交通事故で腰椎捻挫に…慰謝料はいくら?後遺障害や通院期間による違い・請求の進め方を弁護士が解説

交通事故で腰を強く打ち、痛みやしびれが続き、不安を抱える方は少なくありません。腰椎捻挫は見た目からは分かりづらい症状であるため、周囲の理解が得られにくく、つらい思いをする方が多いのも実情です。この記事では、腰椎捻挫の慰謝料相場、後遺障害等級との関係、通院期間による扱いの違い、示談交渉で注意すべき点などを、弁護士の視点から分かりやすく解説します。
第1章 交通事故による「腰椎捻挫」とは?症状と治療の基本
交通事故で腰に強い痛みが残り、「腰椎捻挫」と診断される方は多くいらっしゃいます。しかし、腰椎捻挫は見た目ではわかりづらいこともあり、周囲に理解されず、保険会社とのやり取りでも軽く扱われてしまうことが少なくありません。
法律的に評価されるのは、痛みがいつから、どの程度続き、日常生活や仕事へどのような影響が生じているかという点です。事故直後の行動や治療の受け方がその後の補償内容に直結するため、早い段階で正確な知識を持つことが重要です。
まずは、腰椎捻挫の特徴と、それが補償の判断にどのように関係してくるのかを整理します。
1-1 腰椎捻挫の特徴と、損害賠償額の判断で重視されるポイント
腰椎捻挫は、レントゲンやMRIを受けても異常が画像で確認しづらいため、そのつらさを十分に理解してもらえないことが少なくありません。
補償の面で特に知っておきたいのは、「痛みがどのように続き、生活に何が起きているか」が判断に大きく関わるということです。
保険会社とのやり取りでは次の点が特に重視される傾向があります。
・治療が適切に行われていたか
・診療記録に症状が一貫して残っているか
症状の経過をできるだけ正確に残していくためにも、まずは、なるべく早い段階で受診することが大切といえます。
1-2 腰椎捻挫とむち打ちを併発した場合に意識したい点
交通事故では、腰と首に同時に負荷がかかるケースが多く、腰椎捻挫とむち打ちを併発する方が少なくありません。併発した場合、次の点を特に意識する必要があります。
部位別に症状を伝えること
診療記録は部位ごとに記録されるため、「首と腰のどちらにどの症状があるか」を分けて説明することが大切です。
後遺障害の判断が複雑になることがある
併発していても、後遺障害等級は原則ひとつにまとめられるため、
・生活への支障がどの部位で強いのか
といった点が評価の中心になります。
一貫した通院・症状の説明がより重要になる
首だけ、腰だけ、と一部の症状が記録に残っていないと「症状が無かった/軽かった」と受け取られることがあります。
症状が複数あるほど生活への負担は大きくなりますが、その実態が記録に残らないと適切な評価がなされないことがあるため、早い段階で意識しておきたいポイントといえます。
第2章 腰椎捻挫と後遺障害等級:認定の考え方と押さえておきたい視点
2-1 後遺障害等級とは(判断の枠組み)
後遺障害等級とは、治療を続けても症状が十分に改善せず、事故による影響が残っていると判断された場合に検討されるものです。
痛みやしびれといった神経症状がどのような内容で、どの程度続いているか、その症状が診療記録や検査結果などと整合的に結びついているかという点がみられ、その判断は、以下のような要素から行われます。
後遺障害等級を判断する要素の例
・検査結果や医師の所見との整合性はどうか
・症状が日常生活にどの程度の支障を生んでいるか
痛みを抱えながら生活を続けていても、通院間隔が空いてしまったり、症状を細かく説明できなかったりすると、記録上、症状の強さや継続が十分に伝わらないことがあります。そのため、診察の際には痛む動作や生活で困っている場面をできる範囲で具体的に伝え、無理のない範囲で定期的に受診することが大切になります。
2-2 腰椎捻挫で検討される主な等級(14級9号・12級13号)
腰椎捻挫で検討されることが多い後遺障害の等級には次の2つがあります。
14級9号(局部に神経症状を残すもの)
画像で明確な異常が確認できない場合でも、痛みやしびれが一定程度続いていることが、診療記録などから確認できる場合に検討される等級です。
12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
神経学的検査などで異常がみられるなど、症状を裏付ける医学的所見が確認できる場合に検討される等級です。
腰椎捻挫は画像上の異常が乏しいことが多く、事案によっては14級9号が検討される場面が比較的多いといえます。
第3章 腰椎捻挫の示談金はどう決まるのか
交通事故で腰椎捻挫になった場合、最終的に受け取ることになる金額は、一般に「示談金」と呼ばれます。ここでは、示談金と慰謝料の違いを整理したうえで、腰椎捻挫の場合にどのような考え方で金額が判断されるのかを順に説明します。
3-1 示談金とは何か? 示談金と慰謝料の違い
交通事故の話し合いでは、「慰謝料」という言葉がよく使われますが、実際に示談で合意するのは「示談金」という総額です。
示談金は、慰謝料だけでなく、事故によって生じたさまざまな損害をまとめた金額を指します。
慰謝料
事故による痛みや通院の負担など、精神的な損害に対する賠償
示談金
慰謝料を含め、治療費や休業損害、後遺障害がある場合の逸失利益などを合算した最終的な合意額
(逸失利益…事故にあわなければ得られたはずの収入や利益など、将来の収入減に関する部分)
3-2 腰椎捻挫で示談金の対象となる主な損害 (入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・逸失利益)
腰椎捻挫で示談金の中身として問題になる主な損害は、次のようなものです。
入通院慰謝料
事故後の痛みや通院による制限、生活上の不便さなど、治療期間中の精神的負担を補うもの
後遺障害慰謝料
治療を続けても痛みやしびれが残り、後遺障害等級が認定された場合に検討の対象となる
逸失利益
後遺障害が認められ、事故により将来の収入に影響が生じる場合に検討される
これらの損害がどの程度認められるかは、事故後の症状の経過や診療記録の内容、生活や仕事への影響の伝わり方などを総合的に考慮して判断されます。
3-3 示談金の金額を左右する算定基準 (自賠責基準・任意保険基準・裁判基準)
示談金の金額は、「どの基準で算定するか」によって大きく異なります。
一般に用いられる基準には、次の3つがあります。
自賠責基準
最低限の救済を目的とした基準で、金額は比較的低め
任意保険基準
保険会社が内部で用いている基準で、自賠責基準よりは高い傾向
裁判基準(いわゆる弁護士基準)
過去の裁判例をもとにした基準で、最も高い水準になることが多い
示談交渉では、どの基準を前提に金額が提示されているのかを確認することが重要になります。
3-4 保険会社の提示額はどのように算定されているのか
示談の相談では、「提示された金額が思っていたより低かった」と感じる方が少なくありません。これは、多くの場合、保険会社が任意保険基準をもとに金額を算定しているためです。
金額の高い・低いだけを見るのではなく、まずは「どの基準が使われているのか」を確認することが大切です。
3-5 示談のタイミングと症状固定 ― 保険会社からの連絡を受けたときに注意すべき点
示談は、症状固定(それ以上治療を続けても大きな改善が見込めないと判断される段階)を一つの目安として進められることが多くあります。実際の場面では、通院中に相手方の保険会社から「そろそろ治療を終えてはどうか」「症状固定ではないか」といった連絡を受けることも少なくありません。
しかし、その時点で示談に進むべきかどうかは慎重に判断する必要があります。治療を続ける必要があるかどうかは、保険会社ではなく医師が判断するものです。保険会社からの連絡だけをもとに治療の継続や示談を決めてしまうと、症状が十分に把握・評価されないまま手続きが進んでしまう可能性もありますし、タイミングによっては後遺障害申請ができるかどうかや、示談金として合意する内容に影響が及ぶ可能性もあります。
相手方保険会社から症状固定による示談提示を受けた場合には、症状や治療の見通し、日常生活に残っている支障について医師とよく相談したうえで検討することが大切です。
第4章 腰椎捻挫の慰謝料請求の流れと必要な資料
腰椎捻挫は見た目では分かりづらい怪我であるため、症状の経過や生活への支障をどのように整理するかが、慰謝料を検討する際の判断材料に影響します。
ここでは、事故後から慰謝料の算定・検討に至るまでの流れまでの流れと、その過程で何を準備しておくとよいかを説明します。
4-1 事故後から慰謝料算定までの一連の流れ
腰椎捻挫の場合、慰謝料の算定に向けては、概ね次のような流れで対応が進みます。
① 事故直後の受診
痛みが軽くてもできる限り早い受診が必要です。どの症状が、いつ、どのように出たのかが記録されるため、入院・通院慰謝料を検討する前提資料になります。
② 通院を継続し、症状を医師に伝える
・姿勢を保ちづらい状況
・生活や仕事で支障が出ている場面
こうした点を説明することで、診療記録に症状の経過が残りやすくなり、慰謝料算定時に症状の継続性を判断する材料になります。
③ 治療の経過を踏まえた評価
治療期間や通院状況、症状の推移を踏まえて、入通院慰謝料の対象となる期間や程度が検討されます
④ 症状固定後の判断
治療を続けても改善が見込めないと判断された場合には、後遺障害慰謝料の対象となるかどうかが検討されることがあります。
⑤ 慰謝料額の算定
上記の経過や資料をもとに、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料について、どの程度の金額が考えられるかが整理されます。
⑥ 慰謝料の交渉・請求
算定された内容を前提に、相手方保険会社に対して慰謝料の請求や交渉が行われます。
⑦ 交渉がまとまらなかった場合の対応
話し合いによる解決が難しい場合には、訴訟などの法的手続を検討することもあります。
4-2 慰謝料請求にあたって重要となる資料
慰謝料を検討する際には、次のような資料が重要になります。
| 資料名 | 内容・目的 |
|---|---|
| 診断書 | 事故によって腰椎捻挫と診断されたこと、症状の内容を確認するための基本資料 |
