弁護士コラム

2022.10.06

従業員の名札は必要?

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以前の投稿で、現在では様々なハラスメントが存在すると書いた際に、店で従業員に対してクレームなどを行う行為が「カスハラ」(カスタマーハラスメント)と呼ばれていることを紹介しました。
以前の投稿はこちらから: なんでもハラスメント?~現代のハラスメントの問題点~

この「カスハラ」に関連して、最近では、クレーマーが従業員の名札など氏名が分かるものを撮影し、SNS等にアップするというトラブルが起きているとのニュースを目にしました。

従業員の名札は必要?

名札をつけている職種としては、コンビニの従業員などがパッと思いつくのではないかと思います(調べてみると従業員の名札着用の先駆けは百貨店等とのことです。)。
勤務地とセットで名札などがSNSに上げられてしまうと、個人のプライバシーがさらされ、ストーカーや犯罪に巻き込まれてしまうおそれがあり、とても問題であると思います。

では、従業員の人は必ず名前を出さなければならないのでしょうか。

まず、法律で名前を出さなければならないことが決まっている業種があります。
具体的には、バスやタクシーの運転手は「旅客自動車運送事業運輸規則」により、氏名を旅客(乗客)に見やすいように掲示しなければならないと規定されています。
また、「薬事法」という法律では、薬局において従業員のうち薬剤師や登録販売者の方については、氏名を記載した名札を掲示することが義務付けられています。

「薬事法」という法律では、薬局において従業員のうち薬剤師や登録販売者の方については、氏名を記載した名札を掲示することが義務

一方、こうした法律で名前を出すことが義務付けられていない職業の場合には、従業員が名前を出さないで仕事をすることが法律に違反しているということにはなりません。
もっとも、会社の就業規則などにおいて名札の着用が義務付けられている場合には、名札をつけないと就業規則違反として懲戒処分の対象となる可能性があります。

では、店側として従業員の安全を守るために、名札に偽名等を記載し使用させることは許されるのでしょうか。
この点については、法律上従業員は顧客に対し、本名を知らせなければならない義務があるわけではないため、偽名の名札を使うことは何ら問題はありません。

顧客満足度の観点から、名札をつけて仕事をするということはいいことかもしれませんが、上記のようにプライバシー侵害の恐れなどがあるため、会社としても従業員を守るために偽名を使ったり、場合によっては名札をつけずに勤務させることを認めるなど柔軟な対応が必要なのかもしれませんね。

 

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