うことをおすすめします。

7-3. 名義変更(所有権移転登記)はなぜ司法書士に依頼した方がいい?

不動産の名義変更(所有権移転登記)は、自分で行うことも可能ですが、書類の不備があると受理されません。離婚に伴う登記手続きは、通常の売買とは異なる特有の難しさがあり、司法書士へ依頼することがリスク回避になるといえます。主な理由は以下の2点です。

「元配偶者の協力」には期限がある

離婚後も元配偶者の協力が得られるという確証はありません。
しかし、登記申請には、名義を手放す側の印鑑証明書や登記済証(権利証)といった重要書類が必要です。離婚直後は協力が得られたとしても、数ヶ月、数年と時間が経過し、相手方の新しい生活(再婚や引越しなど)が始まると、連絡が取れなくなったり、心理的な心理的ハードルから書類への署名・捺印を拒否されたりするトラブルはよくあります。
司法書士が入ることで、必要な書類を離婚成立と同時に確実に揃え、隙のないスケジュールで申請を完了させることができます。

法的な不備が取り返しのつかない事態を招く可能性がある

例えば、離婚協議書で「家を譲る」と合意していても、登記原因(財産分与とするか贈与とするか等)の記載や、対象となる土地・建物の地番・家屋番号が1文字でも登記簿と異なれば、法務局で受理されません。
司法書士は事前に登記事項証明書を精査し、見落としがちな共有部分や私道負担の有無まで徹底的に調査します。正確な書類作成と迅速な申請によって、将来にわたる不安の種を摘み取ることができるのも司法書士に依頼する大きなメリットといえます。

第8章 持ち家の問題を放置せず、新しい一歩を

離婚後の持ち家に関する問題は、単なる住居の確保にとどまらず、経済的な問題に直結しやすい重大な課題といえます。
本記事のポイントを振り返ってみましょう。

・まずは「登記」「ローン残高」「市場価格」を正確に把握する。
・売却(換価分割)は、比較的トラブルが少なく、再出発に適した方法といえる。
・住み続ける場合は、ローンの借り換えや名義変更の法的な壁を乗り越える必要がある。
・約束事は必ず「公正証書」にし、将来の不払いや登記トラブルに備えること。

これらの手続きを、感情が対立する当事者間だけで進めるのは至難の業といえます。不動産の査定からローンの交渉、税務申告、登記手続きまで、必要となる知識は多岐にわたります。後悔のない離婚と安心できる未来を手に入れるために、早めに専門家へ相談することをおすすめします。弁護士があなたの代理人として交渉を担い、複雑な権利関係を整理することで、納得のできる解決策が見つかるはずです。
私たちNexill&Partnersグループは、弁護士をはじめ、税理士、司法書士など士業が密に連携し、お客様の課題をワンストップで解決へ導く体制を整えています。複雑な持ち家問題でお困りの際は、Nexill&Partners那珂川オフィスへお気軽にご相談ください。

 

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2025.12.23

離婚でマンションはどうなる?財産分与の注意点を弁護士が解説|オーバーローンや住み続ける場合の対処法


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離婚でマンションはどうなる?財産分与の注意点を弁護士が解説|オーバーローンや住み続ける場合の対処法

 

離婚を検討する際、夫婦の共有財産の中で悩みやすいのがマンションではないでしょうか。特に住宅ローンが残っている場合、「どちらが住み続けるのか」「売却して現金化できるのか」など切実な悩みが多く聞かれます。
マンションの財産分与は、進め方を間違えると、離婚後に住宅ローンの督促が来たり、名義変更ができなくなったり、思わぬトラブルを招きかねません。本記事では、マンション財産分与の基本から、ローンがある場合の解消法、税金や登記の見落としやすい点まで、弁護士が実務的な視点で解説します。

第1章 離婚時のマンション財産分与|後悔しないための基本知識

1-1 財産分与の基本知識と「共有財産」の判断基準

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産を、離婚にあたって清算・分配することを指します。マンションにおける財産分与でまず重要なのは、物件がこの「共有財産」にあたるかどうかの判断です。
原則として、結婚後に購入したマンションは、名義が夫婦どちらかの単独であっても、夫婦が共同で築いた共有財産とみなされ、財産分与の対象になります。
一方、結婚前に夫婦のどちらか一方が購入していた場合や、結婚の時期によらず親から相続・贈与された資金で購入した場合は、原則として財産分与の対象にならない「特有財産」として扱われることが多いです。ただし、結婚前にどちらかが購入した場合でも、結婚後に住宅ローンの返済を夫婦の収入から行っていた場合は、その返済分に相当する価値が共有財産として分与対象となる可能性があります。

1-2 分与の割合「2分の1ルール」とマンションの評価額の計算時期

財産分与の割合は、夫婦それぞれの収入差に関係なく、原則として2分の1ずつ分けます。これは、専業主婦(主夫)であっても家事労働によって資産形成を支えたと評価されるためです。
分与の対象となる財産を確定させる時期は、一般的に別居時となることが多いのですが、これは別居によって夫婦の経済的協力関係が終了したと考えられるためです。マンションの価値(時価)をどの時点の評価額で計算するかも、実務上は別居時を基準とすることが多いですが、不動産相場の変動が激しい場合などは、離婚成立時を基準とすることもあります。評価時期の設定は分与額への影響が大きいため、注意しておきたい要素の一つです。

1-3 【重要】離婚届を出す前に!済ませておくべき調査と必要書類

離婚届を出した後に、「実はローンの連帯保証人になっていた」「相手方の管理費の滞納が発覚した」などに気づいても、すでに相手方との連絡が途絶えていたり、協力が得られなくなったりすることも多く、交渉が困難になることが少なくありません。
離婚届を出す前に、まずはマンションについて以下の5項目を調査し、現状を確認しておくことをおすすめします。

①不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)の確認

登記事項証明書(登記簿謄本)でマンションの名義が誰なのか、法的な所有者を確認しましょう。自分一人の名義だと思っていても、実は夫婦の共有名義になっていたり、親の権利が混ざっていたりすることがあります。名義によって、後の売却や譲渡の手続きが変わるため「たぶんそうだろう」という思い込みは危険です。

②住宅ローンの残高確認と契約形態の把握

ローンがあとどのくらい残っているかはもちろん、自分が連帯保証人やペアローンの当事者になっていないかを調べましょう。これを確認せずに離婚届けを出してしまうと、後々に相手の借金を背負い続ける事態にもなりかねません。住宅ローン、ペアローンがある場合の注意点については3章でくわしく解説します。

③現在のマンションの市場価値(査定額)の把握

今、家を売ったらいくらくらいになるのか、時価を把握しましょう。ローン残高より高く売れるのか、売却しても借金が残るのかを正しく判断するのが目的です。この査定額がマンションの財産分与を計算する基本的な土台となります。

査定はプロの手を借りる方が安心

マンションの価値を、ネットの簡易査定や自分の予想だけで判断することはおすすめできません。相手方に「高すぎる」「安すぎる」と反論する隙を与え、交渉が長引く原因になるおそれがあるからです。 根拠のある数字を出すには、不動産会社による査定や、不動産鑑定士の評価が必要といえます。不動産会社や不動産鑑定士を探すことに不安がある場合は、弁護士事務所に紹介してもらえる場合もあるので相談してみましょう。

④固定資産税の納税通知書と名寄せ帳(なよせちょう)の確認

自治体から毎年送られてくる固定資産税の納税通知書は、不動産の公的な価値(評価額)を知る重要な情報の一つです。この通知書や名寄せ帳(固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめたもの)を確認することで、マンション本体以外の駐輪場の一部など、見落としがちな小さな持ち分の有無も分かります。これらを把握せずに離婚すると、名義変更し忘れた微小な共有部分が残ってしまい、将来マンションを売却する際、元配偶者の印鑑が必要になるなど思わぬ事態を招くことがあります。

⑤管理費・修繕積立金の支払い状況の確認

マンションの管理費や修繕積立金の滞納がないかを管理組合に確認しておくことも大切です。もしこれらを滞納していたら、財産分与であなたがマンションを譲り受けた場合、滞納分(負債)まで引き継ぐことになります。知らぬ間に負債を押し付けられないよう、こちらもチェックしておきたいポイントの一つです。

第2章 マンションをどう分ける? 3つの具体的な選択肢とそれぞれの特徴

マンションの財産分与において、検討の柱となるのは主に「売却してお金で分ける」「一方が居住し続ける」「共有で維持する」の3つです。どの方法が正解となるかは、住宅ローンの残高や離婚後の生活設計によって判断が異なります。それぞれの特徴を把握したうえで、どの選択が自身にとって納得感が高いかを検討しましょう。

2-1 【売却して分ける】公平で後腐れがない換価分割

マンションを売却し、仲介手数料などの諸経費や住宅ローンの残債をすべて清算した上で手元に残った現金を分け合う方法です。この換価分割には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

現金に替えることで、ほぼ正確に夫婦の取り分を2分の1ずつに分けることができます。また、売却代金で住宅ローンを完済できれば、離婚後に住宅ローンの返済をめぐって相手方と連絡を取り合わねばならない状況が発生するリスクも抑えられます。

デメリット

住み慣れた家だけでなく、場合によっては地域も離れなければならない可能性があります。子供がいて転校を避けたい場合や、地域に住み続けたい場合には心理的・物理的な負担が生じるといえます。また、すぐに売却したくても不動産市場の状況によっては時間を要することもあり、早期の現金化が難しい場合もあります。

2-2 【一方が住み続ける】現金で精算する「代償分割」の仕組み

どちらか一方がマンションを取得し、もう一方に対してその持ち分(価値)に見合う現金(代償金)を支払う方法です。「子供のために環境を変えたくない」という理由で、母子が住み続ける際によく検討されるケースです。