| 診療記録(カルテ) | 症状の経過、通院頻度、治療内容などを把握し、症状の継続性を判断する資料 |
| 通院の領収書・交通費の記録 | 通院にかかった交通費や診療費の自己負担分を実費として請求するための資料 |
| 事故証明書 | 交通事故が発生した事実を公的に証明する資料 |
| 事故状況が分かる資料 | 事故現場や車両損傷の写真など、事故態様や衝撃の程度を説明するための資料 |
| 休業損害に関する資料 | 仕事を休んだことによる収入減を請求する際に用いる資料(休業証明書、給与明細等) |
| 後遺障害診断書 | 症状が残った場合に、後遺障害慰謝料を検討するための資料 |
4-3 後遺障害申請と慰謝料との関係
腰椎捻挫で症状が長く続く場合には、後遺障害の申請が検討されることがあります。
後遺障害等級が認定されるかどうかによって、後遺障害慰謝料を請求できるかも変わります。
後遺障害の申請方法には、「被害者請求」と「事前認定」の2つがあります。
被害者請求は、被害者自身が必要書類を整えて申請する方法であり、事前認定は、相手方保険会社が書類を取りまとめて申請手続きを進める方式です。
いずれの方法を用いる場合であっても、症状がどのように続いているか、日常生活にどのような支障が出ているかが、診療記録などに適切に残っているかが判断するうえで重視されます。
第5章 腰椎捻挫の慰謝料請求で問題が生じやすい場面と対処の考え方
5-1 通院が途切れてしまった場合に起こりやすい誤解
仕事や家庭の事情で通院が続けられない方も多くいらっしゃいます。
ただ、通院の間隔があいてしまうと、資料上は「症状が軽くなっていたのでは」と受け取られることがあります。
そのため、診察時には、痛みが続いていたことに加えて、なぜ通院が途切れてしまったのかという通院できなかった事情も可能な範囲で説明し、記録に残してもらうことが大切です。
5-2 症状を医師に十分伝えられていなかった場合の影響
診察の際に症状が十分に伝わっていないと、記録上では症状が弱いように受け取られてしまうおそれがあります。
医師に症状を伝える際には、「痛い」「つらい」と伝えるだけでなく、どの動作をすると痛みが出るか、痛みが出る頻度やタイミング、痛みが出る日と出ない日の差がある、など具体的に説明しておくことで、症状の実態が診療記録に残りやすくなりなります。
第6章 弁護士が関わる意義:適切な評価につなげるために
腰椎捻挫のように、症状が見えにくいけがでは、治療経過や生活への支障がどのように記録されているかで補償の判断が分かれることがあります。
事故後の状況をご自身だけで整理しようとすると、不安を抱えたまま決断を迫られてしまう場面もあるため、必要に応じて弁護士のサポートが役に立つことがあります。
6-1 慰謝料額の検討と判断材料の整理
慰謝料を検討する際には、通院期間の長さだけでなく、症状の経過、診療記録の内容、日常生活や仕事への支障がどのように評価されているかなど、複数の要素を総合的に確認する必要があります。
弁護士が関わることで、提示された金額がどの基準に基づくものなのか、どの点が評価されているのかを整理しながら確認することができ、現時点で判断すべき点や、追加で確認しておいた方がよい事項が明確になります。
6-2 後遺障害等級申請における視点の補強
後遺障害の申請では、診療記録や検査結果と症状の説明が一致しているかが大きな判断材料になります。しかし、日常でどれほどの支障が生じているかは、記録だけでは伝わりにくく、申請の段階でどこを補足すべきなのかが分からないまま進んでしまうこともあります。
必要な資料が揃っているか、症状の経過がどのように評価されそうかといった視点を確認しながら進めることで、後になって、この点も伝えておけばよかったと悔やむ場面を減らすことにつながります。
6-3 示談のタイミングを冷静に判断する
示談は原則やり直しができないため、時期を誤ると、症状が残ったまま補償が不十分に終わってしまうことがあります。弁護士が状況を丁寧に振り返りながら進めることで、この段階で示談に応じてしまってよいのかどうかを落ち着いて検討しやすくなります。
第7章 まとめ:腰椎捻挫は症状が伝わりにくいため、丁寧な対応が必要
7-1 記事全体の要点整理
腰椎捻挫の補償を検討する際に特に意識しておきたいのは次の点です。
・生活や仕事で困っている場面を診察時に伝えておくこと
・示談の時期を焦らず、治療の見通しを確認しながら進めること
・後遺障害申請を検討する場合は、早めに必要な資料を把握しておくこと
7-2 事故後に自身で確認しておきたい点
・通院が難しい時期があった場合、その事情を医師に説明できているか
・保険会社からの連絡内容に、不安や疑問が残っていないか
・示談に進む前に、現在の症状と治療の見通しを整理できているか
こうした点を振り返ることで、事故後の判断をより落ち着いて進めやすくなります。
7-3 不安が続く場合の相談先について
腰椎捻挫の対応は、症状が見えづらいがゆえに、補償の判断でも誤解が生じやすい場面があります。
判断に迷ったときや、示談や後遺障害の申請をどのように進めればよいか悩むときは、早めに相談先を確保しておくことが安心につながります。
私たち弁護士法人Nexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスでは、これまで多くの交通事故相談を受けてきた経験をもとに、事故後の状況整理や補償の検討について丁寧にお話を伺いながら進めています。不安な点を一緒に整理し、どのような進め方が適切かを検討することもできますので、気になる点や不安が残る場合には、いつでもご相談いただければと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
交通事故でむち打ちになったときの慰謝料相場とは?|後遺障害・通院期間・示談交渉のポイントまで弁護士が解説

交通事故でむち打ちになったものの、痛みが続くのに理解されない、保険会社から提示された金額が適切なのか分からない——こうした不安を抱える方は少なくありません。むち打ちの慰謝料は、通院期間や症状の残り方、後遺障害の有無によって大きく変わります。この記事では、慰謝料相場や判断基準、示談交渉で注意すべき点を整理し、適切な補償を受け取るための具体的な視点を解説します。
第1章 交通事故の「むち打ち症」とは?まず知っておきたい基本
むち打ち症で特に重要なのは、症状そのものよりも、事故後の行動や治療経過がどのように記録されているかという点です。これは後の慰謝料算定や後遺障害等級の判断に直接関わるため、事故直後から知っておくことが大切です。
この章では、むち打ち症が法的にどのように扱われ、どのような点が補償額の判断に影響するのかを整理していきます。
1-1 むち打ち症で問題になりやすい“法的な視点”
むち打ち症は画像で異常が確認できないケースも多く、痛みが続いていても資料上は分かりにくいことがあります。
しかし、症状の裏付けとなる記録が不足していると、保険会社から「治療の必要性が低い」と評価されることがあるため注意が必要です。
たとえば次のような場合、後の手続で誤解が生じやすくなります。
• 症状の訴えが診療録に十分記載されていない
• 通院の間隔があいている
こうしたケースは、「記録上の一貫性が不足している」と受け取られやすい可能性があります。
事故直後は体調も気持ちも不安定で、考えがまとまらないことは自然なことです。そのうえで、後日のトラブルを避けるためには、早めの受診と症状の正確な共有が大切になります。
1-2 事故直後に起こりやすい誤解
むち打ち症に関する相談でよくあるのは、事故直後の判断が後になって影響するケースです。
よく見られるのは次のようなケースです。
• 症状を細かく説明せず、診療録に残っていない
• 接骨院中心の通院になり、整形外科での診察が少ない
いずれも事故直後の混乱の中では無理もない判断ですが、法的手続では治療経過の記録が重視されるため、後悔につながることがあります。
第2章 むち打ち症の慰謝料相場はどう決まる?基準と全体像
交通事故に遭われた方は、「自分の場合の慰謝料はいくらになるのか」という点を気にされることが多いです。慰謝料は一律ではなく、複数の基準によって大きく変動します。
2-1 慰謝料には3つの基準がある
交通事故の慰謝料は、次の3つの基準のいずれかで算定されます。
自賠責基準
最低限の救済を目的とした基準で金額は低い傾向
任意保険基準
各保険会社が内部で定める基準
弁護士基準(裁判基準)
裁判例をもとにした基準で金額は高い傾向
同じ症状・同じ通院期間でも、基準が違えば慰謝料も大きく変わります。まずはどの基準が適用されているのかを知ることが大切です。
2-2 通院期間と実通院日数が重視される理由
むち打ち症は、検査結果だけでは症状の強さが分かりにくいことが多いため、治療期間(事故日から治療が終わるまでの期間)や実際に通院した日数が、症状の経過を把握する参考として扱われることが比較的多くあります。
治療が一定期間継続している場合には、「症状が続いていたのだろう」という判断の根拠の一つとして扱われることがあります。反対に通院があまりに途切れていると「一時的に改善していたのではないか」と判断されてしまう場合もあります。ただし、これは一般的な傾向であり、個々の事情によって評価が変わることも少なくありません。
たとえば、仕事や家庭の事情で通院が難しい時期があったとしても、自治体の診療記録や症状の推移が確認できる資料があれば、治療の必要性が説明できる場合もあります。
2-3 実務で注意が必要なポイント
慰謝料相場の算定には数字以上に、事故後の状況をどう裏付けていくかという点が重要です。
よくあるのは以下のような場面です。
※症状固定…それ以上の改善が見込めないと判断される治療の区切り
• 診療録に症状が十分に記載されていない
• 家庭や仕事の事情で通院が思うようにできない
どれも被害者の方の責任ではありませんが、資料不足のまま示談が進むと、実際より低い評価になるおそれがあります。必要な補償を得るためにも、事故後の経過をどのように整理し、必要な資料をどう揃えるかが大切です。
第3章 慰謝料額に影響する主なポイント
