弁護士コラム

2017.08.06

【離婚問題】熟年離婚で損しないために知っておくべきコツ

「熟年離婚」をお考えの方はいらっしゃいますか?ケースとしては,長年不満を抱いていた妻が子供の自立をきっかけに離婚を決意するパターンが多いと言われています。しかし,夫に不満があるとしても,熟年離婚をしても幸せになれるのか気になるはずです。幸せな生活を送るために必要なものは人によって違うとは思いますが,経済的に安定した生活を送ることは共通の望みだと思います。そこで,今回は,財産分与、年金分割など生活費に関する知識について、基本に熟年離婚で損しないためのコツをまとめました。

1 お金で「損」しないコツ

それでは,お金で損しないためのコツについて見て行きましょう。財産分与,年金分割,慰謝料,婚姻費用という流れでご説明させて頂きたいと思います。

(1) 財産分与

財産分与とは,夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に際して分与することを言います(民法768条、771条)。そのため,婚姻期間が長ければ形成した財産も通常多くなるため,熟年離婚では財産分与でもらえる財産も高額になる傾向にあります。
財産分与の対象になる財産について具体例を挙げますと,夫婦が共同して購入した不動産,自動車,一緒に生活していた住宅の家具など家財一式,現金,有価証券,借金などが名義にかかわらず,これにあたります。
 熟年離婚における財産分与では,退職金が財産分与の対象になるかがよく問題になります。既に退職金が支払われていれば財産分与の対象になりますが,まだ未払いの場合ですと退職金の支払いが確実と言えないような場合では財産分与の対象にならないこともございますのでご注意ください。なお,退職金については全額が財産分与の対象になる訳ではなく,婚姻期間に応じて対象となる金額は変動します。

(2)年金分割

年金分割制度とは,離婚後に年金事務所に請求することにより,婚姻中の夫の年金保険納付記録の最大2分の1までを分割して妻が受け取れるという制度です。この制度を利用すれば,各家庭によりますが,月々3万円程度,年金受給額が増加することになります。この制度の利用率は,離婚件数の約1割にすぎませんが,熟年離婚では非常に有用な制度ですので絶対に覚えて下さい。
年金分割の仕組みは簡単にはご説明できませんので,ここでは省略しますが,お悩みの方は,弁護士や年金事務所に相談するようにしましょう。

(3)慰謝料

熟年離婚であっても精神的な苦痛を受けた場合,離婚した相手に対して慰謝料を請求することが出来ます。例えば,相手方の不倫,DV,モラハラなどがあれば慰謝料を請求することが出来るでしょう。なお,不倫が原因で離婚した場合は,不倫をした相手に対しても慰謝料を請求できます。
ただ,熟年離婚の原因として一番多いのは,「性格の不一致」と言われています。性格の不一致であれば,どちらに責任がある訳でもないので慰謝料を請求することは出来ませんのでご注意ください。

(4)婚姻費用

熟年離婚をした後の話ではありませんが,熟年離婚をするに際して別居することも多いと思います。離婚を前提に別居していても,いまだ婚姻関係にある以上,夫婦はお互いに助け合う義務がありますので,夫婦のうち経済力のある方がもう一方に対して生活費を支払う義務があります。これは婚姻費用と言います。
具体的な金額については当事者の話し合いで決めることになっていますが,それでもまとまらない場合は裁判所で調停,審判という手続きを行うことになります。これらの手続きにおいては,婚姻費用を算定する資料である婚姻費用算定表に基づいて話し合いが行われることになっています。

2 子供のことで「損」しないコツ

 熟年離婚においては,子供は既に成人していることが多くあまり問題になりませんが,子供が,未成年であれば親権を確保したいと思われることでしょう。
 親権者の判断は,親側の事情としては,監護に対する意欲と能力,健康状態,経済的,精神的家庭環境,従前の監護状況,子供に対する愛情の程度などを,子供側の事情としては,年齢,性別,兄弟姉妹の関係,心身の発育状況,従来の環境への適応状況,子供の希望などの要因を総合的に考慮して判断することになります。
 また,熟年離婚においては子供の年齢も15歳を超えていることも多いと思います。この場合,裁判所は子供の陳述を聴かなければならないとされており,子供の意思が相当程度考慮されますので,日頃から子供と良好な関係を築くことが大事でしょう。

3 熟年離婚はどうやってすればいいの?

熟年離婚であっても手続きの流れは通常の離婚と同じく,以下の通りです。
まずは話し合いでの解決を試みましょう。話し合いがまとまった場合に離婚協議書を作成するようにしましょう。その中では,慰謝料や財産分与,年金分割,面会交流などについても決めておきましょう。また,可能であれば公正証書にしておくことをお勧め致します。公正証書は強制執行認諾文言を挿入することで,金銭的な給付については債務名義となり,裁判を経ずに強制的に金銭を回収(強制執行)することが可能となります。
もし、離婚自体や離婚の条件がまとまらない場合には,家庭裁判所に離婚調停を申立て,裁判所で話し合うことになります。なお,離婚については合意があるのですが,財産分与や親権者などの事項について合意が出来ていないような場合などでは,審判という手続きが用いられることになりますが,あまり使用されることはありません。
もし,調停でも話し合いがまとまらない場合には裁判をすることとなります。裁判をするには家庭裁判所に対して訴えを提起することになりますが,裁判で離婚する場合は民法770条1項各号の要件を満たす必要があります。例えば,「不貞行為」や暴行,浪費癖などによって「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められる場合には離婚ができることになります。そのため,離婚をするための要件を満たしているかを事前に検討しておくことが必要となってきます。

4 まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は,熟年離婚で損しないためのコツをご説明させて頂きました。熟年離婚をすると,良くも悪くも今まで長年にわたって過ごしてきたいつもの生活と全く異なる生活を送ることになります。熟年離婚した人の中には「こんなはずじゃなかったのに」と後悔している方もいらっしゃいます。熟年離婚をしても本当に幸せになれるかは,熟年離婚をしてみなければわからないものですが,熟年離婚の事件をも数多くこなしている弁護士であればある程度の見通しを立てることが可能です。
しかし,今回お話しさせて頂いたコツを使っていただければ,法律的な面で損をしてしまうことは防げます。もっとも,このコツを効率的に活用するためには,専門的な知識を有している人の手助けが必要になると思います。
そこで,熟年離婚をするかお悩みの方は、離婚事件に経験豊富な弁護士にご相談くださいませ。

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