代償金の算出方法の例(原則)

代償金(精算金)は原則として、以下の計算式で算出します。
代償金 =(マンションの時価 - 住宅ローン残高)÷ 2
例えば、マンションの時価が4,000万円でローンが完済されている場合、家をもらう側は出て行く側へ2,000万円を支払うのが原則です。ローンが2,000万円残っているなら、時価からローンを引いた残りの2,000万円が分与対象となり、その半分の1,000万円を支払います。

名義人がそのまま住み続ける場合の注意点

住宅ローンの名義人と居住者が一致しているため、銀行との関係でトラブルになりにくい形式といえます。ただし、相手方に支払う代償金が多額になる場合、その資金をどこから捻出するかがハードルとなる場合があります。手持ちの預貯金がない場合は、新たに代償金支払いのためのローンを組むなど資金計画の検討が必要です。

名義人でない側が住み続ける場合のリスク

名義人でない側が住み続ける場合、懸念事項となるのが「住宅ローンの名義変更」の問題です。例えば、「夫名義のマンションに離婚後も妻と子が住み続け、夫がローンを払い続ける」という約束をするケースがありますが、これには以下のようなリスクが考えられます。

1.銀行の契約違反

多くの場合、住宅ローン契約には「本人が居住すること」という条件があります。別居して名義人が出て行くと契約違反とみなされ、銀行からローンの一括返済を求められる可能性があります。

2.滞納のリスク

離婚後、名義人の経済状況が悪化したり再婚したりすることで、ローンの支払いが止まるケースは少なくありません。名義人が滞納すれば、結果として、マンションからの立ち退きを迫られることになります。

2-3 【共有名義のままにする】現物分割の将来的なリスク

「子供が卒業するまで」「今は答えが出しにくい状況だから」といった理由で、夫婦の共有名義のまま維持する方法を選ぶ方もいます。しかし、この方法は将来的なトラブルのリスクが高く、慎重に検討すべき選択肢といえます。

共有維持が推奨できない理由

マンションを売りたい状況になった時には、相手の同意(署名・捺印)が必要になります。しかし、離婚した相手方と連絡が取れなくなったり、感情的な対立が再燃して協力が得られなかったりすることは少なくありません。また、円満な関係を継続していたとしても、相手方が借金を抱えた場合にはマンションの持ち分が差し押さえられるリスクや、相手が亡くなった場合には相手方の親族が名義の権利を相続して共有関係が複雑化するリスクも想定されます。特別な事情がない限りは、離婚時に権利関係は分離しておくことをおすすめします。

第3章 住宅ローンが残っている場合の解消法

家という資産だけでなく、住宅ローンという負債をどう処理するかは、離婚後の生活の安定にかかわる重要ポイントです。実務で直面するアンダーローン・オーバーローン、またペアローンや連帯保証の注意点について解説します。

3-1 アンダーローンとオーバーローンで異なる対処法

まずは、不動産の査定額とローン残高を比較し、保有のマンションが以下のどちらの状態にあるかを確認しましょう。

アンダーローン(査定額 > ローン残高)

マンションの査定額がローン残高より高く、売却すれば手元に利益が出る状態をアンダーローンといいます。売却益を2分の1ずつ現金で分ける方法(2章で確認した換価分割)や、家を取得する側が相手方に代償金を支払う方法(代償分割)で、比較的スムーズにマンションの財産分与ができます。

オーバーローン(査定額 < ローン残高)

マンションの評価価値が低く、売却しても借金(ローン)が残る状態です。「マンション自体に財産的価値はなく、積極的な財産分与の対象にならない」と扱われるケースが多いです。ただし、住宅ローンという負債をどちらがどのように負担するかは整理が必要になります。

3-2 ペアローン・連帯保証に対処する3つの方法

夫婦で協力してローンを組んでいる場合(ペアローン)や、相手方の連帯保証人になって連帯保証型の住宅ローンを組んでいる場合、離婚したからといって自動的にその責任から逃れることはできません。銀行にとって、夫婦の離婚は契約変更の理由にはならないからです。こうしたケースでは主に以下の3つの方法を検討します。

① 住宅ローンの借り換え(単独ローンへの一本化)

マンションに住み続ける側が、自分一人の名義で新しいローンを引き直し、現在のペアローンや連帯保証付きローンを一括返済する方法です。確実な解決策の一つですが、住み続ける側にローンを背負えるだけの十分な収入がなく、審査に通らないケースも少なくありません。

② 別の親族などを新しく連帯保証人に立てる

現在の連帯保証人に代わり、親などを新しく保証人に立てることで、銀行に保証人の交代を認めてもらう方法もあります。ただし、銀行側は今の保証人よりも支払い能力が高い、あるいは同等程度の保証人を求めるため、承認のハードルは低いとはいえません。

③ マンションを売却して一括返済する

比較的選択されることが多い解決策です。売却代金でローンを完済すれば、ペアローンも連帯保証もなくなります。売却してもローンが残る(オーバーローン)場合は、不足分を預貯金などで補填して完済を目指すことになります。

3-3 「公正証書」は万能ではない?銀行との交渉における注意点

離婚の際、離婚協議書を作成する人は少なくありません。離婚協議書は、当事者同士で作成する私文書としてまとめることもできますし、公証役場で公正証書として作成することも可能です。
この離婚協議書に、「離婚後のローン返済は相手方が全額支払うと書いたから大丈夫」と考える方がいますが、これは危険な誤解です。まずは、私文書としての離婚協議書と、公正証書としての離婚協議書の法的効力の違いを確認しましょう。

離婚協議書(私文書)

私文書の離婚協議書で「ローンを支払う」と約束した内容は、当事者間では有効です。しかし、強制執行力はありません。そのため、相手方が支払いを怠った場合には、原則として、裁判手続きを経なければ相手方の財産差し押えなどを行うことはできません。

公正証書(公文書)

離婚協議書を公正証書として作成し、強制執行認諾文言を盛り込むことで、相手方が1回でもローン返済を怠れば、裁判なしで即座に相手方の給与や銀行口座を差し押さえることができます。

【重要】それでも公正証書で銀行に対抗するのは難しい

ただし、注意が必要なのは、銀行(債権者)との関係です。公正証書で「相手方が払う」と定めても、その効力が及ぶのは夫婦間(内部関係)に限られます。銀行などの債権者はこの合意に拘束されず、銀行が保証人に返済を求める権利も変わりません。そのため、連帯保証人になっている状態で相手方の支払いが滞った場合は、離婚や公正証書の有無にかかわらず、銀行(債権者)から返済を求められることになります。

第4章 離婚後のマンション手続きで発生する税金と登記

4-1 財産分与で贈与税はかかるのか?

不動産という高額な資産が動くため、「多額の税金が課されるのではないか」と不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、結論からいうと、適切な手続きを踏めば、財産分与に伴う贈与税は原則として発生しないケースが大半です。
ただし、例外的に課税対象となるケースもあります。

マンションを譲る側に課税される譲渡所得税

たとえば、意外な盲点となるのが、マンションの名義を外れる(譲渡する)側に課される可能性がある譲渡所得税です。税務上、財産分与で不動産を渡す行為は「当時の時価で相手方に譲渡した」とみなされます。そのため、マンションを購入した時よりも、分与する時点の時価が値上がりして利益(譲渡益)が出ている場合には、譲る側に譲渡所得税がかかる場合があるのです。これには、譲渡益から最高3,000万円までを控除できる特例が適用できるケースもあるので、税理士など専門家に確認するのが安心といえます。

4-2 不動産の名義変更「所有権移転登記」のタイミング

相手側に代わって自身がマンションの名義人になる場合は、名義変更の手続き「所有権移転登記」を行います。登記は、離婚届を提出した後でなければ申請できませんが、これを放置すると、将来マンションを売却しようとした際に元配偶者の協力が必要になり、思わぬトラブルを招く可能性があります。離婚後の必要手続きとして覚えておきましょう。

第5章 マンション財産分与でよくあるトラブル事例

マンションの財産分与では思わぬトラブルが起こることがあります。ここまでの内容のおさらいとして、よくある失敗パターンとそれを未然に防ぐ予防策を紹介します。

5-1 勝手にマンションを売却されてしまったケース

別居中、自分に無断で相手方がマンションを売却しようとするトラブルです。名義が相手方の単独であれば理論上は可能ですが、家庭裁判所に処分禁止の仮処分を申し立てることで、勝手な売却を阻止できる場合があります。

未然に防ぐには?

別居前に登記事項証明書を確認し、勝手な売却の予兆があれば弁護士へ相談して「審判前の保全処分」などを検討しましょう。名義人が独断で動ける状態を放置しないことが大切です。

5-2 離婚後に相手方と連絡が取れなくなり名義変更ができないケース

離婚時に、ローンが終わったらマンションの名義を変えることを口約束でしていたケースです。いざ数年後に連絡をしようとしても相手がどこにいるかわからず、名義変更ができない事態は少なくありません。

未然に防ぐには?

口約束にとどめることは避け、「執行受諾文言付きの公正証書」などの作成をおすすめします。将来の登記義務を明記し、可能であれば委任状などの必要書類を事前に預かっておくことで、離婚後の音信不通リスクを最小限に抑えられます。

5-3 同居中に親から援助を受けた頭金の取り扱い

購入時に自分の親から1,000万円の援助を受けた場合、その分は特有財産として財産分与の計算から差し引くことができます。しかし、これを証明する証拠が不十分だと、相手から「夫婦の貯金だと思っていた」と反論され、泥沼化することがあります。

未然に防ぐには?