むち打ち症の慰謝料は、単に「痛みがあるかどうか」だけで決まるわけではなく、事故後の経過や治療状況、その症状が日常生活にどの程度影響したかなど、複数の要素から総合的に判断されます。ここでは、そのなかでも特に相談現場で問題となりやすい視点を整理します。
3-1 治療期間と実際の通院状況
むち打ち症は、治療をどのように続けてきたかが症状の経過を判断する参考として扱われることがあります。
たとえば、以下のような部分が重視される傾向があります。
• 適切な間隔で通院できていたか
• 症状の変化が診療録に記録されているか
これは、治療期間が長ければ慰謝料が自動的に増えるという意味ではなく、症状が続いていたことを裏付ける材料として上記のような部分を見られやすいという意味です。
仕事や家庭の事情などで定期的な通院が難しい場合は、その事情をきちんと説明できる資料が揃っていれば、通院の必要性が理解されやすくなることもあります。
3-2 事故状況(衝撃の程度)との関係
事故の状況や衝撃の大きさが、症状の重さの判断に影響することもあります。
たとえば、強い追突で車が大きく損傷している場合には、「身体への負荷も大きかっただろう」と評価されやすい傾向があります。
もちろん、車の損傷が小さくても強い痛みが続くケースもありますので事故状況だけで決まるものではありませんが、事故状況が治療経過の評価とあわせて検討される場面は少なくありません。
3-3 日常生活や仕事への影響
むち打ち症の痛みや不調は、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼすことがあります。
• デスクワークで同じ姿勢を保ちづらい
• 育児や家事に支障が出ている
こうした状況は、事故前と比べた生活の変化として、慰謝料の検討において重要な材料となることがあります。
ただし、生活上の支障も「言っただけ」では評価されづらいため、診察時に医師に伝えておくことが大切です。
3-4 後遺症が残った場合の等級認定
むち打ち症で痛みやしびれが長期間続いた場合、後遺障害等級が検討されることがあります。
等級が認定されると、慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」や「逸失利益(症状が残ったことで将来の収入が減少すると考えられる部分)」などが対象となるため、補償の額が大きく変わることがあります。
ただし、後遺障害は医学的証明が必要となるため、症状が続いていることが記録として確認できるかどうかが重要です。
等級が認められるかどうかは、治療経過・症状の訴え方・医師の見解など、複数の事情が関係します。
後遺障害が疑われる場合は、できる限り早めに治療経過を整理し、必要な資料が揃えられるよう準備することが大切です。
第4章 後遺障害と慰謝料の関係
むち打ち症が長期間続き、症状が治療によって十分に改善しない場合には、後遺障害等級が問題となることがあります。
ここでは、むち打ち症で特に関係が深い等級や、その考え方を整理します。
4-1 後遺障害とはどういうものか
後遺障害とは、治療を続けても改善が難しく、一定の症状が残っている状態を指します。
むち打ち症の場合、痛み・しびれ・可動域の制限などが長く続くことがありますが、これが必ずしも後遺障害に該当するわけではありません。
実務では、
「症状が残っていること」
だけでなく、
「それがどの程度医療上確認できるのか」
が重要になります。
4-2 むち打ち症で多い等級:14級9号・12級13号
むち打ち症で検討されることが多いのは以下の等級です。
14級9号
痛みやしびれが続いているが、画像所見などで明確な異常が確認できないケース
12級13号
神経症状について医学的な裏付けが認められるケース
14級9号は比較的多く申請されますが、認定の可否は症状の訴え方や記録の内容によって左右されることがあります。12級13号では、画像所見に限らず、神経学的検査など医学的に症状を裏付ける所見が求められることがあります。
4-3 後遺障害認定の流れと必要書類
後遺障害を申請する場合には、一般的に次のような資料が必要となることがあります。
• これまでの通院記録
• 事故状況が分かる資料
• 症状の推移を確認できる書類
これらの資料が整っていないと、症状が続いていることや、事故との因果関係を判断することが難しくなる可能性があります。
4-4 認定に影響するポイント
認定に影響する要素は一つではなく、「症状が一貫して記録されているか」「通院頻度や治療内容に無理がないか」「医師が症状についてどのように評価しているか」など複数の要素が組み合わさって判断されることが多いです。
症状が続いているにもかかわらず、適切な記録が残されていないと後遺障害が否定される理由になりかねません。そのため、後遺障害の可能性がある場合は、できるだけ早い段階で治療経過の整理を行うことが大切です。
第5章 慰謝料を適切に受け取るために押さえておきたいポイント
むち打ち症の慰謝料は、事故後の対応によって適切に評価される場合もあれば、準備不足によって本来受け取れるはずの補償が十分に反映されないこともあります。ここでは、相談の場面で特に重要と感じるポイントを整理します。
5-1 事故直後の受診と症状の共有
事故直後は痛みが軽いと感じても、後から症状が強くなることがあります。そのため、早めに医療機関を受診しておくことが大切です。
初診のタイミングや診療録は、後に保険会社とのやり取りを行う際の重要な資料となります。「どのような症状がいつから続いているのか」を後から確認できる状態にしておくことで、適切な補償につながりやすくなります。
5-2 整形外科と接骨院のバランス
むち打ち症の方の中には、接骨院による施術を希望する方も多くいらっしゃいます。施術自体が悪いわけではありませんが、慰謝料の判断においては医師による診断や治療記録が中心的な資料になるため、整形外科での通院を並行して行うことが望ましい場合があります。整形外科では医師による診断や治療記録が作成されるため、法的手続で必要となる資料を確保しやすくなるからです。接骨院での施術を否定するものではありませんが、医療上の評価を受けられる体制を整えておくことが大切です。
5-3 症状の伝え方と診療録の重要性
むち打ち症は日によって痛みの強さが変わったり、天候によって影響を受けたりすることもあります。そのため、診察時に症状を説明する際は、日常生活で支障を感じている点が伝わるように話すことを心がけましょう。
診療録は医師が診察内容を記録するもので、後の手続で重要な資料になることがあります。そのため診察時に症状を伝えておくことで、結果的に記録に反映されやすくなります。大げさに言う必要はありませんが、痛みがある日はその旨を医師に伝えておくことが大切です。
5-4 保険会社とのやり取りで注意したいこと
事故後しばらく経つと、保険会社から「そろそろ症状固定と思われるので」と治療費を打ち切られたケースをよく耳にします。しかし、症状が残っている場合には、医師と相談したうえで治療方針を決めることが重要です。
保険会社の判断は被害者の身体の状況を必ずしも反映したものではないこともあるため、慎重に検討する必要があります。治療中の段階で悩む場合には、無理に判断せず、治療の状況に詳しい医師や交通事故の手続きに詳しい弁護士に相談できるようにしておくと安心です。
第6章 示談で後悔しないために理解しておきたいこと
慰謝料の話し合い(示談)は、多くの方にとって初めての経験であり、どのタイミングで何を確認すべきか分からないまま進んでしまうことが少なくありません。ここでは、示談を進める際に押さえておきたい考え方を整理します。
6-1 提示額が低く感じられる理由
保険会社から提示される金額が「思っていたより低い」と感じる方は多くいらっしゃいます。
その理由の一つとして、保険会社は自社の基準に沿って金額を算定することが一般的であり、必ずしも裁判例などで用いられる基準と同じではない点が挙げられます。
そのため、提示額が適切かどうかは、他の基準と比較しながら慎重に判断する必要があります。「低いと感じる」こと自体は珍しいことではありません。
6-2 示談に応じる前に確認したい点
示談は一度成立すると原則としてやり直しができません(錯誤・詐欺・強迫など、法律上の特別な事情がある場合を除く)。そのため、次のような点を確認しておくことが大切です。
• 今後も治療が必要な見込みはないか
• 後遺障害の申請を検討すべき状態ではないか
• 提示された慰謝料が、症状や通院状況と比べて妥当な額といえるか
これらを確認せずに示談に応じてしまうと、後になって「もう少し慎重に判断すべきだった」と感じることがあります。
6-3 専門家に相談すると補償の判断が変わることがある
示談に関する相談では、「自分では妥当かどうか判断しにくい」という声を耳にすることがあります。
専門家に相談すると、提示された慰謝料が適切かどうかについて客観的に検討しやすくなります。
具体的には、どの基準に基づいて計算されているのか、事故状況や通院状況がどのように受け止められるのか、後遺障害申請を検討すべき状態かどうかといった点を、個別の事情に沿って確認できます。こうした視点が加わることで、補償内容が適切に評価される可能性が高まり、示談で後悔するリスクを減らす助けになり得ます。
第7章 むち打ち症で特に多い質問とその考え方【FAQ】
よく寄せられる質問をもとに、考え方の整理に役立つポイントを整理してみましょう。
7-1 「通院を続ければ慰謝料は増えるのですか?」
通院期間が長ければ慰謝料が必ず増えるわけではありません。ただ、治療を続けた記録が残っていると、「その間も症状が続いていたのだろう」と判断されやすくなるため、補償の検討において参考にされることがあります。
大切なのは、「必要な治療を、必要な期間に、適切に受ける」ということです。無理に通院を増やす必要はありませんが、痛みが残っている場合には、医師と相談しながら治療を続けることも大切です。
7-2 「仕事を休んだ分は補償されますか?」
事故が原因で仕事を休まざるを得なかった場合、その分の収入減について補償(休業損害)が認められることがあります。
給与明細や源泉徴収票など、収入状況が分かる資料が必要になりますが、働き方や勤務状況によって必要な資料は異なります。
パート・アルバイト・自営業の方でも、収入の減少が分かる資料が揃っていれば補償の対象となる可能性があります。
7-3 「後遺障害が認められなかったらどうすればよいですか?」
後遺障害が認められなかった場合でも、申し立ての内容や資料の整理方法によっては、再度の検討(いわゆる異議申立て)が可能なケースがあります。
ただし、異議申立ては「何をどのように補強するか」が重要となるため、治療経過や症状の推移を丁寧に見直し、必要な資料を整えることが必要といえます。
7-4 「保険会社から通院をやめるように言われたのですが…」
保険会社が治療費の支払いを打ち切ったとしても、治療を中断しなければならないわけではありません。医師と相談して治療が必要な状態であれば、健康保険を使用して治療を継続できる場合があります(その際は健康保険組合への届出が必要です)。治療を続けても症状が大きく改善しない場合には、後遺障害等級の認定手続きを検討することがあります。後遺障害の手続きを検討する際には、必要な資料や進め方について専門的な判断が求められる場面もあるため、弁護士など専門家に意見を聞いてみることをおすすめします。
第8章 弁護士が関わることで判断しやすくなる場面
むち打ち症の慰謝料や示談の検討は、事故の状況や治療経過によって判断が分かれることが多く、「この判断でよいのだろうか」と迷う場面が生じることがあります。そうした場面では、必要に応じて専門家の視点を得ることで、落ち着いて進めやすくなる場合もあります。ここでは弁護士が関わることで判断しやすくなる典型的な場面を整理します。
8-1 提示された慰謝料の妥当性が分からないとき
慰謝料には複数の基準があるため、保険会社から提示された金額が適切かどうかをご自身だけで判断することは簡単ではありません。
弁護士が関わると、事故状況・通院状況・後遺症の可能性などを踏まえたうえで、どの程度の補償が検討されるのか整理しやすくなります。
8-2 後遺障害を申請すべきか迷うとき
後遺障害の申請は、医学的所見の有無や治療経過との整合性など、多くの情報を踏まえて判断する必要があります。
弁護士が関わることで、
• 資料として足りない点は何か
• 説明すべきポイントはどこか
といった整理がしやすくなります。
申請の可否を決めるのではなく、判断するための材料が揃うイメージです。
8-3 保険会社とのやり取りに不安があるとき
保険会社とのやり取りでは、治療の必要性や通院状況などについて、被害者の方が説明に困る場面が少なくありません。
たとえば、まだ症状があるにもかかわらず、保険会社から治療費の支払いを一定の時期で終了する旨が伝えられることもあり、その判断に迷う方も多くいらっしゃいます。
弁護士が関わることで、治療費の支払い終了の判断が妥当かどうか、治療を続ける必要性が資料上どのように受け止められる可能性があるか、どの点を説明しておくべきかなどを整理しやすくなり、不安が軽減されることがあります。
8-4 示談のタイミングを決めるとき
示談は一度成立するとやり直しが難しいため、「今示談してよいのか」を慎重に判断する必要があります。
特に以下のような場合、判断が難しくなることがあります。
• 治療が再度必要になる可能性がある
• 後遺障害の可能性が不安
こうした場面では、事故状況・治療経過・症状の変化を総合的に整理し、どのタイミングで示談を検討すべきかを見極めていく必要があります。
弁護士が関わることで、この整理が進めやすくなり、後悔のない判断につながりやすくなるといえます。
第9章 まとめ:不安を抱えたときに考えたいこと
むち打ち症の対応では、事故直後の受診、症状の共有、通院の進め方、示談の判断など、いくつか押さえておきたいポイントがあります。どれも特別なことではなく、「必要な治療を受けながら、状況を丁寧に記録していく」 という姿勢が大切です。
ただ、慰謝料の妥当性や示談のタイミング、後遺障害申請の可否など、個人だけでは判断が難しく感じられる場面もあります。迷いがある場合には、専門家に意見を聞くことで、必要な情報が整理され、落ち着いて対応しやすくなることがあります。
むち打ち症の痛みや不安が続いているとき、また手続きなどに不安を抱えている場合は、私たち弁護士法人Nexill&Partners(ネクシル・アンド・パートナーズ)那珂川オフィスへお気軽にご相談ください。状況を丁寧に伺いながら、どのような進め方が適切か一緒に検討いたします。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
交通事故で同乗者が死亡した場合の慰謝料請求|遺族が知るべき基準・注意点・手続きを弁護士が解説

交通事故で大切な方が同乗中に亡くなられた場合、ご遺族には悲しみと同時に「慰謝料は請求できるのか」「何を準備すればよいのか」といった不安が押し寄せます。加害者が運転者本人なのか第三者なのかによって法的な整理も変わり、判断が難しい場面も少なくありません。本記事では、慰謝料の基準、過失の考え方、必要となる手続きなどをできるだけわかりやすくお伝えします。
第1章 交通事故で同乗者が死亡した場合の慰謝料請求とは
1-1 同乗者死亡事故における慰謝料請求の基本的な仕組み
交通事故で同乗者が亡くなられた場合も、基本的な考え方は、一般的な死亡事故の場合と同じように不法行為に基づく損害賠償請求と整理されます。
民法上は、加害者が故意または過失によって他人の生命・身体に損害を与えた場合、その損害を賠償する義務を負うとされています。死亡事故では、亡くなられた方ご本人の精神的苦痛に対する死亡慰謝料と、ご遺族の精神的苦痛に対する慰謝料、そして逸失利益や葬儀費用などが問題になります。
同乗者事故の場合の特徴は、事故を起こした運転者と同乗者の関係性です。運転していたのが家族や友人であることも多く、責任を追及したい気持ちと人間関係を壊したくない思いがぶつかり、法律的な判断と感情の整理が難しくなることがあります。
そのため、まずは法的な枠組みを知った上で、「誰に、どのような範囲で請求できるのか」を落ち着いて整理していくことが大切になります。
1-2 慰謝料を請求できる遺族の範囲について
誰が慰謝料を請求できるかについては、法律上の考え方と、自賠責保険の運用上の考え方が参考になります。
自賠責保険では、死亡事故の場合の遺族慰謝料の請求権者(請求する権利を持つ人)を、原則として「被害者の父母・配偶者・子」としています。
裁判でも、おおむねこれと同じ範囲の近親者に、固有の慰謝料請求権が認められてきました。被害者と特別に密接な生活関係にあった方(たとえば、事実婚の配偶者など)については、個別事情によって慰謝料が認められることもありますが、事案ごとの判断になります。
また、ご遺族が複数いる場合でも、各人がそれぞれ別々に請求するという形もあれば、遺族の代表者がまとめて請求するという形がとられることもあります。どの方法が適切かは、相続関係やご家族の意向も踏まえて検討していくことになります。
1-3 加害者が運転者本人の場合と第三者の場合にどのような違いが生じるのか
同乗者死亡事故では、次のようなパターンが考えられます。
・運転者と他の車両の双方に過失がある事故
・運転者に過失がほとんどなく、相手方車両の過失が大きい事故
例えば、家族が運転する車に同乗していて事故に遭った場合、ご遺族は交通事故の相手方の加害者に対してだけでなく、運転者(家族)に対しても損害賠償請求を行うことが法的には可能と整理されます。
一方で、感情面では身内を加害者として扱うのかという重い問題が生じます。そのため、実務上は、どの保険をどの順番で利用していくか、保険会社とのやり取りをどのような整理で進めるかを、専門家と相談しながら進めることが少なくありません。
第2章 同乗者死亡事故の慰謝料額|基準と相場の考え方
2-1 自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の違いについて
死亡事故の慰謝料には、大きく分けて次の三つの基準があります。
・任意保険基準
・弁護士基準(裁判基準)
自賠責基準は、法律に基づく最低限の補償額を決めたもので、他の基準と比べると最も低い金額になることが多いとされています。
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めているもので、詳細は公表されていませんが、一般的には自賠責基準と弁護士基準の中間程度の金額になると説明されることが多いです。
弁護士基準(裁判基準)は、過去の裁判例を基に、裁判所でどの程度の慰謝料が認められてきたかを整理したものです。交通事故の実務で用いられている専門書に掲載されている水準で、弁護士が保険会社との交渉や裁判で参考にしている基準と考えていただくとイメージしやすいと思います。死亡慰謝料については、三つの基準のうち、弁護士基準が最も高額になるのが通常とされています。
2-2 死亡慰謝料の大まかな目安と遺族構成による変動
死亡事故の慰謝料は、同じ事故であっても、どの基準で算定されるかによって金額が大きく変わることがあります。ここでは、違いを理解していただくために、代表的な基準を例として示します。
まず「自賠責基準」では、死亡慰謝料はおおむね次のような枠組みで算定されます。以下は代表的な例です。
被害者本人分
400万円
遺族分
遺族の人数に応じて550万〜750万円程度
被扶養者がいる場合
200万円が加算されることがあります
一方、弁護士が交渉や裁判で参考にする「弁護士基準(裁判基準)」では、過去の裁判例をもとにした相場が用いられるため、自賠責基準より高い水準となることが多いとされています。たとえば、代表的な目安として、
一家の生活を支えていた方の場合
おおむね2,800万円前後
配偶者や母親の場合
おおむね2,500万円前後
その他の場合
2,000万〜2,500万円程度
といった水準が挙げられますが、実際の認定額は個別の事情により増減する可能性があります。
また、慰謝料は基準だけで決まるものではなく、同乗者がどのような立場にあったか(家族構成、収入状況など)によっても、裁判所が認定する額が変わることもあります。亡くなられた方が家庭の収入を支えていたかどうか、ご遺族の生活への影響がどの程度かといった事情が考慮されることが一般的です。
2-3 葬儀費用や逸失利益など慰謝料以外に請求可能な損害