親からの贈与を証明する振込履歴や、当時の贈与税申告書などの客観的な証拠を保管しておきましょう。特有財産であることを明確に主張できるよう、資金の出所を記した合意書を早期に作成するのも有効策の一つです。

第6章 後悔しないマンションの財産分与のために

離婚に伴うマンションの財産分与は、住宅ローンの清算、名義変更の登記、譲渡所得税をはじめとする税務リスクまで、検討すべき事項が多岐にわたります。特に住宅ローンが残っている場合は、相手方ではなく銀行との契約関係になるため、さらに慎重な準備が必要です。
マンションの財産分与を確実に進めるために、以下のチェックポイントを今一度見直してみましょう。

• 登記事項証明書を取得し、最新の権利関係を正確に把握できているか
• ローンの残高だけでなく、連帯保証人やペアローンの契約状況を確認しているか
• 相手方との離婚協議書は、公正証書として残しているか
• 離婚届の提出と、マンションの名義変更のタイミングを理解しているか

離婚に関するマンション(不動産)問題は、時間が経つほど相手方との連絡が困難になったり、資産価値が変動したりと、解決のハードルが上がりがちです。
私たちNexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスでは、弁護士による法的アドバイスはもちろん、グループ内の税理士、司法書士らと連携し、登記や税金、売却査定までワンストップでサポートできる体制を整えています。
那珂川市周辺でマンションおよび不動産の財産分与にお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。実務経験豊富な士業の専門家が寄り添い、あなたの再出発がより確かなものとなるよう最善の解決策をご提案いたします。

 

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2025.12.15

交通事故で腰椎捻挫に…慰謝料はいくら?後遺障害や通院期間による違い・請求の進め方を弁護士が解説


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交通事故で腰椎捻挫に…慰謝料はいくら?後遺障害や通院期間による違い・請求の進め方を弁護士が解説

 

交通事故で腰を強く打ち、痛みやしびれが続き、不安を抱える方は少なくありません。腰椎捻挫は見た目からは分かりづらい症状であるため、周囲の理解が得られにくく、つらい思いをする方が多いのも実情です。この記事では、腰椎捻挫の慰謝料相場、後遺障害等級との関係、通院期間による扱いの違い、示談交渉で注意すべき点などを、弁護士の視点から分かりやすく解説します。

第1章 交通事故による「腰椎捻挫」とは?症状と治療の基本

交通事故で腰に強い痛みが残り、「腰椎捻挫」と診断される方は多くいらっしゃいます。しかし、腰椎捻挫は見た目ではわかりづらいこともあり、周囲に理解されず、保険会社とのやり取りでも軽く扱われてしまうことが少なくありません。
法律的に評価されるのは、痛みがいつから、どの程度続き、日常生活や仕事へどのような影響が生じているかという点です。事故直後の行動や治療の受け方がその後の補償内容に直結するため、早い段階で正確な知識を持つことが重要です。
まずは、腰椎捻挫の特徴と、それが補償の判断にどのように関係してくるのかを整理します。

1-1 腰椎捻挫の特徴と、損害賠償額の判断で重視されるポイント

腰椎捻挫は、レントゲンやMRIを受けても異常が画像で確認しづらいため、そのつらさを十分に理解してもらえないことが少なくありません。
補償の面で特に知っておきたいのは、「痛みがどのように続き、生活に何が起きているか」が判断に大きく関わるということです。
保険会社とのやり取りでは次の点が特に重視される傾向があります。

・症状がいつから続いているか
・治療が適切に行われていたか
・診療記録に症状が一貫して残っているか

症状の経過をできるだけ正確に残していくためにも、まずは、なるべく早い段階で受診することが大切といえます。

1-2 腰椎捻挫とむち打ちを併発した場合に意識したい点

交通事故では、腰と首に同時に負荷がかかるケースが多く、腰椎捻挫とむち打ちを併発する方が少なくありません。併発した場合、次の点を特に意識する必要があります。

部位別に症状を伝えること

診療記録は部位ごとに記録されるため、「首と腰のどちらにどの症状があるか」を分けて説明することが大切です。

後遺障害の判断が複雑になることがある

併発していても、後遺障害等級は原則ひとつにまとめられるため、

・どの症状が主として残っているか
・生活への支障がどの部位で強いのか

といった点が評価の中心になります。

一貫した通院・症状の説明がより重要になる

首だけ、腰だけ、と一部の症状が記録に残っていないと「症状が無かった/軽かった」と受け取られることがあります。
症状が複数あるほど生活への負担は大きくなりますが、その実態が記録に残らないと適切な評価がなされないことがあるため、早い段階で意識しておきたいポイントといえます。

第2章 腰椎捻挫と後遺障害等級:認定の考え方と押さえておきたい視点

2-1 後遺障害等級とは(判断の枠組み)

後遺障害等級とは、治療を続けても症状が十分に改善せず、事故による影響が残っていると判断された場合に検討されるものです。
痛みやしびれといった神経症状がどのような内容で、どの程度続いているか、その症状が診療記録や検査結果などと整合的に結びついているかという点がみられ、その判断は、以下のような要素から行われます。

後遺障害等級を判断する要素の例
・診療記録に症状が継続して記載されているか
・検査結果や医師の所見との整合性はどうか
・症状が日常生活にどの程度の支障を生んでいるか

痛みを抱えながら生活を続けていても、通院間隔が空いてしまったり、症状を細かく説明できなかったりすると、記録上、症状の強さや継続が十分に伝わらないことがあります。そのため、診察の際には痛む動作や生活で困っている場面をできる範囲で具体的に伝え、無理のない範囲で定期的に受診することが大切になります。

2-2 腰椎捻挫で検討される主な等級(14級9号・12級13号)

腰椎捻挫で検討されることが多い後遺障害の等級には次の2つがあります。

14級9号(局部に神経症状を残すもの)

画像で明確な異常が確認できない場合でも、痛みやしびれが一定程度続いていることが、診療記録などから確認できる場合に検討される等級です。

12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

神経学的検査などで異常がみられるなど、症状を裏付ける医学的所見が確認できる場合に検討される等級です。
腰椎捻挫は画像上の異常が乏しいことが多く、事案によっては14級9号が検討される場面が比較的多いといえます。

第3章 腰椎捻挫の示談金はどう決まるのか

交通事故で腰椎捻挫になった場合、最終的に受け取ることになる金額は、一般に「示談金」と呼ばれます。ここでは、示談金と慰謝料の違いを整理したうえで、腰椎捻挫の場合にどのような考え方で金額が判断されるのかを順に説明します。

3-1 示談金とは何か? 示談金と慰謝料の違い

交通事故の話し合いでは、「慰謝料」という言葉がよく使われますが、実際に示談で合意するのは「示談金」という総額です。
示談金は、慰謝料だけでなく、事故によって生じたさまざまな損害をまとめた金額を指します。

慰謝料

事故による痛みや通院の負担など、精神的な損害に対する賠償

示談金

慰謝料を含め、治療費や休業損害、後遺障害がある場合の逸失利益などを合算した最終的な合意額
(逸失利益…事故にあわなければ得られたはずの収入や利益など、将来の収入減に関する部分)

3-2 腰椎捻挫で示談金の対象となる主な損害 (入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・逸失利益)

腰椎捻挫で示談金の中身として問題になる主な損害は、次のようなものです。

入通院慰謝料

事故後の痛みや通院による制限、生活上の不便さなど、治療期間中の精神的負担を補うもの

後遺障害慰謝料

治療を続けても痛みやしびれが残り、後遺障害等級が認定された場合に検討の対象となる

逸失利益

後遺障害が認められ、事故により将来の収入に影響が生じる場合に検討される
これらの損害がどの程度認められるかは、事故後の症状の経過や診療記録の内容、生活や仕事への影響の伝わり方などを総合的に考慮して判断されます。

3-3 示談金の金額を左右する算定基準 (自賠責基準・任意保険基準・裁判基準)

示談金の金額は、「どの基準で算定するか」によって大きく異なります。
一般に用いられる基準には、次の3つがあります。

自賠責基準

最低限の救済を目的とした基準で、金額は比較的低め

任意保険基準

保険会社が内部で用いている基準で、自賠責基準よりは高い傾向

裁判基準(いわゆる弁護士基準)

過去の裁判例をもとにした基準で、最も高い水準になることが多い
示談交渉では、どの基準を前提に金額が提示されているのかを確認することが重要になります。

3-4 保険会社の提示額はどのように算定されているのか

示談の相談では、「提示された金額が思っていたより低かった」と感じる方が少なくありません。これは、多くの場合、保険会社が任意保険基準をもとに金額を算定しているためです。
金額の高い・低いだけを見るのではなく、まずは「どの基準が使われているのか」を確認することが大切です。

3-5 示談のタイミングと症状固定 ― 保険会社からの連絡を受けたときに注意すべき点

示談は、症状固定(それ以上治療を続けても大きな改善が見込めないと判断される段階)を一つの目安として進められることが多くあります。実際の場面では、通院中に相手方の保険会社から「そろそろ治療を終えてはどうか」「症状固定ではないか」といった連絡を受けることも少なくありません。
しかし、その時点で示談に進むべきかどうかは慎重に判断する必要があります。治療を続ける必要があるかどうかは、保険会社ではなく医師が判断するものです。保険会社からの連絡だけをもとに治療の継続や示談を決めてしまうと、症状が十分に把握・評価されないまま手続きが進んでしまう可能性もありますし、タイミングによっては後遺障害申請ができるかどうかや、示談金として合意する内容に影響が及ぶ可能性もあります。
相手方保険会社から症状固定による示談提示を受けた場合には、症状や治療の見通し、日常生活に残っている支障について医師とよく相談したうえで検討することが大切です。