死亡事故では、慰謝料だけではなく、次のような損害も請求の対象となります。
・逸失利益(将来得られたはずの収入)
・死亡までの治療費や入通院慰謝料
・交通費や付添費用など
特に逸失利益は、被害者の年齢や職業、収入額などを基に、将来得られたであろう収入を推計して算定されます。ご遺族から見ると、数字に置き換えられてしまうこと自体がつらいと感じられることも多いのですが、現行の損害賠償制度では、お金という形で評価せざるを得ない場面が多いのが実情です。
その一方で、適切な計算を行うことで、将来の生活の不安を和らげる一助となることもあります。納得のいく形で話し合いを進められるよう、ご遺族側で内容を理解しておくことが役に立つ場合があります。
第3章 過失の有無によって何が変わるのか
3-1 同乗者の「自動車同乗減額(無謀な同乗)」が問題になる場面
同乗者死亡事故では、「好意で車に乗せてもらっていたから、慰謝料が減らされるのではないか」というご相談を受けることがあります。
かつては「好意同乗」を理由に慰謝料の減額が検討される裁判例もありましたが、現在の実務では、単に好意で乗っていたという事情だけをもって、直ちに減額すべきではないという考え方が一般的になってきています。
一方で、飲酒運転や極端な速度超過など、明らかに危険な運転状況であることを知りながら同乗した場合には、その事情も含めて過失相殺や減額が検討されることがあります。
3-2 シートベルト未着用が過失の判断に与える影響
同乗者がシートベルトを着用していなかった場合、事故の結果が重くなったと評価されることがあります。裁判例の中には、シートベルト未着用により車外に放り出され、死亡に至った事案で、同乗者側の過失が一定割合認められたものもあります。
もっとも、どの程度の割合で減額されるか、そもそも減額すべきかどうかは、
・事故の状況やスピード
・座っていた位置(前席・後部座席)
など、さまざまな要素を踏まえて判断されます。したがって、「シートベルトをしていなかったから必ず過失が認められる」「全て同乗者の責任になる」ということではなく、あくまで個別の事情を踏まえて、全体のバランスのなかで過失が検討されることになります。
3-3 飲酒運転や速度超過など重大な違反行為がある場合
飲酒運転や極端な速度超過など、重大な違反行為がある事故では、運転者の責任が重く評価されやすいです。
同時に、同乗者側がその危険性を知りながら自ら同乗したかどうかも重要な要素となります。例えば、飲酒の場に同席しており、運転者が相当量の酒を飲んでいたことを認識していた場合などは、「危険な運転を予想できたのではないか」と判断される余地が生じます。
ただ、実際の現場では、雰囲気の中で深く考えずに乗ってしまうことも多く、あのとき止めていればとご遺族が自らを責めてしまうこともあります。法的な評価と、ご遺族の感情は必ずしも一致しません。法的には、あくまで客観的な事情に基づいて過失の有無が検討されるという点を、頭の片隅に置いていただくことが一つの目安になるかと思います。
第4章 保険会社との示談交渉における注意点
4-1 保険会社の提示額が低くなることがある理由
保険会社から示談案が提示された際、思っていたより大幅に低いと感じられることがあります。
これは、多くの場合、保険会社が自社の任意保険基準や、場合によっては自賠責基準に近い金額を前提に提示しているためと考えられ、必ずしも弁護士基準での満額に近い金額が最初から提示されるとは限りません。そのため、ご遺族の側で基準の違いを知らないまま示談に応じてしまうと、結果的に本来よりかなり低い金額で合意してしまったという状況になるおそれがあります。
4-2 示談書に署名する前に必ず確認したいこと
一度示談書に署名・押印してしまうと、原則として後から大幅な変更を求めることは難しくなります。
示談書に署名する前には、少なくとも次のような点を確認しておくことが望ましいです。
・逸失利益や葬儀費用など、入るべき項目がすべて含まれているか
・今後一切請求しないといった内容の条項(清算条項など)が含まれていないか、または内容が妥当か
ご遺族にとっては、書類を見ること自体がつらいことも多いと思いますが、ここでの判断が将来の生活に直結することもあります。不安がある場合は、署名前に一度専門家に内容を見てもらうことが安心につながる場合があります。
4-3 過失割合が争いになることが多い理由とその背景
同乗者死亡事故では、「誰の過失をどの程度と考えるか」が争いになりやすいです。
たとえば
・同乗者がシートベルトを着けていなかった
・飲酒の有無や速度超過の程度について見解が分かれる
といった場合、保険会社側は「被害者側にも一定の過失がある」と主張し、賠償額の減額を求めることがあります。
ご遺族から見ると、なぜ亡くなった側の責任を言われなければならないのかと強い違和感や怒りを覚えられることもあります。このギャップが、交渉の長期化や精神的な負担につながることも少なくありません。
法的には、「どのような点を過失として評価するのか」「どこまでが合理的な範囲なのか」を過去の裁判例なども踏まえて検討していくことになります。感情面と切り離して整理することは容易ではありませんが、その役割を弁護士などの専門家に委ねることで、ご遺族ご自身の負担を軽くするという考え方もあります。
第5章 慰謝料請求までの流れと必要書類
5-1 事故発生から請求までの全体の流れ
同乗者死亡事故の大まかな流れは、次のように整理できます。
・警察による現場検証、加害者への捜査
・自賠責保険・任意保険への連絡
・葬儀や各種届出
・損害の整理(治療費、葬儀費用、逸失利益、慰謝料など)
・保険会社との示談交渉
・示談がまとまらない場合は調停・訴訟
ご遺族としては、事故直後から葬儀、各種手続きと、時間的にも精神的にも余裕のない中で多くのことに対応しなければならず、どこまで何をすればよいのかが見えにくくなりがちです。
時系列で整理していくこと、可能であれば早い段階で第三者のサポートを得ることが、結果的にご遺族の負担を軽減することにつながる場合もあります。
5-2 死亡事故で特に重要となる資料について
慰謝料や損害賠償を求める際には、事故の状況や損害の内容を裏付ける資料が重要になります。代表的なものとして、次のようなものが挙げられます。
・実況見分調書や供述調書などの刑事記録(必要に応じて)
・診断書、死亡診断書
・葬儀費用の領収書
・被害者の収入を示す資料(源泉徴収票、確定申告書など)
これらの資料は、一度にそろえる必要があるわけではありませんが、時間が経つにつれて取得が難しくなるものもあります。どの資料が必要になるかは事案によっても異なるため、早めに専門家に相談し、何を、どの順番で集めていけばよいかを確認しておくと安心です。
5-3 慰謝料請求に関わる時効と、その起算点について
交通事故の損害賠償請求には時効があります。
現在の民法では、人身損害に関する損害賠償請求権について、原則として「損害および加害者を知った日の翌日から5年」とされています。死亡事故の場合には、多くのケースで「死亡した日の翌日」から5年間が目安となりますが、加害者の特定時期など個別の事情によって異なることもあります。
一方、自賠責保険に対する被害者請求などは、別途3年の時効が適用されるとされており、損害賠償請求の時効とは起算点(数え始める時点)や期間が異なります。
いずれも、時効が完成してしまうと、原則としてそれ以降は請求が認められなくなるおそれがあります。もっとも、時効の進行を一時的に止めたり、リセットしたりする手続き(時効の完成猶予・更新)が用意されており、内容によっては対応が可能な場合もあります。
事故直後から時効のことばかりを意識する必要はありませんが、「あまり長期間放置してしまうと、法律上の権利を行使できなくなる場合がある」という点だけは、頭の片隅に置いておかれることをおすすめします。
第6章 弁護士に依頼する意味と費用の目安
6-1 慰謝料の増額が期待できる場面について
弁護士に依頼することで、慰謝料などの賠償額が結果的に増えるケースがあります。
これは、多くの場合、弁護士が弁護士基準(裁判基準)を前提として交渉を行うこと、また、過去の裁判例等を踏まえた主張立証が可能になることによるものです。
もちろん、どの程度の増額が見込めるかは事案によって大きく異なりますし、必ず増えると言い切れるものではありません。増額できるかどうかというよりも、ご遺族が後になって悔いが残らないよう、提示額の妥当性を冷静に判断するための役割として受け止めていただくと分かりやすいかもしれません。
6-2 専門家が関わることで心身の負担が軽くなる理由
ご遺族にとって、事故直後の保険会社とのやり取りや書類の確認は、想像以上に重い負担となることがあります。連絡が来るたびに事故を思い出してしまう方も少なくありません。
そうした中で、法的な手続きや保険会社との調整を弁護士が担当することで、
・必要な確認事項が明確になること
・ご遺族が一人で判断し続ける状態から少し離れられること
などによって、精神的な負担を軽減できることがあります。法律的な判断を弁護士などの専門家に委ねることで、ご遺族が自分を責め続ける時間を少しでも減らせる場合もあります。
6-3 弁護士費用の一般的な算定方法と依頼の流れ
弁護士費用については、できるだけ事前に知っておきたいという方が多くいらっしゃいます。死亡事故の損害賠償請求では、事務所ごとに料金体系が異なるものの、次のような考え方が用いられることがよくあります。
・報酬金(増額した部分や獲得した賠償額に応じて発生する費用)
・実費(郵送費、資料取得費など)
最近では、交通事故案件について相談料や着手金を無料にしている事務所も増えており、まずは「この金額は適正なのか知りたい」といったお問い合わせが可能な環境が整ってきています。
依頼の流れとしては、
・費用や見通しの説明
・委任契約締結
・資料収集と損害額の検討
・保険会社との交渉
・必要に応じて調停・訴訟へ移行
といった順序で進むことが一般的です。
費用の話は、ご遺族にとって決して軽いテーマではありません。だからこそ、無理に依頼を前提とせず、不安な点を率直に相談できる環境があること自体が大切だと感じています。
第7章 同乗者死亡事故に直面したご遺族が押さえておきたいこと