第4章 腰椎捻挫の慰謝料請求の流れと必要な資料

腰椎捻挫は見た目では分かりづらい怪我であるため、症状の経過や生活への支障をどのように整理するかが、慰謝料を検討する際の判断材料に影響します。
ここでは、事故後から慰謝料の算定・検討に至るまでの流れまでの流れと、その過程で何を準備しておくとよいかを説明します。

4-1 事故後から慰謝料算定までの一連の流れ

腰椎捻挫の場合、慰謝料の算定に向けては、概ね次のような流れで対応が進みます。

① 事故直後の受診

痛みが軽くてもできる限り早い受診が必要です。どの症状が、いつ、どのように出たのかが記録されるため、入院・通院慰謝料を検討する前提資料になります。

② 通院を継続し、症状を医師に伝える
・動かしたときの痛み
・姿勢を保ちづらい状況
・生活や仕事で支障が出ている場面

こうした点を説明することで、診療記録に症状の経過が残りやすくなり、慰謝料算定時に症状の継続性を判断する材料になります。

③ 治療の経過を踏まえた評価

治療期間や通院状況、症状の推移を踏まえて、入通院慰謝料の対象となる期間や程度が検討されます

④ 症状固定後の判断

治療を続けても改善が見込めないと判断された場合には、後遺障害慰謝料の対象となるかどうかが検討されることがあります。

⑤ 慰謝料額の算定

上記の経過や資料をもとに、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料について、どの程度の金額が考えられるかが整理されます。

⑥ 慰謝料の交渉・請求

算定された内容を前提に、相手方保険会社に対して慰謝料の請求や交渉が行われます。

⑦ 交渉がまとまらなかった場合の対応

話し合いによる解決が難しい場合には、訴訟などの法的手続を検討することもあります。

4-2 慰謝料請求にあたって重要となる資料

慰謝料を検討する際には、次のような資料が重要になります。

資料名 内容・目的
診断書 事故によって腰椎捻挫と診断されたこと、症状の内容を確認するための基本資料
診療記録(カルテ) 症状の経過、通院頻度、治療内容などを把握し、症状の継続性を判断する資料
通院の領収書・交通費の記録 通院にかかった交通費や診療費の自己負担分を実費として請求するための資料
事故証明書 交通事故が発生した事実を公的に証明する資料
事故状況が分かる資料 事故現場や車両損傷の写真など、事故態様や衝撃の程度を説明するための資料
休業損害に関する資料 仕事を休んだことによる収入減を請求する際に用いる資料(休業証明書、給与明細等)
後遺障害診断書 症状が残った場合に、後遺障害慰謝料を検討するための資料

4-3 後遺障害申請と慰謝料との関係

腰椎捻挫で症状が長く続く場合には、後遺障害の申請が検討されることがあります。
後遺障害等級が認定されるかどうかによって、後遺障害慰謝料を請求できるかも変わります。
後遺障害の申請方法には、「被害者請求」「事前認定」の2つがあります。
被害者請求は、被害者自身が必要書類を整えて申請する方法であり、事前認定は、相手方保険会社が書類を取りまとめて申請手続きを進める方式です。
いずれの方法を用いる場合であっても、症状がどのように続いているか、日常生活にどのような支障が出ているかが、診療記録などに適切に残っているかが判断するうえで重視されます。

第5章 腰椎捻挫の慰謝料請求で問題が生じやすい場面と対処の考え方

5-1 通院が途切れてしまった場合に起こりやすい誤解

仕事や家庭の事情で通院が続けられない方も多くいらっしゃいます。
ただ、通院の間隔があいてしまうと、資料上は「症状が軽くなっていたのでは」と受け取られることがあります。
そのため、診察時には、痛みが続いていたことに加えて、なぜ通院が途切れてしまったのかという通院できなかった事情も可能な範囲で説明し、記録に残してもらうことが大切です。

5-2 症状を医師に十分伝えられていなかった場合の影響

診察の際に症状が十分に伝わっていないと、記録上では症状が弱いように受け取られてしまうおそれがあります。
医師に症状を伝える際には、「痛い」「つらい」と伝えるだけでなく、どの動作をすると痛みが出るか、痛みが出る頻度やタイミング、痛みが出る日と出ない日の差がある、など具体的に説明しておくことで、症状の実態が診療記録に残りやすくなりなります。

第6章 弁護士が関わる意義:適切な評価につなげるために

腰椎捻挫のように、症状が見えにくいけがでは、治療経過や生活への支障がどのように記録されているかで補償の判断が分かれることがあります。
事故後の状況をご自身だけで整理しようとすると、不安を抱えたまま決断を迫られてしまう場面もあるため、必要に応じて弁護士のサポートが役に立つことがあります。

6-1 慰謝料額の検討と判断材料の整理

慰謝料を検討する際には、通院期間の長さだけでなく、症状の経過、診療記録の内容、日常生活や仕事への支障がどのように評価されているかなど、複数の要素を総合的に確認する必要があります。
弁護士が関わることで、提示された金額がどの基準に基づくものなのか、どの点が評価されているのかを整理しながら確認することができ、現時点で判断すべき点や、追加で確認しておいた方がよい事項が明確になります。

6-2 後遺障害等級申請における視点の補強

後遺障害の申請では、診療記録や検査結果と症状の説明が一致しているかが大きな判断材料になります。しかし、日常でどれほどの支障が生じているかは、記録だけでは伝わりにくく、申請の段階でどこを補足すべきなのかが分からないまま進んでしまうこともあります。
必要な資料が揃っているか、症状の経過がどのように評価されそうかといった視点を確認しながら進めることで、後になって、この点も伝えておけばよかったと悔やむ場面を減らすことにつながります。

6-3 示談のタイミングを冷静に判断する

示談は原則やり直しができないため、時期を誤ると、症状が残ったまま補償が不十分に終わってしまうことがあります。弁護士が状況を丁寧に振り返りながら進めることで、この段階で示談に応じてしまってよいのかどうかを落ち着いて検討しやすくなります。

第7章 まとめ:腰椎捻挫は症状が伝わりにくいため、丁寧な対応が必要

7-1 記事全体の要点整理

腰椎捻挫の補償を検討する際に特に意識しておきたいのは次の点です。

・症状がいつから続いているかが診療記録から確認できること
・生活や仕事で困っている場面を診察時に伝えておくこと
・示談の時期を焦らず、治療の見通しを確認しながら進めること
・後遺障害申請を検討する場合は、早めに必要な資料を把握しておくこと

7-2 事故後に自身で確認しておきたい点

・痛みの変化や生活への支障を、診察時に可能な範囲で伝えられているか
・通院が難しい時期があった場合、その事情を医師に説明できているか
・保険会社からの連絡内容に、不安や疑問が残っていないか
・示談に進む前に、現在の症状と治療の見通しを整理できているか

こうした点を振り返ることで、事故後の判断をより落ち着いて進めやすくなります。

7-3 不安が続く場合の相談先について

腰椎捻挫の対応は、症状が見えづらいがゆえに、補償の判断でも誤解が生じやすい場面があります。
判断に迷ったときや、示談や後遺障害の申請をどのように進めればよいか悩むときは、早めに相談先を確保しておくことが安心につながります。
私たち弁護士法人Nexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスでは、これまで多くの交通事故相談を受けてきた経験をもとに、事故後の状況整理や補償の検討について丁寧にお話を伺いながら進めています。不安な点を一緒に整理し、どのような進め方が適切かを検討することもできますので、気になる点や不安が残る場合には、いつでもご相談いただければと思います。

 

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2025.12.12

交通事故でむち打ちになったときの慰謝料相場とは?|後遺障害・通院期間・示談交渉のポイントまで弁護士が解説


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交通事故でむち打ちになったときの慰謝料相場とは?|後遺障害・通院期間・示談交渉のポイントまで弁護士が解説

 

交通事故でむち打ちになったものの、痛みが続くのに理解されない、保険会社から提示された金額が適切なのか分からない——こうした不安を抱える方は少なくありません。むち打ちの慰謝料は、通院期間や症状の残り方、後遺障害の有無によって大きく変わります。この記事では、慰謝料相場や判断基準、示談交渉で注意すべき点を整理し、適切な補償を受け取るための具体的な視点を解説します。

第1章 交通事故の「むち打ち症」とは?まず知っておきたい基本

むち打ち症で特に重要なのは、症状そのものよりも、事故後の行動や治療経過がどのように記録されているかという点です。これは後の慰謝料算定や後遺障害等級の判断に直接関わるため、事故直後から知っておくことが大切です。
この章では、むち打ち症が法的にどのように扱われ、どのような点が補償額の判断に影響するのかを整理していきます。

1-1 むち打ち症で問題になりやすい“法的な視点”

むち打ち症は画像で異常が確認できないケースも多く、痛みが続いていても資料上は分かりにくいことがあります。
しかし、症状の裏付けとなる記録が不足していると、保険会社から「治療の必要性が低い」と評価されることがあるため注意が必要です。
たとえば次のような場合、後の手続で誤解が生じやすくなります。

• 初期の受診が遅れた
• 症状の訴えが診療録に十分記載されていない
• 通院の間隔があいている

こうしたケースは、「記録上の一貫性が不足している」と受け取られやすい可能性があります。
事故直後は体調も気持ちも不安定で、考えがまとまらないことは自然なことです。そのうえで、後日のトラブルを避けるためには、早めの受診と症状の正確な共有が大切になります。

1-2 事故直後に起こりやすい誤解

むち打ち症に関する相談でよくあるのは、事故直後の判断が後になって影響するケースです。
よく見られるのは次のようなケースです。

• 「軽い痛みだから大丈夫」と思い受診を遅らせる
• 症状を細かく説明せず、診療録に残っていない
• 接骨院中心の通院になり、整形外科での診察が少ない

いずれも事故直後の混乱の中では無理もない判断ですが、法的手続では治療経過の記録が重視されるため、後悔につながることがあります。

第2章 むち打ち症の慰謝料相場はどう決まる?基準と全体像

交通事故に遭われた方は、「自分の場合の慰謝料はいくらになるのか」という点を気にされることが多いです。慰謝料は一律ではなく、複数の基準によって大きく変動します。

2-1 慰謝料には3つの基準がある

交通事故の慰謝料は、次の3つの基準のいずれかで算定されます。

自賠責基準

最低限の救済を目的とした基準で金額は低い傾向

任意保険基準

各保険会社が内部で定める基準

弁護士基準(裁判基準)

裁判例をもとにした基準で金額は高い傾向
同じ症状・同じ通院期間でも、基準が違えば慰謝料も大きく変わります。まずはどの基準が適用されているのかを知ることが大切です。

2-2 通院期間と実通院日数が重視される理由

むち打ち症は、検査結果だけでは症状の強さが分かりにくいことが多いため、治療期間(事故日から治療が終わるまでの期間)や実際に通院した日数が、症状の経過を把握する参考として扱われることが比較的多くあります。
治療が一定期間継続している場合には、「症状が続いていたのだろう」という判断の根拠の一つとして扱われることがあります。反対に通院があまりに途切れていると「一時的に改善していたのではないか」と判断されてしまう場合もあります。ただし、これは一般的な傾向であり、個々の事情によって評価が変わることも少なくありません。
たとえば、仕事や家庭の事情で通院が難しい時期があったとしても、自治体の診療記録や症状の推移が確認できる資料があれば、治療の必要性が説明できる場合もあります。

2-3 実務で注意が必要なポイント

慰謝料相場の算定には数字以上に、事故後の状況をどう裏付けていくかという点が重要です。
よくあるのは以下のような場面です。

• 保険会社から症状固定として治療費を打ち切られる
※症状固定…それ以上の改善が見込めないと判断される治療の区切り

• 診療録に症状が十分に記載されていない
• 家庭や仕事の事情で通院が思うようにできない

どれも被害者の方の責任ではありませんが、資料不足のまま示談が進むと、実際より低い評価になるおそれがあります。必要な補償を得るためにも、事故後の経過をどのように整理し、必要な資料をどう揃えるかが大切です。

第3章 慰謝料額に影響する主なポイント

むち打ち症の慰謝料は、単に「痛みがあるかどうか」だけで決まるわけではなく、事故後の経過や治療状況、その症状が日常生活にどの程度影響したかなど、複数の要素から総合的に判断されます。ここでは、そのなかでも特に相談現場で問題となりやすい視点を整理します。

3-1 治療期間と実際の通院状況

むち打ち症は、治療をどのように続けてきたかが症状の経過を判断する参考として扱われることがあります。
たとえば、以下のような部分が重視される傾向があります。

• 治療期間がどの程度続いたか
• 適切な間隔で通院できていたか
• 症状の変化が診療録に記録されているか

これは、治療期間が長ければ慰謝料が自動的に増えるという意味ではなく、症状が続いていたことを裏付ける材料として上記のような部分を見られやすいという意味です。
仕事や家庭の事情などで定期的な通院が難しい場合は、その事情をきちんと説明できる資料が揃っていれば、通院の必要性が理解されやすくなることもあります。

3-2 事故状況(衝撃の程度)との関係

事故の状況や衝撃の大きさが、症状の重さの判断に影響することもあります。
たとえば、強い追突で車が大きく損傷している場合には、「身体への負荷も大きかっただろう」と評価されやすい傾向があります。
もちろん、車の損傷が小さくても強い痛みが続くケースもありますので事故状況だけで決まるものではありませんが、事故状況が治療経過の評価とあわせて検討される場面は少なくありません。

3-3 日常生活や仕事への影響

むち打ち症の痛みや不調は、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼすことがあります。

• 長時間の運転が難しい
• デスクワークで同じ姿勢を保ちづらい
• 育児や家事に支障が出ている

こうした状況は、事故前と比べた生活の変化として、慰謝料の検討において重要な材料となることがあります。
ただし、生活上の支障も「言っただけ」では評価されづらいため、診察時に医師に伝えておくことが大切です。

3-4 後遺症が残った場合の等級認定

むち打ち症で痛みやしびれが長期間続いた場合、後遺障害等級が検討されることがあります。
等級が認定されると、慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」や「逸失利益(症状が残ったことで将来の収入が減少すると考えられる部分)」などが対象となるため、補償の額が大きく変わることがあります。
ただし、後遺障害は医学的証明が必要となるため、症状が続いていることが記録として確認できるかどうかが重要です。
等級が認められるかどうかは、治療経過・症状の訴え方・医師の見解など、複数の事情が関係します。
後遺障害が疑われる場合は、できる限り早めに治療経過を整理し、必要な資料が揃えられるよう準備することが大切です。

第4章 後遺障害と慰謝料の関係

むち打ち症が長期間続き、症状が治療によって十分に改善しない場合には、後遺障害等級が問題となることがあります。
ここでは、むち打ち症で特に関係が深い等級や、その考え方を整理します。

4-1 後遺障害とはどういうものか

後遺障害とは、治療を続けても改善が難しく、一定の症状が残っている状態を指します。
むち打ち症の場合、痛み・しびれ・可動域の制限などが長く続くことがありますが、これが必ずしも後遺障害に該当するわけではありません。
実務では、
「症状が残っていること」
だけでなく、
「それがどの程度医療上確認できるのか」
が重要になります。

4-2 むち打ち症で多い等級:14級9号・12級13号

むち打ち症で検討されることが多いのは以下の等級です。

14級9号

 痛みやしびれが続いているが、画像所見などで明確な異常が確認できないケース

12級13号

 神経症状について医学的な裏付けが認められるケース
14級9号は比較的多く申請されますが、認定の可否は症状の訴え方や記録の内容によって左右されることがあります。12級13号では、画像所見に限らず、神経学的検査など医学的に症状を裏付ける所見が求められることがあります。

4-3 後遺障害認定の流れと必要書類

後遺障害を申請する場合には、一般的に次のような資料が必要となることがあります。

• 医師の診断書
• これまでの通院記録
• 事故状況が分かる資料
• 症状の推移を確認できる書類

これらの資料が整っていないと、症状が続いていることや、事故との因果関係を判断することが難しくなる可能性があります。

4-4 認定に影響するポイント

認定に影響する要素は一つではなく、「症状が一貫して記録されているか」「通院頻度や治療内容に無理がないか」「医師が症状についてどのように評価しているか」など複数の要素が組み合わさって判断されることが多いです。
症状が続いているにもかかわらず、適切な記録が残されていないと後遺障害が否定される理由になりかねません。そのため、後遺障害の可能性がある場合は、できるだけ早い段階で治療経過の整理を行うことが大切です。

第5章 慰謝料を適切に受け取るために押さえておきたいポイント

むち打ち症の慰謝料は、事故後の対応によって適切に評価される場合もあれば、準備不足によって本来受け取れるはずの補償が十分に反映されないこともあります。ここでは、相談の場面で特に重要と感じるポイントを整理します。

5-1 事故直後の受診と症状の共有

事故直後は痛みが軽いと感じても、後から症状が強くなることがあります。そのため、早めに医療機関を受診しておくことが大切です。
初診のタイミングや診療録は、後に保険会社とのやり取りを行う際の重要な資料となります。「どのような症状がいつから続いているのか」を後から確認できる状態にしておくことで、適切な補償につながりやすくなります。

5-2 整形外科と接骨院のバランス

むち打ち症の方の中には、接骨院による施術を希望する方も多くいらっしゃいます。施術自体が悪いわけではありませんが、慰謝料の判断においては医師による診断や治療記録が中心的な資料になるため、整形外科での通院を並行して行うことが望ましい場合があります。整形外科では医師による診断や治療記録が作成されるため、法的手続で必要となる資料を確保しやすくなるからです。接骨院での施術を否定するものではありませんが、医療上の評価を受けられる体制を整えておくことが大切です。

5-3 症状の伝え方と診療録の重要性

むち打ち症は日によって痛みの強さが変わったり、天候によって影響を受けたりすることもあります。そのため、診察時に症状を説明する際は、日常生活で支障を感じている点が伝わるように話すことを心がけましょう。
診療録は医師が診察内容を記録するもので、後の手続で重要な資料になることがあります。そのため診察時に症状を伝えておくことで、結果的に記録に反映されやすくなります。大げさに言う必要はありませんが、痛みがある日はその旨を医師に伝えておくことが大切です。

5-4 保険会社とのやり取りで注意したいこと

事故後しばらく経つと、保険会社から「そろそろ症状固定と思われるので」と治療費を打ち切られたケースをよく耳にします。しかし、症状が残っている場合には、医師と相談したうえで治療方針を決めることが重要です。
保険会社の判断は被害者の身体の状況を必ずしも反映したものではないこともあるため、慎重に検討する必要があります。治療中の段階で悩む場合には、無理に判断せず、治療の状況に詳しい医師や交通事故の手続きに詳しい弁護士に相談できるようにしておくと安心です。

第6章 示談で後悔しないために理解しておきたいこと

慰謝料の話し合い(示談)は、多くの方にとって初めての経験であり、どのタイミングで何を確認すべきか分からないまま進んでしまうことが少なくありません。ここでは、示談を進める際に押さえておきたい考え方を整理します。