7-1 早い段階で避けるべき対応や誤解されやすい点について
同乗者死亡事故のご相談を受けていると、「その場の勢いで示談書に署名してしまった」「保険会社から『この金額が限界です』と言われ、比較検討しないまま受け入れてしまった」といったお話を伺うことがあります。
事故直後は、心身ともに追い込まれていることが多く、冷静な判断を求められても難しい状況が続きます。その中で、次のような点は、できる範囲で意識していただけるとよいかもしれません。
・内容を十分理解できていない段階で、示談書に署名しない
・「身内だから請求できないのではないか」と早合点しない
・保険会社の「これで最後です」という説明を、そのまま唯一の選択肢と受け止めない
また、慰謝料を請求することは、運転していた家族や友人を責めることになるのではないかと感じられることも多いのですが、法的には、保険からの支払いによって一定程度カバーされる仕組みもあります。誰かを責めるというより、これからの生活を守るために必要な手続きと捉えることも一つの考え方です。
7-2 今後の見通しを立てるために確認しておきたい事項
今後の生活や手続きの見通しを立てるためには、少なくとも次のような点を整理しておくと、少し先のイメージが見えやすくなります。
・現在までにどのような書類に署名しているか
・保険会社とのやり取りの中で、これからどのような段階があるか
・今後の時効までのおおまかな期間
これらをすべてご自身で把握する必要はありませんが、少なくとも「何がわからないのか」を一緒に整理していくことで、先の見通しを立てやすくなります。必要に応じて、弁護士などに現状を整理するためだけに相談するという選択肢も考えていただいてよいかと思います。
第8章 まとめ|大切な方を失われたご遺族へ
8-1 本記事の内容の振り返り
本記事では、交通事故で同乗者が亡くなられた場合の慰謝料請求について、
・慰謝料額の考え方(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)
・同乗者側の過失が問題となる場面
・保険会社とのやり取りで注意したいこと
・請求までの流れと時効
・弁護士に依頼する意味と費用の目安
などを、できるだけ具体的にお伝えしてきました。
8-2 今すぐ取り組むべきことと手続きの優先順位
同乗者死亡事故に直面された直後は、何から手を付ければよいのか分からなくなることが自然な反応だと思います。
その中でも、
・必要に応じて、事故証明書など最低限の資料を確認しておくこと
・保険会社からの書類や説明を、無理のない範囲で保管しておくこと
が、今すぐできる範囲の対応として考えられます。
示談や賠償額の詳細については、少し気持ちの整理がついてから、第三者を交えて検討していくという順番でもかまわないことが多いです。
8-3 専門的なサポートが必要な場合の相談先について
同乗者死亡事故の問題は、法律・保険・感情面が複雑に絡み合い、ご遺族だけで抱え込むにはあまりにも重いテーマになりがちです。
弁護士法人Nexill&Partners那珂川オフィスでは、交通事故のご相談に限らず、税理士・社会保険労務士・司法書士・行政書士など、グループ内の他士業とも連携しながら、ご遺族の今後の生活も含めたサポートを行う体制を整えています。「いきなり大きな請求をしたいわけではなく、今の状況や保険会社からの提示額が妥当かどうかだけ知りたい」といったご相談も多く寄せられています。
大切な方を失われた直後に、無理に決断を急ぐ必要はありません。
もし専門的な支えが必要だと感じられましたら、どうぞお気軽にご相談ください。ご事情を丁寧にお伺いしながら、今後どのような選択肢があり得るのかをご一緒に考えていければと思います。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
自転車の運転にはご注意を

いきなり私自身の話で恐縮ですが、私は、当事務所に入所する前は、長崎県佐世保市の法律事務所で弁護士をしていました(東京出身の私がなぜ長崎の最西端で弁護士をすることになったのかについては、とてもここでは書ききれないので割愛させていただきます。)。佐世保で一人暮らしをする際、東京で住んでいた時の感覚で、家具や家電を購入する際、一緒に自転車を購入しました。それを当時の事務所の人に話したら「自転車なんて使うことないよ」と言われました。佐世保もそうですが、長崎は、坂が非常に多いため、あまり自転車を使う人はいないようです。現に私も佐世保では坂が多く、ほとんど自転車を使いませんでした。
今は福岡でしていますが、福岡は逆に自転車で移動されている方が非常に多いと感じます。シェアリングサービスで自転車を利用される方も多いように思います。
そんな自転車ですが、来年(2026年)4月1日から、悪質な自転車の運転に対する取り締まりが強化されます。具体的には、反則金といって、違反した内容に応じて定められている金銭を支払うことで刑事裁判を受けなくて済むという取り締まりが始まることになりました。いわゆる「青切符」というものが自転車の運転でも切られるようになりました。そして、2025年6月17日に、道路交通法施行令改正案が閣議決定され、取り締まり対象となる行為や反則金の金額が決定されました。
主な青切符と対象となる行為と反則金は以下の通りです。
・スマホを見ながら運転するなどの「ながら運転」:1万2000円
重大な事件の要因となるため(実際にスマホを見ながら自転車を運転し、歩行者に衝突し、歩行者が死亡してしまった事故も起きています。)高額に設定されています。
・イヤホンで音楽を聞きながらの運転:5000円
・夜間の無灯火での運転:5000円
・信号無視:6000円
それ以外には、逆走(右側を走行)する行為や、歩道走行等の通行区分違反行為については6000円の反則金が設定されています。
この歩道走行については、すべてが禁止されるのかという意見や歩道が危険な場合に歩道を走行した場合にも違反になるのかなどの意見(パブリックコメント)が警察庁に寄せられました。
そこで、警察庁からは、歩道通行のルールが示されました。
まず、自転車は道路交通法上「軽車両」に分類されています。そのため、道路交通法17条1項により、歩道と車道が区別されている道路では、自転車は原則として、車道を走行しなければならず、歩道を走行できるのは、「普通自転車歩道通行可」の標識がある場所でのみとなります。
それに加えて、今回の警察庁から示されたルールでは、3歳未満の子ども、70歳以上の高齢者の場合や、工事などをしており、車道通行が危険な場合、車道が狭くて危ない場合などには、車道を走行しても、取り締まりの対象外となるとされています。
また、歩道走行をした場合のすべてを取り締まるのではなく、「悪質なケース」を取り締まり対象としているとのことでした。「悪質なケース」の具体例としては、スピードを出して歩行者を驚かせた場合、警察官の警告に従わない場合、事故に直結するような危険な運転をした場合などが挙げられています。
この「悪質なケース」に該当するか否かについては、非常にあいまいで、取り締まる警察官次第で基準が変わってきてしまう恐れがあるのではないかと思います。
ですが、自転車といっても上記の通り、軽車両であり、危険な運転をすれば重大な事故を起こしてしまう危険なものであるという意識をもって、安全に運転するようにしたいですね。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
物損事故で思わぬ賠償金

皆さんの多くが乗られている自動車は、技術の進歩で安全性が非常に高くなりました。
衝突を未然に防ぐ機能などが備わり、事故は減っているように感じられますが、相変わらず交通事故のご相談は絶えずあり、全国でも痛ましい交通事故のニュースはなくなることはありません。

交通事故は大きく分けると、以下のの2つ(もしくはその両方)にわかれます。
①人にケガをさせてしまった人身事故
②人にケガをさせずに相手の車やその他の物を壊してしまった物損事故
一般的なイメージですと、人にケガをさせてしまった人身事故の方が大きな賠償額になるという認識だと思います。
重篤な後遺障害が残ってしまった、お亡くなりになってしまった場合に、賠償額が高額になるというのは当然ですが、実は物損事故においても損害額が高額になってしまう可能性があります。
運送車両の積み荷の破損
運んでいる荷物が非常に高額、事故により中の荷物が破損をしてしまった場合、荷主から損害賠償を請求される可能性があります。
実際の裁判例では、荷主が運送会社に対し、積み荷の損害として4億円以上を請求し、2億円以上の賠償を求める判決が出されたこともありました。
店舗の破壊
高齢ドライバーの方がお店に突っ込むといったニュースを見られた方も多いと思います。
事故により店舗に迷惑をかけてしまい、商品の損害だけではなく、営業ができないことの損失なども賠償する必要があるため非常に高額な賠償金額が発生する可能性があります。
道路上の構築物の損壊
店舗や積み荷以外の高額な賠償がなされるケースとして、道路上の構築物を損壊してしまった場合があります。
道路上の構築物とは、例えば、ガードレールや照明柱、カーブミラー、電柱、信号機などがあります。
こういった構築物については、事故を起こした当事者に賠償義務が発生するため、こういった構築物も賠償する義務を負うことになります。
たとえば、ガードレールなどは2メートルで3万円程度が相場といわれておりますが、電柱や信号機、交通標識等は非常に高額となる場合があり、電光式の標識などは1,000万円以上の賠償が請求される可能性も十分あります。
このように、物損でも非常に高額な賠償義務を追う場合があります。
しかし、物損事故を起こしてしまったとしても「対物賠償保険」に入っておけば、こうした損害についても保険会社が負担してくれることが多いです。
ただし、無制限などにしておらず、保険金額の上限などを設定してしまっていた場合には、保険金額を越えた損害額については、自分で支払わなくてはいけません。
事故が起きないのが一番ですが、万が一に備え、きちんと保険には加入しておいたが方がいいですね。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
雪道をノーマルタイヤで走ると罰金?