6-1 提示額が低く感じられる理由

保険会社から提示される金額が「思っていたより低い」と感じる方は多くいらっしゃいます。
その理由の一つとして、保険会社は自社の基準に沿って金額を算定することが一般的であり、必ずしも裁判例などで用いられる基準と同じではない点が挙げられます。
そのため、提示額が適切かどうかは、他の基準と比較しながら慎重に判断する必要があります。「低いと感じる」こと自体は珍しいことではありません。

6-2 示談に応じる前に確認したい点

示談は一度成立すると原則としてやり直しができません(錯誤・詐欺・強迫など、法律上の特別な事情がある場合を除く)。そのため、次のような点を確認しておくことが大切です。

• 症状が十分に回復しているか
• 今後も治療が必要な見込みはないか
• 後遺障害の申請を検討すべき状態ではないか
• 提示された慰謝料が、症状や通院状況と比べて妥当な額といえるか

これらを確認せずに示談に応じてしまうと、後になって「もう少し慎重に判断すべきだった」と感じることがあります。

6-3 専門家に相談すると補償の判断が変わることがある

示談に関する相談では、「自分では妥当かどうか判断しにくい」という声を耳にすることがあります。
専門家に相談すると、提示された慰謝料が適切かどうかについて客観的に検討しやすくなります。
具体的には、どの基準に基づいて計算されているのか、事故状況や通院状況がどのように受け止められるのか、後遺障害申請を検討すべき状態かどうかといった点を、個別の事情に沿って確認できます。こうした視点が加わることで、補償内容が適切に評価される可能性が高まり、示談で後悔するリスクを減らす助けになり得ます。

第7章 むち打ち症で特に多い質問とその考え方【FAQ】

よく寄せられる質問をもとに、考え方の整理に役立つポイントを整理してみましょう。

7-1 「通院を続ければ慰謝料は増えるのですか?」

通院期間が長ければ慰謝料が必ず増えるわけではありません。ただ、治療を続けた記録が残っていると、「その間も症状が続いていたのだろう」と判断されやすくなるため、補償の検討において参考にされることがあります。
大切なのは、「必要な治療を、必要な期間に、適切に受ける」ということです。無理に通院を増やす必要はありませんが、痛みが残っている場合には、医師と相談しながら治療を続けることも大切です。

7-2 「仕事を休んだ分は補償されますか?」

事故が原因で仕事を休まざるを得なかった場合、その分の収入減について補償(休業損害)が認められることがあります。
給与明細や源泉徴収票など、収入状況が分かる資料が必要になりますが、働き方や勤務状況によって必要な資料は異なります。
パート・アルバイト・自営業の方でも、収入の減少が分かる資料が揃っていれば補償の対象となる可能性があります。

7-3 「後遺障害が認められなかったらどうすればよいですか?」

後遺障害が認められなかった場合でも、申し立ての内容や資料の整理方法によっては、再度の検討(いわゆる異議申立て)が可能なケースがあります。
ただし、異議申立ては「何をどのように補強するか」が重要となるため、治療経過や症状の推移を丁寧に見直し、必要な資料を整えることが必要といえます。

7-4 「保険会社から通院をやめるように言われたのですが…」

保険会社が治療費の支払いを打ち切ったとしても、治療を中断しなければならないわけではありません。医師と相談して治療が必要な状態であれば、健康保険を使用して治療を継続できる場合があります(その際は健康保険組合への届出が必要です)。治療を続けても症状が大きく改善しない場合には、後遺障害等級の認定手続きを検討することがあります。後遺障害の手続きを検討する際には、必要な資料や進め方について専門的な判断が求められる場面もあるため、弁護士など専門家に意見を聞いてみることをおすすめします。

第8章 弁護士が関わることで判断しやすくなる場面

むち打ち症の慰謝料や示談の検討は、事故の状況や治療経過によって判断が分かれることが多く、「この判断でよいのだろうか」と迷う場面が生じることがあります。そうした場面では、必要に応じて専門家の視点を得ることで、落ち着いて進めやすくなる場合もあります。ここでは弁護士が関わることで判断しやすくなる典型的な場面を整理します。

8-1 提示された慰謝料の妥当性が分からないとき

慰謝料には複数の基準があるため、保険会社から提示された金額が適切かどうかをご自身だけで判断することは簡単ではありません。
弁護士が関わると、事故状況・通院状況・後遺症の可能性などを踏まえたうえで、どの程度の補償が検討されるのか整理しやすくなります。

8-2 後遺障害を申請すべきか迷うとき

後遺障害の申請は、医学的所見の有無や治療経過との整合性など、多くの情報を踏まえて判断する必要があります。
弁護士が関わることで、

• 申請を検討した方がよい状態なのか
• 資料として足りない点は何か
• 説明すべきポイントはどこか

といった整理がしやすくなります。
申請の可否を決めるのではなく、判断するための材料が揃うイメージです。

8-3 保険会社とのやり取りに不安があるとき

保険会社とのやり取りでは、治療の必要性や通院状況などについて、被害者の方が説明に困る場面が少なくありません。
たとえば、まだ症状があるにもかかわらず、保険会社から治療費の支払いを一定の時期で終了する旨が伝えられることもあり、その判断に迷う方も多くいらっしゃいます。
弁護士が関わることで、治療費の支払い終了の判断が妥当かどうか、治療を続ける必要性が資料上どのように受け止められる可能性があるか、どの点を説明しておくべきかなどを整理しやすくなり、不安が軽減されることがあります。

8-4 示談のタイミングを決めるとき

示談は一度成立するとやり直しが難しいため、「今示談してよいのか」を慎重に判断する必要があります。
特に以下のような場合、判断が難しくなることがあります。

• まだ痛みが残っている
• 治療が再度必要になる可能性がある
• 後遺障害の可能性が不安

こうした場面では、事故状況・治療経過・症状の変化を総合的に整理し、どのタイミングで示談を検討すべきかを見極めていく必要があります。
弁護士が関わることで、この整理が進めやすくなり、後悔のない判断につながりやすくなるといえます。

第9章 まとめ:不安を抱えたときに考えたいこと

むち打ち症の対応では、事故直後の受診、症状の共有、通院の進め方、示談の判断など、いくつか押さえておきたいポイントがあります。どれも特別なことではなく、「必要な治療を受けながら、状況を丁寧に記録していく」 という姿勢が大切です。
ただ、慰謝料の妥当性や示談のタイミング、後遺障害申請の可否など、個人だけでは判断が難しく感じられる場面もあります。迷いがある場合には、専門家に意見を聞くことで、必要な情報が整理され、落ち着いて対応しやすくなることがあります。
むち打ち症の痛みや不安が続いているとき、また手続きなどに不安を抱えている場合は、私たち弁護士法人Nexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスへお気軽にご相談ください。状況を丁寧に伺いながら、どのような進め方が適切か一緒に検討いたします。

 

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2025.12.10

交通事故で同乗者が死亡した場合の慰謝料請求|遺族が知るべき基準・注意点・手続きを弁護士が解説


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交通事故で同乗者が死亡した場合の慰謝料請求|遺族が知るべき基準・注意点・手続きを弁護士が解説

 

交通事故で大切な方が同乗中に亡くなられた場合、ご遺族には悲しみと同時に「慰謝料は請求できるのか」「何を準備すればよいのか」といった不安が押し寄せます。加害者が運転者本人なのか第三者なのかによって法的な整理も変わり、判断が難しい場面も少なくありません。本記事では、慰謝料の基準、過失の考え方、必要となる手続きなどをできるだけわかりやすくお伝えします。

第1章 交通事故で同乗者が死亡した場合の慰謝料請求とは

1-1 同乗者死亡事故における慰謝料請求の基本的な仕組み

交通事故で同乗者が亡くなられた場合も、基本的な考え方は、一般的な死亡事故の場合と同じように不法行為に基づく損害賠償請求と整理されます。
民法上は、加害者が故意または過失によって他人の生命・身体に損害を与えた場合、その損害を賠償する義務を負うとされています。死亡事故では、亡くなられた方ご本人の精神的苦痛に対する死亡慰謝料と、ご遺族の精神的苦痛に対する慰謝料、そして逸失利益や葬儀費用などが問題になります。
同乗者事故の場合の特徴は、事故を起こした運転者と同乗者の関係性です。運転していたのが家族や友人であることも多く、責任を追及したい気持ちと人間関係を壊したくない思いがぶつかり、法律的な判断と感情の整理が難しくなることがあります。
そのため、まずは法的な枠組みを知った上で、「誰に、どのような範囲で請求できるのか」を落ち着いて整理していくことが大切になります。

1-2 慰謝料を請求できる遺族の範囲について

誰が慰謝料を請求できるかについては、法律上の考え方と、自賠責保険の運用上の考え方が参考になります。
自賠責保険では、死亡事故の場合の遺族慰謝料の請求権者(請求する権利を持つ人)を、原則として「被害者の父母・配偶者・子」としています。
裁判でも、おおむねこれと同じ範囲の近親者に、固有の慰謝料請求権が認められてきました。被害者と特別に密接な生活関係にあった方(たとえば、事実婚の配偶者など)については、個別事情によって慰謝料が認められることもありますが、事案ごとの判断になります。
また、ご遺族が複数いる場合でも、各人がそれぞれ別々に請求するという形もあれば、遺族の代表者がまとめて請求するという形がとられることもあります。どの方法が適切かは、相続関係やご家族の意向も踏まえて検討していくことになります。

1-3 加害者が運転者本人の場合と第三者の場合にどのような違いが生じるのか

同乗者死亡事故では、次のようなパターンが考えられます。

・運転者の過失が主な原因となった単独事故
・運転者と他の車両の双方に過失がある事故
・運転者に過失がほとんどなく、相手方車両の過失が大きい事故

例えば、家族が運転する車に同乗していて事故に遭った場合、ご遺族は交通事故の相手方の加害者に対してだけでなく、運転者(家族)に対しても損害賠償請求を行うことが法的には可能と整理されます。
一方で、感情面では身内を加害者として扱うのかという重い問題が生じます。そのため、実務上は、どの保険をどの順番で利用していくか、保険会社とのやり取りをどのような整理で進めるかを、専門家と相談しながら進めることが少なくありません。

第2章 同乗者死亡事故の慰謝料額|基準と相場の考え方

2-1 自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の違いについて

死亡事故の慰謝料には、大きく分けて次の三つの基準があります。

・自賠責基準
・任意保険基準
・弁護士基準(裁判基準)

自賠責基準は、法律に基づく最低限の補償額を決めたもので、他の基準と比べると最も低い金額になることが多いとされています。
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めているもので、詳細は公表されていませんが、一般的には自賠責基準と弁護士基準の中間程度の金額になると説明されることが多いです。
弁護士基準(裁判基準)は、過去の裁判例を基に、裁判所でどの程度の慰謝料が認められてきたかを整理したものです。交通事故の実務で用いられている専門書に掲載されている水準で、弁護士が保険会社との交渉や裁判で参考にしている基準と考えていただくとイメージしやすいと思います。死亡慰謝料については、三つの基準のうち、弁護士基準が最も高額になるのが通常とされています。

2-2 死亡慰謝料の大まかな目安と遺族構成による変動

死亡事故の慰謝料は、同じ事故であっても、どの基準で算定されるかによって金額が大きく変わることがあります。ここでは、違いを理解していただくために、代表的な基準を例として示します。
まず「自賠責基準」では、死亡慰謝料はおおむね次のような枠組みで算定されます。以下は代表的な例です。

被害者本人分

400万円

遺族分

遺族の人数に応じて550万〜750万円程度

被扶養者がいる場合

200万円が加算されることがあります

一方、弁護士が交渉や裁判で参考にする「弁護士基準(裁判基準)」では、過去の裁判例をもとにした相場が用いられるため、自賠責基準より高い水準となることが多いとされています。たとえば、代表的な目安として、

一家の生活を支えていた方の場合

おおむね2,800万円前後

配偶者や母親の場合

おおむね2,500万円前後

その他の場合

2,000万〜2,500万円程度

といった水準が挙げられますが、実際の認定額は個別の事情により増減する可能性があります。
また、慰謝料は基準だけで決まるものではなく、同乗者がどのような立場にあったか(家族構成、収入状況など)によっても、裁判所が認定する額が変わることもあります。亡くなられた方が家庭の収入を支えていたかどうか、ご遺族の生活への影響がどの程度かといった事情が考慮されることが一般的です。

2-3 葬儀費用や逸失利益など慰謝料以外に請求可能な損害

死亡事故では、慰謝料だけではなく、次のような損害も請求の対象となります。

・葬儀費用
・逸失利益(将来得られたはずの収入)
・死亡までの治療費や入通院慰謝料
・交通費や付添費用など

特に逸失利益は、被害者の年齢や職業、収入額などを基に、将来得られたであろう収入を推計して算定されます。ご遺族から見ると、数字に置き換えられてしまうこと自体がつらいと感じられることも多いのですが、現行の損害賠償制度では、お金という形で評価せざるを得ない場面が多いのが実情です。
その一方で、適切な計算を行うことで、将来の生活の不安を和らげる一助となることもあります。納得のいく形で話し合いを進められるよう、ご遺族側で内容を理解しておくことが役に立つ場合があります。

第3章 過失の有無によって何が変わるのか

3-1 同乗者の「自動車同乗減額(無謀な同乗)」が問題になる場面

同乗者死亡事故では、「好意で車に乗せてもらっていたから、慰謝料が減らされるのではないか」というご相談を受けることがあります。
かつては「好意同乗」を理由に慰謝料の減額が検討される裁判例もありましたが、現在の実務では、単に好意で乗っていたという事情だけをもって、直ちに減額すべきではないという考え方が一般的になってきています。
一方で、飲酒運転や極端な速度超過など、明らかに危険な運転状況であることを知りながら同乗した場合には、その事情も含めて過失相殺や減額が検討されることがあります。

3-2 シートベルト未着用が過失の判断に与える影響

同乗者がシートベルトを着用していなかった場合、事故の結果が重くなったと評価されることがあります。裁判例の中には、シートベルト未着用により車外に放り出され、死亡に至った事案で、同乗者側の過失が一定割合認められたものもあります。
もっとも、どの程度の割合で減額されるか、そもそも減額すべきかどうかは、

・シートベルトをしていればどこまで被害を防げたといえるか
・事故の状況やスピード
・座っていた位置(前席・後部座席)

など、さまざまな要素を踏まえて判断されます。したがって、「シートベルトをしていなかったから必ず過失が認められる」「全て同乗者の責任になる」ということではなく、あくまで個別の事情を踏まえて、全体のバランスのなかで過失が検討されることになります。

3-3 飲酒運転や速度超過など重大な違反行為がある場合

飲酒運転や極端な速度超過など、重大な違反行為がある事故では、運転者の責任が重く評価されやすいです。
同時に、同乗者側がその危険性を知りながら自ら同乗したかどうかも重要な要素となります。例えば、飲酒の場に同席しており、運転者が相当量の酒を飲んでいたことを認識していた場合などは、「危険な運転を予想できたのではないか」と判断される余地が生じます。
ただ、実際の現場では、雰囲気の中で深く考えずに乗ってしまうことも多く、あのとき止めていればとご遺族が自らを責めてしまうこともあります。法的な評価と、ご遺族の感情は必ずしも一致しません。法的には、あくまで客観的な事情に基づいて過失の有無が検討されるという点を、頭の片隅に置いていただくことが一つの目安になるかと思います。

第4章 保険会社との示談交渉における注意点

4-1 保険会社の提示額が低くなることがある理由

保険会社から示談案が提示された際、思っていたより大幅に低いと感じられることがあります。
これは、多くの場合、保険会社が自社の任意保険基準や、場合によっては自賠責基準に近い金額を前提に提示しているためと考えられ、必ずしも弁護士基準での満額に近い金額が最初から提示されるとは限りません。そのため、ご遺族の側で基準の違いを知らないまま示談に応じてしまうと、結果的に本来よりかなり低い金額で合意してしまったという状況になるおそれがあります。

4-2 示談書に署名する前に必ず確認したいこと

一度示談書に署名・押印してしまうと、原則として後から大幅な変更を求めることは難しくなります。
示談書に署名する前には、少なくとも次のような点を確認しておくことが望ましいです。

・慰謝料の基準がどの水準で計算されているのか
・逸失利益や葬儀費用など、入るべき項目がすべて含まれているか
・今後一切請求しないといった内容の条項(清算条項など)が含まれていないか、または内容が妥当か

ご遺族にとっては、書類を見ること自体がつらいことも多いと思いますが、ここでの判断が将来の生活に直結することもあります。不安がある場合は、署名前に一度専門家に内容を見てもらうことが安心につながる場合があります。

4-3 過失割合が争いになることが多い理由とその背景

同乗者死亡事故では、「誰の過失をどの程度と考えるか」が争いになりやすいです。

たとえば
・相手方車両の信号無視が主たる原因だが、運転者にも安全確認義務違反がある
・同乗者がシートベルトを着けていなかった
・飲酒の有無や速度超過の程度について見解が分かれる

といった場合、保険会社側は「被害者側にも一定の過失がある」と主張し、賠償額の減額を求めることがあります。
ご遺族から見ると、なぜ亡くなった側の責任を言われなければならないのかと強い違和感や怒りを覚えられることもあります。このギャップが、交渉の長期化や精神的な負担につながることも少なくありません。
法的には、「どのような点を過失として評価するのか」「どこまでが合理的な範囲なのか」を過去の裁判例なども踏まえて検討していくことになります。感情面と切り離して整理することは容易ではありませんが、その役割を弁護士などの専門家に委ねることで、ご遺族ご自身の負担を軽くするという考え方もあります。

第5章 慰謝料請求までの流れと必要書類

5-1 事故発生から請求までの全体の流れ

同乗者死亡事故の大まかな流れは、次のように整理できます。

・事故発生
・警察による現場検証、加害者への捜査
・自賠責保険・任意保険への連絡
・葬儀や各種届出
・損害の整理(治療費、葬儀費用、逸失利益、慰謝料など)
・保険会社との示談交渉
・示談がまとまらない場合は調停・訴訟

ご遺族としては、事故直後から葬儀、各種手続きと、時間的にも精神的にも余裕のない中で多くのことに対応しなければならず、どこまで何をすればよいのかが見えにくくなりがちです。
時系列で整理していくこと、可能であれば早い段階で第三者のサポートを得ることが、結果的にご遺族の負担を軽減することにつながる場合もあります。

5-2 死亡事故で特に重要となる資料について

慰謝料や損害賠償を求める際には、事故の状況や損害の内容を裏付ける資料が重要になります。代表的なものとして、次のようなものが挙げられます。

・交通事故証明書
・実況見分調書や供述調書などの刑事記録(必要に応じて)
・診断書、死亡診断書
・葬儀費用の領収書
・被害者の収入を示す資料(源泉徴収票、確定申告書など)