冬になるととても寒くなりますね。
私は司法試験に合格するまで東京に住んでおり、司法試験の合格後の司法修習で佐賀県に配属されて初めて九州に住むことになりました。
九州と言えば、ヤシの木がいっぱい生えてる南国のようなイメージでした。
実際に佐賀に12月に配属され、雪が降ってるのを目の当たりにした時は『イメージと全然違う』と愕然としたのが懐かしく思えます。
気温が低くなると注意しなければいけないのが、路面の凍結や雪道です。
路面の凍結等により、重大な事故が生じるだけでなく、渋滞を引き起こす等様々なトラブルが起きる危険性があります。
路面凍結や雪道でのトラブルが発生する多くの原因は、ノーマルタイヤで走行してしまうことです。
実際私も、山道で凍結しているところでノーマルタイヤスタック(タイヤが回転しなくなってしまうことです)している車を見かけ、友人数名と押して脱出したことがあります(その際にも、後ろがすごい渋滞になっており、運転手の方もとても迷惑をかけてしまって申し訳なさそうにしていました)。
雪道や凍結している道路をノーマルタイヤで走行してしまうと、単に他の人に迷惑をかけてしまうだけでなく反則金を支払わなければならないことになります。
道路交通法71条では、「車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。」と規定しており、同条第6号では「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」と規定しています。
そして現在、沖縄県を除く全ての都道府県において、積雪・凍結した路面で冬用タイヤを装着するなど「すべり止め」の措置をとるよう都道府県道路交通法施行細則または道路交通規則で義務づけられています。
この規定に違反した場合には、各都道府県のいずれでも、大型車は7,000円、普通車は6,000円、自動二輪車は6,000円、原動機付自転車は5,000円の反則金を支払う義務を負います。
このすべり止めの措置については、決して降雪地帯のみに限定されているものではなく、全ての地域で措置を講じることが求められます。「路面凍結注意」「冬用タイヤやチェーンを装着」などという標識などがある場合や、すでに天気予報で雪の予報が出ている場合等の場合には、冬用タイヤやチェーンを準備して、路面凍結や雪道でもトラブルが起きないように対処したいですね。
記載内容は投稿日時点のものとなり、法改正等で内容に変更が生じる場合がございますので予めご了承ください。
罪を犯しても刑務所に入らなくて済む?~実刑判決と刑務所の収監~
最近、仕事の忙しさもあって、このブログをさぼってしまっており、ふと思い出したように記事を書いています。
弁護士の後藤です。
2019年4月に東京の池袋で発生した、乗用車の暴走事故。
親子2人が死亡し、9人が負傷してしまったというとても凄惨な事故であり、被害者のご遺族の方のインタビューや会見、被告が公判で過失を争い、無罪を主張していたことなども相まって、世間でも非常に耳目を集める事件となっていました。

先日2021年9月2日にこの事件の第1審の判決が東京地方裁判所で出され、被告人にはブレーキとアクセルを踏み間違えた過失があると認定し、被告に対し、禁錮5年の実刑判決を言い渡しました。
判決後、被告人が第1審の判決を不服として、高等裁判所へ控訴するか否かが注目されていましたが、先日、被告人において、控訴をしない意向であることがニュースなどで報道されるようになりました。
被告人において、禁錮5年の判決に対し控訴をしない場合には、かかる判決が確定することになります。
そして、テレビニュースや新聞では、被告人が90歳と高齢であることから、判決が確定場合に、刑務所に入らない可能性があるのではないかということが盛んに論じられてきました。
私もこの事件があるまでは、刑務所に入らなくてもいいケースがあることは知っていましたが、具体的にどのような場合に刑務所に入らなくていいケースがあるのかについてはよく知らなかったため、今回の事件を機に少し調べてみることにしました。
まず、犯罪を犯したとしても、事件が検察官に送致されない場合や、検察官に送致されたとしても、示談などが成立して不起訴処分になった場合には、そもそも刑事裁判すら開かれないので、刑務所に入る(「収監」といいます。)ことはありません。
次に、罪を犯し、検察官に起訴されたとしても、犯罪の内容が軽微である場合、前科等が無い場合や、監督する人がいて再犯の恐れがない場合等ケースは様々ですが、こういった諸般の事情を考慮し、判決において、懲役●年等の刑は言い渡されますが(いわゆる「有罪判決」といいます。)、判決確定後一定の期間(3年、5年などが一般的です)、犯罪を犯さなかった場合には刑務所に入らなくて済むという執行猶予判決が出される場合があります。
この執行猶予判決が出た場合にも、刑務所に入らずに済みます(どのような場合に執行猶予判決が認められるのか、どのような場合に執行猶予が取り消されるのかについては別の記載にご説明しようと思います。)。
そして、今回の事件のように、判決に執行猶予がつかなかった場合(「実刑判決」といいます。)には、判決が確定次第、原則として刑務所に収監されるのですが、実刑判決を受けたとしても、刑務所に入らなくて済む場合、すなわち刑の執行を止める制度については、刑事訴訟法に記載されており、具体的には2つの場合が規定されています。
まず、刑事訴訟法480条では、「懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によって、その状態が回復するまで執行を停止する。」と規定されており、病気や認知症等が原因で、心神喪失状態になっている場合には、その状態が回復するまでは、刑の執行が停止されることになります。
次に、刑事訴訟法482条では「懲役、禁錮又は拘留の言渡を受けた者について左の事由があるときは、刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によって執行を停止することができる。」と規定し、検察官の裁量で刑の執行が停止されるケースを規定しています(480条の末尾が「停止する」となっており、必ず停止することを記載しているので「必要的執行停止」、482条の末尾が「停止することができる。」と検察官の裁量に委ねられている記載になっているため、「裁量的執行停止」と呼ばれています。)。
そして、裁量的執行停止が認められるケースとして、
②年齢70年以上であるとき。
③受胎後150日以上であるとき。
④出産後60日を経過しないとき。
⑤刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずる虞(おそれ)があるとき。
⑥祖父母又は父母が年齢70年以上又は重病若しくは不具で、他にこれを保護する親族がないとき。
⑦子又は孫が幼年で、他にこれを保護する親族がないとき。
⑧その他重大な事由があるとき。
と、記載されています。
今回では、被告人の年齢が90歳であり、①の「年齢70年以上であるとき」に該当するため、収監されないのではないかと報道されています。
しかし、結論からお伝えすると、70歳を超えているからといって必ず収監されないということはなく、むしろ70歳以上の高齢者であったとしても、実刑判決が出された場合、ほぼほぼ収監されることになります。
逆に70歳を越えた人が原則収監されないとした場合には、いくら罪を犯したとしても刑務所に収監されないと知った高齢者の方の犯罪が増えてしまったとしてもおかしくありません。
したがって、今回の被告人も90歳と非常に高齢ではあるものの、おそらくは判決確定後、刑務所に収監されることになる可能性が高いでしょう。
逆に、③や④の場合には、特に出産の直前直後には、刑務所で出産することは赤ちゃんにとって適切ではないため、刑の執行が停止され、病院へ行き、病院に入院して出産することは少なくありません。
ニュースやインターネットの記事では、高齢者は原則刑務所に収監されないかのような記載も見受けられますが、おそらく高齢者の犯罪は、価格の低い商品の万引き(窃盗)など、軽微な犯罪が比較的多く、そもそも不起訴処分となるケースや、起訴されたとしても執行猶予になるケースが比較的多いため、それを有罪であっても刑務所に収監されないと誤って認識している可能性があるのではないかと思っています。
このように、実刑判決が出されてしまうと、原則として刑務所へ入らなくてはならないため、起訴されないことや、執行猶予判決を得ることが非常に重要になり、それには早期に弁護士に依頼して、適切かつ迅速な対応が求められますので、ご自身や近しい方が罪を犯してしまった場合には、早めに弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
最後にはなりますが、この度の事故で、お怪我やお亡くなりになってしまった方や、その後親族の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。
十分な車間距離を!
私は、事務所に出勤するときや、裁判所へ行く際には車で移動することが多いのですが、運転している際に、前の車がほとんど車間距離を空けずに走っていることが多いように感じます。
もともと学生のころから免許は持っていましたが、弁護士として仕事をするようになってから車の運転をするようになったため、運転歴もそこまで長くなく、運転がうまいというわけではないことに加え、「ひょっとしたら前の車が急ブレーキを踏むかもしれない」と最悪ことを想定してしまう性分のため(「かもしれない」運転といって、運転するときの心構えとしては適切らしいです。)、比較的車間距離を空けて走行しています。
また、そこまでスピードを出して走っているわけではないため、後の車が隣の車線に移って追い越していくということなどしょっちゅうあるのですが、「急いでいるんだな」と感じる程度で、ストレス等感じることはありません。
最近では、はやりの煽り運転や道路上でトラブルを起こす人のニュースを見かけることが多いですが、運転する際には心に余裕を持って運転してもらいたいと思っています。

少し脱線してしまいましたが、本日は、車間距離と停止距離についてお話させていただきます。
停止距離とは、運転者が危険を感じた時点から、ブレーキを踏み、実際に車が停止するまでの距離をいいます。
そして、この停止距離は、空走距離と制動距離の合計をいいます。
空走距離とは、運転者が危険を感じてからブレーキを踏み、実際にブレーキが効き始めるまでの間に車が走る距離の事をいいます。
「危ない!」と感じ、アクセルペダルからブレーキペダルへ踏みかえ、ブレーキを踏んでブレーキが効き始めるまでの間は、その時速のまま自動車が進むことになります。
反射神経や、運転者の体調によってもことなりますが、その時間は、早くても0.6秒、平均で1.5秒かかるといわれています。
1.5秒とだけ聞くととても短いと感じるかもしれませんが、時速40キロの場合、1.5秒の間に約16.7メートル進み、時速60キロの場合には約25.1メートルも車が進むことになります。
次に、制動距離とは、ブレーキが作動してから車が停止するまでの距離をいいます。先ほどの空走距離は、車の時速に比例して増えるのですが、制動距離は速さの2乗に比例して増えていきます。
例えば時速50キロの制動距離は約18メートルですが、倍の時速100キロの場合には、2乗に比例して増えるため、18m×2×2=72メートルにまで増えてしまいます。
上記の空走距離、制動距離の合計が停止距離になり、時速60キロの場合の停止距離は、約44mとなります。
この停止距離の算定は、路面の状態、天候、車のタイヤの状態、重量等様々な条件で変わっては来ますが、停止距離からおおよその時速を算定することやブレーキ痕を根拠に制動距離を導き出し、そこからおおよその時速を算定するなど、交通事故の場面で多く活用することになります。
車間距離を空けずに時速60キロで走行しており、前の車が急ブレーキを踏んだ場合、到底間に合わずにぶつかってしまうでしょう。
そういった事故を減らすためにも、十分な車間距離を空けて安全に運転してもらいたいです。
説明のむずかしさ

皆様が乗られているお車の任意保険の内容を確認すると「弁護士費用特約」というものが契約内容で入っている方が多いと思います。
これは、もらい事故など、交通事故の被害者となられた際、交渉で必要な弁護士費用を任意保険会社が負担するという特約になります。
この弁護士費用特約の普及もあってか、当事務所でも交通事故の相談は頻繁にいただいています。
弁護士に相談する状況というと、基本的に相手方(加害者側)の任意保険会社との協議が整わないため、ご相談にくるというケースが多いです。
その中で多く問題となるのが、お怪我をしている際の治療費の打ち切りに関する問題や過失割合(事故の態様)に関する問題ですが、それと同じくらい問題になるのが物損事故における「経済的全損」という問題です。
この「経済的全損」という言葉、聞きなれない方の方が多いと思いますが、相談者の方も「相手の保険会社から『経済的全損なので修理費用全額ははらえない』と言われた。こっちは被害者なのにおかしいではないか」とご相談いただくことがあります。
結論として、経済的全損のケースでは、修理費用全額は支払われないという相手方保険会社の対応は間違っていないのですが、納得いかずにご相談に来られる方が一定程度いらっしゃるということは、担当者においてきちんと経済的全損について説明がされていないのではないかなと思っています。
「経済的全損」とは簡単にいうと、修理費用よりも、当該車両の時価が低い状況をいいます。例えば、車をぶつけられ、修理費用に70万円が必要となるが、ぶつけられた車は年式も古く、走行距離も多かったため、事故当時の車の価額は50万円である場合、加害者(の保険会社)から支払われる金額は、70万円ではなく、車の価額である50万円のみとなります。
被害者の方からは、よく、「こちらは事故で車に乗れないため、相手の費用で修理してもらうのが損害賠償ではないのか」と質問されます。
しかし、交通事故での損害の請求は、法律上損害賠償請求といい、損害賠償請求は、文字通り、被った損害を賠償することを請求するものであるため、請求できるのは被った損害の限度となります。
ここで、先ほどの例で、被害者に70万円(修理費)が支払われた場合、車の価額は50万円であるため、事故のまえよりも20万円財産が増えてしまっていることになります。
ここまで説明すれば、多くの方はご理解いただけるのですが、 この経済的全損の問題は、自動車という、修理しなければ運転できないことや、比較的高額であるため、ご理解に時間がかかるのではないかなと個人的に考えており、ご相談者様には、物を代えてご説明しています。
たとえば、書店で中古の本を100円で購入した直後に、他の人がその本を誤って破ってしまったとして、その本を元に戻すためには1万円かかるとした場合破ってしまった人に対しては、いくら請求できますか」と問いかけると、多くの方は、「100円」とご回答いただけると思います。
このような「経済的全損」という問題にかかわらず、法律の世界の用語や理屈には、通常の方ではなじみがない複雑な問題がとても多いです。
そういった複雑な問題を処理するのが代理人となる弁護士の仕事なのですが、ご依頼者の方に対し、理屈や、理由について説明し、納得してから進んでいては、同じ結論になるとしても、「弁護士に依頼して良かった」と思っていただけるか否かに大きな違いがでるのではないかと感じています。
何事ともわかりやすく説明するよう心がけているのですが、全部が全部できているかというとそうでないことも多いため、常日頃、わかりやすい説明することの難しさを痛感しています。
治療費について④(入院雑費,付添監護費)
<ご相談者様からのご質問>
先日,交通事故に遭いました。とても激しい事故で,両足を骨折してしまいました。現在に病院に入院しているのですが,どういった費用が賠償してもらえるのでしょうか。
<弁護士からの回答>
交通事故の場合,激しい事故により重篤なケガを負い入院を余儀なくされることがあり。また,入院も長期間にわたる場合も少なくありません。そこで,今回は,入院を余儀なくされた場合に請求することができる費用等についてご説明させていただきます。
1 入院費
事故により相手方保険会社に治療費を請求できるように入院費用についても請求することができます。入院費用についても治療費と同様,任意保険会社において立替払いのサービスを行っているのが通常であるため被害者の場合には,治療費を手出しすることなく,加害者側の保険会社が支払ってくれるのが通常です。
2 入院雑費
入院に伴い,入院生活のために必要な費用の発生を避けることはできません。日用雑貨,衣類,寝具,電話代などの通信費に加え,新聞代,テレビカード等の文化費等,入院生活中に発生する諸費用のことを入院雑費といい,この入院雑費についても損害として加害者に請求することができます。具体的な請求金額としては,発生した雑費すべてを事細かに計算し請求することはとても煩雑です。そこで,現在では,入院をした際に,一定程度費用が発生することは避けられないことであると認められているため,裁判上,入院1日あたり1500円程度の入院雑費を請求することができます。この点,示談になった際,被害者側が弁護士をつけていない場合,保険会社は自社の基準として1100円程度の入院雑費を提示してくることが多いので,弁護士が代理人で入っていた方が入院雑費についても適正な金額が認められることになります。
3 入院付添費
ご相談者様やご親族からは,入院している際に,見舞いに行ったり,付き添っていたことに関する費用については請求することができるのかということをよくご質問いただきます。
まず,見舞い費用に関しては原則損害として認められてはいません。先程ご説明した入院雑費として家族の見舞いのための交通費が含まれていると考えられているためです。
もっとも,入院の際に,付添いが必要であると認められる場合には入院付添費として1日あたり6500円程度を請求することができます。
もっとも,入院時には看護士が看護を行うことが予定されているため,付添い費が認められるためには,医師の指示や受傷の程度などから看護士による看護を越えた付添が認められる必要があります。
このような入院に関する諸費用についても,場合によっては,被害者のみで対応した場合には,加害者側の保険会社に誠実に対応してもらえない可能性がありますので是非弁護士にご相談ください。