これらの資料は、一度にそろえる必要があるわけではありませんが、時間が経つにつれて取得が難しくなるものもあります。どの資料が必要になるかは事案によっても異なるため、早めに専門家に相談し、何を、どの順番で集めていけばよいかを確認しておくと安心です。

5-3 慰謝料請求に関わる時効と、その起算点について

交通事故の損害賠償請求には時効があります。
現在の民法では、人身損害に関する損害賠償請求権について、原則として「損害および加害者を知った日の翌日から5年」とされています。死亡事故の場合には、多くのケースで「死亡した日の翌日」から5年間が目安となりますが、加害者の特定時期など個別の事情によって異なることもあります。
一方、自賠責保険に対する被害者請求などは、別途3年の時効が適用されるとされており、損害賠償請求の時効とは起算点(数え始める時点)や期間が異なります。
いずれも、時効が完成してしまうと、原則としてそれ以降は請求が認められなくなるおそれがあります。もっとも、時効の進行を一時的に止めたり、リセットしたりする手続き(時効の完成猶予・更新)が用意されており、内容によっては対応が可能な場合もあります。
事故直後から時効のことばかりを意識する必要はありませんが、「あまり長期間放置してしまうと、法律上の権利を行使できなくなる場合がある」という点だけは、頭の片隅に置いておかれることをおすすめします。

第6章 弁護士に依頼する意味と費用の目安

6-1 慰謝料の増額が期待できる場面について

弁護士に依頼することで、慰謝料などの賠償額が結果的に増えるケースがあります。
これは、多くの場合、弁護士が弁護士基準(裁判基準)を前提として交渉を行うこと、また、過去の裁判例等を踏まえた主張立証が可能になることによるものです。
もちろん、どの程度の増額が見込めるかは事案によって大きく異なりますし、必ず増えると言い切れるものではありません。増額できるかどうかというよりも、ご遺族が後になって悔いが残らないよう、提示額の妥当性を冷静に判断するための役割として受け止めていただくと分かりやすいかもしれません。

6-2 専門家が関わることで心身の負担が軽くなる理由

ご遺族にとって、事故直後の保険会社とのやり取りや書類の確認は、想像以上に重い負担となることがあります。連絡が来るたびに事故を思い出してしまう方も少なくありません。
そうした中で、法的な手続きや保険会社との調整を弁護士が担当することで、

・やり取りの窓口が整理されること
・必要な確認事項が明確になること
・ご遺族が一人で判断し続ける状態から少し離れられること

などによって、精神的な負担を軽減できることがあります。法律的な判断を弁護士などの専門家に委ねることで、ご遺族が自分を責め続ける時間を少しでも減らせる場合もあります。

6-3 弁護士費用の一般的な算定方法と依頼の流れ

弁護士費用については、できるだけ事前に知っておきたいという方が多くいらっしゃいます。死亡事故の損害賠償請求では、事務所ごとに料金体系が異なるものの、次のような考え方が用いられることがよくあります。

・着手金(事案着手時に発生する費用)
・報酬金(増額した部分や獲得した賠償額に応じて発生する費用)
・実費(郵送費、資料取得費など)

最近では、交通事故案件について相談料や着手金を無料にしている事務所も増えており、まずは「この金額は適正なのか知りたい」といったお問い合わせが可能な環境が整ってきています。
依頼の流れとしては、

・事故状況や現在の見通しを確認する初回相談
・費用や見通しの説明
・委任契約締結
・資料収集と損害額の検討
・保険会社との交渉
・必要に応じて調停・訴訟へ移行

といった順序で進むことが一般的です。
費用の話は、ご遺族にとって決して軽いテーマではありません。だからこそ、無理に依頼を前提とせず、不安な点を率直に相談できる環境があること自体が大切だと感じています。

第7章 同乗者死亡事故に直面したご遺族が押さえておきたいこと

7-1 早い段階で避けるべき対応や誤解されやすい点について

同乗者死亡事故のご相談を受けていると、「その場の勢いで示談書に署名してしまった」「保険会社から『この金額が限界です』と言われ、比較検討しないまま受け入れてしまった」といったお話を伺うことがあります。
事故直後は、心身ともに追い込まれていることが多く、冷静な判断を求められても難しい状況が続きます。その中で、次のような点は、できる範囲で意識していただけるとよいかもしれません。


・内容を十分理解できていない段階で、示談書に署名しない
・「身内だから請求できないのではないか」と早合点しない
・保険会社の「これで最後です」という説明を、そのまま唯一の選択肢と受け止めない

また、慰謝料を請求することは、運転していた家族や友人を責めることになるのではないかと感じられることも多いのですが、法的には、保険からの支払いによって一定程度カバーされる仕組みもあります。誰かを責めるというより、これからの生活を守るために必要な手続きと捉えることも一つの考え方です。

7-2 今後の見通しを立てるために確認しておきたい事項

今後の生活や手続きの見通しを立てるためには、少なくとも次のような点を整理しておくと、少し先のイメージが見えやすくなります。

・どの保険が使えるのか(自賠責、任意保険、生命保険など)
・現在までにどのような書類に署名しているか
・保険会社とのやり取りの中で、これからどのような段階があるか
・今後の時効までのおおまかな期間

これらをすべてご自身で把握する必要はありませんが、少なくとも「何がわからないのか」を一緒に整理していくことで、先の見通しを立てやすくなります。必要に応じて、弁護士などに現状を整理するためだけに相談するという選択肢も考えていただいてよいかと思います。

第8章 まとめ|大切な方を失われたご遺族へ

8-1 本記事の内容の振り返り

本記事では、交通事故で同乗者が亡くなられた場合の慰謝料請求について、

・誰が、どのような相手に請求できるのか
・慰謝料額の考え方(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)
・同乗者側の過失が問題となる場面
・保険会社とのやり取りで注意したいこと
・請求までの流れと時効
・弁護士に依頼する意味と費用の目安

などを、できるだけ具体的にお伝えしてきました。

8-2 今すぐ取り組むべきことと手続きの優先順位

同乗者死亡事故に直面された直後は、何から手を付ければよいのか分からなくなることが自然な反応だと思います。
その中でも、

・まずはご自身とご家族の体調やお気持ちを最優先にすること
・必要に応じて、事故証明書など最低限の資料を確認しておくこと
・保険会社からの書類や説明を、無理のない範囲で保管しておくこと

が、今すぐできる範囲の対応として考えられます。
示談や賠償額の詳細については、少し気持ちの整理がついてから、第三者を交えて検討していくという順番でもかまわないことが多いです。

8-3 専門的なサポートが必要な場合の相談先について

同乗者死亡事故の問題は、法律・保険・感情面が複雑に絡み合い、ご遺族だけで抱え込むにはあまりにも重いテーマになりがちです。
弁護士法人Nexill&Partners那珂川オフィスでは、交通事故のご相談に限らず、税理士・社会保険労務士・司法書士・行政書士など、グループ内の他士業とも連携しながら、ご遺族の今後の生活も含めたサポートを行う体制を整えています。「いきなり大きな請求をしたいわけではなく、今の状況や保険会社からの提示額が妥当かどうかだけ知りたい」といったご相談も多く寄せられています。
大切な方を失われた直後に、無理に決断を急ぐ必要はありません。
もし専門的な支えが必要だと感じられましたら、どうぞお気軽にご相談ください。ご事情を丁寧にお伺いしながら、今後どのような選択肢があり得るのかをご一緒に考えていければと思います。

 

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2025.11.26

動物の餌付け、していいの?


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動物の餌付け、していいの?

 

皆さんは動物を飼われていますか? 私は、子どものころ実家で猫を飼っていました。両親は今も猫を飼っているのですが、息子がひどい猫アレルギーで少しの毛でも反応してしまうため、実家に遊びにいく際は、両親が死に物狂いで、掃除機やコロコロをかけてくれています。娘は今のところアレルギーはなさそうで、たまに、「ねこちゃんやわんちゃんをかいたーい」などと言いますが、息子のアレルギーがひどいのでうちではペットを飼うのは難しそうです。

話は少しずれますが、最近、熊による被害が全国で多発していますね。熊の餌となる山の実の凶作、過疎地化による耕作放棄地の増加などにより熊が人里におりてくることで、人に被害を加えるという事件が増えてきているようで、熊の襲撃による死亡事故も多数起きている状態です。
あるニュースでは、観光客などが、熊に餌付けをしていたのではないかということが記載されていました。
自然公園法という法律で、国立公園などでは、野生動物(哺乳類、鳥類)へのみだりな餌付け行為が禁止され(37条1項3号)、違反した場合には罰金刑も定められていますが、罰則が適用されるためには職員の指示したがわなかった場合にのみ限定されているため、処罰されることは現実的には難しいのではないかと思います。
正直ニュースを見たときに、熊に遭遇して餌をあげるという行為自体なかなかできないのではないかと思いましたが、万が一そういった行為をしてしまうと、ますます熊が人里に下りてきてしまい、ますます事故が多発してしまうので、絶対やめておいた方がいいでしょう。

また、自然公園ではなく、通常の公園や街角で野良犬や野良猫、鳩などに餌をあげる行為は問題になるのでしょうか。
こうした餌やりに関して直接的に違法であると規定している法律はありません。動物愛護法で、悪臭などによる苦情が多数上がっている場合など極めて限定的な場合のみ規制していたり、一部の県において条例で禁止されている程度です。
 
ですが、むやみにえさを上げてしまうと、食べ残しや糞の問題、においの問題、鳴き声などの騒音問題、衛生面の問題など近隣に住む人に様々な迷惑をかけてしまうことになるため、むやみにえさを上げる行為はくれぐれもお控えいただいた方がいいと思います。

 

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